特許第6597544号(P6597544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597544
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】信号発生回路及び電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   H02M3/155 P
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-194130(P2016-194130)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-57237(P2018-57237A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 誠
(72)【発明者】
【氏名】阿部 武徳
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−98470(JP,A)
【文献】 特開2004−266930(JP,A)
【文献】 特開平1−136572(JP,A)
【文献】 特開2000−184729(JP,A)
【文献】 特開2010−130850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM信号に応じてスイッチのオンオフを制御することにより出力電圧が変換制御される制御対象部と前記制御対象部の出力に基づいて操作量を設定するフィードバック演算部とを含んだ制御装置において、前記制御対象部に与える前記PWM信号を発生させる信号発生回路であって、
前記PWM信号の周期の値を設定するとともに、定期的に設定した設定周期の値を変化させる周期設定部と、
前記フィードバック演算部によって操作量として設定された目標オン時間と予め定められた固定値である基準周期との比率に基づいて設定された補正値で補正して得られる第1のデューティ比と、前記周期設定部で設定されている前記設定周期の値とに基づく第1のオン時間を決定する第1決定部と、
設定可能なオン時間の分解能に応じて前記第1のオン時間に近い設定候補値を第2のオン時間として決定する第2決定部と、
前記PWM信号の周期を前記周期設定部で設定された前記設定周期の値とし、前記PWM信号のオン時間を前記第2決定部で決定された前記第2のオン時間とする前記PWM信号を発生させる発生部と、
前記第1のオン時間の決定に用いられる前記目標オン時間、前記基準周期、及び前回の前記補正値と、前記周期設定部で設定された前記設定周期の値と、前記第2決定部で決定された前記第2のオン時間とに基づいて、次回に前記第1決定部で用いる前記補正値を決定する第3決定部と、
を有する信号発生回路。
【請求項2】
前記周期設定部は、前記PWM信号の1周期毎に前記設定周期の値を変化させ、
前記第1決定部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記フィードバック演算部によって設定された最新の前記目標オン時間と前記基準周期との比率を前記第3決定部で決定された最新の前記補正値で補正した最新の前記第1のデューティ比と、前記周期設定部で設定されている最新の前記設定周期の値とに基づいて前記第1のオン時間を決定し、
前記第2決定部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記発生部が出力可能なオン時間の値である複数の設定候補値から前記第1決定部で決定された最新の前記第1のオン時間に近い前記設定候補値を前記第2のオン時間として決定し、
前記発生部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記PWM信号の周期を前記周期設定部で設定された最新の前記設定周期の値とし、信号のオン時間を前記第2決定部で決定された最新の前記第2のオン時間とする前記PWM信号を発生させ、
前記第3決定部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記フィードバック演算部によって設定された最新の前記目標オン時間と、前記基準周期と、前回設定された最新の前記補正値と、前記周期設定部で設定された最新の前記設定周期の値と、前記第2決定部で決定された最新の前記第2のオン時間とに基づいて、次回に前記第1決定部で用いる前記補正値を決定する請求項1に記載の信号発生回路。
【請求項3】
前記第1決定部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記フィードバック演算部によって設定された最新の前記目標オン時間を前記基準周期で除した値と前記第3決定部によって決定されている最新の前記補正値とを加算して得られる前記第1のデューティ比に対し、前記周期設定部によって決定された最新の前記設定周期の値を乗じることで前記第1のオン時間を決定し、
前記第2決定部は、前記PWM信号の1周期毎に、複数の前記設定候補値の中から前記第1決定部で決定された最新の前記第1のオン時間以上又は以下の最も近い前記設定候補値を前記第2のオン時間として決定し、
前記第3決定部は、前記PWM信号の1周期毎に、前記第2決定部で決定された最新の前記第2のオン時間を前記周期設定部で設定された最新の前記設定周期の値で除して得られる第2のデューティ比を前記第1のデューティ比から減じたデューティ比の差を算出し、算出されたデューティ比の差を次回の前記第1決定部で用いる前記補正値として決定する請求項2に記載の信号発生回路。
【請求項4】
