【文献】
小川修一,これからのプラントの安全・安定操業と業務効率化に向けて,計装,日本,有限会社工業技術社,2010年10月 1日,第53巻,第10号,第21−24頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記資産状態予測部は、前記フィールド機器の型式と、前記遷移を発生させる事象とを対応付けた状態遷移予測情報に基づき、前記遷移を予測する、請求項4に記載の機器資産管理装置。
前記状態遷移予測情報は、前記稼働資産状態が遷移するまでの時間と、当該時間において前記稼働資産状態が遷移する確率の情報を含む、請求項5に記載の機器資産管理装置。
前記稼働資産状態記憶部は、前記稼働資産状態を、少なくとも、前記フィールド機器が正常に稼働している正常状態、前記フィールド機器が正常に稼働していない非正常状態又は前記フィールド機器の校正が要求される校正要求状態のいずれかの状態として記憶し、
前記在庫資産状態記憶部は、前記在庫資産状態を、少なくとも、前記フィールド機器が出庫可能に在庫されている在庫状態又は前記フィールド機器を廃棄する廃棄状態のいずれかの状態として記憶する、請求項1から6のいずれか一項に記載の機器資産管理装置。
前記資産状態遷移部は、前記フィールド機器をプラントに設置したときに、前記資産状態を、前記在庫状態から前記正常状態に遷移させる、請求項7に記載の機器資産管理装置。
前記資産状態遷移部は、前記フィールド機器の校正周期が経過したときに、前記正常状態から前記校正要求状態に遷移させる、請求項7又は8に記載の機器資産管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における機器資産管理装置、機器資産管理方法、機器資産管理プログラム及び記録媒体について詳細に説明する。
【0026】
先ず、
図1を用いて、機器資産管理装置1のソフトウェア構成を説明する。
図1は、実施形態の機器資産管理装置のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
図1において、機器資産管理装置1は、稼働資産管理部11、在庫資産管理部12及び機器資産管理部13の機能を有する。稼働資産管理部11は、保全記録取得部111、稼働資産状態集計部112及び稼働資産状態記憶部113の機能を有する。在庫資産管理部12は、購買情報取得部121、在庫情報取得部122、保全情報取得部123、在庫資産状態集計部124及び在庫資産状態記憶部125の機能を有する。機器資産管理部13は、資産状態遷移部131、資産状態表示部132、不整合検出部133、資産状態予測部134及び状態遷移予測情報記憶部135の機能を有する。機器資産管理装置1の上記各機能は、機器資産管理装置1を制御する機器資産管理プログラムによって実現される機能モジュールである。機器資産管理プログラムは、後述する機器資産管理装置1のハードウェア構成を利用して実行される。機器資産管理プログラムは、機器資産管理装置1に対して、プログラムを提供するサーバから提供され、又は記録媒体から提供されてもよい。
【0028】
保全記録取得部111は、保全記録記憶装置52からフィールド機器の保全記録を取得する。本実施形態におけるフィールド機器は、プラントに設置されて、保全(メンテナンス)対象となる、例えばセンサやアクチュエータであり、保全作業によって、新たにプラントに設置され、設定値等が設定又は変更され、校正され、修理され、若しくは交換される機器である。センサは、例えば、プラントのプロセスにおける圧力、温度、pH、生成物の流量等の物理量のデータを測定する。保全記録取得部111は、フィールド機器に対するこれらの保全を記録した保全記録を保全記録記憶装置52から取得する。保全記録記憶装置52は、保全記録を記憶した装置であり、例えば、CMMS(Computerised Maintenance Management System:保全管理システム)である。保全記録には、フィールド機器に対して実施された上記のような保全作業の内容の記録(アクション記録)、校正が必要なフィールド機器の校正周期、劣化等により使用期限が定められたフィールド機器の使用期限等の情報が含まれる。
【0029】
本実施形態においては、保全記録に含まれるアクション記録として以下の4種類を例示する。
・設置(Installation):正常品のプラントへの設置又は交換
・調整(Tuning):パラメータの設定又は変更
・校正(Calibration):ゼロ点調整、スパン調整等の入出力調整
・故障(Breakdown):故障による使用中止又はオフライン化
アクション記録には、例えば、フィールド機器のプラントからの取外しを示す「取外し」(Uninstallation)のアクション記録を含むようにしてもよい。
【0030】
保全記録に含まれる校正周期は、フィールド機器の型式によって予め定められている期間の情報である。但し、校正周期は、前回に校正を実施した日時から算出される次回校正が必要となる日時の情報であってもよい。
【0031】
保全記録に含まれる使用期限は、フィールド機器の型式によって予め定められている使用期限の日付の情報である。使用期限は、フィールド機器がプラントに設置されているときの期限であり、負荷等の使用条件によって変更されてもよい。また、使用期限は、包装の開封等によって定められる日付の情報であってもよい。
【0032】
稼働資産状態集計部112は、機器資産管理装置1において管理するプラントに配置されたフィールド機器の稼働資産を集計する。本実施形態において、フィールド機器は、稼働資産状態と在庫資産状態とを遷移するものとする。新品のフィールド機器は、購買業務によって購買され、倉庫業務によって倉庫に入庫され予備品在庫として保管される。保管されたフィールド機器は、新規に設置され又は古いフィールド機器と交換されて稼働状態となる。稼働状態となったフィールド機器は、故障又は使用期限によって稼働状態ではなくなり、廃棄等される。新品として購入されて倉庫に保管されているフィールド機器を在庫資産という。一方、プラントに設置されたフィールド機器を稼働資産という。在庫資産は、経理処理上の流動資産として管理される。また、稼働資産は、経理処理上の固定資産として管理される。稼働資産状態集計部112は、プラントに設置されて稼働状態となっているフィールド機器の状態を稼働資産状態として集計する。フィールド機器は、稼働資産状態として以下に例示する3つの状態を遷移するものとする。
・フィールド機器が正常に動作可能な正常状態(Working Healthy)
