(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
個数基準にて全微粒子数の40〜70%の割合の微粒子の表面層におけるSr/La原子比が上記粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上である請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の空気極材料粉体。
個数基準にて全微粒子数の40〜70%の割合の微粒子の表面層におけるSr/La原子比が上記粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3〜6倍である請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の空気極材料粉体。
【背景技術】
【0003】
近年、燃料電池がクリーンなエネルギー源として注目されている。なかでも、電解質としてイオン伝導性を有する固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCということがある。)は、作動温度が800〜1000℃程度と高く、発電効率が高いうえに、炭化水素系燃料や一酸化炭素ガスを燃料として用いることができ、更に、排熱を利用することができる利点をも有しており、家庭用から大規模発電まで、幅広い活用が期待されており、一部、既に実用化されている。
【0004】
このようなSOFCは、よく知られているように、基本構造として、空気が供給される空気極(カソ−ド)と燃料(通常、水素)が供給される燃料極(アノード)との間に固体酸化物電解質層が配置されてなる燃料電池単セルを有し、必要に応じて、上記空気極と上記電解質層との間に両者間の反応を防止するための反応防止層(中間層、バリヤ層とも呼ばれる。)を有する。
【0005】
上記燃料電池単セルは、その複数が導電性の接合部材であるインターコネクタや集電体によって電気的に直列に接続されて、所要の起電圧を有する燃料電池セルスタックに構成されている。上記インターコネクタは、また、上記燃料と空気を相互に分離する隔壁としても機能している。上記集電体は、例えば、空気極からの集電ロスを低減すると共に、空気極とインターコネクタの間の密着性を高めるために、空気極とインターコネクタとの間等に配設される。
【0006】
従来、電解質層には、代表的には、例えば、イットリア安定化ジルコニアの焼結体が用いられ、空気極には、近年、SOFCを高出力化するために、電子伝導性とイオン伝導性を併せ有する混合伝導性のABO
3 構造を有するペロブスカイト型複合酸化物、例えば、(La,Sr)(Co,Fe)O
3 が用いられるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、空気極は、例えば、空気極材料粉体を樹脂溶液にてペーストとし、これを電解質上に塗布してグリーン層を形成し、これを焼結することによって形成されている。
【0008】
しかし、上述したような方法によって、ペロブスカイト型酸化物からなる空気極材料粉体をペースト化し、これを電解質層表面に塗布し、焼結して、上記粉体を電解質層表面に層状に焼き付けて、空気極を形成したとき、上記ペロブスカイト型酸化物と電解質層が熱膨張率において相違するために、形成された空気極にクラックが発生したり、形成された空気極が電解質層から剥離したりし、その結果、得られるSOFCの性能が低下する問題がある。
【0009】
そこで、空気極と電解質層との間の熱膨張率の差異が大きい場合であっても、空気極のクラックや剥離等の欠陥の生じ難い方法として、平均粒子径が相違する2種類の空気極材料粉体を用いることが提案されている。この方法によれば、空気極材料と電解質材料の熱膨張率の差が大きい場合であっても、空気極材料のグリーン層の焼結時の収縮が抑制されるので、空気極にクラックが発生し難いとされている(特許文献2参照)。
【0010】
