(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による二次電池1の分解斜視図が示される。本形態の二次電池は、電池要素10と、電池要素10を封止する外装体と、電池要素10に電気的に接続されて外装体の外部に延びる正極端子31および負極端子32と、を有している。外装体は、可撓性を有する外装材21、22、例えばラミネートフィルムで構成され、電池要素を包囲した状態で外周部を熱溶着することによって電池要素10を封止している。
【0013】
図2に示すように、電池要素10は、正極11、負極12、セパレータ13および電解液を含んでおり、典型的には、複数の負極12と複数の正極11とを、セパレータ13を間に挟んで交互に対向させて配置した構成を有している。電解液は、これら正極11、負極12およびセパレータ13とともに、外装体内に封止されている。負極12は、セパレータ13から突き出ている延長部(タブともいう)を有している。延長部は、負極12が有する負極集電体12aの
負極活物質に覆われていない端部である。正極11も同様、正極11の正極集電体11aの正極活物質に覆われていない端部である延長部(タブ)がセパレータ13から突き出ている。正極11の延長部と負極12の延長部は、正極11と負極12とを積層したときに互いに干渉しない位置に形成されている。すべての負極12の延長部は一つに集められて、負極端子32に溶接により接続される。正極11も同様に、すべての正極11の延長部が一つに集められて、正極端子31に溶接によって接続される。
【0014】
なお、
図1に示す例では、正極端子31および負極端子32が互いに反対方向に引き出されているが、正極端子31および負極端子32の引き出し方向は任意であってよい。例えば、
図3に示すように、電池要素10の同じ辺から正極端子31および負極端子32が引き出されていてもよいし、図示しないが、電池要素10の隣り合う2辺から正極端子31および負極端子32がそれぞれ引き出されていてもよい。いずれの場合でも、正極11および負極12の活物質に覆われていない延長部(タブ)は、正極端子31および負極端子32が引き出される位置に対応した位置に形成される。
【0015】
以上のように構成された本形態の二次電池1において、特に、電解液が、ゲル成分および沸点が125℃以下の有機溶媒(以下、「低沸点溶媒」ともいう)を含有し、また、セパレータが、アラミド、ポリイミドおよびポリフェニレンスルフィドから選ばれる1種以上の樹脂からなる複数の繊維からなる繊維集合体を含み、かつ、平均空隙径が0.1μm以上であることが特徴である。
【0016】
本形態の二次電池によれば、二次電池が過充電および/または短絡など何らかの不具合により異常発熱が生じると、低沸点溶媒の作用により電解液中に気泡が発生する。この気泡により、電極間でのイオン伝導が遮断される。このことにより、二次電池が熱暴走に至る前に二次電池の機能を安全に停止させることができる。正極活物質は、通常、125℃以下の温度では熱暴走しないので、125℃以下の温度で気泡が発生するように、低沸点溶媒の種類および/または電解液中への含有量を適宜調整することにより、熱暴走をより効果的に抑制することができる。
【0017】
電解液中に気泡が発生するメカニズムは、以下のとおりである。電解液がゲル成分を含んでいることにより、電解液はゲル状となっている。この状態において、二次電池に異常発熱が生じると、電解液に含まれる低沸点溶媒が揮発する。そして、電解液はゲル状となっているので、揮発したガスはゲル状の電解液に保持され、気泡として電極間に留まる。さらには、セパレータの平均空隙径は、0.1μm以上であるので、揮発したガスはセパレータの空隙にも侵入する。その結果、イオン伝導を効率よく遮断することができる。
【0018】
また、アラミド、ポリイミドおよびポリフェニレンスルフィドなどの樹脂は高い耐熱性を有しているため、これらの1種以上からなる繊維集合体をセパレータに用いることで、揮発性の高い電解液成分によって揮発性の低い電解液成分が電極間から排出されるまで、電極間の絶縁性を維持することができる。二次電池内での短絡が起きなければ、電解液の燃焼は生じず、二次電池は安全な状態である。
【0019】
以下、二次電池の主要な構成要素である、セパレータ、負極、正極、電解液および外装体について、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。
【0020】
<セパレータ>
本実施形態におけるセパレータは、熱溶融あるいは熱分解する温度が180℃以上で、セパレータの平均空隙径は0.1μm以上であることが好ましい。融点または分解温度が180℃以上の材料としては、高分子材料では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などがある。PETは、安価に入手することが出来るため好ましい。これらの中でも、アラミド、ポリイミドやPPSは、耐熱性が300℃以上あり、熱収縮もほとんどないため、より安定な電池を好適に得ることができるため特に好ましい。
【0021】
セパレータの構造としては、織布や不織布といった繊維集合体、および微多孔膜など、高い通気度を与える空隙を有してセパレータを構成することができれば、任意の構造を採用することができる。これらの中でも織布や不織布によるセパレータが、平均空隙径が特に高く好ましい。具体的な例としては、アラミド繊維やポリイミド繊維等の繊維集合体が挙げられる。
【0022】
アラミド繊維を構成するアラミドポリマーは、1種または2種以上の2
価の芳香族基が直接アラミド結合により連結されているポリマーである。芳香族基は、2個の芳香環が酸素、硫黄またはアルキレン基で結合されたものであってもよい。また、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、クロル基などのハロゲン基等が含まれていてもよい。さらには、アラミド結合は限定されず、パラ型およびメタ型のいずれでもよい。
