特許第6597529号(P6597529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597529
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】内装部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20191021BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20191021BHJP
   D05B 23/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B32B33/00
   B60R13/02 B
   D05B23/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-175939(P2016-175939)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-39425(P2018-39425A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年11月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−199641(JP,A)
【文献】 特開2011−98467(JP,A)
【文献】 特開2015−100955(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0312641(US,A1)
【文献】 米国特許第8530028(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0042767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B60R 13/02
D05B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と当該基材の表面に接着された表皮材とからなり、前記表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで縫い針に係合されて前記基材の表面に対して傾斜状に挿通された糸のループ部分が前記基材の裏面側に固定され、前記表皮材の表面側に前記糸のステッチ模様が形成された内装部品であって、
前記基材の表面側には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置に前記縫い針の滑り防止用座面が形成されていることを特徴とする内装部品。
【請求項2】
請求項1に記載された内装部品において、
前記基材の裏面側又は前記滑り防止用座面と前記表皮材との間には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置に伸縮自在のゴム系部材を備えていることを特徴とする内装部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された内装部品において、
前記滑り防止用座面は、前記基材の表面に対して所定の傾斜角度で凹状に、かつ、ステッチ模様の長手方向に沿って連続状に形成されていることを特徴とする内装部品。
【請求項4】
請求項3に記載された内装部品において、
前記傾斜角度は、前記滑り防止用座面に対する前記糸の挿通角度が90度±30度以内となるように形成されていることを特徴とする内装部品。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された内装部品の製造方法において、
前記ステッチ模様を形成するステッチ加工装置には、前記表皮材の上方に配置され前記縫い針を作動させて前記糸を前記基材に供給する糸供給装置と、前記基材の裏面に当接し当該基材を所定の姿勢で保持する受け治具とを備え、
前記縫い針の糸供給側の外周面には、前記糸を案内する糸溝が針軸方向に形成されているとともに、
前記受け治具には、前記基材の裏面側に挿通された前記縫い針の糸溝側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸押し面と、前記糸押し面と前記縫い針を挟んで対向し前記糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面とを備え、
前記縫い針を前記基材の裏面側に挿通してから引き戻す時に、前記糸押し面によって前記糸溝内の糸を針軸心に対して前記糸溝と反対方向へ押し出し、前記縫い針と前記糸逃し面との間で、前記糸のループ部分を形成することを特徴とする内装部品の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された内装部品の製造方法において、
前記糸供給装置には、前記縫い針が前記基材の表面に対して傾斜状に挿通可能に形成された針挿通孔を有する表皮材押え部を備え、縫製時に前記針挿通孔によって前記縫い針の横移動を規制することを特徴とする内装部品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された内装部品の製造方法において、
