(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流入管に湾曲部を形成すると、油分離器を設置するスペースが大きくなる。
【0005】
本発明は、流入管に湾曲部を有する油分離器の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、遠心分離式の油分離器であって、筒状の分離器本体(70)と、
圧縮機構(30)から吐出された油を含む流体を前記分離器本体(70)に導入するとともに湾曲部(60)を有する流入管(50)とを備え、
前記湾曲部(60)は、前記分離器本体(70)の軸周り方向に該分離器本体(70)を囲むように湾曲し、且つ分離器本体(70)の内部の旋回流の回転方向と同じ方向に湾曲しており、前記分離器本体(70)の周壁(71)と、前記流入管(50)とは、互いに共有される共有部(C)を有し
、前記共有部(C)は、前記流入管(50)の前記湾曲部(60)に設けられ、前記湾曲部(60)は、前記分離器本体(70)の周壁(71)から径方向外方へ膨出する第2壁(62)と、前記第2壁(62)よりも径方向内方に形成されるとともに前記分離器本体(70)の内部空間(73)に面する前記共有部(C)としての壁(61,66)とを有していることを特徴とする油分離器である。
【0007】
第2の態様は、遠心分離式の油分離器であって、筒状の分離器本体(70)と、油を含む流体を前記分離器本体(70)に導入するとともに湾曲部(60)を有する流入管(50)とを備え、前記湾曲部(60)は、前記分離器本体(70)の軸周り方向に該分離器本体(70)を囲むように湾曲し、且つ分離器本体(70)の内部の旋回流の回転方向と同じ方向に湾曲しており、前記分離器本体(70)の周壁(71)と、前記流入管(50)とは、互いに共有される共有部(C)を有し、前記湾曲部(60)には、油抜き穴(90)が形成されることを特徴とする油分離器である。
【0008】
第1
及び第2の態様では、分離器本体(70)と流入管(50)とが共有部(C)を有するため、油分離器(40)の小型化を図ることができる。
【0009】
第
1の態様では、比較的設置スペースが大きい湾曲部(60)に共有部(C)を設けることで、油分離器(40)を小型化できる。
【0010】
第
2の態様では、湾曲部(60)の油を油抜き穴(90)を通じて湾曲部(60)の外部へ排出できる。
【0011】
第
3の態様は、第
2の態様において、前記油抜き穴(90)と連通する油通路(92)を形成する通路部材(91)を備え、前記通路部材(91)は、前記湾曲部(60)及び前記分離器本体(70)の少なくとも一方と一体構造であることを特徴とする油分離器である。
【0012】
第
3の態様では、通路部材(91)を有する油分離器の小型化を図ることができる。
【0013】
第
4の態様は、第2
又は3の態様において、前記共有部(C)は、前記流入管(50)の前記湾曲部(60)に設けられることを特徴とする油分離器である。
【0014】
第
4の態様では、比較的設置スペースが大きい湾曲部(60)に共有部(C)を設けることで、油分離器(40)を小型化できる。
【0015】
第
5の態様は、第
2乃至
4の態様のいずれか1つにおいて、前記湾曲部(60)は、前記分離器本体(70)の周壁(71)から径方向外方へ膨出する第2壁(62)を含んでいることを特徴とする油分離器である。
【0016】
第1及び5の態様では、湾曲部(60)が外部に露出する表面積が大きくなる。
【0017】
第
6の態様は、第
1乃至5の態様のいずれか1つにおいて、前記湾曲部(60)は、前記分離器本体(70)の周壁(71)と略面一に形成される、前記共有部(C)としての第1壁(61)を含んでいることを特徴とする油分離器である。
【0018】
第
6の態様では、分離器本体(70)の周壁(71)の形状の簡素化が図られる。
【0019】
第
7の態様は、第
6の態様において、前記第1壁(61)の内面(61a)の前記流入管(50)における軸直角断面の形状は、平坦であることを特徴とする油分離器である。
【0020】
第
7の態様では、湾曲部(60)の通路断面積を稼ぐことができるので、湾曲部(60)の配管径(直径)を小さくできる。
【0021】
第
8の態様は、第
1乃至
5の態様のいずれか1つにおいて、前記湾曲部(60)は、前記分離器本体(70)の周壁(71)から径方向内方へ膨出する第3壁(66)を含んでいることを特徴とする油分離器である。
【0022】
第
8の態様では、湾曲部(60)の一部が分離器本体(70)の内部に位置するため、湾曲部(60)の全体としての径方向のサイズを小さくできる。
