(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、車両用エンジンの吸排気装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明は例示である。
図1は、ここに開示する車両用エンジンの吸排気装置が適用されたエンジン1の構成を例示する概略図である。また、
図2は、4つのシリンダ11周辺の構成を概略的に示す平面図である。
【0046】
エンジン1は、FF方式の車両に搭載されるガソリンエンジン(特に、4ストローク式の内燃機関)であり、
図1に示すように、機械駆動式の過給機(所謂スーパーチャージャ)34を備えた構成とされている。
【0047】
また、本実施形態に係るエンジン1は、
図2に示すように、列状に配置された4つのシリンダ(気筒)11を備えており、4つのシリンダ11が車幅方向に沿って並ぶような姿勢で搭載される、いわゆる直列4気筒の横置きエンジンとして構成されている。これにより、本実施形態では、4つのシリンダ11の配列方向(気筒列方向)であるエンジン前後方向が車幅方向と略一致していると共に、エンジン幅方向が車両前後方向と略一致している。
【0048】
以下、特に断らない限り、前側とはエンジン幅方向の一方側(車両前後方向の前側)を指し、後側とはエンジン幅方向の他方側(車両前後方向の後側)を指し、左側とはエンジン前後方向(気筒列方向)の一方側(車幅方向の左側であり且つ、エンジンリヤ側)を指し、右側とはエンジン前後方向(気筒列方向)の他方側(車幅方向の右側であり且つ、エンジンフロント側)を指す。
【0049】
また、以下の記載において、上側とはエンジン1を車両に搭載した状態(以下、「車両搭載状態」ともいう)における車高方向の上側を指し、下側とは車両搭載状態における車高方向の下側を指す。
【0050】
(エンジンの概略構成)
この構成例において、エンジン1は、前方吸気・後方排気式に構成されている。つまり、エンジン1は、
図2に示すように、4つのシリンダ11を有するエンジン本体10と、エンジン本体10の前側に配置され、吸気ポート17、18を介して各シリンダ11に連通する吸気通路30と、エンジン本体10の後側に配置され、排気ポート19、19を介して各シリンダ11に連通する排気通路50と、を備えている。なお、
図1では1つのシリンダ11のみを示す。
【0051】
この構成例では、吸気通路30は、ガスを導く複数の通路と、過給機34やインタークーラ36等の装置と、これらの装置を迂回するエアバイパス通路(以下、単に「バイパス通路」という)40とが組み合わされてユニット化された吸気装置を構成している。この吸気装置は、排気通路50やEGR通路52と共に、本実施形態に係る吸排気装置を構成している。
【0052】
エンジン本体10は、吸気通路30から供給されたガスと燃料との混合気を、各シリンダ11内で、所定の燃焼順に従って燃焼させるように構成されている。具体的に、エンジン本体10は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを有している。
【0053】
シリンダブロック12の内部には、前述の4つのシリンダ11が形成されている。4つのシリンダ11は、クランクシャフト15の中心軸方向(つまり、気筒列方向)に沿って列を成すように並んでいる。4つのシリンダ11は、それぞれ円筒状に形成されており、各シリンダ11の中心軸(以下、「気筒軸」という)は、互いに平行に延び、且つ気筒列方向に対して垂直に延びている。以下、
図2に示す4つのシリンダ11を、気筒列方向に沿って右側から順に、1番気筒11A、2番気筒11B、3番気筒11C、及び4番気筒11Dと称する場合がある。
【0054】
各シリンダ11内には、ピストン14が摺動自在に挿入されている。ピストン14は、コネクティングロッド141を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン14は、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室16を区画する。燃焼室16の天井面は、いわゆるペントルーフ形状である。なお、ここでいう「燃焼室」は、ピストン14が圧縮上死点に至ったときに形成される空間の意味に限定されない。「燃焼室」の語は広義で用いる。
【0055】
シリンダヘッド13には、1つのシリンダ11につき、2つの吸気ポート17、18が形成されている。2つの吸気ポート17、18は、それぞれ燃焼室16に連通しており、シリンダ11毎に、第1ポート17と、該第1ポート17に対して気筒列方向に隣接した第2ポート18とを有している。1番気筒11A〜4番気筒11Dのいずれにおいても、第1ポート17と第2ポート18が同じ順番で並んでいる。具体的には、
図2に示すように、各シリンダ11において、気筒列方向に沿って右側から順に、第2ポート18と第1ポート17が並んでいる。
【0056】
各吸気ポート17、18の上流端は、それぞれ、エンジン本体10一方側の外面(前側の外面であり、以下、「取付面」ともいう)10aに開口しており、吸気通路30を構成するダクトの下流端が接続されている。対して、各吸気ポート17、18の下流端は、それぞれ、燃焼室16の天井面に開口している。
【0057】
以下、1番気筒11Aに通じる第1ポートに対し、符号“17”ではなく“17A”を付すと共に、当該気筒11Aに通じる第2ポートに対し、符号“18”ではなく“18A”を付す場合がある。2番気筒11B〜4番気筒11Dについても同様である。例えば、3番気筒11Cに通じる第2ポートに対し、符号“18”ではなく“18C”を付す場合がある。
【0058】
なお、2つの吸気ポート17、18は、所謂タンブルポート形状とされており、それぞれ、燃焼室16の中に流れ込んだガスが、燃焼室16においてタンブル流を生成するように構成されている。
【0059】
また、2つの吸気ポート17、18は、各シリンダ11につき、通過するガスの流量が、スワールコントロールバルブ(Swarl Control Valve:SCV)81を介して絞られるように構成されたSCVポートを含む。本実施形態では、前述の第2ポート18がSCVポートとして構成されている(
図4を参照)。
【0060】
すなわち、この構成例に係る吸気ポート17、18は、タンブル流の生成を促進する形状とされている一方、SCV81を介してスワール流の生成をコントロールするように構成されている。
【0061】
2つの吸気ポート17、18には、それぞれ吸気バルブ21が配設されている。吸気バルブ21は、燃焼室16と吸気ポート17、18のそれぞれとの間を開閉する。吸気バルブ21は、吸気動弁機構によって所定のタイミングで開閉する。
【0062】
吸気動弁機構は、この構成例では、
図1に示すように、可変動弁機構である吸気電動S−VT(Sequential-Valve Timing)23を有している。吸気電動S−VT23は、吸気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更するよう構成されている。それによって、吸気バルブ21の開弁時期及び閉弁時期は、連続的に変化する。なお、吸気動弁機構は、吸気電動S−VT23に代えて、液圧式のS−VTを有していてもよい。
【0063】
シリンダヘッド13にはまた、1つのシリンダ11につき、2つの排気ポート19、19が形成されている。2つの排気ポート19、19は、それぞれ燃焼室16に連通している。
【0064】
2つの排気ポート19、19には、それぞれ排気バルブ22が配設されている。排気バルブ22は、燃焼室16と排気ポート19、19のそれぞれとの間を開閉する。排気バルブ22は、排気動弁機構によって所定のタイミングで開閉する。
【0065】
排気動弁機構は、この構成例では、
図1に示すように、可変動弁機構である排気電動S−VT(Sequential-Valve Timing)24を有している。排気電動S−VT24は、排気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更するよう構成されている。それによって、排気バルブ22の開弁時期及び閉弁時期は、連続的に変化する。なお、排気動弁機構は、電動S−VTに代えて、液圧式のS−VTを有していてもよい。
【0066】
