(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の負荷へ供給される電力が交流電源により供給され、1つの変流器によって構成される前記電流検出部を備える、請求項1から5の何れかに記載の負荷制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の装置では、負荷電流の計測を行う際に、一定時間の間は各ヒータへの電力供給をOFFにする必要があり、この時間の分だけ電力供給が止まることになる。従って、従来の装置では、特に操作出力値100%に近い大きな出力が必要な状況において、所望する操作出力値に見合うだけの出力が得られない状況があった。また、同時に負荷電流の計測を行うヒータの数が増加するにつれて、計測の対象でないヒータへの電力供給が止まる時間が累積されていくため、この傾向はさらに顕著となる。その結果、必要な電源供給が行えないために、装置の立ち上げ完了が遅れる原因となっていた。この装置の立ち上げ完了が遅れる問題を解消するために、電力供給が止まる時間を短くすると、AD変換に割り当てることができる時間も短くなり、計測結果の負荷電流値の分解能が低下してしまう。
従って、1つの電流検出器を用いて複数の負荷電流を計測する場合、電流計測の分解能や精度を保ちつつ、電流計測時に電力供給が止まる時間を短くすることが難しいという課題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、1つの電流検出器による複数の算出対象負荷に流れる電流の検出結果を用いて、各算出対象負荷に流れる負荷電流値を算出する負荷制御装置、負荷制御装置の電流計測方法であって、電流計測の分解能や精度の向上を図りながら、電流計測時に電力供給が止まる時間を短くすることが可能な、負荷制御装置、負荷制御装置の電流計測方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(構成1)
制御対象である複数の負荷への電力供給を制御する装置であって、
前記複数の負荷のうち、負荷電流値の算出を行う複数の算出対象負荷に対して、事前に設定された時間において、前記複数の算出対象負荷のうち何れか1つの負荷に流れる電流のみが0である場合に、電流検出部によって検出された前記複数の算出対象負荷に流れる電流を電流値として取り込み、合成電流値として記録する処理を、全ての前記複数の算出対象負荷について実施し、前記複数の算出対象負荷の中のx番目の負荷に流れる負荷電流値を、以下の式で表されるI(x)によって算出する負荷電流算出部を備え、
【0009】
【数1】
前記式において、
Ic(k)は、前記複数の算出対象負荷の中のk番目の負荷に流れる電流のみが0である場合の前記負荷電流算出部で記録された前記合成電流値であり、
nは前記複数の算出対象負荷の総数であり、2以上の整数であることを特徴とする負荷制御装置。
【0010】
(構成2)
前記負荷制御装置における電力供給の制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにするとともに、前記制御信号の出力周期内における電力供給をONにする時間とOFFにする時間の比率が、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて決定されることを特徴とする、構成1に記載の負荷制御装置。
【0011】
(構成3)
前記負荷制御装置における前記制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにしようとすると、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて定められた値より多くの電力が供給されてしまう負荷がある場合に、その負荷に限り前記事前に設定された時間においては電力供給を終始OFFとし、前記制御信号の出力周期内における、前記事前に設定された時間以外にだけ、前記負荷毎に設定された操作出力値に基づく割合で電力供給を行うことを特徴とする、構成1又は2に記載の負荷制御装置。
【0012】
(構成4)
前記負荷制御装置における前記制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにしようとすると、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて定められた値の電力を供給できない負荷がある場合に、その負荷に限り前記制御信号の出力周期内における前記事前に設定された時間以外において、電力供給を終始ONとすることを特徴とする、構成1又は2に記載の負荷制御装置。
【0013】
(構成5)
