(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電線の前記溶出予定部はケーシング内に収容されるとともに、前記ケーシングの外面には電解液を前記ケーシング内に透過可能な導入部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリ監視システムにおける短絡保護装置。
前記ケーシングには、隣り合う前記電線同士の間隔を保ちつつ前記電線を保持する電線保持溝が形成されていることを特徴とする請求項2記載のバッテリ監視システムにおける短絡保護装置。
前記電線は、前記溶出予定部を前記ケーシングの内壁から離間した状態で保持されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のバッテリ監視システムにおける短絡保護装置。
前記ケーシングは前記導入部より進入した電解液を内部に貯留可能に形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載のバッテリ監視システムにおける短絡保護装置。
前記電線には、前記溶出予定部が透液性を有する保護部材によって保護されているものが含まれていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ監視システムにおける短絡保護装置。
前記電線は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のバッテリ監視システムにおける短絡保護装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明のバッテリ監視装置における短絡保護装置は、前記電線の前記溶出予定部はケーシング内に収容されるとともに、前記ケーシングの外面には電解液を前記ケーシング内に透過可能な導入部が形成されている構成とすることが好ましい。
上記の構成によれば、溶出予定部がケーシングによって一括して保護されるため、導電性の異物によって隣接する溶出予定部間が短絡してしまうことが回避される。また、電線毎の個別保護でないため、作業性にも優れる。さらに、ケーシングは導入部を通して内部に塩水等の電解液を導入することができ、溶出予定部の溶出を確実に行わせることができる。
(2)また、前記ケーシングには、隣り合う前記電線同士の間隔を保ちつつ前記電線を保持する電線保持溝が形成されると良い。
上記の構成によれば、電線はケーシングに形成された電線保持溝内に保持されて電線同士の間隔が保持される。したがって、隣接する溶出予定部同士が不用意に接近して短絡に至る事態を回避することができる。
(3)前記電線は、前記溶出予定部を前記ケーシングの内壁から離間した状態で保持されると良い。
仮に、溶出予定部が内壁と接する状態で保持されていると、溶出予定部から落下した溶出物によって隣接する電線同士が短絡してしまう懸念がある。しかし、上記の構成のように、溶出予定部をケーシングの内壁から浮かせて保持されるようにすれば、溶出物と電線との間には適切な高さが確保されているから、短絡の事態を回避することができる。
(4)前記ケーシングは前記導入部より進入した電解液を内部に貯留可能に形成されている
このような構成であれば、ケーシング周りの電解液の液位が下がったとしても、一旦、導入部よりケーシング内に進入した電解液は、引き続きケーシング内に留まっているため、溶出予定部を確実に溶断に至らしめることができる。
(5)前記電線には、前記溶出予定部が透液性を有する保護部材によって保護されているものが含まれるようにしても良い。
上記の構成によれば、溶出予定部が保護部材によって保護されているため、導電性異物によって溶出予定部間が短絡してしまう事態を回避することができる。また、保護部材は透液性を有するため、溶出予定部が電解液に浸かるのを何ら妨げない。
(6)前記電線は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金製であることが望ましい。
上記の構成によれば、アルミ電線は一般に使用されている銅電線と比較して溶出し易く、短時間で溶断に至らしめることができる。
【0010】
次に、本発明のバッテリ監視システムにおける短絡保護装置を具体化した実施例1乃至実施例3について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<実施例1>
図1乃至
図6は本発明の実施例1を示している。このうち、
図1はバッテリ1とバッテリ1(各電池セル)の充電状況を監視するためのバッテリ監視装置2との間をワイヤハーネスW/Hによって接続してなるバッテリ監視システムの概要を示している。
