特許第6597375号(P6597375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597375
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】配線構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20191021BHJP
   H01R 13/56 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01R13/46 E
   H01R13/56
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-29487(P2016-29487)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-147164(P2017-147164A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
(72)【発明者】
【氏名】小原 一仁
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−201424(JP,A)
【文献】 特開2011−216451(JP,A)
【文献】 特開平11−288774(JP,A)
【文献】 特開2004−273369(JP,A)
【文献】 実開昭64−020686(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線面を有する樹脂製の配線部材と、
前記配線面に沿って配線される部分と前記配線部材から引き出される部分とを有し、前記引き出される部分の端部にコネクタが接続される電線とを備えた配線構造であって、
前記配線部材の前記配線面における前記電線の引き出し位置の近傍に、前記電線の位置決め固定部が一体に設けられ
さらに、前記電線の外周に巻かれるバンド本体部と、前記バンド本体部が挿通される係止孔を有し、前記バンド本体部を係止する基部と、を有するバンド部材を備え、
前記位置決め固定部は、前記配線面に立設された壁の内側に前記基部を嵌め込む挿入空間を有し、かつ前記基部を嵌め込む過程で撓み変形する連結部材押さえ片を有し、
前記連結部材押さえ片は、前記挿入空間の挿入口に向けて突出し、前記基部に係止可能な抜止突起を有している配線構造。
【請求項2】
配線面を有する樹脂製の配線部材と、
前記配線面に沿って配線される部分と前記配線部材から引き出される部分とを有し、前記引き出される部分の端部にコネクタが接続される電線と、を備えた配線構造であって、
前記配線部材の前記配線面における前記電線の引き出し位置の近傍に、前記電線の位置決め固定部が一体に設けられ、
前記位置決め固定部は、前記配線面に立設された電線巻き付け部を有し、かつ前記電線巻き付け部への前記電線の差し込み口と、前記差し込み口に向けて鍔部を突出させた撓み変形可能な電線押さえ片と、を有している配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の配線構造は、機器に取り付けられる樹脂製のベース体を備えている。ベース体の上面には、樋部が設けられている。樋部は、電線の幹線部分を支持する底面部と、底面部の両側から立ち上がり、幹線部分の両側を覆う一対の側面部とを有している。側面部には、引出部が開口して設けられている。電線は幹線部分から直角に屈曲して引出部から引き出される分岐部分を有し、分岐部分の端部にはコネクタが接続されている。また、樋部には、カバー部が被せ付けられる。
電線の幹線部分が樋部内に上方から挿入され、次いで、樋部の上面開口がカバー部で閉塞されることにより、幹線部分が樋部内に収容された状態に保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−15849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の配線構造によれば、電線の幹線部分がベース体から離脱するのをカバー部で阻止することができた。しかし、幹線部分がベース体の樋部内を長さ方向に動き得るため、引出部から引き出される電線の分岐部分を所定の出代に管理するのが難しいという事情があった。その結果、コネクタが相手コネクタとの嵌合を開始するのに適正な位置に配置されず、コネクタの嵌合作業を円滑に進めることができないおそれがあった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の引き出し部分の出代寸法を一定に管理することが可能な配線構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配線構造は、配線面を有する樹脂製の配線部材と、前記配線面に沿って配線される部分と前記配線部材から引き出される部分とを有し、前記引き出される部分の端部にコネクタが接続される電線とを備えた配線構造であって、前記配線部材の前記配線面における前記電線の引き出し位置の直前に、前記電線の位置決め固定部が一体に設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
