特許第6597550号(P6597550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597550
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20191021BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
   F16C13/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-207243(P2016-207243)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-66951(P2018-66951A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】金松 良治
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−152885(JP,A)
【文献】 特開2016−024218(JP,A)
【文献】 特開2015−129800(JP,A)
【文献】 特開平11−149975(JP,A)
【文献】 特開2009−145503(JP,A)
【文献】 特開平03−007393(JP,A)
【文献】 特開昭63−085676(JP,A)
【文献】 特開昭53−120537(JP,A)
【文献】 特開2010−256533(JP,A)
【文献】 特開2000−112275(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0023767(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられる加熱ローラーと、該加熱ローラーの中空部に配置される熱源と、前記加熱ローラーに圧接して定着ニップを形成する加圧ローラーと、を備え、前記定着ニップに用紙が通過することでトナー像を用紙に定着させる定着装置であって、
前記加熱ローラーは、
用紙が通過する通紙領域内において、通紙方向と直交する幅方向両端部の厚さが中央部の厚さよりも薄く形成された基材層と、
該基材層の外周面に設けられ、該基材層よりも熱伝導率の高い熱伝導層と、を有し
前記基材層は、前記通紙領域よりも前記幅方向外側の非通紙領域の外径が、前記通紙領域内の前記幅方向両端部の外径よりも大きく形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記熱伝導層は、前記幅方向両端部の厚さが中央部の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱ローラーは、前記幅方向両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状を成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱ローラーは、
前記熱伝導層の外周面に設けられる離型層を有し、
前記熱伝導層の外周面は凹凸形状を有していることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱ローラーの前記幅方向両端部には、それぞれ軸支部に軸支される被軸支部が設けられ、
前記熱伝導層は、前記被軸支部よりも前記幅方向内側に設けられ、
前記熱源の加熱領域は、前記熱伝導層の幅内に設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記熱伝導層は、アルミニウム、銅又は銀で形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記基材層は、ステンレス合金、鉄又は鋼で形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にトナー像を定着させる定着装置及びこの定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンターなどの電子写真方式の画像形成装置は、用紙に転写されたトナー像を用紙に定着する定着装置を備えている。定着装置の定着方式の一つである加熱ローラーを用いるローラー定着方式において、省エネ性を向上させる最も有効な手段は、加熱ローラーの厚さを薄くして熱容量を少なくすることである。しかし、加熱ローラーの厚さを薄くするほど加熱ローラーの剛性は低下する。そこで、厚さを0.5mm以下とする場合には、ステンレス合金や鉄等の剛性の高い材料を基材層として使用されてきた。
【0003】
