特許第6597720号(P6597720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597720
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20191021BHJP
   B62D 35/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B60R19/48 S
   B62D35/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-122800(P2017-122800)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-6217(P2019-6217A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】油目 雅史
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智祥
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−158543(JP,U)
【文献】 実開昭54−174153(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第102013018641(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/48
B62D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパーの空気取入口から取り入れられた空気を前記バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す車両前部構造であって、
前記バンパーの裏面に設けられ、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記流出口に案内する通気路を構成するエアダクトと、
前記バンパーの裏面に設けられた補強部材とを備え、
前記エアダクトの閉断面は、前記バンパーの裏面側に配置された外側部材と、車両内部側に配置された内側部材とから形成され、
前記内側部材は、前記外側部材よりも低剛性の部材で形成され、
前記外側部材は、前記補強部材に連結され
前記バンパーの裏面においてグリル開口部の外周に設けられた外周補強部材を備え、
前記補強部材は、前記外周補強部材に連結されている
車両前部構造。
【請求項2】
バンパーの空気取入口から取り入れられた空気を前記バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す車両前部構造であって、
前記バンパーの裏面に設けられ、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記流出口に案内する通気路を構成するエアダクトと、
前記バンパーの裏面に設けられた補強部材とを備え、
前記エアダクトの閉断面は、前記バンパーの裏面側に配置された外側部材と、車両内部側に配置された内側部材とから形成され、
前記内側部材は、前記外側部材よりも低剛性の部材で形成され、
前記外側部材は、前記補強部材に連結され
前記バンパーの裏面に設けられ、衝突検知センサーが取り付けられた取付ブラケットを備え、
前記エアダクトにおける前記取付ブラケットの側の端部と、前記取付ブラケットにおける前記エアダクトの側の端部とは、互いに上下方向に隣接して配置されている
車両前部構造。
【請求項3】
バンパーの空気取入口から取り入れられた空気を前記バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す車両前部構造であって、
前記バンパーの裏面に設けられ、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記流出口に案内する通気路を構成するエアダクトと、
前記バンパーの裏面に設けられた補強部材とを備え、
前記エアダクトの閉断面は、前記バンパーの裏面側に配置された外側部材と、車両内部側に配置された内側部材とから形成され、
前記内側部材は、前記外側部材よりも低剛性の部材で形成され、
前記外側部材は、前記補強部材に連結され
前記エアダクトの一端面部には、前記空気取入口から取り入れられた空気が流入する流入口が設けられ、前記エアダクトの他端面部には、前記エアダクト内を通過した前記空気が流出する流出口が設けられ、
前記外側部材は、前記流入口が設けられた前記一端面部と、前記流出口が設けられた前記他端面部とを含む
車両前部構造。