・フィールド機器が正常に動作不可能な非正常状態(Working Unhealthy)
・フィールド機器が校正が必要となる校正要求状態(Calibration Required)
なお、稼働資産状態の遷移の詳細は、
図2を用いて後述する。
【0033】
稼働資産状態記憶部113は、稼働資産状態集計部112において集計されたフィールド機器の稼働資産状態を記憶する。稼働資産状態記憶部113は、例えば、機器資産管理装置1の内部ストレージ又は外部ストレージを利用して稼働資産状態を記憶する。
【0034】
在庫資産管理部12は、納入されて在庫資産となったフィールド機器の資産状態である在庫資産状態を管理する。フィールド機器は、在庫資産状態として以下に例示する3つの状態を遷移するものとする。
・フィールド機器が購買部門において受領されたときの入庫状態(Depot)
・フィールド機器が倉庫に保管されたときの在庫状態(Inventory)
・フィールド機器が廃棄されるときの廃棄状態(Disposed)
なお、在庫資産状態の遷移の詳細は、
図2を用いて後述する。
【0035】
購買情報取得部121は、購買業務支援装置61から購買情報を取得する。購買業務支援装置61は、プラントを含む工場又は会社全体の購買業務を支援する装置であり、プロセス製造業向けERP(Enterprise Resource Planning:経営資源統合)システムにおいて実現することができる。購買情報取得部121が取得する購買情報は、例えば、購入したフィールド機器が納入されたときの記録である受領記録や、受領されたフィールド機器が検収者によって検収されたときの記録である検収記録を含む。
【0036】
在庫情報取得部122は、倉庫業務支援装置62から在庫情報を取得する。倉庫業務支援装置62は、プラントを含む工場又は会社全体の倉庫業務を支援する装置であり、プロセス製造業向けERPシステムにおいて実現することができる。在庫情報取得部122が取得する在庫情報は、例えば、購入したフィールド機器が倉庫に入庫されたときの記録である入庫記録、入庫されたフィールド機器が出庫されたときの記録である出庫記録、又は、フィールド機器の保管期限の情報を含む。保管期限は、フィールド機器の型式によって予め定められている保管期限の日付の情報である。使用期限が、フィールド機器がプラントに設置されて稼働状態における劣化を規定するのに対して、保管期限は倉庫に保管されている状態における劣化を規定する点において異なる。保管期限は、例えば使用期限と同様に保全記録記憶装置52等から取得するようにしてもよい。
【0037】
なお、本実施形態における「出庫」とは、倉庫に保管されて在庫状態にあるフィールド機器が保全作業者に対して出庫されることをいう。出庫されたフィールド機器は、保全作業者によってプラントに設置される。すなわち、出庫されたフィールド機器の資産状態は、在庫資産状態から稼働資産状態に遷移するものとする。
【0038】
また、本実施形態における「倉庫」とは、例えば保管用のラックや棚等の物理的な機器を意味するものではなく、フィールド機器を保管状態とする仮想的な倉庫を意味する。したがって、購入したフィールド機器が運搬されてラック等に置かれることなく保全作業者に渡される場合であっても、フィールド機器は運搬中において倉庫に一度入庫される在庫状態から出庫されるものとする。すなわち、入庫とは、保全作業者に対してフィールド機器を渡せる状態にすることをいい、出庫とは、保全作業者に対してフィールド機器を渡してプラントに設置できる状態にすることをいう。出庫されたフィールド機器は、原則、保全作業者が保管することなく、プラントに設置されて稼働資産となる。
【0039】
保全情報取得部123は、保全業務支援装置63から保全情報を取得する。保全業務支援装置63は、プラントを含む工場又は全体の保全業務を支援する装置であり、プロセス製造業向けERPシステムにおいて実現することができる。保全情報取得部123が取得する保全情報は、例えば、フィールド機器が故障又は使用期限に経過によって廃棄されるときの記録である廃棄記録や、使用期限の情報を含む。使用期限の情報は、保全記録記憶装置52から取得される保全記録に含まれる使用期限の情報と同様である。したがって、保全情報取得部123は、使用期限の情報を保全業務支援装置63から取得する代わりに、保全記録記憶装置52から取得するようにしてもよい。
【0040】
なお、
図1においては、購買業務支援装置61、倉庫業務支援装置62及び保全業務支援装置63のそれぞれの異なる装置として説明した。しかし、購買業務支援装置61、倉庫業務支援装置62及び保全業務支援装置63はいずれか2以上の装置が組み合わされたものであってもよい。また、購買業務支援装置61、倉庫業務支援装置62及び保全業務支援装置63は、それぞれ説明した記録等の情報を提供する機能を有するものであればよく、それぞれの装置の他の機能の有無や名称については任意である。
【0041】
在庫資産状態集計部124は、機器資産管理装置1において管理するプラントに配置されるフィールド機器の在庫資産を集計する。在庫資産状態集計部124は、それぞれのフィールド機器が、上記いずれの在庫資産状態(入庫状態、在庫状態、あるいは廃棄状態)であるかを集計する。
【0042】
在庫資産状態記憶部125は、在庫資産状態集計部124において集計されたフィールド機器の在庫資産状態を記憶する。在庫資産状態記憶部125は、例えば、機器資産管理装置1の内部ストレージ又は外部ストレージを利用して在庫資産状態を記憶する。
【0043】
機器資産管理部13は、稼働資産管理部11で管理される稼働資産と、在庫資産管理部12で管理される在庫資産とを合わせた「機器資産」を管理する。以下、「機器資産」という場合、稼働資産及び在庫資産の両方を合わせたものとして説明する。
【0044】
資産状態遷移部131は、フィールド機器に対して実施された保全作業の情報である保全記録に基づき、稼働資産状態を遷移(変化)させ、かつ、フィールド機器の入出庫の情報に基づき、在庫資産状態を遷移させる。稼働資産状態と在庫資産状態を合わせたものを、以下「機器資産状態」という。また、稼働資産状態又は在庫資産状態の区別をしない場合「資産状態」という場合がある。資産状態遷移部131による機器資産状態の遷移の詳細は、
図2を用いて後述する。
【0045】
資産状態表示部132は、フィールド機器の稼働資産状態と在庫資産状態(機器資産状態)を生成して表示する。資産状態表示部132は、機器資産状態を状態遷移図で表示する。状態遷移図とは、状態の遷移のモデルを表現した図であり、本実施形態においては、状態の遷移を表現するものであれば、グラフィカルな表示(
