【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装飾部材100には、以下のような問題があった。
すなわち、図
11(a)に示すように、ステッチ模様
を基材103の
外縁付近に形成する場合、縫い針101を基材103の表面103Aに対して面直方向から差し込むと、縫い針101が基材103の外縁に形成された外縁リブ103C等に干渉する場合がある。そのため、図
11(b)に示すように、上記干渉を回避すべく、縫い針101を基材103の表面103Aに対して傾斜状に差し込む必要があるが、その場合、縫い針101の先端が基材103の表面103Aで滑ることによって、基材103を保持する受け治具108と干渉し、縫い針101が簡単に折損又は変形等してしまう恐れがあった。
【0006】
また、縫い針101を基材103の表面103Aに対して傾斜状に差し込むと、縫い針101が受け治具108と干渉しないまでも、縫い針101と受け治具108の逃がし孔108Bとの隙間が変化することによって、基材103の裏面103Bへ糸
のループ部分
を安定して形成することが困難となる。その結果、ステッチ模様
の糸
を基材103に安定して固定でき難いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ステッチ模様の糸が基材の表面に対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸を挿通させる縫い針の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る内装部品及びその製造方法は、次のような構成を有している。
(1)基材と当該基材の表面に接着された表皮材とからなり、前記表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで縫い針に係合されて前記基材の表面に対して傾斜状に挿通された糸のループ部分が前記基材の裏面側に固定され、前記表皮材の表面側に前記糸のステッチ模様が形成された内装部品であって、
前記基材の表面側には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置に前記縫い針の滑り防止用座面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、基材の表面側には、ステッチ模様の糸が挿通される位置に縫い針の滑り防止用座面が形成されているので、糸を係合した縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込む場合でも、縫い針の先端が、基材の表面に対して滑りにくく、縫い針と受け治具の逃がし孔との隙間を略一定に保持することができる。そのため、基材の裏面へ糸のループ部分を安定して形成することができる。また、縫い針と受け治具との干渉を有効に回避できる。
【0010】
また、ステッチ模様を基材の外縁付近に形成する場合においても、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むことができるので、縫い針の先端が基材の外縁に形成された外縁リブ等と干渉するのを回避できる。したがって、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できると同時に、縫い針の折損や変形等を防止することができる。
【0011】
よって、本発明によれば、ステッチ模様の糸が基材の表面に対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸を挿通させる縫い針の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できる。
【0012】
(2)(1)に記載された内装部品において、
前記基材の裏面側又は前記滑り防止用座面と前記表皮材との間には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置に伸縮自在のゴム系部材を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、基材の裏面側又は滑り防止用座面と表皮材との間には、ステッチ模様の糸が挿通される位置に伸縮自在のゴム系部材を備えているので、縫い針によりゴム系部材に形成された糸挿通孔が縮径することによって、糸のループ部分における根元部を拘束し、糸の抜けを防止できる。そのため、糸を係合した縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込む場合でも、糸の抜けを防止して、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材により安定して固定できる。なお、伸縮自在のゴム系部材を滑り防止用座面と表皮材との間に備える場合には、基材の裏面側に補強リブや他の部品を取り付ける取り付け座等を設ける自由度が増加する。
【0014】
(3)(1)又は(2)に記載された内装部品において、
前記滑り防止用座面は、前記基材の表面に対して所定の傾斜角度で凹状に、かつ、ステッチ模様の長手方向に沿って連続状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、滑り防止用座面は、基材の表面に対して所定の傾斜角度で凹状に、かつ、ステッチ模様の長手方向に沿って連続状に形成されているので、滑り防止用座面をステッチ模様の長手方向で平坦な凹状連続面として形成でき、ステッチ模様における基材の表面側に配置された糸の部分的な浮き上がりを抑制することができる。そのため、基材の裏面側に糸のループ部分の大きさを安定して形成でき、ステッチ模様の糸を基材により安定して固定できる。
【0016】
(4)(3)に記載された内装部品において、