【請求項4】
前記通気路は、
前記バンパーの裏面に設けられ且つ前記空気取入口の後側に配置され、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記エアダクトに案内する凹設部を備え、
前記凹設部は、前記補強部材として機能している
請求項1から請求項3のうちの一項に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記内側部材の周辺には、車両に搭載された機能部品が対向配置されている
請求項1から請求項4のうちの一項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前部構造に関し、特に、バンパーの空気取入口から取り入れられた空気(走行風)を、バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両前部構造において、バンパーの空気取入口から取り入れられた空気(走行風)を、バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流すことで、車両の空力性能を向上させる技術が普及しつつある(特許文献1)。この技術では、バンパーの裏面側に、空気取入口から取り入れられた空気を流出口まで案内するためのエアダクトが設けられている。
【0003】
このような車両前部構造では、エアダクトの付近に、ウォッシャータンク等の機能部品が配置される場合があるが、この場合、車両の軽衝突時に、エアダクトが当該機能部品に接触して当該機能部品が損傷する場合がある。
【0004】
他方、近年、車両軽量化のため、バンパーの薄肉化が進んでいるが、バンパーの薄肉化でバンパーの剛性が低下する分、バンパーの剛性を向上させることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−44538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、バンパーの空気取入口から取り入れられた空気(走行風)を、バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させるためのエアダクトを備えた車両前部構造において、車両の軽衝突時にエアダクトとの接触で機能部品が損傷することを抑制できると共に、バンパーの剛性を向上させることができる車両前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、バンパーの空気取入口から取り入れられた空気を前記バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す車両前部構造であって、前記バンパーの裏面に設けられ、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記流出口に案内する通気路を構成するエアダクトと、前記バンパーの裏面に設けられた補強部材とを備え、前記エアダクトの閉断面は、前記バンパーの裏面側に配置された外側部材と、車両内部側に配置された内側部材とから形成され、前記内側部材は、前記外側部材よりも低剛性の部材で形成され、前記外側部材は、前記補強部材に連結され、前記バンパーの裏面においてグリル開口部の外周に設けられた外周補強部材を備え、前記補強部材は、前記外周補強部材に連結された車両前部構造である。
【0008】
この構成によれば、エアダクトの内側部材が外側部材よりも低剛性の部材で形成されているため、車両の軽衝突時に、エアダクト(即ち内側部材)がその周辺の機能部品に接触しても、機能部品が損傷することを抑制することができる。また、外側部材は、バンパーの裏面に設けられた補強部材に連結されているため、バンパーの剛性を向上させることができる。
【0009】
さらに、補強部材は外周補強部材に連結されているため、バンパーの剛性を更に向上させることができる。
【0010】
またこの発明は、バンパーの空気取入口から取り入れられた空気を前記バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す車両前部構造であって、前記バンパーの裏面に設けられ、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記流出口に案内する通気路を構成するエアダクトと、前記バンパーの裏面に設けられた補強部材とを備え、前記エアダクトの閉断面は、前記バンパーの裏面側に配置された外側部材と、車両内部側に配置された内側部材とから形成され、前記内側部材は、前記外側部材よりも低剛性の部材で形成され、前記外側部材は、前記補強部材に連結され、前記バンパーの裏面に設けられ、衝突検知センサーが取り付けられた取付ブラケットを備え、前記エアダクトにおける前記取付ブラケットの側の端部と、前記取付ブラケットにおける前記エアダクトの側の端部とは、互いに上下方向に隣接して配置された車両前部構造である。
