(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ダイポールエレメントは、前記第1開放端部からX方向に延在する第1開放端側部分を有し、前記第2ダイポールエレメントは、前記第2開放端部から前記X方向に対して直交するY方向に延在する第2開放端側部分を有する、請求項1に記載のカード型無線通信デバイス。
前記第1ダイポールエレメントは、前記第1開放端部から前記第1ダイポールエレメントの全長の1/10以上の部分が平面視において前記第1線状部を介して前記コイルアンテナの外縁に対向する位置に配置されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のカード型無線通信デバイス。
前記第1ダイポールエレメントは、前記第1開放端部から前記第1ダイポールエレメントの全長の1/4以上の部分が平面視において前記第1線状部を介して前記コイルアンテナの外縁に対向する位置に配置されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のカード型無線通信デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者らは、限られたカードサイズにおいて、コイルアンテナのサイズをより大きく確保しつつ、ダイポールアンテナの通信性能の低下を抑えるために鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0012】
ダイポールアンテナにおいては、ダイポールエレメントの開放端部側の部分が主として信号の送受信に寄与する一方、RFIC素子に接続されるダイポールエレメントの接続端部側の部分はほとんど信号の送受信に寄与しない。このため、ダイポールエレメントの接続端部側の部分(線状部)をコイルアンテナの外縁に近接して配置しても、ダイポールアンテナの通信性能への影響は少ない。また、平面視においてダイポールエレメントの開放端部とコイルアンテナの外縁との間に、ダイポールエレメントの接続端部側の部分を介在させることで、コイルアンテナによる干渉を一層抑えることができる。これらの新規な知見に基づき、本発明者らは以下の発明に至った。
【0013】
本発明の一態様に係るカード型無線通信デバイスは、
支持基材と、
前記支持基材上に設けられ、第1周波数帯の信号を送受信するコイルアンテナと、
前記コイルアンテナに接続された第1周波数帯用RFIC素子と、
前記支持基材上において前記コイルアンテナの外側に設けられ、前記第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を送受信するダイポールアンテナと、
前記ダイポールアンテナに接続された第2周波数帯用RFIC素子と、
を備えるカード型無線通信デバイスであって、
前記ダイポールアンテナは、
前記第2周波数帯用RFIC素子に接続された第1接続端部と、前記第1接続端部から前記コイルアンテナの外縁に沿って延在するように配置された第1線状部と、平面視において前記第1線状部を介して前記コイルアンテナの外縁に対向する位置に配置された第1開放端部とを有する第1ダイポールエレメントと、
前記第2周波数帯用RFIC素子に接続された第2接続端部と、前記第1線状部と前記コイルアンテナの外縁との最短距離よりも前記コイルアンテナの外縁から離れた位置に配置された第2開放端部とを有する第2ダイポールエレメントと、
を備えるように構成されている。
【0014】
この構成によれば、平面視において第1線状部を介してコイルアンテナの外縁と対向する位置に第1開放端部を配置しているので、第1ダイポールエレメントに対するコイルアンテナによる干渉を抑えることができる。これにより、第1ダイポールエレメントの全体をコイルアンテナの外縁により近接して配置することができる。また、第1線状部とコイルアンテナの外縁との最短距離よりもコイルアンテナの外縁から離れた位置に第2開放端部を配置しているので、第2ダイポールエレメントに対するコイルアンテナによる干渉も抑えることができる。その結果、限られたカードサイズにおいて、コイルアンテナのサイズをより大きく確保しつつ、ダイポールアンテナの通信性能の低下を抑えることができる。
【0015】
なお、前記第1開放端部と前記第1線状部との最短距離は、前記第1線状部と前記コイルアンテナの外縁との最短距離よりも大きくしてもよい。この構成によれば、第1ダイポールエレメントに対するコイルアンテナによる干渉を一層抑えることができる。
【0016】
また、前記第1ダイポールエレメントは、前記第1開放端部からX方向に延在する第1開放端側部分を有し、前記第2ダイポールエレメントは、前記第2開放端部から前記X方向に対して直交するY方向に延在する第2開放端側部分を有してもよい。この構成によれば、ダイポールアンテナによる信号の送受信範囲を広げることができる。
【0017】
