【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐光性に優れつつ、柔軟性又は耐溶剤性のいずれかにも優れた塗膜を与える水性ポリウレタン樹脂分散体及び合成皮革用コーティング剤を提供することができる。
【0008】
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、少なくとも、ポリオールと、酸性基含有ポリオールと、ポリイソシアネートと、鎖延長剤とを構成成分とするポリウレタン樹脂が、水系媒体中に分散されている水性ポリウレタン樹脂分散体であって、前記ポリオールが、少なくとも、数平均分子量が1000〜30000の高分子量ジオールと、数平均分子量が300〜30000の高分子量トリオールとを含有し、前記鎖延長剤が、イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に3つ以上有する化合物を含有している、水性ポリウレタン樹脂分散体である。
【0009】
(ポリオール)
本発明において、前記ポリオールは、少なくとも、数平均分子量が1000〜30000の高分子量ジオールと、数平均分子量が300〜30000の高分子量トリオールとを含有している。
【0010】
<高分子量ジオール>
前記高分子量ジオールは、数平均分子量が1000〜30000のジオールであれば、特に制限されず、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルポリエステルジオール、ポリエーテルポリカーボネートジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。これらの中でも、耐摩耗性に優れたポリウレタン樹脂が得られる点から、ポリカーボネートジオール及び/又はポリエステルポリカーボネートジオールが好ましい。
前記高分子量ジオールは、数平均分子量が1000〜30000であるが、数平均分子量が1000〜10000であることが好ましく、数平均分子量が1000〜5000であることがより好ましい。
【0011】
ポリカーボネートジオールは、ジオールモノマーがカーボネート結合で連なった高分子量ジオールである。
ポリカーボネートジオールは、ジオールモノマーとホスゲンを用いたホスゲン法や、ジオールモノマーと炭酸エステルを用いたエステル交換法により製造することができる。特にエステル交換法で得られたポリカーボネートジオールは、塩素の混入がなく、着色しにくいため好ましい。
【0012】
ポリカーボネートジオールの原料となるジオールモノマーとしては、直鎖脂肪族ジオール、分岐鎖脂肪族ジオール、脂環構造含有ジオール、芳香環構造含有ジオールが挙げられる。
前記直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
前記分岐鎖脂肪族ジオールとしては、例えば、イソプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
前記脂環構造含有ジオールとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
前記芳香環構造含有ジオールとしては、例えば、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0013】
前記ジオールモノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ジオールモノマーとしては、得られるポリウレタン樹脂がより柔軟性に優れる点から、直鎖脂肪族ジオール及び/又は分岐鎖脂肪族ジオールが好ましい。
前記直鎖脂肪族ジオール及び分岐鎖脂肪族ジオールは、1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。また、直鎖脂肪族ジオールと分岐鎖脂肪族ジオールとを併用することもできる。
【0014】
ポリエステルポリカーボネートジオールとしては、分子内にエステル結合を有する繰り返し単位と、カーボネート結合を有する繰り返し単位を含有するものであれば、特に制限されないが、得られるポリウレタン樹脂の柔軟性を維持しつつ、耐溶剤性を向上させる点から、主鎖に脂環構造及び芳香環構造を有さないポリエステルポリカーボネートジオールが好ましい。
前記主鎖に脂環構造及び芳香環構造を有さないポリエステルポリカーボネートジオールとしては、例えば、直鎖炭化水素型モノマーや分岐鎖炭化水素型モノマーに由来するポリエステルポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0015】
前記直鎖炭化水素型モノマーとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール等の直鎖炭化水素ジオール;α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン;α−ヒドロキシ酢酸エステル、β−ヒドロキシプロピオン酸エステル、γ−ヒドロキシ酪酸エステル、δ−ヒドロキシ吉草酸エステル、ε−ヒドロキシカプロン酸エステル等のω−ヒドロキシカルボン酸エステル;マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル等のα,ω−ジカルボン酸ジエステル;無水コハク酸等の無水α,ω−ジカルボン酸等が挙げられる。
前記分岐鎖炭化水素型モノマーとしては、前記直鎖炭化水素型モノマーにアルキル基等の側鎖を有するものが挙げられる。
【0016】
<高分子量トリオール>
ポリウレタン樹脂において、ポリオール成分はソフトセグメントとなる部分を構成するものであるが、高分子量トリオールを用いることにより、ポリウレタン樹脂となったときに、ソフトセグメントとなる部分で架橋させることができる。
前記高分子量トリオールは、数平均分子量が300〜30000のトリオールであれば、特に制限されず、例えば、グリセリンやトリメチロールプロパン等の分子量300未満のトリオールを構成単位として用いたポリエーテルトリオールや、ポリエステルトリオール、ポリカーボネートトリオール、ポリエーテルポリエステルトリオール、ポリエーテルポリカーボネートトリオール、ポリエステルポリカーボネートトリオール等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性により優れたポリウレタン樹脂が得られる点から、ポリエーテルトリオールが好ましい。