前記針挿通孔の孔中心は、前記縫い針の針軸心に対して前記糸溝側へ偏心して形成され、前記針挿通孔の内周面と糸溝と反対側の縫い針の外周面との間には、微小隙間が形成されていることを特徴とする内装部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と当該基材の表面に接着された表皮材とからなり、表皮材の表面にステッチ模様が形成された内装部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内装部品においては、硬質の合成樹脂からなる基材の表面を柔らかい表皮材で覆い、その表皮材の表面にシボ模様と糸が縫製されたステッチ模様とを施すことによって、デザイン上の見栄えを向上し、高級感やソフト感を醸す工夫がなされている。このステッチ模様を、基材に対して、下糸を使用せず上糸だけで縫製した装飾部材及びその製造方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載された装飾部材の製造方法によれば縫い針先端に糸通し、該縫い針、基材表面から差し込み、該糸基材裏面へ延出するまで貫通させる。基材は、糸挿通された貫通孔形成される。そして、前記縫い針基材表面へ引き抜いて、ステッチの縫い目に相当するピッチだけ基材移動させる動作と、該縫い針再び基材差し込む動作とを交互に繰り返すことで、基材表面該糸よるステッチ模様形成される。なお、ステッチ模様、1本の糸(上糸)ら形成されるので、該糸おける基材裏面延出した部分はループ部分形成する。また、糸によるステッチ模様形成が完了したら、基材裏面樹脂ホットメルトまたは接着剤等を塗布して、糸ループ部分埋め込まれるように固化させることで、ステッチ模様設けた装飾部材製造される。すなわち、基材ステッチ模様設けた装飾部材、樹脂ホットメルトまたは接着剤が固化して形成された糸固定部より、糸基材表面抜け出ることを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−98467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装飾部材100には、以下のような問題があった。
すなわち、図11(a)に示すように、ステッチ模様基材103の縁付近に形成する場合、縫い針101を基材103の表面103Aに対して面直方向から差し込むと、縫い針101が基材103の外縁に形成された外縁リブ103C等に干渉する場合がある。そのため、図11(b)に示すように、上記干渉を回避すべく、縫い針101を基材103の表面103Aに対して傾斜状に差し込む必要があるが、その場合、縫い針101の先端が基材103の表面103Aで滑ることによって、基材103を保持する受け治具108と干渉し、縫い針101が簡単に折損又は変形等してしまう恐れがあった。
【0006】
また、縫い針101を基材103の表面103Aに対して傾斜状に差し込むと、縫い針101が受け治具108と干渉しないまでも、縫い針101と受け治具108の逃がし孔108Bとの隙間が変化することによって、基材103の裏面103Bへ糸ループ部分安定して形成することが困難となる。その結果、ステッチ模様基材103に安定して固定でき難いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ステッチ模様の糸が基材の表面に対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸を挿通させる縫い針の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る内装部品及びその製造方法は、次のような構成を有している。
(1)基材と当該基材の表面に接着された表皮材とからなり、前記表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで縫い針に係合されて前記基材の表面に対して傾斜状に挿通された糸のループ部分が前記基材の裏面側に固定され、前記表皮材の表面側に前記糸のステッチ模様が形成された内装部品であって、
前記基材の表面側には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置に前記縫い針の滑り防止用座面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、基材の表面側には、ステッチ模様の糸が挿通される位置に縫い針の滑り防止用座面が形成されているので、糸を係合した縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込む場合でも、縫い針の先端が、基材の表面に対して滑りにくく、縫い針と受け治具の逃がし孔との隙間を略一定に保持することができる。そのため、基材の裏面へ糸のループ部分を安定して形成することができる。また、縫い針と受け治具との干渉を有効に回避できる。
【0010】
また、ステッチ模様を基材の外縁付近に形成する場合においても、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むことができるので、縫い針の先端が基材の外縁に形成された外縁リブ等と干渉するのを回避できる。したがって、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できると同時に、縫い針の折損や変形等を防止することができる。
【0011】
よって、本発明によれば、ステッチ模様の糸が基材の表面に対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸を挿通させる縫い針の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できる。
【0012】
(2)(1)に記載された内装部品において、
前記基材の裏面側又は前記滑り防止用座面と前記表皮材との間には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置に伸縮自在のゴム系部材を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、基材の裏面側又は滑り防止用座面と表皮材との間には、ステッチ模様の糸が挿通される位置に伸縮自在のゴム系部材を備えているので、縫い針によりゴム系部材に形成された糸挿通孔が縮径することによって、糸のループ部分における根元部を拘束し、糸の抜けを防止できる。そのため、糸を係合した縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込む場合でも、糸の抜けを防止して、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材により安定して固定できる。なお、伸縮自在のゴム系部材を滑り防止用座面と表皮材との間に備える場合には、基材の裏面側に補強リブや他の部品を取り付ける取り付け座等を設ける自由度が増加する。
