(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極用金属箔の表面と裏面とのそれぞれに表正極活物質層と裏正極活物質層とを有する正極板と、負極用金属箔の表面と裏面とのそれぞれに表負極活物質層と裏負極活物質層とを有する負極板と、前記正極板と前記負極板の間に設けられたセパレータと、を有する電極組立体の製造方法であって、
帯状の前記正極用金属箔の前記表面と前記裏面とのそれぞれに前記表正極活物質層と前記裏正極活物質層とを有する正極母シートと、帯状の前記負極用金属箔の前記表面と前記裏面とのそれぞれに前記表負極活物質層と前記裏負極活物質層とを有する負極母シートと、を準備し、
前記正極母シートに対してレーザを前記表正極活物質層から前記裏正極活物質層に向けて照射して、前記正極母シートから、前記負極板よりも面積が小さい前記正極板を切り出すとともに、前記表正極活物質層に、前記正極板の前記正極用金属箔の前記表面の1辺から前記正極板の内方側に、前記正極用金属箔の垂線からの前記表面への角度である正極大傾斜角度で傾斜した正極大テーパ部を形成し、かつ前記裏正極活物質層に、前記正極板の前記正極用金属箔の前記裏面の1辺から前記正極板の内方側に、前記正極大傾斜角度よりも小さい角度であって前記正極用金属箔の前記垂線からの前記裏面への角度である正極小傾斜角度で傾斜した正極小テーパ部を形成し、
前記負極母シートに対してレーザを前記表負極活物質層から前記裏負極活物質層に向けて照射して、前記負極母シートから前記負極板を切り出すとともに、前記表負極活物質層に、前記負極板の前記負極用金属箔の前記表面の1辺から前記負極板の内方側に、前記負極用金属箔の垂線からの前記表面への角度である負極大傾斜角度で傾斜した負極大テーパ部を形成し、かつ前記裏負極活物質層に、前記負極板の前記負極用金属箔の前記裏面の1辺から前記負極板の内方側に、前記負極大傾斜角度よりも小さい角度であって前記負極用金属箔の前記垂線からの前記裏面への角度である負極小傾斜角度で傾斜した負極小テーパ部を形成し、
前記正極大テーパ部が設けられている前記正極板の表面と、前記負極大テーパ部が設けられている前記負極板の表面と、を前記正極板及び前記負極板の厚み方向において同一方向に向けて、前記セパレータを間において前記正極板と前記負極板とを交互に積層する電極組立体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の1つの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1に示す蓄電装置1は、例えばリチウムイオン2次電池である。蓄電装置1のケース10は、有底の直方体状のケース本体12と、ケース本体12の開口部を塞ぐ平板状の蓋11と、を有する。蓋11は、外部接続端子14,16を有する。外部接続端子14,16は、蓋11を厚み方向に貫通している。
【0021】
蓄電装置1は、
図1に示すように、ケース10の内部に電極組立体20と電解液18とを有する。電極組立体20は、後述の正極タブ32b及び負極タブ42bを介して外部接続端子14,16と接続されている。電極組立体20は、外部接続端子14,16を通じて、蓄電装置1の外部に電力を供給し(放電)、蓄電装置1の外部から電力が供給される(充電)。後で説明するように、新品状態の蓄電装置1では、電解液18がケース10に充填されている。
図1に示す蓄電装置1は、充放電が繰り返された使用状態にあり、電解液18が電気分解や蒸発によって満充填状態から減少している。そのため、電極組立体20は、一部が電解液18から露出する場合がある。なお、電解液18の液面の位置は、
図1に例として示す位置に限定されるものではなく、
図1に示す位置から上下してよい。
【0022】
電極組立体20は、
図2に示す正極板ユニット50(電極板ユニット)と負極板40とを交互に積層して構成されている。正極板ユニット50は、
図2,
図3に示すように、正極板30とセパレータ54とを有する。正極板30は矩形状である。セパレータ54は、薄膜状の多孔性樹脂で構成されている。正極板30はセパレータ54で袋状に包み込まれている。正極板30は、
図3に示すように、2つ折りにされたセパレータ54の間に位置している。セパレータ54は、正極板30の表面30aを覆う第1セパレータ部54aと、正極板30の裏面30bを覆う第2セパレータ部54bと、を有する。両セパレータ部54a,54bは正極板30よりも面積が大きい。両セパレータ部54a,54bは、正極板30の正極タブ辺38aを除いた3辺の外周で、互いに溶着されている。正極タブ32bは、セパレータ54の開口孔54cを通じて、セパレータ54から外部に露出されている。なお、正極板ユニット50は、正極板30を表裏両面から個別のセパレータで覆って、両セパレータを正極板30の4辺の外周で互いに溶着してもよい。
【0023】
正極板30は、
図3,
図4,及び
図6に示すように、正極用金属箔32と、表正極活物質層34と、裏正極活物質層36と、を有する。正極用金属箔32は、例えば、アルミニウム箔である。正極用金属箔32は、矩形状の正極本体部32aと、正極本体部32aの1辺から突出した正極タブ32bと、を有する。表正極活物質層34は、正極用金属箔32の表面32cに設けられ、例えば正極本体部32aの略全域を覆っている。裏正極活物質層36は、正極用金属箔32の裏面32dに設けられ、例えば正極本体部32aの略全域を覆っている。両正極活物質層34,36は、例えばリチウム含有金属酸化物で構成されている。正極板30が電解液18とともにケース10内に収められると、両正極活物質層34,36に電解液18(