【0023】
本発明で好ましく使用できるアラミド繊維としては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、またはコポリパラフェニレン3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維などが挙げられる。
【0024】
セパレータは、電極間で電解液中に発生した気泡をセパレータ内に良好に保持するためには、ある程度以上の厚み、例えば、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。一方、二次電池のエネルギー密度の向上や内部抵抗の低減のためには、セパレータは、例えば、50μm以下と、薄いほうが好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。
【0025】
セパレータの平均空隙径は0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。平均空隙率が0.1μm以上であることにより、電極間で電解液中に発生した気泡をセパレータ内に良好に保持することができる。一方、デンドライトによる短絡を防止し、電極間の絶縁性を高めるためには、平均空隙径は、例えば10μm以下といったように小さい方が好ましく、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、同様の観点から、セパレータの最大空隙径は50μm以下であることが好ましい。
【0026】
セパレータの空隙径は、STM−F−316記載のバブルポイント法およびミーンフロー法により求めることができる。また、平均空隙径は、セパレータの任意の5箇所においてそれぞれ空隙径を測定し、その測定値の平均値とすることができる。
【0027】
<負極>
負極は、金属箔で形成される負極集電体と、負極集電体の両面または片面に塗工された負極活物質とを有する。負極活物質は負極用結着材によって負極集電体を覆うように結着される。負極集電体は、負極端子と接続する延長部を有して形成され、この延長部には負極活物質は塗工されない。
【0028】
本実施形態における負極活物質は、特に制限されるものではなく、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料、リチウムと合金可能な金属、およびリチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物等が挙げられる。
【0029】
炭素材料としては、例えば、炭素、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物等が挙げられる。ここで、結晶性の高い炭素は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる負極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。
【0030】
金属や金属酸化物を含有する負極は、エネルギー密度を向上でき、電池の単位重量あたり、あるいは単位体積あたりの容量を増やすことができる点で好ましい。
【0031】
金属としては、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、またはこれらの2種以上の合金等が挙げられる。また、これらの金属又は合金は2種以上混合して用いてもよい。また、これらの金属又は合金は1種以上の非金属元素を含んでもよい。
【0032】
金属酸化物としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物等が挙げられる。本実施形態では、負極活物質として酸化スズ若しくは酸化シリコンを含むことが好ましく、酸化シリコンを含むことがより好ましい。これは、酸化シリコンは、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こしにくいからである。また、金属酸化物に、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%添加することもできる。こうすることで、金属酸化物の電気伝導性を向上させることができる。また、金属や金属酸化物を、たとえば蒸着などの方法で、炭素等の導電物質を用いて被覆することでも、同様に電気伝導度を向上させることができる。
【0033】
また、負極活物質は、単独の材料を用いずに、複数の材料を混合して用いることもできる。例えば、黒鉛と非晶質炭素のように、同種の材料同士を混合しても良いし、黒鉛とシリコンのように、異種の材料を混合しても構わない。
【0034】
負極用結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等を用いることができる。使用する負極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、負極活物質100質量部に対して、0.5〜25質量部が好ましい。
【0035】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、クロム、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0036】
負極活物質を含む塗工層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、鱗片状、煤状、繊維状の炭素質微粒子等、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、気相法炭素繊維(昭和電工製VGCF(登録商標))等が挙げられる。
【0037】
<正極>
正極は、金属箔で形成される正極集電体と、正極集電体の両面または片面に塗工された正極活物質とを有する。正極活物質は正極用結着剤によって正極集電体を覆うように結着される。正極集電体は、正極端子と接続する延長部を有して形成され、この延長部には正極活物質は塗工されない。