【0011】
この構成によれば、車両の軽衝突時に、バンパーのエアダクト付近で受けた衝撃を、バンパーの取付ブラケット付近に確実に伝達することができる。これにより、バンパーのエアダクト付近で受けた衝撃を、取付ブラケットに設けられた衝突検知センサーで確実に検知することができる。
【0012】
またこの発明は、バンパーの空気取入口から取り入れられた空気を前記バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す車両前部構造であって、前記バンパーの裏面に設けられ、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記流出口に案内する通気路を構成するエアダクトと、前記バンパーの裏面に設けられた補強部材とを備え、前記エアダクトの閉断面は、前記バンパーの裏面側に配置された外側部材と、車両内部側に配置された内側部材とから形成され、前記内側部材は、前記外側部材よりも低剛性の部材で形成され、前記外側部材は、前記補強部材に連結され、前記エアダクトの一端面部には、前記空気取入口から取り入れられた空気が流入する流入口が設けられ、前記エアダクトの他端面部には、前記エアダクト内を通過した前記空気が流出する流出口が設けられ、前記外側部材は、前記流入口が設けられた前記一端面部と、前記流出口が設けられた前記他端面部とを含んだ車両前部構造である。
この構成によれば、エアダクトの流入口が設けられた一端面部と、エアダクトの流出口が設けられた他端面部とが外側部材に含まれるため、外側部材の両端側の剛性を向上させることができ、この結果、外側部材の全体の剛性を向上させることができる。
【0013】
この発明の態様として、前記通気路は、前記バンパーの裏面に設けられ且つ前記空気取入口の後側に配置され、前記空気取入口から取り入れられた空気を前記エアダクトに案内する凹設部を備え、前記凹設部は、前記補強部材として機能していてもよい。
この構成によれば、補強部材を新たに設ける必要が無く、補強部材として既存部材である凹設部を利用して、バンパーの剛性を向上させることができる。
【0014】
また、この発明の態様として、前記内側部材の周辺には、前記車両に搭載された機能部品が対向配置されていてもよい。
この構成によれば、既述の通り内側部材は低剛性の部材で形成されているため、内側部材の周辺に機能部材が対向配置されていても、車両の軽衝突時に機能部品が内側部材と接触して破損することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、車両の軽衝突時にエアダクトとの接触で機能部品が損傷することを抑制できると共に、バンパーの剛性を向上させることができる車両前部構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】バンパーの外観を車両前側から見た外観図。
図2】バンパーの外観を車両斜め後側から見た外観図。
図3】バンパーの裏側を示す外観図。
図4】凹設部及びエアダクトを車両前側から見た外観図。
図5】凹設部の裏側を示す外観図。
図6図1のA−A断面図。
図7】(a)はエアダクトを車幅方向内側から見た図、(b)はエアダクトを車両前側から見た図、(c)はエアダクトの後面部を示す図。
図8図1のB−B断面図。
図9】エアダクトの分解斜視図。
図10図1のC−C断面図。
図11】走行風の流れを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1図11を参照して、この実施形態に係る車両前部構造1について説明する。なお、図1図11において、「前側」「後側」「外側」「内側」はそれぞれ「車両前側」「車両後側」「車幅方向外側」「車幅方向内側」を意味する。
【0018】
図1及び図2に示すように、車両前部構造1は、自動車などの車両の前部構造であり、車幅方向に長尺な空気取入口3をフロントバンパー(以後、バンパーと記載する。)5の前面部51に設ける(図1)と共に上下方向に長尺な流出口17bをバンパー5の側面部52の後端に設け(図2)、空気取入口3から取り入れられた空気(即ち走行風)を流出口17bから流出させて前輪9の側面9bに沿って流すことで、車両の空力性能を向上させると共にバンパー5のデザイン自由度を向上させたものである。
【0019】
図1図3及び図4に示すように、車両前部構造1は、バンパー5と、バンパー5に設けられた加飾部11(図1)と、バンパー5の裏側に設けられた通気路部材13とを備えている。