図2で例示)であるか表形式(
図3、
図4等で例示)であるか数式であるかの別を問わない。状態遷移図には、例えば、ムーア・マシン、ミーリマシン、UML(Unified Modeling Language)状態遷移図、状態遷移表等の表現方法を含む。資産状態表示部132は、生成した状態遷移図を、例えばディスプレイ等の表示装置に表示する。資産状態表示部132は、生成した状態遷移図を、プリンタ等に印字出力するものであってもよい。
【0046】
不整合検出部133は、稼働資産状態と在庫資産状態の不整合を検出する。上述のように、新規に購入されたフィールド機器の資産状態は在庫資産状態から稼働資産状態に遷移するため、フィールド機器の資産状態は在庫資産状態と稼働資産状態のいずれかの状態になる。在庫資産状態は、フィールド機器の入出庫の情報に基づき遷移する。また、稼働資産状態は、保全記録に基づき遷移する。したがって、1つのフィールド機器においては、在庫資産状態と稼働資産状態とが一致して記憶されている、しかし、在庫資産状態又は稼働資産状態を遷移させる情報が取得されなかった場合、在庫資産状態と稼働資産状態との間で不整合が発生することになる。例えば、保全作業者が出庫記録を残さないまま倉庫に保管されているフィールド機器をプラントに設置した場合、1つのフィールド機器が在庫資産状態と稼働資産状態の両方を有することになって不整合が発生する。また、保全作業者がプラントから取り外して一度廃棄したフィールド機器を、オフラインで修理して再度プラントに取付けた場合、在庫資産状態からの遷移ではない稼働資産状態が発生して不整合が発生する。不整合検出部133は、在庫資産状態と稼働資産状態とを比較することにより両者の不整合を容易に検出することが可能となる。
【0047】
資産状態予測部134は、状態遷移予測情報に基づき、資産状態の遷移を予測する。状態遷移予測情報とは、フィールド機器の型式(モデル)と、在庫資産状態又は稼働資産状態の遷移の予測とを対応付けて記録した情報である。本実施形態においては、状態遷移予測情報として、フィールド機器の校正周期に基づき、稼働資産状態が校正要求状態(Calibration Required)に遷移する予測、フィールド機器の使用期限に基づき、稼働資産状態から廃棄状態(Disposed)に遷移する予測、及びフィールド機器の保管期限に基づき在庫資産状態が廃棄状態(Disposed)に遷移する予測を例示する。状態遷移予測情報の詳細は、
図6を用いて後述する。
【0048】
状態遷移予測情報記憶部135は、上述した状態遷移予測情報を記憶する。状態遷移予測情報記憶部135は、例えば、機器資産管理装置1の内部ストレージ又は外部ストレージを利用して状態遷移予測情報を記憶する。
【0049】
なお、機器資産管理装置1の、稼働資産管理部11、在庫資産管理部12及び機器資産管理部13の各機能、稼働資産管理部11の、保全記録取得部111、稼働資産状態集計部112及び稼働資産状態記憶部113の各機能、在庫資産管理部12の、購買情報取得部121、在庫情報取得部122、保全情報取得部123、在庫資産状態集計部124及び在庫資産状態記憶部125の各機能、機器資産管理部13の、資産状態遷移部131、資産状態表示部132、不整合検出部133、資産状態予測部134及び状態遷移予測情報記憶部135の各機能は、ソフトウェアによって実現される場合を説明した。しかし、上記各機能の中の1つ以上の機能は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。また、上記各機能は、1つの機能を複数の機能に分割して実施してもよい。また、上記各機能は、2つ以上の機能を1つの機能に集約して実施してもよい。
【0050】
次に、
図2を用いて、機器資産状態の状態遷移を説明する。
図2は、実施形態の機器資産管理装置における機器資産状態の状態遷移の一例を示す状態遷移図である。
【0051】
図2において、機器資産状態は、上述した通り、稼働資産状態と在庫資産状態の2つの状態を有する。稼働資産状態は、正常状態(Working Healthy)a1、非正常状態(Working Unhealthy)a2、及び校正要求状態(Calibration Required)a3の状態を有する。また、在庫資産状態は、入庫状態(Depot)b1、在庫状態(Inventory)b2、及び廃棄状態(Disposed)b3の状態を有する。
【0052】
図2に示す状態遷移図の状態は、それぞれのフィールド機器において個別に遷移する。すなわち、それぞれのフィールド機器はそれぞれの機器資産状態を有する。機器資産状態の状態遷移は、
図1の資産状態遷移部131において実行される。
【0053】
先ず、購買業務支援装置61から、フィールド機器が購買部門において受領されたことを示す受領記録を取得したときに、機器資産状態は入庫状態b1に遷移する。受領記録には、少なくともフィールド機器を識別するための情報(資産ID)を含む。資産ID(Identification)は、それぞれのフィールド機器の機器資産状態を管理するために利用される。受領記録には、フィールド機器を受領した日時の情報が含まれていてもよい。
【0054】
入庫状態b1の機器資産状態において、倉庫業務支援装置62から、フィールド機器が倉庫に保管されて在庫状態になったことを示す入庫記録を取得したときに、機器資産状態は在庫状態b2に遷移する。在庫状態b2は、フィールド機器がメンテナンス作業者に対して出庫可能な状態である。入庫記録は、例えば、倉庫作業者によってフィールド機器が入庫されてことを確認されたときに記録される。
【0055】
在庫状態b2の機器資産状態において、フィールド機器をプラントに設置したときに、機器資産状態は正常状態a1に遷移する。フィールド機器をプラントに設置したことは、例えば、倉庫業務支援装置62から、フィールド機器が在庫状態から保全作業者に渡されたことを示す出庫記録を取得したことによって認識することができる。すなわち、出庫されたフィールド機器が必ずプラントに設置される場合、出庫記録の取得をフィールド機器の設置とみなすことが可能となる。正常状態a1は、フィールド機器がプラントに設置(Installation)されて正常に動作可能な状態である。機器資産状態が在庫状態b2から正常状態a1に遷移することにより、そのフィールド機器の資産状態は、在庫資産状態から稼働資産状態に遷移したことになる。出庫記録は、例えば、倉庫作業者によってフィールド機器が出庫されてことを確認されたときに記録される。なお、