図1参照)が浸み込む。
図4を参照するように、正極本体部32a及び両正極活物質層34,36は、正極ベース部38を構成している。
【0024】
正極タブ32bにおいては、表正極活物質層34と裏正極活物質層36とが設けられておらず、正極用金属箔32が露出している。各正極板30の正極タブ32bは、相互に重ねられて、一方の外部接続端子14(
図1参照)に例えば溶着されている。本明細書では、正極タブ32bが設けられた正極板30の辺を、正極タブ辺38aと記す。正極タブ辺38aと対向する辺を、正極タブ対向辺38bと記す。正極タブ辺38a及び正極タブ対向辺38bと直交する2辺を、正極第1側辺38c及び正極第2側辺38dと記す。
【0025】
表正極活物質層34は、
図3,
図4,及び
図6に示すように、正極大テーパ部34aを有する。正極大テーパ部34aは、正極タブ対向辺38b、正極第1側辺38c、及び正極第2側辺38dのそれぞれに沿って設けられている。各正極大テーパ部34aは、正極用金属箔32の表面32cにおいて、対応する各辺38b,38c,38dから正極板30の内方側に傾斜し、例えば直線的に傾斜している。各正極大テーパ部34aは、正極大傾斜角度θ1A(
図6参照)に設定されている。
【0026】
裏正極活物質層36は、
図4,及び
図6に示すように、正極小テーパ部36aを有する。正極小テーパ部36aは、正極タブ対向辺38b、正極第1側辺38c、及び正極第2側辺38dのそれぞれに沿って設けられている。各正極小テーパ部36aは、正極用金属箔32の裏面32dにおいて、対応する各辺38b,38c,38dから正極板30の内方側に傾斜し、例えば直線的に傾斜している。各正極小テーパ部36aは、正極小傾斜角度θ1B(
図6参照)に設定されている。正極小傾斜角度θ1Bは、正極大傾斜角度θ1Aよりも小さい。なお、正極小傾斜角度θ1Bは0度でもよい。この場合、正極小テーパ部36aは、形成されない。
【0027】
負極板40は、
図2,
図5,及び
図6に示すように、負極用金属箔42と、表負極活物質層44と、裏負極活物質層46と、を有する。負極用金属箔42は、例えば、銅箔である。負極用金属箔42は、矩形状の負極本体部42aと、負極本体部42aの一辺から突出した負極タブ42bと、を有する。負極本体部42aの面積は、上述の正極本体部32aの面積よりも大きい。表負極活物質層44は、負極用金属箔42の表面42cに設けられ、例えば負極本体部42aの略全域を覆っている。裏負極活物質層46は、負極用金属箔42の裏面42dに設けられ、例えば負極本体部42aの略全域を覆っている。両負極活物質層44,46は、例えば炭素を含んでいる。負極板40が電解液18とともにケース10内に収められると、両負極活物質層44,46に電解液18(
図1参照)が浸み込む。
図5を参照するように、負極本体部42a及び両負極活物質層44,46は、負極ベース部48を構成している。
【0028】
負極タブ42bにおいては、表負極活物質層44と裏負極活物質層46とが設けられておらず、負極用金属箔42が露出している。各負極板40の負極タブ42bは、相互に重ねられて、一方の外部接続端子16(
図1参照)に例えば溶着されている。本明細書では、負極タブ42bが設けられた負極板40の辺を、負極タブ辺48aと記す。負極タブ辺48aと対向する辺を、負極タブ対向辺48bと記す。負極タブ辺48a及び負極タブ対向辺48bと直交する2辺を、負極第1側辺48c及び負極第2側辺48dと記す。
【0029】
表負極活物質層44は、
図2,
図5,及び
図6に示すように、負極大テーパ部44aを有する。負極大テーパ部44aは、負極タブ対向辺48b、負極第1側辺48c、及び負極第2側辺48dのそれぞれに沿って設けられている。各負極大テーパ部44aは、負極用金属箔42の表面42cにおいて、対応する各辺48b,48c,48dから負極板40の内方側に傾斜し、例えば直線的に傾斜している。各負極大テーパ部44aの傾斜角度は、負極大傾斜角度θ2A(
図6参照)に設定されている。負極大傾斜角度θ2Aは、上述した正極大傾斜角度θ1Aよりも大きい。
【0030】
裏正極活物質層36は、
図5,及び
図6に示すように、負極小テーパ部46aを有する。負極小テーパ部46aは、負極タブ対向辺48b、負極第1側辺48c、及び負極第2側辺48dのそれぞれに沿って設けられている。各負極小テーパ部46aは、負極用金属箔42の裏面42dにおいて、対応する各辺48b,48c,48dから負極板40の内方側に傾斜し、例えば直線的に傾斜している。各負極小テーパ部46aの傾斜角度は、負極小傾斜角度θ2B(
図6参照)に設定されている。負極小傾斜角度θ2Bは、負極大傾斜角度θ2Aよりも小さい。なお、負極小傾斜角度θ2Bは0度でもよい。この場合、負極小テーパ部46aは、形成されない。
【0031】
図6は、電解液18(
図1参照)の液面よりも上方における蓄電装置1の内部を示している。各活物質層34,36,44,46には、電解液18が浸み込んでいる。各電極板30,40及びセパレータ54のまわりにも表面張力で電解液18が留まっており、これにより液だまりEが形成されている。蓄電装置1が充放電されると、各活物質層34,36,44,46は膨張収縮する。この膨張収縮に伴い、液だまりEと各極活物質層34,36,44,46との間で、電解液18の行き戻りが生じる。電解液18が各活物質層34,36,44,46に戻ることで、電解液18が各活物質層34,36,44,46に供給される。そして、各活物質層34,36,44,46は乾燥することなく電解液18が含浸される。なお、