【0020】
図1に示すように、バンパー5は、前面部51と、左右両側の側面部52とを備えている。前面部51の左右両側は、車両後側に緩やかに湾曲して側面部52の前端に繋がっている。左右両側の側面部52はそれぞれ、車両前側に行くほど車幅方向内側に緩やかに湾曲している。
【0021】
図6に示すように、バンパー5の前面部51における左右両側の下部にはそれぞれ、加飾部11が装着される凹溝部5aと、上記の空気取入口3を構成する開口部5bとが設けられている。
【0022】
凹溝部5aは、バンパー5の前面部51に沿って車幅方向(即ち横方向)に長尺に設けられている。開口部5bは、凹溝部5aの底面を貫通する開口であり、凹溝部5aの底面の下部において凹溝部5aの長手方向の全体に亘って(即ち車幅方向に長尺に)設けられている。開口部5bは、凹溝部5aの底面から該底面の裏側に向かって筒状に突出するように設けられている。開口部5bの下面部5b1は、凹溝部5aの下面部5a1が車両後側に延設されることで形成されている。
【0023】
加飾部11は、凹溝部5aの底面のうちの開口部5b以外の部分を被覆するように設けられている。また、加飾部11は、凹溝部5aの底面の中段から前方に突出すると共に凹溝部5aの長手方向の全体に亘って突出した突出部11aを有している。突出部11aの下面部11a1は、車両後側に突出するように延設されており、開口部5bの上面部5b2の下側に潜り込み、開口部5bの上面部5b2の後端に達するように配置されている。
【0024】
図1に示すように、空気取入口3は、バンパー5の前面部51の所定箇所(例えば前面部51の下部における車幅方向外側の箇所)に設けられている。空気取入口3は、車両前側から見て、車幅方向に長尺に形成されている。また、図10に示すように、空気取入口3は、車両平面視で、バンパー5の前面部51に沿って車幅方向外側に行くほど車両後側に延びるように延設されている。
【0025】
より詳細には、図6に示すように、空気取入口3は、加飾部11の突出部11aの下面部11a1と、凹溝部5aの下面部5a1と、開口部5bの下面部5b1と、開口部5bの左右両側の側面部(図示省略)とによって構成されている。空気取入口3は、車両後側に筒状に突出するように形成されている。空気取入口3の上下方向の幅H2は、空気取入口3の後端開口から前端開口に向かって漸次大きくなっている。これにより、空気が取り入れ易くなっている。空気取入口3は、加飾部11の下側に隣接した状態で、加飾部11の長手方向に沿って設けられている。
【0026】
図3及び図4に示すように、通気路部材13は、空気取入口3から取り入れた空気を流出口17bまで案内して流出口17bから流出させる通気路を構成する部材であり、凹設部16(補強部材)と、エアダクト17とを備えている。
【0027】
凹設部16は、空気取入口3の後側に配置され、空気取入口3から取り入れられた空気を車幅方向外側(即ちエアダクト17)に案内するものである。図4図6に示すように、凹設部16は、凹設部16の本体である凹壁部161と、各種センサー(例えばバンパー5への衝突物の衝突を検知する衝突検知センサー)21が取り付けられる取付部162とを備えている。
【0028】
図6に示すように、凹壁部161は、車両前側に凹状に開口している。凹壁部161の前面開口の上下方向の幅H1は、空気取入口3の上下方向の幅(例えば空気取入口3の後端開口の上下方向の幅)H2よりも長くなっている。凹壁部161の前面開口の上側縁部161bは、空気取入口3の後端開口の上側縁部(即ち下面部11a1)と同じ高さに配置されている。凹壁部161の前面開口の下側縁部161aは、空気取入口3の下側に潜り込むように車両前側に延設されている。
【0029】
このように凹壁部161の上下方向の幅H1及び凹壁部161の下側縁部161aが形成されることで、凹壁部161の内部空間の容積を増大でき、この結果、凹壁部161での空気の流量を増加でき、これにより凹壁部161での空気の流れに対する抵抗を低減できる。
【0030】
図6に示すように、取付部162は、凹壁部161の前面開口の上側縁部161bから、バンパー5の裏面に沿って上方に延設されるように、設けられている。図3に示すように、各種センサー21は、例えば正面視略L字形の取付ブラケット22を介して取付部162に取り付けられている。
【0031】
図10に示すように、凹壁部161は、空気取入口3の長手方向に(即ち車幅方向)に延設されている。より詳細には、凹壁部161は、車両平面視で、車幅方向外側に行くほど車両後側に延びて傾斜するように、延設されている。このように凹壁部161が傾斜されることで、空気取入口3から取り入れられた空気を凹壁部161に沿って車幅方向外側に円滑に案内することができる。
【0032】
