(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る生体情報測定装置1を被験者100の手首に装着した状態を示す図である。また、
図2は生体情報測定装置1の正面図であり、
図3は生体情報測定装置1の背面図である。生体情報測定装置1は、被験者100(生体)の生体情報を非侵襲に測定する測定機器である。生体情報測定装置1は、例えば
図1に示すように、被験者100の手首に装着される腕時計型のウェアラブル機器である。例えば、生体情報測定装置1は、光学式の血圧計であり、生体情報として、脈波伝播速度の他に血圧や動脈硬化度を測定することができる。
【0018】
図2および
図3に示すように、生体情報測定装置1は、本体部11と、ベルト12とを備える。ベルト12は、被験者100の手首に巻回される。
図2に示すように、本体部11の正面(被験者100の手首の表皮と接触する面とは反対側の面)には、表示部60が設けられている。表示部60には、例えば
図2に示すように、生体情報測定装置1によって測定された被験者100の生体情報(血圧,脈波伝播速度,動脈硬化度等)が表示される。本体部11の側面には、2つの操作ボタン13,14が設けられている。被験者100は、操作ボタン13,14を操作することで、例えば、生体情報の測定開始を指示したり、生体情報の測定に関する各種の設定等を行うことができる。また、
図3に示すように、本体部11の背面(被験者100の手首の表皮と接触する面)には、照射部の一例であるレーザー発光部510と、検出部の一例であるレーザー受光部520とが設けられている。
【0019】
図4は、生体情報測定装置1の内部構成を示すブロック図である。生体情報測定装置1は、例えば、操作ボタン13,14と、計時部20と、記憶部30と、制御部40と、光学センサー50と、表示部60と、通信部70とを備える。操作ボタン13,14は、操作信号を制御部40に出力する。計時部20は、発振回路や分周回路を備え、例えば、年,月,日,時,分,秒からなる時刻を計時する。記憶部30は、例えば不揮発性の半導体メモリーを備え、制御部40が実行するプログラムや、制御部40が使用する各種のデータ等を記憶する。
【0020】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理装置であり、生体情報測定装置1の全体を制御する。制御部40は、記憶部30に記憶されたプログラムを実行することで、生体情報の測定等に関する各種の処理を実行する。制御部40は、照射制御部410と、演算部420とを備える。照射制御部410は、レーザー発光部510によるレーザー光の照射を制御する。演算部420は、レーザー受光部520から出力される受光信号S1を演算処理することで、被験者100の生体情報を求める。演算部420が求める生体情報には、例えば、脈波伝播速度,血圧,動脈硬化度が含まれる。
【0021】
なお、制御部40の機能を複数の集積回路に分散した構成や、制御部40の一部または全部の機能を専用の電子回路で実現した構成も採用され得る。また、
図4では制御部40と記憶部30とを別体の要素として図示したが、記憶部30を内包する制御部40をASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により実現することも可能である。
【0022】
光学センサー50は、レーザー発光部510と、レーザー受光部520とを備える。レーザー発光部510は、例えば半導体レーザーやレーザー駆動回路等を備え、照射制御部410の制御の下、測定波の一例であるレーザー光を被験者100の手首に照射する。レーザー発光部510が照射するレーザー光は、共振器による共振を経て射出される狭帯域でコヒーレントな直進光である。例えば、レーザー発光部510が照射するレーザー光の波長は850nmである。
【0023】
レーザー受光部520は、例えば、フォトダイオード等の受光素子,増幅器,A/D変換器等を備える。受光素子は、レーザー発光部510が照射するレーザー光の波長に対応する狭帯域のバンドパス特性を有し、該当する波長域の光のみを選択的に透過させ、それ以外の波長域の光(例えば太陽光や白色光等)をブロックする。レーザー受光部520は、被験者100の生体内を通過してきたレーザー光を受光素子によって受光し、レーザー光の受光強度および周波数の時間変化を示す受光信号S1を生成して演算部420に出力する。
【0024】
表示部60は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイである。表示部60には、演算部420から出力された被験者100の生体情報等が表示される(
図2)。通信部70は、例えばパーソナルコンピューターやスマートフォン等の外部機器90との通信を制御する。例えば、通信部70は、Bluetooth(登録商標),Wi-Fi,赤外線通信等の無線通信により外部機器90と通信を行う。また、通信部70は、通信ケーブルを介した有線通信により外部機器90と通信を行うことも可能である。
【0025】
図5は、LDF法による生体情報の測定原理を説明するための模式図である。本体部11の背面(レーザー発光部510の発光面およびレーザー受光部520の受光面)は、被験者100の手首の表皮に密着している。レーザー発光部510が照射したレーザー光は、表皮を透過して被験者100の手首の内部(生体内)に入射する。生体内に入射したレーザー光は、散乱・反射を繰り返しながら生体組織内に広がっていき、そのうちの一部がレーザー受光部520に到達し、受光素子によって受光される。
【0026】
