【文献】
KEN OKUYAMA DESIGN,Kode57 Press Conference at the Quail,[online],2016年 8月25日,[平成31年1月29日検索],URL,https://www.youtube.com/watch?v=ENmqlxLh6WY&feature=youtu.be
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両では、フロントホイールハウスとリヤホイールハウスとの間の車両側部が車幅方向内側に向けて凹入された外装構造が採用される場合があるが、このような構造を採用した場合において、車両の空気抵抗の低減のために改善の余地がある。即ち、車両においては、車両における走行安定性の向上や優れた意匠性を実現するために車両側部を車幅方向内側に向けて凹入させた構造を採用する場合があるが、このような場合には、車両側部の凹入により、当該凹入された部分で渦流が生じたり、リヤホイールハウスの部分で空気の流れが車体表面から剥離したりすることが懸念される。
【0006】
このような懸念に対して、上記特許文献1,2をはじめとする従来技術では、十分に解決を図ることができないのが現状である。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、車両側部が車幅方向内側に向けて凹入された構造を採用しながら、車両の空気抵抗の低減を図ることが可能な車両の外装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両の外装構造は、フロントホイールハウスとリヤホイールハウスとの間の部分が
少なくとも上下方向について曲面を以て車幅方向内側に向けて凹入された車両側部と、前記フロントホイールハウスに開口された前方開口部と前記車両側部における前記凹入された部分の前部に
車幅方向の外側を指向するように開口された側方開口部との間を連通し、前記フロントホイールハウスから前記車両側部の外方へと走行風を導く第1ダクトと、前記リヤホイールハウスに開口された前方開口部と車両後端部に開口された後方開口部とを連通し、前記リヤホイールハウスから前記車両後端部の後方へと走行風を導く1又は複数の第2ダクトと、を備える。
【0009】
上記態様に係る車両の外装構造では、第1ダクトを備えるので、車両側部に開口された第1ダクトの側方開口部から走行風を導出させることができ、フロントホイールハウスの外側を後方に流れてきた走行風が車両側部における凹入された部分で渦流となるのを抑制することができる。即ち、フロントホイールハウスから取り込まれ、側方開口部から導出された走行風(第1ダクトを通り導出された走行風)により、車両側部における凹入された部分が負圧になることを抑制し、フロントホイールハウスの外側を後方に流れてきた走行風が凹入された部分で車両内側に引き込まれ難くなる。
【0010】
また、上記態様に係る車両の外装構造では、リヤホイールハウスから車両後端部の後方へと走行風を導く第2ダクトが設けられているので、リヤホイールハウスの直前で走行風が車両側部から剥離するのを抑制することができる。即ち、上記態様に係る車両の外装構造では、第2ダクトを設けたことにより車両側部に沿って流れてきた走行風をリヤホイールハウスの側へと引き込むことができ、リヤホイールハウスに沿った部分からの走行風の剥離を抑制することができる。
【0011】
また、上記態様に係る車両の外装構造では、第2ダクトを通った走行風を車両後端部に開口された後方開口部から導出させることとしているので、車両後端部の後方部分における渦流の発生を抑制することができる。即ち、第2ダクトを通り車両後端部に開口された後方開口部から導出される走行風により、車両後端部の後方部分が負圧となるのを抑制し、車両上面部に沿って流れてきた走行風や車両側部に沿って流れてきた走行風が、車両後端部の後方部分で渦流を形成するのを抑制することができる。
【0012】
従って、上記態様に係る車両の外装構造では、車両側部が車幅方向内側に向けて凹入された構造を採用しながら、車両の空気抵抗の低減を図ることができる。
【0013】
本発明の別態様に係る車両の外装構造は、上記態様であって、前記車両側部は、前記リヤホイールハウスよりも前記フロントホイールハウスに近い部分に、最も凹入量が大きい凹入箇所が規定されており、前記第1ダクトにおける前記側方開口部は、前記凹入箇所及びその近傍を含む領域に開口されている。
【0014】