また、前記コイルアンテナ及び前記ダイポールアンテナが外部に露出しないように覆うとともに、上下方向の向きを有する情報が表示された表示面を有する外装部材を更に備え、前記第2周波数帯用RFIC素子は、前記表示面の上側の領域に対応する位置に配置され、前記コイルアンテナは、前記表示面の上側の領域よりも下側の領域に対応する位置に配置されてもよい。この構成によれば、天井などの使用者の上方に通常配置されるリーダ装置とダイポールアンテナとの間で、第2周波数帯の信号をコイルアンテナによる干渉を抑えてより確実に送受信させることができる。
【0018】
また、前記第1ダイポールエレメントは、前記第1開放端部から前記第1ダイポールエレメントの全長の1/10以上の部分が平面視において前記第1線状部を介して前記コイルアンテナの外縁に対向する位置に配置されてもよい。この構成によれば、主として信号の送受信に寄与する開放端部側のより広い部分を、第1線状部を介してコイルアンテナの外縁と対向する位置に配置しているので、コイルアンテナによる干渉を一層抑えることができる。
【0019】
また、前記第1ダイポールエレメントは、前記第1開放端部から前記第1ダイポールエレメントの全長の1/4以上の部分が平面視において前記第1線状部を介して前記コイルアンテナの外縁に対向する位置に配置されてもよい。この構成によれば、主として信号の送受信に寄与する開放端部側のより広い部分を、第1線状部を介してコイルアンテナの外縁と対向する位置に配置しているので、コイルアンテナによる干渉を一層抑えることができる。
【0020】
また、前記第2ダイポールエレメントは、前記第2接続端部から前記コイルアンテナの外縁に沿って延在するように配置された第2線状部を有し、前記第2開放端部は、平面視において前記第2線状部を介して前記コイルアンテナの外縁に対向する位置に配置されてもよい。この構成によれば、第2ダイポールエレメントに対するコイルアンテナによる干渉を一層抑えることができ、第2ダイポールエレメントの全体をコイルアンテナの外縁により近接して配置することができる。
【0021】
また、前記第1周波数帯はHF帯であり、前記第2周波数帯はUHF帯であってもよい。
【0022】
以下、本発明に係るカード型無線通信デバイスの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るカード型無線通信デバイスの一例であるICカードの構成を示す平面図である。
【0024】
本実施の形態に係るICカード1は、第1周波数帯の一例であるHF帯の信号と第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の一例であるUHF帯の信号とを送受信可能な非接触型のICカードである。すなわち、ICカード1は、HF帯の信号を用いるRFIDシステムとUHF帯の信号を用いるRFIDシステムの両方に対応する非接触型のICカードである。
【0025】
ICカード1は、支持基材2と、支持基材2上に設けられたコイルアンテナ3及びダイポールアンテナ4とを備えている。
【0026】
本実施の形態において、支持基材2は、クレジットカードやキャッシュカードなどのICカードにおいて定められた国際規格(ISO/IEC 7810)に準拠するサイズの矩形状の基材である。例えば、支持基材2の縦寸法は53.98mmであり、横寸法は85.60mmであり、厚さは0.76mmである。支持基材2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの可撓性を有するフィルム状の部材で構成されている。
【0027】
コイルアンテナ3は、HF帯(例えば、13.56MHz)の信号を送受信するアンテナである。本実施の形態において、コイルアンテナ3は、
図1に示すように、導体線を複数ターン、矩形螺旋状に巻いた平面コイルである。コイルアンテナ3は、例えば、銅箔、アルミ箔、銀ペーストによりパターニングされている。
【0028】
コイルアンテナ3には、第1周波数帯用RFIC素子の一例であるHF帯RFIC素子5が接続されている。より具体的には、HF帯RFIC素子5の第1入出力端子5aがコイルアンテナ3の一端部3aに接続されるとともに、HF帯RFIC素子5の第2入出力端子5bがブリッジ導体31を介してコイルアンテナ3の他端部3bに接続されている。なお、本明細書において「接続されている」とは、直接的に接続されている場合だけでなく、静電容量や電磁界結合などにより間接的(電気的)に接続されている場合を含む。
【0029】
また、コイルアンテナ3には、キャパシタ素子32が並列に接続されている。コイルアンテナ3とキャパシタ素子32とによりアンテナ共振回路が構成されている。このアンテナ共振回路と外部機器のコイルアンテナ(図示せず)とが磁界結合することにより、損失の少ない電力を受け取ることができる。キャパシタ素子32のキャパシタンスは、当該アンテナ共振回路の共振周波数がHF帯の周波数になるように決定されている。なお、キャパシタ素子32は、チップ状部品に限定されるものではなく、例えば、支持基材2の両主面に形成された導体線間の寄生容量により構成されてもよい。