レーザー発光部510が照射したレーザー光の周波数をfとしたとき、表皮,真皮,皮下組織等の静止組織によって散乱されたレーザー光は、周波数が変化しない。これに対し、血管110内を流れる赤血球等の血液細胞によって散乱されたレーザー光は、血液細胞の流速に応じた微少量の波長シフトΔfを受けることに加え、流れている血液細胞の量に応じて光の強さが変化する。したがって、静止組織による周波数fの散乱光(レーザー光)と、血液細胞によりドップラーシフトが生じた周波数f+Δfの散乱光(レーザー光)とが干渉する。
【0027】
このためレーザー受光部520が生成する受光信号S1は、差周波Δfの光ビート(うなり)が生じ、DC信号に光ビート周波数Δfの強度変調信号が重畳されたような波形になる。このように受光信号S1は、光強度の揺らぎの速さ(周波数)と大きさ(振幅)が血液細胞の流速とその量に応じた波形になるので、受光信号S1を演算処理することで血流量や血液量等を求めることができる。また、以上の説明から明らかとなるように、受光信号S1は、被験者100の生体内を通過してきたレーザー光の受光強度および周波数の時間変化を示す光ビート信号である。
【0028】
また、レーザー受光部520に到達したレーザー光の伝播経路について、分布頻度の高い部分を模式的に示すと、
図5に一点鎖線で示すバナナ形状の部分(2つの弧で挟まれた部分)になる。この通過領域OPの深さ方向の幅Wは、中央付近が最も広くなる。また、測定深度D(レーザー発光部510が照射したレーザー光が到達可能な表皮からの深さ)は、レーザー発光部510とレーザー受光部520との離間距離Lが小さいほど浅く、大きいほど深い。したがって、測定対象となる血管110(例えば動脈)が通過領域OPのうち深さ方向の幅Wが最も広くなる部分に収まるように、レーザー発光部510とレーザー受光部520との離間距離Lや本体部11における両者の位置が決定される。
【0029】
なお、
図5に示した通過領域OPは、あくまで便宜上のイメージに過ぎない。レーザー受光部520に到達したレーザー光の実際の伝播経路は、同図に示した通過領域OP内に限らず、様々な経路をとり得る。また、同図には、便宜上、1本の血管110しか図示していないが、実際には、レーザー受光部520に到達したレーザー光の伝播経路上に存在する全ての血管が測定対象になる。したがって、受光信号S1を演算処理することで求められる血流量や血液量は、レーザー受光部520が受光したレーザー光が到達している範囲内の生体組織における組織血流量や組織血液量になる。
【0030】
図6は、第1実施形態に係る生体情報測定処理のフローチャートである。同図に示す処理は、例えば5分毎等、所定の時間が経過する都度、制御部40によって実行される。なお、同図に示す処理は、例えば、被験者100が操作ボタン13,14を操作して測定の開始を指示した場合や、計時部20による計時時刻が予め設定された測定開始時刻になった場合等に実行される態様であってもよい。
【0031】
図6の処理を開始すると、まず、制御部40内の照射制御部410が、レーザー発光部510を制御してレーザー光の照射を開始する(ステップS1)。これにより被験者100の手首にレーザー光が照射され、レーザー受光部520は、被験者100の生体内を通過してきたレーザー光を受光し、受光したレーザー光に応じた受光信号S1を出力する。次に、制御部40内の演算部420が、レーザー受光部520から出力される受光信号S1を取得する(ステップS2)。また、演算部420は、取得した受光信号S1(光ビート信号)に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)による周波数解析処理を行って、パワースペクトルP(f)を算出する(ステップS3)。
【0032】
次に、演算部420は、算出したパワースペクトルP(f)等を用いて[式1]から血流量Qの時間変化を求める(ステップS4)。
【数1】
ここで、K
1は比例定数、f
1,f
2は遮断周波数、fはレーザー発光部510が照射したレーザー光の周波数、<I
2>は受光信号S1の全パワーである。
【0033】
すなわち、ステップS4において、演算部420は、算出したパワースペクトルP(f)に対して周波数fの重み付けを行い(f・P(f))、遮断周波数f
1〜f
2の範囲で積分を行って1次モーメントを求めた後、この1次モーメントに比例定数K
1をかけ、レーザー光の受光強度の違いに依存しないよう受光信号S1の全パワー<I
2>で規格化して血流量Qを算出する。また、演算部420は、例えば20ミリ秒等、所定の周期で血流量Qを算出する。
【0034】
また、演算部420は、ステップS4の処理と並行して、ステップS3で算出したパワースペクトルP(f)等を用いて[式2]から血液量MASSの時間変化を求める(ステップS5)。
【数2】
ここで、K
2は比例定数である。
【0035】
すなわち、ステップS5において、演算部420は、算出したパワースペクトルP(f)に対して遮断周波数f
1〜f
2の範囲で積分を行って1次モーメントを求めた後、この1次モーメントに比例定数K
2をかけ、レーザー光の受光強度の違いに依存しないよう受光信号S1の全パワー<I
2>で規格化して血液量MASSを算出する。また、演算部420は、例えば20ミリ秒等、所定の周期で血液量MASSを算出する。このようにして求めた血液量MASSの時間変化は、血管断面積Aの時間変化に相当する。
【0036】
なお、血流量Qや血管断面積A(血液量MASS)の算出周期は、脈波の一拍に対して十分に小さい周期であれば、任意の時間長に定めることができる。また、演算部420は、例えば1kHz毎に血流量Qや血管断面積Aを算出した後、これを例えば50Hz程度の周期で平滑化してもよい。
【0037】
次に、演算部420は、ステップS4で求めた血流量Qの時間変化と、ステップS5で求めた血管断面積Aの時間変化とを用いて、[式3]から脈波伝播速度PWVを求める(ステップS6)。
