【実施例】
【0015】
まず、本発明に係る空気調和機1の概略構成について説明する。
図1に示すように、空気調和機1は、室内に配置され横長の略直方体形状を有する室内機20と、屋外に配置され室内機20と2本の冷媒配管40で接続される室外機30を有している。空気調和機1が運転を開始すると、冷媒配管40を介して室内機20と室外機30の間で冷媒が循環し、室内機20において室内空気が冷媒により加熱あるいは冷却される。これにより、室内の暖房あるいは冷房が行われる。
【0016】
室内機20の内部には、室内機制御部21と通信アダプタ50が格納されている。室内機制御部21は、室内機20に備えられている送風ファンの回転数や、吹出口に備えられる風向板の動作を制御する。また、室内機制御部21は、室内機20が設置された部屋の温度を使用者が要求する設定温度とするために必要な能力を、室外機30に要求する。
【0017】
通信アダプタ50は、操作端末60で室内機20の操作をする際に、室内機20と操作端末60の通信を仲介する。ここで、操作端末60は、室内機20専用の図示しないリモコンとは別のものであり、使用者が所有するスマートフォンやタブレット端末等、通信アダプタ50を介して室内機20と通信が行えるものである。尚、操作端末60には、室内機20を操作するための専用のアプリケーションプログラムがインストールされている。
【0018】
図2に示すように、通信アダプタ50は、制御部51と、記憶部52と、操作端末通信部53と、室内機通信部54と、外部通信部53を有する。尚、通信アダプタ50の制御部51と室内機20の室内機制御部21とで、本発明の制御手段が構成される。
【0019】
記憶部52は、例えばフラッシュメモリで構成されており、通信プログラム52aと更新制御プログラム52bが予め記憶されている。通信プログラム52aは、操作端末60から出力された運転情報に関わるデータを、室内機制御部21で認識できるデータに変換する際に使用されるプログラムである。ここで、運転情報とは、運転開始/停止、運転モード(冷房/暖房/送風、等)の切り替え、設定温度や風量、風向の変更・切り替え、タイマー運転設定、等といった、室内機20の運転に関わる情報(以降、運転情報と記載する)である。
【0020】
更新制御プログラム52bは、上述した通信プログラム52aを新しいプログラムに更新する際に使用されるプログラムである。具体的には、後述する外部サーバー70から通信プログラム52aの更新プログラムを記憶部52の図示しないダウンロード用の領域にダウンロードする際や、通信プログラム52aを更新プログラムに更新する際に使用される。尚、通信プログラム52aは、機能向上や不具合の解消などの目的で新しいプログラムに更新される。
【0021】
操作端末通信部53は、操作端末60と通信を行うインターフェイスである。室内機通信部54は、室内機制御部21と通信を行うインターフェイスである。外部通信部53は、インターネット等の通信ネットワーク80を介して外部サーバー70と通信を行うインターフェイスである。尚、外部サーバー70は、例えば、空気調和機1の製造会社のサービスセンターにあるコンピュータであり、外部サーバー70には、通信プログラム52aが更新される度に、更新された新しい通信プログラム52aがアップされる。
【0022】
制御部51は、操作端末60から出力された運転情報に関わるデータを、操作端末通信部53を介して取り込み、取り込んだ運転情報に関わるデータを、記憶部51に記憶されている通信プログラム52aを用いて室内機制御部21が認識できるデータに変換する。そして、制御部51は変換したデータを、室内機通信部54を介して室内機制御部21に出力する。
【0023】
また、制御部51は、ダウンロード部51aと、プログラム更新部51bと、継続電力供給期判定部51cを有する。ダウンロード部51aは、記憶部52に記憶されている更新制御プログラム52bを用いて、ネットワーク80を介して外部サーバー70から通信プログラム52aの更新プログラムをダウンロードして記憶部52に記憶する。プログラム更新部51bは、更新制御プログラム52bを用いて、通信プログラム52aを記憶部52に記憶した更新プログラムに更新する。継続電力供給期判定部51cは、後述するカレンダー情報、タイマー入切の設定有無、室温Tiと設定温度Tpとの温度差ΔTを用いて、現在が空気調和機1や通信アダプタ50への動作電力の供給が遮断される可能性の低い継続電力供給期であるか否かを判断する。
【0024】
以下、
図3を用いて、制御部51が、通信プログラム52aを更新プログラムに更新する際に行う処理について説明する。尚、
図3において、STは処理のステップを表し、STに続く番号はステップの番号を表している。また、室内機20の図示しない室温センサで検出される室温をTi、使用者が操作端末60を操作して定める空調運転時の目標温度である設定温度をTpとする。また、設定温度Tpから室温Tiを減じた値の絶対値を温度差ΔT、この温度差ΔTの閾温度差をTthとする。