【0023】
第
9の態様は、第
1乃至
8の態様のいずれか1つにおいて、前記流入管(50)の流入口(51a)の軸線L1は、前記分離器本体(70)の外周面の接線L2よりも該分離器本体(70)の中心に向かってずれていることを特徴とする油分離器である。
【0024】
第
9の態様では、油分離器(40)の全体のサイズを小さくできるとともに、湾曲部(60)の全長を長くできる。
【0025】
第
10の態様は、第1乃至
9の態様のいずれか1つにおいて、前記分離器本体(70)と前記流入管(50)は、鋳物からなる一体構造であることを特徴とする油分離器である。
【0026】
第
10の態様では、共有部(C)を有する一体構造を容易に成形できる。
【0027】
第
11の態様は、第1乃至
10の態様のいずれか1つにおいて、前記前記湾曲部(60)は、径方向外方に向かうにつれて先細な形状の内面(61a)を有していることを特徴とする油分離器である。
【0028】
第
11の態様では、遠心力を利用して分離した油を、湾曲部(60)の先細な内面(61a)において捕集することができる。
【0029】
第12の態様は、流体を圧縮する圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)から吐出された流体を対象とする、第1乃至11の態様のいずれか1つに記載の油分離器(40)とを備えていることを特徴とする圧縮機である。
【0030】
第12の態様では、油分離器(40)を有する圧縮機を小型化できる。
【0031】
第13の態様は、第12の態様において、前記圧縮機構(30)を収容するケーシング(11)を備え、前記油分離器(40)が、前記ケーシング(11)の一部を構成していることを特徴とする圧縮機である。
【0032】
第13の態様では、圧縮機の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0035】
《実施形態》
実施形態に係る油分離器(40)は、圧縮機(10)に兼用されている。圧縮機(10)は、冷凍装置の冷媒回路に接続される。冷媒回路では、圧縮機(10)で圧縮された冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。
【0036】
図1に示す圧縮機(10)は、シングルスクリュー圧縮機である。圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、該ケーシング(11)内の電動機(20)、駆動軸(23)、及び圧縮機構(30)を備えている。圧縮機(10)は、油分離器(40)を有している。油分離器(40)は、ケーシング(11)の一部として兼用されている。
【0037】
〈ケーシング〉
ケーシング(11)は、金属製の横長の半密閉容器で構成される。ケーシング(11)は、ケーシング本体(12)、吸入カバー(13)、及び吐出カバー(41)を備えている。ケーシング本体(12)は、横長の筒状に形成される。吸入カバー(13)は、ケーシング本体(12)の長手方向(軸方向)の一端の開口を閉塞する。吐出カバー(41)は、本体の長手方向の他端の開口を閉塞する。ケーシング(11)の内部には、吸入カバー(13)寄りに低圧空間(L)が形成され、吐出カバー(41)寄りに高圧空間(H)が形成される。
【0038】
吸入カバー(13)の上部には、吸入口(13a)が形成される。吸入口(13a)には、吸入管(図示省略)が接続される。吸入管は、冷媒回路に接続される。吸入管からは、ケーシング(11)内の低圧空間(L)に低圧の冷媒が導入される。吐出カバー(41)は、油分離器(40)に兼用される。吐出カバー(41)の詳細は後述する。
【0039】
〈電動機〉
電動機(20)は、低圧空間(L)に配置される。電動機(20)は、ケーシング本体(12)に固定されるステータ(21)と、該ステータ(21)の内部に配置されるロータ(22)とを備えている。ロータ(22)の中心部には駆動軸(23)が固定される。電動機(20)は、回転数ないし容量が可変に構成される。つまり、電動機(20)は、インバータ装置を介して電力が供給されるインバータ式である。
【0040】
〈駆動軸〉
駆動軸(23)は、電動機(20)及び圧縮機構(30)に連結している。駆動軸(23)は、ケーシング(11)の長手方向に沿って水平に延びている。駆動軸(23)は、第1軸受け(24)と第2軸受け(25)とに回転可能に支持される。第1軸受け(24)は、吸入カバー(13)の内部に配置される。第2軸受け(25)は、軸受け室(26)に配置される。軸受け室(26)は、ケーシング本体(12)の内部中央に設けられる。
