(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダウンドロー法により溶融ガラスを板ガラスに成形する成形領域と、前記成形領域の下方で前記板ガラスの温度を調整する温度調整領域と、前記温度調整領域の下方で前記板ガラスを徐冷する徐冷領域とを備える板ガラス製造装置において、
前記温度調整領域は、前記板ガラスの幅方向に沿って長尺状に構成されるとともにその間に前記板ガラスを通過させることが可能な少なくとも一対の温度調整部材を備え、
前記温度調整部材は、熱伝導性材料によって構成されるとともに前記板ガラスに対向する縦壁部と、上下方向に沿って配置されるとともに前記縦壁部を直接的又は間接的に補強する少なくとも1つの補強部材とを備え、
前記温度調整部材は、前記上下方向に直交する横方向に沿って延びる少なくとも1つの横壁部をさらに備え、前記横壁部は、熱伝導性材料によって構成されるとともに前記縦壁部に一体的に設けられ、
前記補強部材は、前記横壁部に固定されていることを特徴とする板ガラス製造装置。
ダウンドロー法により溶融ガラスを板ガラスに成形する成形工程と、前記成形工程後に前記板ガラスの温度を調整する温度調整工程と、前記温度調整工程後に前記板ガラスを徐冷する徐冷工程とを備える板ガラス製造方法において、
前記温度調整工程は、前記板ガラスの幅方向に沿って長尺状に構成される一対の温度調整部材の間に前記板ガラスを通過させることにより、前記板ガラスの温度を調整し、
前記温度調整部材は、熱伝導性材料によって構成されるとともに前記板ガラスに対向する縦壁部と、上下方向に沿って配置されるとともに前記縦壁部を直接的又は間接的に補強する少なくとも1つの補強部材とを備え、
前記温度調整部材は、前記上下方向に直交する横方向に沿って延びる少なくとも1つの横壁部をさらに備え、前記横壁部は、熱伝導性材料によって構成されるとともに前記縦壁部に一体的に設けられ、
前記補強部材は、前記横壁部に固定されていることを特徴とする板ガラス製造方法。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に代表されるように、各種分野に利用される板ガラスには、表面欠陥やうねりに対して厳しい製品品位が要求されるのが実情である。
【0003】
このような要求を満たすために、板ガラスの製造方法としてダウンドロー法が広く利用されている。このダウンドロー法としては、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法が公知である。
【0004】
オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、1枚の板ガラスを連続成形するというものである。また、スロットダウンドロー法は、溶融ガラスが供給される成形体の底壁にスロット状の開口部が形成され、この開口部を通じて溶融ガラスを流下させることにより一枚の板ガラスを連続成形するというものである。
【0005】
特にオーバーフローダウンドロー法は、成形された板ガラスの表裏両面が、成形過程において、成形体の如何なる部位とも接触せずに成形されるので、非常に平面度がよく傷等の欠陥のない火造り面となる。
【0006】
例えば、オーバーフローダウンドロー法を用いる板ガラス製造装置としては、下記の特許文献1に開示されるように、成形体を内部に有する成形炉と、成形炉の下方に設置される徐冷炉と、徐冷炉の下方に設けられる冷却部及び切断部とを備えたものがある(同文献の段落0065及び
図1等参照)。この板ガラス製造装置は、成形体の頂部から溶融ガラスを溢れさせると共に、その下端部で融合させることで板ガラス(ガラスリボン)を成形し、この板ガラスを徐冷炉に通過させて徐冷し、冷却部で室温まで冷却した後に、切断部で所定寸法に切断するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、フラットパネルディスプレイの大型化やその需要の増加に伴い、板ガラスの生産性向上が求められるようになってきている。ダウンドロー法を用いて板ガラスを効率良く大量生産するには、例えば、成形体から流下させる溶融ガラスの流量を増加させることが考えられる。この場合には、溶融ガラスの流量の増加に伴って、成形炉に持ち込まれる熱量も増加することになる。このように熱量が増加すると、成形炉の炉壁に対する熱負荷が増加し、炉壁の熱変形を招きかねない。また、徐冷炉においても、徐冷に要する温度勾配を変更しなければならず、その条件調整が難しくなることが予想される。したがって、溶融ガラスの流量増加に伴う熱量の増加分を適切に吸収する必要がある。