上記態様に係る車両の外装構造では、車両側部における最も凹入量が大きい凹入箇所及びその近傍を含む領域に第1ダクトの側方開口部を設け、当該側方開口部から走行風を導出させることで、効果的に車両側部における凹入された部分での渦流の発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の別態様に係る車両の外装構造は、上記態様であって、各々が車両前端部に開口された前方開口部と前記フロントホイールハウスに開口された後方開口部との間を連通し、前記車両前端部の前方から前記フロントホイールハウスへと走行風を導く複数の第3ダクトを更に有する。
【0016】
上記態様に係る車両の外装構造では、複数の第3ダクトを有するので、複数の第3ダクトを通りフロントホイールハウスに流入する空気の量が、フロントホイールハウスから第1ダクトへと流出する空気の量よりも多くなり、フロントホイールハウスの内部圧力がフロントホイールハウスの外方よりも高くなる。よって、フロントホイールハウスの外側を流れる走行風がフロントホイールハウスに引き込まれ難く、フロントホイールハウスの側方(フロントタイヤの側方)で渦流が形成され難い。これより、上記態様に係る車両の外装構造では、より確実に空気抵抗の低減を図ることができる。
【0017】
本発明の別態様に係る車両の外装構造は、
フロントホイールハウスとリヤホイールハウスとの間の部分が車幅方向内側に向けて凹入された車両側部と、前記フロントホイールハウスに開口された前方開口部と前記車両側部における前記凹入された部分の前部に開口された側方開口部との間を連通し、前記フロントホイールハウスから前記車両側部の外方へと走行風を導く第1ダクトと、前記リヤホイールハウスに開口された前方開口部と車両後端部に開口された後方開口部とを連通し、前記リヤホイールハウスから前記車両後端部の後方へと走行風を導く1又は複数の第2ダクトと、各々が車両前端部に開口された前方開口部と前記フロントホイールハウスに開口された後方開口部との間を連通し、前記車両前端部の前方から前記フロントホイールハウスへと走行風を導く複数の第3ダクトとを備え、前記複数の第3ダクトは、前記車両前端部における車両高さ方向の上部に前記前方開口部を有するフロント上部ダクトと、前記車両前端部における、前記フロント上部ダクトの前記前方開口部よりも前記車両高さ方向における下部に前記前方開口部を有するフロント下部ダクトと、が含まれ、前記車両高さ方向において、前記第1ダクトにおける前記側方開口部は、前記フロント上部ダクトにおける前記前方開口部と、前記フロント下部ダクトにおける前記前方開口部と、の間の高さ位置に設けられている。
【0018】
上記態様に係る車両の外装構造では、
上記態様と同様の効果を奏するとともに、車両側部に開口された第1ダクトの側方開口部(走行風の導出口)が、車両前端部に開口されたフロント上部ダクトの前方開口部とフロント下部ダクトの前方開口部との間の高さ位置に設けられているので、フロント上部ダクトを通りフロントホイールハウスに導かれた走行風と、フロント下部ダクトを通り導かれた走行風と、の両走行風が第1ダクトの側方開口部から車両側部の外方へと導出され、高い整流効果を得ることができる。
【0019】
本発明の別態様に係る車両の外装構造は、上記態様であって、前記車両側部における前記凹入された部分は、前記フロントホイールハウスの直後の部分から前記リヤホイールハウスの直前の部分に亘り設けられており、前記第2ダクトは、前記リヤホイールハウスにおける前記車両高さ方向の上部に前記前方開口部を有するリヤ上部ダクトと、前記リヤホイールハウスにおける、前記リヤ上部ダクトの前記前方開口部よりも前記車両高さ方向の下部に前記前方開口部を有するリヤ下部ダクトと、を含み、前記車両側部における前記リヤホイールハウスの直前の部分は、前記車両高さ方向における、前記リヤ上部ダクトにおける前記前方開口部と、前記リヤ下部ダクトにおける前記前方開口部との間となる部分が、最も急峻な傾斜角度を以って車幅方向外側に向けて膨出されている。
【0020】
上記態様に係る車両の外装構造では、リヤホイールハウスの直前における最も急峻な傾斜角度を以って車幅方向外側に向けて膨出された部分(膨出部)が、リヤホイールハウスに開口されたリヤ上部ダクトの前方開口部と、リヤホイールハウスに開口されたリヤ下部ダクトの前方開口部と、の間の高さ位置に設けられているので、該最も急峻な傾斜角度を以って膨出された部分がリヤホイールハウスの直前の部分に存在していても、リヤホイールハウスでの走行風の剥離を効果的に抑制することができる。即ち、リヤホイールハウスの直前に位置する膨出部に対して、その直後の部分からリヤホイールハウス内に走行風を引き込むことができ、これにより、走行風の剥離を防ぐことができる。