【数3】
【0038】
また、演算部420は、ステップS6で求めた脈波伝播速度PWVに加え、ステップS5で求めた血管断面積Aの時間変化(A(t))等を用いて、[式4]から血圧を求める(ステップS7)。なお、ステップS7では、血圧として、P(t)で表される血圧の時間変化を求めてもよいし、最大血圧(収縮期血圧)と最小血圧(拡張期血圧)とを求めてもよい。
【数4】
ここで、pは平均動脈圧、ρは血液の質量密度(固定値)、aは血管断面積の時間平均である。
【0039】
次に、演算部420は、ステップS6で求めた脈波伝播速度PWVを用いて動脈硬化度を決定する(ステップS8)。例えば、動脈硬化度は、
図2に示したように“Good”,“Normal”,“Bad”といった3段階の指標で表すことができる。動脈は、脈波伝播速度PWVが速いほど硬く、脈波伝播速度PWVが遅いほど柔らかい。したがって、例えば、“Good”,“Normal”,“Bad”の各々に対し、脈波伝播速度PWVの数値範囲を定めたデータテーブルを記憶部30に記憶しておき、このデータテーブルを参照して、ステップS6で求めた脈波伝播速度PWVの値から動脈硬化度を決定する。なお、演算部420は、脈波伝播速度PWVの値の他に、被験者100の性別や年齢等を考慮して動脈硬化度を決定してもよい。
【0040】
この後、制御部40は、ステップS6で求めた脈波伝播速度PWVと、ステップS7で求めた血圧(例えば最大血圧および最小血圧)と、ステップS8で決定した動脈硬化度とを、表示を指示する指令と共に表示部60に出力し(ステップS9)、生体情報測定処理を終える。これにより、例えば
図2に示したように、脈波伝播速度PWVの他に血圧や動脈硬化度が表示部60に表示される。
【0041】
以上説明したように本実施形態によれば、生体情報測定装置1は、血流量Qの時間変化および血管断面積Aの時間変化から脈波伝搬速度PWVを求めるので、例えば指と手首等、複数の測定部位に光学センサー50を装着する必要がなく、測定部位が1箇所でよいことに加え、測定に用いる光学センサー50(レーザー発光部510およびレーザー受光部520)も1つでよい。したがって、生体情報測定装置1を小型化することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、生体情報測定装置1は、レーザー光を用いたLDF法による測定によって、脈波伝搬速度PWVを求めるために必要となる血流量Qの時間変化と血管断面積Aの時間変化の両方を求めることができる。また、生体情報測定装置1は、被験者100の生体情報として、脈波伝搬速度PWVの他に血圧や動脈硬化度を求めることができ、これらの生体情報を非侵襲かつ非加圧で長時間にわたって連続して測定することが可能である。
【0043】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る生体情報測定装置2の内部構成を示すブロック図である。本実施形態において、第1実施形態と共通する要素には、第1実施形態で使用した符号を付して説明を適宜省略する。第2実施形態に係る生体情報測定装置2は、脈波伝播速度PWVの算出に用いる“血管断面積Aの時間変化”の求め方が、第1実施形態で説明した手法とは異なる。また、第2実施形態に係る生体情報測定装置2は、被験者100の生体情報として容積脈波を測定することができる。以上の2点を除く他の部分については第1実施形態に係る生体情報測定装置1と同じであり、
図7に示す生体情報測定装置2において、
図4に示した生体情報測定装置1と異なるのは、演算部422のみである。
【0044】
したがって、本実施形態に係る生体情報測定装置2においても、レーザー発光部510は、被験者100の手首にレーザー光を照射する。また、レーザー受光部520は、被験者100の生体内を通過してきたレーザー光を受光し、光ビート信号である受光信号S1を生成して演算部422に出力する。
【0045】
図8は、第2実施形態に係る生体情報測定処理のフローチャートである。同図に示す処理が制御部40によって実行される契機は、第1実施形態で説明した
図6の処理と同じである。
図8の処理を開始すると、まず、制御部40内の照射制御部410が、レーザー発光部510を制御してレーザー光の照射を開始する(ステップS21)。また、制御部40内の演算部422が、レーザー受光部520から出力される受光信号S1を取得する(ステップS22)。
【0046】
次に、演算部422は、取得した受光信号S1(光ビート信号)に対して高速フーリエ変換による周波数解析処理を行ってパワースペクトルP(f)を算出する(ステップS23)。また、演算部422は、算出したパワースペクトルP(f)等を用いて第1実施形態で説明した[式1]から血流量Qの時間変化を求める(ステップS24)。以上のステップS21〜S24に示す処理は、第1実施形態で説明したステップS1〜S4の処理と同じである。
【0047】
また、演算部422は、ステップS23,S24の処理と並行して、容積脈波を検出する処理(ステップS25)と、血管断面積Aの時間変化を求める処理(ステップS26)とを行う。まず、容積脈波を検出する処理について説明すると、第1実施形態でも述べたように、血管110内を流れる赤血球等の血液細胞によって散乱されたレーザー光は、血液細胞の流速に応じたドップラーシフトを受けるだけでなく、流れている血液細胞の量に応じて光の強さが変化する。
【0048】
つまり、生体内に照射されたレーザー光は、その一部が血管110内を流れる血液細胞(主にヘモグロビン)によって吸収される。また、血管110は、心拍と同等の周期で膨張および収縮を繰り返す。したがって、膨張時と収縮時とで血管110内の血液細胞の量が異なるので、レーザー受光部520が受光するレーザー光の強度は、血管110の脈動に応じて周期的に変動し、この変動成分が受光信号S1にも含まれる。