【0030】
ダイポールアンテナ4は、UHF帯(例えば、920MHz)の信号を送受信するアンテナである。ダイポールアンテナ4は、
図1に示すように、支持基材2上においてコイルアンテナ3の外側に設けられている。ダイポールアンテナ4には、第2周波数帯用RFIC素子の一例であるUHF帯RFIC素子6が接続されている。UHF帯RFIC素子6は、コイルアンテナ3の外縁、すなわち、最外周ターンに近接して配置されている。UHF帯RFIC素子6の構成例については、後で詳しく説明する。
【0031】
ダイポールアンテナ4は、第1ダイポールエレメント41と、第2ダイポールエレメント42とを備えている。本実施の形態において、第1ダイポールエレメント41は、略U字状の一本の導体線で構成されている。また、第2ダイポールエレメント42は、略L字状の一本の導体線で構成されている。各導体線の幅は、例えば100μm以下である。第1ダイポールエレメント41と第2ダイポールエレメント42とは、例えば、銅箔、アルミ箔、銀ペーストによりパターニングされている。
【0032】
第1ダイポールエレメント41は、第1接続端部411と、第1線状部412と、第1開放端部413とを備えている。
【0033】
第1接続端部411は、UHF帯RFIC素子6の第1入出力端子6aに接続される部分である。
【0034】
第1線状部412は、第1接続端部411からコイルアンテナ3の外縁に沿って延在するように配置された部分である。本実施の形態において、第1線状部412は、コイルアンテナ3の上方の外縁に対して平行であるX方向に延在するように設けられている。第1線状部412における第1接続端部411とは反対側の端部412aは、第1連結部414を介して第1開放端部413に接続されている。
【0035】
第1開放端部413は、平面視において第1線状部412を介してコイルアンテナ3の外縁に対向する位置に配置されている。すなわち、第1開放端部413は、コイルアンテナ3の外縁との間に第1線状部412が位置し、第1開放端部413からコイルアンテナ3の外縁が直接見えないように構成されている。本実施の形態において、第1開放端部413と第1線状部412との最短距離D1は、第1線状部412とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D2よりも大きく設定されている。
【0036】
第1連結部414は、第1線状部412の端部412aから180度向きを変えてUHF帯RFIC素子6側に配置された第1開放端部413まで延在するように設けられている。本実施の形態において、第1連結部414は、X方向に対して交差する方向に指向性を有するように、第1開放端部413からX方向(略X方向を含む)に延在する第1開放端側部分414aを有している。
【0037】
第2ダイポールエレメント42は、第2接続端部421と、第2開放端部422とを備えている。
【0038】
第2接続端部421は、UHF帯RFIC素子6の第2入出力端子6bに接続される部分である。第2接続端部421は、第2連結部423を介して第2開放端部422に接続されている。
【0039】
第2開放端部422は、第1線状部412とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D2よりもコイルアンテナ3の外縁から離れた位置に配置されている。すなわち、第2開放端部422とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D3は、第1線状部412とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D2よりも大きく設定されている。本実施の形態において、第2開放端部422は、コイルアンテナ3の側方の外縁と支持基材2の側方の外縁との間に配置されている。
【0040】
第2連結部423は、第2接続端部421から支持基材2の上方の外縁及び側方の外縁に沿って第2開放端部422まで延在するように設けられている。本実施の形態において、第2連結部423は、Y方向に対して交差する方向に指向性を有するように、第2開放端部422からY方向(略Y方向を含む)に延在する第2開放端側部分423aを有している。
【0041】
図2は、
図1のICカード1がカードホルダ10に収納される様子を示す説明図である。
【0042】
図2に示すように、ICカード1は、支持基材2の両主面上に外装部材7を備えている。この外装部材7により、コイルアンテナ3及びダイポールアンテナ4が外部に露出しないように覆われている。外装部材7は、例えば、ポリエチレンテフレタレート、ポリイミドなどの樹脂材料により構成されている。