【0021】
本発明の別態様に係る車両の外装構造は、上記態様であって、前記車両側部における前記リヤホイールハウスの前記直前の部分は、車両前方側から車両後方側に行くに従って車幅方向外側に向けて徐々に膨出するよう形成されている。
【0022】
上記態様に係る車両の外装構造では、車両側部におけるリヤホイールハウスの直前の部分(膨出部)が、車両前方から車両後方へと行くに従って徐々に膨出(滑らかかな曲面で膨出)するようにしているので、空気抵抗となるような段差を有さず、空気抵抗をより低減することができる。
【0023】
本発明の別態様に係る車両の外装構造は、上記態様であって、前記車両高さ方向において、前記第1ダクトにおける前記側方開口部は、前記フロント下部ダクトにおける前記前方開口部と、前記リヤ下部ダクトにおける前記後方開口部と、の間の高さ位置に設けられている。
【0024】
上記態様に係る車両の外装構造では、車両側部に開口された第1ダクトの側方開口部(走行風の導出口)が、車両前端部に開口されたフロント下部ダクトにおける前方開口部と、車両後端部に開口されたリヤ下部ダクトにおける後方開口部と、の間の高さ位置に設けられているので、フロント下部ダクトに取り込まれた走行風が、第1ダクトの側方開口部から車両側部の外方に導出された後に車両側部に沿って流れ、リヤホイールハウスからリヤ下部ダクトを通り車両後端部へと噴出される走行風の流れが、車両高さ方向における流れ方向に変化が生じるのを抑制することができ、空気抵抗の低減を図るのに優位である。
【0025】
本発明の別態様に係る車両の外装構造は、上記態様であって、前記車両側部において、前記第1ダクトの前記側方開口部が開口された部分は、車両高さ方向において、前記車両側部の凹入量が最も大きい部分を含む領域にある。
【0026】
上記態様に係る車両の外装構造では、車両高さ方向においても最も凹入量が大きい部分に第1ダクトの側方開口部(走行風の導出口)を設けているので、車両側部の凹入により走行風が渦を形成するのを抑制することができる。よって、上記態様に係る車両の外装構造では、更なる空気抵抗の低減を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0027】
上記の各態様に係る車両の外装構造では、車両側部が車幅方向内側に向けて凹入された構造を採用しながら、車両の空気抵抗の低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0030】
以下で用いる図面における、「UP」、「LO」、「FR」、「RE」、「LE」、及び「RI」との記載は、運転席に搭乗した運転者が認識する「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左方」、及び「右方」をそれぞれ示す。
【0031】
[実施形態]
1.車両1の全体構成
本実施形態に係る車両1の全体構成について、
図1及び
図2を用い説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、4ドアセダンを一例としている。なお、
図1及び
図2では、車両1の左側部分だけを図示しているが、右側部分も同一構成である。
【0033】
図1に示すように、車両側部1cにおける車両前端部1a寄りの部分には、フロントホイールハウス1dが設けられ、車両後端部1b寄りの部分には、リヤホイールハウス1eが設けられている。フロントホイールハウス1dには、フロントホイール10が収容され、リヤホイールハウス1eには、リヤホイール11が収容されている。
【0034】
車両側部1cには、車幅方向(
図1の紙面に垂直な方向)の内側に向けて凹入された部分(矢印Aで指し示す部分)が設けられている。なお、本実施形態に係る車両1では、フロントホイールハウス1dの直後の部分から、リヤホイールハウス1eの直前の部分に亘り凹入されている。
【0035】
図2に示すように、車両側部1cにおける凹入部分は、フロントホイールハウス1dの直後の箇所P
1から、その後方の箇所P
2に向けて急角度で凹入されている。そして、箇所P
2からリヤホイールハウス1eの直前の箇所P
3に向けての領域は、緩やかな角度を以って車幅方向外側に向けて膨出している。なお、車両側部1cにおいて、リヤホイールハウス1eの直前の箇所P
3の部分は、最も車両外側に向けて指向するように形成されている。
【0036】
図1に戻って、車両側部1cには、フロントホイールハウス1dの直後の部分における下部に、車両前後方向に延びる1条のフィン12が設けられている。