【0049】
また、ステップS23でパワースペクトルP(f)を算出する場合、演算部422は、例えば20ミリ秒等、所定の時間長を有する複数の区間に受光信号S1を分割し、分割した区間毎に高速フーリエ変換を行う。演算部422は、例えば、高速フーリエ変換を行うために分割した区間毎に、この区間内における受光信号S1の全パワー<I
2>を[式5]から算出する。これにより、例えば20ミリ秒毎に受光信号S1の全パワー<I
2>が算出されるので、受光信号S1の全パワー<I
2>の時間変化が求められる(ステップS25)。
【数5】
ここで、Iは受光素子が受光したレーザー光の強度(受光強度)である。
【0050】
このステップS25で求めた受光信号S1の全パワー<I
2>の時間変化は、被験者100の手首の容積脈波に相当する。例えば、各区間毎に算出した受光信号S1の全パワー<I
2>の値を順次プロットしていくと、
図9に示す容積脈波PG(t)の波形が生成される。なお、同図に示す血流波形Q(t)は、ステップS24で求めた血流量Qの時間変化をグラフ化したものである。この
図9に示す容積脈波PG(t)と血流波形Q(t)は、おおむね脈波の一拍分に相当する。
【0051】
次に、血管断面積Aの時間変化を求める処理について説明すると、演算部422は、例えば、高速フーリエ変換を行うために分割した区間毎に、ランベルト・ベールの法則を利用して[式6]から血管径dを算出し、これを[式7]に代入することで血管断面積Aを算出する。これにより、例えば20ミリ秒毎に血管断面積Aが算出されるので、血管断面積Aの時間変化が求められる(ステップS26)。
【数6】
ここで、kは血液の吸光係数、I
0はレーザー発光部510が照射したレーザー光の強度(照射強度)である。
【数7】
【0052】
なお、本実施形態においても、血流量Qや血管断面積Aの算出周期は、20ミリ秒に限らず、脈波の一拍に対して十分に小さい周期であれば、任意の時間長に定めることができる。
【0053】
以降、ステップS27〜S30に示す処理は、第1実施形態で説明したステップS6〜S9の処理と同様である。すなわち、演算部422は、ステップS24で求めた血流量Qの時間変化と、ステップS26で求めた血管断面積Aの時間変化とを用いて、第1実施形態で説明した[式3]から脈波伝播速度PWVを求める(ステップS27)。また、演算部422は、第1実施形態で説明した[式4]を用いて血圧を求める(ステップS28)。血圧P(t)の波形の一例を
図10に示す。同図に示す血圧P(t)の波形も、おおむね脈波の一拍分に相当する。
【0054】
また、演算部422は、ステップS27で求めた脈波伝播速度PWVを用いて動脈硬化度を決定する(ステップS29)。この後、制御部40は、演算部422が求めた脈波伝播速度PWV,血圧,動脈硬化度を、表示を指示する指令と共に表示部60に出力し(ステップS30)、生体情報測定処理を終える。なお、容積脈波PG(t),血流波形Q(t),血圧P(t)等の波形を表示部60に表示してもよい。
【0055】
以上説明したように本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することに加え、被験者100の生体情報として容積脈波を測定することができる。すなわち、第2実施形態に係る生体情報測定装置2は、レーザー光を用いたLDF法による測定によって、脈波伝播速度,血圧,動脈硬化度の他に容積脈波を測定することができる。また、これらの生体情報を1種類の光学センサー50(レーザー発光部510およびレーザー受光部520)で同時に測定することが可能である。
【0056】
<第3実施形態>
図11は、本発明の第3実施形態に係る生体情報測定装置3の内部構成を示すブロック図である。本実施形態においても第1実施形態と共通する要素には、第1実施形態で使用した符号を付して説明を適宜省略する。第3実施形態に係る生体情報測定装置3は、レーザー光の代わりにLED(Light Emitting Diode)光を用いて被験者100の生体情報を測定する。
図11に示す生体情報測定装置3において、
図4に示した生体情報測定装置1と異なるのは、照射制御部412と、光学センサー52(LED発光部512およびLED受光部522)と、受光信号S2と、演算部424である。
【0057】
照射制御部412は、LED発光部512によるLED光の照射を制御する。LED発光部512は、例えばLEDを備え、照射制御部412の制御の下、測定波の一例であるLED光を被験者100の手首に照射する。LED発光部512が照射するLED光は、第1実施形態で説明したレーザー光と比較して広帯域でインコヒーレントな光であり、非レーザー光の一例である。例えば、LED発光部512が照射するLED光の波長は535nmである。
【0058】
LED受光部522は、例えば、フォトダイオード等の受光素子,増幅器,A/D変換器等を備える。受光素子は、LED発光部512が照射するLED光の波長に対応するバンドパス特性を有し、該当する波長域の光のみを選択的に透過させ、それ以外の波長域の光をブロックする。LED受光部522は、被験者100の生体内を通過してきたLED光を受光素子によって受光し、LED光の受光強度の時間変化を示す受光信号S2を生成して演算部424に出力する。演算部424は、LED受光部522から出力される受光信号S2を演算処理することで、被験者100の生体情報を求める。
【0059】