図6においては、液だまりEがドット領域にて示されている。
【0032】
液だまりEは、
図6に示すように、正極大テーパ部34aに沿って、正極板30の内方側へ向かうように形成されている。したがって、表正極活物質層34では、正極板30の内方側への電解液18の供給が促進される。この結果、表正極活物質層34においては電解液18の含浸の効率が向上するとともに、セパレータ54を間において表正極活物質層34と対向する裏負極活物質層46に対しても、電解液18の供給が促進される。そのため、裏負極活物質層46においても、電解液18の含浸の効率が向上する。
【0033】
液だまりEは、
図6に示すように、負極大テーパ部44aに沿って、負極板40の内方側へ向かうように形成されている。したがって、表負極活物質層44では、負極板40の内方側への電解液18の供給が促進される。この結果、表負極活物質層44において電解液18の含浸の効率が向上するとともに、セパレータ54を間において表負極活物質層44と対向する裏正極活物質層36に対しても、電解液18の供給が促進される。そのため、裏正極活物質層36においても、電解液18の含浸の効率が向上する。
【0034】
図6に示すように、正極板30及び負極板40は、正極大テーパ部34a及び負極大テーパ部44aが設けられているそれぞれの表面30a,40aを、正極板30及び負極板40の厚み方向において同一方向に向けて積層されている。そのため、電極組立体20では、例えば
図7に示す電極組立体200のように正極板30と負極板40とを互いの表面30a,40aを向かい合わせて積層させた場合に比べて、電解液18が入り込むことができる隙間が分散される。したがって、電極組立体20では、上述のように各活物質層34,36,44,46への電解液18の供給の促進を図った上で、正極板30と負極板40とで積層方向に電解液18の含浸ムラが生じることを抑制できる。一方、正極板30及び負極板40は、正極小テーパ部36a及び負極小テーパ部46aのそれぞれの傾斜角度θ1B,θ2Bを小さく設定している。これにより正極板30及び負極板40のそれぞれの活物質の容量を十分に確保できる。
【0035】
図6に示すように、正極大テーパ部34aはセパレータ54で囲まれている。セパレータ54は、正極大テーパ部34aに沿って形成される液だまりEを外側から覆って、液だまりEを保持する面の一部となる。そして、セパレータ54は、液だまりEの形成を助長する。負極大テーパ部44aは、セパレータ54から露出している。したがって、負極大テーパ部44aに沿って形成される液だまりEは、正極大テーパ部34aに沿って形成される液だまりEに比べて、保持され難い。そこで、上述のようにして、正極大傾斜角度θ1Aを負極大傾斜角度θ2Aに比べて小さく設定しておくことで、正極大テーパ部34aと負極大テーパ部44aとでそれぞれに形成される液だまりEの量を均一化できる。この結果、電極組立体20では、積層方向に関する電解液18の含浸ムラが抑制される。
【0036】
一般に、電極組立体20では、正極板30及び負極板40のそれぞれの外縁部分に荷重がかかりやすい。そのため、正極板30及び負極板40は、互いの外縁部分の間にてセパレータ54が破れて、互いに接触(内部短絡)する恐れがある。
図6に示す電極組立体20では、正極板30及び負極板40の外縁部分のそれぞれに正極大テーパ部34a及び負極大テーパ部44aが設けられている。したがって、これらの大テーパ部34a,44aの分だけ、正極板30及び負極板40の互いの外縁部分の間に隙間ができ、仮に正極板30及び負極板40の外縁部分でセパレータが破れた場合であっても、内部短絡が回避される。
【0037】
つづいて、電極組立体20の製造方法について説明する。電極組立体20の製造方法は、
図8に示すように、正極板作製工程S1と負極板作製工程S2と積層工程S3とを有する。正極板作製工程S1は、正極母シート準備工程S1aと、正極レーザ加工工程S1bと、正極セパ包み工程S1cと、を有する。負極板作製工程S2は、負極母シート準備工程S2aと、負極レーザ加工工程S2bと、を有する。正極板作製工程S1と負極板作製工程S2とは、並行して行っても、前後して行ってもよい。積層工程S3は、正極板作製工程S1及び負極板作製工程S2の後に行われる。
【0038】
正極母シート準備工程S1aでは、
図9に示すように、塗工乾燥装置70が使用される。塗工乾燥装置70は、供給ローラ71、塗工機72、乾燥機73、プレスローラ74、巻取りローラ76、を有する。
図9に示すように、正極用金属箔32は、供給ローラ71から巻き出されて、塗工機72、乾燥機73、プレスローラ74、を順に通過する。正極用金属箔32は、塗工機72によって、当該正極用金属箔32の両面に活物質が塗工される。これによって、正極用金属箔32の表面32cに表正極活物質層34が形成され、裏面32dに裏正極活物質層36が形成される。両正極活物質層34,36は、乾燥機73によって乾燥され、プレスローラ74によって厚み方向に圧縮される。こうして、正極用金属箔32の表裏両面に各正極活物質層34,36が形成された正極母シート61が作製される。正極母シート61は、各ローラ77で張られた状態で、巻取りローラ76にて巻き取られる。
【0039】
正極母シート61は、上述のとおり、帯状の正極用金属箔32と、表正極活物質層34と、裏正極活物質層36と、を有する。両正極活物質層34,36は、正極用金属箔32の表面32cと裏面32dとで互いに対応した領域である活物質層形成領域61a(
図10参照)に形成されている。
図10では、後述のレーザLS(
