(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両前後方向に延びる閉断面を内部に有するとともに、パワートレインを支持するパワートレインマウントに備えたマウントブラケットを取付けるマウントブラケット取付け部が設けられたフロントサイドフレームと、
前記フロントサイドフレームの前端に取り付けられたクラッシュカンと、を備えた車両の前部車体構造であって、
前記フロントサイドフレームは、その前端から車両後方へ前記クラッシュカンの断面形状と略同一形状で延びる圧縮変形部を有し、
前記マウントブラケット取付け部と前記圧縮変形部との間に、前記フロントサイドフレームの前記閉断面のせん断変形を防ぐ補強部材を設け、
前記フロントサイドフレームにおいて、前記補強部材と前記マウントブラケット取付け部との間に、前突荷重により前記フロントサイドフレームの車幅方向への屈曲変形を促進する屈曲変形促進部を設けた
車両の前部車体構造。
車両前後方向に延びる閉断面を内部に有するとともに、パワートレインを支持するパワートレインマウントに備えたマウントブラケットを取付けるマウントブラケット取付け部が設けられたフロントサイドフレームと、
前記フロントサイドフレームの前端に取り付けられたクラッシュカンと、を備えた車両の前部車体構造であって、
前記フロントサイドフレームは、その前端から車両後方へ前記クラッシュカンの断面形状と略同一形状で延びる圧縮変形部を有し、
前記マウントブラケット取付け部と前記圧縮変形部との間に、前記フロントサイドフレームの前記閉断面のせん断変形を防ぐ補強部材を設け、
前記フロントサイドフレームは、アウタパネルと、このアウタパネルと協働して前記閉断面を形成するインナパネルとを備え、
前記補強部材には前記フロントサイドフレームに接合する接合フランジ部を備え、
前記インナパネルと前記アウタパネルとの接合部は、これら両パネル間に挟み込んだ前記接合フランジ部と共に一体に接合して形成され、
前記インナパネルは、車幅方向外側に向けて開口した開口を有するハット形状に形成するとともに、前記アウタパネルは前記開口を閉じる板状に形成し、
前記補強部材は、補強部材本体部と、前記アウタパネルの車幅方向外側面部に前記閉断面側から接合するアウタ側接合フランジ部と、前記インナパネルの車幅方向内側面部に前記閉断面側から接合するインナ側接合フランジ部を備え、
前記アウタ側接合フランジ部と前記インナ側接合フランジ部とは、前記補強部材本体部に対して車両前後方向において同一方向に突出するとともに、前記インナ側接合フランジ部は、車両側面視で前記アウタ側接合フランジ部に対して車両前後方向にオフセットして配置された
車両の前部車体構造。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に例示するように、フロントサイドフレームに補強部材としての節部材を設けたものが知られている。
特許文献1のものは、フロントサイドフレーム(1)と、該フロントサイドフレームの車幅方向外側に配置されたロアメンバ(3)と、これら(1)、(3)の間において、フロントサイドフレーム(1)の前端から第1折れ点(P1)まで車両前後方向に延在するガセット(2)と、を備え、オフセット衝突時の衝突荷重をロアメンバ(3)およびガセット(2)を介してフロントサイドフレーム(1)に確実に伝達できるように構成したものである。
【0003】
さらに特許文献1のものは、フロントサイドフレーム(1)の内部に、オフセット衝突時にガセット(2)から伝達される衝突荷重を受け止めて支持する節部材としてのバルクヘッド(13)を備えている。
【0004】
特許文献2のものは、エンジンマウント(30)を介して車室側へ伝達するエンジンの振動を低減するために、フロントサイドフレーム(11)に、エンジンマウント(30)を前後で支持する結合部(18)、(19)が設けられており、これら結合部(18)、(19)の夫々には、節部材としての隔壁(82)、(92)を備えてエンジンマウント(30)の支持強度の向上を図るように構成したものである。
【0005】
ところで、前面衝突時(以下、「前突時」という。)にクラッシュカンを圧縮変形させたり、フロントサイドフレームを所定の折れ起点で折れ変形させることが知られている。
【0006】
さらに発明者らは、該フロントサイドフレームの前側部位を積極的に圧縮変形させることで該前側部位にも荷重吸収機能を担わせることができるため、前突時のフロントサイドフレームによる荷重吸収性能を高めるうえで有効であると見出した。
【0007】
しかしながら、フロントサイドフレームの前側部位を前突時に圧縮変形させるために低強度で構成した場合には、パワートレインからパワートレインマウント(エンジンマウント)を介して車体側に伝達されるギヤノイズ(、エンジンノイズ)がフロントサイドフレームの前側部位に伝達された際に、該前側部位がその車両前後方向の直交断面が崩れるように変形し易くなるため、振動が増幅され、この増幅された振動が車室側へと伝達することで、乗員に不快感を与える等してNVH性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0008】