配線部材の配線面における電線の引き出し位置の直前に、電線の位置決め固定部が一体に設けられているため、電線のうち配線面に沿って配線される部分が配線面に対して位置ずれするのを防止することができる。これにより、電線が引き出される部分の出代寸法を一定に管理することができる。なお、位置決め固定部は、電線が強く引っ張られるなどしても、配線面に対する電線の相対位置が位置ずれしない程度の固定力を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1の配線構造における配線部材の斜視図である。
図2】バンド部材を取り付けた各電線と位置決め固定部との分離斜視図である。
図3】各電線がバンド部材を介して位置決め固定部に位置決め固定された状態を示す斜視図である。
図4図3の平面図である。
図5図4のA−A線断面図である。
図6図4のB−B線断面図である。
図7】位置決め固定部の平面図である。
図8】位置決め固定部の正面図である。
図9】配線路に沿って切断した位置決め固定部の断面図である。
図10】本発明の実施例2の配線構造において、電線が位置決め固定部に位置決め固定された状態を示す斜視図である。
図11図10のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態を以下に示す。
前記電線の外周に固定される連結部材を備え、前記位置決め固定部が、前記配線面に立設された壁の内側に前記連結部材の挿入空間を有しているとよい。これによれば、電線が連結部材を介して位置決め固定部に容易に組み付けられる。
【0010】
前記位置決め固定部が、前記挿入空間の挿入口に向けて抜け止め突起を突出させた撓み変形可能な連結部材押さえ片を有しているとよい。例えば、配線構造が高温環境下に置かれる場合には、配線部材の樹脂が熱膨張して、位置決め固定部に寸法変化を来たし、位置決め固定部が連結部材を固定するのに十分な固定力を減じるおそれがある。その点、上記構成によれば、仮に、位置決め固定部の固定力が減少しても、連結部材押さえ片の撓み変形後、抜け止め突起が連結部材の端面に係止可能に配置されることにより、挿入空間から連結部材が抜け出るのを防止することができる。
【0011】
前記連結部材が、前記電線の外周に巻かれるバンド部材からなるとよい。これによれば、電線の外周に連結部材を容易に取り付けることができる。また、バンド部材が複数の電線を束ねる結束バンドとして利用可能となる。
【0012】
前記バンド部材が、係止孔を有する基部と、前記基部から延出し、前記係止孔に挿通されて係止されるバンド本体部とを有し、前記基部が前記挿入空間に嵌め込み可能な形態になっている。バンド部材の基部を利用することにより、連結部材(バンド部材)を位置決め固定部に容易に組み付けることができる。
【0013】
前記位置決め固定部が、前記配線面に立設された電線巻き付け部を有しているとよい。これによれば、電線が電線巻き付け部に巻き付けられてダイレクトに位置決め固定されるため、連結部材が不要となり、その分、部品点数を減らすことができる。
【0014】
前記位置決め固定部が、前記電線巻き付け部への前記電線の差し込み口と、前記差し込み口に向けて鍔部を突出させた撓み変形可能な電線押さえ片とを有しているとよい。電線が差し込み口から電線巻き付け部に巻き付けられた状態で、鍔部が電線の外周に係止可能に配置されることにより、差し込み口から電線が抜け出るのを防止することができる。
【0015】
<実施例1>
以下、実施例1を図1図9によって説明する。本実施例1の配線構造は、自動車のオートマチックトランスミッションの油圧制御装置に備わる構造を例示している。配線構造は、油圧制御装置のボディ(図示せず)に取り付けられる配線部材10と、複数の電線60と、各電線60を配線部材10に固定するための連結部材としてのバンド部材80とを備えている。
【0016】
図1に示すように、配線部材10は、合成樹脂製であって、全体として板状に形成されている。配線部材10の適宜箇所には、ボディへの固定用ボルト(図示せず)を挿通可能なボルト挿通孔11が貫設され、ボルト挿通孔11の周囲に、包囲壁12が立設されている。配線部材10の上面には、電線60の配線方向に平坦な平面状の配線面13が設けられている。
【0017】
配線部材10には、周辺の間隔をあけた複数箇所に、電線60の位置決め固定部14が一体に設けられている。位置決め固定部14は、配線部材10の配線面13にほぼ直角に立設された壁によって構成されている。
【0018】