しかしながらステンレス合金や鉄は、従来から基材層として使用されているアルミニウムに比べて熱伝導性が低いため、通紙領域の用紙幅方向における両端部の非通紙領域の温度が低下しないという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1〜4には、基材層の外表面に基材層よりも熱伝導性の良好な高熱伝導層を設けた定着装置が記載されている。これらの定着装置では、高熱伝導性層内を幅方向に熱が移動することで、加熱ローラーが幅方向に均熱化されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−120537号公報
【特許文献2】特開昭63−85676号公報
【特許文献3】特開平3−267976号公報
【特許文献4】特開2000−112275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1〜4に記載の定着装置では、用紙が連続して通紙された場合等、非通紙領域の温度が過度に上昇した場合には、非通紙領域の熱を速やかに移動させることは困難である。
【0007】
本発明は上記事情を考慮し、非通紙領域の過昇温を防止できる定着装置及びこの定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の定着装置は、回転可能に設けられる加熱ローラーと、該加熱ローラーの中空部に配置される熱源と、前記加熱ローラーに圧接して定着ニップを形成する加圧ローラーと、を備え、前記定着ニップに用紙が通過することでトナー像を用紙に定着させる定着装置であって、前記加熱ローラーは、用紙が通過する通紙領域内において、通紙方向と直交する幅方向両端部の厚さが中央部の厚さよりも薄く形成された基材層と、該基材層の外周面に設けられ、該基材層よりも熱伝導率の高い熱伝導層と、を有していることを特徴とする。
【0009】
このような構成を採用することにより、基材層の両端部の熱容量が減少することで熱伝導層の両端部の熱容量が相対的に増大し、熱伝導層の両端部から中央部への熱移動が促進されて速やかに均熱化されるので、幅方向両端部の過昇温を防止できる。さらに、基材層を、幅方向両端部の厚さが中央部よりも薄くなるように形成することで、熱伝導層の厚さが厚くなって熱容量が増加することを防止できる。したがって、高い剛性を有する一方で熱伝導性の低い材料を用いて形成された厚さの薄い基材層を使用できるようになるので、加熱ローラーの省エネ化に対応できる。
【0010】
本発明の定着装置において、前記熱伝導層は、前記幅方向両端部の厚さが中央部の厚さよりも厚く形成されていることを特徴としても良い。
【0011】
このような構成を採用することにより、熱伝導層の両端部から中央部への熱移動がさらに促進される。
【0012】
本発明の定着装置において、前記加熱ローラーは、前記幅方向両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状を成していることを特徴としても良い。
【0013】
このような構成を採用することにより、定着ニップにおいて用紙にしわが発生することを防止できる。
【0014】
本発明の定着装置において、前記基材層は、前記通紙領域よりも前記幅方向外側の非通紙領域の外径が、前記通紙領域内の前記幅方向両端部の外径よりも大きく形成されていることを特徴としても良い。
【0015】
このような構成を採用することにより、加熱ローラーの両端部の剛性が高くなるので、加熱ローラーを安定に軸支することができる。
【0016】
本発明の定着装置において、前記加熱ローラーは、前記熱伝導層の外周面に設けられる離型層を有し、前記熱伝導層の外周面は凹凸形状を有していることを特徴としても良い。
【0017】
このような構成を採用することにより、離型層と熱伝導層との接着性を向上できる。
【0018】
本発明の定着装置において、前記加熱ローラーの前記幅方向両端部には、それぞれ軸支部に軸支される被軸支部が設けられ、前記熱伝導層は、前記被軸支部よりも前記幅方向内側に設けられ、前記熱源の加熱領域は、前記熱伝導層の幅内に設けられていることを特徴としても良い。
【0019】
このような構成を採用することにより、被軸支部の温度が上昇しないので、加熱ローラーの回転トルクの上昇を抑えたり、軸支部の寿命を延ばしたりすることができる。
【0020】
本発明の定着装置において、前記熱伝導層は、アルミニウム、銅又は銀で形成されていることを特徴としても良い。
【0021】
このような構成を採用することにより、高い熱伝導性能を有する熱伝導層を形成することができる。
【0022】
本発明の定着装置において、前記基材層は、ステンレス合金、鉄又は鋼で形成されていることを特徴としても良い。
