特許第6597341号(P6597341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597341
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   F22B35/00 E
   F22B35/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-11868(P2016-11868)
(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-133712(P2017-133712A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−098529(JP,A)
【文献】 特開2012−251721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段階的な複数の燃焼位置で燃焼可能な、複数の段階値制御ボイラからなるボイラ群と、
前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、
前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧に基づいて要求負荷に応じた前記ボイラ群の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて前記複数の段階値制御ボイラの燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
前記ボイラ群の台数制御始動時に、少なくとも1台の段階値制御ボイラを、燃焼を停止することなく燃焼量の減少を可能とする負荷追従用ボイラとして設定する負荷追従用ボイラ初期設定部と、
前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラそれぞれにおける前記複数の燃焼位置に燃焼優先順位を予め設定する燃焼優先順位初期設定部と、
所定時間内に前記ボイラ群が出力した出力蒸気量の最大値と最小値との差である最大変動量が、負荷追従用ボイラの所定の燃焼位置における出力蒸気量と最低燃焼位置における出力蒸気量との差分である負荷追従変動可能量を上回るか、又は前記負荷追従変動可能量以上となる状態が発生したか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部により、前記最大変動量が前記負荷追従変動可能量を上回るか、又は前記負荷追従変動可能量以上となる状態が発生したと判定した場合、負荷追従用ボイラの台数を増加させる負荷追従用ボイラ台数制御部と、
前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を増加させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更する燃焼優先順位変更制御部と、
を備えるボイラシステム。
【請求項2】
前記負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに
前記第1判定部により、最大変動量が前記負荷追従変動可能量を上回るか、又は前記負荷追従変動可能量以上となる状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの増加後の台数が所定のボイラ台数を超えない場合に、前記ボイラ群の負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中でいずれかのボイラを負荷追従用ボイラとして新たに設定する、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記第1判定部は、さらに、
前記最大変動量が、前記負荷追従用ボイラから優先順位が最下位の負荷追従用ボイラを除く負荷追従用ボイラの負荷追従変動可能量を下回るか、又は前記負荷追従変動可能量以下となる状態が発生したか否かを判定し、
負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに、
前記第1判定部により、前記最大変動量が前記負荷追従変動可能量を下回るか、又は前記負荷追従変動可能量以下となる状態が発生したと判定した場合であって、前記ボイラ群に含まれる負荷追従用ボイラの台数が2以上の場合、前記負荷追従用ボイラから選択された1台のボイラから負荷追従用ボイラとしての設定を外し、
前記燃焼優先順位変更制御部は、さらに、
前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を減少させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更する、
請求項1又は請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項4】
前記負荷追従用ボイラが、高燃焼位置、低燃焼位置、燃焼停止位置の3位置制御ボイラの場合、前記負荷追従変動可能量は、前記負荷追従用ボイラの前記高燃焼位置における出力蒸気量と前記低燃焼位置における出力蒸気量との差分である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【請求項5】
前記負荷追従用ボイラが、高燃焼位置、中燃焼位置、低燃焼位置、燃焼停止位置の4位置制御ボイラの場合、前記負荷追従変動可能量は、前記負荷追従用ボイラの前記中燃焼位置における出力蒸気量と前記低燃焼位置における出力蒸気量との差分である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のボイラシステム。
【請求項6】
段階的な複数の燃焼位置で燃焼可能な、複数の段階値制御ボイラからなるボイラ群と、
前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、
前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧に基づいて要求負荷に応じた前記ボイラ群の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて前記複数の段階値制御ボイラの燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラそれぞれにおける前記複数の燃焼位置に燃焼優先順位を予め設定する燃焼優先順位初期設定部と、
前記ボイラ群の台数制御始動時に、少なくとも1台の段階値制御ボイラを、燃焼を停止することなく燃焼量の減少を可能とする負荷追従用ボイラとして設定する負荷追従用ボイラ初期設定部と、
特定のボイラにおいて所定時間内に燃焼及び停止を所定回数繰り返す状態が発生したか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部により、前記状態が発生したと判定した場合、負荷追従用ボイラの台数を増加させる負荷追従用ボイラ台数制御部と、
前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を増加させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更する燃焼優先順位変更制御部と、
を備えるボイラシステム。
【請求項7】
前記負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに
前記第2判定部により、特定のボイラにおいて所定時間内に燃焼及び停止を所定回数繰り返す状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの増加後の台数が所定のボイラ台数を超えない場合に、前記ボイラ群の負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中でいずれかのボイラを負荷追従用ボイラとして新たに設定する、請求項6に記載のボイラシステム。
【請求項8】
前記制御部は、さらに、
負荷追従用ボイラとして設定されたボイラが、所定の燃焼位置で燃焼する状態が所定時間以上継続する状態が発生したか否かを判定する第3判定部を備え、
前記負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに、
前記第3判定部により、前記状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの台数が2以上の場合、前記負荷追従用ボイラから選択された1台のボイラから負荷追従用ボイラとしての設定を外し、
燃焼優先順位変更制御部は、さらに、
前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を減少させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更する、
請求項6又は請求項7に記載のボイラシステム。
