特許第6597427号(P6597427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597427
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】光モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20191021BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20191021BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G02F1/01 F
   G02B6/42
   G02B6/32
   G02F1/01 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-52615(P2016-52615)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-167345(P2017-167345A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智哉
(72)【発明者】
【氏名】藤村 康
(72)【発明者】
【氏名】山路 和宏
(72)【発明者】
【氏名】渡部 徹
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宗高
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−079092(JP,A)
【文献】 特開2015−215537(JP,A)
【文献】 特開平01−101511(JP,A)
【文献】 特開平01−209411(JP,A)
【文献】 特開平09−211274(JP,A)
【文献】 特開2013−210495(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0318952(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102013002102(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/01
G02B 6/32,6/42
H01S 5/022
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号光を出力する第1出力ポート、及び第2信号光を出力する第2出力ポートを備えた光学部品と、前記第1信号光及び前記第2信号光を合波する合波器と、前記合波器によって合波された光を外部に出力する信号光出力部と、を含み、前記第1信号光の第1光路及び前記第2信号光の第2光路のそれぞれに、第1レンズ及び第2レンズがこの順で前記光学部品に近い側から配置される光モジュールの製造方法であって、
前記第1信号光及び前記第2信号光をコリメート光に変換する位置を基準位置として、各前記第1レンズを、前記基準位置よりも所定距離だけ前記光学部品に近づけて配置する第1工程と、
前記信号光出力部から出力する光の強度が最大となる位置に各前記第2レンズを配置する第2工程と、
前記第1光路に配置された前記第2レンズ、及び前記第2光路に配置された前記第2レンズのうち、一方の前記第2レンズを透過して前記信号光出力部から出力する光の強度は、他方の前記第2レンズを透過して前記信号光出力部から出力する光の強度よりも大きく、前記一方の前記第2レンズを透過した光の強度が前記他方の前記第2レンズを透過した光の強度に合うように、前記一方の前記第2レンズを移動させる第3工程と、
を備えた光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程及び前記第3工程は、前記信号光出力部を模した治具を前記信号光出力部の配置予定位置に配置し、前記治具を介して光の強度を測定する工程を含む、
請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第3工程では、前記一方の前記第2レンズを前記第1レンズに近づける、
請求項1又は2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記合波器によって合波された光の光路上における前記合波器と前記信号光出力部との間に位置しており、前記合波された光を遮断するシャッタを有する光減衰器を更に備え、
前記第3工程では、前記一方の前記第2レンズを前記第1レンズから遠ざける、
