特許第6597954号(P6597954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65979542−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597954
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20191021BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-116423(P2015-116423)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2016-69369(P2016-69369A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2018年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-197872(P2014-197872)
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井村 英明
(72)【発明者】
【氏名】高田 直門
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6213361(JP,B2)
【文献】 特開2013−087066(JP,A)
【文献】 特表2010−513437(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/046250(WO,A1)
【文献】 R.N. HASZEIDINE,POLYFLUOROALKYL DERIVATIVES OF SILICON,Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions: Inorganic Chemistry,1975年,21,2292-2294
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pKaが7以上である有機塩基と2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)を接触させる工程を含む、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)の製造方法。
【請求項2】
水存在下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
さらに、有機塩基を反応系より回収して接触工程で再使用する、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
有機塩基と2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)を接触させる接触工程を含み、
有機塩基を反応系より回収して前記接触工程で再使用する、
2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に関する。2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、洗浄剤、冷媒もしくはヒ−トポンプ用の熱媒体、または高温作動流体等として有用である。
【背景技術】
【0002】
1987年にカナダで採択されたモントリオール議定書において、オゾン層破壊に影響が強い物質として指定された特定フロンに替わり、オゾン層破壊の懸念が少ない代替フロンが種々合成され使われてきた。近年、代替フロンにおいても、さらに大気寿命が短く地球温暖化に対する影響が短いことが求められるようになってきている。
【0003】
分子内に二重結合を含む2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、二重結合と大気中のOHラジカル等とが反応して速やかに大気中で分解するので、地球温暖化係数が低くオゾン層破壊の懸念が少ない。2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンには、トランス体、シス体の幾何異性体がある。以下、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのトランス体を1224E、シス体を1224Z、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのトランス体とシス体の混合物またはシス体トランス体を考慮しない場合は1224と呼ぶことがある。
【0004】
1224Eの沸点は23℃であり、1224Zの沸点は17℃である。室温(約20℃)近傍の沸点を有する1224Eおよび1224Zは、発泡剤、溶剤、冷媒または作動流体等に使用できる。
【0005】
1224を断熱材用発泡剤に使用する場合、冷凍庫の断熱材には沸点の低い1224Zの使用が好ましく、住宅用の断熱材には沸点の高い1224Eの方が取り扱いに優れ、使用するに好ましい。
【0006】
また、1224は沸点が室温近傍なので、ヒ−トポンプ用の熱媒体または高温作動流体として好適に使用される。ヒートポンプ用の高温作動流体に使用する場合、僅かな沸点の違いであっても、消費電力1kwあたりの冷却・加熱能力を表した値である成績係数(COP)、または冷凍サイクル等における熱輸送の能力が異なる。高温作動流体として使用する場合、熱サイクルの条件により適する沸点が異なり、用途に合わせてトランス体(1224E)またはシス体(1224Z)を適宜選択することが好ましい。
【0007】
1224の製造方法を開示する文献として、以下の特許文献1〜2および非特許文献1を挙げることができる。
【0008】