【0009】
このための技術として、例えば上記の特許文献2には、成形体と、成形体の下方に設けられる冷却空間と、冷却空間の下方に設けられる徐冷空間とを有する板ガラス製造装置が開示されている。この板ガラス製造装置では、成形体と徐冷空間との間に設けられる冷却空間で、板ガラス(ガラスシート)を徐冷点近傍にまで冷却することにより、その温度を調整することができる。
【0010】
この冷却空間には、冷却ユニットが配置されており、この冷却ユニットは、板ガラスの温度を調整するための温度調整部材(冷却速度制御部材)を備えている(同文献の段落0034〜0040及び
図2等参照)。この温度調整部材は、板ガラスの厚さ方向の一方側と他方側とに対(6対)となるように配置されている。また、各温度調整部材は、板ガラスの幅方向に沿って延びる長尺形状とされている。
【0011】
上記のような板ガラス製造装置において、従来よりも大型の板ガラスを製造するには、温度調整部材の長さをさらに長くする必要がある。しかしながら、温度調整部材の長さが従来よりも長くなると、温度調整部材が熱変形によって下方に撓んでしまい、板ガラスの温度調整が適切に行われなくなるという問題が生じ得る。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑み、温度調整部材の熱変形を防止するとともに、板ガラスの温度を適切に調整することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の技術的課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、ダウンドロー法により溶融ガラスを板ガラスに成形する成形領域と、前記成形領域の下方で前記板ガラスの温度を調整する温度調整領域と、前記温度調整領域の下方で前記板ガラスを徐冷する徐冷領域とを備える板ガラス製造装置において、前記温度調整領域は、前記板ガラスの幅方向に沿って長尺状に構成されるとともにその間に前記板ガラスを通過させることが可能な少なくとも一対の温度調整部材を備え、前記温度調整部材は、熱伝導性材料によって構成されるとともに前記板ガラスに対向する縦壁部と、上下方向に沿って配置されるとともに前記縦壁部を直接的又は間接的に補強する少なくとも1つの補強部材とを備えることに特徴づけられる。
【0014】
上記の構成によれば、成形領域において成形された板ガラスを温度調整領域に設けられる一対の温度調整部材の間に通過させると、熱伝導性を有する縦壁部が板ガラスの通過時にその熱を両側から吸収して板ガラス製造装置の外部に排出する。これによって、板ガラス製造装置は板ガラスの温度を適切に調整することができる。しかも、この温度調整部材は、板ガラス製造装置の上下方向に沿って配置される補強部材によって縦壁部を補強していることから、上下方向におけるその熱変形が防止されることになる。なお、ここにおける上下方向とは、板ガラスが成形領域から温度調整領域、徐冷領域へと流下する方向を指す。
【0015】
また、上記の構成において、前記温度調整部材は、前記上下方向に直交する横方向に沿って延びる少なくとも1つの横壁部をさらに備え、前記横壁部は、熱伝導性材料によって構成されるとともに前記縦壁部に一体的に設けられることが好ましい。
【0016】
このように、熱伝導性の横壁部が縦壁部に一体的に設けられることによって、温度調整部材の強度が向上するとともに、縦壁部の熱が横壁部に伝導することも可能になり、温度調整部材の熱変形をより効果的に防止するとともに、板ガラスの温度を一層好適に調整できるようになる。なお、ここにおける横方向とは、前記板ガラスの幅方向と同義である。
【0017】
また、上記の構成において、前記補強部材は、前記縦壁部から離間された位置で前記横壁部に一体的に設けられることが好ましい。
【0018】
このように、補強部材を縦壁部から離間した位置で横壁部に一体的に設けると、縦壁部と補強部材との間に隙間が形成されることになる。例えば、この隙間に温度調整部材を冷却するための冷却配管を設置すれば、温度調整部材の熱変形をより効果的に防止できるようになる。
【0019】
また、本発明に係る板ガラス製造装置によれば、前記補強部材は、熱伝導性材料によって構成され、前記温度調整部材には、複数の前記補強部材が当該温度調整部材の長手方向に間隔をおいて設けられ、前記一対の温度調整部材のうち、一方の前記温度調整部材における前記補強部材と他方の前記温度調整部材における前記補強部材とが前記板ガラスの幅方向においてずれた位置に設けられていることが好ましい。
【0020】