前記高分子量トリオールは、数平均分子量が300〜30000であるが、数平均分子量が500〜20000であることが好ましく、数平均分子量が1000〜20000であることがより好ましい。
【0017】
前記ポリエーテルトリオールとしては、ポリオキシアルキレントリオールが好ましい。中でも、繰り返し単位として、オキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位を有するポリオキシアルキレントリオールが好ましく、ポリオキシプロピレントリオールがより好ましい。
【0018】
<その他のポリオール>
前記ポリオールには、数平均分子量が1000〜30000の高分子量ジオールと、数平均分子量が300〜30000の高分子量トリオール以外に、その他のポリオールを併用することができる。
前記その他のポリオールは、前記高分子量ジオール及び高分子量トリオールの範囲に含まれないポリオールであれば、特に制限されない。前記その他のポリオールは、数平均分子量が500〜5000であることが好ましく、数平均分子量が500〜3000であることがより好ましい。
また、前記その他のポリオールの種類は、特に制限されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリエーテルポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。これらの中でも、柔軟性により優れたポリウレタン樹脂が得られる点から、ポリエステルポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリカーボネートジオール及び/又は主鎖に脂環構造を有するポリカーボネートジオールがさらに好ましく、柔軟性を維持しつつ耐摩耗性に優れるポリウレタン樹脂が得られる点から、主鎖に脂環構造を有するポリエステルポリカーボネートジオール及び/又は数平均分子量が1000未満の主鎖に脂環構造を有するポリカーボネートジオールが特に好ましい。
なお、本発明において、前記その他のポリオールには、酸性基含有ポリオールは含まれない。
【0019】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールにおいて、エステル結合とカーボネート結合のモル比は、1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましく、4:6〜6:4であることが特に好ましい。エステル結合とカーボネート結合のモル比をこのような範囲にすることで、柔軟性と耐摩耗性により優れたポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0020】
前記主鎖に脂環構造を有するポリエステルポリカーボネートジオールとしては、主鎖に脂環構造を有するモノマーのみに由来するポリエステルポリカーボネートジオールや、主鎖に脂環構造を有するモノマーと主鎖に脂環構造を有さないモノマーとに由来するポリエステルポリカーボネートジオールが挙げられる。より柔軟性を維持しつつ耐摩耗性に優れたポリウレタン樹脂を得ることができる点から、主鎖に脂環構造を有するモノマーと主鎖に脂環構造を有さないモノマーとに由来するポリエステルポリカーボネートジオールが好ましい。上記において、「モノマー」とは、ジオールやヒドロキシカルボン酸エステル、ラクトン、ジカルボン酸ジエステル、ジカルボン酸無水物を表し、炭酸エステルは含まない。
前記主鎖に脂環構造を有するモノマーとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の主鎖に脂環構造を有するジオールモノマー;p−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エステル等の主鎖に脂環構造を有するヒドロキシカルボン酸エステル;p−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル等の主鎖に脂環構造を有するジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。
【0021】
前記主鎖に脂環構造を有さないモノマーとしては、直鎖炭化水素型モノマーや分岐鎖炭化水素型モノマー等が挙げられる。これらのモノマーの例としては、先に高分子量ジオールの項にて記載されたものが挙げられる。
【0022】
前記主鎖に脂環構造を有するポリカーボネートジオールとしては、主鎖に脂環構造を有するモノマージオールのみに由来するポリカーボネートジオールや、主鎖に脂環構造を有するモノマージオールと主鎖に脂環構造を有さないモノマージオールとに由来するポリカーボネートジオールが挙げられる。柔軟性を維持しつつ耐摩耗性に優れたポリウレタン樹脂を得ることができる点から、主鎖に脂環構造を有するモノマージオールと主鎖に脂環構造を有さないモノマージオールとに由来するポリカーボネートジオールが好ましい。
また、前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、1000未満であることが好ましく、400〜990であることがより好ましい。
前記主鎖に脂環構造を有するモノマージオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の主鎖に脂環構造を有するジオールモノマーが挙げられる。
前記主鎖に脂環構造を有さないモノマージオールとしては、直鎖炭化水素型モノマージオールや分岐鎖炭化水素型モノマージオール等が挙げられる。これらモノマーの例としては、先に高分子量ジオールの項に記載されたものが挙げられる。
【0023】
前記高分子量ジオールと前記高分子量トリオールとその他のポリオールとの合計の質量に対する前記高分子量ジオールの質量の割合は、45〜99質量%であることが好ましく、51〜85質量%であることがより好ましい。前記高分子量ジオールの割合をこの範囲とすることで、柔軟性と耐摩耗性がより優れたポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0024】
前記高分子量ジオールと前記高分子量トリオールとその他のポリオールとの合計の質量に対する前記高分子量トリオールの質量の割合は、1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。前記高分子量トリオールの割合をこのようにすることで、柔軟性と耐摩耗性がより優れたポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0025】