【0038】
本実施形態における正極活物質としては、リチウムを吸蔵放出し得る材料であれば特に限定されず、いくつかの観点から選ぶことができる。高エネルギー密度化の観点からは、高容量の化合物を含むことが好ましい。高容量の化合物としては、リチウム酸ニッケル(LiNiO
2)またはリチウム酸ニッケルのNiの一部を他の金属元素で置換したリチウムニッケル複合酸化物が挙げられ、下式(A)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物が好ましい。
【0039】
Li
yNi
(1−x)M
xO
2 (A)
(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
【0040】
高容量の観点では、Niの含有量が高いこと、即ち式(A)において、xが0.5未満であることが好ましく、さらに0.4以下であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、Li
αNi
βCo
γMn
δO
2(0<α≦1.2好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(0<α≦1.2好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6好ましくはβ≧0.7、γ≦0.2)などが挙げられ、特に、LiNi
βCo
γMn
δO
2(0.75≦β≦0.85、0.05≦γ≦0.15、0.10≦δ≦0.20)が挙げられる。より具体的には、例えば、LiNi
0.8Co
0.05Mn
0.15O
2、LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、LiNi
0.8Co
0.1Al
0.1O
2等を好ましく用いることができる。
【0041】
また、熱安定性の観点では、Niの含有量が0.5を超えないこと、即ち、式(A)において、xが0.5以上であることも好ましい。また特定の遷移金属が半数を超えないことも好ましい。このような化合物としては、Li
αNi
βCo
γMn
δO
2(0<α≦1.2好ましくは1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、0.2≦β≦0.5、0.1≦γ≦0.4、0.1≦δ≦0.4)が挙げられる。より具体的には、LiNi
0.4Co
0.3Mn
0.3O
2(NCM433と略記)、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2(NCM523と略記)、LiNi
0.5Co
0.3Mn
0.2O
2(NCM532と略記)など(但し、これらの化合物においてそれぞれの遷移金属の含有量が10%程度変動したものも含む)を挙げることができる。
【0042】
また、式(A)で表される化合物を2種以上混合して使用してもよく、例えば、NCM532またはNCM523とNCM433とを9:1〜1:9の範囲(典型的な例として、2:1)で混合して使用することも好ましい。さらに、式(A)においてNiの含有量が高い材料(xが0.4以下)と、Niの含有量が0.5を超えない材料(xが0.5以上、例えばNCM433)とを混合することで、高容量で熱安定性の高い電池を構成することもできる。
【0043】
上記以外にも正極活物質として、例えば、LiMnO
2、Li
xMn
2O
4(0<x<2)、Li
2MnO
3、Li
xMn
1.5Ni
0.5O
4(0<x<2)等の層状構造またはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoO
2またはこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの;及びLiFePO
4などのオリビン構造を有するもの等が挙げられる。さらに、これらの金属酸化物をAl、Fe、P、Ti、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La等により一部置換した材料も使用することができる。上記に記載した正極活物質はいずれも、1種を単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0044】
また、ラジカル材料等を正極活物質として用いることも可能である。
【0045】
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものと用いることができる。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、正極活物質100質量部に対して、2〜15質量部が好ましい。
【0046】
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、銀、又はそれらの合金を用いることができる。正極集電体の形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。正極集電体としては、アルミニウム箔を好適に用いることができる。
【0047】
正極活物質の塗工層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
【0048】
<電解液>
本実施形態で用いる電解液は、リチウム塩(支持塩)と、この支持塩を溶解する非水溶媒とを含む非水電解液を用いることができる。さらに本発明においては、電解液はゲル成分を含有し、このゲル成分によって電解液がゲル化されてゲル状とされている。ゲル成分は、電解液に添加されたゲル化剤が架橋することによって与えられ、よって、電解液は、ゲル化剤の架橋体を含有しているということができる。ゲル化剤の架橋体は、ゲル成分と同義である。ゲル化された電解液の組成を分析することにより、電解液に添加されたゲル化剤を特定することができる。また、電解液中のゲル成分の含有量は、添加したゲル化剤の量に実質的に等しいと考えてよい。電解液に含まれるゲル成分およびその含有量は、電池が充放電を経た後でも実質的に変化しない。