図2及び図7に示すように、壁は、配線部材10の端縁に沿った端壁部15と、端壁部15の壁面とほぼ直交する方向に沿った一対の側壁部16、17と、側壁部16、17の壁面とほぼ直交する方向に沿った奥壁部18とを有している。奥壁部18は、両側壁部16、17のうちの一方の側壁部(以下、第1側壁部16と称する)に連設され、端壁部15と対向して配置されている。なお、側壁部16、17には、包囲壁12の一部に一体化して厚肉に形成されるものと、独立した形態で薄肉に形成されるものとが含まれている。
【0019】
配線部材10の配線面13に立設された、第1側壁部16、端壁部15及び奥壁部18によって、位置決め凹部19が構成される。位置決め凹部19は、上方に開放されるとともに、他方の側壁部(以下、第2側壁部17と称する)側となる側方に開放(以下、側方開放部20と称する)される挿入空間21を有している。図2及び図3に示すように、挿入空間21には、バンド部材80の後述する基部81が上方から挿入される。位置決め固定部14は、位置決め凹部19と第2側壁部17との間に、電線60の配線路22を有している。配線路22は、挿入空間21の側方開放部20と連通している。図6に示すように、配線路22の配線面13は、位置決め凹部19(挿入空間21)の底面から一段落ちて配置されている。
【0020】
また、図8及び図9に示すように、端壁部15は、位置決め凹部19と隣り合う位置に、引き出し口23を有している。引き出し口23は、端壁部15を厚み方向に貫通して配線路22と連通し、且つ端壁部15の上端に開口している。
【0021】
位置決め凹部19の端壁部15には、スリット24が切り欠くようにして設けられている。スリット24は、上下方向に延出して端壁部15の上端に開口している。端壁部15は、スリット24と引き出し口23との間に、連結部材押さえ片25を有している。連結部材押さえ片25は、端壁部15の壁面を構成して上下方向に延出する形態をなし、下端部を支点として撓み変形可能とされている。連結部材押さえ片25の上端には、挿入空間21に向けて突出する爪状の抜止突起26が設けられている。
【0022】
図7に示すように、第2側壁部17の内面(配線路22に臨む面)には、挿入空間21の側方開放部20と対向する位置に、バンド挿入部27が凹設されている。バンド挿入部27は、上下方向に延出して第2側壁部17の上端に開口している。バンド挿入部27には、バンド部材80の後述するバンド本体部82が上方から挿入される。
【0023】
電線60は、芯線の周囲を絶縁樹脂で包囲した被覆電線として構成される。電線60の両端部には、端子金具(図示せず)が電気的及び機械的に接続されている。端子金具は、コネクタ70の内部に挿入されて保持される。このため、電線60の両端部は端子金具を介してコネクタ70に接続されることになる。コネクタ70は、配線部材10がボディに固定された後、相手コネクタ(図示せず)に嵌合される。本実施例の場合、相手コネクタは、ボディ側に設置された油圧制御のためのソレノイド(図示せず)に設けられている。
【0024】
図3及び図4に示すように、電線60は、配線部材10の配線面13に沿って配線される配線部分63と、配線面13の引き出し位置(引き出し口23と対応する位置)から外方へ引き出される引き出し部分64とで構成される。図1に示すように、コネクタ70は、引き出し部分64の端部に接続されている。
【0025】
図2に示すように、バンド部材80は、複数の電線60を結束する結束バンド(所謂タイバンド)として構成される。バンド部材80は、合成樹脂製であって、基部81と、基部81から延出するバンド本体部82とを有している。
【0026】
基部81は、略角ブロック状をなし、位置決め凹部19の挿入空間21に適合する形状で構成されている(図3図6を参照)。また、基部81は、バンド本体部82を挿通可能な係止孔(図示せず)を有し、係止孔の孔面には、係止突起(図示せず)が形成されている。
【0027】
バンド本体部82は、屈曲可能な帯状をなし、各電線60の外周を周回可能な長さを有している。バンド本体部82の片面には、長さ方向に連続する多数の突条部(図示せず)が設けられている。バンド本体部82が各電線60の外周に巻かれ、バンド本体部82の先端部が係止孔に挿通されて引っ張られ、その状態で、突条部が係止突起に係止されることにより、バンド部材80が各電線60の外周に所定の締結力で巻き付け固定される。バンド部材80の巻き付け後、基部81から突出するバンド本体部82の余長部分は切断される。
【0028】
ここで、バンド部材80は、電線60の配線部分63のうち引き出し部分64と隣接(近接)する部位に、巻き付けられる。このため、電線60に対するバンド部材80の巻き付け位置は、電線60の配線部分63と引き出し部分64との境界位置の近傍となり、配線部分63が配線面13に配線された状態では、配線面13の引き出し位置の直前(引き出し口23に臨む手前側の位置)となる。
【0029】
次に、本実施例1の配線構造の組み付け方法を説明する。
まず、電線60の両端部が端子金具を介してコネクタ70に接続される。ここでは、1つのコネクタ70に3本の電線60が接続される。次いで、バンド部材80が各電線60の巻き付け位置に巻き付け固定される。すると、バンド部材80の基部81が各電線60の側方に突出して配置される(図2を参照)。
