(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性部材には、前記ヘッド本体に向かって突出する突起部が設けられており、前記突起部の先端が前記ヘッド本体に当接することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
前記弾性部材と前記ヘッド本体とは、前記隙間の開口以外の部分に設けられた接着剤によって接着されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【0034】
本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置は、液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドが固定されて、被噴射媒体である紙などの記録シートを搬送することで印刷を行う、所謂ライン式記録装置である。
【0035】
具体的には、
図1に示すように、インクジェット式記録装置1は、装置本体2と、複数のヘッド本体100を具備すると共に装置本体2に固定されたインクジェット式記録ヘッド3(以下、単に記録ヘッド3とも言う)と、記録シートSを搬送する搬送手段4と、記録ヘッド3と相対向する記録シートSを支持する支持部材7と、を具備する。なお、本実施形態では、記録シートSの搬送方向を第1の方向Xと称する。また、記録ヘッド3のノズル開口が開口する面内方向において、第1の方向Xと直交する方向を第2の方向Yと称する。さらに、第1の方向X及び第2の方向Yに直交する方向を第3の方向Zと称する。また、第3の方向Zを含む面内において液体噴射方向側(記録ヘッド3に対する記録シートS側)をZ1側、反対側をZ2側と称する。
【0036】
記録ヘッド3は、複数のヘッド本体100と、複数のヘッド本体100を保持するホルダー200と、を具備する。
【0037】
複数のヘッド本体100は、搬送方向である第1の方向Xに交差する方向、本実施形態では、第1の方向Xに直交する第2の方向Yに並設されてホルダー200に固定されている。なお、本実施形態では、複数のヘッド本体100は、第2の方向Yの直線上に並設されている。すなわち、複数のヘッド本体100は、第1の方向Xにずれて配置されていない。これにより、記録ヘッド3の第1の方向の幅を狭くして、記録ヘッド3の小型化を図ることができる。また、複数のヘッド本体100は、互いに隣り合うヘッド本体100の間に隙間101を配して並設されている。
【0038】
また、ホルダー200は、複数のヘッド本体100のノズル開口21が記録シートS側を向くように、複数のヘッド本体100を保持するものであり、装置本体2に固定されている。
【0039】
搬送手段4は、記録シートSを記録ヘッド3に対して、第1の方向Xに搬送する。搬送手段4は、例えば、第1の方向Xの両側に設けられた第1の搬送ローラー5と、第2の搬送ローラー6とを具備する。
【0040】
このような第1の搬送ローラー5と第2の搬送ローラー6とによって、記録シートSを搬送する。なお、記録シートSを搬送する搬送手段4は、搬送ローラーに限定されず、ベルトやドラム等であってもよい。
【0041】
支持部材7は、搬送手段4によって搬送される記録シートSを、記録ヘッド3に相対向する位置で支持する。支持部材7は、例えば、第1の搬送ローラー5と第2の搬送ローラー6との間に、記録ヘッド3に相対向して設けられた断面が矩形状を有する金属又は樹脂等からなる。
【0042】
なお、支持部材7には、搬送された記録シートSを支持部材7上で吸着する吸着手段が設けられていてもよい。吸着手段としては、例えば、記録シートSを吸引することで吸引吸着するものや、静電気力で記録シートSを静電吸着するもの等が挙げられる。例えば、搬送手段4がベルトやドラムである場合、支持部材7は、ベルト上やドラム上で記録シートSを、記録ヘッド3に相対向する位置で支持する。
【0043】
また、記録ヘッド3の各ヘッド本体100には、図示していないが、インクが貯留されたインクタンクやインクカートリッジなどの液体貯留手段がインクを供給可能に接続されている。液体貯留手段は、例えば、記録ヘッド3上に保持されていても、また、装置本体2内の記録ヘッド3とは異なる位置に保持されていてもよい。また、液体貯留手段から供給されたインクをヘッド本体100に供給するための流路等をホルダー200の内部に設けるようにしてもよく、ホルダー200とは別に流路部材を設け、流路部材を介して液体貯留手段からのインクをヘッド本体100に供給するようにしてもよい。もちろん、液体貯留手段からホルダー200又はホルダー200に固定された流路部材等を介さずに、ヘッド本体100に直接インクが供給されてもよい。
【0044】
本実施形態のインクジェット式記録装置1では、第1の搬送ローラー5によって記録シートSが搬送され、記録ヘッド3によって支持部材7上で支持された記録シートSに印刷が実行される。印刷された記録シートSは、第2の搬送ローラー6によって搬送される。
【0045】
ここで、このようなインクジェット式記録装置1に搭載される記録ヘッド3についてさらに
図2〜
図7を参照して詳細に説明する。なお、
図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、
図3は、インクジェット式記録ヘッドの液体噴射面側の平面図であり、
図4は、
図3のA−A′線の要部を切り欠いた断面図であり、
図5は
図4の要部を拡大した図であり、
図6は、
図3のB−B′線の要部を切り欠いた断面図であり、
図7は、
図3のC−C′線の断面図である。
【0046】
図示するように、本実施形態の記録ヘッド3は、複数のヘッド本体100と、複数のヘッド本体100を保持するホルダー200と、を具備する。
【0047】
ヘッド本体100は、ノズル開口21が設けられた液体噴射面20aを第3の方向ZのZ1側に有する。
【0048】
このようなヘッド本体100は、ホルダー200の記録シートSに相対向する面側、すなわち、第3の方向Zの記録シートS側であるZ1側に固定されている。
【0049】