前記負荷制御装置における前記制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにしようとすると、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて定められた値の電力を供給できない負荷がある場合に、前記複数の算出対象負荷の全てにおいて、前記事前に設定された時間に順次前記複数の算出対象負荷の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにしようとする操作を行わずに、前記制御信号の出力周期内において、前記負荷毎に設定された操作出力値に基づく割合で電力供給を行うことを特徴とする、構成1又は2に記載の負荷制御装置。
【0014】
(構成6)
前記複数の負荷へ供給される電力が交流電源により供給され、1つの変流器によって構成される前記電流検出部を備える、構成1から5の何れかに記載の負荷制御装置。
【0015】
(構成7)
前記電流検出部は、前記複数の算出対象負荷に接続される電源の経路が個別に構成されるとき、前記経路を前記1つの変流器に貫通させることで、前記電流値を取得することを特徴とする構成6に記載の負荷制御装置。
【0016】
(構成8)
制御対象である複数の負荷への電力供給を制御する負荷制御装置の電流計測方法であって、
前記複数の負荷のうち、負荷電流値の算出を行う複数の算出対象負荷に対して、事前に設定された時間において、前記複数の算出対象負荷のうち何れか1つの負荷に流れる電流のみが0である場合に、検出された前記複数の算出対象負荷に流れる電流を電流値として取り込み、合成電流値として記録する処理を、全ての前記複数の算出対象負荷について実施し、前記複数の算出対象負荷の中のx番目の負荷に流れる負荷電流値を、以下の式で表されるI(x)によって算出する負荷電流算出ステップを備え、
【0017】
【数2】
前記式において、
Ic(k)は、前記複数の算出対象負荷の中のk番目の負荷に流れる電流のみが0である場合の前記負荷電流算出ステップで記録された前記合成電流値であり、
nは前記複数の算出対象負荷の総数であり、2以上の整数であることを特徴とする負荷制御装置の電流計測方法。
【0018】
(構成9)
前記負荷制御装置の電流計測方法における電力供給の制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにするとともに、前記制御信号の出力周期内における電力供給をONにする時間とOFFにする時間の比率が、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて決定されることを特徴とする、構成8に記載の負荷制御装置の電流計測方法。
【0019】
(構成10)
前記負荷制御装置の電流計測方法における前記制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにしようとすると、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて定められた値より多くの電力が供給されてしまう負荷がある場合に、その負荷に限り前記事前に設定された時間においては電力供給を終始OFFとし、前記制御信号の出力周期内における、前記事前に設定された時間以外にだけ、前記負荷毎に設定された操作出力値に基づく割合で電力供給を行うことを特徴とする、構成8又は9に記載の負荷制御装置の電流計測方法。
【0020】
(構成11)
前記負荷制御装置の電流計測方法における前記制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにしようとすると、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて定められた値の電力を供給できない負荷がある場合に、その負荷に限り前記制御信号の出力周期内における前記事前に設定された時間以外において、電力供給を終始ONとすることを特徴とする、構成8又は9に記載の負荷制御装置の電流計測方法。
【0021】
(構成12)
前記負荷制御装置の電流計測方法における前記制御信号が、
前記合成電流値の取得のため、前記事前に設定された時間だけ順次前記複数の算出対象負荷の中の何れか1つの負荷への電力供給をOFFにしようとすると、負荷毎に設定された操作出力値に基づいて定められた値の電力を供給できない負荷がある場合に、前記複数の算出対象負荷の全てにおいて、前記事前に設定された時間に順次何れか1つの前記複数の算出対象負荷への電力供給をOFFにしようとする操作を行わずに、前記制御信号の出力周期内において、前記負荷毎に設定された操作出力値に基づく割合で電力供給を行うことを特徴とする、構成8又は9に記載の負荷制御装置の電流計測方法。
【0022】
(構成13)
前記複数の負荷へ供給される電力が交流電源により供給され、1つの変流器によってなされる前記電流検出ステップを備える、構成8から12の何れかに記載の負荷制御装置の電流計測方法。
【0023】
(構成14)