【請求項9】
前記制御部は、さらに、
負荷追従用ボイラを所定の燃焼位置において燃焼させたと仮定した場合、又は負荷追従用ボイラを1台増加すると仮定し、当該増加される負荷追従用ボイラを所定の燃焼位置において燃焼させたと仮定した場合に、前記ボイラ群のすべての燃焼中のボイラが最大燃焼位置で燃焼する余力ゼロ状態になるか否かを判断する余力判定部と、
前記余力判定部が余力ゼロ状態になると判定した場合、前記ボイラ群のうち、燃焼停止ボイラを、最低燃焼位置で燃焼させるボイラとして追加する最低燃焼ボイラ追加部と、
を備え、
前記燃焼優先順位変更制御部は、さらに
前記最低燃焼ボイラ追加部により、燃焼停止ボイラを最低燃焼位置で燃焼させるボイラとして追加する場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更する、請求項1乃至請求項8に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の段階的な燃焼位置で燃焼可能な段階値制御ボイラを複数有するボイラ群を備えるボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ボイラ効率が最も高くなる負荷率であるエコ運転ポイントが低燃焼位置である場合、又は大きな負荷増加に備えて余力蒸気量を大きく確保するような設定とした場合、ボイラ群の台数制御として、低燃焼位置で燃焼させる低燃焼ボイラを多く確保するような制御が行われる(特許文献1)。具体的には、1台目低燃焼、2台目低燃焼、3台目低燃焼、というように、先ずは低燃焼ボイラのみを確保する動作となる。
こうすることで、蒸気使用量が急激に増加する場合には、燃焼位置を低燃焼位置から中燃焼位置又は高燃焼位置に変更することにより、負荷追従することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−251721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように、低燃焼位置で燃焼させる低燃焼ボイラを多く確保するような制御の場合、逆に低負荷状態における負荷変動に対しては、低燃焼ボイラしか存在しないため、負荷減少に対しては、低燃焼ボイラを待機、負荷増加に対しては待機ボイラを低燃焼とするような燃焼と待機でしか、負荷追従できないため、結果的にボイラの発停が数多く発生することとなる。そうすると、低負荷時のシステム効率が悪くなるとともに、ボイラ発停が多く発生することとなり、ボイラ部品消耗等の問題が発生する恐れがある。
【0005】
本発明は、低負荷状態における負荷変動に対しても、システム効率を向上させることのできるボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、段階的な複数の燃焼位置で燃焼可能な、複数の段階値制御ボイラからなるボイラ群と、前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧に基づいて要求負荷に応じた前記ボイラ群の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて前記複数の段階値制御ボイラの燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記制御部は、前記ボイラ群の台数制御始動時に、少なくとも1台の段階値制御ボイラを、燃焼を停止することなく燃焼量の減少を可能とする負荷追従用ボイラとして設定する負荷追従用ボイラ初期設定部と、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラそれぞれにおける前記複数の燃焼位置に燃焼優先順位を予め設定する燃焼優先順位初期設定部と、所定時間内に前記ボイラ群が出力した出力蒸気量の最大値と最小値との差である最大変動量が、負荷追従用ボイラの所定の燃焼位置(中燃焼又は高燃焼)における出力蒸気量と最低燃焼位置における出力蒸気量との差分である負荷追従変動可能量を上回るか、又は前記負荷追従変動可能量以上となる状態が発生したか、否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部により、前記最大変動量が前記負荷追従変動可能量を上回るか、又は前記負荷追従変動可能量以上となる状態が発生したと判定した場合、負荷追従用ボイラの台数を増加させる負荷追従用ボイラ台数制御部と、前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を増加させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更する燃焼優先順位変更制御部と、を備えるボイラシステムに関する。
【0007】
また、前記負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに、前記第1判定部により、最大変動量が前記負荷追従変動可能量を上回るか、又は前記負荷追従変動可能量以上となる状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの増加後の台数が所定のボイラ台数を超えない場合に、前記ボイラ群の負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中でいずれかのボイラを負荷追従用ボイラとして新たに設定することが望ましい。
【0008】
また、前記第1判定部は、さらに、前記最大変動量が、前記負荷追従用ボイラから優先順位が最下位の負荷追従用ボイラを除く負荷追従用ボイラの負荷追従変動可能量を下回るか、又は前記負荷追従変動可能量以下となる状態が発生したか否かを判定し、負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに、前記第1判定部により、前記最大変動量が前記負荷追従変動可能量を下回るか、又は前記負荷追従変動可能量以下となる状態が発生したと判定した場合であって、前記ボイラ群に含まれる負荷追従用ボイラの台数が2以上の場合、前記負荷追従用ボイラから選択された1台のボイラから負荷追従用ボイラとしての設定を外し、前記燃焼優先順位変更制御部は、さらに、前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を減少させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更することが望ましい。
【0009】
また、前記負荷追従用ボイラが、高燃焼位置、低燃焼位置、燃焼停止位置の3位置制御ボイラの場合、前記負荷追従変動可能量は、前記負荷追従用ボイラの前記高燃焼位置における出力蒸気量と前記低燃焼位置における出力蒸気量との差分であることが望ましい。
【0010】
また、前記負荷追従用ボイラが、高燃焼位置、中燃焼位置、低燃焼位置、燃焼停止位置の4位置制御ボイラの場合、前記負荷追従変動可能量は、前記負荷追従用ボイラの前記中燃焼位置における出力蒸気量と前記低燃焼位置における出力蒸気量との差分であることが望ましい。
【0011】
本発明は、段階的な複数の燃焼位置で燃焼可能な、複数の段階値制御ボイラからなるボイラ群と、前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧に基づいて要求負荷に応じた前記ボイラ群の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて前記複数の段階値制御ボイラの燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記制御部は、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラそれぞれにおける前記複数の燃焼位置に燃焼優先順位を予め設定する燃焼優先順位初期設定部と、前記ボイラ群の台数制御始動時に、少なくとも1台の段階値制御ボイラを、燃焼を停止することなく燃焼量の減少を可能とする負荷追従用ボイラとして設定する負荷追従用ボイラ初期設定部と、特定のボイラにおいて所定時間内に燃焼及び停止(ボイラの発停)を所定回数繰り返す状態が発生したか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部により、前記状態が発生したと判定した場合、負荷追従用ボイラの台数を増加させる負荷追従用ボイラ台数制御部と、前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を増加させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更する燃焼優先順位変更制御部と、を備えるボイラシステムに関する。
【0012】