ここで上述した特許文献1のフロントサイドフレームには、その車両前後方向において前突荷重を受けて折れ変形するように複数の折れ点(P1〜P3)が設けられ、これら折れ点での折れを阻害しないようにバルクヘッド(13)が内部に配置されたものであるが、上述したように、前側部位の外側面には車両前後方向に沿ってガセット(2)を設けて前側部位を高強度に構成している。
【0009】
しかし、この構成からも明らかなとおり、特許文献1には、前突時にフロントサイドフレームの前側部位を圧縮変形させて衝撃荷重吸収機能を前側部位にも積極的に担わせるという着想に基づく変形モードや、前側部位を低強度に形成して前突時に該前側部位の圧縮変形が阻害されない構成とすることについての記載は見受けられず、フロントサイドフレームによる荷重吸収性能を高めるという観点で改善の余地があった。
【0010】
一方、特許文献2には、エンジンマウント(30)の支持部位に隔壁(82)、(92)を備えることは見受けられるが、フロントサイドフレームのエンジンマウント(30)よりも前側部位に隔壁を備える等して該前側部位の強度を高めた構成について何ら見受けられない。このため、上述したように、ギヤノイズがエンジンマウントを介してフロントサイドフレームの低強度の前側部位に伝達されることで増幅され、NVH性能に悪影響を及ぼす懸念について検討の余地があった。
【0011】
要するに特許文献1,2のフロントサイドフレームは共に補強部材としての節部材を設けたものであるが、前突時のフロントサイドフレームによる荷重吸収性能とNVH性能とを両立するものではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印OUTは車幅方向外側(車両左側)を示し、矢印INは車幅方向内側(車両右側)を示し、矢印Uは車両上方を示すものとする。
【0031】
本実施形態の車両の前部車体構造Vは、左右略対称形状であるため、特筆する場合を除いて車両左側の構成に基づいて説明する。
【0032】
図1〜
図4に示すように、車両の前部車体構造Vは、その前端部において車幅方向に延びるように設置されたバンパービーム1と、車室C(
図2、
図3参照)とエンジンルームEとの隔壁をなすダッシュパネル2と、該ダッシュパネル2の下方からキックアップ部3(
図2〜
図4参照)を経由して該ダッシュパネル2の前方へ延びる左右一対のフロントサイドフレーム4(左側のみ図示)と、上記バンパービーム1の左右両側端部とフロントサイドフレーム4との間に配設された左右一対のクラッシュカン5(左側のみ図示)とを備えている。
【0033】
クラッシュカン5は、車両前後方向に延びる金属製筒状体で形成され、車両前後方向の直交断面が、上下左右に突出した略十字形状に形成されている(
図5、
図7参照)。クラッシュカン5は、このように正面視で略十字形状に形成されているため、上下方向および左右方向における断面係数が大きな値に設定されている。これにより、オフセット衝突時に、クラッシュカン5に対して上下方向又は左右方向にオフセットした位置に前突荷重が入力した場合においても、該クラッシュカン5が屈曲変形し難く形成し、蛇腹状に圧縮変形(すなわち軸圧縮)させて前突荷重を効果的に吸収することができる。
【0034】
図1〜
図4に示すように、クラッシュカン5の後端部にはフロントサイドフレーム4の前端部に取り付けられる取付けプレート52が固着されている。クラッシュカン5の前端部は、ブラケット7を介してバンパービーム1の車幅方向両端部が接合されている。
【0035】
フロントサイドフレーム4は、その外壁面部41を構成する平板状の鋼板材で形成されたアウタパネル1A(
図5参照)と、その車幅方向内側に配設され、車幅方向外側へ向けて開口する開口1Bd(
図10参照)を有する断面(正面視)ハット状の鋼板材で形成されたインナパネル1B(
図7参照)とからなる。
【0036】
アウタパネル1Aは、
図1、
図4〜
図6、
図8、
図10の特に
図10に示すように、平板状に形成されたアウタパネル本体部1Aaと、該アウタパネル本体部1Aaの上縁から上方へ突出形成するアウタ上フランジ部1Abと、該開口1Bdの下縁から下方へ突出形成するアウタ下フランジ部1Acとで一体に形成されている。
【0037】
インナパネル1Bは、
図1、
図2、
図7、
図8、
図10の特に
図10に示すように、断面(正面視)コ字状に形成され、かつフロントサイドフレーム4の内壁面部42を構成するインナパネル本体部1Baと、該インナパネル本体部1Baにおける開口1Bdの上縁から上方へ突出形成するインナ上フランジ部1Bbと、該開口1Bdの下縁から下方へ突出形成するインナ下フランジ部1Bcとで一体に形成されている。
【0038】
図10に示すように、アウタパネル1Aは、インナパネル1Bの車幅方向外側へ向けて開口する開口1Bdを塞ぐように配設され、アウタ上フランジ部1Abおよびインナ上フランジ部1Bbと、アウタ下フランジ部1Acおよびインナ下フランジ部1Bcとが夫々車両前後方向に沿って複数箇所に渡ってスポット溶接等により固着することによって接合されている。