【0023】
このような構成を採用することにより、厚さを薄くしても剛性が得られるので、基材層の熱容量を低下させ、加熱ローラーを省エネ化できる。
【0024】
本発明の画像形成装置は、上記のいずれかに記載の定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、加熱ローラーの幅方向両端部の過昇温を防止できるので、高い剛性を有する一方で熱伝導性の低い材料を用いて形成された厚さの薄い基材層を使用でき、加熱ローラーの省エネ化に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの概略を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の側面断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る定着装置の加熱ローラーを示す正面断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る定着装置の加熱ローラーを示す正面断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る定着装置の加熱ローラーを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の画像形成装置及び定着装置について説明する。
【0028】
まず、図1を用いて、画像形成装置としてのプリンターの全体の構成について説明する。図1はプリンター1の概略を模式的に示す図である。以下、図1における紙面手前側をプリンターの正面側(前側)とし、左右の向きはプリンターを正面から見た方向を基準として説明する。
【0029】
プリンター1の装置本体2には、用紙Sが収容される給紙カセット3と、給紙カセット3から用紙Sを送り出す給紙装置4と、用紙Sにトナー像を形成する画像形成部5と、トナー像を用紙Sに定着する定着装置6と、用紙Sを排紙する排紙装置7と、排紙された用紙Sが受け止められる排紙トレイ8と、が備えられている。さらに、装置本体2には、給紙装置4から、画像形成部5と定着装置6とを通って排紙装置7に向かう用紙Sの搬送経路10が形成されている。
【0030】
給紙装置4によって給紙カセット3から送り出された用紙Sは、搬送経路10に沿って画像形成部5に搬送され、用紙Sにトナー像が形成される。用紙Sは搬送経路10に沿って定着装置6に送られ、トナー像が用紙Sに定着される。トナー像が定着された用紙Sは排紙装置7から排紙トレイ8に排出される。
【0031】
次に、図2及び図3を参照して、第1の実施形態に係る定着装置6について説明する。図2は定着装置を示す側面断面図、図3は加熱ローラーを示す正面断面図である。
【0032】
定着装置6は、図2に示されるように、定着ハウジング20と、定着ハウジング20に回転可能に支持される加熱ローラーと、加熱ローラー21の中空部に設けられる熱源としての2本のハロゲンヒーター22と、加熱ローラーに圧接可能に設けられる加圧ローラー23と、を備えている。
【0033】
定着ハウジング20は、前後方向に長い略直方体状の中空状部材である。定着ハウジング20の左側面には、用紙Sが受け入れられる受入口31が、用紙Sの搬送方向(通紙方向)と直交する幅方向に沿って形成されている。定着ハウジング20の右側面には、用紙Sが排出される排出口32が、幅方向に沿って形成されている。受入口31と排出口32との間には用紙Sの搬送経路10が形成されている。定着ハウジング20の中空部には、搬送経路10よりも上方に加熱ローラー収容凹部34が形成され、搬送経路10よりも下方に加圧ローラー収容凹部35が形成されている。
【0034】
図3に示されるように、加熱ローラー21は、筒形状の基材層40と、基材層40の外周面に設けられる熱伝導層41と、熱伝導層41の外周面に設けられる離型層42と、を備えている。加熱ローラー21の幅は用紙Sが通過する通紙領域R1の幅よりも広く、通紙領域R1の幅方向外側の両端部は、それぞれ用紙Sが通紙されない非通紙領域R2となっている。
【0035】
基材層40は、例えば、ステンレス合金、鉄、鋼等の高い剛性を有する金属で形成される。基材層40は、幅方向中央部40aの厚さが、両端部40bの厚さよりも厚く、中央部40aから両端部40bへ向かって徐々に厚さが薄くなるように形成されている。詳細には、基材層40の内径は幅方向において等しく、外径が幅方向中央部40aが両端部40bよりも大きいクラウン形状を成している。中央部40aの最も厚い部分の厚さは、一例として0.3mmであり、両端部40bの最も薄い部分の厚さは、一例として0.1mmである。