図13参照)による切断ラインが点線にて示されている。活物質層形成領域61aの幅は、正極タブ対向辺38bから正極タブ辺38aまでの長さの略2倍に相当する。正極母シート61の幅方向の両側は、表正極活物質層34及び裏正極活物質層36を有さずに正極用金属箔32が露出した金属箔露出領域61b,61cとなっている。両金属箔露出領域61b,61cの幅は、それぞれ正極タブ32bの突出方向の長さに相当する。活物質層形成領域61a及び両金属箔露出領域61b,61cは、正極母シート61の全長に亘って長手方向に連続している。なお、
図10では、活物質層形成領域61aがハッチングにて示されている。正極母シート61は、つぎに説明する正極レーザ加工工程S1bにまわされる。
【0040】
正極レーザ加工工程S1bでは、レーザ加工機80が使用される。レーザ加工機80は、
図11に示すように、供給ローラ81と、搬送装置82と、レーザ装置88と、コントローラ86と、回収装置84と、を有する。搬送装置82は、コンベアであり、一対のローラ82a,82bに張設されたベルト82cを有する。搬送装置82は、ベルト82cの上面にて正極母シート61を一方向へ搬送する。正極母シート61は、供給ローラ81から巻き出されて、所定のテンションを受けながら搬送される。搬送装置82の動作は、コントローラ86で制御される。搬送装置82は、例えば、正極母シート61の搬送と、その搬送の停止とを繰り返して、正極母シート61を所定量ずつ移動させる。
【0041】
レーザ装置88は、
図12に示すように、第1レーザ装置90と第2レーザ装置190とを有する。第1レーザ装置90は、第1レーザLS1を活物質層形成領域61aに照射する。第2レーザ装置190は、第2レーザLS2を両金属箔露出領域61b,61cに照射する。以下、両レーザLS1,LS2に関して、これらの個々については、第1レーザLS1及び第2レーザLS2として区別し、これらを総称するときにはレーザLSとして説明する。なお、第2レーザ装置190は、両金属箔露出領域61b,61cのそれぞれに対応させて2つ設けてもよい。
図12においては、第2レーザ装置190を1つのみ設けた例を示している。
【0042】
第1レーザ装置90は、
図12に示すように、レーザヘッド92と、X−Y軸ロボット94と、アシストガス供給装置96と、レーザ発振機98と、を有する。レーザヘッド92は、X−Y軸ロボット94に取付けられている。X−Y軸ロボット94は、レーザヘッド92をX−Y軸方向に移動させる。X−Y軸ロボット94は、例えば、レーザヘッド92を正極母シート61の幅方向であるX方向に移動可能に支持するX軸部材94aと、正極母シート61の長手方向であるY方向にX軸部材を移動可能に支持するY軸部材94bと、を有する。X−Y軸ロボット94は、コントローラ86に接続されている。X−Y軸ロボット94は、コントローラ86に記憶されたプログラムにしたがって、レーザヘッド92を移動させる。
【0043】
アシストガス供給装置96は、
図12に示すように、レーザヘッド92に接続されている。アシストガス供給装置96は、アシストガスを供給する。レーザ発振機98は、例えばファイバケーブルによってレーザヘッド92に接続されている。レーザ発振機98は、レーザヘッド92にレーザビームを供給する。レーザ発振機98は、コントローラ86に、例えば制御信号用ケーブル(図示省略)にて接続されている。コントローラ86は、レーザ発振機98からレーザヘッド92へのレーザビームの供給を制御する。コントローラ86は、例えば、搬送装置82による正極母シート61の搬送を停止させている間に、レーザヘッド92をX−Y軸ロボット94にて移動させつつレーザヘッド92にレーザビームを供給する。
【0044】
レーザヘッド92は、
図13に示すように、正極母シート61の活物質層形成領域61aに第1レーザLS1を照射する。レーザヘッド92はレンズ92aを有する。このレンズ92aによって、第1レーザLS1は、正極母シート61の所定位置に設定された焦点Pに向けて集光される。焦点Pは、正極用金属箔32の厚み中心の近傍に位置し、例えば正極用金属箔32の厚み内に位置している。あるいは焦点Pは、正極用金属箔32の近傍における表正極活物質層34内、または正極用金属箔32の近傍における裏正極活物質層36内に位置している。
【0045】
第1レーザLS1は、
図13に示すように、その光軸Jが正極母シート61に対して垂直となるように照射される。したがって、第1レーザLS1は、自身が正極母シート61に対して斜めに照射された場合と異なり、当該第1レーザLS1が両正極活物質層34,36及び正極用金属箔32を通過する直線距離が最短となる。そのため、第1レーザLS1は、その出力を弱く設定可能である。なお、光軸Jとは、レンズ92aの中心と焦点Pとを通る直線である。第1レーザLS1は、表正極活物質層34から裏正極活物質層36に向けて照射される。第1レーザLS1は、両正極活物質層34,36及び正極用金属箔32を溶融して切断する。上述したアシストガスは、第1レーザLS1によって溶融された両正極活物質層34,36及び正極用金属箔32を吹き飛ばす。
【0046】
第1レーザLS1は、連続波レーザである。第1レーザLS1の波長は、300〜1100nmの範囲内に設定されることが好ましい。第1レーザLS1のスポット径は、10〜100μm(マイクロメートル)の範囲内に設定されることが好ましい。第1レーザLS1による切断速度は、0.5〜3m/sの範囲内に設定されることが好ましい。第1レーザLS1の出力は、0.01〜2.0kWの範囲内に設定されることが好ましい。