図2に示すように、フィン12は、その一部が車両側部1cの外側に向けてヒレ状に突出している。
【0037】
2.車両前部の構成
車両1の前部の構成について、
図3から
図5を用い説明する。
図3は、車両1におけるフロントホイール10回りの構成を示す模式側面図であり、
図4は、車両前端部1aの一部構成を示す模式正面図であり、
図5は、
図4のV−V断面を示す図であって、フロント上部ダクト14の構成を示す模式断面図である。
【0038】
図3に示すように、車両前端部1aには、前方から後方に向けて凹入するフロント上凹部1fとフロント下凹部1gとが設けられている。
図4に示すように、フロント上凹部1fには、ヘッドランプユニット13が固定されている。フロント上凹部1fには、ヘッドランプユニット13に対して車幅方向内側の部分にフロントウインカー17が設けられている。
【0039】
図3に示すように、車両1には、フロント上凹部1fとフロントホイールハウス1dとを連通するフロント上部ダクト(複数の第3ダクトの1つ)14が設けられている。
図4に示すように、フロント上部ダクト14の前方開口部14aは、フロント上凹部1fにおけるヘッドランプユニット13の周囲におけるフロントウインカー17の上の部分(矢印Cで指し示す部分)に設けられている。
【0040】
図5に示すように、フロント上凹部1fは、フェンダ18とバンパーフェイシャ19との間の間隙を前方側の部分として構成されている。フロント上凹部1fに固定されたヘッドランプユニット13は、光源を含むヘッドランプ本体130と、AFS(Adaptive Front−Lighting System)アクチュエータ131と、コントローラ132と、これらを収容するヘッドランプケース133と、を有している。
【0041】
図5に示すように、フロント上部ダクト14の前方開口部14aは、具体的にヘッドランプケース133の後壁部が開口された部分に構成されている。即ち、フロント上凹部1fに取り込まれた走行風は、ヘッドランプユニット13におけるヘッドランプ本体130、AFSアクチュエータ131、及びコントローラ132の冷却に供された後、前方開口部14aからフロント上部ダクト14に導かれ、後方開口部14bからフロントホイールハウス1dへと導出される。
【0042】
なお、
図5に示すように、フロント上部ダクト14はフェンダーライナ20に設けられた開口部に連結されており、該開口部が後方開口部14bである。
【0043】
図3に戻って、車両1には、フロント下凹部1gとフロントホイールハウス1dとを連通するフロント下部ダクト(複数の第3ダクトの1つ)15も設けられている。
図4に示すように、フロント下部ダクト15の前方開口部15aは、フロント下凹部1gに設けられたフロントグリルの背面側の部分(矢印Dで指し示す部分)に設けられている。
図3に示すように、フロント下部ダクト15も、後方開口部15bがフロントホイールハウス1dに開口されている。
【0044】
なお、
図3に示すように、フロントホイールハウス1dにおいて、フロント上部ダクト14の後方開口部14bは、フロント下部ダクト15の後方開口部15bよりも上方に配されている。
【0045】
図3に示すように、車両1には、フロントホイールハウス1dと車両側部1cに設けられた側方開口部16bとを連通するサイドダクト(第1ダクト)16も設けられている。サイドダクト16の側方開口部16bは、フィン12の前方側部分の周囲を囲むように設けられている。サイドダクト16の前方開口部16aは、フロントホイールハウス1dに開口されている。
【0046】
ここで、
図3及び
図4に示すように、サイドダクト16の側方開口部16bは、車両の高さ方向(車両の上下方向)において、フロント上部ダクト14の前方開口部14aと、フロント下部ダクト15の前方開口部15aと、の間の位置に設けられている。
【0047】
また、
図2及び
図3で示すように、車両1の前後方向において、サイドダクト16の側方開口部16bは、車両側部1cにおける凹入された領域の前方側であって、車両側部1cにおける最も凹入量が大きい箇所P
2及びその近傍を含む領域に設けられている。
【0048】
3.サイドダクト16の側方開口部16bの構成
サイドダクト16の側方開口部16bの構成について、
図6及び
図7を用い説明する。
図6は、
図3のVI−VI断面を示す図であって、サイドダクト16の側方開口部16bの構成を示す模式断面図であり、
図7は、
図1のB部を示す図であって、サイドダクト16の側方開口部16bの構成を示す模式側面図である。