これにより
図8、
図10に示すように、フロントサイドフレーム4は、車両前後方向に延びて内部に閉断面1C(空間)を有している。
【0039】
また
図1〜
図4に示すように、フロントサイドフレーム4の前端部にはセットプレート6が固着され、該セットプレート6にクラッシュカン5の上記取付けプレート52がボルト止めされる等によって取り付けられる。
【0040】
図2〜
図8に示すように、フロントサイドフレーム4は、パワートレイン10(PT)をパワートレインマウント18(以下、「PTマウント18」とする。)を介して支持し、該フロントサイドフレーム4の車両前後方向のダッシュパネル2への接合部48(
図1、
図8参照)とセットプレート6の間の略中間位置に、PTマウント18に備えたパワートレインマウントブラケット19(以下、「PTマウントブラケット19」とする。)を取り付けるマウントブラケット取付け部49が設けられている。
【0041】
なお、当例において、パワートレイン10は、横置き式のエンジンがエンジンルームEの右側に配設されるとともに、ギヤ等を備えたトランスミッションがエンジンルームEの左側に配設されたものである。このため、
図1等に示す車両左側のPTマウント18はミッションマウントとして構成するとともに、車両右側の不図示のPTマウントはエンジンマウントとして構成している。
【0042】
図3〜
図5に示すように、マウントブラケット取付け部49には、マウント補強部材20が設けられている。このマウント補強部材20は、車幅方向内側に向けて膨出する補強部材本体部21(
図3、
図5、
図6参照)と、補強部材本体部21の車幅外縁かつ上縁から上側に突出する補強部材上フランジ部22(
図5、
図6参照)と、補強部材本体部21の車幅外縁かつ下縁から下側に突出する補強部材下フランジ部23(
図3、
図5、
図6参照)とで鋼材により形成している。
【0043】
補強部材本体部21は、車幅方向外側において上下方向に延びる内壁面部21b(
図3、
図5、
図6参照)と、該内壁面部21bの上端と補強部材上フランジ部22の下端とを連結する上壁面部21a(
図5、
図7参照)と、該内壁面部21bの下端と補強部材下フランジ部23の上端とを連結する下壁面部21c(
図3、
図5、
図6参照)とで形成されている。
【0044】
なお、
図5に示すように、マウント補強部材20は、主に上壁面部21aおよび補強部材上フランジ部22を構成するアッパ部材24と、主に内壁面部21b、下壁面部21cおよび補強部材下フランジ部23を構成するロア部材25とを接合することで一体に形成している。
【0045】
補強部材上フランジ部22は、フロントサイドフレーム4のアウタ上フランジ部1Abとインナ上フランジ部1Bbとの間に介在し、これらアウタ上フランジ部1Abとインナ上フランジ部1Bbとで挟み込むようにして3枚のフランジ部1Ab,22,1Bbはスポット溶接にて接合されている(
図7参照)。
【0046】
同様に、補強部材下フランジ部23は、アウタ下フランジ部1Acとインナ下フランジ部1Bcとの間に介在し、これら3枚のフランジ1Ac,23,1Bcはスポット溶接にて接合されている(
図3、
図5、
図7参照)。
【0047】
なお、
図3、
図5、
図7中のマウント補強部材20に付した×印は、アウタ下フランジ部1Ac、補強部材下フランジ部23およびインナ下フランジ部1Bcの溶接箇所を示している。一方、図示省略するが、この溶接箇所に対応するように、アウタ上フランジ部1Ab、補強部材上フランジ部22およびインナ上フランジ部1Bbについても溶接されている。
【0048】
さらに図示省略するが、補強部材本体部21の上壁面部21a、内壁面部21bは、フロントサイドフレーム4のマウントブラケット取付け部49における、それぞれ上壁面部43、外壁面部41にそれぞれ閉断面1C側から当接するように配置され(
図5、
図7、
図8参照)、各当接箇所はスポット溶接にて接合されている。
【0049】
図1、
図5に示すように、補強部材本体部21の上壁面部21aおよびマウントブラケット取付け部49における上壁面部21aは、共に前後2箇所の取付け穴26a,26bが設けられている。そして
図3、
図5〜
図7、
図8に示すように、平面視でこれら前後2箇所の取付け穴26a,26bに対応するように、補強部材本体部21の上壁面部21aの下面から下方へ延びるパイプ状のウエルドナット27を備えている。
【0050】
ウエルドナット27は、補強部材本体部21の上壁面部21aの下面に固着されるとともに、
図8に示すように、支持部材28を介して補強部材本体部21の内壁面部42に固着されることにより、補強部材本体部21に支持されている。
【0051】
図1、
図5、
図7に示すように、PTマウント18に備えた上記PTマウントブラケット19は、補強部材本体部21およびマウントブラケット取付け部49の各上壁面部21a,43と共にウエルドナット27側へボルトBで締結することでフロントサイドフレーム4のマウントブラケット取付け部49に取り付けられている。