そして、前述のように、複数のヘッド本体100は、搬送方向である第1の方向Xに直交する第2の方向Yに直線上に沿って並設されてホルダー200に固定されている。すなわち、複数のヘッド本体100は、第1の方向Xにずれて配置されていない。これにより、記録ヘッド3の第1の方向Xの幅を狭くして、記録ヘッド3の小型化を図ることができる。もちろん、第2の方向Yに並設されたヘッド本体100を第1の方向Xにずらして配置するようにしてもよいが、ヘッド本体100を第1の方向Xに大きくずらすと、ホルダー200等の第1の方向Xの幅が広くなってしまう。このように記録ヘッド3の第1の方向Xの大きさが大きくなると、インクジェット式記録装置1における第1の搬送ローラー5と第2の搬送ローラー6との第1の方向Xの距離が遠くなり、記録シートSの姿勢の固定が困難になる。また、記録ヘッド3及びインクジェット式記録装置1が大型化してしまう。
【0050】
なお、本実施形態では、ホルダー200に4個のヘッド本体100を固定するようにしたが、ヘッド本体100の数は2個以上であれば、特にこれに限定されるものではない。
【0051】
また、本実施形態では、複数のヘッド本体100は、互いに隣り合うヘッド本体100の間に隙間101を配して並設されている。
【0052】
ここで、このような記録ヘッド3に搭載されるヘッド本体100の一例について、さらに詳細に説明する。
【0053】
図示するように、ヘッド本体100は、複数のヘッドチップ110と、複数のヘッドチップ110を保持する保持部材120と、ヘッドチップ110の液体噴射面20a側に設けられたカバー130と、を具備する。
【0054】
ヘッドチップ110は、第3の方向ZのZ1側にノズル開口21が設けられた液体噴射面20aを有する。また、複数のヘッドチップ110のZ2側が、保持部材120のZ1側の面に接着されている。
【0055】
保持部材120は、Z1側に溝状の空間を形成する保持部121を有する。保持部121は、保持部材120のZ1側の面に、第2の方向Yに亘って連続して設けられることで、第2の方向Yの両側面に開口して設けられている。また、保持部材120は、保持部121を第1の方向Xの略中央部に設けることで、当該保持部121の第1の方向Xの両側には、足部122が形成されている。すなわち、足部122は、保持部材120のZ2側の面に、第1の方向Xの両端部のみに設けられており、第2の方向Yの両端部には設けられていない。
【0056】
このような保持部121内に、複数のヘッドチップ110が接着剤140によって接着されている。すなわち、足部122はヘッドチップ110に対して第3の方向Zの両側に位置する。なお、保持部材120とヘッドチップ110とは、第3の方向Zで相対向する面同士が接着剤140によって接着されている。なお、保持部材120の図示しない内部には、ヘッドチップ110にインクを供給する流路等が設けられており、保持部材120の流路とヘッドチップ110の流路とは、接着剤140によって封止されて連通されている。また、保持部材120は、複数の部材が第3の方向Zに積層されて構成されていてもよい。
【0057】
また、保持部材120の保持部121内には、複数のヘッドチップ110が、第2の方向Yに並設されて接着されている。本実施形態では1つの保持部材120に6個のヘッドチップ110が接着されている。もちろん、1つの保持部材120に固定するヘッドチップ110の数は上述したものに限定されず、1つの保持部材120に対してヘッドチップ110が1個であっても、また、2個以上の複数であってもよい。ちなみに、1つのヘッド本体100に対して複数のヘッドチップ110を設けてノズル列の多列化を図ることで、1つのヘッド本体100に対して1つのヘッドチップ110のみにノズル列を複数列設けて多列化する場合に比べて歩留まりを向上することができる。すなわち、単体のヘッドチップ110でのノズル列の多列化を行うのは、ヘッドチップ110の歩留まりが低下すると共に製造コストが高価になってしまう。これに対して、共通の保持部材120に複数のヘッドチップ110を固定して複数のヘッドチップ110によってノズル列の多列化を行うことで、ヘッドチップ110の歩留まりを向上して製造コストを低減することができる。
【0058】
なお、本実施形態の複数のヘッドチップ110は、液体噴射面20aの面内方向において、記録シートSの搬送方向である第1の方向Xに対してノズル列が傾斜するように固定されている。すなわち、第1の方向Xに対して、ノズル列を構成するノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaが傾斜する方向となっている。本実施形態では、ヘッド本体100は、複数のヘッドチップ110を第2の方向Yに並設して設けており、第2の方向Yで隣り合うヘッドチップ110のノズル開口21の少なくとも一部同士を第1の方向Xで重なる一で配置することができる。また、複数のヘッド本体100は、第2の方向Yに並設して設けられており、第2の方向Yで隣り合うヘッド本体100のノズル開口21の少なくとも一部同士を第1の方向Xで重なる位置で配置することができる。よって、記録ヘッド3の第2の方向Yに同様の間隔で並設されたノズル開口21を形成することができる。
【0059】
カバー130は、本実施形態の固定板に相当するものであり、金属等の板状部材からなる。カバー130は、ヘッド本体100の液体噴射面20a側、すなわち、ヘッド本体100の第3の方向ZのZ1側に設けられている。
【0060】
カバー130は、平板状の部材を折り曲げることで形成されたものであり、液体噴射面20a側に設けられたベース部131と、ベース部131の第2の方向Yの両端部が第3の方向ZのZ2側に屈曲して設けられた折り曲げ部132と、を具備する。
【0061】
ベース部131は、
図5に示すように、保持部材120の第3の方向ZのZ1側の面、すなわち、足部122のZ1側の端面に接着剤141を介して接合されている。
【0062】
また、ベース部131には、