【0014】
(3)(1)又は(2)に記載された内装部品において、
前記滑り防止用座面は、前記基材の表面に対して所定の傾斜角度で凹状に、かつ、ステッチ模様の長手方向に沿って連続状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、滑り防止用座面は、基材の表面に対して所定の傾斜角度で凹状に、かつ、ステッチ模様の長手方向に沿って連続状に形成されているので、滑り防止用座面をステッチ模様の長手方向で平坦な凹状連続面として形成でき、ステッチ模様における基材の表面側に配置された糸の部分的な浮き上がりを抑制することができる。そのため、基材の裏面側に糸のループ部分の大きさを安定して形成でき、ステッチ模様の糸を基材により安定して固定できる。
【0016】
(4)(3)に記載された内装部品において、
前記傾斜角度は、前記滑り防止用座面に対する前記糸の挿通角度が90度±30度以内となるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、傾斜角度は、滑り防止用座面に対する糸の挿通角度が90度±30度以内となるように形成されているので、滑り防止用座面による基材の最大凹み深さを制限でき、基材の局部的薄肉化を緩和できる。また、滑り防止用座面に対する糸の挿通角度が90度±30度以内であるので、滑り防止用座面に対する縫い針の先端の滑りを有効に回避させることができる。また、そのため、基材の強度を所定の水準に確保できるとともに、基材の裏面側に糸のループ部分の大きさを安定して形成でき、ステッチ模様の糸を基材により安定して固定できる。
【0018】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記ステッチ模様を形成するステッチ加工装置には、前記表皮材の上方に配置され前記縫い針を作動させて前記糸を前記基材に供給する糸供給装置と、前記基材の裏面に当接し当該基材を所定の姿勢で保持する受け治具とを備え、
前記縫い針の糸供給側の外周面には、前記糸を案内する糸溝が針軸方向に形成されているとともに、
前記受け治具には、前記基材の裏面側に挿通された前記縫い針の糸溝側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸押し面と、前記糸押し面と前記縫い針を挟んで対向し前記糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面とを備え、
前記縫い針を前記基材の裏面側に挿通してから引き戻す時に、前記糸押し面によって前記糸溝内の糸を針軸心に対して前記糸溝と反対方向へ押し出し、前記縫い針と前記糸逃し面との間で、前記糸のループ部分を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、ステッチ模様を形成するステッチ加工装置には、表皮材の上方に配置され縫い針を作動させて糸を基材に供給する糸供給装置と、基材の裏面に当接し当該基材を所定の姿勢で保持する受け治具とを備え、縫い針の糸供給側の外周面には、糸を案内する糸溝が針軸方向に形成されているとともに、受け治具には、基材の裏面側に挿通された縫い針の糸溝側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸押し面と、糸押し面と縫い針を挟んで対向し糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面とを備え、縫い針を基材の裏面側に挿通してから引き戻す時に、糸押し面によって糸溝内の糸を針軸心に対して糸溝と反対方向へ押し出し、縫い針と糸逃し面との間で、糸のループ部分を形成するので、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むときでも、糸のループ部分が縫い針の糸供給側と反対側のみに安定して形成され、基材の裏面側から糸のループ部分が基材の表面側へ抜けるのを、より一層防止することができる。したがって、縫い針の先端と基材を保持する受け治具との干渉を回避できると同時に、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できる。
【0020】
よって、本発明によれば、ステッチ模様の糸が基材の表面に対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸を挿通させる縫い針の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様の糸を基材に確実に固定できる。
【0021】
(6)(5)に記載された内装部品の製造方法において、
前記糸供給装置には、前記縫い針が前記基材の表面に対して傾斜状に挿通可能に形成された針挿通孔を有する表皮材押え部を備え、縫製時に前記針挿通孔によって前記縫い針の横移動を規制することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、糸供給装置には、縫い針が基材の表面に対して傾斜状に挿通可能に形成された針挿通孔を有する表皮材押え部を備え、縫製時に針挿通孔によって縫い針の横移動を規制するので、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むときでも、縫い針の先端が基材の表面で滑ることをより一層防止できる。そのため、縫い針が、基材を保持する受け治具と干渉し、簡単に折損又は変形等するのを回避することができる。
