特許第6597951号(P6597951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597951
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/18 20060101AFI20191021BHJP
   F16H 59/36 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 61/682 20060101ALI20191021BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   F16H61/18
   F16H59/36
   F16H59/18
   F16H59/54
   F16H61/02
   F16H61/682
   F16D48/02 640H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-257552(P2014-257552)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118239(P2016-118239A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年11月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】小関 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 建二郎
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030707(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/190652(WO,A1)
【文献】 特開2005−226701(JP,A)
【文献】 特開2014−081057(JP,A)
【文献】 特開2014−091398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
B60W 10/00
B60W 10/02
B60W 10/04−10/06
B60W 10/08
B60W 10/10
B60W 10/101−10/18
B60W 10/184−10/26
B60W 10/28
B60W 10/30
B60W 30/00−50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源であるエンジンがクラッチを介して自動変速機と接続されている車両の走行制御装置であって、
アクセルペダルの開度及び開度変化率を検出するアクセル状態検出手段と、
所定の惰性走行開始条件が成立したとき、前記クラッチの切断状態及び前記自動変速機のギヤのニュートラル状態の少なくとも何れかの状態とすることで惰性走行を実行する惰性走行制御手段とを備え、
前記惰性走行制御手段は、前記アクセル状態検出手段により検出される前記開度変化率が所定の負の第1閾値以下であるという惰性走行禁止条件が成立したとき、前記惰性走行の実行中には前記惰性走行を終了し、その後に前記惰性走行を禁止し、前記アクセル状態検出手段により検出される前記開度が所定の第2閾値以上であり、且つ前記アクセル状態検出手段により検出される前記開度変化率が所定の正の第3閾値以上であるという惰性走行禁止解除条件が成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する、車両の走行制御装置。
【請求項2】
ブレーキペダルの操作に応じた制動以外で制動力を生じさせる補助ブレーキ手段と、
前記補助ブレーキ手段のオン、オフを切り替え可能な補助ブレーキスイッチとを備え、
前記惰性走行禁止条件には、前記ブレーキペダルの踏み込みがあるという条件と、前記補助ブレーキスイッチがオンであるという条件とがさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の実行中には前記惰性走行を終了し、前記惰性走行を禁止する、請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記自動変速機は、シフトアップ及びシフトダウンを予め設定されたシフトマップに従って自動に行うことが可能であり、
前記惰性走行禁止解除条件には、前記車両の運転状態が前記シフトマップのシフトダウン線を下回るという条件がさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する、請求項1又は2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車両のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段とを備え、