【0036】
熱伝導層41は、基材層40よりも熱伝導率の高い、アルミニウム、銅、銀等の高熱伝導性材料で形成される。熱伝導率は、一例として236W/m・kである。熱伝導層41として特に好ましい材料は、アルミニウム(A1070)、銅、銀である。熱伝導層41は、幅方向中央部41aの厚さが、両端部41bの厚さよりも薄く形成されている。具体的には、熱伝導層41は、中央部41aから両端部41bへ向かって徐々に厚さが厚くなり、さらに、中央部41aから両端部41bへ向かって外径が徐々に大きくなる逆クラウン形状を成すように形成されている。中央部41aの最も薄い部分の厚さは、一例として10〜30μmであり、両端部41bの最も厚い部分の厚さは、一例として30〜100μmである。
【0037】
熱伝導層41の中央部41aと両端部41bとの厚さ、及び、中央部41aと両端部41bとの厚さの比率は、基材層40の熱伝導率に応じて設定される。一例として、基材層40の熱伝導率に応じて、両端部41bの厚さを、中央部41aの厚さの最大3倍程度まで厚くすることができる。基材層40の熱伝導率が比較的高い場合は、熱伝導層41の中央部41aと両端部41bとの厚さを薄く、中央部41aと両端部41bとの厚さの比率を小さく設定する。一方、基材層40の熱伝導率が比較的低い場合は、熱伝導層41の中央部41aと両端部41bとの厚さを厚く、中央部41aと両端部41bとの厚さの比率を大きく設定する。
【0038】
熱伝導層41をアルミニウムで形成する場合、溶融したアルミニウム粒子を基材層40の表面に吹き付ける溶射によって熱伝導層41を形成できる。アルミニウム粒子は、基材層40の表面に微細な凹凸を成す粗面状に凝固して付着する。熱伝導層41を銅で形成する場合は、銅メッキによって熱伝導層41を形成できる。この場合は、形成された熱伝導層41の外周面をサンドブラスト処理等によって粗面化しておくことが好ましい。
【0039】
離型層42は、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブによって形成される。離型層42は、幅方向において一定の厚さを有している。これにより、加熱ローラー21の外径は、熱伝導層41の外径にならって、幅方向の両端部の外径が中央部の外径よりも大きい逆クラウン形状を成す。
【0040】
離型層42は、熱伝導層41の外周面に接着等によって形成される。離型層42を接着する場合、熱伝導層41の表面が粗面状であると、離型層42と熱伝導層41との接触面積が増え、良好な接着性能を得ることができる。さらに、熱伝導層41の表面の微細な凸部がアンカー効果を発揮するので、より接着性能が向上する。
【0041】
加熱ローラー21は、定着ハウジング20の加熱ローラー収容凹部34に収容されて、幅方向両端部が、軸支部(図示省略)にそれぞれ回転可能に支持されている。
【0042】
ハロゲンヒーター22は、加熱ローラー21よりも長い長さのガラス管51と、ガラス管51内に長手方向に配設されるフィラメント52と、を有している。ガラス管51内には、ハロゲンガスが封入されている。フィラメント52には、コイル状に巻き回された複数の発光部53が所定の間隔で形成されている。この発光部53が形成されている領域が加熱領域となる。発光部53は、加熱ローラー21の幅内に配置されている。ハロゲンヒーター22は、加熱ローラー21の内周面(基材層40の内周面)に向かって熱を放射し、加熱ローラー21を加熱する。
【0043】
図2に示されるように、加圧ローラー23は、円柱状の芯金60と、芯金60の外周面に設けられる弾性層61と、弾性層61の外周面に設けられる離型層62と、を備えている。芯金60は、例えば、ステンレス合金等の金属によって形成される。弾性層61は、例えば、シリコンゴムで形成される。離型層62は、例えば、PFAチューブによって形成される。
【0044】
加圧ローラー23は、定着ハウジング20の加圧ローラー収容凹部35に回転可能に支持されて、加熱ローラー21に圧接されている。これにより、加熱ローラー21と加圧ローラー23との間に定着ニップNが形成される。加圧ローラー23の芯金60の一端には、モーターなど駆動源から駆動力が伝達される駆動入力ギア(図示省略)が固定されている。加圧ローラー23は、駆動入力ギアが駆動されることで、図2の時計回り方向に回転する。これにより、加熱ローラー21が加圧ローラー23とは反対方向に回転する。なお、加熱ローラー21が駆動源によって回転するように構成される場合もある。
【0045】