【0023】
また、本発明においては、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込むときでも、縫製時に針挿通孔によって縫い針の横移動を規制することによって、糸押し面と縫い針の糸溝側の外周面との微小隙間が変化しにくく、糸溝内の糸を針軸心に対して糸溝と反対方向へ更に安定して押し出すことができる。そのため、基材の裏面側には、糸のループ部分が、糸溝が形成された縫い針の糸供給側と反対側のみに、安定して形成され、基材の裏面側から糸のループ部分が基材の表面側へ抜けるのを、より一層防止することができる。したがって、縫い針と受け治具との干渉を回避できると同時に、基材の裏面側に糸のループ部分を安定して形成することができ、ステッチ模様の糸を基材により一層安定して固定できる。
【0024】
(7)(6)に記載された内装部品の製造方法において、
前記針挿通孔の孔中心は、前記縫い針の針軸心に対して前記糸溝側へ偏心して形成され、前記針挿通孔の内周面と糸溝と反対側の縫い針の外周面との間には、微小隙間が形成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、針挿通孔の孔中心は、前記縫い針の針軸心に対して前記糸溝側へ偏心して形成され、前記針挿通孔の内周面と糸溝と反対側の縫い針の外周面との間には、微小隙間が形成されているので、縫製時に糸溝と反対側へ縫い針が移動するのを針挿通孔の内周面によって規制でき、基材の裏面側には、糸のループ部分が、縫い針に対して糸供給側と反対側のみに、より一層安定して形成される。また、糸のループ部分が縫い針の糸供給側と反対側のみに安定して形成されるので、基材の裏面側から糸のループ部分が基材の表面側へ抜けるのを、より一層防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ステッチ模様の糸が基材の表面に対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸を挿通させる縫い針の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様の糸を基材に安定して固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る実施形態である内装部品の斜視図である。
図2図1に示す内装部品において第1実施例のステッチ模様を表すA−A断面図である。
図3図2に示すB−B断面図である。
図4図3に示す基材の表面に対する滑り防止用座面の傾斜角度と滑り防止用座面に対する糸の挿通角度との関係を説明する部分断面図である。(a)は、挿通角度が90度の場合を示し、(b)は挿通角度が110度の場合を示す。
図5図2に示す第1実施例の内装部品を製造するステッチ加工装置の部分断面図である。
図6図5に示すC−C断面図である。
図7図5に示すD矢視図である。
図8図1に示す内装部品において第2実施例のステッチ模様を表すA−A断面図である。
図9図8に示すE−E断面図である。
図10図3に示す滑り防止用座面の変形例の断面図である。(a)は、先行針で基材の表面側に楔状凹面を形成した場合を示し、(b)は、ヤスリ等で粗面化させるか、又は微小な山谷を形成した場合を示す。
図11】特許文献1に記載された装飾部材の基材にステッチ模様を基材の外縁に形成する場合を表す加工断面図である。(a)は、縫い針を基材の表面に対して面直方向に差し込む場合を示し、(b)は、縫い針を基材の表面に対して傾斜状に差し込む場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明に係る実施形態である内装部品及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る第1実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を説明し、そのステッチ模様を形成する加工手順を説明する。また、本実施形態に係る第2実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を説明する。
【0029】
(第1実施例)
<ステッチ模様を備えた内装部品の構造>
まず、本実施形態に係る第1実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を、図1図4を用いて説明する。図1に、本発明に係る実施形態である内装部品の斜視図を示す。図2に、図1に示す内装部品において第1実施例のステッチ模様を表すA−A断面図を示す。図3に、図2に示すB−B断面図を示す。図4に、図3に示す基材の表面に対する滑り防止用座面の傾斜角度と滑り防止用座面に対する糸の挿通角度との関係を説明する部分断面図を示し、(a)は、挿通角度が90度の場合を示し、(b)は挿通角度が110度の場合を示す。
【0030】
図1図2に示すように、本内装部品10は、例えば、車両の運転席及び助手席の前方に配置するインストルメントパネルであって、所要の形状に形成された硬質の合成樹脂からなる基材1と、基材1の表面1Aに接着された軟質の表皮材2とから構成されている。基材1は、例えば、射出成形されたポリプロピレン(PP)製である。また、表皮材2は、表面側の延性に優れた表皮21と基材側の発泡層22とで構成され、基材1に接着されている。表皮21には、高級感やソフト感を醸すため、革調のシボ模様が形成されている。表皮21は、例えば、0.5〜0.8mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)製である。発泡層22は、例えば、3〜4mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)製である。また、表皮材2の表面には、車両左右方向に延びる糸31のステッチ模様3が形成されている。