【0047】
第2レーザ装置190は、
図12に示すように、レーザヘッド192と、X−Y軸ロボット194と、アシストガス供給装置196と、レーザ発振機198と、を有する。第2レーザ装置190の各機器192,194,196,198は、第1レーザ装置90の各機器92,94,96,98と同様に機能するため、重複した説明を省略する。なお、レーザヘッド192は、正極母シート61の両金属箔露出領域61b,61cに第2レーザLS2を照射する。レーザヘッド192は、図示しないレンズを有する。このレンズによって、第2レーザLS2は、正極母シート61の所定位置に設定された焦点に向けて集光される。焦点は、正極用金属箔32の厚み中心の近傍に位置し、例えば正極用金属箔32の厚み内に位置している。第2レーザLS2は、例えば、その光軸が正極母シート61に対して垂直となるように照射される。
【0048】
第2レーザLS2は、パルス波レーザである。第2レーザLS2の波長は、500〜1100nmの範囲内に設定されることが好ましい。第2レーザLS2のスポット径は、25〜100μm(マイクロメートル)の範囲内に設定されることが好ましい。第2レーザLS1による切断速度は、1〜3m/sの範囲内に設定されることが好ましい。第2レーザLS2の出力は、10〜100Wの範囲内に設定されることが好ましい。第2レーザLS2のパルス幅は、20ps(ピコ秒)よりも小さく設定されることが好ましい。第2レーザLS2の繰り返し周波数は、0.1〜1MHzの範囲内に設定されることが好ましい。
【0049】
レーザLSは、
図12に示すように、正極母シート61から正極板30を切り出す。
図10,12では、レーザLS(
図10では図示省略)による切断ラインが点線にて示されている。レーザLSは、活物質層形成領域61aにて矩形状に正極ベース部38を切り出し、両金属箔露出領域61b,61cにて正極タブ32bを切り出す。レーザLSは、正極母シート61の幅方向に2つ正極板30を切り出す。第1レーザLS1は、活物質層形成領域61aの幅方向の中央にて、正極母シート61の長手方向に沿って正極タブ対向辺38bを切り出す。また、第1レーザLSは、正極母シート61の幅方向に沿って、正極第1側辺38c及び正極第2側辺38dを切り出す。正極母シート61の長手方向に隣り合う正極板30の正極第1側辺38cと正極第2側辺38dとは、一致している。第2レーザLSは、両金属箔露出領域61b,61cと活物質層形成領域61aとのそれぞれの境界にて、正極母シート61の長手方向に沿って正極タブ辺38aを切り出す。また、第2レーザLS2は、両金属箔露出領域61b,61cのそれぞれにて正極タブ32bを切り出す。なお、
図10,12では、活物質層形成領域61aがハッチングにて示されている。
【0050】
第1レーザLS1は、
図13に示すように、表正極活物質層34に正極大テーパ部34aを形成する。また、第1レーザLS1は、裏正極活物質層36に正極小テーパ部36aを形成する。両テーパ部34a,36aの構成は、
図6で説明したとおりである。両テーパ部34a,36aは、正極タブ対向辺38b、正極第1側辺38c、及び正極第2側辺38dのそれぞれに沿って形成される。両テーパ部34a,36aは、第1レーザLS1の照射によって同時に形成される。
【0051】
第1レーザLS1は、
図13に示すように、正極母シート61に対して垂直に照射される。これにより、第1レーザLS1の切断ラインを間においた両側では、対称の形状に正極大テーパ部34aが形成される。つまり、正極第1側辺38cと正極第2側辺38dとでは、互いに対称の形状の正極大テーパ部34aが形成される。同様にして、正極第1側辺38cと正極第2側辺38dとでは、互いに対称の形状の正極小テーパ部36aが形成される。なお、正極母シート61の幅方向の中央を間において切り出される2つの正極板30(
図10の点線参照)において、それぞれの正極タブ対向辺38bに形成される正極大テーパ部34aの形状もまた、互いに対称である。正極小テーパ部36aについても同様である。
【0052】
レーザLSで切り出された各正極板30は、
図11に示すように、回収装置84で回収される。回収装置84は、例えば、吸引ハンド84aと回収ボックス84bとを有する。各正極板30は、吸引ハンド84aにて吸引されて、回収ボックス84bに落下される。こうして、回収ボックス84bに各正極板30がストックされる。ストックされた各正極板30は、つぎに説明する正極セパ包み工程S1cにまわされる。
【0053】
正極セパ包み工程S1cでは、
図3に示すように、二つ折りにされたセパレータ54の間に正極板30が差し込まれる。そして、第1セパレータ部54aによって正極板30の表面30aが覆われ、第2セパレータ部54bによって正極板30の裏面30bが覆われる。正極タブ32bは開口孔54cから露出される。この後、両セパレータ部54a,54bは、正極タブ対向辺38b,正極第1側辺38c,正極第2側辺38dの外周で、互いに溶着される。これによって、正極板30がセパレータ54で袋状に包まれて構成された正極板ユニット50が作製される。完成した正極板ユニット50は、後述する積層工程S3にまわされる。
【0054】
負極母シート準備工程S2aでは、正極母シート準備工程S1aと同様の手順にて、負極母シート63が作成される。つまり、負極用金属箔42は、
図9に示すように、供給ローラ71から巻き出されて、塗工機72、乾燥機73、プレスローラ74、を順に通過する。この結果、負極用金属箔42の表裏両面に表負極活物質層44と裏負極活物質層46とがそれぞれ形成された負極母シート63が作製される。負極母シート63は、巻取りローラ76で巻き取られる。