請求項1又は2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記他方の前記第2レンズを前記第1レンズから遠ざける、
請求項4に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記光学部品は、変調器であり、
前記変調器に与えるバイアスを調整し、前記第1出力ポートのみから光を出力させた状態で前記第1光路上の前記第2レンズを移動させ、前記第2出力ポートのみから光を出力させた状態で前記第2光路上の前記第2レンズを移動させる、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体レーザと、コリメータ光学系と、集束レンズとを備えた合波用レーザ光源装置が記載されている。コリメータ光学系は、半導体レーザ側に配置される第1レンズ、及び集光レンズ側に配置される第2レンズを備えている。第2レンズの焦点距離は第1レンズの焦点距離よりも長く、第2レンズは、光軸方向及び光軸に垂直な方向に移動可能となっている。コリメータ光学系及び集光レンズの調芯は、第2レンズを移動させることによって行われる。
【0003】
特許文献2には、波長可変半導体レーザと半導体光変調器とを備えたバタフライ型の光モジュールが記載されている。この光モジュールでは、波長可変半導体レーザと半導体光変調器とが並列に配置されており、波長可変半導体レーザからの光を半導体光変調器が変調する。波長可変半導体レーザからの光出力方向と、半導体光変調器への光入力方向とは逆方向に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−101511号公報
【特許文献2】特開2009−146992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した光変調器には複数の光導波路が設けられており、各光導波路は光損失を伴う。光損失の大きさは光導波路ごとに異なるので、光変調器が出力する複数の信号光の強度にはばらつきが生じる。また、変調器の出力側の光学系でも光損失が生じるので、このばらつきがさらに拡大されることが懸念される。
【0006】
本発明は、光変調器が出力する複数の信号光の強度のばらつきを低減する光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る光モジュールの製造方法は、第1信号光を出力する第1出力ポート、及び第2信号光を出力する第2出力ポートを備えた光学部品と、第1信号光及び第2信号光を合波する合波器と、合波器によって合波された光を外部に出力する信号光出力部と、を含み、第1信号光の第1光路及び第2信号光の第2光路のそれぞれに、第1レンズ及び第2レンズがこの順で光学部品に近い側から配置される光モジュールの製造方法であって、第1信号光及び第2信号光をコリメート光に変換する位置を基準位置として、各第1レンズを、基準位置よりも所定距離だけ光学部品に近づけて配置する第1工程と、信号光出力部から出力する光の強度が最大となる位置に各第2レンズを配置する第2工程と、第1光路に配置された第2レンズ、及び第2光路に配置された第2レンズのうち、一方の第2レンズを透過して信号光出力部から出力する光の強度は、他方の第2レンズを透過して信号光出力部から出力する光の強度よりも大きく、一方の第2レンズを透過した光の強度が他方の第2レンズを透過した光の強度に合うように、一方の第2レンズを移動させる第3工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一形態では、光変調器が出力する複数の信号光の強度のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
図2図1の光モジュールの内部構造を示す図である。
図3図1の光モジュールの変調器を示す図である。
図4図3の変調器の出力側の光学系を示す図である。
図5】(a),(b),(c)は、図1の光モジュールの調芯手順を示す図である。
図6】(a),(b)は、図6の調芯手順の続きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態に係る光モジュールの製造方法を詳細に説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る光モジュール1の外観を示す斜視図である。図2は、光モジュール1の内部構造を示す図である。光モジュール1は、コヒーレント光通信に対応できる光トランシーバに搭載される光モジュールである。コヒーレント光通信では、光の位相について、その0°成分及び90°成分のそれぞれも1ビットの情報として扱う。すなわち、0°及び90°それぞれの位相成分を1ビットの信号として扱うので、一本の光ファイバで同一波長の光について同時に2ビットの情報が伝送可能となる。