【0049】
支持塩としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2等の通常のリチウムイオン電池に使用可能なリチウム塩を用いることができる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
非水溶媒としては、炭酸エステル(鎖状又は環状カーボネート)、カルボン酸エステル(鎖状又は環状カルボン酸エステル)、リン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0051】
炭酸エステル溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;プロピレンカーボネート誘導体が挙げられる。
【0052】
カルボン酸エステル溶媒としては、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(
EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)
等の炭酸エステル(環状または鎖状カーボネート類)が好ましい。
【0054】
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0055】
また、非水電解液に含有できる溶媒としては、その他にも、例えば、エチレンサルファイト(ES)、プロパンサルトン(PS)、ブタンスルトン(BS)、Dioxathiolane−2,2−dioxide(DD)、スルホレン、3−メチルスルホレン、スルホラン(SL)、無水コハク酸(SUCAH)、無水プロピオン酸、無水酢酸、無水マレイン酸、ジアリルカーボネート(DAC)、2,5−ジオキサヘキサンニ酸ジメチル、2,5−ジオキサヘキサンニ酸ジメチル、フラン、2,5−ジメチルフラン、ジフェニルジサルファイド(DPS)、ジメトキシエタン(DME)、ジメトキシメタン(DMM)、ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン、クロロエチレンカーボネート、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、フェニルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)、テトラヒドロピラン(THP)、1,4−ジオキサン(DIOX)、1,3−ジオキソラン(DOL)、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルジフルオロアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、メチルフォルメイト、エチルフォルメイト、エチルブチレート、イソプロピルブチレート、メチルイソブチレート、メチルシアノアセテート、ビニルアセテート、ジフェニルジスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、アジポニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、イソブチロニトリル、ビフェニル、チオフェン、メチルエチルケトン、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、カーボネート電解液、グライム、エーテル、アセトニトリル、プロピオンニトリル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)イオン液体、ホスファゼン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、又は、これらの化合物の一部の水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0056】
非水溶媒は、沸点が125℃以下の有機溶媒(低沸点溶媒)を含む。低沸点溶媒の電解液中への含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。低沸点溶媒としては、例えば、カーボネート、エーテル、エステル化合物およびリン酸エステル化合物から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0057】
電解液を構成する少なくとも1つの溶媒が揮発すれば、ガスを発生することができる。例えば、ジメチルカーボネート(沸点:90℃)、メチルエチルカーボネート(沸点:107℃)等を挙げることができる。また、絶縁層を形成するガスは、不燃性あるいは難燃性ガスであることが好ましいことから、フッ素やリン原子を含むものが好ましい。例えば、メチル2,2,2トリフルオロエチルカーボネート(沸点:74℃)などのフッ素化カーボネート類や2フルオロエチルアセテート(沸点:79℃)などのフッ素化エステル類、テトラフルオロエチルテトラフルオロプロピルエーテル(沸点:92℃)、デカフルオロプロピルエーテル(沸点:106℃)などのフッ素化エーテル、リン酸エステル類などを挙げることができる。
【0058】
電解液にゲル成分を与えるゲル化剤としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素エチレン樹脂などを単独でまたは組み合わせて用いることができる。また、ゲル化剤は、架橋可能な官能基を有するアクリル
酸エステル
重合物またはメタクリル酸エステル重合物を含有することが好ましい。電解液中へのゲル化剤の添加量は、0.5重量%以上であることが好ましい。
【0059】