詳細は省略するが、このエンジン1は、吸気電動S−VT23及び排気電動S−VT24によって、吸気バルブ21の開弁時期と排気バルブ22の閉弁時期とに係るオーバーラップ期間の長さを調整する。これによって、燃焼室16の中の残留ガスを掃気したり、燃焼室16の中に熱い既燃ガスを閉じ込めたり(つまり、内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスを燃焼室16の中に導入したり)する。この構成例においては、吸気電動S−VT23及び排気電動S−VT24が内部EGRシステムを構成している。尚、内部EGRシステムは、S−VTによって構成されるとは限らない。
【0067】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎にインジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、この構成例においては多噴口型の燃料噴射弁であり、燃焼室16の中に燃料を直接噴射するよう構成されている。
【0068】
インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料を貯留するよう構成された燃料タンク(不図示)と、燃料タンクとインジェクタ6とを互いに連結する燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが介設している。燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を圧送する。燃料ポンプ65は、この構成例においては、クランクシャフト15によって駆動されるプランジャー式のポンプである。コモンレール64は、燃料ポンプ65から圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄えるよう構成されている。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64に蓄えられていた燃料が、インジェクタ6の噴口から燃焼室16の中に噴射される。
【0069】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、その先端が燃焼室16の中に臨むような姿勢で取り付けられており、燃焼室16の中の混合気に対して強制的に点火をする。
【0070】
吸気通路30は、エンジン本体10前側の外面である取付面10aに接続されており、各シリンダ11の吸気ポート17、18を含んで構成されている。すなわち、吸気通路30は、燃焼室16に導入されるガスが流れる通路であり、各吸気ポート17、18を介して燃焼室16に接続されている。
【0071】
ここで、吸気通路30の上流端部には、新気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。対して、吸気通路30の下流端近傍には、サージタンク38が配設されている。サージタンク38よりも下流の吸気通路30には、シリンダ11毎に2本ずつ分岐する独立通路39が設けられている。
【0072】
詳細は後述するが、2本の独立通路39のうちの一方が第1ポート17に接続され、他方が第2ポート18に接続される。以下、前者の独立通路39に対して符号“391”を付す一方、後者に対して符号“392”を付す場合がある。このように、独立通路39の下流端が、各シリンダ11の吸気ポート17、18に接続されている。
【0073】
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク38との間には、スロットルバルブ32が配設されている。スロットルバルブ32は、その開度を調整することによって、燃焼室16に導入する新気の量を調整するよう構成されている。
【0074】
吸気通路30において、スロットルバルブ32の下流には過給機34が配設されている。過給機34は、燃焼室16に導入するガスを過給するよう構成されている。この構成例において、過給機34は、エンジン1(具体的には、クランクシャフト15から伝達される動力)によって駆動される機械式の過給機である。この過給機34は、ルーツ式のスーパーチャージャとして構成されているものの、その構成は、どのようなものであってもよい。例えば、リショルム式や遠心式のスーパーチャージャとしてもよい。
【0075】
過給機34とクランクシャフト15との間には電磁クラッチ34aが介設されている。電磁クラッチ34aは、過給機34とクランクシャフト15との間で駆動力を伝達させたり、駆動力の伝達を遮断したりする。後述の如く、ECU(Engine Control Unit)など、不図示の制御手段が電磁クラッチ34aの遮断及び接続を切り替えることによって、過給機34のオンとオフとが切り替わる。つまり、このエンジン1は、過給機34のオンとオフとを切り替えることにより、燃焼室16に導入するガスを過給する運転と、燃焼室16に導入するガスを過給しない運転とを切り替えることができるよう構成されている。
【0076】
吸気通路30における過給機34の下流には、インタークーラ36が配設されている。インタークーラ36は、過給機34において圧縮されたガスを冷却するよう構成されている。この構成例におけるインタークーラ36は、水冷式とされている。
【0077】
また、吸気通路30に組み込まれた各種の装置を結ぶ通路として、吸気通路30は、エアクリーナ31よりも下流側に配設され、エアクリーナ31によって浄化されたガスを過給機34へ導く第1通路33と、過給機34によって圧縮されたガスをインタークーラ36へ導く第2通路35と、インタークーラ36によって冷却されたガスをサージタンク38へ導く第3通路37と、を有している。なお、サージタンク38から吸気ポート17、18にかけての流路長(ランナー長)を短くするべく、サージタンク38は、吸気ポート17、18の入口(上流端部)近傍に配設されている。
【0078】
吸気通路30において、第1通路33、第2通路35、第3通路37及びサージタンク38は、ガスの流れ方向に沿って上流側から順に過給機34及びインタークーラ36が介設された「主吸気通路」を構成している。以下、主吸気通路に対して符号“30A”を付す場合がある。なお、主吸気通路30Aは、「第1吸気通路」の例示である。また、第3通路37は、「導入通路」の例示である。
【0079】
また、吸気通路30は、前述の主吸気通路30Aとは別に、過給機34及びインタークーラ36を迂回するバイパス通路40が設けられている。詳しくは、バイパス通路40は、主吸気通路30Aにおいて過給機34上流側から分岐するともに、その過給機34を迂回して燃焼室16に通じるように構成されている。さらに詳しくは、バイパス通路40は、主吸気通路30Aにおいてスロットルバルブ32下流側から過給機34上流側にかけての部分から延び、過給機34とインタークーラ36を迂回して、サージタンク38に接続されている。なお、バイパス通路40は、「第2吸気通路」の例示である。
【0080】
また、バイパス通路40には、該バイパス通路40の流路断面積を変更するエアバイパスバルブ(以下、単に「バイパスバルブ」という)41が配設されている。バイパスバルブ41は、バイパス通路40の流路断面積を変更することによって、バイパス通路40を流れるガスの流量を調整する。なお、バイパスバルブ41は、「流量調整弁」の例示である。
【0081】
過給機34をオフにしたとき(つまり、電磁クラッチ34aを遮断したとき)には、バイパスバルブ41を全開にする。これにより、吸気通路30を流れるガスは、過給機34をバイパスしてサージタンク38に流入し、独立通路39を介して燃焼室16に導入される。エンジン1は、非過給、つまり自然吸気によって運転する。
【0082】
過給機34をオンにしたとき(つまり、電磁クラッチ34aを接続したとき)には、バイパスバルブ41の開度を適宜調整する。これにより、吸気通路30において過給機34を通過したガスの一部は、バイパス通路40を通って過給機34の上流に逆流する。バイパスバルブ41の開度を調整することによって逆流量を調整することができるから、その逆流量を介して、燃焼室16に導入するガスの過給圧を調整することができる。この構成例においては、過給機34とバイパス通路40とバイパスバルブ41とによって、過給システムが構成されている。
【0083】