【0025】
まず、制御部51は、通信プログラム52aの更新の通知があるか否かを判断する(ST1)。具体的には、通信プログラム52aの更新プログラムが外部サーバー70にアップされたときに、制御部51は、外部サーバー70から発信された通信プログラム52aの更新の通知を、通信ネットワーク80および外部通信部53を介して受信する。制御部51はSTの処理において、上記更新の通知を受信したか否かを判断する。
【0026】
通信プログラム52aの更新の通知がなければ(ST1−No)、制御部51は、ST1に処理を戻す。通信プログラム52aの更新の通知があれば(ST1−Yes)、制御部51は、更新プログラムのダウンロードを実行する(ST2)。具体的には、制御部51のダウンロード部51aが、外部通信部53および通信ネットワーク80を介して、外部サーバー70に格納されている通信プログラム52aの更新プログラムをダウンロードし、記憶部52に記憶する。
【0027】
次に、制御部51は、現在が夏季あるいは冬季であるか否かを判断する(ST3)。具体的には、制御部51の継続電力供給期判定部51cが、記憶部52に記憶する図示しないカレンダーや通信ネットワーク80を介して外部から入手するカレンダー情報を用いて、現在が夏季(例えば、現在が6月1日〜9月30日の間の日)であるか、あるいは、現在が冬季(例えば、12月1日〜3月30日の間の日)であるか、つまり、現在が継続電力供給期であるか否かを判断する。
【0028】
現在が夏季あるいは冬季であれば(ST3−Yes)、制御部51は、通信プログラム52aを記憶部52に記憶している更新プログラムに更新して(ST8)、ST1に処理を戻す。具体的には、制御部51の継続電力供給期判定部51cが、現在が夏季あるいは冬季であると確認したとき、その時点が継続電力供給期にあると判定し、この判定結果を受けて制御部51がST8に処理を進める。そして、制御部51のプログラム更新部51bが、通信プログラム52aをST2でダウンロードして記憶部52に記憶している更新プログラムに更新する。
【0029】
夏季や冬季では、これらの期間を通して長時間、空気調和機1で冷房運転(あるいは除湿運転)や暖房運転が継続される。このように、長時間空気調和機1が空調運転を継続する期間は、使用者が空気調和機1の電源プラグをコンセントから抜く、あるいは、空気調和機1の電源プラグが接続されているコンセントのブレーカを落とす、といったことを行わないと考えられる。従って、夏季や冬季に更新プログラムへの更新を行っても、プログラムの更新の途中で空気調和機1への電力供給が遮断されて通信アダプタへの電力供給も遮断される可能性が低く、通信プログラム52aの更新プログラムへの更新を滞りなく完了させることができる。
【0030】
ST3において、現在が夏季あるいは冬季でなければ(ST3−No)、制御部51は、使用者によるタイマー入切の設定があるか否かを判断する(ST4)。具体的には、制御部51の継続電力供給期判定部51cが、タイマーによる空気調和機1の運転開始や運転停止の設定に関わる信号を、操作端末60から操作端末通信部53を介して受信しているか否か、つまり、現在が継続電力供給期であるか否かを判断する。
【0031】
使用者によるタイマー入切の設定があれば(ST4−Yes)、制御部51はST8に処理を進めて、通信プログラム52aを記憶部52に記憶している更新プログラムに更新して、ST1に処理を戻す。具体的には、制御部51の継続電力供給期判定部51cが、タイマー入切が設定されたことを把握したとき、その時点が継続電力供給期にあると判定し、この判定結果を受けて制御部51がST8に処理を進める。尚、使用者によりなされたタイマー入切の設定は記憶部52に記憶されており、継続電力供給期判定部51cは、記憶部52を参照してタイマー入切の設定があるか否かを把握する。
【0032】
使用者によるタイマー入切の設定がされているということは、使用者が設定した時間に自動で空気調和機1が空調運転を開始する、あるいは、自動で停止することを意図してなされているということである。従って、使用者が空気調和機1の電源プラグをコンセントから抜く、あるいは、空気調和機1の電源プラグが接続されているコンセントのブレーカを落とす、といったことを行わないと考えられる。従って、使用者によるタイマー入切の設定がされているときに更新プログラムへの更新を行っても、プログラムの更新の途中で空気調和機1への電力供給が遮断されて通信アダプタへの電力供給も遮断される可能性が低く、通信プログラム52aの更新プログラムへの更新を滞りなく完了させることができる。
【0033】