【0043】
外装部材7は、上下方向の向きを有する情報が表示された表示面7Aを有している。「上下方向の向きを有する情報」とは、文字、数字、図形(例えば、矢印、マーク)、写真(例えば、人物写真)などの情報である。
【0044】
本実施の形態において、UHF帯RFIC素子6は、表示面7Aの上側の領域に対応する位置に配置されている。すなわち、UHF帯RFIC素子6に接続されるダイポールアンテナ4の少なくとも一部も、表示面7Aの上側の領域7Bに対応する位置に配置されている。コイルアンテナ3は、表示面7Aの上側の領域7Bよりも下側の領域7Cに対応する位置に配置されている。
【0045】
ICカード1は、表示面7Aを前面にするとともに、表示面7Aの上側の領域7Bを上にしてカードホルダ10に収納される。
【0046】
次に、UHF帯RFIC素子6の構成の一例について説明する。
【0047】
図3は、UHF帯RFIC素子6の構成の一例を示す分解斜視図である。なお、
図3においては、
図1に示すUHF帯RFIC素子6を上下反転して分解した状態を示している。
【0048】
図3に示すように、UHF帯RFIC素子6は、三層からなる多層基板で構成されている。具体的には、UHF帯RFIC素子6は、ポリイミドや液晶ポリマなどの樹脂材料から作製されて可撓性を備える絶縁シート61A,61B,61Cを積層して構成されている。なお、多層基板における基材層の積層数は、必要なインダクタンス値等に応じて適宜調整することができる。
【0049】
また、UHF帯RFIC素子6は、RFICチップ62と、複数のインダクタンス素子63A,63B,63C,63Dと、外部接続端子となる第1入出力端子6a及び第2入出力端子6bとを有している。本実施の形態において、インダクタンス素子63A〜63D、第1入出力端子6a、及び第2入出力端子6bは、絶縁シート61A〜61C上に形成され、銅などの導電性材料で構成されている。
【0050】
RFICチップ62は、絶縁シート61C上の長手方向の中央部に実装されている。RFICチップ62は、シリコン等の半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有している。また、RFICチップ62は、第1入出力端子62aと第2入出力端子62bとを備えている。
【0051】
インダクタンス素子63Aは、絶縁シート61Cの長手方向の一方側で、絶縁シート61C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。インダクタンス素子63Aの一端部(コイル外側の端部)には、RFICチップ62の第1入出力端子62aに接続されるランド63Aaが設けられている。また、インダクタンス素子63Aの他端部(コイル中心側の端部)には、ランド63Abが設けられている。
【0052】
インダクタンス素子63Bは、絶縁シート61Cの長手方向の他方側で、絶縁シート61C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。インダクタンス素子63Bの一端部(コイル外側の端部)には、RFICチップ62の第2入出力端子62bに接続されるランド63Baが設けられている。また、インダクタンス素子63Bの他端部(コイル中心側の端部)には、ランド63Bbが設けられている。
【0053】
インダクタンス素子63Cは、絶縁シート61Bの長手方向の一方側で、絶縁シート61B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子63Cは、積層方向にインダクタンス素子63Aに対して対向している。インダクタンス素子63Cの一端部(コイル中心側の端)には、ランド63Caが設けられている。このランド63Caは、絶縁シート61Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体64Aを介して、絶縁シート61C上のインダクタンス素子63Aのランド63Abに接続されている。
【0054】
インダクタンス素子63Dは、絶縁シート61Bの長手方向の他方側で、絶縁シート61B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子63Dは、積層方向にインダクタンス素子63Bに対して対向している。インダクタンス素子63Dの一端部(コイル中心側の端部)には、ランド63Daが設けられている。このランド63Daは、絶縁シート61Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体64Bを介して、絶縁シート61C上のインダクタンス素子63Bのランド63Bbに接続されている。
【0055】
なお、絶縁シート61B上のインダクタンス素子63C,63Dは、1つの導体パターンとして一体化されている。すなわち、それぞれの他端部(コイル外側の端部)同士が接続されている。また、絶縁シート61Bには、絶縁シート61C上に実装されたRFICチップ62が収容される貫通穴61Baが形成されている。