具体的なゲル化剤としては、例えば、熱重合可能な重合基を一分子あたり2個以上有するモノマー、オリゴマー、又は共重合オリゴマー等が挙げられる。具体的には、アクリル系高分子を形成するエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、プロピレンジアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、トリプロピレンジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の2官能アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の3官能アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の4官能アクリレート、及び、前記メタクリレートモノマー等が挙げられる。これらの他に、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等のモノマー、これらの共重合体オリゴマーやアクリロニトリルとの共重合体オリゴマー等が挙げられる。また、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル等の可塑剤に溶解させ、ゲル化させることのできるポリマーも使用できる。
【0060】
ゲル化剤は、前記モノマー、オリゴマー又はポリマーに限定されるものではなく、ゲル化可能なものであれば、いかなるものでも使用できる。また、ゲル化には一種類のモノマー、オリゴマー又はポリマーに限定されるものではなく、必要に応じて2から数種のゲル化成分を混合して使用できる。さらに、必要に応じて熱重合開始剤としてベンゾイン類、パーオキサイド類等も使用できる。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0061】
また、ゲル化剤としては、下記の一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物を含むことができる。このメタクリル酸エステル重合物が架橋することによって、電解液がゲル化する。
【0063】
一般式(1)において、nは1800<n<3000を満たし、mは350<m<600を満たす。
【0064】
一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物は、メチルメタクリレートと、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートをラジカル共重合して得られる。メチルメタクリレート単位の数を表すnは、1800<n<3000を満たし、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート単位の数を表すmは、350<m<600を満たす。なお、一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物は、ブロック共重合体でもよく、ランダム共重合体でもよい。また、n及びmは平均値を表し、整数でない場合もある。
【0065】
一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物を架橋させてなる架橋体(以下、単に「架橋体」と称する)は、一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物が有するオキセタニル基を、カチオン重合開始剤により開環重合することで得られる。カチオン重合開始剤としては、一般に公知の重合開始剤を用いることができるが、電解液中に含まれるリチウム塩及びリチウム塩のアニオン成分が加水分解した微量の酸性物質を利用することが、電池に与える特性が小さく好ましい。ここで、電解液中のリチウム塩の含有量は電解液中の好ましい支持塩の濃度と同一である。
【0066】
ゲル成分を含む電解液は、例えば、非プロトン性溶媒に支持塩を溶解させる工程と、非プロトン性溶媒にゲル化剤として一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物を混合する工程と、一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物を架橋する工程とを有する方法により、簡便かつ安定的に製造される。
【0067】
電解液に占めるゲル成分の割合は、高いほど気泡の保持効果が高まることから、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。一方、ゲル成分の含有量が多すぎると、電解液の粘性が高くなることから、電極間への注液性やイオン伝導度が低下する。そこで、電解液に占めるゲル成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0068】
任意であってよいが、電解液は、シリカ粒子を含むことができる。シリカ粒子は、粒径が0.01μm以上であることが好ましく、また、電解液中での含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。
【0069】
シリカ粒子は上述のゲル化剤と物理混合される。シリカ粒子の平均粒子径は、電解液中への分散性の向上およびセパレータの空隙への良好な分散のためには、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。シリカの平均粒子径が10μm以下であれば、電解液に均一に分散したまま容易に電池に導入することが可能である。また、シリカの表面水酸基とポリマーの官能基と化学結合することにより、電解液に対するシリカの分散性をさらに向上することができる。このように均一に分散したシリカは、電解液の絶縁性を向上させることが可能となる。すなわち、電池の異常発熱により電解液の非水溶媒成分が揮発し、ゲル成分剤の熱分解温度に到達しても、シリカおよびシリカを核とする電解液残渣が電極間に残留するため、電極間の絶縁性を維持することができる。また、電解液とシリカに化学結合や水素結合が存在する場合は、いわゆる無機有機のハイブリッドポリマーを形成することから、ポリマー自体の耐熱性が向上し、電極間の絶縁状態を高い温度まで維持することができる。シリカとポリマーの化学結合は、シリカ表面の水酸基と、ポリマーのたとえば、カルボキシル基やエポキシ基、あるいはオキセタン基により形成することが可能である。