特許文献1には、少なくともフッ化水素と2−クロロ−1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン組成物を弱塩基と接触させる工程を含む(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン組成物の精製方法が開示されている。
【0009】
具体的には、フッ化水素と微量不純物である2−クロロ−1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(以下、235daと呼ぶことがある)を含むトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(以下、1233Eと呼ぶことがある)と弱塩基を接触させることで、フッ化水素と235daを除去し精製された1224を得る方法である。
【0010】
非特許文献1には、1224の具体的な合成例として、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、1234と呼ぶことがある)の光塩素化によって2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(以下234daと呼ぶことがある)を合成し、234daを水酸化カリウム溶液中で脱塩化水素すると1224が合成できることが記載されている。234daは、CF3CHClCHClFで表されるハイドロクロロフルオロカーボンである。
【0011】
また、特許文献2には、1224の原料である235daの合成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2013−103890号公報
【特許文献2】米国特許第3499089号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions:Inorganic Chemistry, Vol.1975, No.21, PP.2292-2294 (1975)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)の製造方法において、副生物の生成を抑制し、1224を効率的に製造する、1224の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
下記の反応式に示すように、2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)と塩基を接触させると、脱塩化水素反応が進行し、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)が合成される。
【0016】
非特許文献1に記載の方法では、下記の反応式に示すように、水酸化カリウム溶液中で234daの脱塩化水素反応により1224、脱フッ化水素反応により1,2−ジクロロ-3,3,3−トリフルオロプロペン(CF3CCl=CHCl、以下、1223と呼ぶことがある)が生成する。非特許文献1の2294ページには、234daの脱塩化水素工程による1224の収率は69%であることが記載され、残部は1223が副生したと推測される。製造者が1224のみを所望する場合、副生成物となる1223の生成は少ないことが好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
本発明者らは鋭意検討した結果、2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)と有機塩基を接触させることで、副生物である1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223)の生成を抑制し、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
即ち、本発明は、以下の発明1〜5よりなる。
[発明1]
有機塩基と2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)を接触させる工程を含む、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)の製造方法。
[発明2]
有機塩基がpKaが7以上の有機塩基である、発明1の製造方法。
[発明3]
有機塩基がpKaが10以上の有機塩基である、発明1の製造方法。
[発明4]
水存在下で行う、発明1〜3の製造方法。
[発明5]
さらに、有機塩基を反応系より回収して接触工程で再使用する、発明1〜4の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)の製造方法において、原料化合物である2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)と有機塩基を接触させることによって、脱フッ化水素反応に起因して1,2−ジクロロ-3,3,3−トリフルオロプロペン(1223)を副生させることなく、脱塩化水素反応を選択的に進行させ、1224を選択率よく得ることができる。その際、特にpKa7以上、好ましくは、pKa10以上の有機塩基を用いることで反応は速やかに進行する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の1224の製造方法は、2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)とpKaが7以上の有機塩基を接触させる工程を含む。尚、本発明の1224の製造方法において、有機塩基とは第1〜3級アミンまたは窒素原子を含む複素環式化合物であって塩基性を示すものを言い、無機塩基とは、それ以外の塩基性の化合物を言う。
[有機塩基]