また、La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3 なる組成式で表されるペロブスカイト型複合酸化物を焼結して得られる空気極を備えた燃料電池が発電を繰り返す間に出力が低下することが知られている。その理由の一つが発電を繰り返す間に空気極の表面に化学量論比を越えて過剰にストロンチウムが濃化されることにあるとして、空気極の表面におけるX線光電子分光分析で検出されるSr/La原子比をR1とし、上記表面に表面処理を施して露出させた、上記表面から5nm内部にある露出面におけるX線光電子分光分析で検出されるSr/La原子比をR2とするとき、R1/R2比を1〜4の範囲とすることによって、上述した空気極の劣化、従って、経時的な出力の低下を抑制すると共に、空気極の外表面におけるクラックの発生を抑制することが提案されている(特許文献3参照)。
【0011】
しかし、従来、焼結前の空気極用のペロブスカイト型複合酸化物粒子について、まして、個々の粒子におけるSr/La原子比については、何も知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による空気極材料粉体は、一般式ABO
3 で表され、A元素としてLaとSrを含み、B元素としてCoとFeを含むペロブスカイト型複合酸化物の粒子からなる粉体であって、
上記粒子は、粒子径0.2μm以上の粗粒子と粒子径0.2μm未満の微粒子とを含み、
上記微粒子は、個数基準にて全粒子数の60%以上であり、且つ
個数基準にて全微粒子数の40%以上の割合で微粒子の表面層におけるSr/La原子比が上記粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上であるものである。
【0023】
尚、本発明において、粒子径は、電子顕微鏡写真(SEM画像)における粒子の長径を指し、SEM画像上で計測される。
【0024】
本発明による空気極材料粉体は、上述したように、粗粒子と微粒子を含み、詳しくは、粗粒子とその表面に付着している微粒子とからなる。従って、本発明において、粗粒子の表面層におけるSr/La原子比に対する微粒子の表面層のSr/La原子比は、その微粒子がその表面に付着している粗粒子の表面層のSr/La原子比に対する比を意味する。
【0025】
本発明による空気極材料粉体は、好ましくは、一般式ABO
3 で表され、A元素がLaとSrであり、B元素がCoとFeであるペロブスカイト型複合酸化物からなる。
【0026】
本発明において、このようにA元素がLaとSrであり、B元素がCoとFeであるペロブスカイト型複合酸化物は、好ましくは、一般式
La
1−xSr
xCo
1−yFe
yO
3 …(1)
(式中、x及びyは、0.2≦x≦0.5、0.1≦y≦0.9を満たす数である。)
で表される。
【0027】
上記一般式中、x及びyの値の範囲は、A元素がLaとSrであり、B元素がCoとFeである複合酸化物がペロブスカイト型構造を保持するのに好ましい範囲である。
【0028】
尚、上記組成比を有するペロブスカイト型複合酸化物において、酸素の組成比は化学量論的には3であるが、文献によっては、3−δで表されているように、場合によっては、酸素は、一部欠損していてもよい。ここに、δは上記酸素の欠損量を表す。
【0029】
特に、本発明において、上記組成比を有する好ましいペロブスカイト型複合酸化物の一例は、
La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3 …(2)
で表されるコバルト鉄酸ランタンストロンチウムであるが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明による空気極材料粉体において、粒子径0.2μm未満の微粒子は個数基準にて全粒子数の60〜80%の範囲の割合であることが好ましく、同時に、上記微粒子の全数のうち、個数基準にて40〜70%の範囲で割合の微粒子の表面層におけるSr/La原子比が、それが付着している粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上、特に、3〜6倍の範囲であることが好ましい。
【0031】
このような空気極材料粉体を電解質層に焼き付けることによって、得られる空気極が緻密化し、多孔質構造が損なわれることなく、また、得られる空気極に不均一性が生じることなく、空気極を形成することができる。
【0032】
また、本発明による空気極材料粉末は、得られる空気極が導電性にすぐれるように、平均粒子径が1〜10μmの範囲にあることが好ましい。本発明において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定される値である。