前記高分子量ジオールと前記高分子量トリオールとその他のポリオールとの合計の質量に対する前記その他のポリオールの質量の割合は、0〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。前記その他のポリオールの割合をこのようにすることで、柔軟性と耐摩耗性がより優れたポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0026】
(酸性基含有ポリオール)
酸性基含有ポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。なお、フェノール性水酸基はポリオールの水酸基とは区別される。特に酸性基含有ポリオールとしては、1分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシ基を有する化合物を含有するものが好ましい。前記酸性基含有ポリオールは、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0027】
前記酸性基含有ポリオールとしては、具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸;N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4〜12のアルカン酸(ジメチロールアルカン酸)が好ましく、ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0028】
前記酸性基含有ポリオールの酸性基は、後述するポリウレタンプレポリマーを製造した段階や、ポリウレタン樹脂を水系媒体中に分散させる前の段階、ポリウレタン樹脂を水系媒体中に分散させると同時、ポリウレタン樹脂を水系媒体中に分散させた後の段階等、適切な段階で、中和剤を用いて中和することができる。
前記中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール(DMAP)等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ塩類、アンモニア等が挙げられる。中でも、好ましくは有機アミン類を用いることができ、より好ましくは3級アミンを用いることができ、最も好ましくはトリエチルアミンを用いることができる。
【0029】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、特に制限されないが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
芳香族ポリイソシアネートとして、具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、具体的には、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0032】
脂環式ポリイソシアネートとしては、具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−ジクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
これらのポリイソシアネートは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリイソシアネートの1分子当たりのイソシアナト基は通常2個であるが、ポリウレタン樹脂がゲル化をしない範囲で、トリフェニルメタントリイソシアネートのようなイソシアナト基を3個以上有するポリイソシアネートも使用することができる。
上記のポリイソシアネートの中でも、紫外線硬化後の硬度が高くなるという観点から、脂環構造を有する脂環式ポリイソシアネート化合物が好ましく、反応の制御が行いやすく、得られるポリウレタン樹脂の物性が優れる点から、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)が特に好ましい。
【0034】
(鎖延長剤)
鎖延長剤として、イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に3つ以上有する化合物を少なくとも1種用いることにより、ポリウレタン樹脂となったときに、ハードセグメントとなる部分で架橋させることができる。
前記鎖延長剤としては、一般に用いられる公知の化合物を用いることができる。その中でも、イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に3つ以上有する化合物と、イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に2つ有する化合物とを併用することが好ましい。イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に3つ以上有する化合物と、イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に2つ有する化合物とを併用することにより、柔軟性を維持しつつ耐溶剤性と耐光性により優れたポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0035】
前記イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に3つ以上有する化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、ビス(2−アミノプロピル)アミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン等のトリアミン化合物;トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、N−(ベンジル)トリエチレンテトラミン、N,N'''−(ジベンジル)トリエチレンテトラミン、N−(ベンジル)−N'''−(2−エチルヘキシル)トリエチレンテトラミン等のテトラミン化合物;テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン等のペンタミン化合物;ペンタエチレンヘキサミン、ペンタプロピレンヘキサミン等のヘキサミン化合物;ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアミン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリウレタンプレポリマーとの反応性の観点から、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ビス(2−アミノプロピル)アミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ペンタプロピレンヘキサミン等の2つのアミノ基と1つ以上のイミノ基を有するポリアミン又はこれらの混合物が好ましい。