【0055】
負極母シート63は、上述のとおり、帯状の負極用金属箔42と、表負極活物質層44と、裏負極活物質層46と、を有する。両負極活物質層44,46は、負極用金属箔42の表面42cと裏面42dとで互いに対応した領域である活物質層形成領域63a(
図10参照)に形成されている。活物質層形成領域63aの幅は、負極タブ対向辺48bから負極タブ辺48aまでの長さの略2倍に相当する。負極母シート63の幅方向の両側は、表負極活物質層44及び裏負極活物質層46を有さずに負極用金属箔42が露出した金属箔露出領域63b,63cとなっている。両金属箔露出領域63b,63cの幅は、それぞれ負極タブ42bの突出方向の長さに相当する。活物質層形成領域63a及び両金属箔露出領域63b,63cは、負極母シート63の全長に亘って長手方向に連続している。なお、
図10では、活物質層形成領域63aがハッチングにて示されている。負極母シート63は、つぎに説明する負極レーザ加工工程S2bにまわされる。
【0056】
負極レーザ加工工程S2bでは、正極レーザ加工工程S1bと同様の手順にて、負極母シート63から負極板40が切り出される。レーザ加工機80(
図11参照)は、正極レーザ加工工程S1bの場合と同様に負極レーザ加工工程S2bにおいても機能する。負極レーザ加工工程S2bについて簡単に説明する。
【0057】
レーザヘッド92は、
図13に示すように、負極母シート63の活物質層形成領域63aに第1レーザLS1を照射する。第1レーザLS1は、レンズ92aによって、負極母シート63の所定位置に設定された焦点Pに向けて集光される。焦点Pは、負極用金属箔42の厚み中心の近傍に位置し、例えば負極用金属箔42の厚み内に位置している。あるいは焦点Pは、負極用金属箔42の近傍における表負極活物質層44内、または負極用金属箔42の近傍における裏負極活物質層46内に位置している。なお、第1レーザLS1は、その光軸Jが負極母シート63に対して垂直となるように照射される。第1レーザLS1は、表負極活物質層44から裏負極活物質層46に向けて照射される。
【0058】
レーザヘッド192は、
図12に示すように、負極母シート63の両金属箔露出領域63b,63cに第2レーザLS2を照射する。第2レーザLS2は、レーザヘッド192のレンズによって、負極母シート63の所定位置に設定された焦点に向けて集光される。焦点は、負極用金属箔42の厚み中心の近傍に位置し、例えば負極用金属箔42の厚み内に位置している。第2レーザLS2は、例えば、その光軸が負極母シート63に対して垂直となるように照射される。
【0059】
レーザLSは、
図12に示すように、負極母シート63から負極板40を切り出す。
図10,12では、レーザLS(
図10では図示省略)による切断ラインが点線にて示されている。レーザLSは、活物質層形成領域63aにて矩形状に負極ベース部48を切り出し、両金属箔露出領域63b,63cにて負極タブ42bを切り出す。レーザLSは、負極母シート63の幅方向に2つ負極板40を切り出す。第1レーザLS1は、活物質層形成領域63aの幅方向の中央にて、負極母シート63の長手方向に沿って負極タブ対向辺48bを切り出す。また、第1レーザLSは、負極母シート63の幅方向に沿って、負極第1側辺48c及び負極第2側辺48dを切り出す。負極母シート63の長手方向に隣り合う負極板40の負極第1側辺48cと負極第2側辺48dとは、一致している。第2レーザLSは、両金属箔露出領域63b,63cと活物質層形成領域63aとのそれぞれの境界にて、負極母シート63の長手方向に沿って負極タブ辺48aを切り出す。また、第2レーザLS2は、両金属箔露出領域63b,63cのそれぞれにて負極タブ42bを切り出す。なお、
図10,12では、活物質層形成領域63aがハッチングにて示されている。
【0060】
第1レーザLS1は、
図13に示すように、表負極活物質層44に負極大テーパ部44aを形成する。また、第1レーザLS1は、裏負極活物質層46に負極小テーパ部46aを形成する。両テーパ部44a,46aの構成は、
図6で説明したとおりである。両テーパ部44a,46aは、負極タブ対向辺48b、負極第1側辺48c、及び負極第2側辺48dのそれぞれに沿って形成される。両テーパ部44a,46aは、第1レーザLS1の照射によって同時に形成される。
【0061】
第1レーザLSは、
図13に示すように、負極母シート63に対して垂直に照射される。これにより、第1レーザLSの切断ラインを間においた両側では、対称の形状に負極大テーパ部44aが形成される。つまり、負極第1側辺48cと負極第2側辺48dとでは、互いに対称の形状の負極大テーパ部44aが形成される。同様にして、負極第1側辺48cと負極第2側辺48dとでは、互いに対称の形状の負極小テーパ部46aが形成される。なお、負極母シート63の幅方向の中央を間において切り出される2つの負極板40(
図10の点線参照)において、それぞれの負極タブ対向辺48bに形成される負極大テーパ部44aの形状もまた、互いに対称である。負極小テーパ部46aについても同様である。
【0062】
レーザLSにて切り出された各負極板40は、
図11に示す回収装置84にて、回収ボックス84bにストックされる。この後、各負極板40は、つぎに説明する積層工程S3にまわされる。
【0063】
積層工程S3では、