このように、一方の温度調整部材における補強部材と、他方の温度調整部材における補強部材とを、板ガラスの幅方向においてずれるように位置づけることによって、板ガラスの偏肉を抑制することができる。ここで、板ガラスの偏肉とは、板ガラスの幅方向における温度分布が一定とならないことに起因して、高温の部分が相対的に薄肉となり、低温の部分が相対的に厚肉となる部分がある状態になることをいう。
【0021】
例えば、一方の温度調整部材における補強部材の位置と他方の温度調整部材における補強部材の位置とが板ガラスの幅方向において一致していると、縦壁部からの熱が補強部材に集中的に伝わることになり、補強部材の位置に対応する板ガラスの部位が局部的に低温となって厚肉化してしまう。これに対し、一方の温度調整部材における補強部材と他方の温度調整部材における補強部材を、板ガラスの幅方向にずれるように配置することにより、板ガラスの幅方向の温度分布を均一化することができ、その偏肉を可及的に抑制できるようになる。
【0022】
また、上記の技術的課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、ダウンドロー法により溶融ガラスを板ガラスに成形する成形工程と、前記成形工程後に前記板ガラスの温度を調整する温度調整工程と、前記温度調整工程後に前記板ガラスを徐冷する徐冷工程とを備える板ガラス製造方法において、前記温度調整工程は、前記板ガラスの幅方向に沿って長尺状に構成される一対の温度調整部材の間に前記板ガラスを通過させることにより、前記板ガラスの温度を調整し、前記温度調整部材は、熱伝導性材料によって構成されるとともに前記板ガラスに対向する縦壁部と、上下方向に沿って配置されるとともに前記縦壁部を直接的又は間接的に補強する少なくとも1つの補強部材とを備えることに特徴づけられる。
【0023】
本発明に係る板ガラス製造方法によれば、上記の板ガラス製造装置と同様に、温度調整部材の縦壁部が補強部材によって補強されることにより、温度調整部材の熱変形を招くことなく、板ガラスの温度を好適に調整できる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、温度調整部材の熱変形を防止するとともに、板ガラスの温度を適切に調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る板ガラス製造装置および板ガラス製造方法を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1〜
図3は、本発明に係る板ガラス製造装置の第1実施形態を示す。
図1は板ガラス製造装置1の概略縦断側面図を示す。
図1に示すように、板ガラス製造装置1は、ダウンドロー法により溶融ガラスGMを板ガラスGR(ガラスリボン)に成形する成形領域としての成形炉2と、成形炉2の下方で板ガラスGRの温度を調整する温度調整領域3と、温度調整領域3の下方で板ガラスGRを徐冷する徐冷領域としての徐冷炉4(アニーラ)とを主に備える。加えて、図示はしないが、板ガラス製造装置1は、徐冷領域の下方に、徐冷炉4からの板ガラスGRを室温付近まで冷却する冷却領域を備えている。
【0028】
成形炉2は、炉壁の内側に、オーバーフローダウンドロー法を実行する成形体5と、この成形体5から溢れ出た溶融ガラスGMを加熱する加熱装置6と、成形体5から溢れ出た溶融ガラスGMを板状形態の板ガラスGRとして引き抜く冷却ローラ7(エッジローラ)とを備える。
【0029】
成形体5は、長尺状に構成されるとともに、頂部にその長手方向に沿って形成されたオーバーフロー溝8と、互いに対向する一対の側壁部を構成する垂直面部9及び傾斜面部10を備えている。一対の傾斜面部10は、下方に向かって漸次接近することで交差し、成形体5の下端部11を構成している。
【0030】
加熱装置6は、成形体5の両側の垂直面部9及び傾斜面部10に対面するように配置されている。具体的には、加熱装置6は、垂直面部9に対面する位置と、傾斜面部10に対面する位置との上下2列で、複数個が隣接配置されている。成形体5のオーバーフロー溝8から溢れ出て、垂直面部9及び傾斜面部10を伝って流下する溶融ガラスGMは、加熱装置6により加熱されることでその粘度が調整されつつ、成形体5の下端部11で融合して一枚の板ガラスGRに成形される。
【0031】
冷却ローラ7は、成形体5の直下方において、板ガラスGRの幅方向両端部を挟持するように二対のローラ対として構成される。冷却ローラ7は、板ガラスGRの収縮を抑制するためのものである。
【0032】