【0012】
バッテリ1は、複数の電池セルよりなる組電池であり、ハイブリッド車あるいは電気自動車に搭載される。各電池セルは、詳細には図示しないが、上面に一対の電極(正極及び負極)を有している。各電池セルは密着状態で整列して並び、全体としてバッテリ1を構成する。また、この際には並び方向に沿って正極と負極とが交互に位置するようにしてある。さらに、並び方向に隣接する電極間はバスバーによって接続されており、これによって全電池セルが直列に接続される。
【0013】
一方、バッテリ監視装置(ECU)2はボックス体を有し、内部には各電池セルの電圧を測定する機能を有した制御ユニット(図示しない)が組込まれている。この制御ユニットはプリント基板に接続されたコネクタ3を有しており、そのコネクタハウジングからは複数本の銅製端子金具が外部に導出されてプリント基板に接続されている。
【0014】
バッテリ監視装置2とバッテリ1との間を接続するワイヤハーネスW/Hは、複数本の電線4によって構成されている。
図1に示すように、本実施例1では、ワイヤハーネスW/Hは複数のグループに区分けされている。各電線4の両端部には図示しない銅製の端子金具が接続され、一方の端部に接続された端子金具は各電池セルの電極に接続され、他方の端部に接続された端子金具は、各グループ毎にコネクタ5に集約されて内部に収納されている。そして、各コネクタ5はバッテリ監視装置2のコネクタ3と接続されている。
【0015】
図2、
図5に示すように、各電線4は、芯線4Aと絶縁被覆4Bとからなっている。本実施例1では、芯線4Aはアルミニウムあるいはアルミニウム合金製からなる多数の素線からなり、これらを撚り合せた構成となっている。同図等に示すように、各電線4は中間部(長さ方向の途中部)において絶縁被覆4Bが所定長さ範囲に亘って剥ぎ取られ、溶出予定部6となっている。この溶出予定部6を含み、各電線4の所定長さ範囲はグループ単位でそれぞれケーシングCの内部に収容されている。
【0016】
ケーシングCは、
図2に示すように、ケース本体7と蓋体8とからなっており、それぞれは合成樹脂材によって一体に形成されている。
ケース本体7の全体は電線の伸び方向に長い長方形のプレート状に形成されている。ケース本体7の内面側には電線4を長さ方向に沿って収容するための電線保持溝9が複数条、凹設されている。各電線保持溝9はケース本体7の全長に亘って設けられているとともに、幅方向へは一定間隔で配されている。
【0017】
各電線保持溝9は、概略、以下の3つの部分からなっている。すなわち、各電線保持溝9は、長さ方向の中央部に配された深溝部9Aと、この深溝部9Aを前後に挟むようにして配され、各電線4に係止して上方への抜け止めを果たす抜け止め部9Bと、両抜け止め部9Bの前方と後方にそれぞれ配された一般部9Cとを備えた構成である。
【0018】
一般部9Cにおいて、各電線保持溝9の底面部は断面略半円形状に形成され、電線4の略下半周分の外形に適合して収容させうるようになっている。また、各電線保持溝9の溝幅は電線4の直径と等しいかやや狭めに形成され、かつその深さは電線径よりも十分に深い深さをもって形成されている。
【0019】
図2に示すように、両一般部9Cと、その前後に対応する抜け止め部9Bとの間には、ケーシングCの幅方向に沿いつつ全幅範囲に亘って横溝10が介在されており、全電線保持溝9の上部を横切っている。この横溝10の底面の高さ位置は、一般部9Cにおける電線保持溝9の底面よりも僅かに高い位置に設定されている。
【0020】
図2に示すように、抜け止め部9Bには電線保持溝9を幅方向に挟むようにして複数の抜け止めブロック11が配されている。幅方向で隣接する抜け止めブロック11の対向面であって、長さ方向の中央部には抜け止め突起12が突出形成されている。対向する抜け止め突起12同士の間隔は、電線4の外径より僅かに狭い設定となっている。また、各抜け止めブロック11にはケース本体7の厚み方向に沿ってスリット13が貫通している。これによって、抜け止めブロック11における抜け止め突起12が形成されている面はスリット13側へ向けて撓み変形が可能となっている。したがって、電線4が、幅方向で隣接する抜け止めブロック11の間(電線保持溝9)に押し込まれるときには、抜け止め突起12の形成面を撓み変形させる。そして、電線4が対抗する抜け止め突起12の間を通過すると、抜け止め突起12の形成面は弾性復帰する。その結果、電線4は対向する抜け止め突起12と係止して上方への抜け止めがなされる(
図5参照)。
また、幅方向で対向する抜け止め突起12が電線4に係止する高さ位置は、電線4の頂部よりやや下位の側面であり、このため、抜け止め突起12は電線4の絶縁被覆4Bにやや食い込みながら、電線4を下方へ押さえ付けるようにして係止する。