上記構成を有する定着装置6においては、ハロゲンヒーター22が作動されると、ハロゲンヒーター22の輻射熱で基材層40が加熱され、この熱が熱伝導層41と離型層42とを介して、定着ニップNに搬送された用紙Sに伝えられる。定着ニップNにおいて、用紙Sが加熱及び加圧されることでトナー像が用紙Sに定着される。
【0046】
定着ニップNにおいて、通紙領域R1では搬送される用紙Sによって熱が奪われて温度は低下するが、非通紙領域R2では用紙Sに熱が奪われず温度は低下しない。連続して用紙Sが搬送されると、非通紙領域R2の温度は徐々に上昇していく。このように非通紙領域R2の温度が上昇すると、熱伝導層41内において面積方向(幅方向及び円周方向)及び厚さ方向への熱移動が生じる。熱伝導層41は、幅方向両端部41bの厚さが中央部41aよりも厚いので、両端部41bには中央部41aよりも多くの熱が蓄積されると共に、両端部41bの均熱性が中央部41aよりも向上する。このように蓄積される熱量と均熱性の差が大きくなるので、両端部41bから中央部41aへの熱移動が促進されて、幅方向において熱伝導層41が速やかに均熱化される。ただし、熱伝導層41の厚さを厚くすると、熱容量が増えて加熱効率が低下してしまう。そこで、基材層40の幅方向中央部40aの厚さを両端部40bよりも薄くすることで、両端部40bの熱容量が減少し、熱伝導層41の両端部41bの熱容量が相対的に増えるので、熱伝導層41の両端部41bの厚さを過度に厚くする必要がなくなる。なお、熱伝導層41の中央部41aと両端部41bとの厚さや、厚さの比率は、前述のように基材層40の熱伝導率に応じて適宜設定される。例えば、基材層40の熱伝導率が比較的低い場合は、熱伝導層41の中央部41aと両端部41bとの厚さを厚く、中央部41aと両端部41bとの厚さの比率を大きくして、熱伝導層41の熱移動を促進させることが好ましい。
【0047】
上記説明したように本発明の定着装置6においては、非通紙領域R2の温度が上昇しても、熱伝導層41内において熱が速やかに幅方向に移動して均熱化されるので、非通紙領域R2の過昇温を防止できる。さらに、基材層40を、幅方向中央部40aの厚さが両端部40bよりも厚くなるように形成することで、熱伝導層41の厚さが厚くなって熱容量が増加することを防いでいる。
【0048】
なお、本実施形態では、熱伝導層41を幅方向両端部41bの厚さが中央部41aよりも厚くなるように形成したが、基材層40を幅方向中央部40aの厚さが両端部40bよりも薄くなるように形成した場合、熱伝導層41を幅方向において一定の厚さとしても良い。この場合は、基材層40の両端部40bの熱容量が減少することで熱伝導層41の両端部41bの熱容量が相対的に増大し、熱伝導層41内において中央部41aと両端部41bとで熱容量に差が生じ、両端部41bから中央部41aへの熱伝導が生じて、熱伝導層41が速やかに均熱化される。
【0049】
したがって、高い剛性を有する一方で熱伝導性の低いステンレス合金等の材料を用いて基材層40を形成することができる。これにより、基材層40の厚さを薄くして熱容量を低くできるので、加熱ローラー21の省エネ化が可能となる。
【0050】
さらに、加熱ローラー21が逆クラウン形状を有しているので、定着ニップNを用紙Sが搬送される際に、用紙Sにしわが入ることを防止できる。なお、前述のように、熱伝導層41の厚さを幅方向において一定にした場合は、加熱ローラー21の外径がクラウン形状となるので、加熱ローラー21の外径を逆クラウン形状とするには、熱伝導層41を外径が逆クラウン形状を成すように、両端部41bの厚さを中央部41aの厚さよりも厚くすることが好ましい。
【0051】
また、熱伝導層41の表面には微細な凹凸が形成されているので、離型層42と熱伝導層41との接着性能を向上できる。
【0052】
次に、図4を参照して、第2の実施形態に係る定着装置6の加熱ローラー21について説明する。図4は加熱ローラーを示す正面断面図である。
【0053】
加熱ローラー21は、第1の実施形態と同様に、筒形状の基材層40と、基材層40の外周面に設けられる熱伝導層41と、熱伝導層41の外周面に設けられる離型層42と、を備えている。
【0054】
第2の実施形態においては、基材層40が、通紙領域R1においては、幅方向中央部40aから両端部40bに向かって厚さが徐々に薄くなるように形成されている。一方、非通紙領域R2においては、最外端部40cが両端に向かって厚さが徐々に厚くなるように形成されている。
【0055】
熱伝導層41は、通紙領域R1においては、幅方向中央部41aから両端部41bへ向かって徐々に厚さが薄くなるように形成されている。一方、非通紙領域R2においては、最外端部41cが、両端に向かって厚さが徐々に薄くなるように形成されている。さらに、熱伝導層41は、中央部41aから最外端部41cへ向かって徐々に外径が大きくなる逆クラウン形状を成すように形成されている。