また、前記負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに、前記第2判定部により、特定のボイラにおいて所定時間内に燃焼及び停止を所定回数繰り返す状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの増加後の台数が所定のボイラ台数を超えない場合に、前記ボイラ群の負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中でいずれかのボイラを負荷追従用ボイラとして新たに設定することが望ましい。
【0013】
また、前記制御部は、さらに、負荷追従用ボイラとして設定されたボイラが、所定の燃焼位置で燃焼する状態が所定時間以上継続する状態が発生したか否かを判定する第3判定部を備え、前記負荷追従用ボイラ台数制御部は、さらに、前記第3判定部により、前記状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの台数が2以上の場合、前記負荷追従用ボイラから選択された1台のボイラから負荷追従用ボイラとしての設定を外し、燃焼優先順位変更制御部は、さらに、前記負荷追従用ボイラ台数制御部により、負荷追従用ボイラの台数を減少させる場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更することが望ましい。
【0014】
また、前記制御部は、さらに、負荷追従用ボイラを所定の燃焼位置において燃焼させたと仮定した場合、又は負荷追従用ボイラを1台増加すると仮定し、当該増加される負荷追従用ボイラを所定の燃焼位置において燃焼させたと仮定した場合に、前記ボイラ群のすべての燃焼中のボイラが最大燃焼位置で燃焼する余力ゼロ状態になるか否かを判断する余力判定部と、前記余力判定部が余力ゼロ状態になると判定した場合、前記ボイラ群のうち、燃焼停止ボイラを、最低燃焼位置で燃焼させるボイラとして追加する最低燃焼ボイラ追加部と、を備え、前記燃焼優先順位変更制御部は、さらに前記最低燃焼ボイラ追加部により、燃焼停止ボイラを最低燃焼位置で燃焼させるボイラとして追加する場合、前記ボイラ群の前記複数の段階値制御ボイラの燃焼優先順位を変更することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、負荷が減少した場合に中燃焼位置又は高燃焼位置で燃焼しているボイラを最低燃焼位置(低燃焼位置)で燃焼させることで、低負荷状態における負荷変動に対して、システム効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の本実施形態のボイラシステムの概略を示す図である。
図2A】第1実施形態における台数制御装置の制御部の機能構成を示すブロック図である。
図2B】第2実施形態における台数制御装置の制御部の機能構成を示すブロック図である。
図3A】ボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合のボイラ群の概略を示す図である。
図3B】ボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合における従来のボイラの燃焼優先順位を示す図である。
図3C】ボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの従来の燃焼制御状況を示す図である。
図4A】本実施形態のボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図4B】本実施形態のボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図5A】本実施形態のボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図5B】本実施形態のボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図6A】本実施形態のボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図6B】本実施形態のボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図7A】ボイラ群が3位置制御ボイラからなる場合のボイラ群の概略を示す図である。
図7B】ボイラ群が3位置制御ボイラからなる場合における従来のボイラの燃焼優先順位を示す図である。
図7C】ボイラ群が3位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼状況を示す図である。
図8】本実施形態のボイラ群が3位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図9】本実施形態のボイラ群が3位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
図10】本実施形態のボイラ群が3位置制御ボイラからなる場合の負荷変動に対するボイラの燃焼制御状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明のボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、当該実施形態に係るボイラシステム1の全体構成につき、図1を参照しながら説明する。
ボイラシステム1は、図1に示すように、複数(例えば6台)の段階値制御ボイラ20を含むボイラ群2と、これら複数の段階値制御ボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ6と、蒸気ヘッダ6の内部の圧力値(以下「ヘッダ圧力値」ともいう)を測定する蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部4を有する台数制御装置3と、を備える。
ボイラ群2は、負荷機器としての蒸気使用設備18に供給する蒸気を発生する。
【0018】
複数の段階値制御ボイラ20のそれぞれは、燃焼が行われるボイラ本体21と、段階値制御ボイラ20の燃焼位置を制御するローカル制御部22と、を備える。ボイラ本体21は、水管やバーナを備え、図示せぬ水源(給水タンク)から供給された缶水を水管内で加熱し、蒸気を生成する。
【0019】
ローカル制御部22は、段階値制御ボイラ20の燃焼位置を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される台数制御信号に基づいて、段階値制御ボイラ20の燃焼位置を制御する。また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、段階値制御ボイラ20の実際の燃焼位置、及びその他のデータ等が挙げられる。
【0020】
蒸気ヘッダ6は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数の段階値制御ボイラ20に接続されている。蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
【0021】
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留する。蒸気ヘッダ6は、燃焼させる1又は複数の段階値制御ボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、蒸気圧力値が一定に調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
【0022】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧力値(以下、「ヘッダ圧力値」ともいう)を測定し、その蒸気圧力値に対応する蒸気圧信号を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0023】
台数制御装置3は、信号線16を介して、複数の段階値制御ボイラ20と電気的に接続されている。台数制御装置3は、蒸気圧センサ7により測定されるヘッダ圧力値に基づいて要求負荷に応じたボイラ群2の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて、段階値制御ボイラ20の燃焼状態(燃焼位置)を制御する。
【0024】
次に、ボイラシステム1を構成する複数の段階値制御ボイラ20について説明する。
[仮想ボイラ]
一般に、段階値制御ボイラ20の燃焼又はその停止は、仮想ボイラ単位で扱うことができる。仮想ボイラとは、ボイラにおける燃焼位置(燃焼量)の違い(例えば、低燃焼位置、中燃焼位置、高燃焼位置等)をそれぞれ独立したボイラとみなし、それぞれの燃焼位置における燃焼量とその1段階下位の燃焼位置における燃焼量との差分をボイラに仮想したものである。
【0025】
例えば、段階値制御ボイラ20の燃焼位置が、燃焼停止位置(第1燃焼位置)、低燃焼位置L(第2燃焼位置)、高燃焼位置H(第3燃焼位置)となる3位置制御ボイラの場合、低燃焼量ボイラ、(高燃焼量−低燃焼量)ボイラの2台の仮想ボイラからなるとすることができる。3位置制御ボイラを低燃焼位置で燃焼させる場合、低燃焼量ボイラに対して燃焼指示を行い、他方、(高燃焼量−低燃焼量)ボイラに対しては燃焼停止指示を行っていると制御上扱うことができる。