前記電流検出ステップは、前記複数の算出対象負荷に接続される電源の経路が個別に構成されるとき、前記経路を前記1つの変流器に貫通させることで、前記電流値を取得することを特徴とする構成13に記載の負荷制御装置の電流計測方法。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、1つの電流検出器による複数の算出対象負荷に流れる電流の検出結果を用いて、各算出対象負荷に流れる負荷電流値を算出する負荷制御装置、負荷制御装置の電流計測方法において、電流計測の分解能や精度の向上を図りながら、電流計測時に電力供給が止まる時間を短くすることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態
以下、本発明の実施の形態に係る負荷制御装置について図を参照して説明する。
【0027】
<機能及び構成>
図1はこの発明の実施の形態に係る負荷制御装置100の構成を示すブロック図である。
負荷制御装置100は、出力部110と、負荷電流算出部130と、異常検出部150と、出力タイミング生成部160と、を備え、同じく接続された操作器141〜144により各負荷への電力供給を制御し、負荷制御装置100に接続された電流検出部120によって負荷に流れる電流を検出する。
なお、ここでは負荷制御装置100が電流検出部120と、操作器141〜144を備えないものを例として説明しているが、電流検出部120と操作器141〜144の何れか若しくは双方が、負荷制御装置100に備えられるものであっても良い。
【0028】
出力タイミング生成部160は、操作出力値等の設定を行い、制御信号の生成を行うと共に、出力部110、負荷電流算出部130、および異常検出部150の動作タイミングを統括する。
出力部110は、負荷制御装置100に接続された操作器141〜144へ、出力タイミング生成部160にて生成された出力タイミングに基づいた制御信号を出力する。
操作器141〜144は、接続された負荷それぞれに対して、出力部110からの制御信号に従い電力供給のON/OFFを制御する。
電流検出部120は複数の算出対象負荷(負荷電流値の算出を行う対象の負荷)に流れる電流を検出する。なお、本実施の形態においては、全ての負荷を算出対象負荷とするものを例として説明する(以下、特に言及する場合を除き、算出対象負荷のことを単に負荷という。図内の説明についても同様である。)。
負荷電流算出部130は、電流検出部120で検出された電流を計測し、電流値として取り込み、合成電流値として記録し、それぞれの負荷に流れる負荷電流値を算出する。
異常検出部150は、出力タイミング生成部160において生成された出力タイミング及び負荷電流算出部130にて算出した負荷電流値に基づいて、負荷自体、または負荷に接続された回路等の異常を検出する。
【0029】
なお、本実施の形態においては、前述のごとく負荷制御装置100に接続された負荷の全て(負荷1〜負荷4)を算出対象負荷とし、算出対象負荷の数が4であるものを例としているが、算出対象負荷の数については、2以上の任意の数であってもよい。また、本実施の形態では、算出対象負荷を事前に定めた例を説明しているが、図示しない入力部等により算出対象負荷を切り替える構成など、任意のタイミングで算出対象負荷を切り替える構成にしてもよい。
また、電流検出部120は変流器等によって構成される電流検出器(電流検出センサ)であり、複数の負荷に流れる電流を検出できる構成であればよい。また、負荷に接続されている電源の種類に合わせて分流器等を用いてもよい。また、負荷電流算出部130には、電流検出部120にて検出された出力信号を計測し、電流値に変換する回路等が組み込まれていてもよい。
なお、負荷電流算出部130、異常検出部150および出力タイミング生成部160は、それぞれ専用の回路によって構成されているが、マイクロコンピュータ等で構成されていてもよい。また、操作器141〜144は、半導体リレー(SSR:Solid−State Relay)によって構成されているが、機械式リレーや、ハイブリッドリレー等で構成されていてもよい。
また、各負荷へ接続された電源は、単相の交流電源により構成されているが、経路により位相および周波数がそれぞれ異なる交流電源や直流電源により構成されていてもよい。
【0030】
以下に、負荷電流算出部130にて用いる電流算出手法について説明する。
本手法は、1つの電流検出部により検出された複数の負荷に流れる電流から、所定の条件における電流を計測し、得られた電流値を合成電流値として記録し、各負荷に流れる負荷電流値を算出するものである。
そのために、まず、複数の負荷に流れる電流を計測する。以下に、操作器の特性および負荷電源の特性に応じた電流の取り扱いについて説明する。
【0031】
図2は、負荷電源が単相の交流電源である場合における電源電圧と、操作器における制御信号と、負荷に流れる電流との関係を示した模式図である。なお、