図5に示すように、各ヘッドチップ110のノズル開口21を開口するための露出開口部133が設けられている。本実施形態では、露出開口部133は、ヘッドチップ110毎に独立して開口するように設けられている。すなわち、本実施形態のヘッド本体100は、6個のヘッドチップ110を有するため、ベース部131には6個の独立した露出開口部133が設けられている。もちろん、ヘッドチップ110の構成等によっては、複数のヘッドチップ110で構成されるヘッド本体群に対して1つの共通する露出開口部133を設けるようにしてもよい。
【0063】
なお、本実施形態では、保持部121の第2の方向Yに足部122が設けられていないため、露出開口部133は、第2の方向Yにおいて折り曲げ部132の近傍にまで設けられている。すなわち、ベース部131の全周から露出開口部133までの間隔は、第1の方向Xよりも第2の方向Yの方が小さくなっている。
【0064】
このようなベース部131によって、保持部材120の保持部121のZ1側が覆われている。
【0065】
また、折り曲げ部132は、ベース部131の第2の方向Yの両端部に設けられており、保持部121の第2の方向Yの側面に開口する開口面積を覆う大きさで形成されている。すなわち、折り曲げ部132は、ベース部131の第2の方向Yの端部からカバー130の縁部までの領域のことである。そして、このような折り曲げ部132は、保持部材120の第2の方向Yの側面に接着剤141を介して接合されている。これにより、保持部121の第2の方向Yの側面への開口は、折り曲げ部132によって覆われて封止されている。
【0066】
すなわち、保持部材120とカバー130とは、第1の方向Xの両側では足部122の第3の方向Zの端面とベース部131とが接着剤141により接着され、第2の方向Yの両側では保持部121の開口する側面と折り曲げ部132とが接着剤141により接着されることで、保持部材120とカバー130との間の空間である保持部121内にヘッドチップ110が配置されている。すなわち、ヘッドチップ110と保持部材120とを接着する接着剤140は、保持部材120とカバー130とを接着剤141で接着することによって形成された空間である保持部121内に内包されている。したがって、保持部材120とヘッドチップ110とを接着する接着剤140としてインクに含まれる水分が透過し易い接着剤140を用いたとしても、保持部材120とカバー130とを接着する接着剤141によって保持部121内が封止されているため、インクに含まれる水分の蒸発を抑制することができる。なお、保持部121内を封止するためには、カバー130のベース部131とヘッドチップ110の液体噴射面20a側とを接着するのが好ましい。すなわち、露出開口部133を介して外部に水分が蒸発しないように、露出開口部133の周囲は、ヘッドチップ110と接着するのが好適である。また、保持部材120とカバー130とを接着する接着剤141は、保持部材120とヘッドチップ110とを接着し、ヘッドチップ110の高さばらつきを吸収する接着剤140よりも、水分を透過しにくいものとするのが好適である。
【0067】
このように、本実施形態では、保持部材120の第2の方向Yの両側には、カバー130に折り曲げ部132を設けることで、カバー130と保持部材120とを接着するようにしたため、保持部材120の第2の方向Yの両側には、カバー130のベース部131と接着するための足部が不要となる。このため、第2の方向Yにヘッド本体100を並設した際に、互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101に足部が存在しないことから、第2の方向Yで隣り合うヘッド本体100の隙間101を狭くすることができる。これにより、第2の方向Yで隣り合うヘッド本体100のヘッドチップ110同士を近接して設けることができ、隣り合うヘッド本体100の各ヘッドチップ110に設けられたノズル開口21を第2の方向Yに近接して設けることができる。
【0068】
ちなみに、カバー130の第2の方向Yの両側に、保持部材120と接着される折り曲げ部132を設けずに、インクに含まれる水分の蒸発を抑制するためには、保持部材120の第2の方向Yの両側にも足部を設け、この足部のZ1側の端面とベース部131とを接着する必要がある。つまり、保持部121が第3の方向ZのZ1側のみに開口するように設ける必要がある。このように第2の方向Yの両側に足部を設けると、隣り合うヘッド本体100の保持部121同士の隙間101が広くなり、隣り合うヘッド本体100のヘッドチップ110を近接して設けることができず、第2の方向Yにノズル開口21が離れて配置されてしまう。すなわち、互いに隣り合うヘッド本体100を近接して設け、各ヘッド本体100のヘッドチップ110同士を近接して設けるためには、足部122は、ヘッド本体100の並設方向である第2の方向Yの両側に設けない方がよい。そこで、保持部121は、ヘッドチップ110が配置された空間と連通した開口を第2の方向Yの両側面に設けている。また、このような構成において、保持部材120の足部122のZ1側の端面のみにカバー130を接着すると、保持部121内が第2の方向Yの両側面で外部に開口し、保持部材120とヘッドチップ110とを接着する接着剤140を透過した水分が外部に蒸発してしまう。
【0069】
本実施形態では、第2の方向Yの両側面に開口させた保持部121をカバー130の折り曲げ部132で封止することで、第2の方向Yの両側に足部を設けずに、第2の方向Yで互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101を狭くすることができ、隣り合うヘッド本体100のノズル開口21を近接して設けることができると共に、ヘッドチップ110と保持部材120とを接着する接着剤140を透過した水分の蒸発を抑制することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、保持部材120の第2の方向Yの側面に凹部123を設け、この凹部123内に折り曲げ部132を接着するようにした。本実施形態の凹部123は、第2の方向Yの両側面に開口して設けられていると共に、第3の方向ZのZ1側の面に開口して設けられている。