【0030】
続いて、上記バンド部材80を取り付けた各電線60が配線部材10の配線面13に向けて降ろされる(図2及び図3を参照)。各電線60が配線面13に向かう過程において、バンド部材80の基部81は、位置決め凹部19の挿入空間21に上方から挿入され、抜止突起26と干渉して、連結部材押さえ片25を外側(挿入空間21から退避する側)に撓み変形させる。その後、各電線60が配線面13に正規に配線されると、バンド部材80の基部81は、位置決め凹部19の挿入空間21に全体が嵌り込み、端壁部15と奥壁部18との間に挟み付けられた状態になる(図4及び図5を参照)。また、基部81が挿入空間21に嵌り込むのと同時に、連結部材押さえ片25が弾性的に復帰し、抜止突起26が基部81の上面に係止可能に配置される。これにより、基部81が挿入空間21から上方に抜け出るのが阻止される。
【0031】
さらに、基部81が挿入空間21に嵌り込むと、バンド本体部82の径方向両側の部分が挿入空間21の側方開放部20とバンド挿入部27とにそれぞれ挿入される。バンド部材80の基部81が挿入空間21に嵌り込んで位置決め凹部19の壁間に挟み付けられることにより、バンド部材80を取り付けた各電線60が位置決め固定部14に対して位置決めされた状態に固定される。こうして電線60が位置決め固定部14に固定されたときに、電線60の配線部分63は所定の配線路22に沿って配線され、電線60の引き出し部分64は引き出し口23から外部へ所定の出代をもって引き出される。本実施例1の場合、電線60がバンド部材80を介して位置決め固定部14に固定されているため、電線60の引き出し口23からの出代を一定に維持することが可能となっている。
【0032】
次いで、各電線60を固定した配線部材10は、油圧制御装置のボディに固定用ボルトを介して固定される。このとき、各電線60の引き出し部分64が引き出し口23から所定の出代をもって引き出されているため、各電線60の引き出し部分64の端部に接続されたコネクタ70は、対応する相手コネクタと嵌合可能な位置にほぼ正対して配置される。したがって、その後、コネクタ70と相手コネクタとの嵌合作業を円滑且つ迅速に行うことができる。
【0033】
ところで、配線部材10が油圧制御装置に組み込まれて高温環境下に晒されることにより、配線部材10の樹脂が熱膨張して寸法変化を来たし、バンド部材80に対する位置決め固定部14の固定力が低下する懸念がある。しかし、本実施例1の場合、仮に、バンド部材80に対する位置決め固定部14の固定力が低下しても、連結部材押さえ片25の抜止突起26が基部81の上面に当接することにより、バンド部材80が位置決め固定部14から抜け出るのを防止することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施例1によれば、配線部材10の配線面13における電線60の引き出し位置の直前に、電線60の位置決め固定部14が一体に設けられているため、電線60の配線部分63が配線部材10の配線面13に対して位置ずれするのを防止することができる。その結果、電線60の引き出し部分64の出代寸法を一定に管理することができる。
【0035】
また、連結部材としてのバンド部材80が電線60の外周に固定され、バンド部材80の基部81が位置決め凹部19の挿入空間21に上方から挿入されることにより、各電線60がバンド部材80を介して位置決め固定部14に容易に組み付けられる。しかも、各電線60の外周にバンド部材80を巻き付けて容易に固定することができるのに加え、バンド部材80として既存のタイバンドを利用することができる。バンド部材80がタイバンドのように複数の電線60を束ねる締結部材であれば、各電線60を結束する機能と配線面13に位置決め固定する機能とがバンド部材80に集約されるため、両機能(各電線60の結束機能と位置決め固定機能)が別々の部材で実現されるよりも、部品点数を削減することができる。
【0036】
さらに、位置決め固定部14が挿入空間21の挿入口(上端開口)に向けて抜止突起26を突出させた撓み変形可能な連結部材押さえ片25を有しているため、配線部材10が高温環境下に晒されても、基部81が挿入空間21から抜け出るのを防止することができる。
【0037】
なお、本実施例1と異なり、仮に、連結部材押さえ片が1つの位置決め固定部14に対をなして設けられている場合には、構造が複雑になるのに加え、両連結部材押さえ片がいずれも撓み変形して基部81が傾く懸念がある。その点、本実施例1の場合、連結部材押さえ片25が1つの位置決め固定部14に1つだけ設けられているため、基部81が連結部材押さえ片25と奥壁部18との間に安定して保持され、基部81が傾いたりする事態をなくすことができる。
【0038】
<実施例2>
図10及び図11は、本発明の実施例2を示す。実施例2の配線構造は、連結部材を介さずに、電線60が配線部材10Aの位置決め固定部14Aに直接位置決め固定されている。位置決め固定部14Aの構造は、実施例1と異なり、位置決め凹部19を有していない。連結部材を備えていない点及び位置決め固定部14Aの構造を除けば、実施例2は実施例1と同様である。