【0012】
更に、光モジュール1では、位相情報に加えて、光の偏波方向についても独立の情報単位として扱う。すなわち、X方向偏波及びY方向偏波のそれぞれについて二つの位相を情報単位として扱うので、一本の光ファイバで同一波長の光について同時に4ビットの情報が伝送可能となる。このように、光モジュール1では位相情報と偏光情報を情報単位として扱う。光モジュール1には、位相情報を再生するための局発光を出力する波長可変レーザダイオード(LD)41と、位相情報及び偏波情報を光信号化するための変調器11が搭載される。波長可変LD41は第1の連続光(Continuous Wave:CW)光L1、及び第2のCW光L2を出力する。変調器11と波長可変LD41はハウジング2に収容される。
【0013】
光モジュール1は、矩形箱状のハウジング2と、ハウジング2の一側面に設けられた光結合部3を備えている。ハウジング2は、ハウジング本体2aと、ハウジング本体2aを覆う蓋体2bを備えている。光結合部3は、局発光(Local光)を出力する局発光出力部3aと、信号光(Signal光)を出力する信号光出力部3bを備えている。局発光出力部3aには偏波保持ファイバPが接続され、局発光出力部3aから出力した局発光は偏波保持ファイバPによって取り出される。信号光出力部3bにはシングルモードファイバFが接続され、信号光出力部3bから出力した信号光はシングルモードファイバFによって取り出される。信号光出力部3bはレンズ3cを内蔵しており、信号光出力部3bから出力する信号光はレンズ3cによってシングルモードファイバFの端面に集光される。
【0014】
ハウジング2の前壁2cには局発光出力部3a及び信号光出力部3bが設けられており、前壁2cから伸び出す二つの側壁2d、2fにはそれぞれリード端子4a、4bが設けられている。リード端子4a,4bは、DC信号用及び接地(GND)用のリード端子である。また、二つの側壁2d,2fを接続する後壁2eには、電極パッド5が設けられている。この電極パッド5は、RF信号用の電極パッドである。
【0015】
光モジュール1は、変調器ユニット10と、光源ユニット40と、波長検知ユニット50を備えている。変調器ユニット10は半導体で構成された変調器11を含み、光源ユニット40は波長可変LD41を含む。変調器ユニット10は、一方の側壁2fに沿って設けられている。光源ユニット40は、他方の側壁2dに沿って設けられている。波長検知ユニット50は、側壁2dに沿って設けられ、且つ光源ユニット40に対して前壁2c側に設けられている。
【0016】
波長検知ユニット50は、2個のビームスプリッタ(BS)51,52、2個のモニタフォトダイオード(PD)53,54及びエタロンフィルタ55を備えている。波長可変LD41が出力したCW光L2は、まず、BS51によって二分され、その一方はBS51を透過してエタロンフィルタ55を透過した後にモニタPD53に入力する。他方は、BS51によって光軸を90°曲げられた後にBS52に向かい、BS52により更に二分され、その一方はモニタPD54に入力する。他方は、BS52によって光軸を90°曲げられた後に局発光出力部3aに向かう。
【0017】
更に、光モジュール1は、変調器ユニット10に半導体LD41が出力するCW光L1を結合する結合ユニット20,30と、変調器ユニット10が出力した光を信号光出力部3bに結合する出力ユニット60を備える。結合ユニット20は、第1レンズ21と、第2レンズ22と、ミラー23を備える。結合ユニット30から出力したCW光L1は、その光軸をミラー23によって90°曲げられ、第2レンズ22及び第1レンズ21を透過して変調器11の入力ポートに入力する。
【0018】
図3は、変調器11の内部構造を示す。変調器11は、4つのマッハツェンダ(Mach-Zehnder:MZ)変調素子12,13,14,15を有する。変調器11は、3つの1:2カプラ11a,11b,11cを有し、入力ポートから入力したCW光L1を各MZ変調素子12〜15に均等に分配する。CW光L1は、その光軸が導波路に沿って90°曲げられた後、1:2カプラ11aで二分され、それぞれの分岐光が更に1:2カプラ11b,11cで二分されて各MZ変調素子12〜15に入力する。各MZ変調素子12〜15の出力側には、変調光を合波する2つの2:2カプラ11d、11eが設けられる。
【0019】