【0041】
〈圧縮機構〉
圧縮機構(30)は、駆動軸(23)を介して電動機(20)に駆動される。圧縮機構(30)では、冷媒が圧縮される。圧縮機構(30)は、シリンダ部(31)、スクリューロータ(32)、及び2つのゲートロータ(図示省略)を備えている。シリンダ部(31)は、ケーシング本体(12)の内部中央に設けられる。シリンダ部(31)の内部には、アンロード動作(圧縮した冷媒の一部を低圧空間(L)に戻す動作)を行うためのスライドバルブ(図示省略)が設けられる。スクリューロータ(32)は、シリンダ部(31)の内部に収容されている。スクリューロータ(32)は、駆動軸(23)によって回転駆動される。スクリューロータ(32)の周囲には螺旋溝(33)が形成される。螺旋溝(33)には、ゲートロータの複数のゲートが歯合する。これにより、シリンダ部(31)、スクリューロータ(32)、及びゲートの間に、圧縮室(35)が形成される。圧縮室(35)で圧縮された冷媒は、吐出ポート(36)からシリンダ部(31)の周囲の吐出通路(37)に吐出される。
【0042】
〈隔壁〉
圧縮機構(30)と高圧空間(H)の間には、円板状の仕切部(15)が形成される。仕切部(15)の外周面は、ケーシング本体(12)の内周面に固定される。仕切部(15)には、吐出通路(37)と高圧空間(H)とを連通させる吐出連通穴(16)が形成される。吐出通路(37)の冷媒は、吐出連通穴(16)を通過して高圧空間(H)に送られる。
【0043】
仕切部(15)には、油導入路(17)が形成される。油導入路(17)は、高圧空間(H)の下部の第1油溜まり(18)と、軸受け室(26)とを連通させる。
【0044】
〈油分離器の全体構成〉
次いで油分離器(40)の構成について、
図1〜
図8を参照しながら詳細に説明する。油分離器(40)は、高圧空間(H)の冷媒中から油を分離する。油分離器(40)は、遠心力を利用して油を分離する遠心分離式である。厳密にいうと、油分離器(40)は、外筒(71)と内筒(82)との間の旋回流によって冷媒中の油を分離する、サイクロン式である。
【0045】
油分離器(40)は、吐出カバー(41)と、流入管(50)と、分離器本体(70)と、内部材(80)とを備えている。吐出カバー(41)は、上述したケーシング(11)の一部を兼用している。流入管(50)は、高圧空間(H)の高圧冷媒を分離器本体(70)に導入する。分離器本体(70)は、有底筒状に形成される。分離器本体(70)の周壁は、外筒(71)を構成している。内部材(80)は、分離器本体(70)の上部に取り付けられる。内部材(80)は、分離器本体(70)の上側を閉塞する天板(81)と、分離器本体(70)の内部に配置される内筒(82)とを有している。
【0046】
〈吐出カバー〉
図2及び
図3に示すように、吐出カバー(41)は、吐出カバー本体(42)と、フランジ(43)とを備えている。吐出カバー本体(42)は、角形筒状に形成される。吐出カバー本体(42)には、ケーシング本体(12)を向く側面にカバー開口(44)が形成される。吐出カバー本体(42)の内部には、油を分離するための第1内部空間(45)が形成される。第1内部空間(45)は、高圧空間(H)の一部を構成している。つまり、第1内部空間(45)は、第1油溜まり(18)の一部を構成している。
【0047】
フランジ(43)は、カバー開口(44)の外縁から径方向外方へ張り出している。フランジ(43)は、矩形枠状に形成される。フランジ(43)は、締結部材(図示省略)を介してケーシング本体(12)に連結される。これにより、ケーシング本体(12)が吐出カバー(41)によって閉塞され、一体的なケーシング(11)が構成される。
【0048】
〈流入管〉
流入管(50)は、分離器本体(70)の上部に設けられる。より厳密には、流入管(50)の高さ位置は、内筒(82)の下端よりも高い(
図4を参照)。流入管(50)は、直線部(51)と湾曲部(60)とを含んでいる。直線部(51)は、流入管(50)の上流側に形成され、湾曲部(60)は流入管(50)の下流側に形成される。
【0049】
図3に示すように、直線部(51)は、吐出カバー本体(42)の内部に位置している。直線部(51)は、ケーシング(11)の軸心に沿うように水平に延びている。直線部(51)の流入端(即ち、流入管(50)の流入口(51a))は高圧空間(H)に面している。流入口(51a)は、フランジ(43)の端面と略面一に形成される。
【0050】
