(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597419
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】車両のドア装置
(51)【国際特許分類】
E05B 17/20 20060101AFI20191021BHJP
E05B 81/90 20140101ALI20191021BHJP
E05B 39/00 20060101ALI20191021BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
E05B17/20 A
E05B81/90
E05B39/00
B60J5/00 M
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-46747(P2016-46747)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-160697(P2017-160697A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 健太郎
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−067480(JP,A)
【文献】
特開2009−079442(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0305164(US,A1)
【文献】
特開2002−063833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの閉ロック状態を解除する非常用ロック解除操作部を前記ドアの外側に備える車両のドア装置であって、
前記非常用ロック解除操作部は、ドア部品に支持された状態で前記ドアに取付けられており、
前記ドア部品には、前記非常用ロック解除操作部を覆う保護カバーがカバー取付け機構によって取付けられており、
前記カバー取付け機構は、前記保護カバーの下端部を前記ドア部品に連結する下端連結部と、前記保護カバーの高さ方向途中位置を前記ドア部品に連結する中間連結部とを備えており、
前記保護カバーの上端位置を所定以上の力でドア表面から離れる方向に引っ張ることで、前記保護カバーが前記カバー取付け機構の下端連結部を中心に下方に回動して、前記カバー取付け機構の中間連結部が破断する構成である車両のドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のドア装置であって、
前記保護カバーには、上端位置に取手部が設けられている車両のドア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のドア装置であって、
前記保護カバーの重心は、前記カバー取付け機構の前記下端連結部よりも前記ドア表面から離れた位置にある車両のドア装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両のドア装置であって、
前記カバー取付け機構の前記中間連結部は、前記保護カバーと前記ドア部品とのいずれか一方に設けられた爪部と、前記保護カバーと前記ドア部品とのいずれか他方に設けられ、前記爪部が掛けられる開口部とから構成されており、
前記爪部が掛けられる前記開口部の端縁、あるいは前記爪部が前記所定以上の力が加わることで破断するように構成されている車両のドア装置。
【請求項5】
請求項4に記載された車両のドア装置であって、
前記保護カバーには、前記爪部が掛けられる開口部が形成されており、
前記開口部の端縁の肉厚寸法が前記保護カバーの他の部位の肉厚寸法よりも小さく設定されている車両のドア装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された車両のドア装置であって、
前記カバー取付け機構の前記下端連結部は、前記保護カバーと前記ドア部品とのいずれか一方に設けられた突起部と、前記保護カバーと前記ドア部品とのいずれか他方に設けられ、前記突起部が挿入される穴部とから構成されている車両のドア装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された車両のドア装置であって、
前記ドアは、車室内側に突出するように折畳まれることで乗降口を開放する構成であり、
前記ドア部品は、前記ドアを折畳む際に把持する縦ハンドルであり、