【0026】
また、段階値制御ボイラ20の燃焼位置が、燃焼停止位置(第1燃焼位置)、低燃焼位置L(第2燃焼位置)、中燃焼位置M(第3燃焼位置)、高燃焼位置H(第4燃焼位置)である4位置制御ボイラの場合、低燃焼量ボイラ、(中燃焼量−低燃焼量)ボイラ、(高燃焼量−中燃焼量)ボイラの3台の仮想ボイラからなるとすることができる。4位置制御ボイラを低燃焼位置で燃焼させる場合、低燃焼量ボイラに対して燃焼指示を行い、他方、(中燃焼量−低燃焼量)ボイラ、及び(高燃焼量−中燃焼量)ボイラに対しては燃焼停止指示を行っていると制御上扱うことができる。
【0027】
段階値制御ボイラ20の燃焼位置がN位置(N≧5)の場合(複数の中燃焼位置を有するN位置制御ボイラの場合)も同様に、N位置制御ボイラの燃焼又はその停止は仮想ボイラ単位で扱うことができる。
【0028】
また、各段階値制御ボイラ20のボイラ容量、燃焼位置の段階数等が、各段階値制御ボイラ20のそれぞれで異なることとしてもよい。この場合も、各段階値制御ボイラ20を仮想ボイラ単位で扱うことができる。
以上のように、段階値制御ボイラ20からなるボイラ群に対して、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラ及びその燃焼位置を選択する場合、仮想ボイラ単位で設定することができる。
【0029】
[燃焼優先順位]
ボイラ群2の各ボイラ20には、それぞれ各ボイラ20の燃焼位置の燃焼順序となる優先順位を設定することができる。段階値制御ボイラ20に対する優先順位は、段階値制御ボイラ20の燃焼位置毎、すなわち仮想ボイラ毎に設定することができる。以下、ボイラ20の燃焼位置毎、すなわち仮想ボイラ毎に設定される優先順位を「燃焼優先順位」ともいう。
台数制御装置3(制御部4)は、燃焼優先順位が高い段階値制御ボイラ20(の燃焼位置又は仮想ボイラ)から順に燃焼させる。
なお、燃焼を停止する場合は、燃焼優先順位とは関係なく、高い燃焼位置で燃焼しているボイラを優先して、当該高い燃焼位置での燃焼を停止させる。例えば、中燃焼位置で燃焼するボイラと低燃焼位置で燃焼しているボイラがある場合、中燃焼位置で燃焼するボイラを低燃焼位置で燃焼するように制御する。仮想ボイラでいうと、(中燃焼量−低燃焼量)ボイラを停止させる。
また、中燃焼位置で燃焼しているボイラが複数ある場合、燃焼優先順位の低いボイラ(の燃焼位置又は仮想ボイラ)から順に燃焼を停止する。仮想ボイラでいうと、燃焼優先順位の低い(中燃焼量−低燃焼量)ボイラを停止させる。
以下、第1実施形態では、特に断らない限り、段階値制御ボイラ20は4位置制御ボイラを指すものとする。
【0030】
次に、台数制御装置3の構成について説明する。台数制御装置3は、図1に示すように、制御手段としての制御部4と、記憶部5と、を備える。
【0031】
制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20に各種の指示を送信したり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、段階値制御ボイラ20の制御を実行する。より具体的には、制御部4は、ヘッダ圧力値に基づいて算出された必要蒸気量、各ボイラ20の燃焼優先順位に基づいて、各ボイラ20の燃焼位置を制御する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って該当するボイラ20の燃焼量を制御する。制御部4の詳細な構成については後述する。
【0032】
記憶部5は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各段階値制御ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各段階値制御ボイラ20から受信した燃焼位置等の情報、燃焼優先順位の設定情報、燃焼優先順位の変更に関する設定の情報を記憶する。
記憶部5は、後述する負荷追従用ボイラ初期設定部41及び負荷追従用ボイラ台数制御部44により設定又は増減されることで変更された負荷追従用ボイラの情報を記憶する。
記憶部5は、後述する燃焼優先順位初期設定部42及び燃焼優先順位変更制御部45により設定又は変更された、ボイラ群2の複数の段階値制御ボイラ20の燃焼優先順位の情報を記憶する。
また、記憶部5は、後述する第1判定時間、第2判定時間、第3判定時間、第2判定回数、第1閾値等の情報を記憶してもよい。
【0033】
制御部4の構成について、詳細に説明する。
制御部4は、ボイラ群2が低負荷状態の場合の負荷変動への追従処理として、燃焼を停止することなく燃焼量の減少が可能なボイラ(後述の「負荷追従用ボイラ」)を確保することにより、負荷変動への追従処理を行う。
【0034】
具体的には、段階値制御ボイラが4位置制御ボイラの場合、負荷減少に対しては、中燃焼位置で燃焼させている中燃焼ボイラ(負荷追従用ボイラ)を低燃焼位置で燃焼させ、負荷増加に対しては低燃焼位置で燃焼させている負荷追従用ボイラを中燃焼位置で燃焼させるように制御する。
そうすることで、例えば低負荷状態での負荷変動に対し、ボイラの発停による負荷追従から、燃焼位置の高低による負荷追従に切り換えることができ、ボイラ発停が過多になることを抑制し、低負荷状態におけるボイラシステム2の効率を向上させることができる。
【0035】
このような制御を実現するため、図2に示すように、制御部4は、負荷追従用ボイラ初期設定部41と、燃焼優先順位初期設定部42と、第1判定部43と、第2判定部44と、第3判定部45と、負荷追従用ボイラ台数制御部46と、燃焼優先順位変更制御部47と、を含んで構成される。
まず、制御部4の各機能部を説明する際に必要な用語について説明する。
【0036】
[低燃焼ボイラ、中燃焼ボイラ、高燃焼ボイラ等について]
段階値制御ボイラ20において、低燃焼位置で燃焼するボイラを簡単のため、低燃焼ボイラという。同様に、中燃焼位置で燃焼するボイラ、及び高燃焼位置で燃焼するボイラを、それぞれ中燃焼ボイラ及び高燃焼ボイラという。
【0037】
[負荷追従用ボイラについて]
負荷追従用ボイラとは、燃焼を停止することなく燃焼量の減少が可能なボイラを意味する。4位置制御ボイラの場合、高燃焼ボイラは除外するものとする。
【0038】
[負荷追従用ボイラの確保、追加、増加について]
負荷追従用ボイラを確保する、追加する、又は増加するとは、負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラ20を負荷追従用ボイラとして選択するとともに、負荷増加に対して当該ボイラを所定の燃焼位置で燃焼させることをいう。したがって、例えば、4位置制御ボイラの場合、負荷追従用ボイラを確保する、追加する、又は増加するとは、負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラ20を負荷追従用ボイラとして選択するとともに、負荷増加に対して当該ボイラを中燃焼位置で燃焼させることをいう。
本実施形態においては、ボイラシステム2が、低燃焼ボイラを数多く確保するように燃焼優先順位が初期設定されている場合であっても、燃焼優先順位を動的に変更して、負荷追従用ボイラ台数を確保する、すなわち負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラ20を所定の燃焼位置で燃焼させることを優先する。
【0039】
[負荷追従用ボイラの確保後、追加後、増加後の負荷減少について]
負荷追従用ボイラを確保、追加、又は増加した後に、負荷が減少した場合には、負荷追従用ボイラの燃焼を所定の燃焼位置から低燃焼位置の燃焼に変更させることで、負荷追従する。
これは、前述したように、ボイラシステム2において、高い燃焼位置で燃焼しているボイラを優先して、当該高い燃焼位置での燃焼を停止させるように制御されることに基づく。例えば、中燃焼位置で燃焼するボイラと低燃焼位置で燃焼しているボイラがある場合、中燃焼位置で燃焼するボイラを低燃焼位置で燃焼するように制御することに基づく。
このように、低負荷状態での負荷変動に対して、低燃焼ボイラの発停ではなく、負荷追従用ボイラの燃焼位置を変更することにより、負荷追従することが可能となる。
【0040】
[最大変動量について]
予め設定された所定時間(例えば、後述の[第1判定時間])内における、ボイラ群2のすべての燃焼中のボイラ20が出力した出力蒸気量の最大値と最小値との差を当該所定時間における最大変動量という。例えば、所定時間内に燃焼中のボイラ20が2台で、ある時点で高燃焼ボイラ1台、低燃焼ボイラ1台の状態となり、別の時点で低燃焼ボイラ2台の状態となった場合、当該所定時間における最大変動量は、高燃焼位置で燃焼する場合の出力蒸気量と低燃焼位置における出力蒸気量との差となる。
【0041】
[負荷追従変動可能量について]