このように保持部材120に凹部123を設けることで、折り曲げ部132が凹部123内に挿入されて接着されるため、保持部材120とカバー130の折り曲げ部132とを接着し易くすることができる。すなわち、保持部材120に凹部123が設けられることで、凹部123内に挿入されたカバー130の折り曲げ部132の端部と凹部123との間に接着剤141を塗布するだけで、接着剤141が保持部材120とカバー130の折り曲げ部132との間に毛管力により充填されるため、凹部123がなく保持部材120と折り曲げ部132との隙間に対して折り曲げ部132の端部に沿って向きの異なる面に接着剤141を塗布する工程が不要となり、接着工程を簡略化することができる。また、本実施形態では、保持部材120に凹部123を設けることで、カバー130の折り曲げ部132の第2の方向Yの突出量が小さくなり、第2の方向Yで互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101をさらに狭くすることができ、隣り合うヘッド本体100のノズル開口21の間隔をさらに狭くすることができる。また、保持部材120に凹部123を設け、折り曲げ部132を凹部123内に挿入することで、折り曲げ部132の折り曲げ角度にばらつきが生じても、折り曲げ部132の第2の方向Yへの突出量を小さくすることができるため、折り曲げ部132が隣のヘッド本体100に干渉するのを抑制することができる。これによっても、互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101を狭くすることができる。
【0071】
このように本実施形態の記録ヘッド3では、ホルダー200にインクの水分蒸発を抑制した複数のヘッド本体100を第2の方向Yに並設した際に、第2の方向Yで互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101を狭くすることができるため、隣り合うヘッド本体100のノズル開口21の間隔を狭くすることができる。また、隣り合うヘッド本体100のノズル開口21の間隔を狭くすることができるため、複数のヘッド本体100を第2の方向Yに延びる直線上に並設することができ、記録ヘッド3の第1の方向Xの幅を小さくすることができる。
【0072】
本実施形態では、記録ヘッド3の第1の方向Xの幅を小さくすることができるため、第1の搬送ローラー5と第2の搬送ローラー6との第1の方向Xの距離を短くすることができ、記録シートSの姿勢の固定が容易になって、印刷品質を向上することができる。また、記録ヘッド3及びインクジェット式記録装置1を小型化することが可能となる。
【0073】
このような本実施形態のヘッド本体100は、
図3に示すように、液体噴射面20a側から平面視した際に、略平行四辺形となる形状を有する。これは、上述したように、各ヘッドチップ110のノズル列を構成するノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaが、記録シートSの搬送方向である第1の方向Xに対して傾斜して設けられており、このノズル列の傾斜する方向である第4の方向Xaと同じようにヘッド本体100の外形を略平行四辺形となるように形成したからである。もちろん、ヘッド本体100の液体噴射面20a側から平面視した際の形状は、略平行四辺形に限定されず、矩形状や台形状、多角形状等であってもよい。
【0074】
このようにヘッド本体100を複数配置して記録ヘッド3とすることにより、製造上の歩留まり、加工の容易さ、固定板であるカバー130の平面の平面出しの容易化などの効果を奏する。
【0075】
また、本実施形態では、ヘッド本体100は、液体噴射面20a及びカバー130のZ1側の面が、ワイパーにワイピングされるワイピング面102となっている。つまり、ワイピング面102は、記録シートSに相対向する位置に設けられている。ここで、本実施形態のワイパー150は、
図3に示すように、ノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaに沿って配置され、ワイパー150のヘッド本体100に対する相対移動方向Yaは、第2の方向Yと一致する。このようなワイパー150としては、例えば、ゴムやエラストマー等の弾性材料、スポンジ等の多孔質材料、織物、編み物、不織布などの布を用いることができる。また、本実施形態では、ワイパー150は、複数のワイピング面102を連続してワイピングする。つまり、ワイパー150は、ワイピング面102毎に第3の方向Zに上下移動することなく、複数のワイピング面102に対して相対移動方向Yaに平行移動することで、同時に複数のワイピング面102をワイピングする。これは、例えば、ワイピング面102毎にワイパー150を第3の方向Zに移動させる場合、ワイパー150の位置制御が困難となり、ワイピングされていない領域が生じる虞があると共に、ワイピングに時間がかかってしまうからである。ワイパー150を第3の方向Zに移動させずに複数のワイピング面102をワイピングすることで、短時間で且つワイピング不良を抑制することができる。
【0076】
そして、本実施形態では、上述したように、複数のヘッド本体100が間に隙間101を介して並設されているため、隣り合うヘッド本体100のワイピング面102の間には、隙間101が開口している。なお、本実施形態では、隣り合うヘッド本体100の隙間101は、第3の方向Z及び第1の方向Xに同じ幅で形成されているが、特にこれに限定されず、例えば、ヘッド本体100の外形状によっては、ワイピング面102側の隙間と、ホルダー200側の隙間とが異なる幅であってもよい。このように第2の方向Yに併設されたヘッド本体100の間に隙間101を設けることで、複数のヘッド本体100のノズル開口21を相対的に位置決めすることができる。ちなみに、隣り合うヘッド本体100において、その一部を互いに当接するように配置すると、複数のヘッド本体100のノズル開口21を基準とする相対的な位置合わせを行うことができなくなってしまう。本実施形態では、第2の方向Yで互いに隣り合うヘッド本体100同士が互いに相対向する面の全面に亘って隙間101を設けることで、ヘッド本体100の相対位置合わせを行うことができる。すなわち、互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101は、第3の方向ZのZ1側の面と、第1の方向Xの両側の面とに亘って連続して開口するように設けられている。