前記保護カバーは、前記縦ハンドルの上部に前記カバー取付け機構により取付けられている車両のドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアの閉ロック状態を解除する非常用ロック解除操作部を前記ドアの外側に備える車両のドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非常用ロック解除操作部と類似する非常用スイッチのカバー構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のカバー構造では、開口部を有するスイッチケースの内側にスイッチが収納されており、前記スイッチケースの開口部にスイッチカバーが設けられている。スイッチカバーは、緊急時に前記スイッチを操作する以外はスイッチケースの開口部を閉じるように構成されている。このため、意に反してスイッチが押されるような不具合を防止できる。
【0003】
また、バス等の公共車両で使用される一般的なドアの非常用ロック解除操作部のカバー構造が、
図9に示されている。非常用ロック解除操作部はロック解除レバー101であり、ドア100に設けられた収納凹部102に収納されている。そして、ドア100の収納凹部102の開口102hが保護カバー104によって塞がれる構成である。保護カバー104の上辺部分は、例えば、ヒンジ104jによって開口102hの上端縁位置に連結されており、非常時にロック解除レバー101を操作する以外は収納凹部102の開口102hを閉じることができるように構成されている。このため、意に反してロック解除レバー101が操作されるような不具合を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−63833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したバス等の公共車両では、安全上の観点から災害時(非常時)には誰でもロック解除レバー101を操作できるようにする必要から保護カバー104に鍵を設けることはできない。このため、例えば、バスの駐車中に第三者が保護カバー104を開けて不正にロック解除レバー101を操作してドアを開けることも可能である。そして、保護カバー104はヒンジ104jにより収納凹部102の開口102hを開閉可能に構成されているため、第三者が保護カバー104を開けてロック解除レバー101を操作してもその痕跡が残らない。このため、バスの乗員は、第三者が不正にロック解除レバー101を操作してバス内に入り込んだことを認識できず、セキュリティ上好ましくない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両のドアの非常ロック解除操作部が操作されたことを容易に分るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、車両のドアの閉ロック状態を解除する非常用ロック解除操作部を前記ドアの外側に備える車両のドア装置であって、前記非常用ロック解除操作部は、ドア部品に支持された状態で前記ドアに取付けられており、前記ドア部品には、前記非常用ロック解除操作部を覆う保護カバーがカバー取付け機構によって取付けられており、
前記カバー取付け機構は、前記保護カバーの下端部を前記ドア部品に連結する下端連結部と、前記保護カバーの高さ方向途中位置を前記ドア部品に連結する中間連結部とを備えており、前記保護カバーの上端位置を所定以上の力でドア表面から離れる方向に引っ張ることで、前記保護カバーが前記カバー取付け機構の下端連結部を中心に下方に回動して、前記カバー取付け機構の中間連結部が破断する構成である。
【0008】
本発明によると、ドア部品には、非常用ロック解除操作部を覆う保護カバーがカバー取付け機構によって取付けられており、カバー取付け機構は保護カバーに対して前記ドア部品から外す方向に所定以上の力が加わることで破断するように構成されている。このため、非常用ロック解除操作部を操作してドアを開く場合には、保護カバーに対してドア部品から外す方向に所定以上の力を加えてカバー取付け機構を破断させる必要がある。即ち、非常用ロック解除操作部を操作してドアを開いた場合、カバー取付け機構が破断するため、保護カバーを再びドア部品に取付けることができない。このため、非常用ロック解除操作部は露出した状態に保持される。したがって、非常ロック解除操作部が操作されたことを容易に判別できるようになる。
また、保護カバーの上端位置を所定以上の力で前記ドア表面から離れる方向に引っ張ることで、前記保護カバーが前記下端連結部を中心に下方に回動して、前記中間連結部が破断する構成である。このため、梃子の力を利用でき、ドア部品から効率的に保護カバーを外せるようになる。
【0009】
請求項2に係る発明によると
、前記保護カバーには、上端位置に取手部が設けられて
いる。
【0010】