【0049】
図6に示すように、車両側部1cは、上部で滑らかな曲面を以って車両外方に膨出している。箇所P
4から下方の部分は、緩やかな曲面を以って車幅方向内側に向けて凹入している。最も凹入量が大きい箇所は、車両側部1cにおける下部の箇所P
5である。
【0050】
箇所P
5から、その下方の箇所P
6に向けての領域では、再び車両側部1cが滑らかな曲面を以って車幅方向外側に向けて膨出している。
【0051】
図6に示すように、サイドダクト16の側方開口部16bは、箇所P
5及びその周辺領域を含み構成されている。なお、側方開口部16bは、車幅方向の外側を指向するように設けられている。
【0052】
サイドダクト16の側方開口部16bには、車幅方向外側に向けて突出するフィン12が設けられている。フィン12は、サイドダクト16における側方開口部16aを上下で二分するよう設けられている。
【0053】
図7に示すように、フィン12は、車両側部1cにおいて、車両前後方向に沿って延びるよう形成されている。本実施形態では、フィン12は、フロントドアとリヤドアとの間であるドア間部1hを挟み、その後方にも延びるように形成されている。
【0054】
サイドダクト16の側方開口部16bは、ドア間部1hよりも前方側の部分において、フィン12の周囲を囲むように設けられている。このようにサイドダクト16の側方開口部16bを設けることにより、側方開口部16bから導出された走行風がフィン12で整流され、渦流となり難い。
【0055】
4.車両後部の構成
車両1における車両後部の構成について、
図8から
図11を用い説明する。
図8は、リヤホイール11周りの構成を示す模式側面図であり、
図9は、車両後部の構成を示す模式斜視図であり、
図10は、テールランプ21周りの構成を示す模式背面図であり、
図11は、マフラー22周りの構成を示す模式背面図である。
【0056】
図8に示すように、車両後端部1bには、後方から前方に向けて凹入するリヤ上凹部1iとリヤ下凹部1jとが設けられている。
図8及び
図9に示すように、リヤ上凹部1iには、テールランプ21が設けられており、リヤ下凹部1jからは、2本のマフラー22が後方に向けて突出されている。
【0057】
図8に示すように、車両1には、リヤホイールハウス1eとリヤ上凹部1iとを連通するリヤ上部ダクト(第2ダクトの1つ)23が設けられている。
図9及び
図10に示すように、リヤ上部ダクト23の後方開口部23bは、テールランプ21の周囲の部分(
図9の矢印Eで指し示す部分)に設けられている。リヤ上部ダクト23の前方開口部23aは、リヤホイールハウス1eに開口されている。
【0058】
図10に示すように、本実施形態に係る車両1では、テールランプ21は、車両上下方向に並んで配置された2つのランプ本体210を有する。そして、テールランプ21に対して車幅方向内側には、リヤウインカー25が設けられている。リヤ上部ダクト23の後方開口部23bは、テールランプ21の車幅方向外側、即ち、テールランプ21を挟んだリヤウインカー25とは反対側の部分に設けられている。
【0059】
図9に示すように、リヤホイールハウス1eに開口された前方開口部23aから取り込まれた走行風FL
R1は、リヤ上部ダクト23を通り、後方開口部23bから車両後端部1bの後方部分へと導出される。
【0060】
図8に示すように、車両1には、リヤホイールハウス1eとリヤ下凹部1jとを連通するリヤ下部ダクト(第2ダクトの1つ)24も設けられている。
図9及び
図10に示すように、リヤ下部ダクト24の後方開口部24bは、マフラー22が突出された周囲の部分(
図9の矢印Fで指し示す部分)に設けられている。リヤ下部ダクト24の前方開口部24aは、リヤホイールハウス1eに開口されている。
【0061】
ここで、リヤホイールハウス1eにおいて、リヤ上部ダクト23の前方開口部23aは、リヤ下部ダクト24の前方開口部24aよりも上方に配されている。
【0062】
なお、
図8に示すように、リヤホイールハウス1eの直前の部分が、リヤホイールハウス1eの周囲の内で最も急峻な傾斜角度を以って車幅方向外側に向けて膨出されてなる部分である(膨出部1k)。膨出部1kは、車両1の高さ方向において、リヤ上部ダクト23の前方開口部23aの高さ位置と、リヤ下部ダクト24の前方開口部24aの高さ位置と、の間の高さ範囲に設けられている。また、膨出部1kは、車両前方側から車両後方側に向けて徐々に車幅方向外側に膨出されており、滑らかな曲面を以って構成されている。
【0063】