前記惰性走行禁止解除条件には、前記エンジンが非稼働状態である条件と、前記エンジン回転数検出手段により検出されるエンジン回転数が所定回転数以下である条件と、前記車速検出手段により検出される車速が所定の車速範囲内である条件とがさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する、請求項1から3の何れか一項に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動変速機として、変速ギヤの切り替え及びクラッチの断接を自動で行う、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)が開発されている。AMTは運転者によるクラッチ操作が不要でありながら、トルクコンバータを用いた自動変速機よりも動力伝達におけるロスが少なく燃費が向上するという利点がある。
【0003】
このようなAMTでは、運転者がアクセルペダルもブレーキペダルも踏み込んでいないときに、自動的にクラッチを切断状態又は変速機のギヤをニュートラル状態とすることで、エンジンのフリクションを駆動系から切り離した惰性走行を行うことができる。これにより、走行の負荷を低減し、エンジンブレーキによる速度低下及びその後の速度復帰のための再加速を回避できることで燃費の向上を図ることができる。
【0004】
そして、アクセルペダルを踏み込んでいて、アクセルペダルを急に解放する運転操作を検出し、この検出結果に基づいて車両を惰性走行させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−227885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、アクセルペダルを踏み込んでいて、アクセルペダルを急に解放する運転操作は、単純な操作であり、定常走行状態では不自然な操作ではなく、意識的に行うことができ、安全な運転操作を阻害するものではないから、当該運転操作を惰性走行開始条件とするとしている。
【0007】
しかしながら、運転者が車両走行中にアクセルペダルを急に解放する場合、運転者は惰性走行を実行するのではなく、むしろエンジンブレーキを効かせながら、速度維持したい、或いは減速したいという意思が強いと考えるのが一般的である。
【0008】
一方、運転者が車両走行中にブレーキペダルや補助ブレーキを操作する場合、先行車との車間距離が短い(例えば渋滞のため車速が安定しない)、或いは、降坂路が連続するなどといった状況が推測される。したがって、運転者は、増速を抑制したいという意思が強く、動力遮断状態での惰性走行には適さない状況であると考えるのが一般的である。
【0009】
このような、運転者が車両走行中にアクセルペダルを急に解放したり、ブレーキペダルや補助ブレーキを操作する状況では、一般的な惰性走行開始条件(例えば、アクセルオフ、ブレーキオフ、且つ補助ブレーキオフなど)が成立しても、惰性走行を開始しないほうが好ましいと考えられる。したがって、運転者の運転操作から、惰性走行実行が適切でないと判断した場合には、運転者の運転操作から惰性走行実行が適切と思われる状況となるまで惰性走行実行を禁止する必要がある。
【0010】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両走行中における運転者の意図しない惰性走行を禁止し、運転者の適切な運転操作に基づいて惰性走行を実行することにより、車両の燃費、運転者の安全性及びドライバビリティの全てを向上することができる車両の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0012】
(1)本適用例に係る車両の走行制御装置は、車両の駆動源であるエンジンがクラッチを介して自動変速機と接続されている車両の走行制御装置であって、アクセルペダルの開度及び開度変化率を検出するアクセル状態検出手段と、所定の惰性走行開始条件が成立したとき、前記クラッチの切断状態及び前記自動変速機のギヤのニュートラル状態の少なくとも何れかの状態とすることで惰性走行を実行する惰性走行制御手段とを備え、前記惰性走行制御手段は、前記アクセル状態検出手段により検出される前記開度変化率が所定の負の第1閾値以下であるという惰性走行禁止条件が成立したとき、前記惰性走行の実行中には前記惰性走行を終了し、その後に前記惰性走行を禁止し、前記アクセル状態検出手段により検出される前記開度が所定の第2閾値以上であり、且つ前記アクセル状態検出手段により検出される前記開度変化率が所定の正の第3閾値以上であるという惰性走行禁止解除条件が成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する
【0013】
(2)本適用例に係る車両の走行制御装置は、ブレーキペダルの操作に応じた制動以外で制動力を生じさせる補助ブレーキ手段と、前記補助ブレーキ手段のオン、オフを切り替え可能な補助ブレーキスイッチとを備え、前記惰性走行禁止条件には、前記ブレーキペダルの踏み込みがあるという条件と、前記補助ブレーキスイッチがオンであるという条件とがさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の実行中には前記惰性走行を終了し、前記惰性走行を禁止する。
【0015】