図2においては、出庫記録の取得をフィールド機器のプラントへの設置とみなす場合を示しているが、フィールド機器のプラントへの設置は、他の方法によって認識されてもよい。例えば、フィールド機器がフィールド機器が接続されるネットワークで検出されたことによってフィールド機器の接続が認識されるようにしてもよい。また、保全業務支援装置63から、設置完了を示す情報を取得することによりフィールド機器の接続が認識されてもよい。
【0056】
また、
図2においては、出庫されたフィールド機器が必ずプラントに設置される場合を例示しているが、例えば、保全作業者が設置前にフィールド機器を所有している状態(ローカルストレージ状態)を在庫資産状態に定義するようにしてもよい。プラントを停止して定期的に実施される保全作業においては、保全作業者は交換するフィールド機器を予め準備してローカルストレージ状態としておく場合がある。
図2は機器資産状態の状態遷移の一例であり、定義する資産状態はフィールド機器の保全方法に合せて適宜定めることができる。
【0057】
一方、在庫状態b2の機器資産状態において、フィールド機器の保管期限が経過したときには、機器資産状態は廃棄状態b3に遷移する。廃棄状態b3は、フィールド機器が廃棄され、資産管理が不要となる状態である。廃棄状態b3となったフィールド機器は、例えば、資産管理の帳簿上(不図示)から除却される。プラントにおいてはプラントの稼働率を向上させるためにフィールド機器の予備品を在庫状態b2としておくことがある。保管期限によって在庫資産状態を管理することにより、在庫資産状態のまま廃棄される資産の状況を容易に把握することができる。
【0058】
正常状態a1の機器資産状態において、保全記録記憶装置52から、フィールド機器が故障したことを示すアクション記録を取得したときに、機器資産状態は非正常状態a2に遷移する。非正常状態a2は、フィールド機器が正常に動作不可能な状態である。プラントに設置されたフィールド機器は、故障しても直ちに交換されず、オフラインとされて次のプラントの定期修理等による停止までそのまま設置されている場合がある。仮想資産状態として非正常状態a2を定義することにより、故障したまま設置されているフィールド機器の資産を管理することが可能となる。
【0059】
正常状態a1の機器資産状態において、フィールド機器の校正周期が経過したときには、機器資産状態は校正要求状態a3に遷移する。校正周期の情報は、保全記録記憶装置52から取得することができる。校正要求状態a3は、フィールド機器が校正が必要となる状態である。フィールド機器は、使用状況等によってゼロ点やスパンがずれる場合がある。校正周期は、フィールド機器の型式、フィールド機器の使用状況、法定点検の必要性等によって予め定めておくことができる。校正要求状態a3となったフィールド機器は、保全作業者によって校正の保全作業が実施される。校正要求状態a3を管理することにより、フィールド機器の保全を容易に計画することができる。
【0060】
校正要求状態a3の機器資産状態において、保全業務支援装置63からフィールド機器の校正が合格であることを示すアクション記録を取得したときは、機器資産状態は再び正常状態a1に遷移する。すなわち、プラントに設置されて稼働資産状態となったフィールド機器は、正常状態a1と校正要求状態a3との間を遷移しながら使用されることになる。フィールド機器の校正は、フィールド機器をプラントに設置したまま行なう校正方法と、フィールド機器をプラントから取り外して行なう校正方法がある。
図2においては、フィールド機器をプラントから取り外して行なう校正方法を行なう場合であっても、校正に合格したフィールド機器はそのまま稼働資産状態として正常状態a1に遷移するものとする。すなわち、校正に合格したフィールド機器を一旦ローカルストレージ状態とする運用は行わないものとする。
【0061】
一方、校正要求状態a3の機器資産状態において、保全業務支援装置63からフィールド機器の校正が不合格であることを示すアクション記録を取得したときは、機器資産状態は廃棄状態b3に遷移する。
【0062】
また、正常状態a1の機器資産状態において、フィールド機器の使用期限が経過したときには、機器資産状態は廃棄状態b3に遷移する。使用期限の情報は、保全業務支援装置63から取得することができる。
【0063】
また、非正常状態a2の機器資産状態において、保全業務支援装置63(又は倉庫業務支援装置62)からフィールド機器が廃棄されたことを示す廃棄記録を取得したときにも、機器資産状態は廃棄状態b3に遷移する。廃棄状態b3に遷移することにより、フィールド機器は稼働資産状態から在庫資産状態に遷移することになるので、稼働資産状態のレコードは削除される。なお、非正常状態a2から廃棄状態b3への遷移は、例えば、保全業務支援装置63からフィールド機器がプラントから取り外されたことを示す「取外し」(Uninstallation)のアクション記録を受信することによって行われてもよい。
【0064】
図2に示す状態遷移図は、
図1で説明した資産状態表示部132によって、例えばディスプレイに表示される。状態遷移図は、個々のフィールド機器について個別に表示するようにしてもよく、また、複数のフィールド機器を一の状態遷移図に表示するようにしてもよい、また、状態遷移図で定義される資産状態の定義や追加は、例えば、資産状態遷移部131において実行できるようにしてもよい。フィールド機器の資産状態を状態遷移図で確認することにより、フィールド機器の資産管理を容易にすることが可能となる。
【0065】
次に、
図3を用いて、稼働資産状態の遷移について説明する。
図3は、実施形態の機器資産管理装置における稼働資産状態の遷移の一例を示す図である。
【0066】
図3において、
図3(A)は、保全記録を示す。保全記録は、「資産ID」、「日時」及び「アクション」のデータ項目を有する。保全記録の各行が1つのフィールド機器のレコードを示している。
【0067】
「資産ID」のデータ項目は、フィールド機器を一意に識別するための情報であり、例えば、フィールド機器が受領されたときに付与される。本実施形態では、それぞれのフィールド機器は資産IDで資産状態が管理されるものとする。なお、フィールド機器をプラント内において識別する情報としては、例えばタグIDが存在するが、タグIDは交換されたフィールド機器において同一のIDが使用されることが多く、また、プラントに設置されるときに設定されるパラメータであるため、在庫資産状態を含む資産管理する情報として適さない場合がある。
【0068】
「日時」のデータ項目は、保全記録においてそれぞれのフィールド機器のレコードが記録された日時である(