本発明の1224の製造方法に使用する有機塩基としては、第1〜3級アミンまたは窒素原子を含む複素環式化合物が挙げられるが、好ましくは、炭素数1〜6のカルボン酸のアルカリ金属塩、特に好ましくは、炭素数3〜18の3級アミンである。具体的に例示すると、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−イソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、トリ−n−アミルアミン、トリ−イソアミルアミン、トリ−sec−アミルアミン、トリ−tert−アミルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチルグアニジン、N−メチルジエチルアミン、N−メチルジ−n−プロピルアミン、N−メチルジイソプロピルアミン、N−メチルジ−n−ブチルアミン、N−メチルジイソブチルアミン、N−メチルジ−tert−ブチルアミン、N,N−ジイソプロピルブチルアミン、N,N-ジメチル−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミンまたはN−メチルジヘキシルアミンから選ばれる3級アミンを例示ことができる。環式のアミンには、テトラメチルグアニジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]-7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、またはビス(2−ジメチルアミノエチル)エ−テルを例示することができる。
【0022】
これらの塩基において、pKaが10以上の有機塩基を本発明の1224の製造方法に使用することが、好ましくない副生物である1223の副生が少なく反応速度も速いので好ましい。pKaが7以上、10未満の有機塩基は反応速度が低下するが1223の発生が少ない。pKaが7未満の有機塩基は反応速度が遅い。
【0023】
これら化合物のpKaの値は、例えば「化学便覧 改訂5版 日本化学会編」等に記載されている。尚、酸解離定数(pKa)は、ブレンステッド酸のプロトン供与能力を、水分子を標準のプロトン受容体(塩基)として比較表現した定数である。本発明の1224の製造方法において、共役酸である有機塩基のアルカリ強度を、酸解離定数(pKa)を用いて表している。
【0024】
本発明の1224の製造方法における、有機塩基の使用量は、原料である234daの1当量に対して、好ましくは1当量以上が好ましい。1当量未満の場合は反応が完結しないことがある。液体の有機塩基を反応剤兼溶媒として過剰に用いることも可能である。
[相間移動触媒]
本発明の1224の製造方法は、反応系に相間移動触媒を添加し、相間移動触媒の存在下で行うことも可能である。相間移動触媒とは、一般的には、水に不溶の有機化合物と有機溶媒に不溶の試薬を反応させるために使用される少量の試薬のことを指し、本発明においては、234daと有機塩基の接触を促進する化合物の事を指す。
【0025】
相間移動触媒を具体的に示せば、アンモニウムフルオリド、アンモニウムクロリド、アンモニウムブロミド、アンモニウムヨ−ジドまたはアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム化合物類、クラウンエ−テル類、カリックスアレ−ン類、シクロファン類、シクロデキストリン類、ホスホニウム化合物類、あるいはピリジニウム化合物類を例示することができる。
【0026】
具体的には、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルジメチルアルキルアンモニウムクロリド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムクロリド、フェニルトリエチルアンモニウムクロリド、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムブロミド、トリメチル−3−トリフルオロメチルフェニルアンモニウムブロミド、 トリメチル−α,α,α−トリフルオロ−m−トリルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド 、トリメチルフェニルアンモニウムヨ−ジド、2,3−ベンゾ−1,4,7,10−テトラオキサドデカ−2−エン、24−クラウン 8−エ−テル、トリフェニル(2−クロロベンジル)ホスホニウムクロリド、あるいは4−(ジメチルアミノ)−1−(トリフェニルメチル)ピリジニウムクロリドを例示することができる。
【0027】
相間移動触媒の添加量は、234daの全量に対して、0.01モル%以上、10モル%以下が好ましい。0.01モル%よりも添加量が少ないときは、十分な添加効果が認められないことがある。10モル%より多く添加しても、さらなる効果は期待できず、相間移動触媒が無駄となるばかりでなり反応後の反応器の清掃等の煩雑な作業が増えるので、10モル%より多く添加する必要はない。
【0028】
尚、前記[有機塩基]のハロゲン化水素塩を反応系に添加することも、234daと有機塩基の接触を促進させる効果があり、本発明の範疇である。
[溶媒]
本発明の1224の製造方法において、234daの全量に対し1当量以上の有機塩基を加えた場合、反応により生成した有機塩基のハロゲン化物塩が析出することがあるので、溶媒を用いることが好ましい。一般的な有機溶媒を使用することが可能であるが、水が特に好ましい溶媒である。例えばトリエチルアミンと水は相溶するがトリブチルアミンと水は二層分離する。本発明の1224の製造方法においては、完全に相溶する有機塩基でも二層分離する有機塩基でもよく、どちらでも使用可能である。
[反応条件]
本発明の1224の製造方法において。234daと有機塩基を接触させる際の温度は−5℃以上、100℃以下、好ましくは0℃以上、50℃以下である。−5℃未満では反応速度が遅く、十分な量の1224を得るまで時間がかかることがある。
【0029】