請求項3の発明によると、保護カバーの重心は、カバー取付け機構の下端連結部よりもドア表面から離れた位置にある。このため、中間連結部を破断させた状態で保護カバーをドア部品の元の位置に戻そうとしても、保護カバーは自重でカバー取付け機構の下端連結部を支点に下回動して、ドア部品から落下するようになる。
【0011】
請求項4の発明によると、カバー取付け機構の中間連結部は、保護カバーとドア部品とのいずれか一方に設けられた爪部と、保護カバーと前記ドア部品とのいずれか他方に設けられ、前記爪部が掛けられる開口部とから構成されており、前記爪部が掛けられる開口部の端縁、あるいは爪部が前記所定以上の力が加わることで破断するように構成されている。
【0012】
請求項5の発明によると、保護カバーには、爪部が掛けられる開口部が形成されており、前記開口部の端縁の肉厚寸法が前記保護カバーの他の部位の肉厚寸法よりも小さく設定されている。このため、保護カバーをドア部品から外す際に、確実に開口部の端縁が破断するようになる。
【0013】
請求項6の発明によると、カバー取付け機構の下端連結部は、保護カバーとドア部品とのいずれか一方に設けられた突起部と、前記保護カバーと前記ドア部品とのいずれか他方に設けられ、前記突起部が挿入される穴部とから構成されている。
【0014】
請求項7の発明によると、ドアは、車室内側に突出するように折畳まれることで乗降口を開放する構成であり、前記ドア部品は、前記ドアを折畳む際に把持する縦ハンドルであり、前記保護カバーは、前記縦ハンドルの上部に前記カバー取付け機構により取付けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、車両のドアの非常ロック解除操作部が操作されたことを容易に分るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1に係るドア装置を備える車両(小型バス)の模式斜視図である。
【
図2】前記小型バスの折戸ドアを車外側から見た模式斜視図である。
【
図3】縦ハンドル(ドア部品)に保護カバーを連結する前の斜視図である。
【
図4】保護カバーの平断面図(
図3のIV-IV矢視断面図)である。
【
図5】縦ハンドル(ドア部品)に保護カバーを取付けた状態を表す斜視図である。
【
図8】縦ハンドル(ドア部品)から保護カバーを外す状態を表わす斜視図である。
【
図9】従来の車両のドア装置を表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
以下、
図1から
図8に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のドア装置について説明する。本実施形態のドア装置は、小型バスの折戸ドアにおける非常用ロック解除操作部を覆う保護カバーに関するものである。ここで、図中における前後左右及び上下は、前記小型バス(以下、車両という)の前後左右及び上下に対応している。
【0018】
<車両のドア装置10の概要について>
車両ボディ4には、
図1に示すように、例えば、右側の中央前寄りの位置に乗客が乗り降りするための乗降口4hが設けられており、その乗降口4hがドア装置10の折戸ドア12によって開閉されるように構成されている。ドア装置10は、折戸ドア12を全閉位置に保持する閉ロック装置(図示省略)と、前記折戸ドア12を開閉するための駆動部(図示省略)とを車室内に備えている。そして、ドア装置10の前記閉ロック装置と前記駆動部とが運転席から遠隔操作できるように構成されている。
【0019】
<折戸ドア12について>
折戸ドア12は、
図2に示すように、縦に長い長方形状に形成された前側ドア片13と後側ドア片14とを備えており、その前側ドア片13の後端部と後側ドア片14の前端部とが上部、中央部、及び下部のヒンジ機構15u,15m,15dによって水平回動可能な状態で連結されている。また、前側ドア片13の前端上下には、その前側ドア片13を水平回動可能な状態で乗降口4hの前端支柱部に連結する主ヒンジ機構(図示省略)が設けられている。さらに、乗降口4hの天井部分には前後方向に延びるガイド溝(図示省略)が設けられており、後側ドア片14の後端上部に形成されたガイドピン(図示省略)が前記ガイド溝に沿って移動可能なように係合している。
【0020】
<縦ハンドル20について>
折戸ドア12の前側ドア片13の外側には、
図2に示すように、中央のヒンジ機構15mの近傍に折戸ドア12を手動で開ける際に把持する縦ハンドル20が設けられている。縦ハンドル20は、
図3に示すように、グリップ部22と、そのグリップ部22の上側で非常用ロック解除押ボタン30を支持するボタン支持部24とから構成されている。縦ハンドル20のグリップ部22は、高さ方向中央のグリップ直線部22sと上下のグリップ湾曲部22wとから側面視で扁平逆U字形に形成されている。また、縦ハンドル20のボタン支持部24は、角形フランジ状に形成されており、中央に非常用ロック解除押ボタン30が通される円形貫通孔24xが形成されている。さらに、縦ハンドル20のボタン支持部24の裏側には、