負荷追従変動可能量とは、特に断らない限り、ボイラ群2において負荷追従用ボイラとして設定された全てのボイラ20について、所定の燃焼位置における出力蒸気量と最低燃焼位置における出力蒸気量との差分(「負荷追従用ボイラの変動可能量」ともいう)を合計した蒸気量(以下「負荷追従変動可能量上限値」ともいう)を意味する。
段階値制御ボイラ20が4位置制御ボイラの場合、所定の燃焼位置は中燃焼位置に、最低燃焼位置は低燃焼位置に対応するものとする。
【0042】
なお、負荷追従用ボイラが複数台ある場合に、これらのボイラから優先順位が最下位の負荷追従用ボイラを除く負荷追従用ボイラについて、負荷追従用ボイラの変動可能量を合計した蒸気量を、特に「優先順位が最下位の負荷追従用ボイラを除く負荷追従用ボイラの負荷追従変動可能量の合計」又は「負荷追従変動可能量下限値」ともいう。
次に、各機能部を説明する。
【0043】
<負荷追従用ボイラ初期設定部41>
負荷追従用ボイラ初期設定部41は、ボイラ群2の台数制御始動時に、少なくとも1台の段階値制御ボイラを、燃焼を停止することなく燃焼量の減少を可能とする負荷追従用ボイラとして初期設定する。例えば、負荷追従用ボイラ初期設定部41は、1号機のボイラを負荷追従用ボイラとして初期設定することができる。
そうすることで、負荷追従用ボイラを確保する場合に、前記負荷追従用ボイラとして初期設定されたボイラを負荷追従用ボイラとして確保、すなわち中燃焼(4位置制御ボイラの場合)で燃焼させることができる。
【0044】
<燃焼優先順位初期設定部42>
燃焼優先順位初期設定部42は、ボイラ群2の台数制御始動時(例えば、初起動時、全台待機からの燃焼開始時等)に、負荷追従用ボイラ初期設定部41により負荷追従用ボイラが初期設定されることに基づいて、ボイラ群2に含まれる複数の段階値制御ボイラ20それぞれにおける複数の燃焼位置に燃焼優先順位を初期設定する。すなわち、燃焼優先順位初期設定部42は、ボイラ群2に含まれる全ての仮想ボイラに燃焼優先順位を初期設定する。より具体的には、負荷追従用ボイラとして初期設定されたボイラの中燃焼位置を2番目の燃焼優先順位となるように、複数の段階値制御ボイラ20それぞれにおける複数の燃焼位置に燃焼優先順位を初期設定する。
そうすることで、ボイラ群2は、ボイラ群2の台数制御始動時に燃焼優先順位初期設定部42により初期設定された仮想ボイラの燃焼優先順位にしたがって、燃焼制御される。
【0045】
<第1判定部43>
第1判定部43は、予め設定された第1判定時間内におけるボイラ群2の最大変動量が、負荷追従用ボイラとして設定された全てのボイラの負荷追従変動可能量の合計(負荷追従変動可能量上限値)を上回るか、又は負荷追従変動可能量上限値以上となる状態(「第1の状態」ともいう)が発生したか、否かを判定する。
例えば、第1判定時間を5分とした場合、判定時点の5分前から判定時点までの間におけるボイラ群2の最大変動量が、ボイラ群2の負荷追従変動可能量上限値を上回るか、又は負荷追従変動可能量上限値以上となる状態が発生したか否かを判定する。
【0046】
また、第1判定部43は、予め設定された第1判定時間内におけるボイラ群2の最大変動量が、優先順位が最下位の負荷追従用ボイラを除く負荷追従用ボイラの負荷追従変動可能量の合計(負荷追従変動可能量下限値)を下回るか、又は負荷追従変動可能量下限値以下となる状態が発生したか、否かを判定する。
例えば、第1判定時間を5分とした場合、判定時点の5分前から判定時点までの間における、ボイラ群2の最大変動量が、ボイラ群2の負荷追従変動可能量下限値を下回るか、又は負荷追従変動可能量下限値以下となる状態が発生したか、否かを判定する。
【0047】
<第2判定部44>
第2判定部44は、ボイラ群2の特定のボイラ20が、予め設定された第2判定時間内に、燃焼及び停止(いわゆるボイラの発停)を予め設定された第2判定回数繰り返す状態(「第2の状態」ともいう)が発生したか否かを判定する。
【0048】
<第3判定部45>
第3判定部45は、負荷追従用ボイラ台数が過剰に確保されている場合、すなわち負荷が減少しても負荷追従用ボイラが残ったまま、本来低燃焼に移行すべきボイラが所定の燃焼位置で燃焼する状態が予め設定された第3判定時間以上継続する状態(「第3の状態」ともいう)が発生したか否かを判定する。
【0049】
<負荷追従用ボイラ台数制御部46>
負荷追従用ボイラ台数制御部46は、次の条件を満足する場合に、負荷追従用ボイラを確保、追加、又は増加させるように制御する。
なお、次の条件を満足する場合であっても、直ちに負荷追従用ボイラを追加又は増加させるのではなく、負荷追従用ボイラ台数制御部46により、前に負荷追従用ボイラの台数を変化させてから予め設定された所定時間が経過するまでは、負荷追従用ボイラを追加又は増加させないように、遅延時間を設けることが望ましい。
そうすることで、最大変動量に応じて、負荷追従用ボイラ台数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0050】
(ケースその1)
第1判定部43により、予め設定された第1判定時間内におけるボイラ群2の最大変動量が負荷追従変動可能量上限値を上回るか、又は負荷追従変動可能量上限値以上となる状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの台数が予め設定されている第1閾値を超えない場合に、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、ボイラ群2の負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラ20を負荷追従用ボイラとして確保又は追加する。
より具体的には、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、1台のボイラが負荷追従用ボイラとして初期設定された状態の場合、初期設定された当該負荷追従用ボイラを負荷追従用ボイラとして確保する。
また、負荷追従用ボイラが少なくとも1台既に確保されている場合、ボイラ群2の負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラ20を負荷追従用ボイラとして追加する。
【0051】
(ケースその2)
第2判定部44により、第2判定時間内に、ボイラ群2の特定のボイラ20が、燃焼及び停止(いわゆるボイラの発停)を第2判定回数繰り返す状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの台数が予め設定されている第1閾値を超えない場合に、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、(ケースその1)と同様に、ボイラ群2の負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラ20を負荷追従用ボイラとして確保又は追加する。
【0052】
また、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、次のそれぞれの場合に、負荷追従用ボイラの台数を減少させるように制御する。より具体的には、負荷追従用ボイラを低燃焼ボイラとする。
なお、次の場合であっても、直ちに負荷追従用ボイラの台数を減少させるのではなく、負荷追従用ボイラ台数制御部46により、前に負荷追従用ボイラの台数を変化させてから予め設定された所定時間が経過するまでは、負荷追従用ボイラの台数を減少させないように、遅延時間を設定することが望ましい。
そうすることで、最大変動量に応じて、負荷追従用ボイラ台数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0053】
(ケースその1)
第1判定部43により、予め設定された第1判定時間内におけるボイラ群2の最大変動量が負荷追従変動可能量下限値を下回るか、又は負荷追従変動可能量下限値以下となる状態が発生したと判定した場合であって、且つボイラ群2に含まれる負荷追従用ボイラの台数が2以上の場合、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、負荷追従用ボイラから選択された1台のボイラ20から負荷追従用ボイラとしての設定を外し、負荷追従用ボイラ台数を減少させる。
【0054】
(ケースその2)
第3判定部45により、本来低燃焼ボイラとなるべきボイラが負荷追従用ボイラとして選択され、所定の燃焼位置(3位置ボイラの場合高燃焼位置、4位置制御ボイラの場合中燃焼位置)で燃焼する状態が予め設定された第3判定時間以上継続する状態が発生したと判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの台数が2以上の場合、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、負荷追従用ボイラから選択された1台のボイラから負荷追従用ボイラとしての設定を外し、負荷追従用ボイラ台数を減少させるように制御する。
【0055】
<燃焼優先順位変更制御部47>
燃焼優先順位変更制御部47は、負荷追従用ボイラ台数制御部46により負荷追従用ボイラを確保、追加、又は増加する場合、負荷追従用ボイラの台数を減少させる場合、ボイラ群2の複数の段階値制御ボイラ20の燃焼優先順位を変更する。