【0070】
特に本形態では、電解液がゲル成分および揮発成分を含み、電池の異常発熱時に電極間に気泡を発生させ、その発生した気泡を安定的に保持し得るものである。電解液がさらにシリカ粒子を含むことにより、気泡をより安定して電極間に保持し、イオン伝導を遮断する効果を向上させることができる。また、シリカ粒子が、電解液中のゲル成分と化学結合のみならず水素結合している場合、ゲル成分の耐熱性が向上するため、生じた気泡もまた、高温環境下においても気泡の状態を良好に保持することができる。
【0071】
上記の効果を発揮し得るためには、電解液に対するシリカ粒子の含有量は、電解液の0.05から10質量%の範囲であることが好ましい。また、分散性を維持するためには、電解液に対するシリカ粒子の含有量は10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。電解液の耐熱性付与のためには、電解液に対するシリカ粒子の含有量は0.05質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。
【0072】
また、シリカに限らず、融点が300℃以上で、絶縁性が高く、また表面に水酸基を有する無機材料であれば、シリカと同様に用いることが可能である。この種の無機材料としては、例えば、アルミナ、雲母、マイカ、モンモリロナイト、ゼオライト、粘土鉱物などを挙げることができる。
【0073】
<外装体>
外装体としては、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができる。例えば、積層ラミネート型の二次電池の場合、外装体としては、アルミニウムと樹脂のラミネートフィルムを用いることが好ましい。外装体は、単一の部材で構成してもよいし、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。
【0074】
外装体には、異常発生時に開放して内部の電解液を二次電池の外部へ排出することができるように、安全弁を付加することができる。外装体に安全弁を設けることによって、二次電池の異常発熱により電極間で気泡が発生し、発生した気泡により電極間から排除された電解液は、揮発成分とともに、安全弁を通じて二次電池の外部に排出される。
【0075】
安全弁としては、この種の二次電池の安全弁として用いられる公知の安全弁、例えば圧力検知型や温度検知型など任意の安全弁を用いることができる。圧力検知型は、破裂弁に代表される機構であり、電解液の揮発により高くなった内圧により動作するものであれば特に限定されない。温度検知型は、ラミネート外装もしくはその接合封止部が熱により溶融することにより内部の揮発成分が電池外部に解放される機構に代表されるが、これに限定されるわけではない。
【0076】
本発明の電池要素は、以上のリチウムイオン二次電池の電池要素に限られるものではなく、本発明はどのような電池にも適用可能である。但し、放熱の問題は、多くの場合、高容量化した電池において問題になることが多いため、本発明は、高容量化した電池、特にリチウムイオン二次電池に適用することが好ましい。
【0077】
以下に、本発明の電池の製造方法の一形態について説明する。
【0078】
本発明の電池の製造方法の一形態は、ゲル化剤および沸点が125℃以下の有機溶媒を含有する電解液を用意する工程と、
アラミド、ポリイミドおよびポリフェニレンスルフィドから選ばれる1種以上の樹脂からなる繊維集合体もしくは微多孔構造を含み、かつ、平均空隙径が0.1μm以上であるセパレータ13を用意する工程と、
正極11および負極12を用意する工程と、
前記セパレータ13を間に挟んで前記正極11と前記負極12とを対向配置する工程と、
対向配置された前記セパレータ13、前記正極11および前記負極12を、前記電解液とともに前記外装体に封入する工程と、
前記ゲル化剤をゲル化する工程と、を含む。
【0079】
上記製造方法において、ゲル化剤をゲル化する工程は、セパレータ13、正極11および負極1
2を電解液とともに外装体に封入する工程の後に行うことができる。特に、ゲル化剤が、架橋可能な官能基を有するアクリル
酸エステル
重合物またはメタクリル酸エステル重合物を含む場合は、ゲル化剤をゲル化する工程は、加熱によるアクリル
酸エステル
重合物またはメタクリル酸エステル重合物の架橋によって、電解液をゲル化させる工程を含むことができる。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0081】
<実施例1>
(正極)
層状リチウムニッケル複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)と、炭素導電剤と、結着材としてポリフッ化ビニリデンとを重量比92:4:4でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを作製し、アルミニウムによる集電箔に塗布、乾燥して正極活物質層を形成した。同様にしてアルミニウムによる集電箔の裏面にも活物質層を形成したあと、圧延して正極電極板を得た。
【0082】
(負極)
天然黒鉛と、増粘剤のカルボキシメチルメチルセルロースナトリウムと、結着材のスチレンブタジエンゴムとを、重量比98:1:1で水溶液中に混合してスラリーを作製し、銅による集電箔に塗布、乾燥して負極活物質層を形成した。同様にして、銅による集電箔の裏面にも活物質層を形成したあと、圧延して負極電極板を得た。
【0083】
(セパレータ)