図11に示すように、本実施形態に係る車両1では、2本のマフラー22は、車幅方向に並んで配置されている。そして、リヤ下部ダクト24の後方開口部24bは、2本のマフラー22が突出された部分の周囲に設けられている。
【0064】
図9に示すように、リヤホイールハウス1eに開口された前方開口部24aから取り込まれた走行風FL
R2は、リヤ下部ダクト24を通り、後方開口部24bから車両後端部1bの後方部分へと導出される。
【0065】
なお、
図1、
図3、及び
図8に示したように、本実施形態に係る車両1では、車両1の高さ方向において、サイドダクト16の側方開口部16bは、フロント下部ダクト15の前方開口部15a(
図3を参照。)の高さ位置と、リヤ下部ダクト24の前方開口部24a(
図8を参照。)の高さ位置と、の間の高さ位置に設けられている。
【0066】
5.車両側部1cにおける空気の流れ
車両側部1cにおける空気(走行風)の流れについて、
図12を用い説明する。
図12は、車両前端部1aから車両後端部1bに至る空気の流れを示す模式図である。
【0067】
図12に示すように、車両前端部1aに到達した走行風FL
1は、一部がエンジンルームに取り込まれ、一部が車両側部1c側へと偏向される(走行風FL
2)。さらに、走行風FL
2は、一部がフロント上部ダクト14及びフロント下部ダクト15に取り込まれ、一部がフロントホイールハウス1dの外側を通過する(走行風FL
3)。
【0068】
フロント上部ダクト14に取り込まれた走行風FL
F1とフロント下部ダクト15に取り込まれた走行風FL
F2とは、フロントタイヤハウス1d内に導出される。フロントホイールハウス1d内の走行風は、サイドダクト16に取り込まれ、サイドダクト16に取り込まれた走行風FLF
3は、車両側部1cに開口された側方開口部16bから外方に導出される。
【0069】
ここで、フロントホイールハウス1dには、2本のダクト14,15を通り走行風FL
F1,FL
F2が取り込まれるのに対してフロントホイールハウス1dからは、1本のダクト16を通り走行風FL
F3が車両側部1cの外方に導出されるので、フロントホイールハウス1d内の圧力が外部に比べて高くなる。よって、フロントホイールハウス1dの外側を通過する走行風FL
3がフロントホイールハウス1d内に引き込まれ難い。
【0070】
図12に示すように、サイドダクト16から導出された走行風FL
5は、車両側部1cの外面に沿って後方へと流れる。そして、フロントホイールハウス1dの外側を通って後方へと進んできた走行風FL
4は、車両側部1cの凹入された部分に引き込まれることが抑制され、後方へと流れる。走行風FL
4が両側部1cの凹入された部分に引き込まれることが抑制されるのは、サイドダクト16から導出された走行風FL
5により凹入部分の表面に空気層が形成されるためである。
【0071】
車両側部1cを後方に進んだ走行風FL
4,FL
5は、リヤホイールハウス1eの直前の部分における膨出部1kの表面に沿って車両1の外側に向きを変える(走行風FL
6)。そして、走行風は、リヤホイールハウス1eの外側を通り後方へと流れる(走行風FL
7)。
【0072】
走行風FL
7の一部は、リヤホイールハウス1e内に取り込まれ(走行風FL
R3)、リヤ上部ダクト23及びリヤ下部ダクト24に取り込まれる。リヤ上部ダクト23に取り込まれた走行風FL
R1は、車両後端部1bにおけるテールランプ21周りの後方開口部23bから車両後方に導出される(走行風FL
10)。
【0073】
ここで、走行風FL
6は、車両1の外側に向けた成分を有しているが、リヤホイールハウス1eの前端部分(膨出部1k)で車両1から剥離し難くなっている。これは、走行風FL
7の一部がリヤホイールハウス1e内に取り込まれ、この流れにより走行風FL
7がリヤホイールハウス1e側に引かれ、走行風FL
6が車両1の外側へと剥離するのが抑制される。
【0074】
同様に、リヤ下部ダクト24に取り込まれた走行風FL
R2は、車両後端部1bにおけるマフラー22周りの後方開口部24bから導出される(走行風FL
11)。
【0075】
一方、リヤホイールハウス1eの外側を通り後方に流れた走行風FL
7は、リヤホイールハウス1eの後方における車両側部1cの外面に沿って、車両内方側に向きを変える(走行風FL
8)。そして、走行風FL
8は、車両後端部1bの後方において、車両1の後方へと流れる(走行風FL
9)。
【0076】
ここで、車両1においては、車両後端部1bから走行風FL
10と走行風FL
11とが導出されるようにしているので、走行風FL