【0033】
空気極材料粉末の平均粒子径が1μm未満であるときは、得られる空気極はより緻密化が進み、電解質界面への酸素の輸送に支障をきたす場合があり、一方、空気極材料粉末の平均粒子径が10μmを越えるときは、空気極の粒子同士の接点が少なくなり、導電性が低下する場合があって、いずれも得られる固体酸化物形燃料電池の性能を低下させるおそれがある。同時に、空気極をその上に形成する基材、例えば、前記電解質基板や後述する反応防止層との接点も少なくなることから、それら基材との密着性が低下する場合がある。
【0034】
本発明において、空気極材料粉末の平均粒子径は、より好ましくは、1.5〜7μmの範囲であり、更に好ましくは2〜5μmの範囲である。
【0035】
本発明においては、上記微粒子の表面層におけるSr/La原子比が、その微粒子が付着している粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上である微粒子をストロンチウム偏析微粒子ということがある。
【0036】
本発明において、微粒子の表面層のSr/La原子比と、その微粒子が付着している粗粒子の表面層のSr/La原子比はそれぞれオージェ電子分光法によって求められる。
【0037】
オージェ電子分光法は、加速した電子を分析試料に照射し、通常、上記分析試料の10nm以下の表面層から放出される元素固有のエネルギーをもつオージェ電子を検出することによって、上記分析試料の表面層に存在する元素の種類と量に関する情報を得る分析法である。従って、本発明において、粗粒子の表面層と微粒子の表面層とは、その表面から最大で10nmまでの深さの層をいう。
【0038】
上記微粒子の表面層のSr/La原子比をオージェ電子分光法によって求めるには、先ず、粗粒子と微粒子を含む空気極材料粉体の電子顕微鏡写真(SEM画像)を得、このSEM画像において、上記粗粒子とその表面に付着している上記微粒子の個数を計測することによって、個数基準にて全粒子数に対する上記微粒子の個数を求める。
【0039】
次いで、上記SEM画像と同じ視野において、オージェ電子分光法によって、視野内の粗粒子の表面層とその粗粒子に付着している微粒子の表面層のストロンチウムとランタンのマッピング像を得れば、上記粗粒子に比較して、主として上記微粒子の表面層にストロンチウムが偏析していることが確認される。ストロンチウムが偏析している上記微粒子の表面層においては、ランタンのマッピング像ではランタンが暗く表示され、ストロンチウムのマッピング像ではストロンチウムが明るく表示される。
【0040】
そこで、マッピング像分析において、粗粒子の表面層と微粒子の表面層のそれぞれにおいて、オージェ電子分光法によって、ストロンチウムの原子数濃度とランタンの原子数濃度を測定し、Sr/La原子比を求めて、上記それぞれの粗粒子の表面層におけるSr/La原子比に対するそれぞれの微粒子の表面層におけるSr/La原子比の倍率を求めることができる。
【0041】
かくして、粗粒子の表面層におけるSr/La原子比に対する表面層におけるSr/La原子比が3以上である微粒子の個数を求めれば、全微粒子数に対するSr/La原子比が3以上である微粒子の割合を個数基準にて求めることができる。
【0042】
本発明による空気極材料粉体においては、このように、粒子径0.2μm未満の微粒子は、個数基準にて、その40%以上の表面層におけるSr/La原子比が、その微粒子が付着している粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上である。本発明によれば、このような空気極材料粉体をペーストとし、これを電解質基板表面に塗布して、グリーン層を形成し、これを焼結して、空気極を形成することによって、この際に、空気極にクラックが発生し難い。
【0043】
一方、粒子径0.2μm未満の微粒子は、個数基準にて、その70%を越える割合の微粒子の表面層におけるSr/La原子比が、その微粒子が付着している粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上である場合には、そのように微粒子を含む空気極材料粉体を焼結して得られる空気極が導電率において低下して、固体酸化物形燃料電池の空気極として十分な機能を果たせなくなる。従って、粒子径0.2μm未満の微粒子のうち、表面層におけるSr/La原子比が、その微粒子が付着している粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上である微粒子数は全微粒子数の70%以下であることが好ましい。