厚さ20μmのアラミド不織布をセパレータとして用いた。このアラミド不織布の平均空隙径は、1μmである。用いたアラミドの熱分解温度は400℃以上を超え、セパレータの200℃での収縮率は1%未満であった。
【0084】
(電解液)
電解液の非水溶媒には、EC(エチレンカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)を、体積比30:50:20で混合した非水溶媒を用いた。ECの沸点は238℃、DECの沸点は、127℃、EMCの沸点は、108℃である。ゲル化剤として、一般式(1)で示されるメタクリル酸エステル重合物を1質量%加えた。支持塩として、1Mの濃度になるようにLiPF
6を溶解した。この段階では、電解液はゲル化されておらず液状である。
【0085】
(電池の作製)
正極電極板を、電流取り出し部を除いた寸法として90mm×100mmに切断し、負極電極板を、電流取り出し部を除いた寸法として94mm×104mmに切断して、セパレータを介して積層した。電池の容量は10Ahとした。
【0086】
電極とセパレータを積層した電極積層体は電極タブを接続して、アルミニウムフィルムと樹脂フィルムのラミネートフィルムによる外装体に収納した。外装体への電極積層体の収納は、電極積層体の外周でラミネートフィルムを熱融着することによって行った。ラミネートフィルムの熱融着は、電解液を注液するための開口部となる部分を残して電極積層体の全周にわたって行った。また、電極タブの反対側では封止幅を2mmまで狭くした箇所を設け、これをガス放出機構とした。
【0087】
次いで、電極積層体が収納された外装体内へ、開口部を通じて電解液を注液した。電解液を注液した後、減圧雰囲気下で外装体を封止した。その後、外装体を50℃の恒温槽内で8時間加熱して電解液をゲル化し、電池を作製した。
【0088】
(含浸性評価)
作製した電池の電解液含浸性を評価する目的で、超音波透過度を測定した。超音波透過度の測定は、空中超音波システム(NAUT:ジャパンプローブ社)を用い、次のようにして行った。まず、電池を送信プローブと受信プローブの間に水平に静置し、電池の超音波の透過度分布を走査した。電池内の気泡が存在する部分は、超音波が反射や散乱を起こすため透過強度が極端に低下する。次いで、超音波が透過しない部分を気泡の存在する部分としてその投影面積を計測し、電池の投影面積における気泡の存在する部分の投影面積の割合を電解液の含浸性を示す指標とした。この割合が小さいほど、含浸性が高いということができる。
【0089】
(過充電試験)
電池の積層体部分を平板な押さえ板で、電池の厚みに合わせて定寸で固定した。試験前には、押さえ板による積層体に対する圧力は加わっていない。
【0090】
過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.5Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0091】
<実施例2>
電解液にシリカを0.05質量%加えた以外は、実施例1と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.0Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0092】
<実施例3>
セパレータとして多孔質(湿式微多孔)アラミドを用いたこと以外実施例1と同様に電池を作製した。用いたアラミドの平均空隙径は0.1μmで、熱分解温度は実施例1と同様に400℃以上を超え、セパレータの200℃での収縮率は0.2%未満であった。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.5Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0093】
<実施例4>
電解液にシリカを0.05質量%加えた以外は、実施例3と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.0Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0094】
<実施例5>
セパレータとして多孔質(湿式微多孔)ポリイミドを用いたこと以外は実施例1と同様に電池を作製した。用いた多孔質ポリイミドの平均空隙径は0.3μm、熱分解温度は500℃以上を超え、また、セパレータの200℃での収縮率は0.2%未満であった。過充電試験は10Aで行った。電池の電圧約5.5Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0095】
<実施例6>
電解液にシリカを0.05質量%加えた以外は、実施例5と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.0Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0096】
<実施例7>
セパレータとして多孔質(湿式微多孔)ポリフェニレンスルフィド(PPS)を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を作製した。用いたPPSの平均空隙径は0.5μm、融点は280℃以上を超え、また、セパレータの200℃での収縮率は3%未満であった。過充電試験は10Aで行った。電池の電圧約5.5Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0097】
<実施例8>
電解液にシリカを0.05質量%加えた以外は、実施例7と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.0Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0098】
<実施例9>
正極活物質を層状リチウムニッケル複合酸化物(LiNi