一方、排気通路50は、エンジン本体10における後側の外面に接続されており、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。排気通路50は、燃焼室16から排出された排気ガスが流れる通路である。詳細な図示は省略するが、排気通路50の上流部分は、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。それら独立通路の上流端が、各シリンダ11の排気ポート19に接続されている。
【0084】
排気通路50には、1つ以上の触媒コンバータ51を有する排気ガス浄化システムが配設されている。触媒コンバータ51は、三元触媒を含んで構成されている。なお、排気ガス浄化システムは、三元触媒のみを含むものに限らない。また、触媒コンバータ51は、「排気浄化装置」の例示である。
【0085】
吸気通路30と排気通路50との間には、外部EGRシステムを構成するEGR通路52が接続されている。EGR通路52は、既燃ガスの一部を吸気通路30に還流させるための通路である。詳しくは、EGR通路52の上流端は、排気通路50における触媒コンバータ51の下流に接続されている。一方、EGR通路52の下流端は、吸気通路30における過給機34の上流かつスロットルバルブ32の下流に接続されている。
【0086】
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラ53が配設されている。EGRクーラ53は、既燃ガスを冷却するよう構成されている。EGR通路52を流れる既燃ガスの流量は、EGRバルブ54によって調整されるよう構成されている。EGRバルブ54は、
図1の紙面上では、EGR通路52上に配設されているように図示されているものの、実際の構成では、
図3に示すようにバイパス通路40上に配設されている。EGRバルブ54の開度を調整することによって、冷却された既燃ガス、つまり外部EGRガスの還流量を調整することができる。
【0087】
この構成例において、EGRシステム55は、EGR通路52及びEGRバルブ54を含んで構成されている外部EGRシステムと、前述した吸気電動S−VT23及び排気電動S−VT24を含んで構成されている内部EGRシステムとによって構成されている。
【0088】
(吸気通路の構成)
以下、吸気通路30の構成について詳細に説明する。
【0089】
図3は、吸気通路30の縦断面図であり、
図4は、吸気通路30のうち過給機34側の通路構造を示す横断面図であり、
図5は、その縦断面図である。また、
図6は、サージタンク38周辺の縦断面を示す斜視図であり、
図7は、
図6とは別の縦断面を示す斜視図である。
【0090】
吸気通路30を構成する各部は、いずれもエンジン本体10の前側、具体的には、前述の取付面10aの前側に配置されている。なお、取付面10aは、シリンダヘッド13及びシリンダブロック12における前側の外面によって構成されている。
【0091】
また、前述のように、吸気通路30は、ガスを導く複数の通路(具体的には、第1通路33、第2通路35、第3通路37、サージタンク38及び独立通路39)と、過給機34やインタークーラ36等の装置と、これらの装置を迂回するバイパス通路40とが組み合わされて構成されている。
図3等に示すように、吸気通路30を構成する主吸気通路30Aは、バイパス通路40の上方に配置されている。
【0092】
最初に、これらの構成要素の概略的なレイアウトについて説明する。
【0093】
図3〜
図5に示すように、過給機34は、サージタンク38を挟んでエンジン本体10に対して反対側に対向して配置されている。過給機34の後面と取付面10aとの間には、サージタンク38の寸法に応じた隙間が空いている。第1通路33は、過給機34の左側において気筒列方向に沿って延設されており、過給機34の左端に接続されている。また、過給機34とインタークーラ36とはこの順番で上下に並んでおり、同方向に隣接している。第2通路35は、過給機34の前部とインタークーラ36の前部とを接続するように上下に延設されている。サージタンク38は、過給機34と取付面10aとの間の隙間に配置されており、吸気ポート17、18の上流端部に対して、複数の独立通路39を挟んで反対側に対向して配置されている。第3通路37は、インタークーラ36及び過給機34と、取付面10aとの間の隙間を縫うように延設されており、インタークーラ36がサージタンク38よりも下方に位置するように、インタークーラ36の後部とサージタンク38の底部とを接続している。バイパス通路40は、第1通路33の途中から分岐して上方へ延びた後、エンジン本体10の内方(右方)へ向かって延びるように形成されており、下流側において2股に分岐した上でサージタンク38の上部に接続されている。
【0094】
次に、吸気通路30を構成する各部の構造について説明する。
【0095】
第1通路33は、
図3に示すように、実質的に気筒列方向(左右方向)に延びる管状に形成されており、その上流側(左側)部分は、スロットルバルブ32が内蔵されたスロットルボディ33aによって構成されている。スロットルボディ33aは、金属製の短筒状に形成されており、両端の開口を左右に向けた姿勢で、取付面10aに対して左方且つ前方に位置するように配置されている。スロットルボディ33aの上流端(左端)には、不図示の通路を介してエアクリーナ31が接続されている一方、スロットルボディ33aの下流端(右端)には、第1通路33の上流側(左側)部分である第1通路本体33bが接続されている。
【0096】
第1通路本体33bは、
図3に示すように、スロットルボディ33aを過給機34に接続するように構成されている。詳しくは、第1通路本体33bは、両端の開口を左右に向けた長筒状に構成されている。第1通路本体33bは、取付面10aの前方において、スロットルボディ33aと略同軸になるように配置されている。さらに詳しくは、第1通路本体33bは、気筒列方向の外側から内側(左側から右側)に向かうにつれて、次第に拡径するように形成されている。第1通路本体33bの上流端(左端)には、前述のようにスロットルボディ33aの下流端が接続されている一方、その下流端(右端)には、過給機34の吸入口が接続されている。
【0097】
また、第1通路本体33bには、バイパス通路40に接続される分岐部33dも開口している。この分岐部33dは、第1通路本体33bの上面に形成されており、バイパス通路40の上流側部分(後述の曲管部45)が接続されている。
【0098】
よって、エアクリーナ31で浄化されて第1通路33へ流入した新気は、スロットルバルブ32を通過して第1通路本体33bへ至る。この新気は、自然吸気時には、前述の分岐部33dを介してバイパス通路40へ流入する一方、過給時には、バイパス通路40を逆流したガスと合流しつつ、第1通路本体33bの下流端から過給機34に吸い込まれるようになっている(
図4の矢印A1を参照)。
【0099】
以下、過給機34側の通路構造と、バイパス通路40側の通路構造とについて順番に説明する。
【0100】
−過給機側の通路構造−
まず、過給機34に吸入される側の通路構造について詳細に説明する。
【0101】
前述の如く、本実施形態に係る過給機34は、ルーツ式のスーパーチャージャとして構成されている。詳しくは、過給機34は、気筒列方向に沿って延びる回転軸を有する一対のロータ(不図示)と、ロータを収容しているケーシング34bと、ロータを回転駆動する駆動プーリ34dとを備え、駆動プーリ34dに巻き掛けられた駆動ベルト(不図示)を介してクランクシャフト15に連結されている。駆動プーリ34dと、ロータとの間には、前述の電磁クラッチ34aが介設されており、電磁クラッチ34aの遮断及び接続を切り替えることによって、クランクシャフト15を介して過給機34へ駆動力を伝達したり、駆動力の伝達を遮断したりする。
【0102】
ケーシング34bは、気筒列方向に延びる筒状に形成されており、ロータの収容空間と、過給機34を通過するガスの流路とを区画している。詳しくは、ケーシング34bは、気筒列方向に延び且つ左端と前面とが開口した略円筒状に形成されており、
図4等に示すように、取付面10aの気筒列方向略中央の部分に対して、所定の間隔を空けるように且つ第1通路33と同軸になるように配置されている。
【0103】