【0031】
また、ステッチ模様3の糸31は、糸(上糸)31を表皮材2の表面側から基材1の裏面側まで縫い針と共に挿通して、縫い針を引き戻す際に形成される糸31のループ部分32を基材1の裏面1B側に備えた伸縮自在のゴム系部材4が拘束することによって、基材1に固定されている。すなわち、基材1の裏面1B側には、縫い針によって糸31が挿通されたゴム系部材4を備え、当該ゴム系部材4に縫い針にて形成された糸挿通孔41が縮径することによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束され、その結果、ステッチ模様3の糸31が基材1に固定されている。なお、糸31は、例えば、外径が0.5〜0.8mm程度の合成繊維製であり、糸31の外径は、基材1に縫い針によって形成された糸挿通孔11の内径(例えば、1.5〜2.0mm)より小さい。
【0032】
また、ゴム系部材4は、例えば、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の材質からなる帯状に形成された板状ゴム体であって、ショアA硬度(JIS K 6253)がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であることが好ましい。ゴム系部材4は、上記所定の硬度及び厚さを有する平坦な板状ゴム体であって、予め基材1の裏面形状に沿わせて形成する必要はない。また、ゴム系部材4は、基材1の裏面に当接させるだけであるので、ゴム系部材4を基材1の裏面に接着させる必要もない。なお、エチレンプロピレンゴム(EPDM)製の板状ゴム板では、ショアA硬度(JIS K 6253)がA70〜80の範囲内で、厚さが1〜2mmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
また、ループ部分32は、ステッチ模様3の縫製後にゴム系部材4の裏面側に塗布された接着剤5によって、当該ゴム系部材4と接着されていることが好ましい。ゴム系部材4における材質の経年劣化や硬度の温度変化等に対応して、糸挿通孔41の伸縮による糸31の締付力を接着剤5の接着力によって補完することができるからである。ステッチ模様3の縫製後に、接着剤5によってループ部分32をゴム系部材4の裏面側に接着させる理由は、ステッチ模様3の縫製前では、接着剤5が縫い針71に付着して縫い針71の基材1への挿通抵抗が大幅に増加するからである。ここでは、接着剤5として、例えば、塗布型の接着剤を用いたが、それ以外に、接着剤5として、例えば、接着テープを用いてもよい。
【0034】
また、図1図3に示すように、本内装部品10は、基材1と当該基材1の表面1Aに接着された表皮材2とからなり、表皮材2の表面2A側から基材1の裏面1B側まで縫い針に係合されて基材1の表面1Aに対して傾斜状に挿通された糸31のループ部分32が基材1の裏面1B側に固定され、表皮材2の表面2Aに糸31のステッチ模様3を備えた内装部品である。
【0035】
また、基材1の表面1A側には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置に縫い針の滑り防止用座面1Cが形成されている。滑り防止用座面1Cは、基材1の表面1Aに対して所定の傾斜角度θで凹状に形成され、ステッチ模様3の長手方向に沿って連続状に形成されている。傾斜角度θは、基材1の外縁に形成された外縁リブ1Dに対して、糸挿通孔11を形成する縫い針が少なくとも2〜3mm程度以上離間する方向に傾いている。滑り防止用座面1Cは、ステッチ模様3の長手方向で平坦な連続面として形成され、その幅Lは、ステッチ模様3の長手方向で略一定に形成されている。
【0036】
また、傾斜角度θは、滑り防止用座面1Cに対する糸31の挿通角度αが90度±30度以内となるように形成されている。ここでは、糸31の挿通角度αは、略90度に設定されている。なお、糸31の挿通角度αは、縫い針の滑り防止の観点から略90度が好ましいが、基材1の強度上の観点から、滑り防止用座面1Cの基材1の表面1Aに対する最大凹み深さJは、基材1の厚さに対して1/2倍以内であることが好ましい。したがって、例えば、図4(a)に示すように、滑り防止用座面1Caに対する糸31の挿通角度α1を90度にすると、基材1の表面1Aに対する滑り防止用座面1Caの傾斜角度θ1が大きくなり、最大凹み深さJ1が、基材1の厚さに対して1/2倍以上となる場合には、図4(b)に示すように、基材1の表面1Aに対する滑り防止用座面1Cbの傾斜角度θ2を、滑り防止用座面1Cbに対する糸31の挿通角度α2が例えば110度(90度以上で120度以内)となるように、小さく設定する。これによって、滑り防止用座面1Cbの基材1の表面1Aに対する最大凹み深さJ2が減少し、基材1の局部的薄肉化を緩和しつつ、縫い針の先端の滑りを有効に回避させることができる。
【0037】
また、滑り防止用座面1Cの基材1の表面1Aに対する最大凹み深さJを少なくするため、滑り防止用座面1Cの一部を基材1の表面1Aから突出するように形成してもよい。また、基材1の裏面1Bを、滑り防止用座面1Cと略平行に形成して、基材1の厚さを略一定に形成してもよい。
【0038】
<ステッチ模様の加工手順>
次に、本内装部品におけるステッチ模様を形成する加工手順を、図5図7を用いて詳細に説明する。図5に、図2に示す第1実施例の内装部品を製造するステッチ加工装置の部分断面図を示す。図6に、図5に示すC−C断面図を示す。図7に、図5に示すD矢視図を示す。
【0039】