【0077】
このような第2の方向Yで互いに隣り合う2つのワイピング面102の隙間101には、
図5及び
図7に示すように弾性部材160が設けられており、弾性部材160によって隙間101のワイピング面102側の開口、すなわち、Z1側の開口が塞がれている。ここで、弾性部材160は、ゴムやエラストマー等の弾性材料からなる。本実施形態では、板状の弾性部材160を用いるようにした。また、弾性部材160は、本実施形態では、互いに隣り合う2つのワイピング面102の間の隙間101の開口を塞ぐように、隙間101の第3の方向ZのZ1側の面の開口縁部に亘って連続して設けられている。すなわち、弾性部材160は、ヘッド本体100の第4の方向Xaの長さと同じ長さで設けられている。ちなみに、弾性部材160は、第3の方向Zにおいて、ホルダー200のヘッド本体100を保持するZ1側の面に達しない高さ有する。つまり、第3の方向Zにおいて、弾性部材160は、隙間101よりも低い高さを有し、弾性部材160が隙間101のワイピング面102への開口側に設けられることで、互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101のホルダー200側は弾性部材160が設けられていない空間が設けられている。また、弾性部材160は、Z1側の端面が、第3の方向Zにおいてヘッド本体100のワイピング面102と同じ高さ、すなわち、面一となる位置か、又は、ワイピング面102よりもZ2側に配置されている。ちなみに、弾性部材160のZ1側の端面がワイピング面102よりもZ2側に配置されている場合には、ヘッド本体100の第2の方向Yの側面と弾性部材160の端面とで画成される空間に溜まったインクがその表面張力によって落下し難いように弾性部材160のワイピング面102からの引っ込み量を決定すればよい。つまり、弾性部材160のワイピング面102からの引っ込み量が大きすぎると、この空間に溜まったインクのメニスカスが維持できず、予期せぬタイミングでインクが落下してしまう。ちなみに、弾性部材160のZ1側の端面をワイピング面102よりもZ1側に突出してもよいが、弾性部材160がワイピング面102よりもZ1側に突出すると、ワイパー150がワイピング面102をワイピングした際に、弾性部材160に接触してワイパー150の消耗が早まると共に、ワイパー150が弾性部材160に接触することによってワイパー150や弾性部材160の一部が異物化する虞があるため好ましくない。したがって、弾性部材160は、Z1側の端面が第3の方向Zにおいてヘッド本体100のワイピング面102と同じ高さ、又は、ワイピング面102よりもZ2側に配置されることで、ワイパー150の弾性部材160に接触することによる消耗を抑制することができると共に、ワイパー150及び弾性部材160からの異物の発生を抑制することができる。
【0078】
このような弾性部材160は、第2の方向Yの厚さが隙間101の幅よりも若干広い厚さを有する。このため、弾性部材160は、隙間101内に弾性変形することによって挿入され、弾性力によってヘッド本体100の第2の方向Yの側面に当接することで保持されている。
【0079】
なお、本実施形態では、弾性部材160が設けられたヘッド本体100の第2の方向Yの側面のワイピング面102側には、カバー130の折り曲げ部132が配置されている。このため、例えば、カバー130のZ1側の表面にインクに対して撥液性を有する撥液膜134を設けた場合には、カバー130の弾性部材160が接する部分、すなわち、折り曲げ部132の表面は、撥液膜134を除去しておくのが好ましい。これにより、カバー130の撥液膜134を除去した部分を、撥液膜134が設けられた部分に比べて表面粗さを粗くすることができ、隙間101に設けられた弾性部材160の位置ずれを抑制することができる。
【0080】
このように弾性部材160を並設されたワイピング面102の隙間101にワイピング面102側の開口を塞ぐように設けることで、並設されたワイピング面102をワイパー150によってワイピングした際に、隣り合うワイピング面102の隙間101にインクが侵入するのを抑制することができる。したがって、インク滴の突出時に発生するミストやワイピング時に隙間101にインクが侵入するのを抑制して、隙間101に溜まったインクが予期せぬタイミングで落下することによる記録シートSの汚染を抑制することができる。
【0081】
また、隙間101に弾性部材160を設け、ワイピング面102に弾性部材160が露出することで、ワイパー150が弾性部材160に接触しても異物が発生し難く、異物によって記録シートSを汚染することや、異物によるノズル開口21の目詰まり等によるインク吐出不良を抑制することができる。ちなみに、隙間101を接着剤やモールド剤で塞ぐ方法も考えられるが、接着剤やモールド剤がワイピング面102側の開口に露出した場合、ワイパー150が接着剤やモールド剤に接触することによってその一部が脱落して異物化し、異物化した接着剤やモールド剤が記録シートSに落下して汚染することや、異物化した接着剤やモールド剤をワイパー150が次のノズル開口21に刷り込み、ノズル開口21の目詰まりやインク滴の飛翔方向がずれる等のインク吐出不良が発生するという問題が生じる。
【0082】
また、本実施形態の弾性部材160は、第3の方向Zに高さを有するため、隙間101の第1の方向X側の開口において、ワイピング面102側であるZ1側の開口も弾性部材160によって塞がれている。このため、ワイピング面102をワイパー150でワイピングした際に押し退けられたインクが、ヘッド本体100の側面、すなわち、第1の方向Xの開口から隙間101内に入り込むのを抑制することができる。これにより、ワイピング面102以外の面から隙間101に入り込んだインクが予期せぬタイミングで記録シートS上に落下するのを抑制することができる。