一方の導電路に入力された電圧を昇圧又は降圧して他方の導電路に出力する前記制御対象部としての電圧変換装置と、前記電圧変換装置の出力に基づいて操作量を設定する前記フィードバック演算部と、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の前記信号発生回路とを備えた電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号発生回路及び電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)信号で駆動することによって電圧を変換する電圧変換装置が広く利用されている。このPWM制御方式の電圧変換装置では、例えば電圧の目標値に基づいて電圧指令値を算出し、算出した電圧指令値に応じた値をPWM信号の発生部に設定することによって、設定された値に応じたデューティを有するPWM信号を発生する。このように、スイッチング素子を駆動するPWM信号のデューティを電圧の目標値に応じて変化させることにより、電圧の目標値に応じた出力電圧が得られる。
【0003】
ここで、PWM信号の生成部に設定可能な値の最小単位(即ち最小の増分)が比較的大きい場合は、目標値の変化に対してPWM信号のデューティを滑らかに変化させることができなくなり、出力電圧が階段状に変化することとなる。また例えば、PWM制御による操作量としてPWM信号の生成部に設定すべき目標の値が算出される場合、目標の値の最小単位よりも設定可能値の最小単位の方が大きいときは、電圧の目標値の変化及び負荷変動に対してPWM信号のデューティを滑らかに変化させることができなくなり、出力電圧に誤差が生じる。
【0004】
これに対し、特許文献1には、PWM信号のオン/オフ時間をPWM制御の1周期毎に演算する際に、電圧指令値を被除数とする除算の剰余を切り捨てて演算することによってオン/オフ時間を算出し、算出結果に基づいてPWMパルスを出力するPWMインバータが開示されている。上記の演算で生じた剰余は、オン/オフ時間に反映されずに切り捨てられた電圧指令値に相当する。
【0005】
このPWMインバータでは、切り捨てた剰余を次の周期以降の演算における電圧指令値に順次加算することにより、前回の演算でオン/オフ時間に反映されなかった剰余が次回の演算の際に新たなオン/オフ時間に反映され、その際の剰余が更に次の演算に反映されことが繰り返される。このため、PWM信号の発生部に対して設定されるオン/オフ時間の平均値を、本来設定されるべき目標のオン/オフ時間に近づけることができる。つまり、発生部に設定される値の最小単位を、平均的には実際の最小単位よりも小さくすることができる。
【0006】
一方、PWM制御に関する別の課題として、PWM周期を固定化することに起因するノイズの問題がある。このようなノイズを低減する手法として、周波数拡散PWM制御が提案されており、この周波数拡散PWM制御では、PWM周期をランダムに変更することでノイズの発生を抑える。この周波数拡散PWM制御に関する技術としては、例えば特許文献2のようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−98470号公報
【特許文献2】特開2010−130850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のように発生部に設定される値の最小単位を実際の最小単位よりも実質的に小さくする時分割制御の手法と、特許文献2のように周波数拡散によってノイズ低減の手法とを組み合わせようとする技術は提案されておらず、従来技術では、両手法の利点を共に享受することはできなかった。仮に、特許文献1のような時分割制御の技術と特許文献2のような周波数拡散の技術とを組み合わせたとしても、それぞれが互いに及ぼす影響を考慮せずに併用してしまうと、それぞれの効果を十分に発揮できない事態が生じてしまう。例えば、特許文献1のような時分割制御を用いてデューティ比を調整する場合、単に、周波数拡散技術を組み合わせてしまうと、時分割制御によってデューティを細かく調整することを試みてもランダムに周期が変化してしまうため、狙ったデューティが想定通りに設定されなくなり、時分割制御の効果を十分に発揮できなくなってしまう。
【0009】
本発明は上述した事情に基づいてなされたものであり、PWM信号の周期を変化させることができ且つPWM信号を発生する発生部に設定するオン時間の最小単位を実際の最小単位よりも実質的に小さくする効果を十分に発揮することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
PWM信号に応じてスイッチのオンオフを制御することにより出力電圧が変換制御される制御対象部と前記制御対象部の出力に基づいて操作量を設定するフィードバック演算部とを含んだ制御装置において、前記制御対象部に与える前記PWM信号を発生させる信号発生回路であって、
前記PWM信号の周期の値を設定するとともに、定期的に設定した設定周期の値を変化させる周期設定部と、
前記フィードバック演算部によって操作量として設定された目標オン時間と予め定められた固定値である基準周期との比率に基づいて設定された補正値で補正して得られる第1のデューティ比と、前記周期設定部で設定されている前記設定周期の値とに基づく第1のオン時間を決定する第1決定部と、
設定可能なオン時間の分解能に応じて前記第1のオン時間に近い設定候補値を第2のオン時間として決定する第2決定部と、
前記PWM信号の周期を前記周期設定部で設定された前記設定周期の値とし、前記PWM信号のオン時間を前記第2決定部で決定された前記第2のオン時間とする前記PWM信号を発生させる発生部と、