図3(A)においては時間の記載を省略)。保全記録は、日時の順番で記録されていく。
【0069】
「アクション」のデータ項目は、保全作業者が実施した保全作業の内容を示すアクション記録の情報である。アクションのデータ項目には、正常品であるフィールド機器のプラントへの設置作業又は交換作業を示す「Installation(設置)」、フィールド機器のパラメータの設定作業又は変更作業を示す「Tuning(調整)」、フィールド機器の校正作業を示す「Calibration(校正)」、フィールド機器の故障による使用中止化作業又はオフライン化作業を示す「Breakdown(故障)」等の内容が記録される。「アクション」のデータ項目には、上述のように、フィールド機器のプラントからの取外しを示す「Uninstallation(取外し)」のアクションを含んでいてもよい。
【0070】
なお、稼働資産状態を遷移させる情報としては、上述の通り、フィールド機器の校正周期と使用期限の情報が使用される。
図3(A)においては、「アクション」のデータ項目にこれらの情報が含まれてもよい旨を示している。図示する(Calibration Cycle)は、校正周期の情報を示している。
【0071】
図3(B)は、
図3(A)のそれぞれの記録(レコード)に対応した稼働資産状態の遷移を示している。稼働資産状態は、「資産ID」、「状態推移日」及び「状態」のデータ項目を有する。「資産ID」のデータ項目は
図3(A)と同様であるため説明を省略する。
【0072】
「状態遷移日」のデータ項目は、
図3(A)の「日時」のデータ項目に対応し、保全記録によって稼働資産状態が遷移した日を表している。但し、状態遷移日は、保全記録の記録日時と異なっていてもよい。例えば、保全記録の取得がリアルタイムで行われない場合、稼働資産の状態遷移は保全記録の取得日時によって影響を受ける。
【0073】
「状態」のデータ項目は、「アクション」のデータ項目に対応した稼働資産状態の遷移先の状態を示している。例えば、5月12日において、「資産ID」が「1234」のフィールド機器は、「Installation(設置)」に対応して、「状態」が「Working Healthy(正常状態)」に遷移したことを示している。また、5月13日において、同フィールド機器は、「Tuning(調整)」に対応して、「状態」が「Working Healthy(正常状態)」に遷移したこと(状態の遷移無し)を示している。また、8月12日において、同フィールド機器は、「Calibration Cycle(校正周期)」に対応して、「状態」が「Calibration Required(校正要求状態)」に遷移したことを示している。「アクション」のデータ項目にフィールド機器のプラントからの取外しを示す「Uninstallation(取外し)」のアクションを含む場合、稼働資産状態のレコードを消去するように稼働資産状態を遷移させてもよい。
【0074】
なお、
図3においては、
図3(A)の保全記録の1レコードに対応して、それぞれ
図3(B)の稼働資産状態が遷移する場合を示したが、例えば、複数の保全記録のレコードに対応して稼働資産状態が遷移するようにしてもよい。例えば、保全記録が「A1」と「A2」が成立したときに稼働資産状態が「B1」に遷移し、保全記録が「A1」と「A3」が成立したときに稼働資産状態が「B2」に遷移するようにしてもよい。
【0075】
次に、
図4を用いて、在庫資産状態の遷移について説明する。
図4は、実施形態の機器資産管理装置1における在庫資産状態の遷移の一例を示す図である。
【0076】
図4において、
図4(A)は、購買情報を示す。購買情報は、購買情報取得部121によって購買業務支援装置61から取得される。購買情報は、「資産ID」、「日時」及び「記録」のデータ項目を有する。購買情報の各行が1つのフィールド機器のレコードを示している。「記録」のデータ項目には、フィールド機器が受領されたときの受領記録が記録される。
【0077】
図4(B)は、在庫情報を示す。在庫情報は、在庫情報取得部122によって倉庫業務支援装置62から取得される。在庫情報は、「資産ID」、「日時」及び「記録」のデータ項目を有する。在庫情報の各行が1つのフィールド機器のレコードを示している。「記録」のデータ項目には、フィールド機器が入庫されたときの入庫記録と、出庫されたときの出庫記録が記録される。
【0078】
図4(C)は、保全情報を示す。保全情報は、保全情報取得部123によって保全業務支援装置63から取得される。保全情報は、「資産ID」、「日時」及び「記録」のデータ項目を有する。保全情報の各行が1つのフィールド機器のレコードを示している。「記録」のデータ項目には、フィールド機器が廃棄されたときの廃棄記録が記録される。
【0079】
図4(D)は、
図4(A)〜
図4(C)のそれぞれの記録(レコード)に対応した在庫資産状態の遷移先を示している。在庫資産状態は、「資産ID」、「状態遷移日」及び「状態」のデータ項目を有する。
【0080】
「状態遷移日」のデータ項目は、
図4(A)〜
図4(C)の「記録」のデータ項目の取得に対応して、在庫資産状態が遷移した日を表している。但し、状態遷移日は、
図4(A)〜
図4(C)の「日時」のデータ項目の日時と異なっていてもよい。例えば、購買情報等の取得がリアルタイムで行われない場合、在庫資産の状態遷移は購買情報等の取得日時によって影響を受ける。
【0081】
「状態」のデータ項目は、「記録」のデータ項目に対応した在庫資産状態の遷移先の状態を示している。例えば、5月9日において、「資産ID」が「1234」のフィールド機器は、「受領記録」に対応して、「状態」が「Depot(入庫状態)」に遷移したことを示している。また、5月10日において、同フィールド機器は、「入庫記録」に対応して、「状態」が「Inventory(在庫状態)」に遷移したことを示している。また、5月12日において、同フィールド機器は、「出庫記録」に対応して、「状態」が「Working Healthy(正常状態)」に遷移したことを示している。遷移先の「正常状態」は、稼働資産状態である。また、10月14日において、同フィールド機器は、「廃棄記録」に対応して、「状態」が「Disposed(廃棄状態)」に遷移したことを示している。
【0082】
なお、
図4においては、
図4(A)〜
図4(C)の各情報の1レコードに対応して、それぞれ
図4(D)の在庫資産状態が遷移する場合を示したが、例えば、複数の保全記録のレコードに対応して稼働資産状態が遷移するようにしてもよい。
【0083】
次に、