なお、LED発光部512が照射したLED光についても、表皮を透過して被験者100の生体内に入射した後、生体組織内において散乱・反射を繰り返しながら広がっていき、そのうちの一部がLED受光部522に到達し、受光素子によって受光される。また、生体内に入射したLED光は、その一部が血管110内を流れる血液細胞(主にヘモグロビン)によって吸収される。血管110内の血液細胞の量は、血管110の膨張時と収縮時とで異なるので、LED受光部522が生成する受光信号S2は、血管110の脈動に応じて振幅が周期的に変動する。
【0060】
図12は、第3実施形態に係る生体情報測定処理のフローチャートである。同図に示す処理が制御部40によって実行される契機は、第1実施形態で説明した
図6の処理と同じである。
図12の処理を開始すると、まず、制御部40内の照射制御部412が、LED発光部512を制御してLED光の照射を開始する(ステップS41)。これにより被験者100の手首にLED光が照射され、LED受光部522は、被験者100の生体内を通過してきたLED光を受光し、受光したLED光に応じた受光信号S2を出力する。また、制御部40内の演算部424が、LED受光部522から出力される受光信号S2を取得する(ステップS42)。
【0061】
次に、演算部424は、取得した受光信号S2を、例えば20ミリ秒等、所定の時間長を有する複数の区間に分割する。また、演算部424は、分割した区間毎に、この区間内における受光信号S2の全パワー<I
2>を第2実施形態で説明した[式5]を用いて算出する。これにより、例えば20ミリ秒毎に受光信号S2の全パワー<I
2>が算出されるので、受光信号S2の全パワー<I
2>の時間変化が求められる(ステップS43)。この受光信号S2の全パワー<I
2>の時間変化は、容積脈波に相当する。例えば、各区間毎に算出した受光信号S2の全パワー<I
2>の値を順次プロットしていくと、
図9に示した容積脈波PG(t)の波形が生成される。
【0062】
また、ステップS43で求めた受光信号S2の全パワー<I
2>の時間変化は、血液の体積Vの時間変化にも相当する。したがって、演算部424は、ステップS43で求めた受光信号S2の全パワー<I
2>の時間変化(=血液の体積Vの時間変化(V(t))を用いて、[式8]から血流量Qの時間変化を求める(ステップS44)。すなわち、演算部424は、例えば20ミリ秒毎に、血液の体積V[m
3]を時間微分し、体積速度である血流量Q[m
3/s]を算出する。
【数8】
【0063】
また、演算部424は、ステップS44の処理と並行して、第2実施形態で説明した[式6]および[式7]を用いて血管断面積Aの時間変化を求める(ステップS45)。すなわち、演算部424は、例えば20ミリ秒毎に、ランベルト・ベールの法則を利用して[式6]から血管径dを算出し、これを[式7]に代入することで血管断面積Aを算出する。なお、本実施形態においても、血流量Qや血管断面積Aの算出周期は、20ミリ秒に限らず、脈波の一拍に対して十分に小さい周期であれば、任意の時間長に定めることができる。
【0064】
以降、ステップS46〜S49に示す処理は、第1実施形態で説明したステップS6〜S9の処理と同様である。すなわち、演算部424は、ステップS44で求めた血流量Qの時間変化と、ステップS45で求めた血管断面積Aの時間変化とを用いて、第1実施形態で説明した[式3]から脈波伝播速度PWVを求める(ステップS46)。また、演算部424は、第1実施形態で説明した[式4]を用いて血圧を求める(ステップS47)。
【0065】
また、演算部424は、ステップS46で求めた脈波伝播速度PWVを用いて動脈硬化度を決定する(ステップS48)。この後、制御部40は、演算部424が求めた脈波伝播速度PWV,血圧,動脈硬化度を、表示を指示する指令と共に表示部60に出力し(ステップS49)、生体情報測定処理を終える。なお、第2実施形態の場合と同様に、容積脈波PG(t),血流波形Q(t),血圧P(t)等の波形を表示部60に表示してもよい。
【0066】
以上説明したように本実施形態に係る生体情報測定装置3においても、血流量Qの時間変化および血管断面積Aの時間変化から脈波伝搬速度PWVを求めるので、例えば指と手首等、複数の測定部位に光学センサー52を装着する必要がなく、測定部位が1箇所でよいことに加え、測定に用いる光学センサー52(LED発光部512およびLED受光部522)も1つでよい。したがって、生体情報測定装置3を小型化することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、生体情報測定装置3は、LED光を用いた測定によって、脈波伝搬速度PWVを求めるために必要となる血流量Qの時間変化と血管断面積Aの時間変化の両方を求めることができる。また、生体情報測定装置3は、被験者100の生体情報として、脈波伝搬速度PWVの他に血圧,動脈硬化度,容積脈波を求めることができ、これらの生体情報を非侵襲かつ非加圧で長時間にわたって連続して測定することが可能である。また、これらの生体情報を1種類の光学センサー52(LED発光部512およびLED受光部522)で同時に測定することができる。
【0068】
<第4実施形態>
図13は、本発明の第4実施形態に係る生体情報測定装置4の内部構成を示すブロック図である。本実施形態において、第1実施形態や第3実施形態と共通する要素には、これらの実施形態で使用した符号を付して説明を適宜省略する。第4実施形態に係る生体情報測定装置4は、レーザー光とLED光の両方を用いて被験者100の生体情報を測定する。
図13に示す生体情報測定装置4において、
図4に示した生体情報測定装置1と異なるのは、照射制御部414と、光学センサー50,52(レーザー発光部510、LED発光部512、レーザー受光部520およびLED受光部522)と、受光信号S1,S2と、演算部426である。