図2においては、負荷1〜4の抵抗値は全て同じ値として説明する。
操作器が、半導体リレーにより構成され、ゼロクロス機能(電源電圧が0ボルトをさえぎる瞬間にスイッチング動作を行う機能)を有する場合において、ゼロクロスのタイミングと入力信号の立ち上がり(または立ち下がり)のタイミングが重なった際には、回路特性や負荷電源に重畳するノイズの影響によって、スイッチング動作のタイミングがずれてしまい、各負荷に流れる電流が不確定になる場合がある。すなわち、
図2における点線で示された電流波形のいずれの状態を取るかが確定しない場合がある。そのため、スイッチング動作直後半周期の間は、電流の計測を行わない期間を設ける。このような期間を設けることにより、制御信号と電力供給が一致した状態での計測が可能となり、正確な電流を計測することができる。
以後、そのような電流の計測を行わない期間を未計測期間とし、
図4から
図6、
図14のグラフ上において、グレーの期間で表す。
図9から
図12についても、同様の表現である。
なお、操作器が半導体リレーではなく、機械式リレーの場合は未計測期間をリレー接点の機械的な動作時間として設定することで、正確な電流を計測することができる。より具体的には、未計測期間を、動作時間とバウンス時間の和、または復帰時間とバウンス時間の和の何れか長いほうを設定する。
【0032】
図3は、
図1に示す電流検出部120が変流器120´により構成され、負荷電源がそれぞれ異なる経路により構成される場合の構成図である。
【0033】
図4は、交流電源の位相が120度ずつ異なる(R相、S相、T相)場合、各相により負荷に印加される電源電圧を示したものである。上記のようにグレーで示される未計測期間を定めているため、位相によらず未計測期間以外での出力状態が確定する。そのため、負荷制御装置100が
図3のように構成され、負荷電源の位相がそれぞれ異なる場合であっても、
図2同様に正確な電流を計測することができる。
【0034】
図5は、交流電源の周波数がそれぞれ50Hz又は60Hzであった場合の、負荷に印加される電源電圧を示したものである。また、
図5に示すように、未計測期間は、電源周波数50Hzの場合を基準に10msの整数倍に設定することで、電源周波数が50Hz、60Hzのどちらの場合でも、未計測期間以外での出力状態が確定する。そのため、負荷制御装置100が
図3のように構成され、負荷電源の周波数が50Hzと60Hzで異なった場合においても、
図2同様に正確な電流を計測することができる。
なお、計測期間を50msの整数倍にすることで、電源周波数が50Hzの場合は2.5周期の整数倍の期間、60Hzの場合は3周期の整数倍の期間で電流を計測できる。
なお、電流検出部120を1つの変流器で構成することができるため、基板に部品を搭載する実装工程の工数削減、および製品重量削減の効果が得られる。
また、
図3から理解されるように、複数の電源供給路(ケーブル)が存在する場合においても、1つの変流器に各負荷が接続されたケーブルを貫通させることで電流の計測が可能となるため、敷設済みの配線をそのまま使用でき、システム更新時のコスト削減の効果が得られる。更に、電流容量の小さい細いケーブルを使用できるため、配線の取り回しが容易になるという効果も得られる。
【0035】
このように、負荷電源として位相や周波数の異なる交流電源を用いたとしても、未計測期間を除いて、意図した、すなわち、操作器への制御信号を正しく反映した状態での負荷に流れる電流を計測できることがわかる。
【0036】
図6は、負荷電流算出部130において、電流の計測を行う期間、すなわち電流計測時に、出力部110から出力される制御信号を示すタイミングチャートである。
このように、電流の計測を連続して行う場合でも、制御信号の切り替わるタイミングの前後に適切な未計測期間を設けることで、制御信号の状態を反映した電流を計測することができる。以降、本実施の形態においては、複数の負荷に流れる電流を、複数の組み合わせで連続して計測を行う期間のことをスキャン期間と呼ぶ。
【0037】
次に、複数の負荷に流れる電流の計測と、合成電流値の記録、負荷電流算出部130における負荷電流値の算出方法について説明する。
図6において、電力供給がONであるときの各負荷1〜4に流れる負荷電流値をそれぞれA、B、C、Dと仮定する。また、負荷電源が交流電源の場合は、電流値、合成電流値および負荷電流値については実効値として取り扱う。
負荷電流値A、B、C、Dの算出のために、まず、負荷1への制御信号のみを事前に定められた、未計測期間t
bと計測期間t
sの合計である時間(t
b+t
s)だけOFFにする(