図4図5及び図10示すように、凹壁部161の長手方向外側(即ち車幅方向外側)の端部は、開放されており、エアダクト17の流入口17aが連通する連通口161cを構成している。連通口161cは、空気取入口3の長手方向外側の端部(即ちバンパー5の凹溝部5aの長手方向外側の端部)の付近に配置されている(図10)。
【0033】
凹設部16には、バンパー5との固定用の孔(図示省略)が複数設けられている。これらの孔を通じて締結部品(例えばネジ)B1がバンパー5に締結されることで、凹設部16は、バンパー5の裏面の所定箇所に固定されている(図3)。このように、締結部品B1によって凹設部16がバンパー5の裏面に固定されることで、凹設部16は、バンパー5の剛性を向上させる補強部材として機能している。
【0034】
なお、この実施形態では、バンパー5の裏側には、凹設部16の周囲に、補強部材(例えばフロントグリル開口部の外周に設けられたグリル外周部品をバンパー5の裏面側から補強する外周補強部材)40が設けられている。凹設部16は、補強部材40との隣接部分において、締結部品B1で、補強部材40と共締めされてバンパー5の裏面に固定されている。このように共締めされることで、バンパー5、凹設部16及び補強部材40の各々の剛性が向上されている。
【0035】
エアダクト17は、凹壁部161で案内された空気を、流出口17bまで案内して流出口17bから前輪9の側面9bに流出させるものであり、空気取入口3から取り入れられた空気を流出口17bに案内する通気路を構成している。図3及び図7に示すように、エアダクト17は、例えば上下方向に延びた扁平な形に形成されると共に、バンパー5の側面部52の裏面に沿って、凹壁部161の連通口161cとバンパー5の側面部52の後端との間に亘るように形成されている。エアダクト17は、流入口17aと流出口17bとを備えている。
【0036】
図10に示すように、流入口17aは、凹壁部161で案内された空気がエアダクト17に流入する開口である。流入口17aは、エアダクト17の前面部173に設けられており、例えば矩形に形成されており、凹壁部161の連通口161cに連通されている。
【0037】
なお、凹壁部161の連通口161cは、空気取入口3の後側(即ちバンパー5の凹溝部5aの後側)に配置されているため、流入口17aは、バンパー5の裏面から、空気取入口3の軸方向(即ち筒軸方向)の長さLの分、車両後側にずれて配置されている。これにより、エアダクト17の流入口17aと凹壁部161の連通口161cとが無理なく連結される。
【0038】
また、図10に示すように、流入口17aの開口面は、車両平面視で、凹溝部5aの長手方向に対して車両前側に傾斜すると共に、車両前方から見て、空気取入口3の内部に張り出すように配置されている。これにより、流入口17aには、空気取入口3から凹溝部5aを経由して流れてくる空気だけでなく、空気取入口3から直接流入口17aに流入する空気も流入可能になっている。
【0039】
流出口17bは、流入口17aから流入してエアダクト17の内部を流れた空気を外部に流出させる開口である。図7に示すように、流出口17bは、エアダクト17の後面部174に設けられており、上下方向に長尺な形に形成されている。流出口17bは、バンパー5の側面部52の後端の内側に隣接して配置されている(図2及び図3)。
【0040】
流出口17bの上下方向の幅H4は、流入口17aの上下方向の幅H3よりも長くなっている。流出口17bの横方向の幅H6は、流入口17aの横方向H5の幅よりも小さくなっている。エアダクト17の上下方向の幅は、流入口17aから流出口17bに向かって漸次大きくなり、エアダクト17の横方向の幅は、流入口17aから流出口17bに向かって漸次小さくなっている。エアダクト17は、流入口17a及び流出口17bを両端開口とする筒状に形成されており、その縦断面(即ち筒軸方向に直交する断面)の形状は、例えば矩形状になっている(図8)。
【0041】
特に、流入口17aの上下方向の幅H3は、エアダクト17の流出口17bの上下方向の幅H4の半分以下の長さに形成されている。これにより、エアダクト17内で、流入口17aから流入した空気(即ち空気取入口3から取り入れた空気)の流れの気圧を適度に減圧することができる。
【0042】
図9に示すように、エアダクト17は、車幅方向の外側(即ちバンパー5の裏面側)を構成する外側部材17Aと、車幅方向の内側(即ち車両内部側)を構成する内側部材17Bとによって分割構成されている。
【0043】