【0069】
なお、
図13において、レーザー発光部510およびレーザー受光部520が光学センサー50を構成し、LED発光部512およびLED受光部522が光学センサー52を構成する。また、本実施形態において、光学センサー50(レーザー発光部510およびレーザー受光部520)は、第1実施形態で説明した光学センサー50(レーザー発光部510およびレーザー受光部520)と同じであり、光学センサー52(LED発光部512およびLED受光部522)は、第3実施形態で説明した光学センサー52(LED発光部512およびLED受光部522)と同じである。
【0070】
レーザー発光部510は、第1照射部の一例であり、第1実施形態で説明したレーザー発光部510である。このレーザー発光部510は、照射制御部414の制御の下、レーザー光を被験者100の手首に照射する。レーザー受光部520は、第1検出部の一例であり、第1実施形態で説明したレーザー受光部520である。このレーザー受光部520は、被験者100の生体内を通過してきたレーザー光を受光し、レーザー光の受光強度および周波数の時間変化を示す受光信号S1(光ビート信号)を生成して演算部426に出力する。
【0071】
LED発光部512は、第2照射部の一例であり、第3実施形態で説明したLED発光部512である。このLED発光部512は、照射制御部414の制御の下、LED光を被験者100の手首に照射する。LED受光部522は、第2検出部の一例であり、第3実施形態で説明したLED受光部522である。このLED受光部522は、被験者100の生体内を通過してきたLED光を受光し、LED光の受光強度の時間変化を示す受光信号S2を生成して演算部426に出力する。
【0072】
照射制御部414は、レーザー発光部510によるレーザー光の照射と、LED発光部512によるLED光の照射とを制御する。また、演算部426は、レーザー受光部520から出力される受光信号S1と、LED受光部522から出力される受光信号S2とを演算処理することで、被験者100の生体情報を求める。
【0073】
図14は、光学センサー50,52の配置を示す図である。レーザー受光部520に到達したレーザー光の伝播経路について、分布頻度の高い部分を模式的に示すと、同図に一点鎖線で示すバナナ形状の部分(OP1)になる。同様に、LED受光部522に到達したLED光の伝播経路について、分布頻度の高い部分を模式的に示すと、同図に点線で示すバナナ形状の部分(OP2)になる。レーザー光の通過領域OP1のうち深さ方向の幅が最も広くなる中央付近の部分と、LED光の通過領域OP2のうち深さ方向の幅が最も広くなる中央付近の部分とが重なり、かつ両者の重なる部分に測定対象となる血管110が収まるように、レーザー発光部510、レーザー受光部520、LED発光部512およびLED受光部522の位置が決定される。
【0074】
なお、
図14に示した通過領域OP1,OP2についても、あくまで便宜上のイメージに過ぎない。レーザー受光部520に到達したレーザー光の実際の伝播経路は、同図に示した通過領域OP1内に限らず、様々な経路をとり得る。同様に、LED受光部522に到達したLED光の実際の伝播経路についても、同図に示した通過領域OP2内に限らず、様々な経路をとり得る。また、同図には、便宜上、1本の血管110しか図示していないが、実際には、レーザー受光部520に到達したレーザー光の伝播経路上や、LED受光部522に到達したLED光の伝播経路上に存在する全ての血管が測定対象になる。
【0075】
図15は、第4実施形態に係る生体情報測定処理のフローチャートである。同図に示す処理が制御部40によって実行される契機は、第1実施形態で説明した
図6の処理と同じである。
図15の処理を開始すると、まず、制御部40内の照射制御部414が、レーザー発光部510を制御してレーザー光の照射を開始すると共に、LED発光部512を制御してLED光の照射を開始する(ステップS61)。これにより被験者100の手首にレーザー光とLED光が照射される。レーザー受光部520は、被験者100の生体内を通過してきたレーザー光を受光し、受光したレーザー光に応じた受光信号S1を出力する。また、LED受光部522は、被験者100の生体内を通過してきたLED光を受光し、受光したLED光に応じた受光信号S2を出力する。また、制御部40内の演算部426が、レーザー受光部520から出力される受光信号S1と、LED受光部522から出力される受光信号S2とを取得する(ステップS62)。
【0076】
次に、演算部426は、取得した受光信号S1(光ビート信号)に対して高速フーリエ変換による周波数解析処理を行ってパワースペクトルP(f)を算出する(ステップS63)。また、演算部426は、算出したパワースペクトルP(f)等を用いて第1実施形態で説明した[式1]から血流量Qの時間変化を求める(ステップS64)。このステップS63,S64に示す処理は、第1実施形態で説明したステップS3,S4の処理と同じである。
【0077】
また、演算部426は、ステップS63,S64の処理と並行して、例えば20ミリ秒等、所定の周期毎に、第2実施形態で説明した[式5]を用いて受光信号S2の全パワー<I
2>を算出し、受光信号S2の全パワー<I
2>の時間変化を求める(ステップS65)。また、演算部426は、例えば20ミリ秒等、所定の周期毎に、第2実施形態で説明した[式6]および[式7]を用いて血管断面積Aを算出し、血管断面積Aの時間変化を求める(ステップS66)。このステップS65,S66に示す処理は、第3実施形態で説明したステップS43,S45の処理と同じである。
【0078】