図6における期間1)。その際に、制御信号をOFFにした負荷1以外の負荷、すなわち、負荷2〜4の制御信号はONとする。よって、期間1の計測期間において電流検出部120にて検出され、負荷電流算出部130に取り込まれる電流値はB+C+Dとなる。この電流値を、合成電流値Ic(1)として記録する。同様に負荷2への制御信号のみをOFFにした場合、期間2の計測期間における電流値A+C+Dを、合成電流値Ic(2)として記録する。同様に負荷3への制御信号のみをOFFにした場合、期間3の計測期間における電流値A+B+Dを、合成電流値Ic(3)として記録する。同様に負荷4への制御信号のみをOFFにした場合、期間4の計測期間における電流値A+B+Cを、合成電流値Ic(4)として記録する。
なお、合成電流値を記録する順番は、スキャン期間の中で必要に応じて入れ替えても良い。
Ic(1)からIc(4)の合成電流値をまとめると、以下の数3のようになる。
【0038】
【数3】
なお、Ic(k)は、k番目の負荷への電流のみが0である場合の合成電流値である。
【0039】
数3に表される連立方程式を解くことにより、負荷電流値A、B、C、Dの値を算出することができる。例えば、負荷1に流れる負荷電流値であるAは以下の数4により算出される。
【0041】
上述の内容を一般化すると、x番目の負荷に流れる負荷電流値I(x)は、以下の数5で表すことができる。
【0042】
【数5】
なお、nは負荷制御装置100に接続されている算出対象負荷の数(ただし、1つの変流器で電流の計測対象となっている算出対象負荷の数)であり、2以上の整数である(本実施の形態では4)。
【0043】
このように、まず、何れか1つの負荷への制御信号のみをOFFにし、それ以外の負荷への制御信号をONとしている場合の計測期間における電流を計測し、合成電流値として記録する。そして、同様の処理を全ての負荷について順次行ってゆき、記録された全ての合成電流値を数5に代入することで、各負荷に流れる負荷電流値を算出することができる。
なお、本実施の形態においては、負荷制御装置100に接続されている全ての負荷について負荷電流値の算出を行うように構成されていたが(全ての負荷を算出対象負荷とした。)、任意の負荷についてのみ電流の計測と合成電流値の算出を行うようにしてもよい(任意の負荷のみを算出対象負荷とする。)。その際、電流計測時は負荷電流値の算出を行わない負荷の電流が0になっている必要がある。
【0044】
図1に戻り、異常検出部150には、各負荷のスキャン期間中の出力状態が出力タイミング生成部160から入力され、更に、負荷電流算出部130によって算出された各負荷に流れる負荷電流値が入力される。そして、負荷毎に、スキャン期間中の出力状態及び、設定された種々の異常に対応した閾値および負荷電流値等を比較することで、接続された回路等に発生した異常を検出する。
具体的には、出力タイミング生成部160によって生成された出力タイミングにおいて、スキャン期間内の特定の負荷の制御信号がONになっているにも関わらず、負荷電流値が0であった場合には、断線と判定する。また、同様に、特定の負荷の制御信号がONになっているにも関わらず、負荷電流値が期待する電流値を大きく下回っていた場合、負荷の性能低下、消耗や故障等の異常と判定し、負荷電流値が期待する電流値を大きく上回っていた場合、過電流や、ショートが発生していると判定する。また、上記出力タイミングにおいて、スキャン期間内の特定の負荷の制御信号が終始OFFになっているにも関わらず、負荷電流値が0でない場合には、操作器等の接点溶着やショート等の異常が発生していると判定する。
検出した異常は、異常検出LED等の図示しない表示部によりユーザへ通知される。
なお、検出する異常の種類及び判定手法については上記例に限られるものではなく、負荷への出力状況と実際に負荷に流れる電流値との比較によって検出が可能な異常及び判定手法であればよい。
また、検出した異常については、ユーザへ直接通知するだけではなく、通信データとして、別のシステムへと情報が転送されるようにしてもよい。
【0045】
<動作>
図7及び
図8は、本実施の形態における負荷制御装置100の概略動作を示したフローチャートである。以下、それぞれの動作につき
図7及び
図8を参照しながら説明する。
【0046】
図7は、本実施の形態における制御信号の生成についての概略動作を示したフローチャートである。これらの動作は、出力周期毎に1回ずつ、繰り返し実行され、ステップS711からS723までの処理は、各負荷に対して個別に実施されることを基本動作としている。
まず、ステップS701にて、電力供給のON/OFF制御に必要なパラメータを取得する。このとき、スキャン期間Sが、未計測期間t
b、計測期間t
s、負荷の数n(算出対象負荷の数であり、本実施の形態では4である。)によって決定され、以下の数6で表される。
【0047】
【数6】
なお、未計測期間t
b及び計測期間t
sについては、図示しない入力部等の設定値を参照するようにしてもよいし、あらかじめ装置ごとに決められた値を用いるようにしてもよい。
【0048】