【0052】
図4、
図5、
図8に示すように、フロントサイドフレーム4の外壁面部41には、閉断面1C側(車幅方向内側)へ窪んだ凹溝部50が設けられている。
【0053】
凹溝部50は、その後縁50rが、前側の取付け穴26aと後側の取付け穴26bとの間に位置するように形成されるとともに(
図8参照)、該凹溝部50の前縁50fが、後記の節部材30(
図3、
図4、
図8参照)より後方、かつマウントブラケット取付け部49の前端よりも前方の位置に形成されている(同図参照)。凹溝部50は、外壁面部41における上部を除く部位に設けられている(
図3、
図4参照)。
【0054】
図1〜
図4、
図7、
図8に示すように、フロントサイドフレーム4の前部には、該フロントサイドフレーム4の前端から後方へクラッシュカン5の断面十字形状と略同じ断面十字形状で車両前後方向に延びる圧縮変形部11を有している。
【0055】
詳しくは、フロントサイドフレーム4の車両前後方向の少なくとも圧縮変形部11には、該圧縮変形部11の内壁面部42の上下方向の中間部から車幅方向内側へ突出する内側隆起部12Bが形成されるとともに(
図1、
図2、
図7、
図8、
図10参照)、該圧縮変形部11の外壁面部41の上下方向の中間部から車幅方向外側へ突出する外側隆起部12A(
図1、
図3、
図4、
図6、
図8参照)が形成されている。内側隆起部12Bは、断面十字形状の圧縮変形部11の右側突片を構成するとともに、外側隆起部12Aは、断面十字形状の圧縮変形部11の左側突片を構成する。
【0056】
図1〜
図4、
図7、
図8に示すように、外側隆起部12Aと内側隆起部12Bとは、共にフロントサイドフレーム4の前端から圧縮変形部11よりも車両後方へ延びており、圧縮変形部11よりも後方延出部分において、車両後方程それぞれの隆起長さが小さくなるように形成されている(
図1、
図7、
図8参照)。
【0057】
そして、外側隆起部12Aは、その後端12Arが凹溝部50の前縁50fに対して前側の位置、より詳しくは後記の節部材30の配設位置まで車両後方へ延びる一方で(
図4、
図8参照)、内側隆起部12Bは、その後端12Brがマウントブラケット取付け部49、すなわちマウント補強部材20の前縁相当位置まで車両後方へ延びている(
図2、
図7、
図8参照)。
すなわち、内側隆起部12Bは、外側隆起部12Aよりも車両前後方向の長さが長くなるように車両後方まで形成されている(
図8参照)。
【0058】
一方、フロントサイドフレーム4のマウントブラケット取付け部49の前端、すなわちマウント補強部材20の前端よりも後方においては、車両前後方向の直交断面が略矩形状に形成されている(
図1、
図8参照)。
【0059】
外側隆起部12Aと内側隆起部12Bとは、上述したように、圧縮変形部11よりも後方において、車両後方程それぞれの隆起長さが小さくなるように形成されており(
図1、
図7、
図8参照)。これに伴ってフロントサイドフレーム4の車両前後方向における、圧縮変形部11とマウントブラケット取付け部49との間部分は、その車両前後方向の直交断面が、車両後方に進むにつれて略十字形状から略矩形状に徐々に変化するように形成されている(
図1〜
図4、
図7、
図8参照)。
【0060】
図8中の特にX1部およびX2部の各拡大部分に示すように、フロントサイドフレーム4の圧縮変形部11は、該圧縮変形部11に相当する部位のアウタパネル1Aおよびインナパネル1Bを、クラッシュカン5と略同じ板厚を有する薄肉部Tnとして形成している。
【0061】
一方、フロントサイドフレーム4の圧縮変形部11よりも後方部位は、該後方部位に相当する部位のアウタパネル1Aおよびインナパネル1Bを、圧縮変形部11(後記の低強度領域R1)よりも厚肉となる厚肉部Tcとして形成している。
【0062】
図1〜
図4、
図6、
図7、
図8に示すように、フロントサイドフレーム4の圧縮変形部11の後端部、すなわち薄肉部Tnと厚肉部Tcとの境界部に相当する表面には、板厚が段差状に変化する板厚変更ラインLがフロントサイドフレーム4の周方向に沿って形成される。
【0063】
薄肉部Tnと厚肉部Tcとを有するフロントサイドフレーム4は、板厚の異なる鋼板をレーザー溶接やプラズマ溶接等で接合してからプレス成形するテーラードウェルドブランク工法や、圧延時にロールの隙間を調整した板厚の厚みを作り分けるテーラードロールドブランク工法によって形成することできる。
【0064】
図1〜
図8に示すように、フロントサイドフレーム4には、その前端から車両後方に向けて前突荷重に対する強度に応じて低強度領域R1、中強度領域R2、高強度領域R3にこの順に区分けしている。
【0065】
図1〜
図4、
図6〜
図8に示すように、低強度領域R1は、フロントサイドフレーム4の車両前後方向において、前突荷重に対して圧縮変形する上記の圧縮変形部11に相当する領域である。そして、低強度領域R1(圧縮変形部11)は、上述したように、クラッシュカン5から車両前後方向にクラッシュカン5の断面形状と略同一形状、すなわち正面視で略十字形状で形成するとともに、パネル表面を薄肉部Tnで形成することによって前突荷重に対して圧縮変形可能に低強度に構成したものである。