)本適用例に係る車両の走行制御装置は、前記自動変速機は、シフトアップ及びシフトダウンを予め設定されたシフトマップに従って自動に行うことが可能であり、前記惰性走行禁止解除条件には、前記車両の運転状態が前記シフトマップのシフトダウン線を下回るという条件がさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する。
【0016】
)本適用例に係る車両の走行制御装置は、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、前記車両のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段とを備え、前記惰性走行禁止解除条件には、前記エンジンが非稼働状態である条件と、前記エンジン回転数検出手段により検出されるエンジン回転数が所定回転数以下である条件と、前記車速検出手段により検出される車速が所定の車速範囲内である条件とがさらに含まれ、前記惰性走行制御手段は、当該惰性走行禁止解除条件の何れかが成立したとき、前記惰性走行の禁止を解除する。
【発明の効果】
【0017】
上記手段を用いる本発明によれば、車両走行中における運転者の意図しない惰性走行を禁止し、運転者の適切な運転操作に基づいて惰性走行を実行することにより、車両の燃費、運転者の安全性及びドライバビリティの全てを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における車両の走行制御装置を備えた車両の駆動系を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態における車両の走行制御装置のECUが実行する惰性走行制御ルーチンを示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態における自動変速機のシフトマップである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した車両の走行制御装置の一実施形態を説明する。
【0020】
図1は本実施形態の車両の走行制御装置を備えた車両の駆動系を示す概略構成図であり、以下同図に基づき本実施形態の構成について説明する。
【0021】
本実施形態における車両1はトラックであり、走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2が搭載されている。エンジン2の出力軸2aにはクラッチ装置3を介して自動変速機(以下、単に変速機という)4の入力軸4aが接続され、クラッチ装置3の接続時にエンジン2の回転が変速機4に伝達されるようになっている。当該変速機4は、例えば前進12段及び後進1段を備えた手動式変速機をベースとしたものであり、以下に述べるように、その変速操作及び変速に伴うクラッチ装置3の断接操作を自動化した、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)である。
【0022】
クラッチ装置3は、フライホイール5にクラッチ板6をプレッシャスプリング7により圧接させて接続される一方、フライホイール5からクラッチ板6を離間させることにより切断される摩擦式クラッチとして構成されている。クラッチ板6にはアウタレバー8を介してエアシリンダ9が連結され、エアシリンダ9には電磁弁10が介装されたエア通路11を介して圧縮エアを充填したエアタンク12が接続されている。
【0023】
電磁弁10の開弁時にはエアタンク12からエア通路11を介してエアシリンダ9に圧縮エアが供給され、エアシリンダ9が作動してアウタレバー8を介してクラッチ板6をフライホイール5から離間させ、これによりクラッチ装置3が接続状態から切断状態に切り替えられる。一方、電磁弁10が閉弁すると、圧縮エアの供給中止によりエアシリンダ9が作動しなくなることから、クラッチ板6はプレッシャスプリング7によりフライホイール5に圧接され、これによりクラッチ装置3は切断状態から接続状態に切り替えられる。このように電磁弁10の開閉に応じてエアシリンダ9が作動して、クラッチ装置3を自動的に断接操作可能になっている。
【0024】
変速機4には変速段を切り替えるためのギヤシフトユニット13が設けられ、図示はしないがギヤシフトユニット13は、変速機4内の各変速段に対応するシフトフォークを作動させる複数のエアシリンダ、及び各エアシリンダを作動させる複数の電磁弁を内蔵している。ギヤシフトユニット13はエア通路14を介して上記したエアタンク12と接続されており、各電磁弁の開閉に応じてエアタンク12からの圧縮エアが対応するエアシリンダに供給され、そのエアシリンダが作動して対応するシフトフォークを切替操作すると、切替操作に応じて変速機4の変速段のギヤ入れが行われる。このようにギヤシフトユニット13の電磁弁の開閉に応じてエアシリンダが作動して、変速機4を自動的に変速操作可能になっている。なお、本実施形態では主にエアによりクラッチ装置3及び変速機4を作動させているが、作動方式はこれに限られず、例えば油圧を用いてもよい。
【0025】