9が車両後端部1b側に過度に引き込まれ、渦流となるのが抑制される。
【0077】
なお、
図12では、車両1における左方での走行風の流れだけを示し、これに基づき車両1における左方の走行風の流れを説明したが、車両1の右方についても同様の流れとなる。
【0078】
6.効果
上記実施形態に係る車両1では、サイドダクト(第1ダクト)16を備えるので、車両側部1cに設けられたサイドダクト16の側方開口部16aから走行風FL
5を導出(噴出)させることができ、フロントホイールハウス1dの外側を後方に流れてきた走行風FL
3が車両側部1cにおける凹入された部分に引き込まれることが抑制でき、凹入部分で渦流が発生するのを抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る車両1では、リヤホイールハウス1eから車両後端部1bへと走行風を導くリヤ上部ダクト(複数の第2ダクトの1つ)23及びリヤ下部ダクト(複数の第2ダクトの1つ)24が設けられているので、リヤホイールハウス1eの直前の膨出部1kで走行風FL
6が車両側部1cから外側に向けて剥離するのを抑制することができる。即ち、本実施形態に係る車両1では、リヤ上部ダクト23及びリヤ下部ダクト24を設けたことにより車両側部1cに沿って流れてきた走行風FL
6をリヤホイールハウス1eの側へと引き込むことができ、リヤホイールハウス1eに沿った部分からの走行風FL
7の剥離を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る車両1では、リヤ上部ダクト23及びリヤ下部ダクト24を通った走行風FL
R1,FL
R2を車両後端部1bの後方開口部23b,24bから導出(噴出)させることとしているので、上述のように、車両後端部1bの後方部分における渦流の発生を抑制することができる。
【0081】
従って、本実施形態に係る車両1では、車両側部1cが車幅方向内側に向けて凹入された構造を採用しながら、車両1の空気抵抗の低減を図ることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る車両1では、車両側部1cにおける最も凹入量が大きい箇所P
2及びその近傍を含む領域にサイドダクト16の側方開口部16bを設け、当該側方開口部16bから走行風FL
5を導出(噴出)させることで、効果的に車両側部1cにおける凹入された部分の直ぐ外方での渦流の発生を抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る車両1では、フロント上部ダクト14とフロント下部ダクト15とが設けられているので、フロント上部ダクト14及びフロント下部ダクト15を通りフロントホイールハウス1dに流入する空気(走行風FL
F1,FL
F2)の量が、フロントホイールハウス1dからサイドダクト16へと流出する空気(走行風FL
F3)の量よりも多くなり、フロントホイールハウス1dの内部圧力がフロントホイールハウス1dの外方よりも高くなる。よって、フロントホイールハウス1dに沿ってその外側を流れる走行風FL
3がフロントホイールハウス1dに引き込まれ難く、フロントホイールハウス1dの側方(フロントタイヤ10の側方)で渦流が形成され難い。これより、本実施形態に係る車両1では、より確実に空気抵抗の低減を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態に係る車両1では、車両側部1cに開口されたサイドダクト16の側方開口部16bが、車両前端部1bに開口されたフロント上部ダクト14の前方開口部14aとフロント下部ダクト15の前方開口部15aとの間の高さ位置に設けているので、フロント上部ダクト14を通りフロントホイールハウス1dに導かれた走行風FL
F1と、フロント下部ダクト15を通り導かれた走行風FL
F2と、の両走行風がサイドダクト16の側方開口部16bから車両側部1cの外方に噴出(導出)され、高い整流効果を得ることができる。
【0085】
また、本実施形態に係る車両1では、リヤホイールハウス1eの直前における最も急峻な傾斜角度を以って車幅方向外側に向けて膨出された部分(膨出部1k)が、リヤ上部ダクト23におけるリヤホイールハウス1eに開口された前方開口部23aと、リヤ下部ダクト24におけるリヤホイールハウス1eに開口された前方開口部24aと、の間の高さ位置に設けられているので、上述のように、膨出部1kがリヤホイールハウス1eの直前の部分に存在していても、リヤホイールハウス1eでの走行風FL