MZ変調素子12〜15は、同様の形態、機能を備えている。MZ変調素子12〜15は、それぞれ電極12a〜15aを有する。また、電極12a,13aには、MZ変調素子12,13の各出力光に90°の位相差を与える静バイアスが印加される。電極14a,15a、カプラ11e、及びMZ変調素子14,15の出力光についても同様である。このように、MZ変調素子12〜15の出力光は位相多重される。カプラ11dによって合波された光は出力ポート16aから出力し、カプラ11eによって合波された光は出力ポート16bから出力する。また、MZ変調素子12〜15の各電極に与えるバイアス電圧を調整することにより、2つの出力ポート16a,16bのうち、実質一方のみから信号光を取り出すことが可能である。
【0020】
図4は、出力ポート16a,16bのそれぞれから出力する信号光を信号光出力部3bに結合する出力ユニット60を示す。出力ユニット60は、2個の第1レンズ61、2個の第2レンズ62、Siブロック63、2個のアイソレータ64、偏波合成(Polarization beam combiner:PBC)ユニット65、可変光減衰器(Variable Optical Attenuator:VOA)66、BS67、及びモニタPD68を備える。
【0021】
第1レンズ61は、第2レンズ62よりも変調器11に近い側に配置される。出力ポート16aから出力された信号光E1、及び出力ポート16bから出力された信号光E2は、それぞれ第2レンズ62により信号光出力部3bに結合する。第2レンズ62の光軸に沿った方向の位置を調整することにより、光結合効率が変化する。調整の具体的方法は後述される。Siブロック63は、信号光E1,E2のPBCユニット65に至るまでの光路差を補償する素子である。
【0022】
2個のアイソレータ64は、信号光E1,E2の偏波面について90°の差を与える。例えば、一方のアイソレータ64のみの出力側にλ/2板を挿入すると、当該λ/2板を透過した光の偏波面は他方のアイソレータ64を透過した光の偏波面に対して90°回転する。すなわち、2つのアイソレータ64の信号光の偏波面が互いに直交する。この偏光状態を維持したまま2つの信号光E1,E2はPBCユニット65に入力し、PBCユニット65は、信号光E1,E2を偏波合成して信号光L3を出力する。
【0023】
PBCユニット65は、ミラー65aと、光学多層膜で構成されたPBC素子65bを有する。信号光E1については、PBCユニット65内でミラー65aにより、その光軸が90°曲げられてPBC素子65bに至る。信号光E2については、変調器11から直線的にPBC素子65bに至る。よって、信号光E1については、ミラー65aからPBC素子65bに至るまでの光路分、信号光E2よりも長い光路となる。従って、Siブロック63を信号光E2の光路に挿入することにより、2つの信号光E1,E2におけるPBC素子65bに至るまでの光路長を実質等しくしている。
【0024】
PBCユニット65から出力した信号光L3はVOA66に入射する。本光モジュール1に搭載されたVOA66の遮光領域(シャッタ)はその直径が大凡0.5mmであり、外部から与えたバイアス電圧によりその遮光領域が移動することにより明/暗状態を作り出す。VOA66を通過する光ビームの径をVOA66の遮光領域より大きくするとシャッタの全開状態を形成することができず、VOA66の損失が増加する。一方、ビーム径が遮光領域よりも十分に小さい場合には、バイアス電圧に対する遮光特性が急峻になり好ましくない。本光モジュール1では、変調器16の二つの出力ポート16a、16bから出射された光ビームは、それそれ、第1、第2レンズ61,62により実質的なコリメート光に変換された後VOA66に入射するが、VOA66通過時のコリメート光の径は大凡0.5mmに設定されている。
【0025】
VOA66から出力した信号光L3はBS67に入射し、BS67に入射した信号光L3の一部は、BS67で反射してモニタPD68に入射する。モニタPD68は、信号光E3の強度をモニタし、このモニタの結果から変調器11内部の各素子の状態が把握可能となる。BS67を透過した信号光L3は、信号光出力部3bを介して光モジュール1の外部に出力する。
【0026】
以上、変調器11は入力したCW光L1を位相変調した二つの信号光を出力する。すなわち、変調器11は、CW光L1を2つのCW光に分割し、分割したそれぞれのCW光について、0°成分(In-Phase)と90°成分(Quadrature)の相対的な位相差を与え、位相多重したこれら2つの変調光を信号光E1,E2として出力する。そして、変調器11と信号光出力部3bの間に配置された出力ユニット60によって、信号光E1,E2は、偏波多重され一つの位相偏波多重光として信号光出力部3bから出力される。
【0027】