温度調整領域3は、成形炉2と徐冷炉4との間に位置し、徐冷炉4による徐冷が適切に行われるように、成形炉2の冷却ローラ7を通過して下降する板ガラスGRの温度を調整する。この温度調整領域3には、板ガラスGRの厚さ方向Tにおいて対向するように配置されるとともにその間に板ガラスGRを通過させることが可能な一対の温度調整部材12が設けられている。
【0033】
この温度調整部材12の詳細な構成を
図2及び
図3に示す。
図2は、温度調整部材12の斜視図であり、
図3は、
図2におけるA―A断面図である。この温度調整部材12は、板ガラスGRの幅方向Wに沿って長尺状に構成されている。一対の温度調整部材12において、長手方向Lにおける一端部同士および他端部同士は、図示しない閉塞部材(壁部材)によって連結されており、温度調整領域3には、温度調整部材12と閉塞部材とによって、その内側に板ガラスGRが通過する空間が形成されている。また、この温度調整部材12は、その長手方向Lが板ガラスGRの幅方向Wと同じ向き(平行)になるように配置されている。
【0034】
温度調整部材12は、熱伝導性を有する材料、例えば、金属またはセラミックによって所定の形状に構成される。この温度調整部材12の熱伝導率は、10W/m・K以上100W/m・K以下とされることが好ましい。温度調整部材12に使用される金属材料としては、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼(例えばSUS310S)その他の各種材料が使用され得る。本実施形態では、温度調整部材12は、インコネル(登録商標)によって板状に構成されている。
【0035】
温度調整部材12は、板ガラスGRに対向する縦壁部13と、縦壁部13の上端部及び下端部に一体的に設けられる2つの横壁部14と、温度調整部材12を補強する複数の補強部材15とを備える。
【0036】
温度調整部材12は、例えば鋳造やプレス加工等の各種製法によって、縦壁部13と横壁部14とが一体的に形成されたものである。本実施形態では、縦壁部13と横壁部14が同じ材料によって一体に形成されているが、横壁部14と縦壁部13とを別々の材料で構成し、溶接等によりこれらを一体に形成して温度調整部材12としてもよい。
【0037】
縦壁部13は、板ガラスGRの幅方向Wに沿って長い長方形状の板状に構成される。本実施形態において、縦壁部13は、温度調整部材12の長手方向Lにおける長さ寸法が約2000mm以上4000mm以下、ガラス製造装置1の上下方向P(鉛直方向)における長さ(幅)寸法が約100mm以上300mm以下、厚さ寸法が約5mm以上20mm以下とされている。この縦壁部13は、その厚さ方向における一方の面13aが板ガラスGRに対向するように配置されている。以下、この縦壁部13において板ガラスGRに対向する面を内面13aといい、内面13aとは反対側の面を外面13bという。
【0038】
縦壁部13の内面13aは、温度調整領域3を通過する板ガラスGRの厚さ方向Tに直交するように、換言すれば、この板ガラスGRの一方又は他方の面と平行となるように、
図1に示す上下方向Pに沿って配置されている。温度調整部材12は、縦壁部13の内面13aから板ガラスGRの熱を吸収し、この熱を熱伝導によって外面13b側に排出することにより、板ガラスGRの温度を徐冷点付近にまで調整できる。
【0039】
横壁部14は、
図1及び
図2に示すように、板ガラスGRの厚さ方向Tに沿う横方向(水平方向)に沿って延びる板状に構成される。また、横壁部14は、縦壁部13に対して直角をなすように、この縦壁部13に一体的に設けられている。また、各横壁部14は、上下方向Pに対して直交するように形成されており、その厚さ方向における一方の面が上方に面し、他方の面が下方に面にしている。
【0040】
横壁部14は、板ガラスGRの幅方向Wに沿って長い長方形状に構成されている。横壁部14は、板ガラスGRの幅方向Wにおける長さ寸法が約2000mm以上4000mm以下、横方向における長さ(幅)寸法が約100mm以上300mm以下、厚さ寸法が約5mm以上20mm以下とされている。本実施形態において、上下2つの横壁部14は、同じ寸法のものが使用されているが、各寸法が異なったものを使用してもよい。
【0041】
補強部材15としては、立方体や直方体等のブロック状、箱状、又は板状その他の各種形状に構成され得るが、本実施形態では、四角形状の板材(補強板)が使用されている。この補強部材15は、縦壁部13の外面13bに対して直角をなすように、かつ上下方向Pに沿って配置されている。また、この補強部材15は、横壁部14に対しても直角をなすように配置されている。したがって、板状の補強部材15は、その一方の面と他方の面が板ガラスGRの幅方向Wに対向するように配置されている。