ST4において、使用者によるタイマー入切の設定がなければ(ST4−No)、制御部51は、室温Tiと設定温度Tpを取り込む(ST5)。具体的には、制御部51は、室内機20の図示しない室温センサから室温Tiを定期的(例えば、30秒毎)に取り込んで、記憶部52に上書き保存している。また、記憶部52には、使用者が操作端末60を操作して定めた最新の設定温度Tpが操作端末通信部53を介して取り込まれて上書き記憶されており、制御部51は、記憶部52から設定温度Tpを取り込む。
【0034】
次に、制御部51は、ST5で取り込んだ室温Tiと設定温度Tpを用いて、温度差ΔTを算出する(ST6)。具体的には、制御部51の継続電力供給期判定部51cが、設定温度Tpから室温Tiを減じた値を算出し、算出した値の絶対値を温度差ΔTとしている。
【0035】
次に、制御部51は、ST6で算出した温度差ΔTが閾温度差Tth以上であるか否かを判断する(ST7)。具体的には、制御部51の継続電力供給期判定部51cが、温度差ΔTが閾温度差Tth以上であるか否かを判断する。ここで、閾温度差Tthは、予め定められて記憶部52に記憶されているものであり、例えば、3℃である。
【0036】
温度差ΔTが閾温度差Tth以上であれば(ST7−Yes)、制御部51は、ST8に処理を進めて、通信プログラム52aを記憶部52に記憶している更新プログラムに更新して、ST1に処理を戻す。具体的には、制御部51の継続電力供給期判定部51cが、温度差ΔTが閾温度差Tth以上であると判断したとき、その時点が継続電力供給期にあると判定し、この判定結果を受けて制御部51がST8に処理を進める。
【0037】
空気調和機1が空調運転を開始して間もないとき、あるいは、空調運転中に室内機20が設置されている部屋の窓やドアが開けられて室温Tiが急激に上昇もしくは下降したときは、室温Tiと設定温度Tpとの温度差ΔTが大きくなる。このように空気調和機1の運転中に温度差ΔTが大きくなっているときは、室温Tiが設定温度Tpに到達するまでは、使用者が空気調和機1を停止させて空気調和機1の電源プラグをコンセントから抜く、あるいは、空気調和機1の電源プラグが接続されているコンセントのブレーカを落とす、といったことを行わないと考えられる。従って、温度差ΔTが閾温度差Tth以上であるときに更新プログラムのへの更新を行っても、プログラムの更新の途中で空気調和機1への電力供給が遮断されて通信アダプタへの電力供給も遮断される可能性が低く、通信プログラム52aの更新プログラムへの更新を滞りなく完了させることができる。
【0038】
ST7において、温度差ΔTが閾温度差Tth以上でなければ(ST7−No)、制御部51は、ST1に処理を戻す。尚、ST3で判断した夏季あるいは冬季、ST4で判断したタイマー入切設定があるとき、および、ST7で判断した温度差ΔTが閾温度差Tth以上であるときが、本発明の継続電力供給期である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の空気調和機1に備えられる通信アダプタ50は、通信プログラム52aの更新プログラムをダウンロードした後に、通信アダプタ50への電力供給が遮断される可能性が低い継続電力供給期を選んで、通信プログラム52aを更新プログラムに更新する。これにより、プログラムの更新の途中で通信アダプタ50への電力供給が遮断されてプログラムの更新がきちんと行われず、電力が再度供給された際に通信アダプタ50が動作しなくなるといった不具合の発生を回避できる。
【0040】
尚、以上説明した実施形態では、通信アダプタ50の通信プログラム52aを更新する場合を挙げて説明したが、室内機20の制御プログラムを更新する場合についても、本発明の効果が発揮される。具体的には、通信アダプタ50の制御部51が、外部サーバー70から通信ネットワーク80および外部通信部54を介して室内機20の制御プログラムの更新プログラムを含む信号を受信し、入手した信号を、室内機通信部54を介して室内機制御部21に送信する。そして、この信号を受信した室内機制御部21は、信号に含まれる更新プログラムをダウンロードした後、室内機20への電力供給が遮断される可能性が低い継続電力供給期を選んで、制御プログラムを更新プログラムに更新すればよい。
【0041】
また、本実施形態では、継続電力供給期として夏季あるいは冬季、タイマー入切設定があるとき、および、温度差ΔTが閾温度差Tth以上であるときを挙げて説明した。しかし、これに限られるものではなく、例えば、操作端末60と通信アダプタ50との間で最後に通信をした時刻から所定期間以内(例えば、24時間以内。前回の操作から24時間以内であれば、使用者が断続的に空気調和機1を運転する可能性が高いと考える)、のように、通信アダプタ50への電力供給が遮断される可能性が低い時期であればよい。