前記傾斜角度は、前記滑り防止用座面に対する前記糸の挿通角度が90度±30度以内となるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、傾斜角度は、滑り防止用座面に対する糸の挿通角度が90度±30度以内となるように形成されているので、滑り防止用座面による基材の最大凹み深さを制限でき、基材の局部的薄肉化を緩和できる。また、滑り防止用座面に対する糸の挿通角度が90度±30度以内であるので、滑り防止用座面に対する縫い針の先端の滑りを有効に回避させることができる。また、そのため、基材の強度を所定の水準に確保できるとともに、基材の裏面側に糸のループ部分の大きさを安定して形成でき、ステッチ模様の糸を基材により安定して固定できる。
【0018】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記ステッチ模様を形成するステッチ加工装置には、前記表皮材の上方に配置され前記縫い針を作動させて前記糸を前記基材に供給する糸供給装置と、前記基材の裏面に当接し当該基材を所定の姿勢で保持する受け治具とを備え、
前記縫い針の糸供給側の外周面には、前記糸を案内する糸溝が針軸方向に形成されているとともに、
前記受け治具には、前記基材の裏面側に挿通された前記縫い針の糸溝側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸押し面と、前記糸押し面と前記縫い針を挟んで対向し前記糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面とを備え、
前記縫い針を前記基材の裏面側に挿通してから引き戻す時に、前記糸押し面によって前記糸溝内の糸を針軸心に対して前記糸溝と反対方向へ押し出し、前記縫い針と前記糸逃し面との間で、前記糸のループ部分を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、ステッチ模様を形成するステッチ加工装置には、表皮材の上方に配置され縫い針を作動させて糸を基材に供給する糸供給装置と、基材の裏面に当接し当該基材を所定の姿勢で保持する受け治具とを備え、縫い針の糸供給側の外周面には、糸を案内する糸溝が針軸方向に形成されているとともに、受け治具には、基材の裏面側に挿通された縫い針の糸溝側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸押し面と、糸押し面と縫い針を挟んで対向し糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面とを備え、縫い針を基材の裏面側に挿通してから引き戻す時に、糸押し面によって糸溝内の糸を針軸心に対して糸溝と反対方向へ押し出し、縫い針と糸逃し面との間で、糸のループ部分を形成するので、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むときでも、糸のループ部分が縫い針の糸供給側と反対側のみに安定して形成され、基材の裏面側から糸のループ部分が基材の表面側へ抜けるのを、より一層防止することができる。したがって、縫い針の先端と基材を保持する受け治具との干渉を回避できると同時に、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できる。
【0020】
よって、本発明によれば、ステッチ模様の糸が基材の表面に対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸を挿通させる縫い針の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様の糸を基材に確実に固定できる。
【0021】
(6)(5)に記載された内装部品の製造方法において、
前記糸供給装置には、前記縫い針が前記基材の表面に対して傾斜状に挿通可能に形成された針挿通孔を有する表皮材押え部を備え、縫製時に前記針挿通孔によって前記縫い針の横移動を規制することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、糸供給装置には、縫い針が基材の表面に対して傾斜状に挿通可能に形成された針挿通孔を有する表皮材押え部を備え、縫製時に針挿通孔によって縫い針の横移動を規制するので、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むときでも、縫い針の先端が基材の表面で滑ることをより一層防止できる。そのため、縫い針が、基材を保持する受け治具と干渉し、簡単に折損又は変形等するのを回避することができる。
【0023】
また、本発明においては、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むときでも、縫製時に針挿通孔によって縫い針の横移動を規制することによって、糸押し面と縫い針の糸溝側の外周面との微小隙間が変化しにくく、糸溝内の糸を針軸心に対して糸溝と反対方向へ更に安定して押し出すことができる。そのため、基材の裏面側には、糸のループ部分が、糸溝が形成された縫い針の糸供給側と反対側のみに、安定して形成され、基材の裏面側から糸のループ部分が基材の表面側へ抜けるのを、より一層防止することができる。したがって、縫い針と受け治具との干渉を回避できると同時に、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材により一層安定して固定できる。
【0024】
(7)(6)に記載された内装部品の製造方法において、
前記針挿通孔の孔中心は、前記縫い針の針軸心に対して前記糸溝側へ偏心して形成され、前記針挿通孔の内周面と糸溝と反対側の縫い針の外周面との間には、微小隙間が形成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、針挿通孔の孔中心は、前記縫い針の針軸心に対して前記糸溝側へ偏心して形成され、前記針挿通孔の内周面と糸溝と反対側の縫い針の外周面との間には、微小隙間が形成されているので、縫製時に糸溝と反対側へ縫い針が移動するのを針挿通孔の内周面によって規制でき、基材の裏面側には、糸のループ部分が、縫い針に対して糸供給側と反対側のみに、より一層安定して形成される。また、糸のループ部分が縫い針の糸供給側と反対側のみに安定して形成されるので、基材の裏面側から糸のループ部分が基材の表面側へ抜けるのを、より一層防止することができる。