図14に示すように、正極板ユニット50と負極板40とが交互に積層される。積層工程S3では、積層装置100が使用される。積層装置100は、例えば、スライド面102と積層ボックス104とを有する。スライド面102には、図示しないコンベアから順次、正極板ユニット50と負極板40とが交互に搬送されている。正極板ユニット50と負極板40とは、スライド面102から積層ボックス104に落下する。積層ボックス104は、水平面に対して所定角度Wで傾斜している。したがって、積層ボックス104に落下した正極板ユニット50と負極板40とは、積層ボックス104の前面104a側に動いて、当該前面104aの側から順に積層されていく。これによって、正極板ユニット50と負極板40とが交互に積層された電極組立体20(
図6参照)が作製される。なお、正極板ユニット50と負極板40とは、
図6に示すように、それぞれの表面30a,40aを、正極板30及び負極板40の厚み方向において同一方向に向けて積層される。したがって、電極組立体20では、正極大テーパ部34aが設けられている表正極活物質層34と、負極大テーパ部44aが設けられている表負極活物質層44と、が同一方向を向いている。
【0064】
この後、電極組立体20は、ケース封入工程にまわされる。ケース封入工程では、
図15に示すように、電極組立体20がケース10に封入される。そして、ケース10は、注入口K(
図1では図示省略)を通じて、タンク110と連通される。タンク110は、電解液を有するタンク本体110aと、タンク本体110aとケース10とを連通する連通路110bと、を有する。電解液18は、
図15の矢印Yで示すように、連通路110bを通じてからタンク本体110aからケース10に流入する。そして、ケース10に電解液18が充填される。この後、電解液18が各活物質層34,36,44,46(
図6参照)に含浸するのを待つ。電解液18が各活物質層34,36,44,46に含浸した後、注入口Kを密封して、蓄電装置1(
図1参照)が完成する。
【0065】
上述のケース封入工程においては、従来、各活物質層に電解液が含浸するのに非常に時間がかかっていた。これに対して、電極組立体20では、
図6に示すように、表正極活物質層34の外縁に、正極板30の内方側へ傾斜した正極大テーパ部34aを設けている。したがって、表正極活物質層34では、正極板30の内方側への電解液18の供給が促進される。この結果、表正極活物質層34において電解液18の含浸の効率が向上するとともに、セパレータ54を間において表正極活物質層34と対向する裏負極活物質層46に対しても、電解液18の供給が促進される。そのため、裏負極活物質層46においても、電解液18の含浸の効率が向上する。
【0066】
また、電極組立体20では、
図6に示すように、表負極活物質層44の外縁に、負極板40の内方側へ傾斜した負極大テーパ部44aを設けている。したがって、表負極活物質層44では、負極板40の内方側への電解液18の供給が促進される。この結果、表負極活物質層44において電解液18の含浸の効率が向上するとともに、セパレータ54を間において表負極活物質層44と対向する裏正極活物質層36に対しても、電解液18の供給が促進される。そのため、裏正極活物質層36においても、電解液18の含浸の効率が向上する。
【0067】
図6に示すように、正極板30及び負極板40は、正極大テーパ部34a及び負極大テーパ部44aが設けられているそれぞれの表面30a,40aを、正極板30及び負極板40の厚み方向において同一方向に向けて積層されている。そのため、電極組立体20では、例えば
図7に示すようにして正極板30と負極板40とを互いの表面30a,40aを向かい合わせて積層させた場合に比べて、電解液18が入り込むことができる隙間が分散される。したがって、電極組立体20では、上述のように各活物質層34,36,44,46への電解液18の供給の促進を図った上で、正極板30と負極板40とで積層方向に電解液18の含浸ムラが生じることを抑制できる。
【0068】
本発明の形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
【0069】
正極大テーパ部34a(
図4参照)は、正極板30の4辺38a,38b,38c,38dの全てに設けられても良いし、これらの4辺38a,38b,38c,38dの少なくとも一辺に設けられていてもよい。同様に、負極大テーパ部44a(
図5参照)は、負極板40の4辺48a,48b,48c,48dの全てに設けられてもよいし、これらの4辺48a,48b,48c,48dの少なくとも一辺に設けられていてもよい
【0070】
正極大傾斜角度θ1A及び正極小傾斜角度θ1B(
図6参照)は、正極板30の各辺38a,38b,38c,38dのそれぞれで個別に設定してもよい。ただし、正極板30の各辺38a,38b,38c,38dのそれぞれにおいて、正極大傾斜角度θ1Aは正極小傾斜角度θ1Bよりも大きく設定される。同様にして、負極大傾斜角度θ2A及び負極小傾斜角度θ2B(
図6参照)は、負極板40の各辺48a,48b,48c,48dのそれぞれで個別に設定してもよい。ただし、負極板40の各辺48a,48b,48c,48dのそれぞれにおいて、負極大傾斜角度θ2Aは負極小傾斜角度θ2Bよりも大きく設定される。なお、既に説明した正極大傾斜角度θ1Aと負極大傾斜角度θ2Aとの大小関係(θ1A<θ2A)は、正極板30と負極板40とで互いに対応する各辺ごとに満たされる。つまり、当該大小関係は、正極タブ辺38aと負極タブ辺48aとにおいて満たされる。また、当該大小関係は、正極タブ対向辺38bと負極タブ対向辺48bとにおいて満たされる。また、当該大小関係は、正極第1側辺38cと負極第1側辺48cとにおいて満たされる。また、当該大小関係は、正極第2側辺38dと負極第2側辺48dとにおいて満たされる。