図5を用いて、稼働資産状態と在庫資産状態の不整合の検出方法を説明する。
図5は、実施形態の機器資産管理装置1における稼働資産状態と在庫資産状態の不整合の検出方法の一例を示す図である。
【0084】
図5において、
図5(A)は、
図3(B)で説明した稼働資産状態である。また、
図5(B)は、
図4(D)で説明した在庫資産状態である。
【0085】
稼働資産状態と在庫資産状態の不整合の検出は、同じ資産IDを有するフィールド機器の資産状態が稼働資産状態と在庫資産状態とで不整合となっているかどうかで検出することができる。例えば、5月12日において、在庫資産状態は、出庫記録によって遷移先が「Working Healthy(正常状態)」であると記録されている。稼働資産状態においても同日、同フィールド機器が「Working Healthy(正常状態)」になっていると記録されているため、稼働資産状態と在庫資産状態は整合していると検出される。
【0086】
一方、10月14日において、同フィールド機器は、在庫資産状態において「Disposed(廃棄状態)」に遷移したことが記録されているが、稼働資産状態においては、「Working Unhealthy(非正常状態)」が記録されており、稼働資産状態と在庫資産状態の不整合が検出される。この不整合は、例えば保全作業者が保全業務支援装置63(又は倉庫業務支援装置62)に対して、同フィールド機器の廃棄を記録していないことが原因で発生する。廃棄が記録されていない場合、機器資産管理装置1は廃棄記録を取得することができないため、稼働資産状態の非正常状態のレコードが削除されずに残ってしまい、在庫資産状態との不整合が発生する。
図1の不整合検出部133は、同じ資産IDのフィールド機器における稼働資産状態と在庫資産状態を比較することにより不整合を検出する。
図5においては、資産IDが「1234」と「3456」の2つのフィールド機器についての資産状態の不整合を検出する場合を示したが、大規模なプラントにおいては、複数の保全作業者が複数のフィールド機器を保全するため、紙の保全記録による資産状態の管理が困難になる場合がある。
図5に示したように資産状態の不整合を自動的に検出することにより、フィールド機器の数が多い場合であっても資産状態の管理を容易にすることができる。
【0087】
次に、
図6を用いて、状態遷移予測情報を説明する。
図6は、実施形態の機器資産管理装置1における状態遷移予測情報の一例を示す図である。
【0088】
図6において、状態遷移予測情報は、「モデル」、「事象」、「状態(From)」、「状態(To)」、「状態遷移予測日数」及び「確率」のデータ項目を有する。
【0089】
状態遷移予測情報は、それぞれのモデルのフィールド機器について予測される資産状態の状態遷移を、遷移が予測される日数と確率において予測するための基礎情報である。資産状態予測部134は、状態遷移予測情報に基づき、それぞれのフィールド機器の資産状態の遷移を予測する。
【0090】
「モデル」のデータ項目は、フィールド機器のモデル名であり、それぞれの機器の型式に応じて付与されている。モデルの情報は、ネットワークを介してフィールド機器から取得することができる。
【0091】
「事象」のデータ項目には、遷移が発生する要因の情報が入力される。「事象」は、例えば、「校正周期」、「校正実施」、「保管期限」あるいは「使用期限」の情報である。例えば、「事象」が「校正周期」の場合、校正周期が経過したことを要因として状態の遷移が発生する。「校正実施」の場合、校正を実施したことを要因として状態の遷移が発生する。
【0092】
「状態(From)」のデータ項目と「状態(To)」のデータ項目には、遷移元の状態と遷移先の状態の情報が入力される。
【0093】
「状態遷移予測日数」は、「事象」のデータ項目の事象によって状態が遷移するまでの予測日数である。予測日数は、例えば、フィールド機器のモデルによって予め定められた日数、または保全記録に基づく実績から算出された日数である。
【0094】
「確率」のデータ項目は、事象における状態遷移が発生する確率である。1つの状態から複数の状態に遷移する状態遷移においては、それぞれの状態遷移の確率が設定される。
【0095】
例えば、1行目は、「モデル」が「Type01」のフィールド機器において、「事象」が「校正周期」である場合の状態遷移予測であり、「状態(From)」が「Working Healthy(正常状態)」の状態から、「状態(To)」が「Calibration Required(校正要求状態)」に遷移する「状態遷移予測日数」が「180」日であることを示している。校正周期は、期間の経過によって必ず発生する(確率計算が不要な)事象であるため、「確率」には数値が入力されていない。すなわち、状態遷移予測情報において、Type01のフィールド機器は、校正周期である180日の経過を要因として、正常状態から校正要求状態に状態が遷移することを表している。
【0096】
また、2行目と3行目は、「モデル」が「Type01」のフィールド機器において、「事象」が「校正実施」である場合の状態遷移予測である。2行目において、「状態(From)」が「Calibration Required(校正要求状態)」の状態から、校正の合格によって、「状態(To)」が「Working Healthy(正常状態)」の状態に遷移する「確率」が「80%」であることを示している。一方、3行目において、「状態(From)」が「Calibration Required(校正要求状態)」の状態から、校正の不合格によって、「状態(To)」が「Disposed(廃棄状態)」の状態に遷移する「確率」が「20%」であることを示している。校正の結果が合格であるか不合格であるかは校正実施の後直ちに判明するので「状態遷移予測日数」は「0」日となる。なお、校正実施においては、校正の結果が合格又は不合格となるため、「校正要求状態」は、必ず「正常状態」(80%)あるいは「廃棄状態」(20%)のいずれかになる(80%+20%=100%)が、例えば、1回の校正実施においては校正の合否が判断できない場合、校正要求状態の状態を維持する確率を設定するようにしてもよい。
【0097】
4行目は、「モデル」が「Type02」のフィールド機器において、「事象」が「保管期限」である場合の状態遷移予測であり、「状態(From)」が「Depot(入庫状態)」の状態から、「状態(To)」が「Disposed(廃棄状態)」に遷移する「状態遷移予測日数」が「720」日であることを示している。「確率」は、