【0039】
配線部材10Aは平坦な配線面13Aを有し、配線面13Aには一対の側壁部16A、17Aが立設されている。両側壁部16A、17Aは、互いに平行に対向して配置されている。配線部材10Aの端縁は、両側壁部16A、17A間に、電線60の引き出し口23Aを有している。
【0040】
位置決め固定部14Aは、両側壁部16A、17A間で、且つ引き出し口23Aの近傍(直前)に、配線面13Aに立設された電線巻き付け部30を有している。電線巻き付け部30は、全体として円筒状に形成されている。電線巻き付け部30には、中空の軸芯部分を中心とした平面視十字の割り溝32が全高にわたって設けられている。このため、電線巻き付け部30は、割り溝32を介して周方向に4分割され、独立した4つの電線押さえ片33がそれぞれ径方向に撓み変形可能となっている。図11に示すように、電線巻き付け部30の上端部と側壁部16A、17Aとの間には、電線60の差し込み口34が開口している。
【0041】
また、電線巻き付け部30の上端部には、鍔部31が径方向に張り出して設けられている。鍔部31は、電線巻き付け部30のそれぞれの電線押さえ片33に、平面視弧状、詳細には平面視4半円弧状に形成されている。また、鍔部31は、差し込み口34の開口幅を狭めるように、差し込み口34に向けて突出している。このため、差し込み口34は、電線巻き付け部30が自然状態にあるときに、鍔部31と側壁部16A、17Aとの間に、電線60の外径よりも小さい開口幅をもって構成される。なお、鍔部31と側壁部16A、17Aは、下向きに傾斜する斜面部分によって差し込み口34を区画している。
【0042】
両側壁部16A、17Aの内面には、電線巻き付け部30の本体部35(鍔部31を除く部分)と対向する位置に、周囲より厚肉の肉盛り部36が設けられている。電線巻き付け部30の本体部35と肉盛り部36とは、電線60の外径にほぼ等しい距離で離間している。
【0043】
組み付けに際し、電線60が差し込み口34を通して配線部材10Aの配線面13Aに向けて降ろされる。電線60が差し込み口34を通過する際に、側壁部16A、17Aと鍔部31とに電線60の外周が摺動し、電線押さえ片33が割り溝32を介して径方向内側に撓み変形させられる。これにより、差し込み口34の開口幅が広がり、電線60の通過が許容される。
【0044】
電線60は、差し込み口34への差し込みとともにループ状に回曲され、差し込み口34を通過した後、電線巻き付け部30の本体部35の外周に一周巻き付けられる。このとき、電線60の巻き付け位置は、引き出し口23Aから引き出される引き出し部分64Aの出代を考慮し、コネクタ70が接続される端部との間に規定される。
【0045】
電線60の配線部分63Aは、配線面13Aに配線された状態で、電線巻き付け部30の本体部35と肉盛り部36との間に挟み付けられる(図11を参照)。このとき、電線60は、巻き付けに伴う弾性復元力によって肉盛り部36の内面に強く押し当てられ、位置決め固定部14Aに位置決め固定された状態になる。また、電線押さえ片33の弾性復帰に伴い、差し込み口34の開口幅が狭められ、鍔部31が電線60の上方に係止可能に配置される。これにより、差し込み口34から電線60が抜け出るのを防止することができ、電線巻き付け部30に電線60が巻き付けられた状態を良好に維持することができる。
【0046】
以上のように、実施例2によれば、電線60が電線巻き付け部30に巻き付けられることで位置決め固定部14Aにダイレクトに位置決め固定されるため、連結部材が不要となり、その分、部品点数を減らすことができる。
【0047】
<他の実施例>
以下、他の実施例を簡単に説明する。
(1)実施例1から連結部材押さえ片を省略してもよい。
(2)実施例2から鍔部及び割り溝を省略してもよい。
(3)実施例1からバンド挿入部を省略してもよい。
(4)実施例1において、連結部材は、電線の外周に固定されるものであれば、バンド部材に限らず、例えば、電線の外周に固定されるクリップなどの固定部材であってもよく、あるいは、電線の外周にテープを幾重にも巻き付けてなるものであってもよい。
(5)実施例2において、電線は、電線巻き付け部に2周以上にわたって巻き付けられてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10、10A…配線部材
13、13A…配線面
14、14A…位置決め固定部
19…位置決め凹部
21…挿入空間
25…連結部材押さえ片
26…抜止突起
30…電線巻き付け部
31…鍔部
33…電線押さえ片
34…差し込み口
60…電線
63、63A…配線部分
64、64A…引き出し部分
70…コネクタ
80…バンド部材(連結部材)
81…基部
82…バンド本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11