【0071】
図20に示すように、正極大テーパ部34b及び正極小テーパ部36bは、それぞれ、山なりに湾曲して傾斜していてもよい。また、
図21に示すように、正極大テーパ部34c及び正極小テーパ部36cは、谷形に湾曲して傾斜していてもよい。同様にして、負極大テーパ部及び負極小テーパ部についても、山形または谷形に湾曲して傾斜してもよい。
図16〜21において、
図1〜15と同一もしくは実質同一な構成・機能を有する箇所には
図1〜15と同一の符号を付すことで、重複した説明を省略する。
【0072】
電極組立体は、
図16に示す電極組立体21を採用してもよい。電極組立体21では、正極板30と負極板40とが、それぞれセパレータで包むことなく露出されている。正極板30と負極板40との間には1枚状のセパレータ56が設置される。正極大傾斜角度θ1Aは、負極大傾斜角度θ2Aよりも小さい。
【0073】
図16に示すように、正極板30は負極板40よりも面積が小さい。そのため、負極板40は、正極板30から食み出した食出部49を有する。この食出部49を覆うセパレータ食出部56aは、正極板30の外縁まわりに形成される液だまりEを保持する面の一部となって、当該液だまりEの形成を助長する。したがって、正極大テーパ部34aに沿って形成される液だまりEは、負極大テーパ部44aに沿って形成される液だまりEに比べて、安定して保持されやすい。そこで、正極大傾斜角度θ1Aを、負極大傾斜角度θ2Aに比べて小さく設定しておくことで、正極大テーパ部34aと負極大テーパ部44aとでそれぞれに形成される液だまりEの量の均一化を図ることができる。そして、正極大テーパ部34aが設けられた正極板30の表面30aと、負極大テーパ部44aが設けられた負極板40の表面40aと、を正極板30及び負極板40の厚み方向において同一方向に向けて正極板30と負極板40とが積層されることで、電極組立体21では、積層方向に関する電解液18の含浸ムラが抑制される。
【0074】
電極組立体は、
図17に示す電極組立体22を採用してもよい。電極組立体22においては、表負極活物質層44と裏負極活物質層46とがそれぞれ耐熱層58で覆われている。耐熱層58は、両負極活物質層44,46の全域に亘って連続して形成されている。耐熱層58は、例えばセラミックで構成されている。耐熱層58は、正極板30と負極板40とが高熱等を理由に短絡することを好適に抑制できる。負極大テーパ部44aは、表負極活物質層44から耐熱層58に亘って連続して設けられている。そして、表負極活物質層44は、負極大テーパ部44aにおいて露出されている。したがって、負極大テーパ部44aに沿って形成される液だまりEから表負極活物質層44への電解液18の供給が促進されて、電解液18の表負極活物質層44への含浸速度が向上する。負極小テーパ部46aは、裏負極活物質層46から耐熱層58に亘って連続して設けられている。そして、裏負極活物質層46は、負極小テーパ部46aにおいて露出されている。
【0075】
電極組立体は、正極板ユニット50(
図2参照)と、表裏両面に耐熱層58を有する負極板40(
図17参照)とを有し、これらの正極板ユニット50と負極板40とが交互に積層される構成であってもよい。
【0076】
図18に示す電極組立体23のように、耐熱層58は、セパレータ56に形成してもよい。耐熱層58は、セパレータ56における負極板40と対向する側の面の全域に亘って形成されている。この構成においても、
図17に示した電極組立体22と同様に、耐熱層58は、正極板30と負極板40とが高熱等を理由に短絡することを抑制できる。また、正極大テーパ部34a及び負極大テーパ部44aに沿って液だまりEが形成される。液だまりEは、表正極活物質層34及び表負極活物質層44への電解液18の供給を促進する。これにより表正極活物質層34及び表負極活物質層44への電解液18の含浸速度が向上する。
【0077】
電極組立体は、セパレータで包まれていない正極板30と、セパレータで包まれた負極板40と、を有していてもよい。負極板40は、例えば負極板40よりも面積の大きいセパレータで袋状に覆われ、これにより負極板ユニット(電極板ユニット)が構成される。正極板30と負極板ユニットとは、交互に積層される。この場合、負極大傾斜角度は、正極大傾斜角度よりも小さく設定される。
【0078】
図19に示すように、正極母シート61は、活物質層形成領域61aの幅を、正極タブ対向辺38bから正極タブ辺38aまでの長さに略一致するように設定してもよい。この場合、正極板30は、
図19の点線で示すように、正極母シート61の幅方向に一つのみ切り出される。同様に、負極母シート63は、活物質層形成領域63aの幅を、負極タブ対向辺48bから負極タブ辺48aまでの長さに略一致するように設定してもよい。負極板40は、負極母シート63の幅方向に一つのみ切り出される。
【0079】
塗工乾燥装置70及びレーザ加工機80は、上述の実施の形態にて示した構成のものに限定されるものではなく、上述の実施の形態と同様の機能を奏する構成のものであれば、どのようなものでもよい。レーザ装置は、例えば、レーザの照射位置をミラーによって3次元的に変更できるスキャナタイプでもよい。レーザは、その光軸が正極母シート61及び負極母シート63に対して垂直に照射されなくてもよい。レーザ装置は、正極母シート61及び負極母シート63の搬送動作中に、当該正極母シート61及び負極母シート63にレーザを照射して当該正極母シート61及び負極母シート63を切断してもよい。