【0021】
深溝部9Aは、ケーシングCの内面における長さ方向の略中央部であって、前後の抜け止め部9Bの間において、幅方向に沿いつつ全幅範囲に亘って凹設されている。
図4に示すように、ケース本体7に蓋体8が閉止された状態でも、深溝部9Aの幅方向両端は外部に開放されていて、海水等の電解液に対する導入口14(導入部)となっている。この導入口14は全電線4における溶出予定部6に連通している。このため、導入口14から電解液が導入されると、全電線4における溶出予定部6が電解液に浸かることになる。
【0022】
深溝部9Aの深さは一般部9Cや抜け止め部9Bにおける電線保持溝9の深さよりも深く設定されている。したがって、
図5に示すように、電線が電線保持溝9に保持されている状態では、溶出予定部6は深溝部9Aの底面9A−1から所定高さだけ離間した高さ位置に保持される。つまり、溶出予定部6は深溝部9Aの底面9A−1から浮いた状態に保持され、かつ隣接する溶出予定部6同士は電線保持溝9のピッチ分だけ幅方向に離間し不用意に接触し合うことがないように保持されている。
【0023】
図4に示すように、蓋体8はケース本体7とほぼ同じ長さであるが、ケース本体7よりやや広幅に形成され、ケース本体7の内面側を覆い隠すようにして閉止される。
図3に示すように、蓋体8の裏面側であって、長さ方向の両端縁には複数の押さえ突起15が突出形成されている。各押さえ突起15は一般部9Cにおける各電線保持溝9と対応して配されている。各押さえ突起15は蓋体8の前後両端縁から長さ方向に沿って所定長さをもって形成され。電線保持溝9の溝幅よりは狭めに形成されている。
図4に示すように、各押さえ突起15は蓋体8がケース本体7に対して閉止されたときに、電線4の頂部を圧縮気味に押さえ付け、これによって、各電線4が長さ方向にずれ動かないように保持している。
【0024】
また、蓋体8の裏面側であって、ケース本体7の両横溝10と対応する位置には前後一対のクロスバー16が突設されている。各クロスバー16はケース本体7の幅方向に沿って全幅範囲に亘って延出している。クロスバー16の前後幅は横溝10の前後幅とほぼ同じに形成されている。クロスバー16の突出高さは横溝10の深さとほぼ同じであり、各押さえ突起15の突出高さより高くなっている。したがって、ケース本体7に対して蓋体8が閉止されたときには、横溝10に対して圧入気味にして嵌り合い、幅方向の両端部はケース本体7から外方へ突出する。
【0025】
クロスバー16のうち各電線保持溝9と対応する位置には断面半円形状の逃がし凹部17が電線4と等間隔で配され、蓋体8がケース本体7に閉止されたときには、電線4の上半周分に密着し、下半周分が電線保持溝9に密着するようになっている。
【0026】
次に、上記のように構成された本実施例1の作用効果を説明する。バッテリ1とバッテリ監視装置2とがワイヤハーネスW/Hによって接続されている状態において、ケーシングCが電解液に浸かると、電解液は導入口14からケーシングC内部に進入するため、全電線4の溶出予定部6、つまりアルミ電線が露出されている部位が電解液に浸かる。このとき、ケーシングC内の全電線4は常時、通電状態にあることから、溶出予定部6は溶出が開始されて所定時間が経過すると、高電位のものから順に溶断に至る(
図6参照)。
【0027】
一方、バッテリ監視装置2の制御ユニットが仮に非防水空間内に設置されていた場合には、プリント基板、コネクタ3も電解液に浸かるため、コネクタハウジングから導出されてプリント基板に接続された銅製の端子金具も溶出する。このため、溶出物によって隣接する端子金具間が短絡してしまうことが懸念される。しかし、本実施例1においては、銅製の端子金具が溶断に至るまでの時間よりアルミ芯線である溶出予定部6が溶断に至るまでの時間の方が早い。このことは出願人の行った実験によっても確かめられている。このように、早期に溶出予定部6の溶断が実現されることから、バッテリ監視装置2内の端子金具間が短絡するような事態が出現する前に、バッテリ監視装置2への通電状況が断たれるため、コネクタ3が異常に発熱する事態は確実に回避される。
【0028】
また、本実施例1では各溶出予定部6をケーシングCによって覆うようにしたため、隣接する溶出予定部6同士が導電性の異物によって短絡してしまうこともない。さらに、ケース本体7に形成された電線保持溝9によって各電線4の間隔が保持されることも短絡回避に寄与する。
【0029】