図5図7に示すように、本内装部品10のステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20には、表皮材2の上方に配置され縫い針71を作動させて糸31を基材1に供給する糸供給装置7と、基材1の裏面1Bに当接し当該基材1を所定の姿勢で保持する受け治具6とを備え、縫い針71の糸供給側の外周面71SCには、糸31を案内する糸溝712が針軸方向に形成されているとともに、受け治具6には、基材1の裏面1B側に挿通された縫い針71の糸供給側の外周面71SCと微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸押し面621と、糸押し面621と縫い針71を挟んで対向し糸31のループ部分32が収容可能に配置された糸逃し面622とを備えている。また、縫い針71の先端部71Tには、糸(上糸)31を係合(挿通)する糸孔711が形成されている。糸溝712は、糸孔711から針基端側に向けて形成されている。
【0040】
ここで、糸溝712の深さは、糸31の外径と同程度が好ましい。また、縫い針71の糸供給側の外周面71SCと糸押し面621との微小間隔は、互いに干渉しない程度で、糸31の外径以下の距離が好ましく、糸31の外径に対して1〜0.7倍程度の距離が更に好ましい。
【0041】
また、受け治具6には、ステッチ模様3に沿って延設された帯状のゴム系部材4を位置決めするゴム受座61が形成されている。また、ゴム受座61の下方には、ステッチ模様3に沿って所定幅の逃がし孔62が形成されている。逃がし孔62は、糸押し面621と糸逃し面622とによって区画されている。なお、糸供給装置7は、図示しない多関節型のロボットのアーム部先端に装着され、ステッチ模様3を形成するため、基材1に対して必要な位置、必要な角度に移動できる。
【0042】
また、糸供給装置7には、縫い針71が基材1の表面1Aに対して傾斜状に挿通可能に形成された針挿通孔724を有する表皮材押え部72を備え、縫製時に針挿通孔724によって縫い針71の横移動を規制する。表皮材押え部72には、装置本体に立設された支持部721と、支持部721の先端側に略円錐状に形成され縫い針71の外周側で表皮材2を押圧する押え部722を備えている。押え部722は、引き戻し後の縫い針71の先端より先端側に位置するように形成されている。押え部722の中心部に、縫い針71と糸供給側の糸31とが通過できる針挿通孔724が形成されている。ここで、針挿通孔724の孔中心724Cは、縫い針71の針軸心71Cに対して糸溝712側へ偏心して形成され、針挿通孔724の内周面と糸溝712と反対側の縫い針71の外周面との間には、微小隙間d(0〜0.1mm程度)が形成されている。そのため、縫製時に、縫い針71が糸溝712と反対側へ移動するのを、針挿通孔724の内周面によって規制できる。なお、針挿通孔724は、真円でも楕円でもよい。また、針挿通孔724の孔中心724Cは、押え部722の中心に対して偏心して形成されていてもよい。
【0043】
糸供給装置7は、糸孔711に係合された糸31を表皮材2の表面2A側からゴム系部材4の裏面側まで縫い針71と共に挿通してから、表皮材2の表面2A側まで引き戻し、次の縫い位置まで縫い針71と糸31を移動させる。そして、縫い針71をゴム系部材4の裏面側に挿通してから引き戻す時に、糸押し面621によって糸溝712内の糸31を針軸心に対して糸溝712と反対方向へ押し出し、縫い針71と糸逃し面622との間で、糸のループ部分32を形成する。
【0044】
具体的には、図5に示すように、縫い針71の糸孔711に糸31を係合した状態で、縫い針71を表皮材2の表面2A側からゴム系部材4の裏面側の挿通終端まで、基材1の表面1Aに対して傾斜状(法線方向に対する傾斜角度θ)に挿通させた(仮想線で示す状態)後に、縫い針71を上方(矢印H2の方向)へ引き戻すとき、糸供給側にある糸溝712内の糸31は、糸押し面621によって糸孔711を通して糸溝712と反対方向(矢印P1の方向)へ押し出される。そして、糸供給側の糸31は糸溝712内に収容された状態で縫い針71が引き戻されるので、ゴム系部材4の糸挿通孔41が縮径しても糸31に対する摩擦抵抗は殆んど作用しない。そのため、糸供給側の糸31は、上方(矢印P2の方向)へ簡単に巻き戻され、糸のループ部分を形成しない。
【0045】
これに対して、糸供給側と反対側では、ゴム系部材4の糸挿通孔41が縮径することによって、ゴム系部材4の糸挿通孔41と糸31との間で摩擦抵抗が作用し、糸31の上方への動きが拘束される。そのため、縫い針71を上方へ引き戻すとき、縫い針71と糸逃し面622との間に形成されたループ収容空間623内のみで、糸31のループ部分32が形成される。したがって、ゴム系部材4の裏面側には、糸31のループ部分32が、糸供給側と反対側のみに安定して形成される。糸31のループ部分32が糸供給側と反対側のみに安定して形成されることによって、基材1の裏面1B側から糸31のループ部分32が抜けるのを、防止することができる。
【0046】
その結果、ステッチ模様3を基材1の外縁付近に形成する場合においても、縫い針71を基材1の表面1Aに対して面直方向から差し込まなくても良いので、縫い針71の先端が基材1の外縁に形成された外縁リブ等と干渉するのを回避でき、また、基材1の裏面1B側に糸31のループ部分32を安定して形成することができ、ステッチ模様3の糸31を基材1に安定して固定できると同時に、縫い針71の折損や変形等を防止することができる。
【0047】
(第2実施例)
<ステッチ模様を備えた内装部品の構造>
次に、本実施形態に係る第2実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を、図8図9を用いて説明する。図8に、図1に示す内装部品において第2実施例のステッチ模様を表すA−A断面図を示す。図9に、図8に示すE−E断面図を示す。
【0048】