【0042】
補強部材15は、上下方向Pにおける長さ寸法が約175mm、横方向の長さ寸法が約250mm、厚さ寸法が約10mmとされている。
図2及び
図3に示すように、複数の補強部材15は、板ガラスGRの幅方向W又は温度調整部材12の長手方向Lに沿って間隔(例えば等間隔)をおいて並設されている。
【0043】
補強部材15は、縦壁部13や横壁部14と同じ材料で構成されてもよく、またこれらとは異なる材料で構成されてもよい。本実施形態において、補強部材15は、縦壁部13及び横壁部14と同様にインコネル(登録商標)によって構成されている。
【0044】
各補強部材15は、溶接によって縦壁部13及び横壁部14に固定されている。具体的には、四角形状の補強部材15は、一辺(側辺)が縦壁部13の外面13bに溶接されることにより、縦壁部13を直接的に補強している。さらに、補強部材15は、上下の2辺が各横壁部14に溶接されている。これによって、温度調整部材12には、縦壁部13、上下の横壁部14、および隣り合う2つの補強部材15によって区切られた空間が形成される。この空間内には、温度調整部材12を冷却するための冷却ユニット、温度調整部材12を加熱するための加熱ユニット、温度調整部材12の温度を測定するための温度センサ(例えば熱電対)等の各種機器が設置され得る。
【0045】
本実施形態において、所定の間隔をおいて対向配置される一対の温度調整部材12は、両方とも同形のものが使用されている。このため、一方の温度調整部材12における補強部材15の位置と、他方の温度調整部材12における補強部材15の位置とが板ガラスGRの幅方向Wにおいて一致している。
【0046】
徐冷炉4は、温度調整領域3を経て下降する板ガラスGRを徐冷してその内部歪を除去する。すなわち、徐冷炉4内は、所定の温度勾配を有するように温度設定がなされており、板ガラスGRが下降するにつれて徐々に温度が低下し、これによって板ガラスGRの内部歪が除去されることになる。徐冷炉4は、内部に配置された上下複数段の案内ローラ16を介して板ガラスGRを鉛直下方に案内する。
【0047】
以下、上記構成の板ガラス製造装置1を用いて板ガラスGRを製造する方法について説明する。この製造方法は、ダウンドロー法により溶融ガラスGMを板ガラスGRに成形する成形工程と、成形工程後に板ガラスGRの温度を調整する温度調整工程と、温度調整工程後に板ガラスGRを徐冷する徐冷工程とを主に備える。
【0048】
成形工程では、成形炉2の成形体5に供給された溶融ガラスGMがオーバーフロー溝8から溢れ出て、垂直面部9及び傾斜面部10を伝って流下する。そして、溶融ガラスGMは、成形体5の下端部11において融合一体化して板ガラスGRに成形されるとともに、この板ガラスGRの幅方向Wにおける各端部が冷却ローラ7によって下方に引き抜かれる。
【0049】
温度調整工程では、冷却ローラ7を経て下降してきた板ガラスGRが一対の温度調整部材12の間を通過する。この際、温度調整部材12は、縦壁部13の内面13aから板ガラスGRの熱を吸収することによって、この板ガラスGRの温度を徐冷点付近にまで低下させる。
【0050】
徐冷工程では、温度調整領域3を通過した板ガラスGRが徐冷炉4を通過する。このとき、板ガラスGRは、案内ローラ16によって下方に案内されながら所定の温度プロファイルに従い徐冷され、その内部歪が除去される。
【0051】
その後、板ガラスGRは、自然冷却によってさらに冷却され(冷却工程)、所定の寸法に切断され(切断工程)、または、切断されることなくロール状に巻き取られる(巻取工程)。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る板ガラス製造装置1及び板ガラス製造方法によれば、成形炉2において成形された板ガラスGRを、温度調整領域3に設けられる一対の温度調整部材12の間を通過させることにより、板ガラスGRの温度を好適に調整できる。すなわち、温度調整部材12は、熱伝導性材料によって構成されていることから、板ガラスGRに対向する温度調整部材12の縦壁部13が板ガラスGRの通過時にその熱を吸収するとともに、横壁部14及び補強部材15を介して外部に排出する。しかも、温度調整部材12は、上下方向に沿って設けられる補強部材15及び横壁部14によって縦壁部13が補強されているため、下方に熱変形することなく、板ガラスGRの温度を好適に調整できる。
【0053】
図4及び
図5は、本発明の第2実施形態を示す。
図4は、本実施形態の板ガラス製造装置1における温度調整部材12の斜視図を示し、