ケーシング34bの長手方向左端部には、ロータによって圧縮するガスを吸い込む吸入口が開口しており、第1通路33の下流端(右端)が接続されている。その一方で、ケーシング34bの前部には、
図4〜図5に示すように、ロータによって圧縮されたガスを吐き出す吐出口34cが開口しており、第2通路35の上流端(上端)が接続されている。
【0104】
駆動プーリ34dは、ケーシング34bに収容されたロータを回転駆動するように構成されている。詳しくは、駆動プーリ34dは、ケーシング34bの右端から突出し且つ、第1通路33及びケーシング34bの双方に対して略同軸に延びる軸状に形成されている。駆動プーリ34dの先端には駆動ベルトが巻き掛けられており、前述の如く、電磁クラッチ34aの切替状態に応じて、クランクシャフト15を過給機34に対して駆動連結するように構成されている。
【0105】
第2通路35は、
図4〜
図5に示すように、過給機34をインタークーラ36に接続するように構成されている。過給機34とインタークーラ36とを上下に隣接させるべく、本実施形態に係る第2通路35は、エンジン1の上下方向に沿って延びるように形成されている。また、第2通路35は、
図5に示すように、上下の両端が、それぞれ後方(エンジン本体10側)に向かって開口している。ここで、上側の開口部は、ケーシング34bの前部(具体的には吐出口34c)に接続されており、下側の開口部は、インタークーラ36の前部(具体的には、後述の開口部36d)に接続されている。
【0106】
前述の如く、本実施形態に係るインタークーラ36は、水冷式に構成されており、
図4〜
図5に示すように、ガスの冷却機能を有するコア36aと、コア36aを収容するクーラハウジング36cとを備えている。
【0107】
コア36aは、直方状に形成されており、その一側面(後面)と取付面10aとが向い合うような姿勢で支持されている。コア36aの前面がガスの流入面を構成している一方、コア36aの後面がガスの流出面を構成しており、それぞれ、コア36aにおいて最も広い面となっている。図示は省略するが、コア36aには、薄板材を扁平筒形にしたウォータチューブが複数配列されており、各ウォータチューブの外壁面には、波状のコルゲートフィンがロウ付け等により接続されている。このように構成することで、給水管から供給された冷却水は、各ウォータチューブに導入されて、高温のガスを冷却することになる。ガスを冷却したことで暖められた冷却水は、各ウォータチューブから排水管を介して排出される。また、コルゲートフィンを設けたことで、各ウォータチューブの表面積が増加して放熱効果が向上するようになっている。
【0108】
クーラハウジング36cは、過給機34を構成するケーシング34bの下方に配置されており、コア36aの収容空間を区画していると共に、吸気通路30のうち第2通路35と第3通路37との間に介設された流路を構成している。
【0109】
具体的に、クーラハウジング36cは、前面と後面とが開口した矩形薄箱状に形成されており、ケーシング34bの下方位置において、その後面と取付面10aとが向い合うような姿勢で支持されている。この後面は、ケーシング34bと同様に、エンジン本体10の取付面10aに対して所定の間隔(
図5を参照)を空けて配置されている。
【0110】
そして、クーラハウジング36cにおける前面側の開口部36dには、第2通路35の下流端が接続されている一方、後面側の開口部36eには、第3通路37の上流端が接続されている。
【0111】
第3通路37は、サージタンク38及び独立通路39に対して一体的に形成された通路であって、
図5に示すように、インタークーラ36をサージタンク38に接続するように構成されている。詳しくは、第3通路37は、上流側から順に、クーラハウジング36cに締結され、インタークーラ36を通過したガスが集合する集合部37aと、集合部37aに集合したガスをサージタンク38へ導く導入部37bとを有している。第3通路37は、少なくとも車両搭載状態においては、サージタンク38に対して下方に配設されている。
【0112】
集合部37aは、前面側つまり、クーラハウジング36c側が開放された、前後の奥行の浅い箱状に形成されており、その開放部は、
図5に示すように、クーラハウジング36c後面側の開口部36eに接続されている。集合部37aは、クーラハウジング36cの後面と、エンジン本体10の取付面10aとの隙間に位置するようになっている。また、集合部37aの後面にはさらに、導入部37bの上流端が接続されている。
【0113】
導入部37bは、略上下方向に延びる曲管部として形成されており、その上流端は集合部37aの後面に接続されている一方、その下流端はサージタンク底面の中央部(
図6〜
図7を参照)に接続されている。この導入部37bは、
図5等に示すように、集合部37aの後面から過給機34のケーシング34bの後面にかけての領域と、エンジン本体10の取付面10aとの間の隙間を縫うように延設されている。
【0114】
さらに詳しくは、
図6に示すように、導入部37bの上流側部分は、集合部37aとの接続部から右斜め上方へ向かって延びる(区間S2を参照)一方、それよりも下流側部分は、サージタンク38との接続部に向かって直上方へ延びる(区間S1を参照)ように形成されている。このように形成した結果、導入部37bの下流端部は、気筒列方向の一側から見たときに、独立通路39におけるガスの流れ方向に対して略直交する方向に延びるようになる(
図5を参照)。
【0115】
サージタンク38は、気筒列方向に延び、且つ同方向の両端が閉塞された略筒状に形成されている。このサージタンク38は、前述のように、吸気ポート17、18の上流端部に対し、複数の独立通路39を挟んで反対側に対向して配置されている(
図5を参照)。後述のように、複数の独立通路39をそれぞれ短筒状に形成すると、このような配置と相俟って、サージタンク38は、吸気ポート17、18の入口(上流端部)近傍に位置することになる。このことは、サージタンク38から吸気ポート17、18にかけての流路長(ランナー長)を短くする上で有効である。
【0116】
また、
図7に示すように、サージタンク38の底部には、第3通路37(導入部37b)の下流端部が接続されている。詳しくは、サージタンク38の内底面38aの中央部(具体的には、気筒列方向の中央部)には、略円形状の断面を有する導入口38bが開口しており、導入部37bの下流端部は、この導入口38bを介してサージタンク38に接続されている。
【0117】
なお、導入口38bは、吸気ポート17、18よりも大径に形成されている。
【0118】
また、サージタンク38において、導入口38bから気筒列方向の一端(1番気筒11A側の端)までの寸法と、その他端(4番気筒11D側の端)までの寸法とが実質的に等しくなっている。このような構成とすることで、吸気の分配性能を確保することが可能になり、ひいては充填効率の気筒間差を低減する上で有利になる。
【0119】
具体的に、サージタンク38の後面には、2本で1組を成す独立通路39が気筒列方向に沿って並んだ状態で4組(つまり、計8本)形成されている。8本の独立通路39は、それぞれ、車両搭載状態において、後方に向かって略ストレートに延びる短筒状の通路として形成されており、その一端側(上流側)はサージタンク38内の空間に連通している一方、他端側(下流側)はエンジン本体10側(後側)に開口している。
【0120】
4組の独立通路39は、それぞれ、4組の吸気ポート17、18の各々に対応するように配設されており、第3通路37、サージタンク38及び独立通路39等を成す部品をエンジン本体10に組み付けたときに、各独立通路39と、それに対応する吸気ポート17、18とが、それぞれ1本の通路を構成するようになっている。
【0121】
前述のように、独立通路39は、1組につき、第1ポート17に対応する独立通路391と、第2ポート18に対応する独立通路392とから構成されている。よって、第3通路37、サージタンク38及び独立通路39等を成す部品をエンジン本体10に組み付けたときに、第1ポート17と、それに対応する独立通路391とが独立した1本の通路を構成する一方、第2ポート18と、それに対応する独立通路392とが独立した1本の通路を構成する。このようにして、計8本の独立した通路が構成されるようになっている。計8本の独立した通路は、それぞれ「下流側通路」を例示している。
【0122】
そして、第2ポート18に接続される独立通路392には、