【0036】
前記イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に2つ有する化合物としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のジアミン化合物、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ポリウレタンプレポリマーとの反応性の観点から、ヒドラジン、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、柔軟性を維持しつつ耐溶剤性により優れるポリウレタン樹脂が得られる点から、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HDA)がより好ましい。
【0037】
前記イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に3つ以上有する化合物と、前記イソシアナト基との反応性を有する官能基を1分子中に2つ有する化合物との割合は、モル比で、10:90〜40:60であることが好ましく、20:80〜30:70であることがより好ましい。鎖延長剤の割合をこのような範囲とすることで、柔軟性と耐摩耗性により優れたポリウレタン樹脂が得られる。
【0038】
(水系媒体)
本発明においては、ポリウレタン樹脂は水系媒体中に分散されている。前記水系媒体としては、水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体等が挙げられる。
前記水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられる。中でも入手の容易さや塩の影響で粒子が不安定になること等を考慮して、イオン交換水を用いることが好ましい。
前記親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;出光興産社製「エクアミド」に代表されるβ−アルコキシプロピオンアミド等のアミド類;2−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール(DMAP)等の水酸基含有三級アミン等が挙げられる。
前記水系媒体中の前記親水性有機溶媒の量としては、0〜20質量%が好ましい。
【0039】
(水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法)
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、特に制限されず、例えば、以下のような製造方法が挙げられる。
第1の製造方法は、原料を全て混合し、反応させて、水系媒体中に分散させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
第2の製造方法は、ポリオール、酸性基含有ポリオール及び任意のその他のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて、プレポリマーを製造し、前記プレポリマーの酸性基を中和した後、水系媒体中に分散させ、鎖延長剤を反応させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法としては、分子量の制御が行いやすいため、上記の第2の製造方法が好ましい。
【0040】
上記の第2の製造方法は、ポリオールと、酸性基含有ポリオールと、任意のその他のポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてプレポリマーを得る工程(α)と、前記プレポリマー中の酸性基を中和する工程(β)と、中和されたプレポリマーを水系媒体に分散させる工程(γ)と、水系媒体に分散されたプレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程(δ)とを含む。
【0041】
前記工程(α)の反応を行う際には、触媒を用いることもできる。
前記触媒としては、特に制限はされないが、例えば、スズ(錫)系触媒(トリメチル錫ラウレート、ジブチル錫ジラウレート等)、鉛系触媒(オクチル酸鉛等)等の金属と有機又は無機酸の塩及び有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0042】
前記中和されたプレポリマーを水系媒体に分散させる工程(γ)と、前記プレポリマーと鎖延長剤とを反応させる工程(δ)とは、同時に行ってもよい。
【0043】
(合成皮革用コーティング剤)
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、そのまま又は添加剤を添加して、合成皮革の表面に用いる合成皮革用コーティング剤として使用することができる。
合成皮革用コーティング剤には、添加剤として、他の樹脂を添加することができる。他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。他の樹脂は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
前記他の樹脂は、1種以上の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0045】
前記ポリエステル樹脂及び前記アクリル樹脂が水酸基を有する場合には、樹脂中の一部又は全部の水酸基とポリイソシアネート化合物とをウレタン反応させることにより、これらの樹脂を伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性ポリエステル樹脂又はウレタン変性アクリル樹脂として、これらの樹脂を併用してもよい。
【0046】