前記第1のオン時間の決定に用いられる前記目標オン時間、前記基準周期、及び前回の前記補正値と、前記周期設定部で設定された前記設定周期の値と、前記第2決定部で決定された前記第2のオン時間とに基づいて、次回に前記第1決定部で用いる前記補正値を決定する第3決定部と、
を有する。
【発明の効果】
【0011】
上記信号発生回路は、PWM信号の周期の値を設定する周期設定部を有しており、周期設定部は、設定される周期の値を変化させる機能を有する。このように、設定周期を固定化せずに変化させることができ、ひいては、出力するPWM信号の周期を変化することができるため、周期の固定化に起因するノイズを低減することができる。
【0012】
更に、第1決定部が設けられ、第1決定部は、前記フィードバック演算部によって操作量として設定された目標オン時間と予め定められた固定値である基準周期との比率に基づいて設定された補正値で補正して得られる第1のデューティ比と、前記周期設定部で設定されている設定周期の値とに基づく第1のオン時間を決定する。フィードバック演算部によって操作量として設定された目標オン時間と固定値である基準周期との比率に対し決定されている補正値(前回の第3決定部の演算で決定されている補正値)を補正して得られる第1のデューティ比は、PWM信号の周期を基準周期と仮定した場合に、前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分を反映した理想的なデューティ比である。このような第1のデューティ比と現在の周期(周期設定部で設定されている設定周期の値)とが把握できれば、現在の設定周期のときに設定されるべき理想的なオン時間として第1のオン時間を決定することができる。つまり、周期が変わっても、操作量とされた目標オン時間に対し前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分を適切に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間)を得ることができる。
【0013】
更に、第2決定部が設けられ、設定可能なオン時間の分解能に応じて第1のオン時間に近い設定候補値を第2のオン時間として決定する構成をなす。このようにして、理想的なオン時間(第1のオン時間)に近い実際のオン時間(第2のオン時間)を設定することができ、発生部は、PWM信号の周期を周期設定部で設定された設定周期の値とし、PWM信号のオン時間を第2決定部で決定された第2のオン時間とするようにPWM信号を発生させることができる。
【0014】
このように発生部によって第2のオン時間に設定されたPWM信号を発生させると、本来設定されるべき理想的なオン時間(第1のオン時間)のうち、実際のオン時間(第2のオン時間)に反映されなかった分が生じる。第3決定部は、第1のオン時間の決定に用いられる目標オン時間、基準周期、及び前回の補正値と、周期設定部で設定された設定周期の値と、第2決定部で決定された第2のオン時間とに基づいて、次回に第1決定部で用いる補正値を決定するため、発生部で発生するPWM信号の実際のオン時間(第2のオン時間)に反映されなかった分を反映した形で次回の第1決定部で用いる補正値を決定することができる。そして、次回の第1決定部の決定では、周期変動に対応しつつ、新たに操作量とされた目標オン時間に対し、反映されなかった分を適切に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間)を得ることができる。
【0015】
そして、このような決定(第1、第2、第3決定部による決定)を繰り返すことで、周期を変更することによるノイズ低減の効果を享受しつつ、発生部に設定されるオン時間の最小単位を、実際の最小単位よりも実質的に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の信号発生回路及び電圧変換装置を備えた車載用の電源システムを概略的に例示する回路図である。
図2】実施例1の信号発生回路における各機能を概念的に示す機能ブロック図である。
図3】実施例1の信号発生回路で実行される制御の流れを例示するフローチャートである。
図4】実施例1の信号発生回路で発生するPWM信号の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の望ましい形態を以下に例示する。
本発明において、「設定可能なオン時間の分解能」とは、信号発生回路が変化させ得るオン時間の細かさを意味し、分解能が大きければ、発生部が変化させ得るオン時間の最小単位が大きくなる。逆に、分解能が小さければ、発生部が変化させ得るオン時間の最小単位が小さくなる。本発明において、「設定可能なオン時間の分解能に応じて第1のオン時間に近い設定候補値を第2のオン時間として決定する」とは、発生部が出力し得るオン時間(分解能に応じて切り替え得るオン時間)の中から第1のオン時間に近いオン時間を選定することを意味する。例えば、「設定可能なオン時間の分解能に応じて第1のオン時間に近い設定候補値を第2のオン時間として決定する」方法としては、発生部が出力可能なオン時間の値である複数の設定候補値(例えば、設定可能なオン時間の値として予め定められた複数の設定候補値)の中から第1のオン時間に近い設定候補値を第2のオン時間として決定する構成などが挙げられる。
【0018】