反応は加圧、減圧または常圧でも進行するが、常圧が、工業的規模、即ち、工業プラントにおける工業生産において簡便である。2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのシス体(1224Z)の沸点は17℃であり、トランス体(1224E)の沸点は23℃であり、これらよりも高い反応温度で操業する場合は、加圧反応か、生成物を蒸留により抜き出しつつ反応させる反応蒸留を用い分離することが好ましい。
【0030】
有機塩基と234daの接触方法は、任意である。すなわち、反応器に同時に仕込んでもよく、234daに有機塩基を添加してもよく、有機塩基に234daを添加してもよい。
【0031】
生成物は必要に応じて水洗、乾燥、蒸留および吸着精製等の通常の工程を通して、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのシス体(1224Z)またはトランス体(1224E)に分離することができる。
【0032】
本発明の1224の製造方法において、蒸留精製によって分離された目的化合物以外の留分は、原料としてリサイクルしたり、医農薬中間体またはポリマー原料として活用したり、異性化、不均化反応等を行って活用することが望ましい。
[有機塩基のリサイクル]
本発明の1224の製造方法の特徴として、反応に係る有機塩基をリサイクルすることが可能である。例えば、水溶性有機塩基であるトリエチルアミンの水溶液を用いた場合、反応終了後、1224を分離した残りのトリエチルアミン塩酸塩水溶液に、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液等の無機塩基水溶液を中性(PH=7)から塩基性(PH=14)になるまで添加し、攪拌後、加熱すると二層分離する。分離した有機物層を回収して、次回の反応に使用することができる。非水溶性のトリブチルアミンの場合も同様に無機塩基水溶液を添加し、攪拌すると、トリブチルアミンの塩酸塩がトリブチルアミンに再生される。トリブチルアミンの場合は加熱しなくても容易に二層分離する。
[原料化合物234daの製造]
本発明の1224の製造方法において、1224の原料化合物である234daの製造方法は特に限定されない。例えば、非特許文献1に記載のように、234daは、マグネシウム溶解炉のカバ−ガス等として市販されている1234を光塩素化することによって合成可能であり、光塩素化法によって、234daを得ることができる。また、234daは、商業的に生産されている1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234)を光塩素化することにより容易に製造可能である。原料の1234はシス体、トランス体またはシス体およびトランス体の混合物であってもよい。1234に高圧水銀灯で紫外線を照射し、234daとする光塩素化法が簡便であるが、光塩素化以外の方法、例えば、ラジカル開始剤または触媒を用いる塩素化方法を行ってもよい。
【0033】
本明細書の[調製例]の(2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)の調製)の項で示した様に、−78℃でトランス−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(1234)を光塩素化すると、234daが生成する。
【実施例】
【0034】
以下実施例により、本発明を具体的に示すが、本発明の実施態様はこれに限定されない。尚、有機物の組成は、別途断りのない限り、ガスクロマトグラフィ法を用い、水素炎イオン化型検出器(FID検出器)により測定し、記録された「面積%」を「GC%」と表示した。
[調製例]
(2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)の調製)ガス導入口を備えた容積2000mlのガラス製反応器の底部を、ドライアイスを入れた温度−78℃のアセトン浴に漬けて冷やし、原料としてのトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン901.86g(7.90モル)を反応器内に仕込んだ。−78℃のアセトン浴に漬けた状態で、塩素(Cl2)を、1.70g/minの供給速度で反応器内へ吹き込み、反応を開始した。次いで、反応器の外側から高圧水銀灯による紫外光照射を行いつつ、反応器内の原料および塩素を磁気攪拌子を用い撹拌し、5時間30分攪拌後、反応を終了させた。塩素の導入量の計は560.5g(7.90モル)であった。反応器内内容物を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、目的生成物である234daを含む反応物(1427.0g)を得た。反応物の組成をガスクロマトグラフで測定したところ、組成は、234daが98.7GC%であり、234daの収率は96.3GC%であった。
実施例1
有機塩基として酸解離定数(pKa)が10.8のトリエチルアミンを用い、前記[調製例]で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0035】
圧力計、ニードルバルブおよび攪拌翼を備えた容量50mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用いて減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部をドライアイスの入ったアセトン浴に浸けて冷却した。四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(以下、PFAと呼ぶことがある)製のチューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、前記[調製例]に示した手順で得た2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(234da)、10.55g(57mmol=ミリmol)、次いで、pKaが10.8の有機塩基であるトリエチルアミン、17.48g(173mmol)を、PFAチューブを介してオートクレーブ内に注入し、ニードルバルブを閉じた。室温下(約20℃)で30分攪拌した後、オートクレーブの底部を40℃に温調したオイルバスに浸けて1時間、次いで、オイルバスを70℃に昇温し、さらに3時間攪拌した。70℃にて攪拌時、圧力計は0.10MPaGを示していた。次いで、オートクレーブの底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。