さらに、本実施例1の場合、各押さえ突起15にて電線4を押さえ付けることで、各電線4の前後方向の位置決めがなされている。したがって、各電線4が深溝部9Aで弛んでしまったりすることがなく、各溶出予定部6を深溝部9Aの形成範囲内に確実に位置決めすることができる。また、溶出予定部6を前後に挟んで抜け止め部9Bを形成し、各溶出予定部6に近接した部位で各電線4を押さえつつ抜け止めしているため、各溶出予定部6を上下・左右・前後の何れの方向に関しても確実に位置決めがなされている。
【0030】
上記のように、溶出予定部6が上下方向に位置決めされる結果、溶出予定部6を深溝部9Aの底面9A−1から所定高さ位置に浮かせることができるため、溶出予定部6から落下した溶出物によって隣接する溶出予定部6間で短絡を生じさせてしまうことを回避することができる。
【0031】
また、本実施例1においては、アルミ電線を使用している。つまり、溶出予定部6として露出している芯線部分には酸化アルミニウムの被膜が形成されている。したがって、形成されている被膜の厚さによっては絶縁性を示すことがある。その意味においては、アルミ電線を使用することは短絡回避に一層の寄与となる。
【0032】
<実施例2>
図7は本発明の実施例2を示している。実施例1のケーシングC1は導入口14を介して内外への電解液の出入りを許容するものであったが、本実施例2では電解液をケーシングC内に貯留する形式としたものである。
【0033】
具体的には、導入口14をケーシングCの蓋体8の上面に形成し、一旦、ケーシングC内に進入した電解液が外部へ流出しないよう、ケーシングCの側面および底面には開口が形成されていない。
他の構成は実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0034】
上記のように構成された本実施例2によれば、次のような作用効果を発揮することができる。すなわち、ケーシングCが電解液中に没すると、電解液は導入口14からケーシングCの内部に進入する。その後、比較的短時間で電解液の液位が下がっても、ケーシングC内には電解液が貯留されているため、各溶出予定部6は電解液に浸かった状態のままに維持される。したがって、ケーシングC周りが電解液から脱していたとしても、各溶出予定部6の溶断は確実に達成される。
【0035】
仮に、ケーシングC内に電解液を貯留させない構造を採った場合には、電解液の液位が低下した後、ケーシングCは電解液から脱しているものの、バッテリ監視装置内のコネクタは電解液中に浸かっているような事態が生じ得る。そうなると、溶出予定部6がいつまでも溶断されないために、コネクタの銅端子金具間で短絡を生じ、異常な発熱状態に至ることも懸念される。実施例2の構造は、こうした事態の回避に有効である。
【0036】
<実施例3>
図8は本発明の実施例3を示している。実施例1および実施例2は、複数本の電線4(溶出予定部6)を一括してケーシングC内に収容する形態を示したが、本実施例3では各電線4の溶出予定部6を保護部材18によって個別に覆うようにしたものである。
【0037】
保護部材18は透液性を有する材質(スポンジ状のもの)にてチューブ状に形成されたものであり、内部に溶出予定部6を収容し、両端部は溶出予定部6の前後に位置する電線被覆の4Bの外周面上で閉止されている。
【0038】
上記のように構成された本実施例3によれば、溶出予定部6が保護部材18によって覆われているため、導電性異物によって隣接する溶出予定部6が短絡してしまうことを回避することができる。その一方で、保護部材18はスポンジ状材質にて形成され良好な透液性が発揮されるため、電解液の導入によって溶出予定部6を溶断させる作用に支障を来すことはない。
【0039】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、溶出予定部6をバッテリ1とバッテリ監視装置2とを節足するワイヤハーネスW/Hの中間部位に設定したが、バッテリ監視装置2に接続されるコネクタ5の直後に設定してもよい。そのようにすれば、電線4がコネクタハウジングの各キャビティから導出された直後の長さ領域は電線4同士の間隔が保持されていることから、ケーシングCといった電線同士の間隔保持のための専用の部材を必要としない、という効果が得られる。
(2)上記実施例では、電線4をアルミ電線としたが、銅電線であってもよい。また、電線4は撚線である必要はなく、単芯線であってもよい。
(3)上記実施例1、2では、バッテリ1とバッテリ監視装置2を結ぶワイヤハーネスW/Hをグループごとに分けてケーシングC内に収容するようにしたが、グループ分けせずに全てのワイヤハーネスを一括して単一のケーシングCに収容するようにしてもよい。
(4)上記実施例1、2では、ケーシングCの導入口14を外部に開放された開口としたが、電解液等は透過するが、ごみ等の異物の侵入は規制可能な覆い部材で閉止するようにしてもよい。