【0066】
中強度領域R2は、フロントサイドフレーム4の車両前後方向における、低強度領域R1(圧縮変形部11)の後端(板厚変更ラインLの位置)とマウントブラケット取付け部49の前端との間に相当する領域であり、上述したように、板厚を厚肉とした厚肉部Tcで形成することによって該低強度領域R1よりも高強度に構成するとともに、車両前後方向の直交断面が略十字形状から、後方に進むにつれて略矩形状に変化するように形成したものである。
【0067】
具体的に中強度領域R2は、車両後方程、低強度領域R1の後端から徐々に外側隆起部12Aと内側隆起部12Bの各突出長さが共に小さくなり、先に外壁面部41における外側隆起部12Aがなくなり(つまり外側隆起部12Aの後端12Arに達し)(
図1、
図4、
図8参照)、続いて高強度領域R3に達すると内壁面部42における内側隆起部12Bがなくなる(つまり内側隆起部12Bの後端12Brに達する)ことで(
図1、
図2、
図7、
図8参照)車両前後方向の直交断面が略矩形状となる。
そしてこの中強度領域R2に、後記の節部材30が設けられている。
【0068】
高強度領域R3は、フロントサイドフレーム4の車両前後方向における、少なくとも上記マウントブラケット取付け部49を含む領域であり、詳しくは、
図1〜
図4、
図8に示すように、マウントブラケット取付け部49の前端からダッシュパネル2との接合部48までの領域である。高強度領域R3は、上述したように、車両前後方向の直交断面が略矩形状に形成するとともに、該高強度領域R3における、フロントサイドフレーム4のアウタパネル1Aおよびインナパネル1Bを、その板厚が低強度領域R1よりも厚肉とした厚肉部Tcで形成したものである。さらに
図3、
図5〜
図8に示すように、高強度領域R3は、該高強度領域R3に含まれるマウントブラケット取付け部49にマウント補強部材20を備えたことによって中強度領域R2よりも高強度で構成したものである。
【0069】
図1〜
図8の特に
図3〜
図5、
図8に示すように、フロントサイドフレーム4の車両前後方向における、外壁面部41に形成された凹溝部50の前縁50fよりも前側の近傍位置、すなわち中強度領域R2の後方位置には、フロントサイドフレーム4の閉断面1Cのせん断変形を防ぐ補強部材としての節部材30が設けられている。
【0070】
図9(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、節部材30は、フロントサイドフレーム4の車両前後方向に延びる閉断面1Cを前後に仕切る隔壁として構成される平板状の節部材本体部31と(
図5〜
図7参照)、該節部材本体部31の車幅方向内端から車両後方へ突出するインナ側接合フランジ部32と(同図参照)、該節部材本体部31の車幅方向外端から車両後方へ突出するアウタ側接合フランジ部33と(同図参照)、節部材本体部31の上端から前方へ突出する上側接合フランジ部34(
図5、
図7参照)とで一体に形成されている。
【0071】
同じく
図9(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、インナ側接合フランジ部32には、その後端辺の上部から後方へ延出する上側後方延出部32uと、該インナ側接合フランジ部32の後端辺の下部から後方へ延出する下側後方延出部32dとを備えている。アウタ側接合フランジ部33には、その上端から上方へ延出する上方延出部33uと、該アウタ側接合フランジ部33の下端から下方へ延出する下方延出部33dとを備えている。
【0072】
ここで、インナ側接合フランジ部32とアウタ側接合フランジ部33とは、上述したように、共に節部材本体部31に対して車両後方に延設しているが、
図3、
図9(b)、(c)、(d)に示すように、インナ側接合フランジ部32は、その上側後方延出部32uおよび下側後方延出部32dがアウタ側接合フランジ部33よりも車両後方へ延出するように形成している。すなわち、インナ側接合フランジ部32は、その上側後方延出部32uおよび下側後方延出部32dが車両側面視でアウタ側接合フランジ部33に対して車両後方へオフセットして配設されている。
【0073】
図3、
図5、
図7における節部材30に付した×印は、フロントサイドフレーム4および節部材30のスポット溶接箇所を示している。節部材30の上側接合フランジ部34がフロントサイドフレーム4の上壁面部43にスポット溶接されることにより接合される(
図5、
図7参照)。さらに、節部材30のインナ側接合フランジ部32に備えた上側後方延出部32uがフロントサイドフレーム4の内壁面部42における内側隆起部12Bの上部にスポット溶接されるとともに、節部材30のインナ側接合フランジ部32に備えた下側後方延出部32dがフロントサイドフレーム4の内壁面部42における内側隆起部12Bの下部にスポット溶接されることにより接合されている(