湾曲部(60)は、流入管(50)に流入した冷媒中の油を遠心力によって分離する機能を有する。本実施形態の湾曲部(60)は、分離器本体(70)の外部に形成される。湾曲部(60)の始端は、直線部(51)と連続している。湾曲部(60)は、分離器本体(70)の軸周り方向に湾曲している。より厳密には、湾曲部(60)は、その上流部から下流部に向かって、分離器本体(70)の内部の旋回流の回転方向と同じ方向に湾曲している。湾曲部(60)は、分離器本体(70)の外筒(71)に沿うように、あるいは該外筒(71)を囲むように湾曲している。湾曲部(60)は、分離器本体(70)の外筒(71)を囲むように湾曲している。
【0051】
図5に示すように、湾曲部(60)の流出端(60a)は、分離器本体(70)の第2内部空間(73)に開口している。湾曲部(60)の流出端(60a)は、外筒(71)の内周面の接線に沿った方向を向いている。
【0052】
図5に示すように、流入管(50)の流入口(51a)の軸線(L1)は、分離器本体(70)の外筒(71)の外周面の接線(L2)よりも、分離器本体(70)の中心(P)に向かって
ずれている。
【0053】
〈分離器本体〉
分離器本体(70)は、冷媒の旋回流により生じる遠心力を利用して、冷媒中の油を分離する。分離器本体(70)は、上側が開放する縦長の有底円筒状の容器である。分離器本体(70)は、上述した外筒(71)と、該外筒(71)の下側を閉塞する円板状の底板(72)(底部)とを有する。分離器本体(70)の内部には、第2内部空間(73)が形成される。第2内部空間(73)の下部には、分離された油が貯留される第2油溜まり(74)が形成される。
【0054】
外筒(71)の下端部には、油排出口(75)が形成される。油排出口(75)は、第2内部空間(73)(第2油溜まり(74))と、第1内部空間(第1油溜まり(18))とを連通させる。これにより、第2油溜まり(74)の油を、油排出口(75)を介して第1油溜まり(18)へ送ることができる。
【0055】
〈内部材〉
内部材(80)は、上述した天板(81)及び内筒(82)を有している。
【0056】
天板(81)は、円形開口(83)が板厚方向(鉛直方向)に貫通する円板状に形成される。天板(81)の外径は、分離器本体(70)の内径よりも大きい。天板(81)の外周縁部は、分離器本体(70)の上端に固定される。天板(81)の円形開口(83)には、冷媒回路の冷媒配管(吐出管)が接続される。
【0057】
内筒(82)は、天板(81)の円形開口(83)の内縁から下方に延びる円筒状に形成される。内筒(82)は、外筒(71)と同軸上に配置される。これにより、内筒(82)と外筒(71)との間には、冷媒が軸周り(
図5の矢印Xで示す方向)に旋回する円筒状の空間が形成される。内筒(82)の内部には、冷媒が上方に流れる内部通路(84)が形成される。内部通路(84)の流入端(下端)には、第2内部空間(73)に連通する流入口(内筒流入口(85))が形成される。内部通路(84)の流出端(上端)は、円形開口(83)に連通する。
【0058】
〈湾曲部の詳細〉
流入管(50)の湾曲部(60)の詳細な構成について説明する。
【0059】
図5及び
図6に示すように、湾曲部(60)は、第1壁(61)と第2壁(62)とを有する。第1壁(61)が内側寄り(分離器本体(70)寄り)に位置し、第2壁(62)が外側寄りに位置している。
【0060】
第1壁(61)は、分離器本体(70)の外筒(71)と略面一に形成される。第1壁(61)、及びその内面(61a)は、流入管(50)の軸直角断面視において、上下に延びる平坦形状である。第1壁(61)は、分離器本体(70)の軸直角断面視において、略円弧状である。第1壁(61)は、分離器本体(70)の軸心を基準とした場合に、約180°以上の範囲に亘って形成される。
【0061】
第1壁(61)は、外筒(71)の一部として兼用されている。つまり、分離器本体(70)の周壁(外筒(71))と湾曲部(60)の第1壁(61)とが、共有部(C)を構成している。換言すると、第1壁(61)は、湾曲部(60)内の通路(63)と、分離器本体(70)の内部空間(第2内部空間(73))との間の隔壁を構成している。
【0062】
第2壁(62)は、外筒(71)ないし第1壁(61)から径方向外方へ膨出している。第2壁(62)は、流入管(50)の軸直角断面視において、外筒(71)側に開口するU字形状である。第2壁(62)は、分離器本体(70)の軸直角断面視において、略円弧状である。第2壁(62)は、分離器本体(70)の軸心を基準とした場合に、約180°以上の範囲に亘って形成される。