【0036】
オートクレーブ内の反応液を取り出し、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと呼ぶことがある)製の濾過サイズ0.5ミクロンのシリンジフィルターを通した後、ガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は、目的物である2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1224)が96.10GC%、好ましくない副生物である1,2−ジクロロ-3,3,3−トリフルオロプロペン(1223)が0.05GC%、未反応の234daが0.33GC%であった。
実施例2
有機塩基として酸解離定数(pKa)が12.5のトリn−ブチルアミンを用い、前記[調製例]で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0037】
圧力計、ニードルバルブおよび攪拌翼を備えた容量50mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部をドライアイスの入ったアセトン浴に浸けて冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、前記[調製例]に示した手順で得た234da、9.04g(49mmol)次いで、次いで、pKaが12.5の有機塩基であるトリn−ブチルアミン、27.22g(147mmol)を、PFAチューブを介してオートクレーブ内に注入し、ニードルバルブを閉じた。室温(20℃)下で30分攪拌した後、オートクレーブの底部を40℃に温調したオイルバスに浸けて一時間、次いで、オイルバスを70℃に昇温し、さらに3時間攪拌した。70℃にて攪拌時、圧力計は0.09MPaGを示していた。オートクレーブの底部を、氷の入った水浴に浸けて冷却した。
【0038】
オートクレーブ内の反応液を取り出し、PTFE製の濾過サイズ0.5ミクロンのシリンジフィルターを通した後、ガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は目的物である1224が96.20GC%、好ましくない副生物である1223が0.09GC%、未反応の234daが0.12GC%であった。
実施例3
有機塩基として酸解離定数(pKa)が10.8のトリエチルアミンを水に溶解させた水溶液を用い、前記[調製例]で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0039】
圧力計、ニードルバルブおよび攪拌翼を備えた容量50mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、pKaが10.8の有機塩基であるトリエチルアミンを水に溶解させた濃度25質量%の水溶液、26.83g(66mmol)、次いで、前記[調製例]に示した手順で得た234da、10.21g(55mmol)を、オートクレーブ内に注入し、ニードルバルブを閉じた。室温下(20℃)で30分攪拌した後、オートクレーブの底部を40℃に温調したオイルバスで19時間攪拌した。40℃にて攪拌時、圧力計は0.10MPaGを示していた。次いでオートクレーブ底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。冷却しつつ、オートクレーブ内の減圧を解き、反応液に濃度35質量%の塩酸、1.20g(12mmol)を滴下した。
【0040】
予め冷蔵庫で冷却しておいた分液ロートへ反応液を移液し、2層分離させて回収した有機層をガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は目的物である1224が97.84GC%、好ましくない副生物である1223が0.04GC%、未反応の234daが0.25GC%であった。
実施例4
有機塩基として酸解離定数(pKa)が12.0のジアザビシクロウンデセンを水に溶解させた水溶液を用い、前記[調製例]に示した手順で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0041】
ジムロート、温度計、滴下ロートおよび攪拌翼を備えた容量200mlの三つ口フラスコ内に、前記[調製例]で得た234da(25.03g,0.14mol)を仕込み、フラスコ底部を氷の入った水浴に漬け、−15℃の冷媒をジムロートに流し内容物を還流させつつ、フラスコ内の内容物の攪拌を開始した。滴下ロートより、pKaが12.0の有機塩基であるジアザビシクロウンデセンを水に溶解させた濃度30質量%の水溶液、75.40g(0.15mol)を119分かけて徐々にフラスコ内に滴下した。次いで、水、30.34gを11分かけて徐々にフラスコ内に滴下した後、濃度35質量%の塩酸、15.53g(0.15mol)を5分かけて徐々に滴下した。フラスコ内の内容物を予め冷蔵庫で冷やした分液ロートに移し2層分離し、18.29gの有機層を得た。
【0042】
有機層をガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は目的物である1224が97.27GC%、好ましくない副生物である1223が0.16GC%、未反応の234daが1.42GC%であった。