図8図9に示すように、本内装部品10Bは、ゴム系部材4Bを除いて、第1実施例の構造と共通している。そのため、第1実施例との共通部分に関しては、同一の符号を付して、その説明は原則として割愛する。ここでは、相違点であるゴム系部材4Bに関する内容を、詳細に説明する。なお、本内装部品10Bのステッチ模様3の加工手順は、前述した第1実施例の加工手順と同様である。
【0049】
第2実施例においては、滑り防止用座面1Cと表皮材2との間に、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置に伸縮自在のゴム系部材4Bを備えている。ゴム系部材4Bは、滑り防止用座面1Cの幅Lより小さい幅寸法で、ステッチ模様3の長手方向に沿って連続状に形成されている。ゴム系部材4Bは、所定の厚さを有する板状体として形成されているが、表皮材2の発泡層22の圧縮量を過大にさせないため、上方に面取り部42Bを形成し、基材1の表面1Aからの突出量を低減させることが好ましい。
【0050】
ステッチ模様3の糸31は、糸(上糸)31を表皮材2の表面側から基材1の裏面1B側まで縫い針と共に挿通して、縫い針を引き戻す際に形成される糸31のループ部分32を滑り防止用座面1Cと表皮材2との間に備えたゴム系部材4Bが拘束することによって、基材1に固定されている。すなわち、滑り防止用座面1Cと表皮材2との間には、縫い針によって糸31が挿通されたゴム系部材4Bを備え、当該ゴム系部材4Bに縫い針にて形成された糸挿通孔41Bが縮径することによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束され、その結果、ステッチ模様3の糸31が基材1に固定されている。
【0051】
なお、第2実施例においては、伸縮自在のゴム系部材4Bを滑り防止用座面1Cと表皮材2との間に備えるので、基材1の裏面1B側に図示しない補強リブや他の部品を取り付ける取り付け座等を設ける自由度が増加する。また、糸のループ部分32は、ステッチ模様3の縫製後に基材1の裏面1B側に塗布された接着剤5等によって、基材1と固定することができる。
【0052】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る内装部品10、10Bによれば、基材1の表面1A側には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置に縫い針71の滑り防止用座面1Cが形成されているので、糸31を係合した縫い針71を基材1の表面1Aに対して傾斜状に差し込む場合でも、縫い針71の先端が、基材1の表面1Aに対して滑りにくく、縫い針71と受け治具6の逃がし孔62との隙間を略一定に保持することができる。そのため、基材1の裏面1Bへ糸31のループ部分32を安定して形成することができる。また、縫い針71と受け治具6との干渉を有効に回避できる。
【0053】
また、ステッチ模様3を基材1の外縁付近に形成する場合においても、縫い針71を基材1の表面1Aに対して傾斜状に差し込むことができるので、縫い針71の先端が基材1の外縁に形成された外縁リブ1D等と干渉するのを回避できる。したがって、基材1の裏面1B側に糸31のループ部分32を安定して形成することができ、ステッチ模様3の糸31を基材1に安定して固定できると同時に、縫い針71の折損や変形等を防止することができる。
【0054】
よって、本実施形態によれば、ステッチ模様3の糸31が基材1の表面1Aに対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸31を挿通させる縫い針71の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様3の糸31を基材1に安定して固定できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、基材1の裏面1B側又は滑り防止用座面1Cと表皮材2との間には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置に伸縮自在のゴム系部材4、4Bを備えているので、縫い針71によりゴム系部材4、4Bに形成された糸挿通孔41、41Bが縮径することによって、糸31のループ部分32における根元部321を拘束し、糸31の抜けを防止できる。そのため、糸31を係合した縫い針71を基材1の表面1Aに対して傾斜状に差し込む場合でも、糸31の抜けを防止して、基材1の裏面1B側に糸31のループ部分32を安定して形成することができ、ステッチ模様3の糸31を基材1により安定して固定できる。なお、伸縮自在のゴム系部材4Bを滑り防止用座面1Cと表皮材2との間に備える場合には、基材1の裏面1B側に補強リブや他の部品を取り付ける取り付け座等を設ける自由度が増加する。
【0056】
また、本実施形態によれば、滑り防止用座面1Cは、基材1の表面1Aに対して所定の傾斜角度θで凹状に、かつ、ステッチ模様3の長手方向に沿って連続状に形成されているので、滑り防止用座面1Cをステッチ模様3の長手方向で平坦な凹状連続面として形成でき、ステッチ模様3における基材1の表面1A側に配置された糸31の部分的な浮き上がりを抑制することができる。そのため、基材1の裏面1B側に糸31のループ部分32の大きさを安定して形成でき、ステッチ模様3の糸31を基材1により安定して固定できる。
【0057】
また、本実施形態によれば、傾斜角度θは、滑り防止用座面1Cに対する糸31の挿通角度αが90度±30度以内となるように形成されているので、滑り防止用座面1Cによる基材1の最大凹み深さJを制限でき、基材1の局部的薄肉化を緩和できる。また、滑り防止用座面1Cに対する糸31の挿通角度αが90度±30度以内であるので、滑り防止用座面1Cに対する縫い針71の先端の滑りを有効に回避させることができる。また、そのため、基材1の強度を所定の水準に確保できるとともに、基材1の裏面1B側に糸31のループ部分32の大きさを安定して形成でき、ステッチ模様3の糸31を基材1により安定して固定できる。