図5は、
図4におけるB−B線断面図である。本実施形態では、補強部材15の位置関係が第1実施形態とは異なる。
【0054】
本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、一対の温度調整部材12のうち、一方の温度調整部材12における補強部材15の位置と他方の温度調整部材12における補強部材15の位置が板ガラスGRの幅方向Wにおいて一致しないように、一方の温度調整部材12における補強部材15と他方の補強部材15とが板ガラスGRの幅方向Wにずれて位置付けられている。
【0055】
この事項をより詳細に説明するために、
図5において、一方の温度調整部材12において隣り合う任意の2つの補強部材15A,15Aと、他方の温度調整部材12における任意の1つの補強部材15Bに着目する。一方の温度調整部材12における2つの補強部材15A,15Aには、板ガラスGRの厚さ方向Tに沿って中心線X1,X2が引かれている。また、他方の温度調整部材12における1つの補強部材15Bについても、板ガラスGRの厚さ方向Tに沿って中心線X3が引かれている。
【0056】
本実施形態では、板ガラスGRの幅方向W又は温度調整部材12の長手方向Lにおいて、中心線X3は2つの中心線X1,X2の中間に位置している。すなわち、中心線X3から一方の中心線X1までの距離D1と、中心線X3から他方の中心線X2までの距離D2が等しくなっている。このように、本実施形態では、一方の温度調整部材12において隣り合う2つの補強部材15(15A)の中間位置に、他方の温度調整部材12における1つの補強部材15(15B)が配置されている。
【0057】
図6及び
図7は、本発明の第3実施形態を示す。
図6は、本実施形態の板ガラス製造装置1に用いられる温度調整部材12の斜視図を示し、
図7は、
図6におけるC−C線断面図である。本実施形態では、第2実施形態と同様に、一対の温度調整部材12のうち、一方の温度調整部材12における補強部材15の位置と他方の温度調整部材12における補強部材15の位置とが板ガラスGRの幅方向Wにおいてずれている。
【0058】
本実施形態における補強部材15は、以下の点において第2実施形態と異なっている。すなわち、この補強部材15は、第2実施形態における補強部材15よりも横方向における長さ寸法が小さくなっている。さらに、この補強部材15は、
図7に示すように、縦壁部13から離間された位置で上下2つの横壁部14に一体的に設けられることにより、横壁部14を介して間接的に縦壁部13を補強している。したがって、本実施形態では、縦壁部13と補強部材15との間に隙間17が形成されている。これにより、
図7に示すように、温度調整部材12を冷却する冷却配管18をこの隙間17に通して配設することができる。この冷却配管12に冷却媒体(例えば水)が循環することにより、温度調整部材12は全体的かつ均一に冷却され得る。
【0059】
上述した第2実施形態及び第3実施形態のように、一方の温度調整部材12における補強部材15の位置と他方の温度調整部材12における補強部材15の位置とが、板ガラスGRの幅方向Wにおいてずれている場合、第1実施形態と比較して、板ガラスGRにおける偏肉を抑制することが可能になる。
【0060】
以下、この効果について、
図8を参照しながら説明する。
図8(a)〜(c)は、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の各実施形態において製造される板ガラスGRの偏肉の度合いを比較するためのものである。具体的には、
図8は、板ガラスGRの幅方向Wにおける板厚分布を一対の温度調整部材12の間に示し、温度調整部材12と、板ガラスGRの板厚分布とを対応づけたものである。
【0061】
図8(a)〜(c)では、縦軸19によって板ガラスGRの板厚を示している。この縦軸19は、+(プラス)方向に向かうにつれて板ガラスGRの板厚が厚くなることを示し、−(マイナス)方向に向かうにつれて板ガラスGRの板厚が薄くなることを示す。また、
図8には、縦軸19に直交する基準線20が示されている。この基準線20は、板ガラスGRの平均板厚を示す。これらにより、
図8は、一対の温度調整部材12の長手方向Lの位置に対応して、板ガラスGRの相対的な板厚が判るようになっている。
【0062】