前記ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコ−ル成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。酸成分としては、通常、ポリエステル樹脂の製造に際して使用される化合物を使用することができ、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等が挙げられる。
【0047】
前記ポリエステル樹脂の水酸基価は、10〜300mgKOH/gが好ましく、50〜250mgKOH/gがより好ましく、80〜180mgKOH/gがさらに好ましい。前記ポリエステル樹脂の酸価は、1〜200mgKOH/gが好ましく、15〜100mgKOH/gがより好ましく、25〜60mgKOH/gがさらに好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500〜500,000が好ましく、1,000〜300,000がより好ましく、1,500〜200,000がさらに好ましい。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算)により測定した値である。
【0048】
前記アクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有重合性不飽和モノマー及びこのモノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとを、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の既知の方法によって共重合させることにより製造することができる。
【0049】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に、水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であれば、特に制限はなく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
前記水酸基含有アクリル樹脂は、カチオン性官能基を有することが好ましい。カチオン性官能基を有する水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、重合性不飽和モノマーの1種として、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基等のカチオン性官能基を有する重合性不飽和モノマーを用いることにより製造することができる。
【0051】
前記水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/gが好ましく、2〜100mgKOH/gがより好ましく、3〜60mgKOH/gがさらに好ましい。
また、前記水酸基含有アクリル樹脂がカルボキシ基等の酸基を有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂の酸価は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、1〜200mgKOH/gが好ましく、2〜150mgKOH/gがより好ましく、5〜100mgKOH/gがさらに好ましい。
【0052】
前記水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、1,000〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、3,000〜50,000がさらに好ましい。
【0053】
前記ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体又は共重合体が挙げられ、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテル、ビスフェノールA又はビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等が挙げられる。
【0054】
前記ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール化合物から誘導された重合体が挙げられ、例えばビスフェノールA・ポリカーボネート等が挙げられる。
【0055】
前記ポリウレタン樹脂としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。
【0056】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等が挙げられる。ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられる。
【0057】
前記アルキド樹脂としては、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の多塩基酸と多価アルコールに、さらに油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られた樹脂が挙げられる。
【0058】
前記ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと通常の重合法に従って重合又は共重合することにより得られるポリオレフィン樹脂を、乳化剤を用いて水分散するか、あるいはオレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと共に乳化重合することにより得られる樹脂が挙げられる。また、場合により、上記のポリオレフィン樹脂が塩素化されたいわゆる塩素化ポリオレフィン変性樹脂を用いてもよい。
【0059】
前記オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン、スチレン類等のα−オレフィン;ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等の共役ジエン又は非共役ジエン等が挙げられ、これらのモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記オレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明のコーティング剤には、硬化剤を含有させることにより、塗料組成物又はコーティング剤を用いて得られる塗膜又は複層塗膜、コーティング膜の耐水性等を向上させることができる。