次に、ステップS711にて、操作出力値MV、出力周期Tとの関係で以下の数7に表される関係が成立した場合(ステップS711:Yes)、ステップS712へと移行する。また、数7に表される関係が成立しなかった場合(ステップS711:No)、ステップS723へと移行する。
【0049】
【数7】
そして、ステップS712にて、操作出力値MV、出力周期Tとの関係で以下の数8に表される関係が成立した場合(ステップS712:Yes)、ステップS721へと移行する。また、数8に表される関係が成立しなかった場合(ステップS712:No)、ステップS722へと移行する。
【0050】
【数8】
つまり、設定された操作出力値MVにおいて、スキャン期間Sの中で電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作が実施できるかを判断している。その結果に応じて制御信号の生成方法をステップS721〜S723の中から選択する。
【0051】
以下、
図9〜
図12を参照しながらステップS721〜S723について具体的に説明する。
なお、図中の上段のチャートは、一般的な電力制御方法である時間比例制御を行う際の、出力周期内における制御信号である。
また、図中の下段のチャートは、電流の計測と合成電流値を記録するためのスキャン期間Sが挿入された、出力周期内における制御信号の一例であり、負荷2の制御信号を示している。本実施の形態において接続された負荷の数はn=4であるので、スキャン期間Sは(t
b+t
s)×4となる。また、負荷電流値の算出に必要な合成電流値をスキャン期間S中に連続して記録する際に、負荷2の制御信号のみをOFFにする順番を2番目としている。
【0052】
図9の下段のチャートは、ステップS711およびステップS712において、設定された操作出力値MVを維持したまま、スキャン期間Sの中で電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作を実施できると判断した場合に、ステップS721で生成される制御信号である。
スキャン期間S中に、負荷2の制御信号のみをOFFにする時間が挿入されるため、スキャン期間S中のON時間t
on1は以下に示す数9となる。
【0053】
【数9】
よって、設定された操作出力値MVに相当するだけのON時間を確保するには、スキャン期間S外に設けるON時間t
on2を以下に示す数10とする必要がある。
【0054】
【数10】
なお、スキャン期間S外で制御信号をONにするタイミングについては、
図10の下段チャートに示すように、同じ出力周期内であれば任意のタイミングで発生させても良い。
このような制御信号を生成することで、
図9の上段に示す時間比例制御と同じだけの電力供給のON/OFF時間が設定され、同等の制御特性を得ることができる。
【0055】
図12の下段のチャートは、ステップS711およびステップS712において、スキャン期間Sの中で電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作を実施すると、設定された操作出力値MV以上に電力供給を行ってしまうと判断した場合に、ステップS723で生成される制御信号である。
スキャン期間S中は終始制御信号をOFFとし、スキャン期間S外で設定された操作出力値MVに相当するだけのON時間を確保する。よって、スキャン期間S中のON時間t
on1とスキャン期間S外に設けるON時間t
on2は数11、数12のようになる。
【0057】
【数12】
このような制御信号を生成することで、電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作が実施できない負荷が含まれる場合においても、当該負荷以外の負荷電流値の算出を継続することができる。
なお、この条件において制御信号を生成した負荷については、スキャン期間S中の制御信号が終始OFFになることからも分かるように、算出される当該負荷電流値の算出結果が0となる(算出された負荷電流値が0でない場合には、操作器等の接点溶着やショート等の異常が発生していると判定されることになる)。
【0058】
図11の下段のチャートは、ステップS711およびステップS712において、スキャン期間Sの中で電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作を実施すると、設定された操作出力値MVに満たないと判断した場合に、ステップS722で生成される制御信号である。
スキャン期間S中に、負荷2の制御信号のみをOFFにする時間が挿入され、スキャン期間S外においては終始制御信号をONにする。よって、スキャン期間S中のON時間t
on1とスキャン期間S外に設けるON時間t
on2は数13、数14のようになる。
【0060】
【数14】
このような制御信号を生成することで、負荷電流値の算出を継続することができる。ただし、