【0056】
第1入出力端子6a及び第2入出力端子6bは、絶縁シート61A上に設けられた導体パターンから構成されている。また、第1入出力端子6a及び第2入出力端子6bは、絶縁シート61Aの長手方向に対向している。
【0057】
第1入出力端子6aは、絶縁シート61Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体64Cを介して、絶縁シート61B上のインダクタンス素子63Cのランド63Caに接続されている。第1入出力端子6aは、
図1に示す第1ダイポールエレメント41の第1接続端部411に接続される。
【0058】
第2入出力端子6bは、絶縁シート61Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体64Dを介して、絶縁シート61B上のインダクタンス素子63Dのランド63Daに接続されている。第2入出力端子6bは、
図1に示す第2ダイポールエレメント42の第2接続端部421に接続される。
【0059】
なお、RFICチップ62は、インダクタンス素子63A,63Bの間と、インダクタンス素子63C,63Dの間に存在する。このRFICチップ62がシールドとして機能することにより、絶縁シート61C上に設けられた渦巻コイル状のインダクタンス素子63A,63Bの間での磁界結合及び容量結合が抑制される。同様に、絶縁シート61B上に設けられた渦巻コイル状のインダクタンス素子63C,63Dの間での磁界結合及び容量結合が抑制される。その結果、通信信号の通過帯域が狭くなることが抑制される。
【0060】
次に、UHF帯RFIC素子6の等価回路について説明する。
【0061】
図4は、UHF帯RFIC素子6の等価回路図である。
図4において、インダクタL1は、インダクタンス素子63Aに対応している。インダクタL2は、インダクタンス素子63Bに対応している。インダクタL3は、インダクタンス素子63Cに対応している。インダクタL4は、インダクタンス素子63Dに対応している。インダクタンス素子63A〜63D及び層間接続導体64A〜64Dによって構成される給電回路によるインピーダンス整合の特性は、インダクタL1〜L4の値によって規定される。
【0062】
インダクタL1の一端部は、RFICチップ62の第1入出力端子62aに接続されている。インダクタL2の一端部は、RFICチップ62の第2入出力端子62bに接続されている。インダクタL1の他端部は、インダクタL3の一端部に接続されている。インダクタL2の他端部は、インダクタL4の一端部に接続されている。インダクタL3の他端部は、インダクタL4の他端部に接続されている。第1入出力端子6aは、インダクタL1,L3の接続点に接続されている。第2入出力端子6bは、インダクタL2,L4の接続点に接続されている。
【0063】
図4に示す等価回路から分かるように、インダクタンス素子63A,63B,63C,63Dは、磁界が同相となるように巻回され且つ互いに直列接続されている。
【0064】
また、
図3に示すUHF帯RFIC素子6の構成から分かるように、インダクタンス素子63A,63Cは、ほぼ同一のループ形状で且つ同一の第1巻回軸を有している。同様に、インダクタンス素子63B,63Dは、ほぼ同一のループ形状で且つ同一の第2巻回軸を有している。第1巻回軸及び第2巻回軸は、RFICチップ62を挟む位置に配置されている。すなわち、インダクタンス素子63A,63Cは、磁気的且つ容量的に結合している。同様に、インダクタンス素子63B,63Dは、磁気的且つ容量的に結合している。
【0065】
本実施の形態に係るICカード1によれば、平面視において第1線状部412を介してコイルアンテナ3の外縁と対向する位置に第1開放端部413が配置されている。この構成によれば、第1ダイポールエレメント41に対するコイルアンテナ3による干渉を抑えることができる。これにより、第1ダイポールエレメント41の全体をコイルアンテナ3の外縁により近接して配置することができる。また、第1ダイポールエレメント41のエレメント長を確保することができ、周波数調整を容易にすることができる。
【0066】
また、本実施の形態に係るICカード1によれば、第1線状部412とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D2よりもコイルアンテナ3の外縁から離れた位置に第2ダイポールエレメント42の第2開放端部422が配置されている。この構成によれば、第2ダイポールエレメント42に対するコイルアンテナ3による干渉も抑えることができる。その結果、限られたカードサイズにおいて、コイルアンテナ3のサイズをより大きく確保しつつ、ダイポールアンテナ4の通信性能の低下を抑えることができる。