【0058】
また、他の実施形態に係る内装部品の製造方法によれば、ステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20には、表皮材2の上方に配置され縫い針71を作動させて糸31を基材1に供給する糸供給装置7と、基材1の裏面1Bに当接し当該基材1を所定の姿勢で保持する受け治具6とを備え、縫い針71の糸供給側の外周面71SCには、糸31を案内する糸溝712が針軸方向に形成されているとともに、受け治具6には、基材1の裏面1B側に挿通された縫い針71の糸溝712側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸押し面621と、糸押し面621と縫い針71を挟んで対向し糸31のループ部分32が収容可能に配置された糸逃し面622とを備え、縫い針71を基材1の裏面1B側に挿通してから引き戻す時に、糸押し面621によって糸溝712内の糸31を針軸心に対して糸溝712と反対方向へ押し出し、縫い針71と糸逃し面622との間で、糸31のループ部分32を形成するので、縫い針71を基材1の表面1Aに対して傾斜状に差し込むときでも、糸31のループ部分32が縫い針71の糸供給側と反対側のみに安定して形成され、基材1の裏面1B側から糸31のループ部分32が基材1の表面1A側へ抜けるのを、より一層防止することができる。したがって、縫い針71の先端と基材1を保持する受け治具6との干渉を回避できると同時に、基材1の裏面1B側に糸31のループ部分32を安定して形成することができ、ステッチ模様3の糸31を基材1に安定して固定できる。
【0059】
よって、他の実施形態によれば、ステッチ模様3の糸31が基材1の表面1Aに対して傾斜状に挿通されている場合においても、糸31を挿通させる縫い針71の折損や変形等を防止できるとともに、ステッチ模様3の糸31を基材1に確実に固定できる。
【0060】
また、他の実施形態によれば、糸供給装置7には、縫い針71が基材1の表面1Aに対して傾斜状に挿通可能に形成された針挿通孔724を有する表皮材押え部72を備え、縫製時に針挿通孔724によって縫い針71の横移動を規制するので、縫い針71を基材1の表面1Aに対して傾斜状に差し込むときでも、縫い針71の先端が基材1の表面1Aで滑ることをより一層防止できる。そのため、縫い針71が、基材1を保持する受け治具6と干渉し、簡単に折損又は変形等するのを回避することができる。
【0061】
また、他の実施形態によれば、縫い針71を基材1の表面1Aに対して傾斜状に差し込むときでも、縫製時に針挿通孔724によって縫い針71の横移動を規制することによって、糸押し面621と縫い針71の糸溝712側の外周面71SCとの微小隙間が変化しにくく、糸溝712内の糸31を針軸心に対して糸溝712と反対方向へ更に安定して押し出すことができる。そのため、基材1の裏面1B側には、糸31のループ部分32が、糸溝712が形成された縫い針71の糸供給側と反対側のみに、安定して形成され、基材1の裏面1B側から糸31のループ部分32が基材1の表面1A側へ抜けるのを、より一層防止することができる。したがって、縫い針71と受け治具6との干渉を回避できると同時に、基材1の裏面1B側に糸31のループ部分32を安定して形成することができ、ステッチ模様3の糸31を基材1により一層安定して固定できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、針挿通孔724の孔中心724Cは、縫い針71の針軸心71Cに対して糸溝712側へ偏心して形成され、針挿通孔724の内周面と糸溝712と反対側の縫い針71の外周面との間には、微小隙間dが形成されているので、縫製時に糸溝712と反対側へ縫い針71が移動するのを針挿通孔724の内周面によって規制でき、基材1の裏面1B側には、糸31のループ部分32が、縫い針71に対して糸供給側と反対側のみに、より一層安定して形成される。また、糸31のループ部分32が縫い針71の糸供給側と反対側のみに安定して形成されるので、基材1の裏面1B側から糸31のループ部分32が基材1の表面1A側へ抜けるのを、より一層防止することができる。
【0063】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更することができる。例えば、本実施形態である内装部品10、10Bによれば、滑り防止用座面1Cは、基材1の表面1Aに対して所定の傾斜角度θで凹状に、かつ、ステッチ模様3の長手方向に沿って連続状に形成されているが、必ずしも、上記形態に限定されない。滑り防止用座面1Cは、縫い針71の針先に対する滑り止め機能を有するように形成されていれば、図10(a)に示すように、先行針73で基材1の表面1A側に楔状凹面1Ccを形成した場合でも、図10(b)に示すように、ヤスリ等で粗面化させるか、又は微小な山谷面1Cdを形成した場合でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、基材と当該基材の表面に接着された表皮材とからなり、表皮材の表面にステッチ模様が形成された内装部品及びその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 基材
1A 表面
1B 裏面
1C 滑り防止用座面
2 表皮材
3 ステッチ模様
4、4B ゴム系部材
5 接着剤
6 受け治具
7 糸供給装置
10、10B 内装部品
20 ステッチ加工装置
31 糸(上糸)
32 ループ部分
41、41B 糸挿通孔
71 縫い針
71SC 外周面
72 表皮材押え部
621 糸押し面
622 糸逃し面
712 糸溝
724 針挿通孔
θ 傾斜角度
α 挿通角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11