【0063】
第2壁(62)は、分離器本体(70)と共有されない非共有部である。第2壁(62)は、分離器本体(70)の外部に位置している。従って、第2壁(62)は、外部(大気温度雰囲気)に露出される露出部を構成している。
【0064】
図5に示すように、第2壁(62)の内面と外筒(71)の内面とは、滑らかに連続している。つまり、分離器本体(70)の軸直角な断面形状において、第2壁(62)と外筒(71)とは、滑らかに連続する渦巻き状の内壁を構成している。この渦巻き状の内壁は、その外端から内端へ向かって、冷媒の旋回流と同じ方向に巻かれている。
【0065】
〈油抜き穴〉
図7に示すように、湾曲部(60)には、その内部の通路(63)に溜まった油を湾曲部(60)の外部へ排出するための油抜き穴(90)が形成される。油抜き穴(90)の流路断面の形状は、例えば円形に形成される。油抜き穴(90)は、湾曲部(60)の外周側部分(64)に形成される。ここで、外周側部分(64)は、湾曲部(60)の管壁のうち分離器本体(70)の軸心を向く部分である。また、同図に示すように、油抜き穴(90)は、湾曲部(60)の下側部分(65)に形成される。ここで、下側部分(65)は、湾曲部(60)の管壁のうち、湾曲部(60)内の通路(63)の軸心(上下方向の中間の高さ位置)よりも低い部分である。油抜き穴(90)は、湾曲部(60)のうち下流端寄りに設けられる。油抜き穴(90)は、湾曲部(60)の内周面の曲率中心を向くように法線方向に開口している。本実施形態の油抜き穴(90)は1つであるが2つ以上であってもよい。
【0066】
〈連通部材〉
図2及び
図7に示すように、通路部材(91)は、油抜き穴(90)に対応する位置に設けられる。通路部材(91)は、縦長の直方体、ないし平板状に形成される。通路部材(91)の内部には、油抜き穴(90)と繋がる油通路(92)が形成される。油通路(92)は、湾曲部(60)の油抜き穴(90)と、分離器本体(70)の第2内部空間(第2油溜まり(74))とを連通させる。油通路(92)は、縦長の縦通路(92a)と、縦通路(92a)の下端に接続する横長の横通路(92b)と、横通路(92b)の径方向内端に接続する流出通路(92c)とを含んでいる。
図8に示すように、油通路(92)の流出開口(93)は、分離器本体(70)の外筒(71)に形成される。より具体的には、油通路(92)の流出開口(93)は、内筒流入口(85)より下側で、且つ該内筒流入口(85)よりも外周側に位置している。油通路(92)の流出開口(93)の軸線(L3)は、外筒(71)の内周面(71a)の接線(L4)に沿った方向を向いている。つまり、本実施形態では、流出開口(93)の軸線(L3)が、外筒(71)の内周面(71a)の接線(L4)(厳密には、流出開口(93)が形成される箇所の接線)と概ね一致している。
【0067】
〈油分離器の一体構造〉
油分離器(40)は、吐出カバー(41)、流入管(50)、分離器本体(70)、及び通路部材(91)が、鋳造によって一体成型される。つまり、吐出カバー(41)、流入管(50)、分離器本体(70)、及び通路部材(91)は、鋳物からなる一体構造の第1ユニットを構成している。一方、内部材(80)は、第1ユニットと別部材の第2ユニットで構成される。
【0068】
−油分離器の動作−
図1に示すように、圧縮機(10)の運転時には、圧縮室(35)で圧縮された後の冷媒が、高圧空間(H)から流入管(50)に流入する。この冷媒は、直線部(51)を通過した後、湾曲部(60)を流れる。湾曲部(60)では、冷媒が湾曲部(60)に沿って旋回する。これにより、冷媒中の小さな油滴が遠心力によって分離される。
【0069】
ここで、
図4及び
図6に示すように、湾曲部(60)では、第1壁(61)が分離器本体(70)の第2内部空間(73)に面するのに対し、第2壁(62)は分離器本体(70)の外部に露出している。また、第2内部空間(73)には高温の冷媒が流れるのに対し、分離器本体(70)の外部は大気温度雰囲気である。このため、第2壁(62)は第1壁(61)よりも低い温度になる。このため、比較的高温の第1壁(61)の近傍の油滴は流動し易くなり、遠心力によって第2壁(62)側に移動し易くなる。一方、比較的低温の第2壁(62)の近傍の油は、冷却されて流動しにくくなる。このため、湾曲部(60)では、第2壁(62)ないし外周側部分(64)において、油が捕集され易くなり、捕集された油滴のサイズも大きくなり易い。
【0070】