図11の上段に示す時間比例制御と同等のON時間が確保できないため、電力供給が制限されているのと同じ状態となる。
ステップS711およびステップS712において、スキャン期間の中で電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作を実施すると、設定された操作出力値MVに満たないと判断した場合、図示しない入力部等により設定を行うことで、全ての負荷において
図11の上段のような一般的な電力制御方法に切り替えられるようにしてもよい。なお、この場合には負荷電流値の算出は実施できないが、電力供給に制限をかけることなく制御を続行できるため、装置立ち上げ時間を短縮することができる等のメリットがある。
また、ステップS711およびステップS712において、スキャン期間Sの中で電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作を実施すると、設定された操作出力値MV以上に電力供給を行ってしまうと判断した場合でも、図示しない入力部等により設定を行うことで、スキャン期間Sの中で電流の計測と合成電流値を記録するための制御信号のON/OFF操作を強制的に実施し、負荷電流値の算出を継続してもよい。
なお、本実施の形態においては、出力周期毎にスキャン期間Sを挿入し、負荷電流値を算出するようにしているが、図示しない入力部等から設定した任意のタイミングの次の出力周期にスキャン期間Sを挿入して、負荷電流値の算出を実行するようにしてもよい。
また、電流計測時の電流の計測と合成電流値を記録する動作を、複数の出力周期に渡って順番に実施し、必要な全ての合成電流値が記録された時点で負荷電流値を算出するようにしてもよい。
また、制御信号にスキャン期間Sを強制的に挿入するのではなく、一般的な電力制御方法を行う中で、そのときの各負荷への制御信号のON/OFF状態の組み合わせが、所望の合成電流値の条件と一致している判断した場合に、電流の計測と合成電流値の記録を行い、必要な全ての合成電流値が記録された時点で負荷電流値を算出するようにしてもよい。
以上のように、操作出力値MVに応じて制御信号を変えることにより、可能な限り時間比例制御と同等の制御性を維持しながら、安全に負荷電流値の算出を継続することができる。
【0061】
全ての負荷について制御信号が生成されると、出力タイミング生成部が各負荷の制御信号の同期を取りながら出力動作を開始(ステップS702)する。そして、操作器141〜144に対し、出力部110から制御信号が出力される。
【0062】
図8は、本実施の形態における電流の計測、合成電流値の記録、負荷電流値の算出および異常検出処理についての概略動作を示したフローチャートである。これらも、出力周期毎に繰り返し実行され、ステップS811以降の処理は、各負荷に対して個別に実施されることを基本動作としている。
まず、スキャン期間S中の期間1から期間4の各計測期間において、電流検出部120によって検出され、負荷電流算出部130により取り込まれた電流値が、合成電流値Ic(1)、Ic(2)、Ic(3)、Ic(4)として記録される(ステップS801)。そして、全ての合成電流値の記録が完了すると、数5を用いて各負荷に流れる負荷電流値が算出される(ステップS802)。そして、算出された負荷電流値に基づき、異常検出部150にて異常検出を行うための条件を判断する(ステップS811)。
図7におけるステップS721及びステップS722で制御信号が生成された場合等は、スキャン期間S中の負荷電流値が電源電圧と負荷の抵抗値に応じて定まる値になる事が期待される(ステップS811:Yes)。従って、図示しない入力部等により設定された期待値と比較し、負荷電流値が当該期待値を大きく下回っていた場合または大きく上回っていた場合は、負荷に異常があると判断し(ステップS812:Yes)、警報がONとなる(ステップS803)。また、負荷電流値が当該期待値相当となっている場合は負荷が正常と判断し(ステップS812:No)、警報がOFFとなる(ステップS804)。
また、
図7におけるステップS723で制御信号が生成された場合等は、スキャン期間S中の負荷電流値は0となることが期待される(ステップS811:No)。従って、負荷電流値が0である場合は正常と判断し(ステップS813:Yes)、警報がOFFとなる(ステップS805)。また、負荷電流値が0でない場合には異常と判断し(ステップS813:No)、警報がONとなる(ステップS806)。
【0063】
図13は、従来手法である特許文献1に記載の方法と本実施の形態における負荷制御装置によって各負荷電流値を算出した場合の比較結果を示した表である。実際の運用事例に基づき、負荷の数はn=8、出力周期はT=10000ms、未計測期間はt
b=10ms、計測期間はt
s=50msとする。このとき、スキャン期間Sは数6よりS=(10+50)×8=480msとなる。