周期設定部は、PWM信号の1周期毎に設定周期の値を変化させてもよい。第1決定部は、PWM信号の1周期毎に、フィードバック演算部によって設定された最新の目標オン時間と基準周期との比率を第3決定部で決定された最新の補正値で補正した最新の第1のデューティ比と、周期設定部で設定されている最新の周期の値とに基づいて第1のオン時間を決定してもよい。第2決定部は、PWM信号の1周期毎に、発生部が出力可能なオン時間の値である複数の設定候補値の中から第1決定部で決定された最新の第1のオン時間に近い設定候補値を第2のオン時間として決定してもよい。発生部は、PWM信号の1周期毎に、PWM信号の周期を周期設定部で設定された最新の設定周期の値とし、信号のオン時間を第2決定部で決定された最新の第2のオン時間とするPWM信号を発生させてもよい。第3決定部は、PWM信号の1周期毎に、フィードバック演算部によって設定された最新の目標オン時間と、基準周期と、前回設定された最新の補正値と、周期設定部で設定された最新の設定周期の値と、第2決定部で決定された最新の第2のオン時間とに基づいて、次回に第1決定部で用いる補正値を決定してもよい。
【0019】
このように構成された信号発生回路は、少なくとも1周期毎に周期を変更することができるため、細かな周期変更によってノイズ低減効果を高めることができる。更に、1周期毎の周期変動に適正に対応した形で、前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分を適切に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間)を1周期毎に得ることができ、理想的なオン時間(第1のオン時間)に近い実際のオン時間(第2のオン時間)を1周期毎に設定してPWM信号を発することができる。このように、1周期毎に細かく周期変更を行いつつ、PWM信号のオン時間をより細かく制御することができる。
【0020】
第1決定部は、PWM信号の1周期毎に、フィードバック演算部によって設定された最新の目標オン時間を基準周期で除した値と第3決定部によって決定されている最新の補正値とを加算して得られる第1のデューティ比に対し、周期設定部によって決定された最新の設定周期の値を乗じることで第1のオン時間を決定してもよい。第2決定部は、PWM信号の1周期毎に、複数の設定候補値の中から第1決定部で決定された最新の第1のオン時間以上又は以下の最も近い設定候補値を第2のオン時間として決定してもよい。第3決定部は、PWM信号の1周期毎に、第2決定部で決定された最新の第2のオン時間を周期設定部で設定された最新の設定周期の値で除して得られる第2のデューティ比を第1のデューティ比から減じたデューティ比の差を算出し、算出されたデューティ比の差を次回の第1決定部で用いる補正値として決定してもよい。
【0021】
このように構成された信号発生回路は、周期変動に対応しつつ、前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分をより高精度に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間)を1周期毎に得ることができる。そして、1周期毎に得られる第1のオン時間に近似した実際のオン時間(第2のオン時間)を1周期毎に適切に設定することができる。そして、1周期毎に設定される実際のオン時間(第2のオン時間)に反映されない分については、より精度の高い補正値として次回の周期において第1決定部の決定に反映させることができる。
【0022】
一方の導電路に入力された電圧を昇圧又は降圧して他方の導電路に出力する制御対象部としての電圧変換装置と、電圧変換装置の出力に基づいて操作量を設定するフィードバック演算部と、上記いずれかの信号発生回路とを備えた形で電源装置を構成してもよい。
【0023】
この構成によれば、PWM信号の周期を変化させることによるノイズ低減効果を享受するこができ且つ発生部に設定するオン時間の最小単位を実際の最小単位よりも実質的に小さくする効果を十分に発揮することができる電源装置を実現できる。
【0024】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す車載用電源システム100は、主に、信号発生回路1及び電圧変換装置2によって構成される電源装置90と、電源部としてのバッテリ3と、電力供給対象としての負荷4とを備え、バッテリ3からの電力に基づいて車載用の負荷4に電力を供給する車載用の電源システムとして構成される。
【0025】
バッテリ3は、例えば、鉛蓄電池等の公知の蓄電手段によって構成され、所定電圧を発生させる。バッテリ3の高電位型の端子は、第1導電路31に電気的に接続され、バッテリ3の低電位側の端子は、例えばグラウンドに電気的に接続される。
【0026】
電圧変換装置2は、外部のバッテリ3及び負荷4に接続されており、バッテリ3からの直流電圧を降圧して負荷4に供給する機能を有する。この電圧変換装置2は、直流電圧を降圧するコンバータCVと、コンバータCVを駆動する駆動回路26と、コンバータCVが降圧した電圧を平滑化するコンデンサ25と、出力電流を検出するための電流検出回路28とを備える。コンバータCVからの出力電流は、電流検出回路28を介して負荷4に供給され、負荷4に供給される電圧が信号発生回路1に与えられる。
【0027】
コンバータCVは所謂単相コンバータであり、第1導電路31と第2導電路32との間に設けられ、バッテリ3から供給された直流電圧がドレインに印加されるNチャネル型のMOSFETであるハイサイド側のスイッチング素子21(スイッチ)と、コンデンサ25に一端が接続されており、スイッチング素子21のソースに他端が接続されたインダクタ23と、Nチャネル型のMOSFETとして構成されスイッチング素子21及びインダクタ23の接続点にドレインが接続されたソース接地として構成されるローサイド側のスイッチング素子22(スイッチ)とを備える。
【0028】