図8(a)は、第1実施形態に係る板ガラス製造装置1及び板ガラス製造方法によって板ガラスGRを製造した場合の板厚分布を示す。第1実施形態では、一方の温度調整部材12における補強部材15と、他方の温度調整部材12における補強部材15とが、板ガラスGRの幅方向Wにおいて一致するように配置されている。しかも、各補強部材15は、温度調整部材12の縦壁部13と一体に構成されている。このため、板ガラスGRは、厚さ方向Tにおける一方の面と他方の面の両方において、補強部材15の位置に対応する部位で集中的に熱が吸収されることになる。
【0063】
これにより、補強部材15の位置に対応する板ガラスGRの部分の温度が相対的に低下し、この部分の板厚が厚くなる。また、隣り合う2つの補強部材15の中間位置に対応する板ガラスGRの部分では、相対的に温度が高くなり、その分、板厚が薄くなる。
図8(a)に示すように、第1実施形態に係る板ガラス製造装置1によって製造される板ガラスGRは、最も肉厚の部分における板厚と最も肉薄の部分における板厚との差UTが、3つの実施形態の中で最も大きくなっており、したがって偏肉の度合いが最も大きくなっている。
【0064】
図8(b)は、第2実施形態に係る板ガラス製造装置1及び板ガラス製造方法によって板ガラスGRを製造した場合の板厚分布を示す。第2実施形態では、既述のように一方の温度調整部材12における補強部材15と他方の補強部材15とが板ガラスGRの幅方向Wにずれて設けられている。
【0065】
このため、第2実施形態では、上記の第1実施形態のように、板ガラスGRの両面側から集中的に熱が吸収されることはなく、その分、板ガラスGRの偏肉の度合いが緩和される。すなわち、
図8(b)に示すように、第2実施形態に係る板ガラス製造装置1によって製造される板ガラスGRは、最も肉厚の部分における板厚と最も肉薄の部分における板厚との差UTが、第1実施形態(
図8(a))よりも小さくなっている。
【0066】
図8(c)は、第3実施形態に係る板ガラス製造装置1及び板ガラス製造方法によって板ガラスGRを製造した場合の板厚分布を示す。第3実施形態では、既述のように一方の温度調整部材12における補強部材15と他方の補強部材15とが板ガラスGRの幅方向Wにずれて設けられるとともに、各補強部材15が縦壁部13から離間された位置に設けられている。
【0067】
このため、補強部材15には、縦壁部13に吸収された熱が直接的に伝導せず、補強部材15による熱の集中的な吸収が生じ難くなっている。これにより、板ガラスGRの偏肉の度合いは、第2実施形態よりも抑制されることになる。すなわち、
図8(c)に示すように、第3実施形態に係る板ガラス製造装置1によって製造される板ガラスGRは、最も肉厚の部分における板厚と最も肉薄の部分における板厚との差UTが、第2実施形態の場合(
図8(b))よりも小さくなっている。
【0068】
以上のように、第2実施形態及び第3実施形態の板ガラス製造装置1及び板ガラス製造方法によって製造される板ガラスGRは、第1実施形態の板ガラス装置1及び板ガラス製造方法によって製造される板ガラスGRと比較して、その偏肉の度合いが低下することが判る。
【0069】
なお、本発明に係る板ガラス装置1及び板ガラス製造方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る板ガラス製造装置1及び板ガラス製造方法は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る板ガラス製造装置1及び板ガラス製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0070】
上記の実施形態では、縦壁部13に2つの横壁部14が一体的に設けられた例を示したが、これに限定されない。例えば
図9(a)に示すように、縦壁部13の下端部のみに横壁部14を設けても良く、
図9(b)に示すように、縦壁部13の上端部のみに横壁部14を設けてもよい。また、縦壁部13に3つ以上の横壁部14を設けてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、横壁部14が縦壁部13に一体的に設けられた温度調整部材12を例示したが、これに限定されない。例えば、横壁部14を用いることなく、縦壁部13と、この縦壁部13を直接的に補強する補強部材15とにより温度調整部材12を構成してもよい。
【0072】
上記の実施形態では、オーバーフローダウンドロー法によって板ガラスGRを製造する例を説明したが、本発明はスロットダウンドロー法によって板ガラスGRを製造する場合にも適用可能である。
【0073】
上記の実施形態では、温度調整領域3に一対の温度調整部材12を配置した例を示したが、これに限定されず、複数対の温度調整部材12を上下方向Pに重ねるように配置することで温度調整領域3を構成してもよい。