図6においては「100%」としている。しかし、保管期限は校正周期とは異なり、期間を経過しても目視等によって使用可能と判断される場合がある。その場合、例えば、「状態(To)」が「廃棄状態」となる「確率」を「60%」として、別の行において「校正要求状態」となる「確率」を「40%」等とすることができる。
【0098】
5行目は、「モデル」が「Type02」のフィールド機器において、「事象」が「使用期限」である場合の状態遷移予測であり、「状態(From)」が「Working Healthy(正常状態)」の状態から、「状態(To)」が「Disposed(廃棄状態)」に遷移する「状態遷移予測日数」が「180」日であることを示している。使用期限においても保管期限と同様に「校正要求状態」となる確率を設定してもよい。
【0099】
状態遷移予測情報に基づいて資産状態の遷移を予測することができるので、例えば現在プラントで稼働しているフィールド機器が将来的にどれくらい廃棄状態となり交換が必要になるかの予測を立てることが可能となる。これにより、フィールド機器の保全において予備品購入の予算立案が可能になり、フィールド機器の資産管理が容易になる。
【0100】
次に、
図7を用いて、機器資産管理装置1のハードウェア構成を説明する。
図7は、実施形態における機器資産管理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0101】
図7において、機器資産管理装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、表示装置105、入力装置106、通信I/F(Interface)107、通信I/F108及びこれらを接続するバス109を有する。
【0102】
機器資産管理装置1は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータ、FAコンピュータ、PLC等の装置、ノート型又はタブレット型のコンピュータ、PDA、又はスマートフォン等である。機器資産管理装置1のハードウェアは、単体装置として構成されてもよく、また、複数の装置の組合わせで構成されるシステムであってもよい。また、機器資産管理装置1は、他の装置とハードウェアを共用するものであってもよい。
【0103】
CPU101は、RAM102、ROM103又はHDD104に記憶されたプログラムを実行することにより、機器資産管理装置1の制御を行なう。CPU101は、機器資産管理装置1の動作を実現するための機器資産管理プログラムを実行する。機器資産管理プログラムは、例えば、機器資産管理プログラムを記録した記録媒体、又はネットワークを介した機器資産管理プログラムを提供するサーバ等から取得されて、HDD104にインストールされ、CPU101から読出し可能にRAM102に記憶される。
【0104】
表示装置105は、表示機能を有する例えば液晶ディスプレイである。表示装置105は、ヘッドマウント型ディスプレイ、メガネ型ディスプレイ、腕時計型ディスプレイ等の種々の形態によって実現されてもよい。入力装置106は、入力機能を有する例えばキーボード又はマウスである。入力装置106は、音声情報を入力するマイク、画像情報を入力するカメラ又はスキャナ等であってもよい。なお、表示装置105と入力装置106は、タッチパネル等、表示機能と入力機能を有する装置によって実現されてもよい。
【0105】
通信I/F107は、有線通信又は無線通信を介して、後述する製造実行システム5、運転制御装置4、保全機器3等の他の装置との通信を制御する。通信I/F107は、接続された他の装置と、データ送受信、音声通話又はメール送受信等の通信制御を行なう。通信I/F107は、例えば、無線LAN通信、有線LAN通信、赤外線通信、近距離無線通信等の汎用通信規格に対応した通信制御を行なう。
【0106】
通信I/F108は、有線通信又は無線通信を介して、運転制御装置4、保全機器3、図示しないフィールド機器等の他の装置との通信を制御する。通信I/F108は、例えば、ISA100、HART(登録商標)、BRAIN(登録商標)、FOUNDATION Fieldbus、PROFIBUS等のフィールド通信規格に対応した通信制御を行なう。
【0107】
次に、
図8を用いて、機器資産管理装置1を含む機器資産管理システムを説明する。
図8は、実施形態の機器資産管理装置1を含む機器資産管理システムの一例を示すブロック図である。
【0108】
図1において説明した機器資産管理装置1の各機能の構成は、各機能の内容を説明するものであり、各機能が実行されるハードウェアとしての装置を限定するものではない。例えば、機器資産管理装置1は、一の装置で実行されても複数の装置を含むシステムで実行されてもよい。また、機器資産管理装置1の各機能は複数の装置において分散されて実行されてもよい。複数の装置の一部は、例えばクラウドコンピューティングで実現されるクラウドサービスで実行されてもよい。
図8で説明する機器資産管理装置1を含む機器資産管理システム100は、
図1で説明した機器資産管理装置1が情報取得する保全記録記憶装置52等の機能をプラントシステムにおいて配置した場合の実施形態である。機器資産管理装置1の機能は機器資産管理システム100のいずれの装置に分散させてもよい。すなわち、機器資産管理システム100は、機器資産管理装置1の一実施形態である。
【0109】
図8において、機器資産管理システム100は、機器資産管理装置1、フィールド機器2、保全機器3、運転制御装置4、製造実行システム5、基幹業務システム6を有する。
【0110】
機器資産管理装置1は、稼働資産管理部11、在庫資産管理部12及び機器資産管理部13の機能を有し、製造実行システム5及び基幹業務システム6と通信可能に接続されている。
【0111】
フィールド機器2は、例えば、ISA(International Society of Automation:国際計測制御学会)の無線通信規格であるISA100、HART(Highway Addressable Remote Transducer)(登録商標)、BRAIN(登録商標)、FOUNDATION Fieldbus、PROFIBUS等の工業計器専用の通信規格に対応した通信機能を有して。運転制御装置4と通信する。フィールド機器2は、センサ等によって取得したプロセスデータを運転制御装置4に対して提供する。
図8においてフィールド機器2は、これらの通信規格で通信する1又は複数のフィールド機器を省略して表している。
【0112】