ハイサイド側のスイッチング素子21のドレインには、入力側の導電路としての第1導電路31が接続され、ソースには、ローサイド側のスイッチング素子22のドレイン及びインダクタ23の一端が接続されている。スイッチング素子21のゲートには、駆動回路26からの駆動信号(オン信号)及び非駆動信号(オフ信号)が入力されるようになっており、駆動回路26からの信号に応じてスイッチング素子21がオン状態とオフ状態とに切り替わるようになっている。同様に、スイッチング素子22のゲートには、駆動回路26からの駆動信号(オン信号)及び非駆動信号(オフ信号)が入力されるようになっており、駆動回路26からの信号に応じてスイッチング素子22がオン状態とオフ状態とに切り替わるようになっている。
【0029】
駆動回路26は、発生部16から与えられたPWM信号に基づいて、スイッチング素子21,22夫々を各制御周期で交互にオンするためのオン信号を、スイッチング素子21,22のゲートに印加する。スイッチング素子21のゲートには、スイッチング素子22のゲートに与えられるオン信号に対して位相が略反転しており且つ所謂デッドタイムが確保されたオン信号が与えられる。
【0030】
信号発生回路1は、制御対象部としての電圧変換装置2に対してPWM信号を出力する構成をなし、設定された目標値(目標オン時間)に基づき、電圧変換装置2に出力するPWM信号のオン時間を、予め定められた複数の設定可能値から選択してそれぞれ設定し得る回路として構成されている。信号発生回路1の詳細については後述する。
【0031】
制御部10は、CPU11を有するマイクロコンピュータを含んでなる。CPU11は、プログラム等の情報を記憶するROM12、一時的に発生した情報を記憶するRAM13、アナログの電圧をデジタル値に変換するA/D変換器14と互いにバス接続されている。CPU11には、更に、発生部16がバス接続されている。A/D変換器14には、電流検出回路28からの検出電圧と、負荷4に供給される出力電圧とが与えられる。本構成では、電流検出回路28及びA/D変換器14に電圧を入力する経路18とが出力検出部を構成し、コンバータCV(電圧変換部)からの出力電流及び出力電圧を検出するように機能する。なお、図1の例では、経路18は、出力側の第2導電路32の電圧をA/D変換器14に入力する構成であるが、第2導電路32の電圧を分圧してA/D変換器14に入力する構成であってもよい。
【0032】
発生部16は、公知のPWM信号発生回路として構成されており、制御部10で設定された周期及びオン時間のPWM信号を生成する。発生部16は、例えば、不図示の内部クロックを備え、内部クロックの周期の整数倍のオン時間を有するPWM信号を生成する。発生部16が生成したPWM信号は、駆動回路26に与えられる。
【0033】
電流検出回路28は、抵抗器24及び差動増幅器27を有する。コンバータCVからの出力電流によって抵抗器24に生じた電圧降下は、差動増幅器27で増幅されて出力電流に応じた検出電圧となり、A/D変換器14でデジタル値に変換される。
【0034】
このように構成される電圧変換装置2は、同期整流方式の降圧型コンバータとして機能し、ローサイド側のスイッチング素子22のオン動作とオフ動作との切り替えを、ハイサイド側のスイッチング素子21の動作と同期させて行うことで、第1導電路31に印加された直流電圧を降圧し、第2導電路32に出力する。具体的には、駆動回路26から各スイッチング素子21,22のゲートに相補的に与えられる各PWM信号により、スイッチング素子21をオン状態とし、スイッチング素子22をオフ状態とした第1状態と、スイッチング素子21をオフ状態とし、スイッチング素子22をオン状態とした第2状態とがデットタイムを設定しつつ交互に切り替えられ、この動作によって第1導電路31に印加された直流電圧が降圧され、第2導電路32に出力される。第2導電路32の出力電圧は、スイッチング素子21のゲートに与えるPWM信号のデューティ比に応じて定まる。
【0035】
次に、信号発生回路1の詳細を説明する。
信号発生回路1は、PWM信号によって出力が制御される電圧変換装置2(制御対象部)と電圧変換装置2の出力に基づいて操作量を設定するフィードバック演算部とを含んだ電源装置90(制御装置)において、電圧変換装置2に与えるPWM信号を発生させる回路として構成される。
【0036】
信号発生回路1の制御部10は、図2で示すような各機能を有し、図3で示す流れで演算制御を行う。図3で示す演算制御は、制御部10によって実行される制御であり、PWM信号の1周期毎に実行される制御である。
【0037】
図3で示すように、PWM信号の各周期において図3の制御を実行する場合、ステップS1において、電圧変換装置2の出力側の導電路(第2導電路32)に印加される出力電圧を取得する。図2で示す出力電圧取得部101としての機能は、具体的には、A/D変換器14及びCPU11によって行われ、第2導電路32に印加される電圧(出力電圧)が取得される。この出力電圧は、制御部10内の記憶部に一時的に保持される。
【0038】
制御部10は、図3で示すステップS1にて第2導電路32に印加される電圧(出力電圧V2)を取得した後、ステップS2に処理を行い、ステップS1で取得した出力電圧V2と予め定められた目標電圧Vtとに基づいて、公知のフィードバック演算方式によって操作量を算出する。ステップS2の処理を実行するフィードバック演算部(PID演算部)102(図2)としての機能は、具体的にはCPU11よって行われ、CPU11は、電圧変換装置2の出力に基づいて操作量を設定するフィードバック演算部として機能する。この例では、出力電圧がPID制御における制御量に相当し、オン時間がPID制御における操作量に相当する。より具体的には、第2導電路32に印加される出力電圧V2と予め定められた目標電圧Vtとの偏差に基づいて、公知のPID演算方式でフィードバック演算を行い、次回の周期で目標とするオン時間(目標オン時間ta)を操作量として設定する。PID方式でフィードバック演算を行うときの比例ゲイン、微分ゲイン、積分ゲインの設定方法は限定されず、様々に設定することができる。