ここで、変調器11の内部の各導波路では光損失を伴い、各第1レンズ61、各第2レンズ62、及びPBCユニット65についても信号光出力部3bに対し光結合効率の変動要因となり得る。更に、変調器11内部の各導波路に伴う光損失の大きさは異なる(一様とならない)のが一般的である。従って、2つの信号光E1,E2の信号光出力部3bにおける強度、具体的には、信号光出力部3bに光結合した単一モードファイバFを介して得られる光強度に差を生じてしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、2つの第2レンズ62のうち、シングルモードファイバFに結合する光の強度が大きい一方の第2レンズ62を光軸方向にオフセットし、当該光の強度を、他方の第2レンズ62を透過する光の強度と一致させることによって、第2レンズ62の調芯を行う。以下では、変調器11の出力側の光学系の詳細、及び実装手順について説明する。
【0029】
変調器11の出力側の光学系は、第1レンズ61、第2レンズ62、及び第3レンズ3cを含む3レンズ系となっており、本実施形態において第1レンズ61は信号光E1,E2を発散させる。第2レンズ62はその初期位置において信号光E1,E2をコリメート光に変換し、第3レンズ3cは信号光E1,E2を集光してシングルモードファイバFの端面に結合する。例えば、第1レンズ61の倍率は4である。第2レンズ62の倍率は1である。第3レンズ3cの倍率は1である。この3レンズ系では、2つのレンズ61,62の倍率を、出力ポート16a,16bのフィールド径(MFD)に対してシングルモードファイバFに最適に結合する4倍とし、他のレンズ62,3cの倍率を1倍とした。
【0030】
第1レンズ61、第2レンズ62及び第3レンズ3cの実装手順としては、最も高い位置精度が求められる第1レンズ61を実装した後に第2レンズ62を実装する。これにより、倍率が低い第2レンズ62を補償用のレンズとして使用することができる。ここで、例えば一つのレンズのみでコリメート光を得る(第2レンズが省略された)レンズ系では、一つのコリメートレンズの位置ずれを0.3μm以下とすることが求められるのに対し、二つのレンズ(第1レンズ、第2レンズ)の組み合わせによりコリメート光を生成するレンズ系の場合には第2レンズ62の位置ずれを1.5μm以下とすれば所望の結合効率を実現できる。
【0031】
光モジュール1では、第1レンズ61及び第2レンズ62を例えば紫外線硬化樹脂によって固定する。具体的には、まず紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して第1レンズ61を固定する。ここで、紫外線硬化樹脂は、硬化に伴い1μm程度収縮する。この収縮で第1レンズ61の調芯状態が変化し、光の結合効率が劣化する。第2レンズ62についても、第1レンズ61の場合と同様、硬化に伴う紫外線硬化樹脂の収縮が懸念されるが、前述したように、第2レンズ62の位置ずれを1.5μm以下とすれば所望の結合効率を実現できるので、紫外線硬化樹脂の収縮による位置ずれは実質上問題とならない。
【0032】
次に、本実施形態の3レンズ系及び出力ユニット60の実装手順について説明する。まず、第1レンズ61、第2レンズ62、及び第3レンズ3c以外の光学部品を、それらの設計位置に搭載する。このとき搭載する光学部品は、光を透過又は反射するのみで、コリメート光が透過又は反射する限りにおいて、変調器11と信号光出力部3bとの光結合効率に大きな影響を与えない部品である。
【0033】
次に、変調器11に与えるバイアス電圧を調整し、変調器11の一方の出力ポート16aのみから信号光E1を出力する。以下では、出力ポート16aからPBCユニット65までの信号光E1の光路を第1光路R1、出力ポート16bからPBCユニット65までの信号光E2の光路を第2光路R2とする。そして、第1光路R1上の第1、第2レンズをそれぞれ第1レンズ61a及び第2レンズ62a、第2光路R2上の第1、第2レンズをそれぞれ第1レンズ61b及び第2レンズ62bとする。
【0034】
まず、第1光路R1上の第1レンズ61aの調芯を行う第1工程を実行する。そして、図5(a)に示されるように、ハウジング2に対する遠点(ハウジング2から1000mm程度離れた箇所)に赤外線カメラ70を配置して、この赤外線カメラ70上に投影される信号光E1のフィールドパターンを確認しながら、信号光E1がコリメート光となる第1レンズ61aの基準位置を決定する。そして、この基準位置から第1レンズ61aを光軸に沿って所定距離(例えば90μm)出力ポート16aに近づけて、第1レンズ61aからの信号光E1を発散光とする。以上の調芯を、第2光路R2の第1レンズ61bにも行う。
【0035】