このようにして湾曲部(60)で油滴のサイズが大きくなった油は、冷媒とともに分離器本体(70)に流入する。分離器本体(70)では、第2内部空間(73)において冷媒が旋回する。この結果、冷媒中の油滴が遠心力によって更に分離される。ここで、冷媒中の油滴は、上述した湾曲部(60)を通過する際にサイズが大きくなっている。この結果、油滴に作用する遠心力が増大し、油の分離効率が向上する。
【0071】
第2内部空間(73)で分離された油は、第2油溜まり(74)に貯留される。油が分離された後の冷媒は、内部通路(84)を上方へ流れ、吐出管を介して冷媒回路へ送られる。
【0072】
上述した湾曲部(60)には、油抜き穴(90)が形成されている。このため、湾曲部(60)で分離された油の一部を油抜き穴(90)及び油通路(92)を介して直接的に第2油溜まり(74)に送ることがでる。
【0073】
油抜き穴(90)は、湾曲部(60)の外周側部分(64)に形成される。ここで、外周側部分(64)には、遠心力によって移動した油滴が溜まり易い。このため、外周側部分(64)の内壁に捕集した油を油抜き穴(90)に導き易くなる。
【0074】
油抜き穴(90)は、湾曲部(60)の下側部分(65)に形成される。このため、自重により下側部分(65)の内壁に溜まった油を油抜き穴(90)に導き易くなる。
【0075】
油通路(92)の流出開口(93)は、外筒(71)に形成される。このため、この流出開口(93)と、内部通路(84)の流入端との距離を十分に確保できる。また、
図8に示すように、流出開口(93)(軸線(L3))は、外筒(71)の接線(L4)方向を向くように開口するため、流出開口(93)から流出した油は、外筒(71)の内周面に沿うように、第2内部空間(73)へ流入する。この結果、油通路(92)から第2内部空間(73)に流入した油が、内部通路(84)へ向かう冷媒の流れにのって、該冷媒とともに吐出管へ送られることを回避できる。
【0076】
第2油溜まり(74)の油は、油排出口(75)を介して第1油溜まり(18)へ送られる。第1油溜まり(18)の油は、油導入路(17)を経由して軸受け室(26)に送られる。この軸受け室(26)の油により、第2軸受け(25)の摺動部の潤滑が行われる。なお、軸受け室(26)の油は、所定の通路(図示省略)を経由して、圧縮機構(30)や第1軸受け(24)の摺動部にも供給される。
【0077】
−実施形態の作用/効果−
本形態では、分離器本体(70)の外筒(71)(周壁)及び流入管(50)が、互いに共有される第1壁(61)(共有部(C))を有している。これにより、共有部を有しない構成と比べて、油分離器(40)の小型化を図ることができる。
【0078】
本形態では、湾曲部(60)と外筒(71)とを共有させることで、油分離器(40)を径方向内方へと小型化できる。
【0079】
本形態では、第1壁(61)は分離器本体(70)の第2内部空間(73)に面するため、湾曲部(60)では、分離器本体(70)側の方が高温となり易い。このような温度分布を利用することで、湾曲部(60)の第2壁(62)、あるいは外周側部分(64)に油滴を捕集でき、油の凝集を促すことができる。
【0080】
本形態では、第1壁(61)は、分離器本体(70)の外筒(71)(非共有部)と略面一に形成される。このため、外筒(71)の形状の簡素化を図ることができ、外筒(71)を含む第1ユニットの成形が容易になる。加えて鋳造の成形型も簡素化できる。
【0081】
本形態では、第1壁(61)の内面(61a)の軸直角断面の形状は、平坦である。このため、湾曲部(60)の通路(63)の断面積を稼ぐことができる。従って、湾曲部(60)の外径(配管径)を小さくでき、油分離器(40)の小型化を図ることができる。
【0082】
本形態では、湾曲部(60)は、前記分離器本体(70)の周壁(71)から径方向外方へ膨出する第2壁(62)を含んでいる。これにより、分離器本体(70)の外部(大気)に曝される第2壁(62)の表面積が大きくなる。従って、第2壁(62)側での油の冷却が促されることにより、第2壁(62)の内面に油が捕集され易くなる。
【0083】
本形態では、流入管(50)の流入口(51a)の軸線(L1)は、前記分離器本体(70)の外周面の接線(L2)よりも該分離器本体(70)の軸心(中心(P))に向かって
ずれている。この構成により、流入管(50)の流入口(51a)の位置が、分離器本体(70)の径方向の両端よりも中心(P)寄りに位置する。従って、流入管(50)の設置スペースを小さくできるとともに、吐出カバー(41)の幅を短くできる。加えてこの構成により、湾曲部(60)の全長を長くできる。この結果、湾曲部(60)での油の分離効率を向上できる。