6の剥離を効果的に抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る車両1では、膨出部1kを、車両前方から車両後方へと行くに従って徐々に車幅方向外側に膨出させ、滑らかな曲面を以って構成しているので、空気抵抗となるような段差を有さず、空気抵抗をより低減することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る車両1では、上述のように、車両側部1cにおけるサイドダクト16の側方開口部16bが、フロント下部ダクト15におけるフロント下凹部1gに開口された前方開口部15aと、リヤ下部ダクト24におけるリヤホイールハウス1eに開口された前方開口部24aと、の間の高さ位置に設けられているので、フロント下部ダクト15に取り込まれた走行風FL
F2が、サイドダクト16の側方開口部16aから車両側部1cに沿って流れ(走行風FL
5)、リヤホイールハウス1eからリヤ下部ダクト24を通り車両後端部1bへと噴出(導出)される走行風(FL
F2,FL
F3,FL
5,FL
6,FL
R3,FL
R2,FL
11)の流れが、車両高さ方向における流れ方向に変化が生じるのを抑制することができ、空気抵抗の低減を図るのに優位である。
【0088】
また、本実施形態に係る車両1では、車両高さ方向においても最も凹入量が大きい箇所P
5及びその近傍を含む領域にサイドダクト16の側方開口部16aを設けているので、車両側部1cの凹入部分で走行風が渦を形成するのを抑制することができる。よって、本実施形態に係る車両1では、更なる空気抵抗の低減を図ることが可能である。
【0089】
[変形例]
上記実施形態では、車両1の一例として4ドアセダンを採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、2ドアクーペやSUVタイプの車、オープン車などに適用することも可能である。
【0090】
また、上記実施形態では、車両前端部1aからフロントホイールハウス1dまでを連通するダクトとして、フロント上部ダクト14とフロント下部ダクト15の2つのダクトを設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1本のダクトを設けることとしてもよいし、3本以上のダクトを設けることとしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、フロントホイールハウス1dと車両側部1cに開口された側方開口部16bとを連通するダクトとして、1本のサイドダクト16を設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない、例えば、2本以上のダクトを設けることとしてもよい。この場合には、ダクトの各側方開口部を車両の前後方向の同一箇所に設けることとしてもよいし、異なる箇所に設けることとしてもよい。また、車両の高さ方向において、ダクトの各側方開口部を同一箇所に設けることとしてもよいし、異なる箇所に設けることとしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、フロント上部ダクト14の前方開口部14aをヘッドランプユニット13におけるヘッドランプケース133の後壁部を開口することで設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、フロントグリルの直後に設けることとしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、リヤホイールハウス1eと車両後端部1bに開口された後方開口部23b,24bとを連通するダクトとして、リヤ上部ダクト23とリヤ下部ダクト24の2つのダクトを設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1本のダクトを設けることとしてもよいし、3本以上のダクトを設けることとしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、リヤ上部ダクト23の後方開口部23bをテールランプ21周りに設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、車幅方向の中央部分に設けることとしてもよい。
【0095】
同様に、リヤ下部ダクト24の後方開口部24bについても、マフラー22周りに設けることは必須の構成ではない。車両の空力特性に関する設計に応じてリヤバンパ―やその他の部分の各部分に適宜設けることができる。