図5〜
図7参照)。
【0074】
さらにまた、
図3、
図6、
図7、
図10に示すように、節部材30のアウタ側接合フランジ部33に備えた上方延出部33uは、フロントサイドフレーム4のアウタ上フランジ部1Abとインナ上フランジ部1Bbとの間に介在し、これらアウタ上フランジ部1Abとインナ上フランジ部1Bbとで節部材30のアウタ側接合フランジ部33に備えた上方延出部33uを挟み込むようにして3枚のフランジ部1Ab,33u,1Bbをスポット溶接することにより接合されている(特に
図10中のSW1参照)。
【0075】
同様に、節部材30のアウタ側接合フランジ部33に備えた下方延出部33dは、アウタ下フランジ部1Acとインナ下フランジ部1Bcとの間に介在し、これら3枚のフランジ部1Ac,33d,1Bcをスポット溶接することにより接合されている(特に
図10中のSW2参照)。
【0076】
ところで、
図2〜
図4に示すように、フロントサイドフレーム4の下側には、サブフレーム100が配設されており、サブフレーム100の前部は、フロントサイドフレーム4の圧縮変形部11の前側部位11f(
図2参照)の下部において、
図2〜
図7に示すように、上下方向に延びる箱状のサブフレーム連結ブラケット101を介して接合されている。
【0077】
図1〜
図4、
図6〜
図8に示すように、圧縮変形部11における、このサブフレーム連結ブラケット101の接合部位(前側部位11f)の近傍かつ後側の位置の外壁面部41および内壁面部42には、圧縮変形促進部15が形成されている。この圧縮変形促進部15は、前突時に圧縮変形部11における、サブフレーム連結ブラケット101との接合部位よりも後方部位の圧縮変形を促進するように上下方向に延びる凹溝によって形成されている。
【0078】
なお、この圧縮変形促進部15は、主に圧縮変形部11の後方部位11rの圧縮変形の起点として機能する凹溝であるが、前突荷重の態様によっては、適宜、圧縮変形部11の折り曲げの起点としても機能する。
【0079】
また
図1〜
図4、
図7、
図8に示すように、クラッシュカン5の前端の近傍かつ後側の位置であって、その外壁面部41および内壁面部42にも圧縮変形促進部51が設けられている。圧縮変形促進部51は、該クラッシュカン5の圧縮変形を促進するように上下方向に延びる凹溝によって形成されている。
【0080】
そして、前突時には、特にその初期において、クラッシュカン5がその圧縮変形促進部51を圧縮起点として車両後方へ圧縮変形するとともに、適宜、前突時に作用する前突荷重に応じてフロントサイドフレーム4の圧縮変形部11(低強度領域R1)についても、車両後方へ圧縮変形して前突荷重のエネルギを吸収する。
【0081】
なお、圧縮変形部11の車両前後方向における、圧縮変形促進部15よりも前側部位11f(
図2参照)は、前突荷重に対して圧縮変形するものの上述したように、その下部にサブフレーム連結ブラケット101が接合されているため、後側部位11r(
図2参照)よりも前突荷重に対する強度が高くなるおそれがある。しかしながら、低強度領域R1のサブフレーム連結ブラケット101の接続部位の後縁50rに圧縮変形促進部15を設けたため、該圧縮変形促進部15が前突時に圧縮起点として作用することで、低強度領域R1は、その後側部位11rが、前側部位11fよりもしっかりと圧縮変形して衝突荷重を吸収する。
【0082】
図3、
図4、
図8に示すように、上記凹溝部50の前縁50fを、前突荷重によりフロントサイドフレーム4の車幅方向内側への屈曲変形を促進するアウタ前側屈曲変形促進部45として形成している。
【0083】
図2、
図8に示すように、フロントサイドフレーム4のマウントブラケット取付け部49よりも車両後側、かつ後記のアウタ後側屈曲変形促進部47(
図3参照)よりも前側の位置には、上下方向に延びる凹溝からなるインナ側屈曲変形促進部46が形成されている。このインナ側屈曲変形促進部46は、前突荷重によりフロントサイドフレーム4の車幅方向外側への屈曲変形を促進するように上下方向に延びる凹溝によって内壁面部42に形成されている。
【0084】
図3〜
図5、
図8に示すように、フロントサイドフレーム4のダッシュパネル2から車両前方へ略水平に延出する部分の基端側の位置、すなわちダッシュパネル2との接合部48に対して前側近傍位置であって、その外壁面部41には、アウタ後側屈曲変形促進部47が形成されている。
【0085】
これら3つの屈曲変形促進部45,46,47のうちアウタ前側屈曲変形促進部45は、上述したとおり、上下方向に延びる上記凹溝部50の前縁50fとして、アウタ後側屈曲変形促進部47は上下方向に延びる凹溝よって、共に前突荷重によりフロントサイドフレーム4の車幅方向内側への屈曲変形を促進するように外壁面部41に形成されている。また、アウタ前側屈曲変形促進部45は中強度領域R2に形成されるとともに、インナ側屈曲変形促進部46およびアウタ後側屈曲変形促進部47は高強度領域R3に形成されている。
【0086】