[実施例5]
有機塩基として酸解離定数(pKa)が5.3のピリジンを用い、前記[調製例]で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0043】
圧力計、ニードルバルブ、攪拌翼を備えた容量50mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部をドライアイスアセトン浴で冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、前記[調製例]に示した手順で得た234da、10.33g(56mmol)次いで、pKaが5.3の有機塩基であるピリジン、13.31g(168mmol)をPFAチューブを介して、オートクレーブ内に注入し、ニードルバルブを閉じた。室温(20℃)下で30分攪拌した後、オートクレーブ底部を40℃に温調したオイルバスに浸けて1時間、次いで、オイルバスを70℃に昇温し、さらに3時間攪拌した。70℃にて攪拌時、圧力計は0.02MPaGを示していた。次いで、オートクレーブの底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。
【0044】
オートクレーブ内の反応液をPTFE製の濾過サイズ0.5ミクロンのシリンジフィルターを通した後、ガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は目的物である1224が1.18GC%、好ましくない副生物である1223が未検出、未反応の234daが97.24GC%であった。
実施例6
有機塩基として酸解離定数(pKa)が6.2のα−ピコリンを水に溶解させた水溶液を用い、前記[調製例]で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0045】
圧力計、ニードルバルブおよび攪拌翼を備えた容量50mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部をドライアイスの入ったアセトン浴に浸けて冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、前記[調製例]に示した手順で得た234da、10.02g854mmol)、次いで、pKaが6.2の有機塩基であるα−ピコリン、(15.74g,169mmol)を、PFAチューブを介してオートクレーブ内に注入し、ニードルバルブを閉じた。室温下(20℃)で30分間攪拌した後、オートクレーブ底部を40℃に温調したオイルバスに浸けて1時間、次いで、オイルバスを70℃に昇温し、さらに3時間攪拌した。70℃で攪拌時、圧力計は0.02MPaGを示していた。次いで、オートクレーブ底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。
【0046】
オートクレーブ内の反応液を取り出し、PTFE製の濾過サイズ0.5ミクロンのシリンジフィルターを通した後、ガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は目的物である1224が2.87GC%、好ましくない副生物である1223が0.003GC%、未反応の234daが92.68GC%であった。
実施例7
有機塩基として酸解離定数(pKa)が7.0の2,6−ルチジンを用い、前記[調製例]で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0047】
圧力計、ニードルバルブおよび攪拌翼を備えた容量50mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部をドライアイスの入ったアセトン浴に浸けて冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、前記[調製例]で得た234da、10.54g(57mmol)、次いで、pKaが7.0の有機塩基である2,6−ルチジン、18.52g(173mmol)をPFAチューブを介してオートクレーブ内に注入し、ニードルバルブを閉じた。室温(20℃)下で30分間攪拌した後、オートクレーブ底部を40℃に温調したオイルバスに浸けて1時間、次いで、オイルバスを70℃に昇温し、さらに3時間攪拌した。70℃で攪拌時、圧力計は0.02MPaGを示していた。次いで、オートクレーブ底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。
【0048】
オートクレーブ内の反応液を取り出し、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと呼ぶことがある)製の濾過サイズ0.5ミクロンのシリンジフィルターを通した後、ガスクロマトグラフィ分析した結果、目的物である1224が7.24GC%、副生物である1223が0.004GC%、未反応の234daが86.75GC%であった。
実施例8
有機塩基として酸解離定数(pKa)が10.8のトリエチルアミンを水に溶解させた水溶液を用い、前記[調製例]で得た234daを原料化合物とし、本発明の1224の製造方法に準拠し脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0049】
攪拌機、温度計、圧力計およびPFA製チューブを取り付けニードルバルブを備えた容量1000mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、pKaが10.8の有機塩基であるトリエチルアミンの濃度25質量%水溶液、484.79g(1.20mol)、次いで前記[調製例]に示した手順で得た234da、185.02g(1.00mol)を、PFAチューブを介してオートクレーブ内に注入しニードルバルブを閉じた。回転数500rpmで攪拌を開始し、室温(20)で1時間攪拌した後、オートクレーブ底部を40℃に温調したオイルバスに浸けて加温し、40℃に保ったまま20時間攪拌を継続した後、オートクレーブ底部を氷の入った水浴に浸けて、5℃以下になるまで冷却した。予め冷蔵庫で冷却した1L分液ロートに反応液を移液し、二層分離させ下層側の有機層133.55gを回収した。