次に、図5(b)に示されるように、第2レンズ62aの初期位置を決定する第2工程を実行する。この第2工程では、遠点に配置された赤外線カメラ70を用いて第2レンズ62aの初期位置を決定する。具体的には、赤外線カメラ70によって第2レンズ62aから出力される信号光E1のフィールドパターンを確認し、赤外線カメラ70に到達する信号光E1がコリメート光となる位置に、第2レンズ62aを移動する。第2レンズ62bに対しても同様の調芯を行う。
【0036】
そして、図5(c)に示されるように、治具80を信号光出力部3bの設計位置に配置する。この治具80は、第3レンズ3cとシングルモードファイバFを模した集光レンズ81及び光ファイバ82を備えており、集光レンズ81及び光ファイバ82の位置関係は、第3レンズ3c及びシングルモードファイバFの位置関係と同一である。
【0037】
治具80を配置した後には、光ファイバ82を介して得られる光の強度を測定し、当該強度が最大となる第2レンズ62a,62bの位置を特定する。この段階では、第2レンズ62a,62bを固定しない。この段階では、2つの第2レンズ62a,62bのうち、どちらが光ファイバ82への結合強度が大きいかを確認する。以下では、第2レンズ62aよりも第2レンズ62bの方が光ファイバ82への結合強度が大きいものとして説明する。
【0038】
図6(a)に示されるように、光ファイバ82への光結合強度が小さい第2レンズ62aを調芯し、この第2レンズ62aを、光ファイバ82への光結合強度が最大となる位置に固定する。このとき、当該第2レンズ62aを紫外線硬化樹脂によって固定する。
【0039】
続いて、図6(b)に示されるように、光ファイバ82への光結合強度が大きい第2レンズ62bの調芯を行う。このとき、第2レンズ62bから光ファイバ82への光結合強度が、第2レンズ62aから光ファイバ82への光結合強度に一致する第2レンズ62bの搭載位置を見出す。その後、第2レンズ62bを紫外線硬化樹脂によって固定する。
【0040】
第2レンズ62a,62bの固定を行った後には、治具80をハウジング2の前壁2cから外す。そして、第3レンズ3c及びシングルモードファイバFを備えた正規の信号光出力部3bを前壁2cに取り付け、ハウジング2に対する信号光出力部3bの調芯を行った後に信号光出力部3bをハウジング2に固定する。具体的には、信号光E1のみを出力ポート16aから出力し、信号光出力部3bを前壁2c上でスライドさせて光軸に垂直な面内での調芯を行う。次いで、当該面内における第3レンズ3cとシングルモードファイバFの調芯を行う。この第3レンズ3cの調芯とシングルモードファイバFの調芯を繰り返してシングルモードファイバFを介して観測する光の強度が最大となる信号光出力部3bの位置を見出し、当該位置で信号光出力部3bをハウジング2にYAG溶接によって固定する。このとき、第2レンズ62aから得られる光出力の強度は、第2レンズ62bから得られる光出力の強度と同程度となっている。
【0041】
次に、本実施形態に係る光モジュール1の製造方法の効果について説明する。本実施形態に係る光モジュール1の製造方法は、信号光E1,E2をコリメート光に変換する位置を基準位置として、第1レンズ61a,61bを、当該基準位置よりも所定距離だけ変調器11に近づけて配置している。従って、各第1レンズ61a,61bからの信号光E1,E2は共に発散光となる。この場合、第1レンズ61aと第2レンズ62aの距離、及び第1レンズ61bと第2レンズ62bの距離を短くすることができるので、光モジュール1の小型化に寄与する。
【0042】
また、本実施形態の製造方法では、第2レンズ62a、62bをそれぞれ基準位置(その透過光が実質コリメート光となる位置)に搭載し、一方の第2レンズ62bを透過して信号光出力部3bから出力される光の強度が、他方の第2レンズ62aを透過して信号光出力部3bから出力される光の強度よりも大きい場合、第2レンズ62bを透過した光の強度が第2レンズ62aを透過した光の強度に合致する位置に、第2レンズ62bを移動させる。すなわち、強度が大きい一方の第2レンズ62bをオフセットし、第2レンズ62bを通る信号光E2の強度を、強度が小さい他方の第2レンズ62aを通る信号光E1の強度に一致させる。従って、二つの信号光E1,E2の信号光出力部3を介して得られる強度の差を補償することができる。
【0043】
ところで、仮に変調器11へのバイアス電圧の調整を行わずに出力ポート16a,16bから信号光E1,E2を出力する場合は、MZ変調素子12〜15で位相状態を制御できていないため、信号光E1,E2の出力状態が最大であるとは限らない。この場合、前述した第2レンズ62a,62bの調芯を行っても、実使用状態で信号光E1,E2の強度が一致しないということが生じうる。
【0044】