【0044】
また、微粒子の表面層におけるSr/La原子比が、その微粒子が付着している粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上である場合であっても、上記Sr/La原子比の6倍を越える場合にも、そのような微粒子を含む空気極材料粉体を焼結して得られる空気極が導電率において低下して、固体酸化物形燃料電池の空気極として十分な機能を果たせなくなる。従って、微粒子の表面層におけるSr/La原子比は、粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の6倍以下であることが好ましい。
【0045】
本発明による空気極材料粉体は、限定されるものではないが、好ましくは、例えば、以下の方法によって製造することができる。
【0046】
予め、定めた組成比となるように、ランタン、ストロンチウム、コバルト及び鉄を含む化合物を混合して、原料混合物を得、次いで、この原料混合物を焼成して焼成物を得、次いで、湿式粉砕溶媒を40〜60℃の温度に加温しつつ、この湿式粉砕溶媒中において上記焼成物を粉砕媒体の存在下に湿式粉砕した後、濾過等を行わずに乾燥し、その際、上記湿式粉砕において、粉砕媒体の種類と直径、焼成物に対する粉砕媒体の使用割合、湿式粉砕溶媒の温度等を適宜に調節することによって、通常、1〜10μmの範囲の平均粒子径を有し、そのうち、粒子径0.2μm未満の微粒子が全粒子に対する個数基準で60%以上、好ましくは、60〜80%の割合であり、その微粒子のうち、個数基準で40%以上、好ましくは、40〜70%の割合の微粒子の表面層においてSr/La原子比が粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上、好ましくは、3〜6倍の範囲であるペロブスカイト型複合酸化物の粒子からなる粉体を得ることができる。
【0047】
上記焼成物を粉砕媒体の存在下に湿式粉砕するための装置としては、例えば、粉砕媒体としてジルコニアボールを用いるボールミルや振動ミル等が好適である。上記湿式粉砕溶媒は、プロトン性の極性溶媒であることが好ましく、特に、水が好ましい。
【0048】
このように、原料混合物を焼成した後、得られた焼成物を粉砕媒体の存在下に湿式粉砕し、かくして、得られた粉砕物を乾燥して得られる粉体は、上述したように、粗粒子とその表面に付着している微粒子とからなる。
【0049】
上述した方法において、表面層におけるSr/La原子比が粗粒子の表面層におけるSr/La原子比の3倍以上である微粒子が得られる理由は、粉砕媒体の存在下に前記原料混合物の焼成物を湿式粉砕する間に、空気極材料として用いるペロブスカイト型複合酸化物から水酸化ストロンチウムが湿式粉砕溶媒中に溶出するためであるとみられる。湿式粉砕溶媒として水を用いる場合、水酸化ストロンチウムの溶解度は水の温度が高いほど高く、水の温度が40℃未満では水酸化ストロンチウムの溶解度が低い。一方、湿式粉砕においては、ジルコニアボール等の粉砕媒体の劣化が促進されるので、上記溶媒の温度を60℃以上とすることは好ましくない。このような理由から、原料混合物の焼成物の湿式粉砕時の湿式粉砕溶媒の温度は40〜60℃の範囲が好ましい。
【0050】
本発明においては、以下のような理由によって、ストロンチウムの偏析した微粒子が得られるものとみられる。即ち、粗粒子よりも微粒子の方がバルクに対する表面の割合が大きく、表面の割合が大きい分、微粒子はそのペロブスカイト構造中のストロンチウムが水酸化ストロンチウムとして溶出されやすくなり、そこで、一旦、溶出した水酸化ストロンチウムが乾燥して再析出することによって、表面層のSr/La比の高い微粒子が得られるものとみられる。
【0051】
本発明において、微粒子が粗粒子に付着した状態で得られる理由は尚、明らかではないが、上述したようにしてペロブスカイト構造中のストロンチウムが溶出した後、乾燥し、再析出して生成した水酸化ストロンチウム微粒子が粗粒子と微粒子の間に介在することによって、粗粒子と微粒子の付着を促進しているものとみられる。
【0052】