【0083】
さらに、本実施形態の弾性部材160は、隙間101の全面に亘って連続して設けられておらず、ヘッド本体100のホルダー200側であるZ2側の隙間101には空間が設けられている。このため、弾性部材160が弾性力によってヘッド本体100を押圧する圧力を低減してヘッド本体100の位置ずれを抑制することができる。すなわち、弾性部材160がヘッド本体100を第2の方向Yに押圧する圧力が大きいと、ヘッド本体100の位置ずれが発生し、ノズル開口21の相対位置がずれることによる着弾位置ずれが生じる虞があるが、本実施形態では、弾性部材160のヘッド本体100を押圧する面積を隙間101の面積に比べて狭くすることで、弾性部材160がヘッド本体100を押圧する圧力を低減してノズル開口21の位置ずれによるインク滴の着弾位置ずれを抑制し、印刷品質を向上することができる。また、弾性部材160によってヘッド本体100を押圧する圧力を低減することで、複数のヘッド本体100の相対的なアライメントを、弾性部材160を隙間101に保持した状態でも容易に行うことができる。
【0084】
さらに、本実施形態では、弾性部材160は、自身の弾性力によって隙間101に保持されているため、ヘッド本体100の交換やメンテナンス時などに、ヘッド本体100をホルダー200から容易に着脱することができる。また、ヘッド本体100の位置ずれが生じた場合にも、弾性部材160を隙間101に保持した状態でヘッド本体100の位置ずれを修正することができる。これに対して、例えば、ヘッド本体100同士を接着剤で接着した場合、ヘッド本体100をホルダー200から容易に取り外すことができず、ホルダー200に対するヘッド本体100の位置ずれを修正することもできなくなってしまう。
【0085】
さらに、本実施形態では、ヘッド本体100同士の隙間101に弾性部材160を弾性力によって保持させるため、接着剤やモールド剤を隙間101内に隙間なく且つ余分な接着剤やモールド剤が液体噴射面20a等に回り込まないように接着剤の塗布量を高精度に制御する工程が不要になると共に接着剤を硬化させる時間が不要となり、製造工程を簡略化して製造時間を短縮することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、保持部材120の第1の方向Xの両側に足部122を設けるようにしたが、足部122を設けないようにしてもよい。すなわち、保持部材120のZ1側の面にヘッドチップ110が接着され、カバー130の第1の方向X及び第2の方向Yの両側に折り曲げ部132を設けるようにしてもよい。すなわち、カバー130には、液体噴射面20aの面内方向における全周に亘って折り曲げ部132が設けられており、保持部材120の側面の全周に亘ってカバー130が接着されていてもよい。これにより、さらに記録ヘッド3の第1の方向Xの幅を小さくすることが可能となる。また、記録ヘッド3の第1の方向Xの幅を小さくすることで、複数の記録ヘッド3を第1の方向Xに近接して設けることもできる。ただし、このようなベース部131の全周に亘って折り曲げ部132を有するカバー130は、絞り加工などによって形成する必要があるものの、絞り加工では、折り曲げ部132の長さを十分に確保することができず、製造するのが困難である場合がある。また、本実施形態のように足部122のZ1側の端面をカバー130のベース部131に接着することで、ヘッド本体100の第3の方向Zの強度を向上することができる。また、足部122のZ1側の端面をカバー130のベース部131に接着することで、カバー130と保持部材120との接着時の圧力を足部122によって支持することができ、ヘッドチップ110に直接圧力が印加されるのを抑制してヘッドチップ110の破壊等を抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、保持部材120の第2の方向Yの両側に足部122を設けないようにしたが、第2の方向Yの両側に足部122を設けることで、ヘッド本体100の第3の方向Zの強度を向上させることができる。この場合、第1の方向Xの両側に設けた足部122のZ1側の端面の第1の方向Xの長さよりも、第2の方向Yの両側に設けた足部122のZ1側の端面の第2の方向Yの長さを小さくすることで、第2の方向Yで互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101を狭くすることができる。また、この場合、第2の方向Yの両側において、折り曲げ部132と保持部材120の側面とを接着剤141により接着することで、カバー130との接着に要する領域を保持部材120の側面に確保することができ、水分の蒸発を効果的に抑制することができる。
【0088】
このような本実施形態のヘッド本体100は、
図3に示すように、液体噴射面20a側から平面視した際に、略平行四辺形となる形状を有する。これは、上述したように、各ヘッドチップ110のノズル列を構成するノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaが、記録シートSの搬送方向である第1の方向Xに対して傾斜して設けられており、このノズル列の傾斜する方向である第4の方向Xaと同じようにヘッド本体100の外形を略平行四辺形となるように形成したからである。もちろん、ヘッド本体100の液体噴射面20a側から平面視した際の形状は、略平行四辺形に限定されず、矩形状や台形状、多角形状等であってもよい。
【0089】
このようにヘッド本体100を複数配置して記録ヘッド3とすることにより、製造上の歩留まり、加工の容易さ、固定板であるカバー130の平面の平面出しの容易化などの効果を奏する。
【0090】
なお、このようなヘッド本体100のヘッドチップ110の一例について以下に詳細に説明するが、もちろんヘッドチップ110の構成は以下の構成に限定されるものではない。なお、
図8は、本発明の実施形態1に係るヘッド本体の斜視図であり、
図9は、ヘッド本体の第2の方向Yの断面図である。
【0091】