【0084】
本形態では、分離器本体(70)と流入管(50)は、鋳物からなる一体構造であるため、これらを容易に成形しつつ第1壁(61)(共有部(C))を得ることができる。加えて鋳物は、振動の減衰効果が比較的高いため、流入管(50)における振動及び騒音の発生を抑制できる。
【0085】
特に本形態では、分離器本体(70)、流入管(50)、及び吐出カバー(41)を一体構造とすることで油分離器(40)の小型化できるととも、振動や騒音の発生を抑制できる。
【0086】
本形態では、湾曲部(60)には、油抜き穴(90)が形成されるため、湾曲部(60)で分離した油を、湾曲部(60)の外部へ排出できる。ここで、湾曲部(60)では、油に作用する遠心力を利用して、油を油抜き穴(90)へ送ることができる。このため、油を搬送する搬送源や差圧などを利用せずとも、油を搬送できる。
【0087】
特に本形態では、油抜き穴(90)から排出した油を分離器本体(70)の第2油溜まり(74)に送るため、油通路(92)や通路部材(91)を短くできるとともに、この油が吐出管に流出することも抑制できる。
【0088】
本形態では、分離器本体(70)、流入管(50)、及び通路部材(91)を一体構造とすることで、油分離器(40)の小型化を図ることができる。
【0089】
本形態では、油分離器(40)が、ケーシング(11)の一部を構成している。このため、圧縮機(10)の小型化を図ることができる。
【0090】
《実施形態の変形例》
上記実施形態については、次のような変形例の構成としてもよい。
【0091】
〈変形例1〉
図9に示す変形例1は、上記実施形態と湾曲部(60)の構成が異なる。変形例1の湾曲部(60)は、第2壁(62)を有さず、外筒(71)、ないし共有部(C)である第1壁(61)から径方向内方へ膨出する第3壁(66)を有する。
【0092】
本形態では、湾曲部(60)の一部が外筒(71)よりも分離器本体(70)の中心寄りに位置する。このため、分離器本体(70)に対して湾曲部(60)が径方向外方へ張り出さないため、油分離器(40)の径方向のサイズを小型化できる。
【0093】
〈変形例2〉
図10に示す変形例2は、上記実施形態と湾曲部(60)の構成が異なる。変形例2の湾曲部(60)は、第1壁(61)を有さず、外筒(71)から第2壁(62)が径方向外方へ膨出し、且つ外筒(71)から第3壁(66)が径方向内方へ膨出している。変形例2では、第2壁(62)及び第3壁(66)の一方、もしくは両方が、湾曲部(60)と外筒(71)の共有部(C)とみなすことができる。
【0094】
〈変形例3〉
図11に示す変形例3は、上記実施形態と第2壁(62)の形状が異なる。変形例3の第2壁(62)の内面(62a)は、軸直角断面視において、径方向外方へ向かうにつれて先細な形状をしている。具体的に、変形例3の湾曲部(60)は、多角形(本例では5角形)の断面形状を有する。第2壁(62)では、外側寄りの2つの面(62b,62b)の間隔が径方向外方に向かうにつれて狭くなっている。これにより、第2壁(62)では、径方向外方の先端に油を捕捉する溝(67)が形成される。
【0095】
変形例3の湾曲部(60)では、遠心力によって径方向外方へ移動した油滴が、第2壁(62)の溝(67)に入り込み凝集していく。この結果、油の分離効率を向上できる。
【0096】
なお、変形例3の湾曲部(60)の溝(67)に上述した油抜き穴(90)を形成してもよい。これにより、溝(67)を流れる油を、油抜き穴(90)に流入させることができる。
【0097】
〈変形例4〉
図12に示す変形例4の湾曲部(60)は、三角形の断面形状を有している。変形例3と同様にして、湾曲部(60)の第2壁(62)の内面(61a)は、軸直角断面視において、径方向外方へ向かうにつれて先細な形状をしている。第2壁(62)では、外側寄りの2つの面(62b,62b)の間隔が径方向外方に向かうにつれて狭くなっている。これにより、第2壁(62)では、径方向外方の先端に油を捕捉する溝(67)が形成される。
【0098】
なお、変形例4の湾曲部(60)の溝(67)に上述した油抜き穴(90)を形成してもよい。これにより、溝(67)を流れる油を、油抜き穴(90)に流入させることができる。
【0099】
〈変形例5〉
図13に示す変形例5は、油分離器(40)の構造が上記実施形態と異なる。変形例5の油分離器(40)は、圧縮機(10)のケーシング(11)に兼用される吐出カバー(41)を有していない。油分離器(40)の流入管(50)の始端には、他の配管と接続可能な配管用フランジ(52)が形成される。配管用フランジ(52)は、圧縮機構(30)から吐出された冷媒が流出する流出管(図示省略)に連結される。