保全機器3は、フィールド機器2の保全作業を実施する機器である。保全機器3は、例えば、フィールド機器2の定期点検、フィールド機器に設定されている設定情報(パラメータ)の変更、ゼロ点調整、ループテスト等の保全項目を実施するハンドヘルドターミナルであり。保全機器3は、保全結果を自動的に記録する機器であってもよい。保全作業者が保全機器3を使用してフィールド機器2の保全作業を行なうことにより、フィールド機器のパラメータが変更される場合がある。例えば、ゼロ点調整においては、フィールド機器のゼロ点が変更される場合がある。また、プロセスの運転状態を変更するためにフィールド機器2のパラメータを変更する場合がある。保全作業者は、実施した保全作業を報告書等の保全記録に記録し、保全作業者を管理する保全管理者に報告する。保全管理者は、保全記録を保全記録記憶装置(CMMS)52に記録させる。また、保全機器3は、保全結果を自動的に記録して保全記録を生成する機器である場合、保全記録をCMMS52に対して提供し、記憶するようにしてもよい。
【0113】
運転制御装置4は、フィールド機器2から取得したプロセスデータに基づき、図示しないポンプ、バルブ、ヒータ等を制御して、プラントにおけるプロセスを制御する。運転制御装置4は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置である。運転制御装置4は、フィールド機器2から取得したプロセスデータ、フィールド機器2の通信状態、保全作業においてフィールド機器2に対して設定されたパラメータ等の情報を製造実行システム5に提供する。
【0114】
製造実行システム5は、例えば、基幹業務システム6と運転制御装置4との間に位置するMES(Manufacturing Execution System)であり、運転制御装置4が取得したフィールド機器の情報を監視し又は管理する。製造実行システム5は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータである。製造実行システムには、PIMS(Plant Information Management System:プラント情報管理システム)51、又はCMMS52等の機能を有していてもよい。製造実行システム5は、運転制御装置4から取得した、パラメータ等の情報を基幹業務システム6に対して提供する。
【0115】
PIMS51は、プラントの情報を収集して記録するプラント情報管理システムとして機能する。
図8においてPIMS51は、運転制御装置4を介して(又は運転制御装置4を介さず直接に)、フィールド機器2の情報を収集して記録する。PIMS51は、フィールド機器2の情報を時系列で収集してヒストリーデータ(履歴データ、ヒストリアン)として記録する。
【0116】
CMMS52は、プラントの保全記録を記憶し保全計画を管理する。CMMS52は、例えば、保全機器3で実施されて記録されたフィールド機器に対する保全操作の操作履歴を、複数の保全機器3から取得して保全記録として記憶する。また、CMMS52は、保全作業者によって実施された保全作業を手動で入力可能として保全情報として記録してもよい。CMMS52は、フィールド機器2の校正期限や使用期限等、保全作業で使用される情報を記憶してもよい。
【0117】
基幹業務システム6は、例えば、会計処理、生産管理、販売管理等の経営資源を管理するためのプロセス製造業向けERP(Enterprise Resource Planning:経営資源統合)システムである。基幹業務システム6は、購買業務支援装置61の機能を有している。基幹業務システム6は、倉庫業務支援装置62の機能を有している。また、基幹業務システム6は、保全業務支援装置63の機能を有している。購買業務支援装置61、倉庫業務支援装置62及び保全業務支援装置63は、それぞれの機能を提供するプログラムによって実現されてもよい。基幹業務システム6は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータである。
【0118】
機器資産管理システム100を
図8で示した構成で実現することにより、例えば、既存のプラント制御システムに機器資産管理装置1を組み込むことによって、プラントの操業を停止させることなく、
図1で説明した機器資産管理装置1の機能を容易に構築することが可能となる。
【0119】
以上説明した様に、本実施形態の機器資産管理装置は、フィールド機器の資産状態を稼働状態で表す稼働資産状態を記憶する稼働資産状態記憶部と、前記資産状態を在庫状態で表す在庫資産状態を記憶する在庫資産状態記憶部と、少なくとも前記フィールド機器に対して実施された保全作業の情報又は前記フィールド機器の入出庫の情報のいずれか一の情報に基づき、少なくとも前記稼働資産状態又は前記在庫資産状態のいずれか一の状態を遷移させる資産状態遷移部と、前記稼働資産状態と前記在庫資産状態を表示する資産状態表示部とを備えることにより、フィールド機器の資産管理を容易にすることができる。
【0120】
なお、上述した機器資産管理装置1は、上述した機能を有する装置であればよく、例えば、複数の装置の組合わせで構成されてそれぞれの装置を通信可能に接続したシステムで実現されるものであってもよい。また、機器資産管理装置1は、
図8で説明した、保全機器3、運転制御装置4、製造実行システム5、又は基幹業務システム6等の機能の一部として実現されるものであってもよい。
【0121】
また、本実施形態の機器資産管理方法は、フィールド機器の資産状態を稼働状態で表す稼働資産状態を記憶する稼働資産状態記憶ステップと、前記資産状態を在庫状態で表す在庫資産状態を記憶する在庫資産状態記憶ステップと、少なくとも前記フィールド機器に対して実施された保全作業の情報又は前記フィールド機器の入出庫の情報のいずれか一の情報に基づき、少なくとも前記稼働資産状態又は前記在庫資産状態のいずれか一の状態を遷移させる資産状態遷移ステップと、前記稼働資産状態と前記在庫資産状態を表示する資産状態表示ステップとを含むことにより、フィールド機器の資産管理を容易にすることができる。
【0122】
なお、本実施形態の機器資産管理方法における各ステップの実行順序は上記ステップの記載順序に限定されるものではなく、任意の順序で実行されるものであってもよい。
【0123】
また、本実施形態で説明した装置を構成する機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0124】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0125】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。