図5に示すように、前述のSCV81が配設されている。SCV81は、板状の弁体を有しており、その弁体の開度調整を通じて独立通路392を流れるガスの流動を制御するよう構成されている。例えば、弁体の開度を絞ることで、第2ポート18を通過するガスの流量が低減されるため、4つの第1ポート17のうち、その第2ポート18と同じシリンダ11に接続された第1ポート17を通過するガスの流量を相対的に増やすことができる。
【0123】
前述の如く、バイパス通路40の下流側部分は2股に分岐しており、分岐した各通路(以下、「分岐通路」44b、44cという)の下流端部は、両方とも、サージタンク38の上面に接続されている。
【0124】
そのような接続構造を実現するべく、サージタンク38の上面には、気筒列方向に間隔を空けて配置され且つ、サージタンク38の内外を連通させるように構成された第1及び第2導入部38c、38dが設けられている。
【0125】
そして、第1及び第2導入部38c、38dのうち、気筒列方向の一側(右側)に位置する第1導入部38cには、一方の分岐通路(以下、「第1分岐通路」ともいう)44bの下流端部が接続されている一方、他側(左側)に位置する第2導入部38dには、他方の分岐通路(以下、「第2分岐通路」ともいう)44cの下流端部が接続されている(
図9も参照)。
【0126】
具体的に、第1及び第2導入部38c、38dは、双方とも短筒状に形成されており、
図6に示すように、サージタンク38の上面から気筒列方向に対して垂直に且つ、斜め上前方に向かって延びている。
【0127】
第1導入部38cは、
図6に示すように、サージタンク38において、2番気筒11Bの第2ポート18Bに対応する独立通路392付近の部位に対向するように配設されている。対して、第2導入部38dは、4番気筒11Dの第2ポート18Dに対応する独立通路392付近の部位に対向するように配設されている。第1及び第2導入部38c、38dの構成が、第1及び第2分岐通路44b、44cとサージタンク38との接続箇所を規定している。
【0128】
また、
図6〜
図7に示すように、サージタンク38の内底面38aは、車両搭載状態において、8本の独立通路39それぞれの上流端の下面よりも低くなるよう形成されている。そうした内底面38aに開口した導入口38bの両脇(気筒列方向の左右両側)には、左右一対の壁部71、72が立設されている。各壁部71、72は、第3通路37とサージタンク38との接続部として形成された導入口38bの両縁において、サージタンク38の内底面38aからガスの流れ方向に沿って立ち上がるように設けられている。壁部71、72の高さ方向の寸法は、互いに同じである。
【0129】
つまり、過給時においては、エンジン1の運転に伴い、クランクシャフト15からの出力が、駆動ベルト及び駆動プーリ34dを介して伝達されて、ロータを回転させる。ロータが回転することにより、過給機34は、第1通路33から吸い込んだガスを、圧縮した上で吐出口34cから吐き出す。吐き出されたガスは、ケーシング34bの前方に配置された第2通路35に流入する。
【0130】
図5の矢印A2に示すように、過給機34から吐出されて第2通路35に流入したガスは、過給機34の吐出口34cから前方に向かって流れた後、第2通路35に沿って下方へと流れる。下方へ流れたガスは、第2通路35の下部に至った後、インタークーラ36に向かって後方へ流れる。
【0131】
続いて、
図5の矢印A3に示すように、第2通路35を通過したガスは、前面側の開口部36dからクーラハウジング36cの内部に流入し、その前側から後方に向かって流れる。クーラハウジング36cの内部に流入したガスは、コア36aを通過する際に、ウォータチューブに供給された冷却水によって冷却される。冷却されたガスは、クーラハウジング36cにおける後面側の開口部36eから流出し、第3通路37に流入する。
【0132】
そして、
図5の矢印A4に示すように、インタークーラ36から第3通路37へ流入したガスは、集合部37aを通過した後、導入部37bの上流側部分に沿って右斜め上方へ流れ(
図6の区間S1も参照)、その後、導入部37bの下流側部分に沿って直上方へ流れる(
図6の区間S2も参照)。
図5の矢印A5に示すように、導入部37bを通過したガスは、サージタンク38における、気筒列方向の略中央の空間に流入し、サージタンク38にて一時的に蓄えられた後、独立通路39を介して各シリンダ11の吸気ポート17、18へ供給される。
【0133】
−バイパス通路側の通路構造−
次に、バイパス通路40側の通路構造について詳細に説明する。
【0134】
図8は、バイパス通路40側の通路構造を上側から見て示す図であり、
図9は、サージタンク38とバイパス通路40との接続構造を示す縦断面図である。
【0135】
図3に示すように、バイパス通路40は、第1通路本体33bに開口した分岐部33dから左斜め上方に向かって延びた後に、右方に向かって略ストレートに延びる(
図8も参照)。バイパス通路40は、右方に向かって延びた部分がサージタンク38の中央付近(具体的には、気筒列方向における中央)に至ると、斜め下後方に向かうように向きを変えた後に、2股に分岐する。既に説明したように、分岐した各々が、サージタンク38の上面に接続されるようになっている。
【0136】
具体的に、バイパス通路40は、流れ方向に沿って上流側から順に、分岐部33dから流入したガスの流れ方向を変更する曲管部45と、バイパスバルブ41が内蔵されたバルブボディ41aと、バルブボディ41aを通過したガスを右方に向かって導く直管部43と、直管部43を通過したガスを斜め下後方に向かって導いた後、2股に分岐してサージタンク38に接続される分岐管部44とから構成されている。
【0137】
ここで、後述の如く、凝縮水に関する性能向上を図るべく、バイパス通路40は、主吸気通路30Aから分岐して左斜め上方(エンジン上方)に向かって延びる中継通路部40Aと、中継通路部40Aの上端部から延設されて過給機34を迂回するように構成された上方通路部40Bと、を含んで構成されている。
【0138】
図3に示すように、上方通路部40Bは、主吸気通路30Aの上方に配置されおり、EGR通路52は、その上方通路部40Bに接続されている。EGR通路52と上方通路部40Bとの接続部は、上方通路部40Bに設けられたEGRバルブ54によって開閉されるようになっている。
【0139】
この構成例においては、中継通路部40Aは、曲管部45の一部によって構成されている一方、上方通路部40Bは、曲管部45の他部と、バルブボディ41aと、直管部43とによって構成されている。
【0140】
以下、バイパス通路40を構成する各部の構成について、詳細に説明する。
【0141】
曲管部45は、分岐部33dから左斜め上方へ向かって延びた後、右方へ向かって略ストレートに延びる筒状に形成されており、第1通路33(ひいては第1吸気通路としての主吸気通路30A)の上方位置において、下方と右方とに開口を向けた姿勢で配置されている。
【0142】
曲管部45において左斜め上方へ延びる部分が、前述の中継通路部40Aを構成している。この部分は、右斜め下方へ向かうにつれて、次第に拡径するようになっている。そのような構成とすることで、分岐部33dの開口面積を拡大する上で有利になる。
【0143】
一方、曲管部45において右方へ向かって略ストレートに延びる部分が、前述の上方通路部40Bを構成している。曲管部45において上方通路部40Bを構成する部分は、中継通路部40Aを構成する部分に対して、気筒列方向においてオーバーラップしている。
図3等に示すように、上方通路部40Bを構成する部分には、EGRバルブ54が配設されている。
【0144】
よって、曲管部45に流入したガスは、左斜め上方へ向かって流れた後、曲管部45の折り返しに従って流れの向きが変更される。その結果、曲管部45を流れるガスは、気筒列方向の外側から内方(左側から右方)に向かって流れる。曲管部45の上流端(下端)には、既に述べたように、分岐部33dを介して第1通路本体33bが接続されている一方、曲管部45の下流端(右端)には、バルブボディ41aの上流端(左端)が接続されている。
【0145】
なお、
図3に示すように、曲管部45において上方通路部40Bを構成する部分には、EGR通路52の下流端部が接続されている。EGR通路52の下流端部は、