外側部材17Aは、エアダクト17の剛性を確保するために、比較的硬い樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)で形成されている。外側部材17Aは、エアダクト17を構成する外面部(即ち車幅方向外側の外側側面部171、車幅方向内側の内側側面部172、前面部173(一端面部)及び後面部174(他端面部))のうち、外側側面部171、前面部173及び後面部174を一体形成したものである。
【0044】
外側側面部171の縦断面形状は、車幅方向外側に凸の略ハット状に形成されている(図8)。外側側面部171の上縁部及び下縁部にはそれぞれ、内側部材17Bとの連結用の連結フランジ部171rが設けられている。各連結フランジ部171rには、連結用の孔H1が設けられている。前面部173は、外側側面部171の前縁部に設けられている。前面部173の中央には、流入口17aが設けられている。前面部173の周縁には、内側部材17Bとの連結用の連結フランジ部173rと、バンパー5との固定用の固定部173kとが設けられている。連結フランジ部173rには、連結用の孔H1が設けられ、固定部173kは、固定用の孔H2が設けられている。後面部174は、外側側面部171の後縁部に設けられている。後面部174の中央には、流出口17bが設けられている。後面部174の3辺(即ち上下の各辺及び車幅方向内側の辺)は、後面部174の外周側に延設され、その延設部分によって、バンパー5との固定用の固定フランジ部174kが形成されている。固定フランジ部174kには、固定用の孔H2が設けられている。
【0045】
このように、流入口17aが設けられた前面部173と、流出口17bが設けられた後面部174とが外側部材17Aに設けられることで、外側部材17Aの両側の剛性が向上され、これにより、外側部材17A全体の剛性が向上されている。
【0046】
内側部材17Bは、その周辺に対向配置された機能部品(例えばウォッシャータンクなど)WTに接触しても、機能部品WTを破損させないように、外側部材17Aよりも変形容易な部材(即ち外側部材17Aよりも低剛性の部材、例えば弾性部材、具体的にはエラストマ)で形成されている。内側部材17Bは、エアダクト17の内側側面部172を構成するものである。
【0047】
内側部材17Bの縦断面形状は、車幅方向内側に凸の略ハット状に形成されている(図8)。内側部材17Bの上縁部、下縁部及び前縁部にはそれぞれ、外側部材17Aとの連結用の連結フランジ部172rが設けられている。各連結フランジ部172rには、連結用の孔H3が設けられている。
【0048】
外側部材17A及び内側部材17Bは、それらの各連結フランジ部171r,173r,172rが互いに重ね合わされた状態で、それらの各孔H1,H3に締結部品B2が取り付けられることで、互いに連結されている(図7)。
【0049】
また、エアダクト17の固定フランジ部174k及び固定部173kの各々の孔H2を通じて締結部品(例えばネジ)B3がバンパー5の裏面に締結されることで、エアダクト17は、バンパー5の裏面の所定箇所に固定されている(図3)。その際、エアダクト17は、凹設部16と隣接して配置されており、凹設部16との隣接部分において、締結部品B3で、凹設部16と共締めされてバンパー5の裏側の所定箇所に固定されている。このように、エアダクト17が凹設部16と共締めされてバンパー5の裏面に締結されることで、バンパー5、凹設部16及びエアダクト17の各々の剛性が向上されている。
【0050】
エアダクト17は、流出口17bから流出する空気が前輪9の外側のショルダー部9aに当たるように、バンパー5に対する配置が調整されて、バンパー5の裏面に固定されている(図11)。これにより、流出口17bから流出した空気は、空気の流れを乱さずに、前輪9の側面9bに沿って流れる。
【0051】
エアダクト17がバンパー5の裏面に固定された状態では、エアダクト17の前面部173側の端部(取付ブラケット22側の端部)17cと、取付ブラケット22のエアダクト17側の端部と22aは、互いに上下方向に隣接して配置されている(図3)。これにより、バンパー5のエアダクト17側で受けた衝撃をバンパー5の取付ブラケット22側により確実に伝達可能になり、その衝撃を衝突検知センサー21でより確実に検知可能になっている。また、エアダクト17と取付ブラケット22とは凹設部16を介して互いに連結されているが、この連結状態で上記のように上下方向の隣接配置されることで、バンパー5の剛性が更に向上されている。
【0052】
このように構成された車両前部構造1では、図11に示すように、空気(即ち走行風)が流れる。即ち、車両の走行により、空気(即ち走行風)が空気取入口3に取り入れられる。空気取入口3から取り入れられた空気は、凹壁部161に当たって凹壁部161の長手方向に沿った方向に流れを変えて、凹壁部161によって車幅方向外側に案内され、凹壁部161の連通口161cからエアダクト17内に流入する。その際、凹壁部161は、車両平面視で、その車幅方向外側が車両斜め後側に向いているため、空気取入口3から取り入れられた空気は、円滑に、流れる方向を凹壁部161の長手方向に沿った方向に変えることができる。