【0056】
具体的には、負荷追従用ボイラを確保、追加、又は増加する場合、燃焼優先順位変更制御部47は、負荷追従用ボイラとして確保、追加、又は増加したボイラ20の所定の燃焼位置の燃焼優先順位を高くなるように変更する。そうすることで、負荷増加に対して負荷追従用ボイラの所定の燃焼位置を速やかに燃焼することができる。
なお、前述したように、負荷減少時には、中燃焼位置で燃焼しているボイラすなわち、負荷追従用ボイラの中燃焼位置の燃焼を低燃焼ボイラよりも優先して燃焼停止させることから、負荷追従用ボイラの最低燃焼位置と所定の燃焼位置の切替により、必要蒸気量の変動に対して追従することができる。
【0057】
また、負荷追従用ボイラの台数を減少させる場合、燃焼優先順位変更制御部47は、負荷追従用ボイラとしての設定を外されたボイラ20の所定の燃焼位置の燃焼優先順位を、他の低燃焼ボイラ20の最低燃焼位置よりも低い燃焼優先順位になるように変更する。
そうすることで、負荷追従用ボイラでなくなったボイラの中燃焼位置を優先して燃焼させることがないようにできる。
【0058】
次に、第1実施形態のボイラシステム1の動作について説明する。図3A図6Bは、ボイラ群が4位置制御ボイラからなる場合の動作を示す図である。
【0059】
<4位置制御ボイラ群の場合>
まず、図3A図6Bを参照して、ボイラ群2のボイラ20が4位置制御ボイラの場合のボイラシステム1の燃焼制御動作(特に低負荷状態での動作)について、従来の燃焼制御を行った場合と比較しながら、説明する。
【0060】
図3Aに示すように、各段階値制御ボイラ20の低燃焼位置Lにおける燃焼量は600kg/h、中燃焼位置Mにおける燃焼量は1350kg/h、高燃焼位置Hにおける燃焼量(最大出力蒸気量)は3000kg/hとする。
図3Bに記載の仮想ボイラの燃焼優先順位は、エコ運転ポイントが低燃焼位置である場合の燃焼優先順位となっている。
このような場合、例えば、必要蒸気量が1800kg/h〜2400kg/hの範囲内で変動するような低負荷状態における負荷変動に対しては、図3Cに示すように、負荷減少に対しては低燃焼ボイラを待機状態として、負荷増加に対しては待機ボイラを低燃焼ボイラにするといった、4号機の燃焼と待機(いわゆるボイラ発停)でしか追従することができない。このため、ボイラ発停が多く発生することとなり、ボイラ部品消耗等の問題が発生する恐れがある。
【0061】
これに対して、本実施形態に係る燃焼制御を実施した場合、台数制御始動時に、負荷追従用ボイラ初期設定部41は、1号機のボイラを負荷追従用ボイラとして初期設定する。
【0062】
そうすると、燃焼優先順位は図4Aの(A)に示すように負荷追従用ボイラである1号機の中燃焼位置が2号機、3号機の低燃焼位置の燃焼優先順位よりも高く設定される。
そうすると、図4Aの(C)に示すように、必要蒸気量が1350kg/hとなった場合には、1号機の中燃焼位置を燃焼させる。その後、必要蒸気量が、1950kg/hとなった場合には、図4Aの(D)に示すように、2号機の低燃焼位置を燃焼させる。さらに、必要蒸気量が、2550kg/hとなった場合には、図4Aの(E)に示すように、3号機の低燃焼位置を燃焼させる。その後、必要蒸気量が2550kg/hから1800kg/hに減少すると、図4Aの(F)−>(G)に示すように、中燃焼位置での燃焼が低燃焼位置での燃焼よりも優先して停止させられる。逆に、必要蒸気量が1800kg/hから2550kg/hに増加すると、図4Aの(G)−>(F)に示すように、燃焼優先順位に基づいて、1号機の中燃焼位置を燃焼させる。このようにして、1号機の低燃焼位置(L)と中燃焼位置(M)の切替により、必要蒸気量の変動に対して追従することができ、ボイラ発停を抑制することが可能となる。
【0063】
次に、図5A及び図5Bを参照して、必要蒸気量が1800kg/h〜3300kg/hの範囲内で変動する場合において、負荷追従用ボイラの台数を1台から2台に増加させる場合について説明する。
【0064】
図5Aの(A)及び(B)を参照すると、最初は、1号機が負荷追従用ボイラとして設定されている。その後、必要蒸気量が1800kg/hから3150kg/hに変動する場合に、1号機の低燃焼位置(L)と中燃焼位置(M)の切替及び4号機の低燃焼位置の燃焼により、必要蒸気量の変動に対して追従する。
この場合の負荷追従変動可能量上限値は、750kg/hとなる。
【0065】
これに対して、例えば、第1判定時間内(例えば5分前から現在までの間)に、出力蒸気量が1800kg/hから3150kg/hの範囲内で変動した場合、第1判定部43は、第1判定時間内におけるボイラ群2の最大変動量1350kg/h(=3150kg/h−1800kg/h)が、負荷追従変動可能量上限値(750kg/h)を上回ると判定する。
負荷追従用ボイラ台数制御部46は負荷追従用ボイラの台数を増加させるように制御する。より具体的には、2号機を負荷追従用ボイラとして追加して中燃焼位置において燃焼させることとなる。
燃焼優先順位変更制御部47は、図5Aの(C)に示すように、負荷追従用ボイラとして追加された2号機の中燃焼位置の燃焼優先順位を、3号機の低燃焼位置の燃焼優先順位よりも高く設定する。
そうすることで、図5Bの(E)及び(F)に示すように、必要蒸気量が1800kg/h〜3300kg/hの範囲内で変動する場合に、2号機における低燃焼位置(L)と中燃焼位置(M)の切替、及び1号機における低燃焼位置(L)と中燃焼位置(M)の切替により、必要蒸気量の変動に対して追従することができる。
【0066】
次に、図6A及び図6Bを参照して、必要蒸気量が1800kg/h〜2550kg/hの範囲内で変動する場合において、負荷追従用ボイラの台数を2台から1台に減少させる場合について説明する。
【0067】
図6Aの(A)及び(B)を参照すると、1号機及び2号機が負荷追従用ボイラとして設定されている。必要蒸気量が1950kg/h〜2700kg/hの範囲内で変動する場合に、2号機の低燃焼位置(L)と中燃焼位置(M)の切替により、必要蒸気量の変動に対して追従することができる。
この場合の負荷追従変動可能量下限値は、750kg/h(=1500kg/h−750kg/h)となる。
【0068】
これに対して、例えば、第1判定時間内(例えば5分前から現在までの間)に、出力蒸気量が1950kg/hから2700kg/hの範囲内で変動した場合、第1判定部43は、第1判定時間内におけるボイラ群2の最大変動量750kg/h(=2700kg/h−1950kg/h)が、負荷追従変動可能量下限値(750kg/h)以下と判定する。
したがって、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、負荷追従用ボイラの台数を減少させるように制御する。より具体的には2号機から負荷追従用ボイラとしての設定を外すこととなる。
燃焼優先順位変更制御部47は、図6Aの(C)に示すように、負荷追従用ボイラでなくなった2号機の中燃焼位置の燃焼優先順位を2号機〜6号機の低燃焼位置の燃焼優先順位よりも低く設定する。
そうすることで、図6Bの(E)及び(F)に示すように、必要蒸気量が1800kg/h〜2550kg/hの範囲内で変動する場合に、1号機の低燃焼位置(L)と中燃焼位置(M)の切替により、必要蒸気量の変動に対して追従することができる。
【0069】
以上のように、第1実施形態に係るボイラシステム1は、所定時間内にボイラ群2が出力した出力蒸気量の最大変動量が、負荷追従用ボイラとして設定された全てのボイラの負荷追従変動可能量の合計(負荷追従変動可能量上限値)を上回ると判定した場合であって、かつ負荷追従用ボイラの増加後の台数が所定のボイラ台数を超えない場合に、負荷追従用ボイラの台数を増加させる。
これにより、第1実施形態に係るボイラシステム1は、特に低負荷状態での負荷変動に対して、ボイラ20の発停による負荷追従から、ボイラ20の燃焼位置の切り替え(低燃焼と中燃焼又は高燃焼)による負荷追従にすることができ、ボイラ発停過多を抑制することができる。そうすることで、特に低負荷時のシステム効率を向上させることができる。
【0070】
また、第1判定部43により、最大変動量が、優先順位が最下位の負荷追従用ボイラを除く負荷追従用ボイラの負荷追従変動可能量の合計(負荷追従変動可能量下限値)を上回らないと判定した場合であって、ボイラ群2に含まれる負荷追従用ボイラの台数が2以上の場合、前記負荷追従用ボイラから選択された1台のボイラから負荷追従用ボイラとしての設定を外すことができる。
そうすることで、本来低燃焼となるべきところ、中燃焼又は高燃焼を継続するボイラ20を低燃焼ボイラに戻すことができる。
【0071】
また、図5Aの(A)〜(B)において、第2判定部44により、特定のボイラ(4号機)において所定時間内に燃焼及び停止(ボイラの発停)を所定回数繰り返す第2の状態が発生したと判定した場合、負荷追従用ボイラの台数を増加させる。