【0039】
制御部10は、ステップS2の後、ステップS3の処理を行う。ステップS3の処理を実行する理想デューティ算出部104A(図2)としての機能は、CPU11によって行うことができる。理想デューティ算出部104Aは、PWM信号の1周期毎に、ステップS3においてフィードバック演算部102によって設定された最新の目標オン時間taを基準周期Tbで除した値と第3決定部109によって決定されている最新の補正値Da(前周期の余り)とを加算して得られる第1のデューティ比D1(理想デューティ比)を算出する。つまり、D1=ta/Tb+Daである。
【0040】
制御部10は、ステップS3の後、ステップS4の処理を行う。ステップS4の処理を実行する周期設定部105としての機能は、CPU11及びROM12によって行うことができる。周期設定部105では、発生部16で設定可能な周期であって且つ所定の周期範囲内の周期である複数の周期が候補として予定されており、これら複数の周期の中からいずれかの周期をランダムに設定するようになっている。例えば、発生部16で設定可能な周期であって且つ所定の周期範囲内の周期である複数の周期をテーブル化したデータ(周波数拡散テーブル)がROM12に記憶されており、CPU11は、周期毎に行われるステップS4の処理において周波数拡散テーブルからいずれかの周期をランダムに選定する。選定された周期の値Tsは、現在の周期(今周期)として記憶部に保持される。このように、周期設定部105は、PWM信号の周期の値Tsを設定する機能を有するとともに、時間経過に応じて周期の値Tsを変化させるように機能し、具体的には、PWM信号の1周期毎に周期の値Tsを変化させる。
【0041】
制御部10は、ステップS4の後、ステップS5の処理を行う。ステップS5の処理を実行する理想オン時間算出部104Bとしての機能は、CPU11によって行うことができる。理想オン時間算出部104Bは、PWM信号の1周期毎にステップS5の処理を行い、フィードバック演算部102によって設定された最新の目標オン時間taを基準周期Tbで除した値と第3決定部109によって決定されている最新の補正値Da(前回の余り)とを加算して得られる第1のデューティ比D1に対し、周期設定部105によって決定された最新の周期の値Tsを乗じることで第1のオン時間ty1(理想オン時間)を決定する。つまり、ty1=Ts×D1である。
【0042】
このように、第1決定部104として機能する理想デューティ算出部104A及び理想オン時間算出部104Bは、PWM信号の1周期毎にS3及びS5の処理を行い、フィードバック演算部102によって設定された最新の目標オン時間taと基準周期Tbとの比率を第3決定部109で決定された最新の補正値Daで補正した最新の第1のデューティ比D1と、周期設定部105で設定されている最新の周期の値Tsとに基づいて第1のオン時間ty1を決定する。
【0043】
制御部10は、ステップS5の後、ステップS6の処理を行い、第1オン時間(理想オン時間)とPWM分解能とに基づいて第2オン時間(実際のオン時間)を決定する。ステップS6の処理を行う第2決定部107としての機能は、CPU11によって行うことができる。第2決定部107は、PWM信号の1周期毎にステップS6の処理を行い、発生部16が出力可能なオン時間の値である複数の設定候補値の中から第1決定部104で決定された最新の第1のオン時間ty1に近い設定候補値を第2のオン時間ty2として決定する。ここでいう設定候補値とは、発生部16に設定されたときに出力のPWM信号の変化に反映される最小単位(最小の増分)の整数倍の値をいう。具体的には、発生部16が出力するPWM信号のオン時間は、上記最小単位の整数倍の値(設定候補値)の中から選択されようになっている。第2決定部107は、具体的には、予め定められた複数の設定候補値の中から第1決定部104で決定された最新の第1のオン時間ty1以上又は以下の最も近い設定候補値を第2のオン時間ty2として決定する。
【0044】
制御部10は、ステップS6の後、ステップS7の処理を行う。ステップS7の処理を行うPWM出力設定部108(図2)としての機能は、CPU11及びRAM13によって行うことができる。ステップS7では、ステップS4にて周期設定部105で設定された周期の値Tsと、ステップS6にて第2決定部107で決定された第2のオン時間ty2とをRAM13などの記憶部に保持する。発生部16は、PWM信号の1周期毎に記憶部に保持された周期の値Ts及び第2のオン時間ty2を確認し、PWM信号の1周期毎に、信号の周期を周期設定部105で設定された周期の値Tsとし、信号のオン時間を第2決定部107で決定された第2のオン時間ty2とするようにPWM信号を発生させる。
【0045】
制御部10は、ステップS7の後、ステップS8の処理を行う。ステップS8の処理を行う第3決定部109(図2)としての機能は、CPU11によって行うことができる。第3決定部109は、PWM信号の1周期毎にステップS8の処理を行い、フィードバック演算部102によって設定された最新の目標オン時間taと、基準周期Tbと、前回の周期のステップS8で設定された最新の補正値Daと、周期設定部105で設定された最新の周期の値Tsと、第2決定部107で決定された最新の第2のオン時間ty2とに基づいて、次回に第1決定部104で用いる補正値Daを決定する。
【0046】