【0053】
そして、凹壁部161で案内された空気は、流入口17aからエアダクト17内に流入して流出口17bから流出して、前輪9の側面9bに沿って流れる。その際、エアダクト17の流入口17aの上下方向の幅H3が流出口17bの上下方向の幅H4の半分以下であるため、エアダクト17内で空気の風速が或る程度減速される。この結果、空気取入口3から取り入れられた空気は、或る程度減速されて低速風(即ち高圧風)として流出口17bから流出される。
【0054】
以上、この実施形態に係る車両前部構造1によれば、バンパー5の裏面に設けられ、空気取入口3から取り入れられた空気を流出口17bに案内する通気路を構成するエアダクト17と、バンパー5の裏面に設けられた補強部材(例えば凹設部16)とを備え、エアダクト17の閉断面は、バンパー5の裏面側に配置された外側部材17Aと、車両内部側に配置された内側部材17Bとから形成され、内側部材17Bは、外側部材17Aよりも低剛性の部材で形成され、外側部材17Aは、上記の補強部材に連結された車両前部構造である。
【0055】
この構成によれば、エアダクト17の内側部材17Bが外側部材17Aよりも低剛性の部材で形成されているため、車両の軽衝突時に、エアダクト17(即ち内側部材17B)がその周辺の機能部品WTに接触しても、機能部品WTが損傷することを抑制することができる。また、外側部材17Aは、バンパー5の裏面に設けられた補強部材(例えば凹設部16)に連結されているため、バンパー5の剛性を向上させることができる。
【0056】
また、上記の通気路は、バンパー5の裏面に設けられ且つ空気取入口3の後側に配置され、空気取入口3から取り入れられた空気をエアダクト17に案内する凹設部16を備え、凹設部16は、上記の補強部材として機能しているため、上記の補強部材を新たに設ける必要が無く、上記の補強部材として既存部材である凹設部16を利用して、バンパー5の剛性を向上させることができる。
【0057】
また、バンパー5の裏面においてグリル開口部の外周に設けられた外周補強部材40を備え、補強部材(例えば凹設部16)は、外周補強部材40に連結されているため、バンパー5の剛性を更に向上させることができる。
【0058】
また、バンパー5の裏面に設けられ、衝突検知センサー21が取り付けられた取付ブラケット22を備え、エアダクト17における取付ブラケット22側の端部17cと、取付ブラケット22におけるエアダクト17側の端部22aとは、互いに上下方向に隣接して配置されているため、車両の軽衝突時に、バンパー5のエアダクト17付近で受けた衝撃を、バンパー5の取付ブラケット22付近に確実に伝達することができる。これにより、バンパー5のエアダクト17付近で受けた衝撃を、取付ブラケットに設けられた衝突検知センサーで確実に検知することができる。
【0059】
また、内側部材17Bの周辺には、車両に搭載された機能部品(例えばウォッシャータンク)WTが対向配置されているが、既述の通り内側部材17Bは外側部材17Aよりも低剛性の部材で形成されているため、車両の軽衝突時に機能部品WTが内側部材17Bと接触して破損することを抑制できる。
【0060】
また、エアダクト17の一端面部(例えば前面部173)には、空気取入口3から取り入れられた空気が流入する流入口17aが設けられ、エアダクト17の他端面部(例えば後面部174)には、エアダクト17内を通過した空気が流出する流出口17bが設けられ、外側部材17Aは、流入口17aが設けられた一端面部と、流出口17bが設けられた他端面部とを含んでいるため、外側部材17Aの両端側の剛性を向上させることができ、この結果、外側部材17Aの全体の剛性を向上させることができる。
【0061】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は、車両前部構造に関し、特に、バンパーの空気取入口から取り入れられた空気(走行風)を、バンパーの側面部後端付近の流出口から流出させて前輪の側面に沿って流す技術への適用に好適である。
【符号の説明】
【0063】
1…車両前部構造
3…空気取入口
5…バンパー
9…前輪
16…凹設部(補強部材)
17…エアダクト
17b…流出口
17A…外側部材
17B…内側部材
22…取付ブラケット
40…外周補強部材
173…前面部(一端面部)
174…後面部(他端面部)
WT…機能部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11