これにより、第1実施形態に係るボイラシステム1は、特に低負荷状態での負荷変動に対して、ボイラ20の発停による負荷追従から、ボイラ20の燃焼位置の切り替え(低燃焼と中燃焼又は高燃焼)による負荷追従にすることができ、ボイラ発停過多を抑制することができる。そうすることで、特に低負荷時のシステム効率を向上させることができる。
【0072】
以上、第1実施形態の説明においては、段階値制御ボイラを4位置制御ボイラとして説明したが、4位置制御ボイラに限定されない。段階値制御ボイラ20がN位置制御ボイラ(N≧5)の場合(複数の中燃焼位置を有するN位置制御ボイラの場合)にも適用できることは言うまでもない。すなわち、4位置制御ボイラと同様に、N位置制御ボイラ(N≧5)において、所定の燃焼位置を中燃焼位置として、当該中燃焼位置で燃焼する中燃焼ボイラをN位置制御ボイラ(N≧5)における負荷追従用ボイラと定義することで、第1実施形態を実施することができる。
【0073】
[第2実施形態]
次に、ボイラ20が3位置制御ボイラの場合(第2実施形態)について説明する。
ボイラ20が3位置制御ボイラの場合については、主として、ボイラ20が4位置制御ボイラの場合(第1実施形態)と異なる点を中心に説明し、4位置制御ボイラと同様な構成については詳細な説明を省略する。
第2実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様な効果が奏される。
【0074】
[負荷追従用ボイラ]
3位置制御ボイラの場合、負荷追従用ボイラの所定の燃焼位置は高燃焼位置となる。したがって、ボイラ群2が3位置制御ボイラからなる場合、負荷増減に対しては、高燃焼位置で燃焼させている負荷追従用ボイラを低燃焼位置で燃焼させるように制御することで、負荷追従する。負荷追従用ボイラの低燃焼位置(L)と高燃焼位置(H)の切替により、必要蒸気量の変動に対して追従する。
また、3位置制御ボイラの場合、負荷追従用ボイラを確保、追加、又は増加するとは、負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラを負荷追従用ボイラとして選択するとともに、負荷増加に対して当該ボイラを高燃焼位置で燃焼させることをいう。
【0075】
[余力蒸気量について]
一般に、N位置制御ボイラにおいて、燃焼中のボイラ20が、高燃焼位置で燃焼する場合の蒸気量と現在の燃焼位置における出力蒸気量との差を余力蒸気量という。
段階値制御ボイラ20が3位置制御ボイラの場合、燃焼中のボイラ20が、低燃焼ボイラとすると、余力蒸気量は、高燃焼位置で燃焼する場合の出力蒸気量と低燃焼位置における出力蒸気量との差となる。したがって、3位置制御ボイラにおいては、負荷追従用ボイラを確保、追加、又は増加すると、当該負荷追従用ボイラの余力蒸気量はゼロとなる。
【0076】
<制御部4Aの構成>
次に、3位置制御ボイラに対応する制御部4Aの詳細な構成について説明する。図2Bに示すように、制御部4Aは、負荷追従用ボイラ初期設定部41と、燃焼優先順位初期設定部42と、第1判定部43と、第2判定部44と、第3判定部45と、負荷追従用ボイラ台数制御部46Aと、燃焼優先順位変更制御部47と、余力判定部48と、最低燃焼ボイラ追加部49と、を含んで構成される。
【0077】
負荷追従用ボイラ初期設定部41、燃焼優先順位初期設定部42、第1判定部43、第2判定部44、第3判定部45、及び燃焼優先順位変更制御部47の機能は、それぞれ第1実施形態(4位置制御ボイラ)における負荷追従用ボイラ初期設定部41、燃焼優先順位初期設定部42、第1判定部43、第2判定部44、及び第3判定部45の機能と同じである。
次に、3位置ボイラに特有の余力判定部48と、最低燃焼ボイラ追加部49について説明する。
【0078】
<余力判定部48>
余力判定部48は、負荷追従用ボイラとして設定されるボイラ20を全て高燃焼位置で燃焼させると仮定した場合に、ボイラ群2のすべての燃焼中のボイラが最大燃焼位置(高燃焼位置)で燃焼する状態(以下「余力ゼロ状態」という)になるか否かを判断する。
【0079】
所定の燃焼位置を高燃焼位置とする、3位置制御ボイラの場合には、1台のボイラが負荷追従用ボイラとして初期設定されている状態で且つ他のボイラは燃焼停止状態である場合において、負荷追従用ボイラに初期設定されたボイラを負荷追従用ボイラとして確保した場合(すなわち、負荷増加に対して高燃焼位置で燃焼させた場合)に、1台が高燃焼で残りのボイラは全て燃焼停止状態となる。この場合、全ての燃焼中のボイラが最大燃焼位置で燃焼してしまうことになり、燃焼中のボイラから、これ以上燃焼量を増加させることができなくなる。
同様に、負荷追従用ボイラを仮に1台増加させた場合(すなわち、負荷追従用ボイラに設定されていないボイラの中で最も優先順位の高いボイラ20を負荷追従用ボイラとして選択するとともに、負荷増加に対して当該ボイラを所定の燃焼位置で燃焼させる場合)に、ボイラ群2のすべての燃焼中のボイラが最大燃焼位置(高燃焼位置)で燃焼する状態になると、燃焼中のボイラから、これ以上燃焼量を増加させることができなくなる。そうすると、新たな負荷増加に対して、燃焼停止ボイラを燃焼させなければ負荷に追従できないため、大幅な圧力低下に至る可能性がある。このため、このような事態を避けるために、3位置制御ボイラの場合、余力判定部48により、余力ゼロ状態になるか否かを判定する。
【0080】
なお、3位置制御ボイラであっても、ボイラ群2の燃焼待機(又は燃焼停止)状態のボイラ20が、連続パイロット燃焼状態、又は圧力保持状態のような応答性の高い状態にある場合、余力判定部48は、当該ボイラ20の余力を加算することで、余力ゼロ状態でないとすることができる。
ここで、連続パイロット燃焼状態とは、燃料としてガスを用い、パイロットバーナ及びなお、メインバーナを有して構成されるガス焚きボイラにおいて、パイロットバーナを燃焼させることでボイラ20の内部における未燃ガスの滞留を防ぎ、燃焼指示を受けた場合に速やかにメインバーナに着火可能とされた状態を意味する。
圧力保持状態とは、給蒸は行っていないがボイラ20の内部の圧力を保持し、燃焼指示を受けた場合に、速やかに給蒸を開始可能とされた状態を意味する。
【0081】
<最低燃焼ボイラ追加部49>
所定の燃焼位置を高燃焼位置とする、3位置制御ボイラの場合、余力判定部48が、負荷追従用ボイラとして設定されるボイラ20を全て高燃焼位置で燃焼させると仮定した場合に、余力ゼロ状態になると判断した場合、最低燃焼ボイラ追加部49は、ボイラ群2のうち、燃焼停止ボイラを、最低燃焼位置(低燃焼位置)で燃焼させるボイラ20として追加し、負荷増加に対して当該ボイラ20を燃焼させるようにする。
そうすることで、ボイラ群2における余力蒸気量を確保することができ、負荷増加に対して、追加したボイラ20により追従することを可能となる。
【0082】
また、負荷追従用ボイラ台数制御部46A、及び燃焼優先順位変更制御部47Aには、それぞれ、3位置制御ボイラの場合に特有の例外機能が追加される。
【0083】
<負荷追従用ボイラ台数制御部46Aと燃焼優先順位変更制御部47A>
前述したように、所定の燃焼位置を高燃焼位置とする3位置制御ボイラについては、第1判定部43により第1の状態が発生したと判定される場合、又は第2判定部44により第2の状態が発生したと判定される場合であっても、仮に負荷追従用ボイラを確保又は追加させた場合に、余力判定部48により余力ゼロ状態になると判定した場合、最低燃焼ボイラ追加部49は、最低燃焼位置(低燃焼位置)で燃焼させるボイラ20を追加する。
この場合、燃焼優先順位変更制御部47Aは、負荷追従用ボイラ台数制御部46Aにより負荷追従用ボイラとして確保又は追加するボイラの所定燃焼位置(高燃焼位置)の燃焼優先順位を最低燃焼ボイラ追加部49により追加されたボイラ20の低燃焼位置の燃焼優先順位よりも低くなるように設定する。より具体的には、負荷追従用ボイラとして確保又は追加するボイラの高燃焼位置の燃焼優先順位が、最低燃焼ボイラ追加部49により追加されたボイラ20の低燃焼位置の燃焼優先順位の次になるように設定される。
そうすることで、負荷増加に対して最低燃焼ボイラ追加部49により追加されたボイラが先ず低燃焼位置で燃焼することとなる。
そうすると、その後に負荷がさらに増加した場合、負荷追従用ボイラ台数制御部46Aにより負荷追従用ボイラとして確保又は追加するボイラの燃焼位置(低燃焼位置と高燃焼位置)の切り替えにより負荷追従することが可能となる。
【0084】
このように、中燃焼位置を所定の燃焼位置とするN位置制御ボイラ(N≧4)の場合には、第1判定部43により第1の状態が発生したと判定される場合、又は第2判定部44により第2の状態が発生したと判定される場合において、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、(確保又は追加後の負荷追従用ボイラの台数が第1閾値を超えない限りにおいて)常に負荷追従用ボイラを確保又は追加し、負荷増加に対して当該負荷追従用ボイラを所定の燃焼位置で燃焼させるように制御する。