0.80Mn
0.15Co
0.05O
2:NMC)としたこと以外は実施例3と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.6Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0099】
<実施例10>
電解液にシリカを0.05質量%加えた以外は、実施例9と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.1Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0100】
<実施例11>
電解液へのゲル化剤の添加量を0.5質量%としたこと以外は実施例1と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.6Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0101】
<実施例12>
電解液へのゲル化剤の添加量を3.0質量%としたこと以外は実施例1と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.3Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0102】
<実施例13>
電解液へのゲル化剤の添加量を5.0質量%としたこと以外は実施例1と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約5.1Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が12V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0103】
<比較例1>
電解液に、ゲル化剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様に電池を作製した。過充電試験では、電池の電圧約6Vで電池の表面温度が95℃に到達し、ガス放出機構が開口した。充電を続けると電池の電圧は上昇を続け、12V以上にまで上昇した。電池表面温度は約140℃に到達したあと低下を始め、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0104】
<比較例2>
電解液に、ゲル化剤を添加しなかった以外は、実施例2と同様に電池を作製した。過充電試験では、電池の電圧約6Vで電池の表面温度が95℃に到達し、ガス放出機構が開口した。充電を続けると電池の電圧は上昇を続け、12V以上にまで上昇した。電池表面温度は約140℃に到達したあと低下を始め、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0105】
<比較例3>
セパレータとしてポリプロピレンの不織布を用いたこと以外は、比較例1と同様に電池を作製した。このポリプロピレンの平均空隙率は1μmであった。過充電試験では、電池の電圧約6Vで電池の表面温度が95℃に到達し、ガス放出機構が開口した。充電を続けると電池の電圧は上昇を続け、12V以上にまで上昇した。電池表面温度は約130℃に到達したあと低下を始め、電池が発煙した。
【0106】
<比較例4>
セパレータとして微多孔ポリプロピレンを用いたこと以外は、実施例2と同様に電池を作製した。このポリプロピレンの平均空隙率は0.01μmであった。過充電試験では、電池の電圧6.5Vから電圧および表面温度は上昇を続け、電池表面温度が約120℃に達したときに、フィルム外装体が音をたてて破裂して液体の飛沫が飛散した。試験後の電池は、フィルム外装体が封止部がガス放出弁機構とは関係ない個所で破壊されていた
【0107】
<比較例5>
セパレータとして微多孔ポリプロピレンを用いたこと以外は、比較例1と同様に電池を作製した。過充電試験では、電池の電圧6.5Vから電圧および表面温度は上昇を続け、電池表面温度が約120℃に達したときに、フィルム外装体が音をたてて破裂して液体の飛沫が飛散した。試験後の電池は、フィルム外装体が封止部がガス放出弁機構とは関係ない個所で破壊されていた。
【0108】
<比較例6>
電解液の非水溶媒として、EC、DECを、体積比で30:70で混合した非水溶媒を用いた以外は、実施例1と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約6.0Vで電池の表面温度が95℃に到達し、充電を続けると電池の電圧は上昇を続け、12V以上にまで上昇したのち、発煙した。
【0109】
<比較例7>
電解液に、ゲル化剤を添加しなかったこと以外は、実施例9と同様に電池を作製した。過充電試験は、10Aで行った。電池の電圧約6.1Vで電池の表面温度が95℃に到達し、ガス放出機構が開口した。充電を続けると電池の電圧は上昇を続け、12V以上にまで上昇した。電池表面温度は約140℃に到達し、その後、低下を始め、電池の破裂や、発煙は無かった。
【0110】
実施例および比較例の結果を表1に示す。過充電試験において、急激に電圧が上昇する電位を抵抗上昇電位として記した。この電位は小さい程安全な電位で、電池の機能を停止したことを示す。電解液の含浸性は、電極の投影面積における気泡の割合で評価し、1%以下を「○」(良好)、1%より多く5%未満を「△」(やや良好)、5%以上を「×」(非良好)とした。
【0111】
表1より、比較例1、7に対し、ゲル化剤を含有する実施例1〜12は何れも抵抗上昇電
位が低い値となった。比較例3,4では、セパレータに耐熱性に劣るPPを用いたが、発煙もしくは破裂が生じたことから、セパレータの溶融による内部短絡が生じたものと推定される。比較例6では、非水溶媒の沸点が高いため、溶媒が気化せず、電気分解によるガスが発生するまで活物質への充電が継続し、発煙が生じたものと推察される。
【0112】
【表1】