【0050】
有機層をガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は目的物である1224が95.63GC%、副生物である1223が0.09GC%、未反応の234daが1.02GC%であった。
実施例9
[トリエチルアミンアミンの回収]
実施例8で二層分離させた上層側の水層の全量を、ジムロート、温度計、500mL滴下ロートおよび攪拌翼を備えた容量1Lの四つ口フラスコ内に移し変えた。ジムロート内に2℃の冷媒を流し、氷に入った水浴中にフラスコ底部を浸し、内容物を攪拌しながら内容物が5℃以下まで冷却した。滴下ロートより、濃度25質量%の水酸化ナトリウム、89.42g(1.81mol)を、内容物の温度が15℃を超えないよう注意しつつ、徐々に122分間かけて滴下した。30分間攪拌を継続した後、オイルバスにフラスコ底部をつけて内容物の温度が80℃となるように加熱した。予め、オーブンで60℃に加熱した分液ロートに、内容物の全量を移液し、二層分離させ、上層からトリエチルアミン、98.21g(ほぼ全量)を回収した。
実施例10
[トリエチルアミンの再使用]
圧力計、ニードルバルブおよび攪拌翼を備えた容量1000mLのステンレス鋼製オートクレーブ内を、真空ポンプを用いて減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部を氷の入った水浴に浸けて冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、PFA製チューブより、実施例9で回収したトリエチルアミンを用い調製した、濃度25質量%のトリエチルアミン水溶液、372.45g(水溶液中トリエチルアミン、0.92mol)、不足分として市販の試薬を用いた濃度25質量%のトリエチルアミン水溶液、113.13g(水溶液中のトリエチルアミン、0.28mol)を加え、前記[調製例]に示した手順で得た234da、185.00g(1.00mol)を、PFAチューブを介してオートクレーブ内に注入し、ニードルバルブを閉じた。回転数500rpmで攪拌を開始し、室温(20)で1時間攪拌した後、オートクレーブ底部を40℃に温調したオイルバスに浸けて加温し、40℃に保ったまま20時間攪拌を継続した後、オートクレーブ底部を氷の入った水浴に浸けて、5℃以下になるまで冷却した。予め冷蔵庫で冷却した1L分液ロートに反応液を移液し、二層分離させ下層側の有機層132.82gを回収した。
【0051】
有機層をガスクロマトグラフィ分析した結果、組成は目的物である1224が96.35GC%、好ましくない副生物である1223が0.09GC%、未反応の234daが0.84GC%であった。
比較例1
酸解離定数(pKa)が15以上の無機塩基である水酸化カリウム(KOH)を用い、234daの脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0052】
圧力計およびニードルバルブを備えた容量50mlのガラス製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部を氷の入った水浴に漬けて冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、前記[調製例]に示した手順で得た234da、10.59g(mmol)次いで、濃度25質量%の水酸化カリウム水溶液、38.33g(171mmol)をオートクレーブ内に注入後、ニードルバルブを閉じ、引き続き氷冷した状態で内容物を3時間攪拌しつつ反応させた。反応中、圧力計は0.03MPaGを示していた。予め冷蔵庫で冷やした分析ロートに移し2層分離させ、7.69gの有機層を得た。
【0053】
有機層をガスクロマトグラフィで分析した結果、目的物である1224が67.5GC%、好ましくない副生物である1223が29.7GC%、未反応の234daが0.2GC%であった。
比較例2
酸解離定数(pKa)が15以上の無機塩基である水酸化カリウム(KOH)を用い、234daの脱塩化水素反応を行い、1224を得た。以下、具体的に示す。
【0054】
圧力計およびニードルバルブを備えた容量50mlのガラス製オートクレーブ内を、真空ポンプを用い減圧した後、ニードルバルブを閉じ、オートクレーブの底部を氷の入った水浴に漬け冷却した。PFA製チューブをオートクレーブのニードルバルブに接続しニードルバルブを開け、前記[調製例]に示した手順で得た234da、10.21g(55mmol)、次いで、濃度25質量%の水酸化カリウム水溶液、35.81g(160mmol)をオートクレーブに注入後、ニードルバルブを閉じ、室温(25℃)下で30分攪拌した後、オートクレーブの底部を50℃に調整したオイルバスに漬け、3時間攪拌し反応させた。反応中、圧力計は0.12MPaGを示していた。オートクレーブの底部を氷の入った水温0〜5℃の水浴に漬けて冷却し、オートクレーブ内の反応物を予め冷蔵庫で冷やした分析ロートに移し2層分離させ、7.21gの有機層を得た。
【0055】
有機層をガスクロマトグラフィで分析した結果、目的物である1224が62.6GC%、好ましくない副生物である1223が36.2GC%、未反応の234daが0.1GC%であった。
以上、実施例1~8、実施例10、比較例1、2の結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1において、GC%を足して100%に満たない残部は、複数のピークを含む全未同定物質(unknown)によるものである。