車両1内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM、RAMなど)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタなどを備えたECU(制御ユニット)20が設置されており、エンジン2、クラッチ装置3、変速機4の総合的な制御を行う。
【0026】
ECU20の入力側には、例えば、運転席に設けられたシフトレバー15の切替位置を検出するレバー位置センサ21、アクセルペダル16の操作量(アクセル開度及びアクセル開度変化率)を検出するアクセルセンサ22、ブレーキペダル17の操作を検出するブレーキスイッチ23、変速機4の現変速段を検出する変速段センサ24、車両1が走行している路面の勾配を検出する勾配センサ25、エンジン2の回転速度からエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ26、変速機4の出力軸4bに設けられて出力軸回転速度から車速を検出する車速センサ27、車両1の加速度を検出する加速度センサ28、などのセンサ類が接続されている。
【0027】
また、ECU20の出力側には、上記したクラッチ装置3の電磁弁10、ギヤシフトユニット13の各電磁弁などが接続されると共に、図示はしないが、エンジン2の燃料噴射弁などが接続されている。なお、このように単一のECU20で総合的に制御することなく、例えばECU20とは別にエンジン制御専用のECUを備えるようにしてもよい。
【0028】
そして、例えばECU20は、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数及びアクセルセンサ22により検出されたアクセル開度に基づき、図示しないマップからエンジン2の各気筒への燃料噴射量を算出すると共に、エンジン回転数及び燃料噴射量に基づき図示しないマップから燃料噴射時期を算出する。そして、これらの算出値に基づき各気筒の燃料噴射弁を駆動制御しながらエンジン2を運転する。
【0029】
また、ECU20は、レバー位置センサ21によりシフトレバー15のD(ドライブ)レンジへの切替が検出されているときには自動変速モードを実行し、アクセル開度及び車速センサ27により検出された車速に基づき、後述するシフトマップから目標変速段を算出する。そして、クラッチ装置3の電磁弁10を開閉してエアシリンダ9によりクラッチ装置3を断接操作させながら、ギヤシフトユニット13の所定の電磁弁を開閉してエアシリンダにより対応するシフトフォークを切替操作して目標変速段にギヤ入れし、これにより常に適切な変速段をもって車両を走行させる。
【0030】
なお、シフトレバー15が選択可能なシフト位置としては、駐車時に選択するP(パーキング)レンジ、変速機4のギヤをニュートラルとするN(ニュートラル)レンジ、前進走行時に選択するD(ドライブ)レンジ、後進時に選択するR(リバース)レンジ、手動で変速段をシフトアップ又はシフトダウン可能なM(マニュアル)レンジ等がある。
【0031】
また、車両1は、後述する惰性走行のオン、オフを行う惰性走行スイッチ29、及びブレーキペダル17の操作に応じた制動以外で制動力を生じさせる補助ブレーキ(補助ブレーキ手段)のオン、オフを行う補助ブレーキスイッチ30も備えている。補助ブレーキとしては、例えば、排気ブレーキ、エンジン2の圧縮開放ブレーキ、リターダがある。
【0032】
さらに、ECU20は、車両走行中に以下に説明する各種条件が成立した際に、変速機4のギヤをニュートラル状態とし、且つクラッチ装置3を接続状態とすることで惰性走行を実行する(惰性走行制御手段)。
【0033】
ここで、図2を参照すると、ECU20が実行する惰性走行制御ルーチンを表すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って惰性走行制御について詳しく説明する。
【0034】
まず、ECU20は、ステップS1として、アクセルセンサ22の情報からアクセル開度変化率が所定の負の第1閾値R1以下である、即ち、アクセル開度変化率≦R1の関係式が成立するか否かを判別する。アクセル開度変化率≦R1を満たす状態は、運転者が車両1の走行中にアクセルペダル16を踏み込んでいて、次の瞬間にアクセルペダル16を急に解放した場合であって、アクセルペダル16の解放速度が大きい場合を想定している。
【0035】
具体的には、アクセル開度変化率R1には、車両1を惰性走行させるのではなく、むしろエンジンブレーキを効かせながら速度維持したい、或いは減速したいという運転者の意思が強いと推定されるアクセル開度変化率の値(例えば−1200%/sec)が設定される。当該判別結果が偽(No)である場合は、ステップS2に進む。ステップ1から以降のステップS3までは惰性走行禁止条件に相当する。
【0036】
ステップS2においてECU20は、ブレーキスイッチ23の情報からブレーキオン状態であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ちブレーキペダル17の踏み込みが無い場合には、ステップS3に進む。
【0037】