このように本実施形態では、レーザー光を用いたLDF法による測定によって血流量Qの時間変化を求める一方、LED光を用いた容積脈波の測定から血管断面積Aの時間変化を求める。なお、本実施形態においても、血流量Qや血管断面積Aの算出周期は、20ミリ秒に限らず、脈波の一拍に対して十分に小さい周期であれば、任意の時間長に定めることができる。
【0079】
以降、ステップS67〜S70に示す処理は、第1実施形態で説明したステップS6〜S9の処理と同様である。すなわち、演算部426は、ステップS64で求めた血流量Qの時間変化と、ステップS66で求めた血管断面積Aの時間変化とを用いて、第1実施形態で説明した[式3]から脈波伝播速度PWVを求める(ステップS67)。また、演算部426は、第1実施形態で説明した[式4]を用いて血圧を求める(ステップS68)。
【0080】
また、演算部426は、ステップS67で求めた脈波伝播速度PWVを用いて動脈硬化度を決定する(ステップS69)。この後、制御部40は、演算部426が求めた脈波伝播速度PWV,血圧,動脈硬化度を、表示を指示する指令と共に表示部60に出力し(ステップS70)、生体情報測定処理を終える。なお、第2実施形態の場合と同様に、容積脈波PG(t),血流波形Q(t),血圧P(t)等の波形を表示部60に表示してもよい。
【0081】
以上説明したように本実施形態によれば、生体情報測定装置4は、レーザー光を用いたLDF法による測定によって血流量Qの時間変化を求める一方、LED光を用いた容積脈波の測定から血管断面積Aの時間変化を求める。ここで、血流量Qの時間変化は、レーザー光を用いたLDF法による測定によって求めた方が、LED光を用いた容積脈波の測定から求める場合よりも正確に求めることができる。一方、血管断面積Aの時間変化は、レーザー光を用いたLDF法による測定によって求める場合よりも、LED光を用いた容積脈波の測定から求めた方が正確に求めることができる。
【0082】
したがって、本実施形態によれば、2種類の光学センサー50,52を備える必要があるものの、第1〜第3実施形態に係る生体情報測定装置1〜3と比較した場合に、血流量Qの時間変化および血管断面積Aの時間変化をより正確に求めることができるので、脈波伝搬速度PWVの算出精度を高めることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、同じ部位(手首)から求めた血流量Qの時間変化および血管断面積Aの時間変化を用いて脈波伝播速度PWVを求めるので、局部(手首)の脈波伝播速度PWVを正確に求めることができる。また、レーザー光を照射して血流量Qの時間変化を測定する部位と、LED光を照射して血管断面積Aの時間変化を測定する部位とを同じにすることで、同じでない場合に比べ、生体情報測定装置4を小型化することができる。
【0084】
<変形例>
以上に例示した各実施形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0085】
(1)第1実施形態の場合を例に説明すると、生体情報測定装置1は、
図1に示したように本体部11が手のひら側に位置するように手首に装着されてもよいし、本体部11が手の甲側に位置するように手首に装着されてもよい。また、レーザー発光部510とレーザー受光部520の一方以上を本体部11ではなくベルト12の内周面に設けてもよい。さらに、生体情報測定装置1は、既存の腕時計のベルトに装着可能なウェアラブル機器であってもよい。これらの変形は、第2〜第4実施形態で説明した生体情報測定装置2〜4についても同様である。
【0086】
(2)生体情報測定装置1〜4は、メモリーカード等の小型の記録メディア用のリーダーライターを備え、記録メディアを介して外部機器90とデータを交換可能な構成であってもよい。
【0087】
(3)第1実施形態の場合を例に説明すると、生体情報測定装置1(
図4)において、操作ボタン13,14や計時部20や通信部70は必須の構成要素ではない。また、生体情報測定装置1は、脈波伝播速度,血圧,動脈硬化度等の測定結果を通信部70を介して外部機器90に出力する構成であってもよく、この場合、必ずしも表示部60を生体情報測定装置1に設ける必要はない。また、生体情報測定装置は、例えば
図16に示すように、光学センサー50(レーザー発光部510およびレーザー受光部520)と、制御部40と、記憶部30とを基板80(例えば配線基板)上に実装した構成を有する生体情報測定モジュール9であってもよく、このような測定モジュール9を腕時計等の既存のウェアラブル機器に組み込んでもよい。この場合、生体情報測定モジュール9(生体情報測定装置)の構成要素として、本体部11の筐体や、ベルト12も不要になる。これらの変形は、第2〜第4実施形態で説明した生体情報測定装置2〜4についても同様である。
【0088】
(4)第4実施形態において、レーザー光を照射して血流量Qの時間変化を測定する部位と、LED光を照射して血管断面積Aの時間変化を測定する部位は、基本的に同じ部位であることが望ましい。しかしながら、両者は、必ずしも同じ部位に限定されず、例えば、手首のうち手のひら側と手の甲側等、異なる部位であってもよい。
【0089】
(5)第4実施形態に係る生体情報測定装置4において、レーザー受光部520とLED受光部522とを別々に備えるのではなく、レーザー発光部510が照射するレーザー光とLED発光部512が照射するLED光との双方を受光する単体の受光素子を備えた1つの受光部を備える構成であってもよい。この場合、受光部に備わる受光素子は、レーザー発光部510が照射するレーザー光の波長と、LED発光部512が照射するLED光の波長との双方に対応するバンドパス特性を有する。また、受光部は、被験者100の生体内を通過してきたレーザー光の受光強度および周波数の時間変化を示す受光信号S1(光ビート信号)と、被験者100の生体内を通過してきたLED光の受光強度の時間変化を示す受光信号S2とを生成する。以上の構成によれば、受光部は1つでよく、レーザー光用の受光部とLED光用の受光部とを別々に備える必要がないので、第4実施形態に係る生体情報測定装置4と比較した場合に、生体情報測定装置の構成を簡素化し、より小型にすることができる。