具体的には、第3決定部109は、PWM信号の1周期毎にステップS8の演算を行い、第2決定部107で決定された最新の第2のオン時間ty2を周期設定部105で設定された最新の周期の値Tsで除して得られる第2のデューティ比D2(今周期のデューティ比)を第1のデューティ比D1(理想デューティ比)から減じたデューティ比の差(余り)を算出し、算出されたデューティ比の差(余り)を次回の周期に第1決定部104で用いる補正値Daとして決定する。つまり、Da=D1−D2であり、D2は、D2=ty2/Tsである。このように決定された補正値(余り)Daは、補正値設定部110(図2)としての記憶部(例えばRAM13など)に保持され、次の周期に第1決定部104によって用いられる。
【0047】
ここで、本構成の効果を例示する。
本構成の信号発生回路1は、PWM信号の周期の値Tsを設定する周期設定部を有しており、周期設定部は、定期的に設定される周期の値Tsを変化させる機能を有する。このように、PWM信号の設定周期を固定化せずに変化させることができ、ひいては、出力するPWM信号の周期を変化することができるため、周期の固定化に起因するノイズを低減することができる。
【0048】
更に、第1決定部104が設けられ、第1決定部104は、フィードバック演算部102によって操作量として設定された目標オン時間taと予め定められた固定値である基準周期Tbとの比率を所定方法で設定された補正値で補正して得られる第1のデューティ比D1と、周期設定部105で設定されている設定周期の値Tsとに基づいて第1のオン時間ty1を決定する。フィードバック演算部102によって操作量として設定された目標オン時間taと固定値である基準周期Tbとの比率に対して決定されている補正値(前回の第3決定部109の演算で決定されている補正値)を補正して得られる第1のデューティ比D1は、PWM信号の周期を基準周期Tbと仮定した場合に、前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分を反映した理想的なデューティ比である。このような第1のデューティ比D1と現在の設定周期(周期設定部105で設定されている設定周期の値Ts)とが把握できれば、現在の設定周期Tsのときに設定されるべき理想的なオン時間として第1のオン時間ty1を決定することができる。つまり、周期が変わっても、操作量とされた目標オン時間taに対し前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分を適切に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間ty1)を得ることができる。
【0049】
更に、第2決定部107が設けられ、設定可能なオン時間の分解能に応じて第1のオン時間ty1に近い設定候補値を第2のオン時間ty2として決定する構成をなす。このようにして、理想的なオン時間(第1のオン時間ty1)に近い実際のオン時間(第2のオン時間ty2)を設定することができ、発生部16は、PWM信号の周期を周期設定部105で設定された設定周期の値Tsとし、PWM信号のオン時間を第2決定部107で決定された第2のオン時間ty2とするようにPWM信号を発生させることができる。
【0050】
このように発生部16によって第2のオン時間ty2に設定されたPWM信号を発生させると、本来設定されるべき理想的なオン時間(第1のオン時間ty1)のうち、実際のオン時間(第2のオン時間ty2)に反映されなかった分が生じる。これに対し、第3決定部109は、第1のオン時間ty1の決定に用いられる目標オン時間ta、基準周期Tb、及び前回の補正値と、周期設定部105で設定された設定周期の値Tsと、第2決定部107で決定された第2のオン時間ty2とに基づいて、次回に第1決定部104で用いる補正値を決定するため、発生部16で発生するPWM信号の実際のオン時間(第2のオン時間ty2)に反映されなかった分を反映した形で次回の第1決定部104で用いる補正値を決定することができる。そして、次回の第1決定部104の決定では、周期変動に対応しつつ、新たに操作量とされた目標オン時間taに対し、反映されなかった分を適切に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間ty1)を得ることができる。
【0051】
そして、このような決定(第1、第2、第3決定部による決定)を繰り返すことで、周期を変更することによるノイズ低減の効果を享受しつつ、発生部に設定されるオン時間の最小単位を、実際の最小単位よりも実質的に小さくすることができる。
【0052】
また、本構成の信号発生回路1は、少なくとも1周期毎に周期を変更することができるため、細かな周期変更によってノイズ低減効果を高めることができる。更に、1周期毎の周期変動に適正に対応した形で、前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分を適切に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間ty1)を1周期毎に得ることができ、理想的なオン時間(第1のオン時間ty1)に近い実際のオン時間(第2のオン時間ty2)を1周期毎に設定してPWM信号を発することができる。このように、1周期毎に細かく周期変更を行いつつ、PWM信号のオン時間をより細かく制御することができる。
【0053】
例えば、図4のように、周期設定部105による1周期毎の設定変更によってPWM信号の各周期の値(図4におけるT1,T2,T3)を変更することができるため、細かな周期変更制御によってノイズ低減効果をより発揮することができ、各周期T1,T2,T3のそれぞれのオン時間Ta1,Ta2,Ta3はいずれも、それぞれの前の周期で反映されなかった分を反映するように調整された時間であるため、時分割制御の利点を十分に発揮することができる。