但し、本発明による空気極材料粉体は、上述した理由によって何ら制約を受けるものではない。
【0053】
本発明による空気極は、前述したように、空気極材料粉体を、例えば、樹脂溶液に配合してペースト化し、これを電解質基板に塗布して、グリーン層を形成した後、焼結することによって形成される。グリーン層の焼結温度及び焼結時間等の焼結条件は、単セルの材料等に応じて適宜に設定される。グリーン層の焼結温度は、例えば、900℃〜1200℃の範囲であり、焼結時間は、例えば、1時間から10時間程度の範囲である。
【0054】
前述したように、単セルは、空気極と電解質層との間に両者間の反応を防止するための反応防止層を有していてもよい。反応防止層は、通常、ガドリニウム、サマリウム等の希土類元素の酸化物がドープされたセリア粉末の焼結物からなる。
【0055】
反応防止層は、例えば、上記希土類元素の酸化物がドープされたセリア粉末をペーストとし、電解質層上に塗布して、グリーン層とし、これを焼き付けることによって形成される。この場合、空気極は、このように形成した反応防止層上に、前述したように空気極材料粉体のグリーン層を形成し、これを反応防止層に焼き付けることによって形成される。
【0056】
電解質層は、燃料ガスと酸素がガスとのリークを防止するために、ガス遮断性であることが求められ、通常、3〜15モル%のイットリウム、スカンジウム、イッテルビウム等の希土類元素の酸化物がドープされた安定化又は部分安定化ジルコニアの焼結物からなる。集電体も、上記空気極と同様に、空気極材料粉体を焼結して形成される。
【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0058】
元素の定量分析、X線結晶構造、粒度分布と平均粒子径、微粒子と粗粒子の比率及び微粒子の表面層とその微粒子が付着している粗粒子の表面層のSr/La原子比は下記のようにして求めた。
【0059】
(元素の定量分析)
元素の定量分析は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置((株)日立ハイテクサイエンス製SPS3100−24HV)を用いて行った。
【0060】
(X線結晶構造)
X線結晶構造はX線回折装置((株)リガク製RINT TTRIII、線源CuKα、モノクロメータ使用、管電圧50kV、電流300mA、長尺スリットPSA200(全長200mm、設計開口角度0.057度)を用いて下記条件で解析した。
【0061】
測定方法:平行法(連続)
スキャンスピード:5度/分
サンプリング幅:0.04度
2θ:20〜60度
【0062】
(粒度分布及び平均粒子径)
レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製MT−3300EXII)を用いて下記条件で測定した。
【0063】
計測モード:MT−3300
測定上限:1408μm
測定下限:0.021μm
粒子屈折率:2.40
粒子形状:非球形
溶媒屈折率:1.333
【0064】
(粉体の微粒子と粗粒子の個数比率)
走査電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−7000F)によって試料粉体の電子顕微鏡写真を撮影し、そのなかから無作為に粗粒子200個を抽出して、表面に付着している粒子径0.2μm未満の微粒子の個数を計数し、かくして、粗粒子と微粒子の個数から微粒子と粗粒子の比率を算出した。
【0065】
(粗粒子の表面層とその表面に付着している微粒子の表面層におけるSr/La原子比の分析)
粗粒子の表面層と微粒子の表面層におけるSr/La原子比はオージェ電子分光装置(アルバック・ファイ(株)製Model 680)を用いて下記条件で測定した。
【0066】
1次ビーム:加速電圧10kV、試料電流10nA
検出深さ:10nm以下
倍率:12500倍
【0067】
(空気極材料粉体の製造)
実施例1
炭酸ランタン (La
2(CO
3)
3、和光純薬工業(株)製)73.96g、炭酸ストロンチウム(SrCO
3、和光純薬工業(株)製)31.80g、酸化コバルト(II,III)(Co
3O
4、和光純薬工業(株)製)8.64g及び酸化鉄(III)(Fe
2O