【0090】
(6)測定対象となる部位は、手首に限らず、指、腕、足、首等であってもよい。したがって、生体情報測定装置1〜4は、腕時計型に限らず、被験者100の身体のうち測定対象となる部位に装着可能なウェアラブル機器であればよい。例えば、生体情報測定装置1〜4は、被験者100の上腕にベルトで固定されたスマートフォン等であってもよい。また、本発明に係る生体情報測定装置は、ウェアラブル機器に限定されない。例えば医療機関等で使用される据置型の血圧計等に本発明を適用してもよい。この場合、測定対象となる部位にプローブを接触させて生体情報の測定が行われる。
【0091】
(7)レーザー光やLED光の波長は、各実施形態で例示した波長に限定されず、生体内での伝播特性や、血液による吸収の度合い等を考慮して適宜定めることができる。また、LED光の代わりにSLD(SuperLuminescent Diode)光を用いてもよく、非レーザー光はLED光に限定されない。
【0092】
(8)生体に照射する測定波は、レーザー光やLED光等の光に限らず、超音波等の音波であってもよい。
図17は、超音波センサー54を用いた生体情報の測定原理を説明するための模式図である。本変形例に係る生体情報測定装置5は、光学センサーの代わりに超音波センサー54を備える。超音波センサー54は、測定波の一例である超音波を被験者100(生体)に照射する照射部と、生体内から反射してきた超音波を検出する検出部とを備える。
【0093】
例えば、超音波センサー54内の照射部が、血管110に対して角度θで照射した超音波(照射波)の周波数をfとしたとき、血管110内を流れる赤血球等の血液細胞によって反射された超音波(反射波)は、血液細胞の流速に応じたドップラーシフトを受け、その周波数がf+Δfに変化する。したがって、生体情報測定装置5では、照射波に対する反射波の周波数変化Δfを測定することで、レーザー光を用いたLDF法による測定の場合と同様に、血流量Qの時間変化を求めることができる。
【0094】
また、生体情報測定装置5では、血管110のうち表皮側の壁で反射した超音波の到達時間t
1と、血管110のうち表皮とは反対側の壁で反射した超音波の到達時間t
2との時間差Δt(t
2−t
1)から血管径dを測定し、測定した血管径dの値を前述した[式7]に代入することで血管断面積Aを求めることができる。したがって、生体情報測定装置5では、例えば20ミリ秒等、所定の周期毎に血管断面積Aを算出することで、血管断面積Aの時間変化を求めることができる。
【0095】
以上によれば、光学センサーの代わりに超音波センサー54を備えた生体情報測定装置5においても、血流量Qの時間変化および血管断面積Aの時間変化から前述した[式3]を用いて脈波伝搬速度PWVを求めることができる。また、生体情報測定装置5では、脈波伝搬速度PWVを求めた後、前述した[式4]を用いて血圧P(t)を求めたり、脈波伝播速度PWVの値から動脈硬化度を決定することもできる。
【0096】
なお、測定波として超音波等の音波を用いた場合、血管110の手前側の壁と奥側の壁で反射した2つの反射波の到達時間差Δt(t
2−t
1)から血管断面積Aの時間変化を求めることになる。したがって、測定対象となる血管110は、ある程度の太さを有する血管に限られる。また、測定対象となる血管110が太さによって限られてしまうので、超音波センサー54の設置位置の自由度も低い。
【0097】
これに対し、上述した各実施形態で説明したように測定波としてレーザー光やLED光等の光を用いた場合、照射した光の一部が血液によって吸収される性質を利用して血管断面積Aの時間変化を求めている。したがって、測定対象となる血管110は、ある程度の太さを有する血管に限られない。すなわち、測定対象となる血管110は、測定波として音波を用いた場合より細い血管であってもよく、測定対象の候補となる血管の数が、測定波として音波を用いた場合より多いので、光学センサー50,52の設置位置の自由度も高い。
【0098】
このように特にウェアラブル型の生体情報測定装置の場合、測定波として音波より光を用いた方が、測定対象となる血管110の太さが制限されない点や、センサーの設置位置の自由度が高い点で有利である。また、光学センサーは、センサー自体のサイズが音波センサーより小さいので、この点も小型化には有利である。
【0099】
(9)生体情報測定装置は、生体情報として脈波伝播速度のみを測定する構成であってもよい。また、生体情報測定装置は、脈波伝播速度の他に、血圧と動脈硬化度と容積脈波のいずれか1以上を測定する構成であってもよい。また、これらの生体情報に加え、脈拍数や血流速度等を測定する構成であってもよい。
【0100】
(10)生体情報測定装置は、照射部と検出部とを並べて配置し、測定部位から反射してきた測定波を検出する反射型に限らず、例えば指先等の測定部位を挟んで照射部と対向する位置に検出部を設け、測定部位を透過してきた測定波を検出する透過型であってもよい。
【0101】
(11)測定対象となる血管は、動脈でなく細動脈であってもよい。この場合、測定対象となる血管が動脈より浅い部分にあるので、照射部と検出部との離間距離を小さくすることができ、生体情報測定装置をより小型にすることができる。また、測定対象となる生体は、人以外の動物であってもよい。