これに対して、高燃焼位置(最高燃焼位置)を所定の燃焼位置とする3位置制御ボイラの場合には、第1判定部43により第1の状態が発生したと判定される場合、又は第2判定部44により第2の状態が発生したと判定される場合であっても、仮に負荷追従用ボイラを確保又は追加させた場合に、余力判定部48が余力ゼロ状態になると判定した場合、最低燃焼ボイラ追加部49により追加された低燃焼ボイラの低燃焼位置の燃焼優先順位が高く設定されることで、負荷増加に対して、先ず最低燃焼ボイラ追加部49により追加された低燃焼ボイラを燃焼させる。その後に負荷がさらに増加した場合、負荷追従用ボイラ台数制御部46Aにより負荷追従用ボイラとして確保又は追加するボイラの燃焼位置(低燃焼位置と高燃焼位置)の切り替えにより負荷追従するように制御される。
【0085】
次に、第2実施形態(3位置制御ボイラ)のボイラシステム1の動作について説明する。図7A図10は、ボイラ群が3位置制御ボイラからなる場合の動作を示す図である。
【0086】
<3位置制御ボイラ群の場合>
次に、図7A図10を参照して、ボイラ群2のボイラ20が3位置制御ボイラの場合のボイラシステム1の燃焼制御動作(特に低負荷状態での動作)について、従来の燃焼制御を行った場合と比較しながら、説明する。
【0087】
図7Aに示すように、各3位置制御ボイラ20の低燃焼位置Lにおける燃焼量は250kg/h、高燃焼位置Hにおける燃焼量(最大出力蒸気量)は1000kg/hとする。
図7Bに記載の仮想ボイラの燃焼優先順位は、エコ運転ポイントが低燃焼位置である場合の燃焼優先順位となっている。
このような場合、例えば、必要蒸気量が500kg/h〜1000kg/hの範囲内で変動するような低負荷状態における負荷変動に対しては、図7Cに示すように、負荷減少に対しては低燃焼ボイラを待機状態として、負荷増加に対しては待機ボイラを低燃焼ボイラにするといった、3号機、4号機の燃焼と待機(いわゆるボイラ発停)でしか追従することができない。このため、ボイラ発停が多く発生することとなり、ボイラ部品消耗等の問題が発生する恐れがある。
【0088】
これに対して、第2実施形態に係る燃焼制御を実施した場合、ボイラ20の燃焼位置の切り替え(低燃焼と高燃焼)による負荷追従にすることができ、ボイラ発停過多を抑制することができる。そうすることで、特に低負荷時のシステム効率を向上させることができる。
【0089】
[余力ゼロ状態]
図8を参照して、必要蒸気量が250kg/h〜500kg/hの範囲内で変動する場合について説明する。なお、台数制御始動時に、負荷追従用ボイラ初期設定部41は、1号機のボイラを負荷追従用ボイラ候補として設定する。
図8において、2号機は燃焼停止ボイラであって、冷却されたボイラ(冷態ボイラ)であるとする。
【0090】
図8を参照すると、余力判定部48は、1号機を負荷追従用ボイラとして高燃焼位置において燃焼させた場合に余力ゼロ状態になると判断する。
このため、最低燃焼ボイラ追加部49は、ボイラ群2のうち、燃焼停止ボイラである2号機を最低燃焼位置(低燃焼位置)で燃焼させるボイラ20として追加する。そして、燃焼優先順位変更制御部47Aは、2号機の低燃焼位置の燃焼優先順位を負荷追従用ボイラとして確保する1号機の所定燃焼位置(高燃焼位置)の燃焼優先順位よりも高くなるように設定する。
こうすることで、負荷増加に対して先ず2号機の低燃焼位置が燃焼し、1号機の高燃焼位置は、2号機の低燃焼位置の次の優先順位に設定されることから、ボイラシステム1は、余力状態を確保することができる。
【0091】
その後、例えば、必要蒸気量が500kg/h〜1000kg/hの範囲内で変動する場合、図9の(B)〜図9の(D)に示すように、1号機の低燃焼位置(L)と高燃焼位置(H)の切替により、必要蒸気量の変動に対して追従することができ、ボイラ発停を抑制することが可能となる。
【0092】
これに対して、2号機が連続パイロット燃焼状態、又は圧力保持状態のような応答性の高い状態にある場合に、必要蒸気量が250kg/h〜500kg/hの範囲内で変動する場合の動作を説明する。
図10には、2号機が連続パイロット燃焼状態、又は圧力保持状態のような応答性の高い状態にある場合を示す。この場合、2号機は、連続パイロット燃焼状態又は圧力保持状態のような応答性の高い状態にあることから、余力判定部48は、1号機を負荷追従用ボイラとして高燃焼位置において燃焼させた場合であっても余力ゼロ状態にならないと判断する。
このため、負荷追従用ボイラ台数制御部46は、負荷追従用ボイラを増加するように(すなわち、1号機を高燃焼にするように)制御する。
【0093】
この後、例えば、必要蒸気量が1000kg/hを超えた場合には、2号機を低燃焼位置において、燃焼させることで、負荷の増加に追従させることができる。
【0094】
以上のように、段階値制御ボイラが3位置制御ボイラの場合においても、第1実施形態の場合と同様に、低負荷状態での負荷変動に対して、低燃焼ボイラの発停ではなく、負荷追従用ボイラの燃焼位置を変更することにより、負荷追従することが可能となる。
【0095】
以上、第2実施形態の説明においては、段階値制御ボイラを3位置制御ボイラとして説明したが、3位置制御ボイラに限定されない。段階値制御ボイラ20がN位置制御ボイラ(N≧4)の場合(複数の中燃焼位置を有するN位置制御ボイラの場合)にも適用することができる。すなわち、N位置制御ボイラにおいて、負荷追従用ボイラの所定の燃焼位置を高燃焼位置として、当該高燃焼位置で燃焼する高燃焼ボイラをN位置制御ボイラ(N≧5)における負荷追従用ボイラと定義した場合、第2実施形態が全て適用することができる。
【0096】
以上のように、第2実施形態係るボイラシステム1は、第1実施形態の場合と同様に、特に低負荷状態での負荷変動に対して、ボイラ20の発停による負荷追従から、ボイラ20の燃焼位置の切り替え(低燃焼と高燃焼)による負荷追従にすることができ、ボイラ発停過多を抑制することができる。そうすることで、特に低負荷時のシステム効率を向上させることができる。
【0097】
[変形例1]
第1実施形態及び第2実施形態では、制御部4又は制御部4Aは、第1判定部43、第2判定部44、及び第3判定部45を備えるとしたが、制御部4は、第1判定部43を備え、第2判定部44及び第3判定部45を備えていない構成としてもよい。こうすることで、負荷追従用ボイラの増減については、第1判定部43の判定に基づいて行うこととなる。
【0098】
[変形例2]
逆に、制御部4又は制御部4Aは、第2判定部44及び第3判定部45を備え、第1判定部43を備えていない構成としてもよい。こうすることで、負荷追従用ボイラの増減については、第2判定部44及び第3判定部45の判定に基づいて行うことなる。
【0099】
[変形例3]
段階値制御ボイラが4位置制御ボイラのように中燃焼位置を備える場合においても、制御部4にかえて、第2実施形態で説明した制御部4Aに置き換えることは可能である。
すなわち、所定の燃焼位置が中燃焼位置である場合、高燃焼分の余力が存在することから、余力ゼロ状態にはならない。したがって、所定の燃焼位置が中燃焼位置である段階値制御ボイラに対しては、余力判定部48は、常に余力ゼロ状態ではないと判定する。
同様に、所定の燃焼位置が中燃焼位置である場合、高燃焼分の余力が存在することから、余力ゼロ状態にはならないことから、仮に最低燃焼ボイラ追加部49を適用した場合であっても、実質的に、4位置制御ボイラのように、所定の燃焼位置が中燃焼位置となる段階値制御ボイラの場合には適用されない。
このように、段階値制御ボイラが4位置制御ボイラのように中燃焼位置を備える場合においても、制御部4を制御部4Aに置き換えたと仮定しても、3位置制御ボイラ特有の機能が、4位置制御ボイラに対して作用することはない。
したがって、制御部4を制御部4Aに置き換えることは、形式的に可能である。
【0100】
[変形例4]
本実施形態では、ボイラ群2は6台の段階値制御ボイラ20を含むとしたが、これに限定されない。段階値制御ボイラ20の台数は、適宜設定することができる。
【0101】
[変形例5]
本実施形態では、段階値制御ボイラ20を、6台ともに4位置制御ボイラ又は6台ともに3位置制御のボイラとしたが、これに限定されない。すなわち、本発明の段階値制御ボイラ20を、3位置制御、4位置制御以外に複数の中燃焼位置を有する5位置制御以上のボイラとしてもよい。また、ボイラ群に含まれる各段階値制御ボイラ20のボイラ容量、燃焼位置の段階数、及び各燃焼位置における燃焼率等が、各段階値制御ボイラ20のそれぞれで異なることとしてもよい。
この場合、変形例3で述べたように、制御部4Aを適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
20 段階値制御ボイラ
3 台数制御装置
4 制御部
4A 制御部
41 負荷追従用ボイラ初期設定部
42 燃焼優先順位初期設定部
43 第1判定部
44 第2判定部
45 第3判定部
46 負荷追従用ボイラ台数制御部
47 燃焼優先順位変更制御部
48 余力判定部
49 最低燃焼ボイラ追加部
5 記憶部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10