ステップS3においてECU20は、補助ブレーキスイッチ30がオン状態であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち補助ブレーキを使用すべく補助ブレーキスイッチ30がオフ状態である場合には、ステップS1からS3の惰性走行禁止条件は全て不成立であり、惰性走行を禁止する必要はないため、ステップS4に進む。一方、ステップS1からS3の惰性走行禁止条件の何れかが成立したとき、即ちステップS1からS3の少なくとも1つの判別結果が真(Yes)となる場合は、ステップS5に進む。
【0038】
ステップS4においてECU20は、惰性走行を実行しているか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合は、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判別結果が偽(No)である場合は、ステップS12に進む。
【0039】
ステップS5においてECU20は、惰性走行を実行しているか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合は、ステップS6に進み惰性走行を終了し、ステップS7に進む。当該判別結果が偽(No)である場合は、そのままステップS7に進む。
【0040】
ステップS7においてECU20は、惰性走行を禁止し、次のステップS8に進む。惰性走行禁止になると、例えば運転者により惰性走行スイッチ29がオンに操作されたとしても惰性走行は実行されない。
【0041】
ステップS8においてECU20は、アクセルセンサ22の情報からアクセル開度が所定の第2閾値P1以上であり、且つアクセルセンサ22の情報からアクセル開度変化率が所定の正の第3閾値R2以上である、即ち、アクセル開度≧P1、且つアクセル開度変化率≧R2の関係式が成立するか否かを判別する。アクセル開度≧P1、且つアクセル開度変化率≧R2を満たす状態は、運転者が車両1の走行中にアクセルペダル16を明らかに踏み込んだ場合を想定している。
【0042】
具体的には、アクセル開度P1、アクセル開度変化率R2には、アクセルペダル16を踏み込んで車両1を加速させ、車速が安定すれば即座に惰性走行させたいという運転者の意思が強いと推定される、アクセル開度の値(例えば10%)、アクセル開度変化率の値(例えば10%/sec)がそれぞれ設定される。当該判別結果が偽(No)である場合は、ステップS9に進む。ステップ8から以降のステップS10までは惰性走行禁止解除条件に相当する。
【0043】
ステップS9においてECU20は、車両1の運転状態がシフトマップにおけるシフトダウン線を下回ったか否かを判別する。ここで図3を参照すると、本実施形態の変速機4におけるシフトマップが示されている。同図に示すように、シフトマップは車両1の運転状態としてアクセル開度及び車速に基づいて目標変速段を算出する。なお、図3では、実線でシフトダウン線が示され、破線でシフトアップ線が示されている。
【0044】
ステップS9では、この時点でアクセル開度が0であることから、車速がシフトダウン線を横切って下回る状態、即ちシフトダウンを行うタイミングであるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ちシフトダウンのタイミングでない場合には、ステップS10に進む。
【0045】
ステップS10においてECU20は、車両1がキーオフ状態であるか否か、車速センサ27の情報から現在の車速が所定車速以下であるか否か、又は、エンジン回転数センサ26の情報から現在のエンジン回転数が予め定めた所定回転数以下であるか否かを判別する。当該所定車速は、例えば車両停車や徐行相当の速度(例えば4km/h)に設定され、また、当該所定回転数はエンジン2のアイドル回転数よりも小さい値(例えば100rpm)に設定される。
【0046】
当該判別結果が偽(No)である場合、即ち車両1が駐車中でキーオン状態である、又は車速が停車や徐行相当の車速よりも高速である、又は、エンジン回転数が比較的高く、エンジンブレーキによる制動力も大きい場合、惰性走行禁止を解除せず、ステップS8に戻ってステップS8からS10の惰性走行禁止解除条件を再び判別する。
【0047】
一方、ステップS8からS10の惰性走行禁止解除条件の何れかが成立したとき、即ちステップS8からS10の少なくとも1つの判別結果が真(Yes)となる場合は、ステップS11に進み、ECU20は、惰性走行禁止を解除し、ステップS12に進む。
【0048】
特に、ステップS9の判別を行うのは、例えば運転者がブレーキや補助ブレーキ操作を行うことにより車両1が緩やかに減速している際、運転者の減速意思が弱まった場合を想定している。この場合、運転者は制動操作を解除(ブレーキオフ且つ補助ブレーキスイッチオフ)して車速を徐々に下げ、シフトダウン線を横切った時に惰性走行禁止を解除し、惰性走行実行可能とすることにより、シフトダウンを行ったときの燃料消費を抑制可能である。
【0049】