図3の紙面奥側から手前側に向かって延びており、前述のEGRバルブ54によって開閉されるようになっている。EGR通路52と曲管部45とは、
図3の紙面に対して略垂直に接続されている。
【0146】
曲管部45の下流側にバルブボディ41aが配置されていることを考慮すると、EGR通路52の下流端部は、バイパス通路40においてバイパスバルブ41の上流側に接続されることになる。また、曲管部45においてEGR通路52の下流端部が接続された部分の下壁面45aは、下方に向かって凹むように形成されている。この下壁面45aは、水分を受け止める水受構造を構成している。水受構造としての下壁面45aは、EGR通路52及び上方通路部40Bにおいて発生した凝縮水の主吸気通路30Aへの流入を抑制するように構成されている。
【0147】
バルブボディ41aは、短筒状に形成されており、
図3に示すように、第1通路33に対して上方、かつ過給機34に対して左方において、両端の開口を左右に向けた姿勢で配置されている。バルブボディ41aの上流端には、既に述べたように曲管部45の下流端が接続されている一方、バルブボディ41aの下流端(右端)には、直管部43の上流端(左端)が接続されている。
【0148】
直管部43は、気筒列方向の一側から他側(具体的には、左側から右側)へ向かって延びる長筒状に形成されている。直管部43は、
図3等から見て取れるように、第1通路33及び過給機34の上方位置において、両端の開口を左右に向けた姿勢で配置されている。直管部43の上流端には、既に述べたようにバルブボディ41aの下流端が接続されている一方、直管部43の下流端(右端)には、分岐管部44の上流端(左端)が接続されている。
【0149】
分岐管部44は、エルボ状に曲折された曲折通路44aと、その曲折通路44aの下流端からトーナメント状に分岐した2本の分岐通路44b、44cとから構成されており、過給機34及びサージタンク38の上方位置において、曲折通路44aの上流端を左方に向けて且つ、分岐した2本の分岐通路44b、44cを両方とも斜め下後方に向けた姿勢で配置されている。
【0150】
2本の分岐通路44b、44cの流路長は、実質的に同じであり、分岐した一方の分岐通路である第1分岐通路44bは、分岐箇所から気筒列方向に沿って右方へ延びた後、斜め下後方に向かうように曲折されている。対して、分岐した他方の分岐通路である第2分岐通路44cは、分岐箇所から気筒列方向に沿って左方へ延びた後、斜め下後方に向かうように曲折されている。2本の分岐通路44b、44cの各々の下流端部は、前述の如く、サージタンク38の上面に形成された第1導入部38c及び第2導入部38dの各々に接続されている。すなわち、前述の上方通路部40Bは、2本の分岐通路44b、44cの各々を介してサージタンク38に接続されている。
【0151】
バイパス通路40を構成する部品をサージタンク38に取り付けたとき、2本の分岐通路44b、44cの各々と、第1導入部38c及び第2導入部38dの各々とが、それぞれ1本の通路を構成するようになっている。
【0152】
自然吸気時において、バイパス通路40に流入したガスは、該バイパス通路40を成す各部を通過して各シリンダ11へ至る。つまり、スロットルバルブ32を通過したガスは、バイパスバルブ41の開閉状況に応じて、第1通路33の途中からバイパス通路40の曲管部45に流入する。曲管部45を通過してバルブボディ41aに流入したガスは、
図8の矢印A6に示すように、右方へ向かって流れる。
【0153】
続いて、バルブボディ41aを通過したガスは、
図8の矢印A7に示すように、直管部43に沿って右方へ流れた後、分岐管部44に流入する。そして、同図の矢印A8〜A10に示すように、分岐管部44に流入したガスは、曲折通路44aを通過した後、第1分岐通路44bと第2分岐通路44cとに分配されて、分配された各々がサージタンク38に流入する(
図9の矢印A9〜A10も参照)。サージタンク38に流入したガスは、独立通路39を介して各シリンダ11の吸気ポート17、18へ供給される。
【0154】
対して、過給時においては、サージタンク38からバイパス通路40に逆流したガスは、バイパス通路40の各部を自然吸気時とは逆向きに通過して、第1通路33に流出する。
【0155】
また、前述のように、バイパス通路40を構成する曲管部45には、EGR通路52の下流端部が接続されている。したがって、バイパス通路40には、第1通路33から流入するガスや、サージタンク38から逆流するガスばかりでなく、外部EGRガスも流れるようになっている。
【0156】
以下、EGR通路52の構成について詳細に説明する。
【0157】
−EGR通路の構成−
図10は、EGR通路52を左側から見て示す図であり、
図11は、EGR通路52を上側から見て示す図である。また、
図12は、EGR通路52の下流端部を後側から見て示す図であり、
図13は、EGR通路52の下流端部を示す断面図である。また、
図14は、EGR通路52と吸気ポート17、18との相対位置関係を示す図である(この図には、第1ポート17のみを示す)。
【0158】
図10に示すように、EGR通路52は、触媒コンバータ51が介設された排気通路50から分岐して、下流端部が吸気通路30に接続されている。詳しくは、EGR通路52は、排気通路50における触媒コンバータ51の下流側から分岐して、バイパス通路40におけるバイパスバルブ41の上流側(具体的には曲管部45)に接続されている(
図1も参照)。
【0159】
また、既に説明したように、EGR通路52には、EGR通路52を通過するガスを冷却するEGRクーラ53が介設されている。以下、EGR通路52において、排気通路50とEGRクーラ53とを相互に接続する部分を上流側EGR通路52aと呼称する一方、EGRクーラ53とバイパス通路40とを相互に接続する部分を下流側EGR通路52bと呼称する。
【0160】
具体的に、上流側EGR通路52aは、
図10〜
図11に示すように、排気通路50の左側部に沿って斜め上前方へ延びた後、エンジン本体10の左側部と干渉しないように、左方へ方向転換をする。そして、上流側EGR通路52aは、再び斜め上前方へ延び、EGRクーラ53に至る。上流側EGR通路52aの上流端には、既に述べたように排気通路50における触媒コンバータ51の下流側部分が接続されている一方、上流側EGR通路52aの下流端(前端)には、EGRクーラ53の上流端(後端)が接続されている。
【0161】
EGRクーラ53は、前後方向に対して若干斜めに傾斜した角筒状に形成されており、
図14に示すように、少なくとも車両搭載状態にあっては、上下方向において吸気ポート17、18と略同じ位置(
図16には第1ポート17のみを示す)において、両端の開口を斜め前後方向に向けた姿勢で配置されている。EGRクーラ53の上流端は、斜め下後方へ指向しており、既に説明したように上流側EGR通路52aの下流端が接続されている。一方、EGRクーラ53の下流端(前端)は、斜め上前方へ指向しており、下流側EGR通路52bの上流端(後端)が接続されている。
【0162】
下流側EGR通路52bは、ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側に向かうにつれて(つまり、EGR通路52の接続先である上方通路部40Bに向かうにつれて)、下方から上方へ向かって延びている。詳しくは、
図10〜
図12に示すように、下流側EGR通路52bは、エンジン本体10の左側部に沿って斜め上前方へ延びた後、略前方へ向かって方向転換をするように構成されている。
【0163】
そして、下流側EGR通路52bの下流端部は、略前方へ向かって延び、バイパス通路40の曲管部45に対して後方から繋がっている。この下流端部は、
図3及び
図13に示すように、EGRバルブ54によって開閉されるようになっている。なお、下流側EGR通路52bの下流端部、及び該下流端部が接続される上方通路部40Bは、
図14に示すように、吸気ポート17、18(特に、紙面左側に位置する吸気ポートの上流端部)に対して上方に位置するように配置されている。
【0164】
混合気の燃焼に伴って、燃焼室16から排気通路50へ排出された既燃ガスは、触媒コンバータ51を通過する。そして、触媒コンバータ51を通過した既燃ガスの一部は、EGR通路52へ導入される。EGR通路52へ導入された既燃ガスは、