この対策としては、変調器11へのバイアス電圧を調整し、出力ポート16aのみから光を出力させた状態で第2レンズ62aを移動し、出力ポート16bのみから光を出力させた状態で第2レンズ62bを移動する。具体的には、2つの第2レンズ62a,62bのうちどちらの結合効率が高いかを確認する工程では、変調器11へのバイアス電圧の制御を行い、変調器11内の各導波路における最大出力状態及び最小出力(消光)状態となる条件を決定しておく。最小出力状態となる条件を決定する理由としては、強度が大きい一方の第2レンズ62bの調芯時に、先に調芯を終えている第2レンズ62aを通る信号光E1が存在すると、信号光E2の正確な強度調整ができなくなる。このような場合に、信号光E1の出力を最小とする必要があるからである。
【0045】
前述したように、光モジュール1は、結合効率を調整するために第2レンズ62bをコリメート光が得られる初期搭載位置からオフセットしている。ここで、第2レンズ62bをオフセットする方向としては、第1レンズ61bに近づける方向と、第1レンズ61bから遠ざける方向の2種類がある。
【0046】
第2レンズ62bを第1レンズ61bに近づけると、第2レンズ62bを透過する信号光E2は発散光となる。この場合、第2レンズ62bと第3レンズ3cとの結合状態が第2レンズ62bの移動量に応じて単調に変化する(オフセット量の増加に伴って強度が単調に減少する)。このため、YAG溶接をするときの信号光出力部3bの調芯を安定して行うことができる。具体的には、YAG溶接時には僅かに調芯ずれが生じるが、この調芯ずれを見込んだ上で第2レンズ62bの位置を決定することができ、信号光出力部3bの調芯及び固定を安定して行うことができる。
【0047】
一方、第2レンズ62bを第1レンズ61bから遠ざけると、信号光E2は集束光となる。この場合、第2レンズ62bのオフセット量に応じて、信号光E2が第3レンズ3cに結合する前に焦点を結ぶ場合がある。第2レンズ62bを第1レンズ61bから遠ざけると、最初は結合効率が増加し、第2レンズ62bからの信号光E2がコリメート光となる位置で結合効率が最大となり、更に第2レンズ62bを第1レンズ61bから遠ざけると、その後は結合効率が低下する。結合効率がこのように変化するため、信号光出力部3bの調芯溶接時にタクトタイムが増加したり調芯位置のばらつきが生じたりする可能性がある。但し、第2レンズ62bを第1レンズ61bから遠ざける場合には、シングルモードファイバFの結合トレランスを拡大することができる(シングルモードファイバFの端面上のビーム径を小さくできる)という利点がある。
【0048】
また、前述した第3工程において、強度が大きい一方の第2レンズ62bを第1レンズ61bから遠ざけてもよい。更に、第2工程において、他方の第2レンズ62aを第1レンズ61aから遠ざけてもよい。これにより、各第2レンズ62a,62bと信号光出力部3bの間に位置するVOA66のシャッタにおけるビームの有効径が小さい場合であっても、シャッタの位置でビーム径を絞ることができる。
【0049】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述した各実施形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。
【符号の説明】
【0050】
1…光モジュール、2…ハウジング、2a…ハウジング本体、2b…蓋体、2c…前壁、2d,2f…側壁、2e…後壁、3…光結合部、3a…局発光出力部、3b…信号光出力部、3c…第3レンズ、4a,4b…リード端子、5…電極パッド、10…変調器ユニット、11…変調器、11a,11b,11c,11d,11e…カプラ、12,13,14,15…MZ変調素子、16a…出力ポート(第1出力ポート)、16b…出力ポート(第2出力ポート)、20,30…結合ユニット、21…第1レンズ、22…第2レンズ、23…プリズムミラー、40…光源ユニット、41…波長可変LD、50…波長検知ユニット、51,52…BS、53,54…モニタPD、55…エタロンフィルタ、60…出力ユニット、61,61a,61b…第1レンズ、62,62a,62b…第2レンズ、63…Siブロック、64…アイソレータ、65…PBCユニット(合波器)、65a…ミラー、65b…PBC素子、66…VOA(光減衰器)、70…赤外線カメラ、80…治具、81…集光レンズ、82…光ファイバ、E1…信号光(第1信号光)、E2…信号光(第2信号光)、E3,L3…信号光、F…シングルモードファイバ、L1,L2…CW光、P…偏波保持ファイバ、R1…第1光路、R2…第2光路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6