【0056】
このように第2の実施形態では、基材層40の最外端部40cの厚さを厚くすることで、最外端部40cの剛性を高めることができる。したがって、加熱ローラー21の最外端部40cを軸支部で軸支する際に、加熱ローラー21の回転負荷に対する剛性を得ることができる。
【0057】
次に、図4を参照して、第3の実施形態に係る定着装置6の加熱ローラー21について説明する。図4は加熱ローラーを示す正面断面図である。
【0058】
加熱ローラー21は、第2の実施形態と同様に、筒形状の基材層40と、基材層40の外周面に設けられる熱伝導層41と、熱伝導層41の外周面に設けられる離型層42と、を備えている。
【0059】
第3の実施形態においては、熱伝導層41が形成されている領域R3(熱伝導層形成領域)の幅が、基材層40の幅よりも狭く形成されている。詳細には、熱伝導層形成領域R3の幅は、通紙領域R1の幅よりもやや広く、幅方向両端は通紙領域R1の両端よりもやや外側に離間している。これにより、熱伝導層形成領域R3の両外側には、基材層40が露出した被軸支部40dが形成される。これらの被軸支部40dが、加熱ローラー収容凹部34に設けられた軸支部70に軸支されるようになっている。
【0060】
基材層40は、熱伝導層形成領域R3においては、幅方向中央部40aから両端部40bに向かって厚さが徐々に薄くなるように形成されている。一方、熱伝導層形成領域R3の両外側においては、両被軸支部40dが、両端部40bの最薄部の厚さよりも厚い一定の厚さを有するように形成されている。
【0061】
熱伝導層41は、幅方向中央部41aから両端部41bへ向かって徐々に厚さが薄くなり、外径が、中央部41aから両端部41bへ向かって徐々に大きくなる逆クラウン形状を成すように形成されている。
【0062】
ハロゲンヒーター22の発光部53は、熱伝導層形成領域R3に配置されている。詳細には、一方のハロゲンヒーター22の発光部53は、熱伝導層形成領域R3の両端部を除く中央部に配置され、他方のハロゲンヒーター22の発光部53は、熱伝導層形成領域R3の両端部に配置されている。一方のハロゲンヒーター22の発光部53の両端部と、他方のハロゲンヒーター22の各発光部53の内側の端部は、幅方向において一部重なっている。
【0063】
このように2個のハロゲンヒーター22の発光部53の位置をずらすことで、用紙Sの幅に応じてハロゲンヒーター22を使い分けて加熱領域を変更することができる。つまり、最大幅の用紙Sが通紙される場合は、双方のハロゲンヒーター22を作動させて熱伝導層形成領域R3を加熱し、最大幅よりも幅の狭い用紙Sが通過される場合は、一方のハロゲンヒーター22を作動させて、熱伝導層形成領域R3よりも狭い領域を加熱する。熱伝導層形成領域R3の幅は、通紙領域R1の幅よりもやや広いので、熱伝導層形成領域R3が加熱されると、通紙領域R1の幅方向両端よりもやや外側までが加熱されることとなり、通紙領域R1を確実に加熱することができるようになっている。
【0064】
上記構成を有する定着装置6においては、ハロゲンヒーター22で加熱される領域をできるだけ狭くできるので、非通紙領域R2の過昇温をより防止することができる。また、ハロゲンヒーター22の省エネ性を向上できる。
【0065】
さらに、基材層40の幅方向両端部の被軸支部40dが、加熱ローラー収容凹部34に設けられた軸支部70にそれぞれ軸支されている。被軸支部40dはハロゲンヒーター22の発光部53が配置されていないので、ハロゲンヒーター22によって加熱されない。また、基材層40の熱伝導性が低いので、被軸支部40dには熱が伝達されず、温度が上昇しない。被軸支部40dの温度が上昇すると、軸支部70との摩擦が大きくなって回転トルクが上昇したり、軸支部70の物性が劣化して寿命が短くなったりするという不具合が生じる。本実施形態では、被軸支部40dの温度が上昇しないので、回転トルクの上昇を抑えたり、軸支部70の寿命を延ばしたりすることができる。また、軸支部70に潤滑油が含まれる場合は、潤滑油の揮発を防止できる。
【0066】
上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る画像形成装置及び定着装置における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 プリンター(画像形成装置)
6 定着装置
21 加熱ローラー
22 熱源
23 加圧ローラー
40 基材層
40a 中央部
40b 両端部
40d 被軸支部
41 熱伝導層
41a 中央部
41b 両端部
42 離型層
図1
図2
図3
図4
図5