【0067】
また、本実施の形態に係るICカード1によれば、第1開放端部413と第1線状部412との最短距離D1が、第1線状部412とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D2よりも大きく設定されている。この構成によれば、第1開放端部413がコイルアンテナ3の外縁からより離れるので、第1ダイポールエレメント41に対するコイルアンテナ3による干渉を一層抑えることができる。
【0068】
また、本実施の形態に係るICカード1によれば、第1ダイポールエレメント41は、第1開放端部413からX方向に延在する第1開放端側部分414aを有している、また、第2ダイポールエレメント42は、第2開放端部422からY方向に延在する第2開放端側部分423aを有している。この構成によれば、ダイポールアンテナ4による信号の送受信範囲を広げることができる。
【0069】
また、本実施の形態に係るICカード1によれば、コイルアンテナ3及びダイポールアンテナ4が外部に露出しないように覆うとともに、上下方向の向きを有する情報が表示された表示面7Aを有する外装部材7を備えている。また、UHF帯RFIC素子6は、表示面7Aの上側の領域7Bに対応する位置に配置され、コイルアンテナ3は、表示面7Aの上側の領域7Bよりも下側の領域7Cに対応する位置に配置されている。この構成によれば、天井などの使用者の上方に通常配置されるUHF帯リーダ装置とダイポールアンテナ4との間で、UHF帯の信号をコイルアンテナ3による干渉を抑えてより確実に送受信させることができる。
【0070】
なお、第1ダイポールエレメント41は、第1開放端部413から第1ダイポールエレメント41の全長の1/10以上の部分が平面視において第1線状部412を介してコイルアンテナ3の外縁に対向する位置に配置されることが好ましい。すなわち、第1開放端側部分414aの長さが、第1ダイポールエレメント41の全長の1/10以上であることが好ましい。この構成によれば、主として信号の送受信に寄与する第1開放端側部分414aを、第1線状部412を介してコイルアンテナ3の外縁と対向する位置に配置しているので、コイルアンテナ3による干渉を一層抑えることができる。
【0071】
また、第1ダイポールエレメント41は、第1開放端部413から第1ダイポールエレメント41の全長の1/4以上の部分が平面視において第1線状部412を介してコイルアンテナ3の外縁に対向する位置に配置されることが更に好ましい。すなわち、第1開放端側部分414aの長さが、第1ダイポールエレメント41の全長の1/4以上であることが好ましい。この構成によれば、主として信号の送受信に寄与する第1開放端側部分414aを、第1線状部412を介してコイルアンテナ3の外縁と対向する位置に配置しているので、コイルアンテナ3による干渉を一層抑えることができる。
【0072】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、第2開放端部422とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D3を大きくするだけで、第2ダイポールエレメント42に対するコイルアンテナ3による干渉を抑えるようにしたが、本発明はこれに限定されない。
【0073】
例えば、
図5に示す第1変形例に係るICカード1Aのように、第2ダイポールエレメント42が、第2接続端部421からコイルアンテナ3の外縁に沿って延在するように配置された第2線状部424を有してもよい。また、第2開放端部422が、平面視において第2線状部424を介してコイルアンテナ3の外縁に対向する位置に配置され、第2開放端側部分423aがX方向に延在するように配置されてもよい。すなわち、第1ダイポールエレメント41と第2ダイポールエレメント42とを同様(左右対称)の構成としてもよい。この構成によれば、第2ダイポールエレメント42に対するコイルアンテナ3による干渉を一層抑えることができ、第2ダイポールエレメント42の全体をコイルアンテナ3の外縁により近接して配置することができる。その結果、限られたカードサイズにおいて、コイルアンテナ3のサイズをより大きく確保しつつ、ダイポールアンテナ4の通信性能の低下を抑えることができる。
【0074】
また、例えば、
図6に示す第2変形例に係るICカード1Bのように、第2線状部424が、第2接続端部421からコイルアンテナ3の外縁に沿ってX方向及びY方向に延在するようL字状に形成されてもよい。また、第2開放端側部分423aがY方向に延在するように配置されてもよい。この構成によれば、
図5に示すICカード1Aの構成に比べて、ダイポールアンテナ4による信号の送受信範囲を広げることができる。
【0075】
また、例えば、