図10の矢印A11に示すように、上流側EGR通路52aと、EGRクーラ53と、下流側EGR通路52bを順番に通過して、外部EGRガスとしてバイパス通路40へ導入される。外部EGRガスの導入量は、EGRバルブ54の開度を介して調整される。
【0165】
ここで、
図15は、自然吸気時の外部EGRガスの流れを例示する図であり、
図16は、過給時の外部EGRガスの流れを例示する図である。
【0166】
自然吸気時においては、バイパス通路40へと流入した外部EGRガスは、スロットルバルブ32を通過して第1通路本体33bからバイパス通路40へ流入した新気(矢印A13を参照)と合流し、
図15の矢印A12に示すように、バイパス通路40を上流側から下流側へ流れる。新気と合流した外部EGRガスは、サージタンク38へ流入し、独立通路39及び吸気ポート17、18を順番に通過して燃焼室16へ至る。
【0167】
一方、過給時においては、バイパス通路40へと流入した外部EGRガスは、
図16の矢印A14に示すように、サージタンク38からバイパス通路40へ逆流したガス(矢印A15を参照)と合流し、バイパス通路40を下流側から上流側へと逆流する。逆流して第1通路本体33bへ流入したガスは、スロットルバルブ32を通過して第1通路本体33bへ流入した新気(矢印A16を参照)と合流し、過給機34に吸入される。
【0168】
(外部EGRガスの含有物に関係する構成)
エンジン1は、該エンジン1を運転するためのECUを備えている。ECUは、各種のセンサより出力された検知信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断すると共に、種々のアクチュエータの制御量を計算する。そして、ECUは、計算した制御量に対応する制御信号を、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気電動S−VT23、排気電動S−VT24、燃料供給システム61、スロットルバルブ32、EGRバルブ54、過給機34の電磁クラッチ34a、バイパスバルブ41、及び流動制御デバイス80等に出力し、エンジン1を運転する。
【0169】
エンジン1の運転領域は、例えばエンジン回転数と負荷とによって区分されるようになっており、ECUは、各運転領域に対応した運転状態を実現するように、各アクチュエータを制御する。
【0170】
例えば、ECUは、所定負荷よりも低負荷側の運転領域(以下、「燃費領域」という)では、自然吸気によってエンジン1を運転する。具体的に、ECUは、電磁クラッチ34aを遮断すると共に、バイパスバルブ41を全開にする。
【0171】
一方、ECUは、その所定負荷よりも高負荷側の運転領域(以下、「過給域」という)では、過給機34を駆動することにより、各シリンダ11に導入されるガスを過給する。具体的に、ECUは、電磁クラッチ34aを接続すると共に、バイパスバルブ41の開度を適宜調整する。
【0172】
ここで、本実施形態の如く、吸気通路30へ外部EGRガスを導入するように構成した場合、外部EGRガスに含まれる水分や煤といった含有物もまた、吸気通路30へ還流されることになる。そうした含有物は、ガスの流れを利用して燃焼室16まで導くことにより、その燃焼室16において蒸発させたり、燃焼させたりすることができる。
【0173】
ところが、過給機を備えたエンジンでは、ガス流によって運ばれる含有物が過給機34に付着したり、過給機34の内部に堆積したりしてしまい、その結果、過給機34の性能低下を招く虞がある。
【0174】
しかし、本実施形態に係るエンジン1は、該エンジン1の運転状態が燃費領域にあるときには、ECUから入力された制御信号に従って、バイパスバルブ41の開度調整など、種々のアクチュエータを制御することによってバイパス通路40を介したガスの流れを発生させる。そうして、このエンジン1は、過給機34を迂回して吸気ポート17、18ひいては燃焼室16に至るようにガスを導くよう運転する。
【0175】
このようなガスの流れを利用して、過給機34を通過させることなく、吸気通路30へ還流された含有物を燃焼室16まで導くことができる。
【0176】
その場合、過給機34の性能低下を回避しつつ、燃焼室16へ含有物を導くことが可能になるものの、本願発明者等は、さらに鋭意検討を重ねた結果、吸気通路30とバイパス通路40との間の位置関係次第では、そうした含有物をスムースに導く上で改良の余地があることに気付いた。
【0177】
例えば、本実施形態では、
図5及び
図8に示すように、主吸気通路30Aを構成する第1通路33、第1通路33、第2通路35、第3通路37及びサージタンク38に対して、バイパス通路40(特に、上方通路部40B)を上方に配置している。
【0178】
このように配置した場合において、仮に、EGR通路52の下流端部を主吸気通路30Aに接続してしまうと、吸気通路30へ導入された含有物をバイパス通路40まで導くためには、分岐部33dを介して含有物を上方へ運ぶ必要がある。そうすると、含有物を持ち上げるのに要する位置エネルギの分だけ、含有物をスムースに導く上で不利になる。
【0179】
対して、本実施形態では、
図15に示すように、バイパス通路40の上方通路部40Bが主吸気通路30Aに対して上方に配置されているところ、EGR通路52の下流端部は、その上方通路部40Bに接続されている。すなわち、吸気通路30へ還流される含有物は、主吸気通路30Aを介することなく、バイパス通路40へ直に導入されるようになっている。
【0180】
そうした構成は、EGR通路52の下流端部を主吸気通路30Aに接続した構成と比較して、主吸気通路30Aからバイパス通路30へ含有物を持ち上げるための位置エネルギが不要になる分だけ、含有物をスムースに導く上で有利になる。バイパス通路40へと導入された含有物は、前述のように、ガスの流れを利用して燃焼室16まで導かれ、燃焼室16において混合気と共に燃焼することとなる。
【0181】
またそもそも、
図15の矢印A12に示すように、バイパス通路40を介したガスの流れを利用して、過給機34を迂回して燃焼室16へ至るようにガスを導くことができる。
【0182】
したがって、外部EGRガス中の含有物を、過給機34に付着・堆積させることなく、燃焼室16までスムースに導くことができる。
【0183】
また、本実施形態では、EGR通路52を介して還流する外部EGRガスは、
図15に示すように、バイパス通路40(特に、上方通路部40B)におけるバイパスバルブ41の上流側に導入される。そうすると、例えば過給域において、バイパスバルブ41を全閉するような運転状態であったとしても、バイパス通路40から主吸気通路30Aへと外部EGRガスを導くことができる。
【0184】
これにより、燃費領域において外部EGRガス中の含有物を燃焼室16までスムースに導くことと、過給域において外部EGRガスを主吸気通路30Aへ導くことを両立することが可能になる。
【0185】
また、EGR通路52を流れる外部EGRガスは、EGRクーラ53を通過するときに冷却される。そのとき、外部EGRガスに含まれる水分が凝縮水となる可能性がある。
【0186】
そこで、
図10に示すように、EGR通路52においてEGRクーラ53よりも下流側部分、つまり下流側EGR通路52bは、上方通路部40Bへ向かうにつれて、下方から上方へ向かって延びている。そうすると、EGRクーラ53において発生した凝縮水は、重力に従って、上方通路部40Bの反対側(EGR通路52の上流側)に向かって流れ落ちるようになるから、第2吸気通路まで至る凝縮水を低減することができる。これにより、バイパス通路40へと還流される含有物において、水分の還流量を低減することが可能になるから、そうした水分を過給機34に付着させないようにする上で有利になる。
【0187】
この構成によれば、第2吸気通路へと還流される水分を受け止めて一時的に貯留することが可能になる。これにより、前述の過給域のように、第1吸気通路を介してガスを導くような運転領域であっても、外部EGRガス中の水分の、第2吸気通路から第1吸気通路への流入を抑制することが可能になるから、そうした水分を過給機に付着させないようにする上で有利になる。
【0188】