前記硬化剤としては、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、カルボジイミド等が挙げられる。硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アミノ成分としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0063】
前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物が挙げられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、前述のポリイソシアネート化合物のポリイソシアナト基にブロック化剤を付加することによって得られるものが挙げられる。ブロック化剤としては、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール系、マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム等のラクタム系、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系等のブロック化剤が挙げられる。
【0064】
前記メラミン樹脂としては、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン等のメチロールメラミン;これらのメチロールメラミンのアルキルエーテル化物又は縮合物;メチロールメラミンのアルキルエーテル化物の縮合物等が挙げられる。
【0065】
本発明のコーティング剤には、着色顔料や体質顔料、光輝性顔料を添加することができる。
【0066】
前記着色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、着色顔料として、酸化チタン及び/又はカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0067】
前記体質顔料としては、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、体質顔料として、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましく、硫酸バリウムを使用することがより好ましい。
【0068】
前記光輝性顔料としては、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。
【0069】
本発明のコーティング剤は、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0070】
本発明のコーティング剤の製造方法には特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。一般的には、コーティング剤は、水性ポリウレタン樹脂分散体と上述の各種添加剤を混合し、水系媒体を添加し、塗装方法に応じた粘度に調整することにより製造される。
【0071】
本発明の合成皮革用コーティング剤を、合成皮革の表面にコーティングした後、硬化させて塗膜を形成してコーティングされた合成皮革を得ることができる。前記合成皮革としては、湿式法や乾式法等公知の方法で製造された合成皮革を用いることができる。
合成皮革用コーティング剤のコーティング方法は、特に制限されず、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、バー塗装、シャワー塗装、浸漬塗装等が挙げられる。前記ロール塗装としては、グラビアロール塗装、リバースロール塗装、ナイフオーバーロール塗装等が挙げられる。
合成皮革用コーティング剤の硬化は、常温乾燥や熱風乾燥、加熱乾燥等の一般的な硬化方法を採用することができる。
前記加熱乾燥における加熱方法としては、赤外線やマイクロ波、スチームロール等一般的に用いられる加熱方法を採用することができる。
【0072】
(ポリウレタン樹脂フィルム)
本発明のポリウレタン樹脂フィルムは、水性ポリウレタン樹脂分散体をそのまま又は水性ポリウレタン樹脂分散体に添加剤を添加した後、離型性基材上にコーティングした後、乾燥させて硬化させ、前記離型性基材から剥離することにより得ることができる。
前記添加剤としては、上述したコーティング剤の添加剤と同様のものを用いることができる。また、発泡剤や中空フィラーを添加して、発泡したポリウレタン樹脂フィルムとすることもできる。
ポリウレタン樹脂フィルムの厚さは、特に制限されないが、5〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。
【0073】
(合成皮革表皮層)
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、合成皮革の表皮層として用いることができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体を用いて合成皮革の表皮層を形成する方法としては、例えば、以下の3つの方法が挙げられる。
1つ目の方法は、水性ポリウレタン樹脂分散体を用いて、ポリウレタン樹脂フィルムを製造し、少なくとも接着剤層と繊維基材層とを有する基材と貼り合わせる方法である。
2つ目の方法は、水性ポリウレタン樹脂分散体を用いて、ポリウレタン樹脂フィルムを製造し、少なくとも繊維基材とマイクロポーラス層と接着剤層とを有する基材と貼り合わせる方法である。
3つ目の方法は、少なくとも繊維基材とマイクロポーラス層とを有する基材上に、水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布し、乾燥させて、表皮層を形成する方法である。
【0074】
上述した水性ポリウレタン樹脂分散体を用いて合成皮革の表皮層を形成する方法において、マイクロポーラス層は、どのような方法で設けたものでもよい。
マイクロポーラス層の形成方法としては、例えば、いわゆる湿式法を用いて、繊維基材上にポリウレタン樹脂とジメチルホルムアミド(DMF)等との混合物を塗布等して、DMF等を水に置換することでポリウレタン樹脂を凝集させ、マイクロポーラス層を形成する方法が挙げられる。また、連通気泡及び/又は独立気泡を有する樹脂シートを繊維基材と積層することによりマイクロポーラス層を形成してもよい。