ここで前突時に、上述したクラッシュカン5およびフロントサイドフレーム4の低強度領域R1(圧縮変形部11)の圧縮変形のみでは前突荷重のエネルギを吸収しきれなかった場合には、フロントサイドフレーム4は、少なくともアウタ前側屈曲変形促進部45、インナ側屈曲変形促進部46およびアウタ後側屈曲変形促進部47の3点にて折れ変形(屈曲変形)する。
【0087】
具体的には
図11に示すように、前突荷重(
図11中の太矢印参照)が作用すると、フロントサイドフレーム4は、アウタ前側屈曲変形促進部45にて車幅方向内側へ突き出すように折れ変形し、マウントブラケット取付け部49の直ぐ後側に位置するインナ側屈曲変形促進部46にて車幅方向外側へ突き出すように折れ変形し、該フロントサイドフレーム4の基部側に位置するアウタ後側屈曲変形促進部47にて車幅方向内側へ突き出すように折れ変形する。
【0088】
なお、前突荷重に対してクラッシュカン5およびフロントサイドフレーム4の圧縮変形部11(低強度領域R1)は、共に車両後方へ直線状に圧縮変形(軸圧縮)するが、前突荷重の態様によっては、例えば、
図11に示すように、フロントサイドフレーム4の圧縮変形部11は、後方へ直線状に軸圧縮することに加えて圧縮変形促進部15において車幅方向外側へ折れ変形する。すなわち、前突荷重の態様によっては、フロントサイドフレーム4は、上述した屈曲変形促進部45,46,47の3点に圧縮変形促進部15を加えた4点にて折れ変形する屈曲変形モードとなり得るが(
図11参照)、その場合においてもフロントサイドフレーム4は、圧縮と屈曲とでエネルギを吸収することができる。
【0089】
本実施の形態の車両の前部車体構造Vは、車両前後方向に延びる閉断面1Cを内部に有するとともに、パワートレイン10を支持するPTマウント18に備えたPTマウントブラケット19を取付けるマウントブラケット取付け部49が設けられたフロントサイドフレーム4と、フロントサイドフレーム4の前端に取り付けられたクラッシュカン5と、を備えた車両の前部車体構造であって、フロントサイドフレーム4は、その前端から車両後方へクラッシュカン5の断面形状と略同一形状で延びる圧縮変形部11を有し、マウントブラケット取付け部49と圧縮変形部11との間に、フロントサイドフレーム4の閉断面1Cのせん断変形を防ぐ補強部材としての節部材30を設けたものである(
図1、
図3、
図5〜
図11参照)。
【0090】
上記構成によれば、パワートレイン10に備えたトランスミッションより生じるギヤノイズが、PTマウントブラケット19を介してフロントサイドフレーム4のマウントブラケット取付け部49とセットプレート6との間に伝達されることに起因して発生する、フロントサイドフレーム4の前後方向の直交断面(上記閉断面1C)の変形を、節部材30により抑制し、すなわち振動の増幅を抑制し、車両後方(車室内)へ伝達される振動を低減でき、NVH性能を高めることができる。また、節部材30は、フロントサイドフレーム4の衝突時に圧縮変形する圧縮変形部11(低強度領域R1)よりも後方に位置するため、該フロントサイドフレーム4の変形を阻害せず、NVH性能と衝突時の荷重吸収性能との両立を図ることができる。
【0091】
この発明の態様として、フロントサイドフレーム4において、節部材30とマウントブラケット取付け部49との間に、前突荷重によりフロントサイドフレーム4の車幅方向内側への屈曲変形を促進する屈曲変形促進部としてのアウタ前側屈曲変形促進部45を設けたものである(
図3、
図4、
図8参照)。
【0092】
上記構成によれば、節部材30とマウントブラケット取付け部49との間に、アウタ前側屈曲変形促進部45を設けることで、これら節部材30とマウントブラケット取付け部49によって前突時にフロントサイドフレーム4がアウタ前側屈曲変形促進部45にて屈曲変形することを阻害されることがなく、NVH性能と荷重吸収性能との両立を図ることができる。
【0093】
この発明の態様として、圧縮変形部11には、該圧縮変形部11の車両後方への圧縮変形を促進する圧縮変形促進部15を設けたものである(
図1〜
図4、
図7、
図8参照)。
【0094】
上記構成によれば、圧縮変形部11に圧縮変形促進部15を設けたため、前突時において圧縮変形部11を確実に圧縮変形させることができ、クラッシュカン5と協働で特に衝突初期における荷重吸収性能を高めることができる。
【0095】
この発明の態様として、クラッシュカン5と圧縮変形部11とは、共に車両前後方向の直交断面が略十字形状である(
図1〜
図5、
図7、
図8参照)。
【0096】
上記構成によれば、クラッシュカン5と圧縮変形部11とは、共に車両前後方向の直交断面が略十字形状であるため、これら5,11の断面係数を上下方向および車幅方向について高めることができ、車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム4およびクラッシュカン5に対して上下又は左右にオフセットした位置から前突荷重が入力された場合であっても、断面略十字形状を形成する、上下および左右に突出した凸部(外側隆起部12Aおよび内側隆起部12B等の凸部)が支えとなってクラッシュカン5および圧縮変形部11が折れ変形し難くして、クラッシュカン5および圧縮変形部11を圧縮変形して衝突荷重を吸収することができる。