図6に示すように、非常用ロック解除押ボタン30が軸方向に移動できるようにガイドするガイド筒部24gが円形貫通孔24xと同軸に形成されている。
【0021】
<非常用ロック解除押ボタン30について>
非常用ロック解除押ボタン30は、非常時に折戸ドア12を全閉位置に保持する閉ロック装置(図示省略)の閉ロック状態を解除するための押ボタンである。非常用ロック解除押ボタン30は、
図6、
図7に示すように、円筒部32と、円筒部32の外周面に設けられた外フランジ部34とを備えている。そして、円筒部32の先端側が縦ハンドル20(ボタン支持部24)の円形貫通孔24xから外部に突出している。また、円筒部32の基端部側と外フランジ部34とが縦ハンドル20(ボタン支持部24)のガイド筒部24gにピストン状に収納されている。円筒部32の基端部には、押圧ピン部36が前記円筒部32と同軸に固定されている。
【0022】
縦ハンドル20(ボタン支持部24)のガイド筒部24gの端部(
図6において左端)は、リング状のプレート24rによって塞がれており、そのリング状のプレート24rの開口に非常用ロック解除押ボタン30(円筒部32)の押圧ピン部36が挿通されている。さらに、前記リング状のプレート24rと前記円筒部32の外フランジ部34間には、非常用ロック解除押ボタン30の円筒部32の先端側を外部に突出させる方向(
図6において右方向)に付勢された押バネ24bが装着されている。また、非常用ロック解除押ボタン30(円筒部32)の押圧ピン部36の先端には、ロック解除レバー37が当接している(
図6参照)。ロック解除レバー37は、
図6に示すように、略L字形に形成されたレバーであり、中央角部37cが上下回動可能な状態で折戸ドア12(前側ドア片13)に連結されている。そして、ロック解除レバー37の下端部に非常用ロック解除押ボタン30の押圧ピン部36が当接する押圧力受け部37uが設けられている。また、ロック解除レバー37の上端部が閉ロック装置(図示省略)のロック解除リンク39に相対回動可能な状態で連結されている。ここで、ロック解除リンク39は、閉ロック装置をロック状態にする方向、即ち、上動方向にバネ力を受けている。
【0023】
上記したように、非常用ロック解除押ボタン30の円筒部32は、前記押バネ24bのバネ力により縦ハンドル20(ボタン支持部24)の円形貫通孔24xから最も突出した状態に保持されている。上記構成により、非常用ロック解除押ボタン30の円筒部32が押バネ24bのバネ力に抗して押圧されると、押圧ピン部36がロック解除レバー37の押圧力受け部37uを押圧してロック解除レバー37が右回動する。これにより、ロック解除レバー37がロック解除リンク39をバネ力に抗して引き下げ、閉ロック装置のロック状態が解除される。この状態で、縦ハンドル20のグリップ部22を把持して折戸ドア12の前側ドア片13を車室内側に押し込むことで、折戸ドア12が折畳まれ、乗降口4hが開かれる。なお、車室内からロック解除リンク39を押し下げ操作して、ロック解除レバー37を
図6において右回動させることで、閉ロック装置のロック状態を解除できる。
【0024】
<保護カバー40について>
保護カバー40は、
図5に示すように、非常用ロック解除押ボタン30を覆うカバーであり、縦ハンドル20の上側のグリップ湾曲部22w(
図3参照)からボタン支持部24まで覆えるように構成されている。保護カバー40は、
図3、
図4に示すように、縦ハンドル20のグリップ直線部22sに連続する表面意匠部40eと、その表面意匠部40eの幅方向両側(前後)に設けられた側板部40f,40bとから平断面形状が略U字形に形成されている。また、保護カバー40の表面意匠部40eと前後の側板部40f,40bとの上端開口部分は、
図3等に示すように、天井板部40uによって塞がれている。そして、保護カバー40の両側板部40f,40bの先端縁と天井板部40uの先端縁とが縦ハンドル20のグリップ湾曲部22wの端縁とボタン支持部24の端縁とに嵌め合わされるようになっている。
【0025】
保護カバー40の表面意匠部40eの下端には、
図3、
図5に示すように、縦ハンドル20のグリップ直線部22sと連続するようにグリップ湾曲部22wの端縁に嵌め合わされる下端平坦部41が設けられている。表面意匠部40eの下端平坦部41の上側には、縦ハンドル20(グリップ直線部22s)に対する突出量が下端平坦部41から離れるにつれて徐々に増加する隆起部43が設けられている。さらに、表面意匠部40eの隆起部43の上側には、前記突出量が最大の状態で縦壁状に形成された上側平坦部45が設けられている。そして、表面意匠部40eの上側平坦部45の延長線上には、天井板部40uに対して上方に張り出した状態で取手部47が設けられている。