また、ステップS10の判別を行うのは、例えば車両停車状態やキーオフした後も惰性走行禁止状態を維持すると、その後、車両1が再発進して緩やかに加速し始めた場合、上記惰性走行禁止解除条件が成立しないという弊害が生じるからである。また、基本的には、車両1が停車した場合やキーオフした場合は、惰性走行制御を含む種々の制御はリセットされた方が運転者のドライバビリティは向上する。このため、キーオフ、車両停車、エンジン停止に近づくステップS10の判別結果を得た場合には惰性走行禁止を強制的に解除することとしている。
【0050】
ステップS12においてECU20は、惰性走行開始条件が成立しているか否かを判別する。惰性走行開始条件は、例えば、惰性走行スイッチ29がオン、アクセルオフ、ブレーキオフ、且つ補助ブレーキオフなどである。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち運転者により惰性走行スイッチ29がオフに操作されている場合や、補助ブレーキを使用すべく補助ブレーキスイッチ30がオン状態である場合には、運転者に惰性走行を行う意思はないと推定できるため、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判別結果が真(Yes)である場合は、運転者には惰性走行を行う意思はあると推定できることから、次のステップS13に進み、惰性走行を実行して当該ルーチンをリターンする。
【0051】
このように、上記ステップS12の惰性走行開始条件が成立したとき、ステップS13に進み、ECU20は惰性走行を開始する。一方、ステップS12の惰性走行開始条件が成立しない場合、ECU20は惰性走行を開始しない。これにより、アクセルオン状態又はブレーキオン状態となり運転者の操作が行われている場合には、運転者の操作に応じた走行を継続させることができる。
【0052】
以上のように、車両走行中における運転者の意図しない惰性走行を禁止し、運転者の適切な運転操作に基づいて惰性走行を実行することにより、車両1の燃費、運転者の安全性及びドライバビリティの全てを向上することができる。
【0053】
具体的には、延々と続く降坂路で補助ブレーキスイッチ30のオンオフを頻繁に行う場合、車速や車両1の加速度が一時的に小さくなっても、その後、即座に降坂路やカーブに突入するケースが想定されるため、惰性走行は禁止することが好ましい。また、惰性走行禁止後は、運転者が車両1を加速させたいという明確な意思が無い限り、惰性走行禁止を継続するのが好ましく、運転者の明確な加速意思は、運転者の運転操作、即ちアクセル操作から判断することが妥当である。したがって、上記惰性走行制御では、惰性走行禁止解除条件に、ステップS8のアクセル操作を判別している。
【0054】
このように、本発明の惰性走行制御では、運転者の運転操作、即ち運転者の主にアクセル操作から、動力遮断した惰性走行が適切でないと判断した場合は、惰性走行を禁止し、その後の運転者の運転操作、即ち主にアクセル操作から惰性走行禁止解除が適切と推定される状況となるまで惰性走行を禁止する。こうして、車両走行中における運転者の意図しない惰性走行を禁止し、運転者の適切な運転操作に基づいて惰性走行を実行することにより、惰性走行を不用意に禁止するのではなく、惰性走行を可能な範囲で許容しつつ、運転者の意思を極力尊重し、登坂路、即ち車両1の減速時における使い勝手を損なうことなく、降坂路、即ち車両1の加速時における安全性を確保しながら、車両1の燃費を向上することができる。
【0055】
以上で本発明に係る車両の走行制御装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
【0056】
上記実施形態では、車両1をトラックとしているが、本発明を適用することのできる車両はこれに限られるものではなく、乗用車にも適用することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、エンジン2はディーゼルエンジンであるが、エンジンはこれに限られず、例えばガソリンエンジンでもよい。また、上記実施形態では、変速機は前進12段後進1段の変速段を有したものであるが、変速機の構成はこれに限られず、例えば前進6段、又は前進16段等の変速機であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、変速機4のギヤをニュートラル状態とし、且つクラッチ装置3を接続状態とすることで惰性走行を行っているが、惰性走行はエンジンを駆動系から切り離せればよく、これに限られるものではない。例えばクラッチ装置を切断状態とするのみ、又はクラッチ装置3を切断状態とするとともに変速機のギヤをニュートラル状態として惰性走行を行ってもよい。
【0059】
また、上記実施形態の惰性走行開始条件と惰性走行終了条件とは、上述した各ステップの判別や判別順序に限られるものではなく、車両1に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 エンジン
3 クラッチ装置
4 変速機
16 アクセルペダル
17 ブレーキペダル
20 ECU(惰性走行制御手段)
22 アクセルセンサ(アクセル状態検出手段)
26 エンジン回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
27 車速センサ(車速検出手段)
30 補助ブレーキスイッチ
図1
図2
図3