【0100】
変形例5の分離器本体(70)には、上記実施形態と同様、油排出口(75)が形成される。油排出口(75)は、油を所定の供給先へ送るための配管が直に接続される。
【0101】
〈変形例6〉
図14に示す変形例6は、分離器本体(70)の内部に分離板(76)が設けられる。分離板(76)は、下方に向かって内径が小さくなる略円錐台の筒状に形成される。分離板(76)の上端は、外筒(71)に支持される。分離板(76)の下端には、円形の開口が形成される。分離板(76)は、第2油溜まり(74)の油が内筒(82)の内部へ流入してしまうことを抑制する。
【0102】
油通路(92)の流出開口(93)は、分離板(76)の下側に位置する。これにより、流出開口(93)から流出した油が、内筒(82)の内部に流入してしまうことを抑制できる。
【0103】
〈変形例7〉
図15に示す変形例7では、油分離器(40)が圧縮機(10)のケーシング(11)の内部に収容される。油分離器(40)は、ケーシング(11)の吐出カバー(14)の内部に収容される。吐出カバー(14)は、油分離器(40)と別体に構成され、上述したケーシング本体(11)の高圧側の開口部を閉塞している。吐出カバー(14)の内部には、高圧冷媒で満たされる高圧空間(H)が形成される。吐出カバー(14)の下側には、油溜まり(14a)が形成される。
【0104】
油分離器(40)は、油溜まり(14a)の上側において、例えば支持部材(15)によって支持される。圧縮機構(30)で圧縮された高圧の冷媒は、上述した各形態と同様、流入管(50)の湾曲部(60)を流れた後、分離器本体(70)に流入する。分離器本体(70)の内部の流体は、吐出管(85)を介して冷媒回路へ送られる。
【0105】
変形例7では、上記実施形態と同様、湾曲部(60)に油抜き穴(90)が形成される。油抜き穴(90)は、湾曲部(60)の内部と、湾曲部(60)の外部とを直に連通させている。このため、湾曲部(60)の油抜き穴(90)を流出した油は、自重によって下方へ落ち、直接的に油溜まり(14a)に回収される。油溜まり(14a)の油は、上記実施形態と同様、所定の油導入路を経由して、圧縮機構(30)や軸受け(24,25)の潤滑に利用される。なお、湾曲部(60)の油抜き穴(90)は、上述した各形態の構成のいずれを採用してもよい。
【0106】
《その他の実施形態》
図16に示すように、油通路(92)の流出開口(93)の軸線(L3)は、外筒(71)の内周面(71a)の接線(L4)と一致してなくてもよい。具体的には、流出開口(93)は、接線(L4)に沿う方向に開口する一方、軸線(L3)が接線(L4)よりも中心(P)側に
ずれていてもよい。また、流出開口(93)は、中心(P)を向くように法線方向に向かって開口していてもよい。
【0107】
油分離器(40)は、流入管(50)の直線部(51)と、分離器本体(70)とが互いに共有される共有部(C)を有していてもよい。この構成においても、分離器本体(70)と流入管(50)の一部が兼用されるため、油分離器(40)の小型化を図ることができる。
【0108】
油分離器(40)は、分離器本体(70)の内部で遠心力を利用して油を分離する遠心式であれば、如何なる構成であってもよく、内筒(82)を有さなくてもよい。
【0109】
第2油溜まり(74)に回収した油を直接的に軸受け室(26)に送ってもよいし、軸受け室(26)を経由せずに、圧縮機構(30)などの摺動部へ供給してもよい。第2油溜まり(74)の油を圧縮室(35)の圧縮途中(中間圧部分)に戻してもよい。
【0110】
同様に、油抜き穴(90)から抜いた油を直接的に軸受け室(26)に送ってもよいし、軸受け室(26)を経由せずに、圧縮機構(30)などの摺動部へ供給してもよい。油抜き穴(90)から抜いた油を圧縮室(35)の圧縮途中(中間圧部分)に戻してもよい。
【0111】
圧縮機(10)は、2つのスクリューを有するツインスクリュー圧縮機であってもよいし、1つのゲートロータを有する1ゲート型のシングルスクリュー圧縮機であってもよい。
【0112】
圧縮機(10)は、スクリュー式以外にも、ロータリ式、スイング式、スクロール式、ターボ式等の他の方式を採用できる。
【0113】
冷凍装置は、室内の空調を行う空気調和装置、庫内の空気を冷却する冷却器、ヒートポンプ式の給湯器等であってもよい。
【0114】
油分離器(40)は、流体から油を分離する用途であれば、圧縮機(10)や冷凍装置以外の装置に適用してもよい。