3、和光純薬工業(株)製)34.40gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量した。これに直径1.5mmのジルコニアビーズ150mLとイオン交換水250mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ社製P−5)を用いて、180rpmで5分間、湿式混合した後、ビーズを除去し、更に、150℃で加熱、乾燥し、水分を除去して、原料混合物を得た。
【0068】
上記原料混合物をアルミナ製坩堝に入れ、この坩堝を電気炉((株)モトヤマ製SB−2025)内に置き、1400℃で2時間保持して、焼成物を得た。
【0069】
上記焼成物はA/B原子比1.00、La/(La+Sr)原子比0.60、Co/(Co+Fe)原子比0.20、Sr/La原子比0.67を有するものであった。
【0070】
上記焼成物は、X線回折装置を用いて分析した結果、組成式La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3−δで表されるペロブスカイト型構造を有するコバルト鉄酸ランタンストロンチウムであることを確認した。
【0071】
上記焼成物200gを500mL樹脂製ポットに秤量し、直径3mmのジルコニアビーズ165mLとイオン交換水(湿式粉砕溶媒)100mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ社製P−5)を用いて180rpmで10分間、上記溶媒の温度を50℃に加温しつつ、湿式粉砕した。この後、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去して、粉砕物を粉体として得た。
【0072】
上記粉体のSEM写真を
図1に示す。粗粒子の表面に付着している微粒子の一例を四角形の枠内に示す。上記枠内には微粒子が1個存在する。上記粉体をオージェ電子分光法によりマッピング分析を行い、Sr/La原子比を求めたところ、粗粒子の表面層においては、Sr/La原子比が0.79〜0.88であり、ストロンチウムの偏析が認められた微粒子の表面層においては、Sr/La原子比が2.73〜4.63であった。従って、上記ストロンチウムの偏析が認められた微粒子の表面層におけるSr/La原子比は、それらの微粒子が付着している粗粒子の表面層におけるSr/La原子比に対して3.1〜5.9倍であることが確認された。
【0073】
また、上記粉体をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて分析した結果、平均粒子径は4.4μmであった。粉体中の粗粒子と微粒子の個数比率は29:71であった。上記微粒子中のストロンチウム偏析粒子の個数比率は58%であった。
【0074】
実施例2
実施例1と同様にして原料混合物を調製し、焼成物を得た。上記焼成物100gを500mL樹脂製ポットに秤量し、直径3mmのジルコニアビーズ165mLとイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ社製P−5)を用いて、上記溶媒の温度を50℃に加温しつつ、180rpmで20分間粉砕した。ビーズを除去した後、150℃で加熱し、水分を除去して、粉砕物として粉体を得た。
【0075】
上記粉体をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて分析した結果、平均粒子径は2.9μmであった。
【0076】
また、上記粉体中の粗粒子と微粒子の個数比率は34:66であった。上記微粒子中のストロンチウム偏析粒子の個数比率は42%であった。
【0077】
比較例1
実施例1と同様にして原料混合物を調製し、焼成物を得た。上記焼成物1kgを超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業(株)製PJM−200SP、以下、同じ。)を用いて、粉砕圧力0.6MPa、投入速度50g/分で粉砕して、粉砕物として粉体を得た。
【0078】
上記粉体をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて分析した結果、平均粒子径は1.8μmであった。
【0079】
また、上記粉体中の粗粒子と微粒子の個数比率は29:71であった。上記微粒子中のストロンチウム偏析粒子の個数比率は6%であった。
【0080】
比較例2