また、曲管部45においてEGR通路52の下流端部が接続された部分の下壁面45aは、下方に向かって凹むように形成されている。これにより、EGR通路52からバイパス通路40へ流入した水分に起因して生じた凝縮水を受け止めて一時的に貯留することが可能になる。これにより、前述の過給域のように、主吸気通路30Aを介してガスを導くような運転領域であっても、凝縮水の、バイパス通路40から主吸気通路30Aへの流入を抑制することが可能になるから、そうした水分を過給機34に付着させないようにする上で有利になる。
【0189】
また、バイパス通路40の下流端部は、
図9に示すようにサージタンク38に接続されているから、例えばバイパス通路40の下流端部をサージタンク38上流側の通路に接続した構成と比較して、バイパス通路40の下流端部と吸気ポート17、18とを近接させることが可能となる。そのことで、バイパス通路40を介したガスの流れによって、外部EGRガス中の含有物を、吸気ポート17、18ひいては燃焼室16までスムースに導くことができる。
【0190】
また、
図14に示すように、EGR通路52の下流端部、及び該下流端部が接続される上方通路部40Bは、吸気ポート17、18の上流端部に対して上方に配置されているから、EGR通路52からバイパス通路40へ導入された外部EGRガスに含まれる含有物を、重力に逆らって上方へ導くことなく、吸気ポート17、18の上流端部まで導くことが可能となる。そのことで、そうした含有物を、燃焼室16までスムースに導くことができる。
【0191】
またそもそも、EGR通路52の下流端部は、バイパス通路40において、水平方向、詳しくは機関出力軸方向(この例では、気筒列方向と同じ)に沿って延びる部分に接続されている。このことは、EGR通路52からバイパス通路40へ導入された水分が主吸気通路30Aへ流れ落ちないようにする上で有効である。
【0192】
(凝縮水の逆流に関係する構成)
ところで、エンジン1が運転すると、新気や外部EGRガスのように水分を含んだガスがインタークーラ36によって冷却されたときに、その水分に起因した凝縮水が、インタークーラ36よりも下流側の通路において生成される。
【0193】
通常のエンジンでは、インタークーラよりも下流側にサージタンクが配置されるようになっているため、そうした凝縮水が、サージタンクにおいて生成されたり、サージタンクの底部に付着したりするのが通例である。
【0194】
しかし、この構成例のように、サージタンク38の下方にインタークーラ36を配置した場合、重力にしたがって流れ落ちた凝縮水が、インタークーラ36の底部に溜る可能性がある。そうすると、例えば、エンジン1の負荷が上昇し、外部から取り込むガスの流速が高まったときに、多量の凝縮水が、インタークーラ36からサージタンク38及び吸気ポート17、18を介して燃焼室16の中に至り、ひいてはウォーターハンマー現象を引き起こす可能性がある。このことは、エンジン1の耐久性を十分に確保する上で不都合である。
【0195】
それに対し、凝縮水がインタークーラへ逆流しないように、サージタンク38とインタークーラ36とを水平方向に沿って並べることも考えられるが、そのようにレイアウトしてしまうと、エンジン全体がかさばってしまったり、吸気通路全体の取り回しに支障を来たしたりするため望ましくない。
【0196】
そこで、第3通路37の上流端部から、該第3通路37の下流端部とサージタンク38との接続部にかけての区間(この構成例では、
図6の区間S1〜S2に等しい)内に、ガスの流れとは逆流する水分を受け止める逆流防止構造を形成することにした。具体的に、その逆流防止構造は、
図6〜
図7、及び
図9に示すように、サージタンク38の導入口38b周縁に形成された一対の壁部71、72から成り、サージタンク38側からインタークーラ36に向かって流れる凝縮水の水量を低減するように構成されている。
【0197】
この構成によると、吸気通路30において、インタークーラ36よりも下流側の通路を含んだ区間内に逆流防止構造が形成されている。よって、サージタンク38において生成されたり、外部からサージタンク38に流入したりした凝縮水を、その逆流防止構造において受け止めることが可能になる。具体的に、逆流防止構造としての壁部71は、該壁部71の右側面において、サージタンク38の底面38a右側に付着した凝縮水を受け止める。同様にその壁部71と対をなす壁部72は、該壁部72の左側面において、サージタンク38の底面38a左側に付着した凝縮水を受け止める。これにより、凝縮水の逆流を抑制し、ひいては、ウォーターハンマー現象の発生を抑制することが可能になる。
【0198】
また、逆流防止構造を形成することは、サージタンク38及びインタークーラ36を上下に並べることと両立することができる。重力にしたがって凝縮水が流れ落ちたとしても、インタークーラ36に至る前に、逆流防止構造において受け止めることができる。このことは、エンジン1をコンパクトに構成する上で有効である。
【0199】
このように、エンジン1をコンパクトに構成しつつ、凝縮水に起因したウォーターハンマー現象の発生を抑制することができる。
【0200】
また、逆流防止構造としての一対の壁部71、72は、
図8〜
図9、及び
図14に示すように、それぞれ、サージタンク38の導入口38bの周囲に形成されているから、例えば、各壁部71、72を第3通路37の途中に形成した構成と比較して、凝縮水を吸気ポート17、18の近傍に留めることができる。よって、その凝縮水を、サージタンク38に流入した吸気の流れを利用することによって、燃焼室16の中にスムースに導入することが可能になる。このことは、凝縮水の貯留量を少なく保つ上で有効である。
【0201】
また、第1導入部38c及び第2導入部38dは、
図9に示すように、それぞれ、サージタンク38の導入口38bと、一対の壁部71、72との双方に対して、気筒列方向にオフセットしている。
【0202】
例えば、第1導入部38cと、導入口38bとが、気筒列方向において同じ位置に配置されていた場合、バイパス通路40から導入されたガスに含まれる水分が凝縮したときに、壁部71右側の底面38aに落ちることなく、導入口38bを通じてインタークーラ36へ流れ落ちる可能性がある。
【0203】
それに対し、
図9に示すように、第1導入部38cが、導入口38bと、一対の壁部71、72との双方に対してオフセットしているから、バイパス通路40からサージタンク38へ導入されたガスに含まれる水分が、サージタンク38の内部において凝縮したとしても、その凝縮水は、導入口38bと、一対の壁部71、72との双方に対して、気筒列方向にオフセットした場所にて発生するようになる。その結果、一対の壁部71、72によって、その凝縮水を受け止めることができる。第2導入部38dについても同様である。
【0204】
また、逆流防止構造は、サージタンク38の底面38aからガスの流れ方向に沿って立ち上がるように立設された一対の壁部71、72によって構成されているから、この壁部71、72に沿ってガスをスムースに流すことが可能になる。そのことで、例えば、ガスと壁部とが衝突した結果、その壁部がインパクタとして作用してしまい、意図せずして凝縮水が生成されてしまうような事態を避けることができる。
【0205】
さらに、このように構成にすると、吸気抵抗を増大させることなく、逆流防止構造を構成することができる。すなわち、凝縮水の逆流を防止することと、吸気抵抗を抑制することを両立することが可能になる。
【0206】
《他の実施形態》
前記実施形態では、FF方式の車両に搭載される横置きのエンジン1について例示したが、この構成には限られない。例えばFR方式の車両に搭載される縦置きのエンジンとしてもよい。
【0207】
また、前記実施形態では、直列4気筒エンジンについて例示したが、この構成には限られない。例えば、1気筒エンジンや直列6気筒エンジンとしてもよい。また、気筒数に応じて、バイパス通路40において分岐する通路の本数を変更してもよい。
【0208】
また、前記実施形態では、逆流防止構造としての一対の壁部71、72を、サージタンク38の導入口38bの周囲に形成した構成について説明したが、この構成には限られない。逆流防止構造を形成する場所は、第3通路37の上流端部から、サージタンク38の導入口38b周辺にかけての区間内であればよい。
【0209】
また、前記実施形態では、いわゆるスーパーチャージャとして構成された過給機34を例示したが、ターボチャージャとしてもよい。またそもそも、過給機34は必須ではない。