【0026】
保護カバー40の取手部47は、
図5、
図6に示すように、表面意匠部40eの上側平坦部45の延長線上が最も高くなるように、側面形状が山形に形成されている。保護カバー40の取手部47には、
図8に示すように、その取手部47の裏壁面と天井板部40uの上面とをつなぐ補強用リブ47rが形成されている。保護カバー40は、非常用ロック解除押ボタン30を覆った状態で、カバー取付け機構50により縦ハンドル20の上部に取付けられている。
【0027】
<カバー取付け機構50について>
カバー取付け機構50は、保護カバー40の下端部を縦ハンドル20に連結する下端連結部50dと、保護カバー40の幅方向両側中央を縦ハンドル20に連結する中間連結部50mとを備えている。カバー取付け機構50の下端連結部50dは、
図6に示すように、保護カバー40の下端に形成された突起部51と、その突起部51が挿通される縦ハンドル20の角穴部52とから構成されている。保護カバー40の突起部51は、表面意匠部40eの下端平坦部41における幅方向の中央位置で下方に突出するように形成されている。また、縦ハンドル20の角穴部52は、上側のグリップ湾曲部22wの端縁における幅方向中央位置に形成されている。そして、保護カバー40の突起部51が縦ハンドル20の角穴部52に挿通されることで、保護カバー40は突起部51、角穴部52を支点に上下回動可能な状態で縦ハンドル20に連結される。ここで、保護カバー40の重心位置は、
図6に示すように、表面意匠部40eの上側平坦部45の位置、即ち、カバー取付け機構50の下端連結部50d(突起部51、角穴部52)よりも外側に設けられている。
【0028】
カバー取付け機構50の中間連結部50mは、
図3、
図4等に示すように、保護カバー40の前後の側板部40f,40bの端縁に形成された開口部55と、縦ハンドル20の非常用ロック解除押ボタン30を前後から挟む位置に形成された爪部56とから構成されている。保護カバー40の開口部55は、角形に形成されており、爪部56が掛けられる帯板状の端縁55yを備えている。ここで、保護カバー40は、樹脂の射出成形品であり、その保護カバー40の開口部55の端縁55yにおける肉厚寸法は、保護カバー40の他の部位における肉厚寸法よりも十分に小さな値に設定されている。
【0029】
縦ハンドル20の爪部56は、
図7に示すように、保護カバー40の開口部55の端縁55yに対して保護カバー40の内側から掛けられる爪である。爪部56には、保護カバー40が爪部56に対して被せられる際に、爪部56に当接した開口部55の端縁55yを爪部56との係合位置までガイドする傾斜面56kが形成されている。即ち、縦ハンドル20の爪部56は、保護カバー40の開口部55の端縁55yが係合し易く、外れ難くなるように形成されている。爪部56は、
図3に示すように、非常用ロック解除押ボタン30の軸心とほぼ等しい高さ位置でボタン支持部24の端縁に設けられている。ここで、保護カバー40の前後の開口部55は、保護カバー40が下端連結部50d(突起部51、角穴部52)を支点に上回動する過程で、それらの開口部55の端縁55yが縦ハンドル20の前後の爪部56と係合できる位置に形成されている。
【0030】
<保護カバー40の取付けについて>
保護カバー40を縦ハンドル20に取付ける場合には、先ず、保護カバー40の下端の突起部51を縦ハンドル20のグリップ湾曲部22wの角穴部52に挿入する。即ち、カバー取付け機構50の下端連結部50dを係合状態に保持する。次に、この状態で、保護カバー40を突起部51,角穴部52(下端連結部50d)を支点に上回動させる。これにより、保護カバー40の上回動過程で、その保護カバー40の前後の開口部55における端縁55yが縦ハンドル20の前後の爪部56における傾斜面56kに当接する。そして、保護カバー40の端縁55yが縦ハンドル20の爪部56の傾斜面56kに押付けられることで、端縁55yと傾斜面56kとの摺動により保護カバー40の両側板部40f,40bが拡開方向に弾性変形し、前後の開口部55の端縁55yが爪部56の傾斜面56kを通過する。これにより、保護カバー40の両側板部40f,40bが樹脂の弾性力で元の形状に戻り、前後の開口部55の端縁55yが縦ハンドル20の爪部56と係合する。即ち、カバー取付け機構50の中間連結部50mが係合状態に保持される。この状態で、保護カバー40は、非常用ロック解除押ボタン30を覆った状態でカバー取付け機構50により縦ハンドル20の上部に取付けられる。
【0031】
<非常時の折戸ドア12の閉ロック装置のロック解除手順について>