【0097】
この発明の態様として、フロントサイドフレーム4は、アウタパネル1Aと、このアウタパネル1Aと協働して閉断面1Cを形成するインナパネル1Bとを備え、節部材30にはフロントサイドフレーム4に接合する接合フランジ部としてのアウタ側接合フランジ部33(上方延出部33uおよび下方延出部33d)を備え、アウタパネル1Aとインナパネル1Bとの接合部(詳しくは、アウタ上フランジ部1Abとインナ上フランジ部1Bbとの接合部、およびアウタ下フランジ部1Acとインナ下フランジ部1Bcとの接合部)は、これら両パネル間1A,1Bに挟み込んだアウタ側接合フランジ部33と共に一体に接合して形成されたものである(
図7、
図10参照)。
【0098】
上記構成によれば、PTマウントブラケット19を介してフロントサイドフレーム4のマウントブラケット取付け部49よりも前側部位にギヤノイズが伝達されることに起因してフロントサイドフレーム4にせん断力(モーメント)が入力された場合であっても、アウタ側接合フランジ部33を各パネル1A,1Bに別々に接合するよりも、フロントサイドフレーム4の断面変形(断面崩れ)を効果的に抑制することができる。
【0099】
また、アウタ側接合フランジ部33(上方延出部33uおよび下方延出部33d)は、アウタパネル1Aとインナパネル1Bとの間に挟み込まれた状態でこれら両パネル1A,1Bに一体に接合するため、各パネル1A,1Bに別々に接合する場合と比較して生産性を確保することができる。
【0100】
この発明の態様として、インナパネル1Bは、車幅方向外側に向けて開口1Bdした開口1Bdを有するハット形状に形成するとともに(
図10参照)、アウタパネル1Aは開口1Bdを閉じる板状に形成し、節部材30は、補強部材本体部としての節部材本体部31と、インナパネル1Bの車幅方向内側面部としての内壁面部42に閉断面1C側から接合するインナ側接合フランジ部32と、アウタパネル1Aの車幅方向外側面部としての外壁面部41に閉断面1C側から接合するアウタ側接合フランジ部33と、を備え(
図5〜
図7、
図9(a)、(b)、(c)、(d)、
図10参照)、インナ側接合フランジ32とアウタ側接合フランジ33とは、節部材本体部31に対して車両前後方向において同一方向(当例では共に車両後方)に突出するとともに、インナ側接合フランジ32は、車両側面視でアウタ側接合フランジ33に対して車両前後方向にオフセットして配置されたものである(
図3、
図4、
図9(b)、(c)、(d)参照)。
【0101】
上記構成によれば、インナ側接合フランジ部32(上側後方延出部32uおよび下側後方延出部32d)をインナパネル1Bに溶接する際には、インナパネル1Bによって閉じられていない状態の開口1B
dから不図示の溶接ガンを閉断面1Cに差し込んで溶接するが、その際に、例えば溶接ガンがアウタ側接合フランジ33に干渉することでインナパネル1Bとインナ側接合フランジ部32との溶接が阻害されることなく確実に溶接することができる。
【0102】
また、アウタ側接合フランジ部33とインナ側接合フランジ部32とは、節部材本体部31に対して車両前後方向において同一方向(当例では共に車両後方)に突出するように形成しているため、車両前後方向において節部材本体部31に対して同じ後側でフロントサイドフレーム4に対して接合するため、溶接ガンの操作ストロークを抑える等してスムーズに溶接することができる。
【0103】
この発明の態様として、マウントブラケット取付け部49には、該マウントブラケット取付け部49を補強するマウント補強部材20が配設されたものである(
図3、
図5〜
図8参照)。
【0104】
上記構成によれば、マウントブラケット取付け部49に配設されたマウント補強部材20によってマウントブラケット取付け部49の剛性を高めることができ、パワートレイン10からPTマウント18を介してフロントサイドフレーム4に伝わるギヤノイズを低減してNVH性能を高めることができる。
【0105】
また、マウントブラケット取付け部49にマウント補強部材20を配設することで、前突時にマウントブラケット取付け部49に相当する部位が屈曲変形することを防ぐこともできる。
【0106】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
上記節部材30は、閉断面1Cのせん断変形を防止可能な部材であれば上述した構成に限らず、例えば、図示省略するが上記閉断面1Cを対角線上に結ぶ部材、或いは閉断面1Cの角部を構成する2辺(2つの面)を結ぶ部材で形成することができる。
【0107】
上述した圧縮変形促進部15、アウタ前側屈曲変形促進部45、インナ側屈曲変形促進部46およびアウタ後側屈曲変形促進部47は、車幅方向内側、外側の少なくとも一方へ凹状(又は凸状)に形成したビード、脆弱部(薄肉部、穴部)など前突荷重によって屈曲変形可能な形状であれば特に限定しない。