図7に示す第3変形例に係るICカード1Cのように、第1線状部412は、第1接続端部411からコイルアンテナ3の外縁に沿ってX方向及びY方向に延在するようL字状に形成されてもよい。また、第1開放端側部分414aがY方向に延在するように配置されてもよい。この構成によっても、
図5に示すICカード1Aの構成に比べて、ダイポールアンテナ4による信号の送受信範囲を広げることができる。
【0076】
また、前記では、第2周波数帯RFIC素子として、
図3に示す構成を有するUHF帯RFIC素子6を用いるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8に示す第4変形例に係るICカード1Dのように、UHF帯RFIC素子6に代えて、UHF帯RFIC素子8を用いてもよい。ICカード1Dにおいて、UHF帯RFIC素子8は、インピーダンス調整部としてのループ電極81と、ループ電極81に接続されたRFICチップ82とを備えている。第1ダイポールエレメント41の第1接続端部411及び第2ダイポールエレメント42の第2接続端部421は、ループ電極81に接続される。このICカード1Dによっても、
図1に示すICカード1と同様の効果を奏することができる。
【0077】
また、前記では、第1ダイポールエレメント41の第1連結部414がL字状に形成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図9に示す第5変形例に係るICカード1Eのように、第1連結部414は、Y方向に延在する直線状に形成されてもよい。この構成によっても、第1開放端部413が、平面視において第1線状部412を介してコイルアンテナ3の外縁に対向する位置に配置されているので、第1ダイポールエレメント41に対するコイルアンテナ3による干渉を抑えることができる。また、
図5を参照して前述したように、第2ダイポールエレメント42は、第1ダイポールエレメント41と同様(左右対称)に構成されてもよい。
【0078】
また、
図9では、コイルアンテナ3の外縁が矩形であり、第1線状部412及び第2線状部424がX方向に延在する直線状に形成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10に示す第6変形例に係るICカード1Fのように、コイルアンテナ3の外縁が円形又は楕円形であり、第1線状部412及び第2線状部424が円弧状又は曲線状に形成されてもよい。この構成によれば、ダイポールアンテナ4を配置するスペースをより小さくすることができる。
【0079】
また、第1連結部414及び第2連結部423は、特に形状が限定されるものではなく、例えばミアンダ状に形成されてもよい。
【0080】
また、前記では、第1周波数帯がHF帯であり、第2周波数帯がUHF帯であるものとしたが、本発明はこれに限定されない。第2周波数帯が第1周波数帯よりも高ければよい。
【0081】
また、前記では、UHF帯RFIC素子6を、コイルアンテナ3の矩形の外縁における長辺の中央付近に隣接するように配置したが、本発明はこれに限定されない。UHF帯RFIC素子6は、コイルアンテナ3の外縁のいずれかの部分に隣接して配置されていればよい。
【0082】
次に、本実施の形態に係るICカード1、第1比較例に係るICカード101、及び第2比較例に係るICカード102に対して行った性能評価試験の結果について説明する。
図11は、
図1に示すICカード1、第1比較例に係るICカード101、及び第2比較例に係るICカード102におけるUHF帯の信号の周波数と当該信号の送受信可能範囲との関係を示すグラフである。
【0083】
ここでは、第1比較例に係るICカード101として、
図12に示す構造を有するICカードを作製した。第1比較例に係るICカード101が
図1に示すICカード1と異なる点は、第2開放端部422とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D3が、第1線状部412とコイルアンテナ3の外縁との最短距離D2以下に設定されている点である。それ以外の点については同様の構成であるので、同様の部材には同一の符号を付している。
【0084】
また、第2比較例に係るICカード102として、
図13に示す構造を有するICカードを作製した。第2比較例に係るICカード102が
図1に示すICカード1と異なる点は、第1開放端部413が第1線状部412よりもコイルアンテナ3の外縁側に配置されている点である。それ以外の点については同様の構成であるので、同様の部材には同一の符号を付している。
【0085】
図11より、ICカード1によれば、第1比較例に係るICカード101及び第2比較例に係るICカード102に比べて、概ねどの周波数においてもリーダ装置との間での信号の送受信可能範囲が拡大され、通信性能の低下が抑えられることが分かる。
【0086】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。