実施例1と同様にして原料混合物を調製し、焼成物を得、上記焼成物1kgを比較例1と同様にして、超音速ジェット粉砕機を用いて、粉砕して、粉砕物として粉体を得た。
【0081】
上記粉体50gを500mLガラス製ビーカーに秤量し、イオン交換水100mLを加え、上記溶媒の温度を20℃に保って、マグネチックスターラーで60分間攪拌し、150℃で加熱し、水分を除去して、水処理粉体を得た。
【0082】
上記水処理粉体をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて分析した結果、平均粒子径は1.8μmであった。
【0083】
また、上記粉体中の粗粒子と微粒子の個数比率は23:77であった。上記微粒子中のストロンチウム偏析粒子の個数比率は10%であった。
【0084】
(空気極材料粉体中の微粒子の表面層におけるストロンチウム偏析状態の確認)
上述した実施例及び比較例において得られた空気極材料粉体をオージェ電子分光装置によってSEM画像を取得し、粗粒子の表面上への微粒子の付着状況を確認した。また、上記SEM画像と同一視野において、ランタンとストロンチウムのマッピング像を取得し、ランタンの欠損とストロンチウムの偏析状態を確認し、粗粒子の表面に付着した微粒子の表面層におけるストロンチウムの偏析割合を調べた。結果を表1に示す。
【0085】
(空気極材料粉体のペーストの調製)
プラスチック製軟膏容器(馬野化学容器(株)製UG軟膏容器、容量24mL)に前述した実施例及び比較例で得られたそれぞれの空気極材料粉体2.5g、エチルセルロース(キシダ化学、商品名「エチルセルロース 45mPa・s」、トルエン/エタノール(80/20重量比)混合物を溶媒とする5%溶液の25℃における粘度が45mPa・sであるエチルセルロース)2.25g及びターピネオール(関東化学(株)製α−テルピネオール)0.25gを秤量し、自転・公転ミキサー((株)シンキー製あわとり練太郎、ARE−250)に設置し、回転数2000rpmで3分混練して、空気極材料のペーストを得た。
【0086】
(電解質基板の作製)
イットリア安定化ジルコニウム(東ソー(株)製TZ−8Y)2gを直径20mmの丸形ダイスに秤量し、両軸加圧成形機を用いて、圧力100MPaで1分間成形して、円柱状の成形体を得た。
【0087】
上記成形体をジルコニア板の上に載せて電気炉内に置き、大気雰囲気下、1500℃で5時間焼成して焼結体を得た。上記焼結体を試料研磨機((株)ウィンゴー製L1000)、研磨剤((株)フジミインコーポレーテッド製グリーンシリコンカーバイド、#400)を用いて研磨し、厚み1mmの電解質基板を得た。
【0088】
(空気極焼結体の作製)
スクリーンマスク(SUS、300メッシュ、直径9mm)を用いて、上記電解質基板に空気極材料のペーストを塗布し、室温で10分間静置後、乾燥機に入れて、110℃で10分間乾燥して、空気極材料粉体のグリーン層を形成した。
【0089】
このように、空気極材料粉体のグリーン層を形成した電解質基板をジルコニア板上に載置して電気炉内に置き、大気雰囲気下、1200℃で2時間焼成し、上記空気極材料粉体を電解質基板表面に層状に焼き付けて、上記粉体の焼結体からなる空気極を電解質基板表面に積層した。
【0090】
(空気極の密着性の評価)
上記電解質基板表面に焼付けて積層した空気極に市販のセロハン粘着テープを貼り付け、上記テープを空気極の表面に対して垂直に引っ張って、テープを電解質基板表面から剥離した。その際、テープに付着して空気極が電解質基板表面から剥離したか否かを目視にて調べた。結果を表1に示す。空気極の剥離がなかったときを空気極の密着性が「良好」であるとした。
【0091】
(空気極表面のクラック有無の確認)
上記空気極焼結体をSEMで観察して、焼結体の表面におけるクラックの有無を調べた。結果を表1に示す。クラックが確認されなかったときを「なし」、クラックが確認されたときを「あり」とした。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、本発明に従って、空気極材料粉体の全粒子中、粒子径0.2μm未満の微粒子を個数基準で60%以上含み、個数基準でその微粒子の40%以上がストロンチウム偏析微粒子である空気極材料粉体は、そのグリーン層を電解質基板上に形成し、これを焼結して、空気極を形成したとき、空気極にクラックが発生しない。