【0054】
本構成では、第1決定部104は、PWM信号の1周期毎に、フィードバック演算部102によって設定された最新の目標オン時間taを基準周期Tbで除した値と第3決定部109によって決定されている最新の補正値(前回の余り)とを加算して得られる第1のデューティ比D1(理想デューティ比)に対し、周期設定部105によって決定された最新の設定周期の値Ts(今周期の値)を乗じることで第1のオン時間ty1(理想オン時間)を決定する。第2決定部107は、PWM信号の1周期毎に、複数の設定候補値の中から第1決定部104で決定された最新の第1のオン時間ty1(理想オン時間)以上又は以下の最も近い設定候補値を第2のオン時間ty2(実際のオン時間)として決定する。第3決定部109は、PWM信号の1周期毎に、第2決定部107で決定された最新の第2のオン時間ty2(実際のオン時間)を周期設定部105で設定された最新の設定周期の値Ts(今周期の値)で除して得られる第2のデューティ比D2(今周期のデューティ比)を第1のデューティ比D1(理想デューティ比)から減じたデューティ比の差(余り)を算出し、算出されたデューティ比の差(余り)を次回の第1決定部104で用いる補正値として決定する。
【0055】
このように構成された信号発生回路1は、周期変動に対応しつつ、前回のPWM信号のオン時間に反映されなかった分をより高精度に反映した形で理想的なオン時間(第1のオン時間ty1)を1周期毎に得ることができる。そして、1周期毎に得られる第1のオン時間ty1により近似した実際のオン時間(第2のオン時間ty2)を1周期毎に適切に設定することができる。更に、このように1周期毎に設定される実際のオン時間(第2のオン時間ty2)に反映されない分を、より精度の高い補正値として次回の周期において第1決定部104の決定に反映させることができる。
【0056】
上記電源装置90は、第1導電路31(一方の導電路)に入力された電圧を降圧して第2導電路32(他方の導電路)に出力する制御対象部としての電圧変換装置2と、電圧変換装置2の出力に基づいて操作量を設定するフィードバック演算部と、上記信号発生回路1とを備えた形で構成される。この構成によれば、PWM信号の周期を変化させることによるノイズ低減効果を享受するこができ且つ発生部16に設定するオン時間の最小単位を実際の最小単位よりも実質的に小さくする効果を十分に発揮することができる電源装置90を実現できる。
【0057】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
実施例1では、電圧変換装置として降圧型のDCDCコンバータを例示したが、実施例1又は実施例1を変更したいずれの例においても、PWM信号によって制御される電圧変換装置であればよく、昇圧型のDCDCコンバータであってもよく、昇降圧型のDCDCコンバータであってもよい。また、電圧変換装置は、入力側と出力側が固定化された一方向型のDCDCコンバータであってもよく、双方向型のDCDCコンバータであってもよい。
【0059】
実施例1では、単相型のDCDCコンバータを例示したが、実施例1又は実施例1を変更したいずれの例においても、多相型のDCDCコンバータとしてもよい。
【0060】
実施例1では、同期整流式のDCDCコンバータを例示したが、実施例1又は実施例1を変更したいずれの例においても、一部のスイッチング素子をダイオードに置き換えたダイオード方式のDCDCコンバータとしてもよい。
【0061】
実施例1では、電圧変換回路のスイッチング素子として、Nチャネル型のMOSFETとして構成されるスイッチング素子21,22を例示したが、実施例1又は実施例1を変更したいずれの例においても、Pチャネル型のMOSFETであってもよいし、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチング素子であってもよい。
【0062】
実施例1では、フィードバック演算部として機能するフィードバック演算部102により、第2導電路32に印加される出力電圧V2と予め定められた目標電圧Vtとの偏差に基づいて、PID方式でフィードバック演算を行い、次回の周期で目標とするオン時間(目標オン時間ta)を操作量として算出する例を示したが、実施例1又は実施例1を変更したいずれの例においても、第2導電路32に印加される出力電圧V2と予め定められた目標電圧Vtとに基づき、出力電圧V2を目標電圧Vtに近づけるように目標オン時間taを決定するようなフィードバック演算方式であれば、公知の様々なフィードバック演算方式を用いることができる。
【0063】
実施例1では、第2決定部107は、複数の設定候補値の中から第1決定部104で決定された最新の第1のオン時間ty1以上又は以下の最も近い設定候補値を第2のオン時間ty2として決定したが、実施例1又は実施例1を変更したいずれの例においても、第1決定部104で決定された最新の第1のオン時間ty1以下の複数の設定候補値の中から最も近い設定候補値を第2のオン時間ty2として決定してもよく、第1決定部104で決定された最新の第1のオン時間ty1以上の複数の設定候補値の中から最も近い設定候補値を第2のオン時間ty2として決定してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…信号発生回路
2…電圧変換装置(制御対象部)
10…制御部
16…発生部
21…スイッチング素子(スイッチ)
22…スイッチング素子(スイッチ)
31…第1導電路(一方の導電路)
32…第2導電路(他方の導電路)
90…電源装置(制御装置)
102…フィードバック演算部
105…周期設定部
104…第1決定部
107…第2決定部
109…第3決定部
図1
図2
図3
図4