非常時に折戸ドア12の閉ロック装置のロック状態を解除するには、先ず、保護カバー40の取手部47を持って折戸ドア12から離れる方向に引き操作する。これにより、
図8に示すように、保護カバー40がカバー取付け機構50の下端連結部50d(突起部51,角穴部52)を支点に下回動し、保護カバー40の開口部55の端縁55yと縦ハンドル20の爪部56間に加わる力で前記端縁55yが破断する。即ち、カバー取付け機構50の中間連結部50m(開口部55の端縁55y,爪部56)の係合が解除される。ここで、保護カバー40の開口部55の端縁55yを破断させるのに必要な力は約20Nに設定されている。そして、カバー取付け機構50の中間連結部50m(開口部55の端縁55y,爪部56)の係合が解除されると、保護カバー40の自重で突起部51が縦ハンドル20の角穴部52から外れて、保護カバー40が落下する。
【0032】
この状態で、縦ハンドル20の非常用ロック解除押ボタン30を押操作することで、折戸ドア12の閉ロック装置のロック状態を解除することができる。ここで、保護カバー40の重心は、
図6に示すように、表面意匠部40eの上側平坦部45の位置、即ち、カバー取付け機構50の下端連結部50d(突起部51、角穴部52)よりも外側に設けられている。このため、保護カバー40を縦ハンドル20の上部に戻しても、その位置に保持することはできない。
【0033】
<本実施形態に係る車両のドア装置の長所について>
本実施形態に係る車両のドア装置によると、縦ハンドル20(ドア部品)には、非常用ロック解除押ボタン30(非常用ロック解除操作部)を覆う保護カバー40がカバー取付け機構50によって取付けられている。そして、カバー取付け機構50は保護カバー40に対して縦ハンドル20から外す方向に所定以上の力が加わることで破断するように構成されている。このため、非常用ロック解除押ボタン30を操作して折戸ドア12を開く場合には、保護カバー40に対して縦ハンドル20から外す方向に所定以上の力を加えてカバー取付け機構50を破断させる必要がある。即ち、非常用ロック解除押ボタン30を操作して折戸ドア12を開いた場合には、カバー取付け機構50の破断により縦ハンドル20に保護カバー40を取付けることができず、非常用ロック解除押ボタン30は露出した状態に保持される。このため、非常用ロック解除押ボタン30が操作されたことを容易に判別できるようになる。
【0034】
また、取手部47を持って保護カバー40を下端連結部50d(突起部51、角穴部52)の回りに下方に回動させて中間連結部50m(開口部55の端縁55y)を破断させる構成のため、梃子の力を利用でき、縦ハンドル20から効率的に保護カバー40を外せるようになる。また、保護カバー40の重心が下端連結部50d(突起部51、角穴部52)より外側にある。このため、中間連結部50m(開口部55の端縁55y)を破断させた状態で保護カバー40を縦ハンドル20の元の位置に戻そうとしても、保護カバー40は自重で下端連結部50d(突起部51、角穴部52)を支点に下回動して、縦ハンドル20から落下するようになる。また、保護カバー40における開口部55の端縁55yの肉厚寸法が他の部位の肉厚寸法よりも小さく設定されているため、保護カバー40を縦ハンドル20から外す際に、確実に開口部55の端縁55yが破断されるようになる。
【0035】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、カバー取付け機構50の中間連結部50mを縦ハンドル20の爪部56と保護カバー40の開口部55の端縁55yとから構成し、保護カバー40を外す際に開口部55の端縁55yを破断させる例を示した。しかし、縦ハンドル20側に開口部を形成し、保護カバー40側に爪部を形成して、保護カバー40を外す際に爪部を破断させることも可能である。また、本実施形態では、カバー取付け機構50の下端連結部を縦ハンドル20の角穴部52と保護カバー40の突起部51とから構成する例を示した。しかし、縦ハンドル20側に突起部を設け、保護カバー40側に角穴部を形成することも可能である。また、本実施形態では、ドア部品として縦ハンドル20を例示したが、ドア部品としてはドアパネル等も含まれる。
【符号の説明】
【0036】
4・・・・・車両ボディ(車両)
4h・・・・乗降口
10・・・・ドア装置
12・・・・折戸ドア(ドア)
20・・・・縦ハンドル(ドア部品)
30・・・・非常用ロック解除押ボタン(非常用ロック解除操作部)
40・・・・保護カバー
47・・・・取手部
50・・・・カバー取付け機構
50d・・・下端連結部
50m・・・中間連結部
51・・・・突起部(下端連結部)
52・・・・角穴部(下端連結部)
55y・・・端縁(中間連結部)
55・・・・開口部(中間連結部)
56・・・・爪部(中間連結部)