まず、出力周期毎に全ての負荷への負荷電流値の算出を行いながら負荷に供給できる最大出力(操作出力値の最大値)を比較する。
従来手法では、所望する負荷の制御信号だけを(未計測期間t
b+計測期間t
s)だけONにし、それ以外の負荷の制御信号はOFFとする。このとき、計測期間において電流検出部にて検出され、制御装置に取り込まれる電流値を負荷電流値とする。そして、この操作を負荷の数だけ繰り返すことにより、全ての負荷の負荷電流値を取得することができる。よって、負荷電流値を得るために出力周期あたりに挿入される制御信号のOFF時間t
off1は数15で表すことができる。
【0064】
【数15】
つまりt
off1=(10+50)×(8−1)=420msとなる。
【0065】
また、負荷電流値の取得を行いながら電力供給できる最大出力(操作出力値の制限)MV
limは以下に示す数16で表される。
【0066】
【数16】
故に、数16にt
off1=420msを代入すると、MV
limは95.8%となる。
本実施の形態においては、
図11下段のタイミング図に該当する操作のようにスキャン期間Sの中で何れか1つの負荷への制御信号のみを一度だけOFFにし、それ以外は終始ONとする。よって、負荷電流値を算出するために出力周期あたりに挿入される制御信号のOFF時間t
off1は数17で表すことができる。
【0067】
【数17】
つまりt
off1=(10+50)=60msとなる。これを数16に代入するとMV
limは99.4%となる。よって、従来手法よりも、より大きな電力供給が可能となり、装置立ち上げ時間の短縮等に効果がある。
次に電流値の精度について考える。一般的に、AD変換器等による計測においては、変換時間を長くするほど、より高分解能な計測が可能となる。
従来手法においては、所望する負荷の制御信号だけを60ms間(未計測期間+計測期間)ONにし、その中の計測期間50msの間にAD変換を行い、電流を計測し負荷電流値を得る。
本実施の形態においては、スキャン期間Sの中で何れか1つの負荷への制御信号のみを一度だけOFFにし、スキャン期間Sの中に設けられている複数の計測期間においてAD変換を行い、電流を計測している。よって、複数の計測期間t
s_allは数18のように表すことができる。
【0068】
【数18】
つまりt
s_all=50×(8−1)=350ms間に計測された電流値から負荷電流値を算出している。つまり、従来手法と比較して7倍相当の時間をかけてAD変換を行ったことと等価となり、より高分解能な負荷電流値を取得できる。
【0069】
また、負荷電流算出部130及び出力タイミング生成部160が、本実施の形態において説明した負荷電流値の算出方法および制御信号の生成手法に加えて、連立方程式を用いた類似手法により負荷電流値の算出及び出力タイミングの生成を行うように構成してもよい。また、その場合、負荷電流値の算出方法および制御信号の生成手法が、事前に設定された条件に従い自動的に切り替えられるようにしてもよいし、図示しない入力部等の設定値により任意に切り替えられるようにしてもよい。
【0070】
図14は上記連立方程式を用いた類似手法の1例を示すための、出力部110からの制御信号を示すタイミングチャートである。
各期間において、電流検出部120にて検出され、負荷電流算出部130に取り込まれた電流値は、以下に示す数19のような合成電流値として記録され、
【0072】
この連立方程式を解き、各負荷電流値を算出すると以下に示す数
20のようになる。
【0073】
【数20】
なお、
図14においては全ての負荷の制御信号がONとなる期間を期間1としているが、期間2から4の何れか1つの期間において全ての負荷の制御信号がONとなるような組み合わせにして、類似の連立方程式による負荷電流値の算出を実現してもよい。
【0074】
<発明の効果>
以上より、本実施の形態に記載の負荷制御装置100は、以下のような効果を奏する。
【0075】
本実施の形態においては、スキャン期間の中で、算出対象負荷のうち何れか1つの負荷への制御信号のみを一度だけOFFにし、スキャン期間の中に設けられている複数の計測期間においてAD変換を行い、電流を計測するよう構成されている。そのため、電流計測の分解能や精度の向上を図ることができるという効果を奏する。
また、本実施の形態においては、スキャン期間の中で、算出対象負荷のうち何れか1つの負荷への制御信号のみを一度だけOFFにし、それ以外は終始ONとするよう構成されている。そのため、電流計測時に電力供給が止まる時間を短くすることができるという効果を奏する。
【0076】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成及び動作については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、当業者が理解しうる様々な変更を行うことができる。