図示するように、本実施形態のヘッドチップ110は、流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、保護基板30、コンプライアンス基板45、ケース40等の複数の部材を備え、これら複数の部材が接着剤等によって接合されている。
【0092】
図示するように、ヘッドチップ110を構成する流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12が複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。なお、本実施形態では、この圧力発生室12が並設される方向は、第4の方向Xaと一致するまた、流路形成基板10には、圧力発生室12が第4の方向Xaに並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。この圧力発生室12が第4の方向Xaに沿って形成された圧力発生室12の列が複数列設された列設方向を、以降、第5の方向Yaと称する。なお、本実施形態では、第4の方向Xa及び第5の方向Yaに直交する方向は、第3の方向Zと一致する。また、本実施形態のヘッドチップ110は、ノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaが、記録シートSの搬送方向である第1の方向Xに対して傾斜した方向となるように記録ヘッド3に搭載される。
【0093】
また、流路形成基板10には、圧力発生室12の第5の方向Yaの一端部側に、当該圧力発生室12よりも開口面積が狭く、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を付与する供給路等が設けられていてもよい。
【0094】
また、
図9に示すように、流路形成基板10の一方面側には、連通板15が接合されている。また、連通板15には、各圧力発生室12に連通する複数のノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接合されている。本実施形態では、ノズルプレート20のノズル開口21が開口する第3の方向Zの一方面であるZ1側が液体噴射面20aとなっている。
【0095】
連通板15には、圧力発生室12とノズル開口21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このようにノズルプレート20の面積を比較的小さくすることでコストの削減を図ることができる。
【0096】
また、図示するように連通板15には、マニホールド95の一部を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18とが設けられている。
【0097】
第1マニホールド部17は、連通板15を第3の方向Zに貫通して設けられている。
【0098】
また、第2マニホールド部18は、連通板15を第3の方向Zに貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して第3の方向Zの途中まで設けられている。
【0099】
さらに、連通板15には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、圧力発生室12毎に独立して設けられている。この供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。
【0100】
ノズルプレート20には、各圧力発生室12とノズル連通路16を介して連通するノズル開口21が形成されている。すなわち、ノズル開口21は、同じ種類の液体であるインクを噴射するものが第4の方向Xaに並設され、この第4の方向Xaに並設されたノズル開口21の列が第5の方向Yaに2列形成されている。なお、特に図示していないが、ノズルプレート20のノズル開口21が開口するZ1側の液体噴射面20aには、インクに対する撥液性を有する撥液膜が設けられている。
【0101】
一方、流路形成基板10の連通板15とは反対面側には、振動板が形成されている。また、振動板上には、第1電極と圧電体層と第2電極とが順次積層されることで、本実施形態の圧力発生手段である圧電アクチュエーター300が構成されている。一般的には圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。
【0102】
また、流路形成基板10の圧電アクチュエーター300側の面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護するための空間である圧電アクチュエーター保持部31を有する。また、保護基板30には、第3の方向Zに貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出されたリード電極90の端部は、この貫通孔32内に露出するように延設され、リード電極と駆動IC等の駆動回路97を実装した配線基板98とが、貫通孔32内で電気的に接続されている。
【0103】
また、保護基板30及び連通板15には、複数の圧力発生室12に連通するマニホールド95を画成するケース40が固定されている。ケース40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。具体的には、ケース40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース40と流路形成基板10及び保護基板30とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、この第3マニホールド部42と連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18とによって本実施形態のマニホールド95が構成されている。
【0104】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の開口を封止している。
【0105】
このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、封止膜46と、固定基板47と、を具備する。封止膜46は、可撓性を有する薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やステンレス鋼(SUS)等により形成されている。また、固定基板47は、ステンレス鋼(SUS)等の金属等の硬質の材料で形成される。この固定基板47のマニホールド95に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド95の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
【0106】
また、本実施形態では、固定板であるカバー130は、このコンプライアンス基板45の連通板15とは反対面側に接着される。すなわち、カバー130のベース部131に設けられた露出開口部133は、ノズルプレート20の面積よりも広い開口面積を有し、露出開口部133内でノズルプレート20の液体噴射面20aを露出する。もちろん、カバー130は、これに限定されず、例えば、カバー130の露出開口部133をノズルプレート20の外形よりも小さな開口面積とし、カバー130をノズルプレート20の液体噴射面20aに当接又は接着するようにしてもよい。もちろん、カバー130の露出開口部133をノズルプレート20の外形よりも小さな開口面積とした場合であっても、カバー130と液体噴射面20aとが接しないように設けるようにしてもよい。すなわち、カバー130が液体噴射面20a側に設けられているとは、液体噴射面20aに接していないものも、また、液体噴射面20aに接するものも含むものである。
【0107】
また、本実施形態では、カバー130は、コンプライアンス基板45の固定基板47に接着されている。これにより、上述したようにカバー130と保持部材120との間の保持部121を封止することができ、インクの水分蒸発を抑制することができる。
【0108】
なお、ケース40には、マニホールド95に連通して各マニホールド95にインクを供給するための導入路44が設けられている。また、ケース40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線基板98が挿通される接続口43が設けられている。
【0109】
このような構成のヘッドチップ110では、インクを噴射する際に、貯留手段から導入路44を介してインクを取り込み、マニホールド95からノズル開口21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動回路97からの信号に従い、圧力発生室12に対応する各圧電アクチュエーター300に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター300と共に振動板をたわみ変形させる。これにより、圧力発生室12内の圧力が高まり所定のノズル開口21からインク滴が噴射される。
【0110】
ここで、このような記録ヘッド3の製造方法について
図10〜
図13を参照して説明する。なお、
図10〜
図13は、記録ヘッドの製造方法を示す側面図である。
【0111】
図10に示すように、ホルダー200に複数のヘッド本体100を互いに位置決めした状態で固定する。
【0112】
次に、
図11に示すように、弾性部材160を第4の方向Xaに伸長した状態で、
図12に示すように隣り合うヘッド本体100の隙間101(
図5参照)に挿入する。すなわち、弾性部材160を第4の方向Xaに伸長することで、弾性部材160の第2の方向Yの厚さは薄くなり、隙間101内に容易に挿入することができる。
【0113】
次に、
図13に示すように、弾性部材160の伸長を弾性力によって収縮させる。すなわち、隙間101内で弾性部材160の第4の方向Xaの厚さが隙間101の幅よりも厚くなろうとする弾性力を利用して、弾性部材160を隙間101の内面、すなわちヘッド本体100の側面に当接させる。これにより、弾性部材160を隙間101内に弾性変形した状態で、その弾性力によって保持させることができる。
【0114】
このように、ヘッド本体100をホルダー200に保持させた状態で、弾性部材160の弾性変形を利用して隙間101内に設けることで、1つのヘッド本体100をホルダー200から着脱し易くすることができる。したがって、1つのヘッド本体100の交換を行った後であっても、隙間101に容易に弾性部材160を設けることができる。
【0115】
なお、本実施形態では、6個のヘッド本体100のうち、任意の1つのヘッド本体100のワイピング面102が第1ワイピング面に相当し、任意の1つのヘッド本体100に隙間101を介して並設されたヘッド本体100が被ワイピング部材に相当する。つまり、任意の1つのヘッド本体100に隙間101を介して並設されたヘッド本体100のワイピング面102が第2ワイピング面に相当する。
【0116】
(実施形態2)
図14は、本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの要部を拡大した断面図であり、
図15は、実施形態2に係る記録ヘッドの側面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0117】
図示するように、本実施形態では、第2の方向Yで隣り合うヘッド本体100の隙間101には、弾性部材160Aが弾性変形した状態で保持されている。
【0118】
ここで、弾性部材160Aは、隙間101の開口に沿った形状を有する。すなわち、弾性部材160Aは、ヘッド本体100の記録シートSに相対向するワイピング面102側であるZ1側の開口と、インクの噴射方向と直交する第1の方向Xの両側面の開口とに沿って設けられている。
【0119】
つまり、弾性部材160Aは、隙間101のZ1側の開口及び第2の方向Yの両側の開口を塞ぐように、ヘッド本体100の隙間101を形成する側面において、ホルダー200に保持された辺を除く3辺に沿って、所謂コの字状に設けられており、隙間101の開口よりも内側、すなわち隙間101の中央部側には、弾性部材160Aが設けられていない空間部101aが形成されている。
【0120】
このように、弾性部材160Aを隙間101の第1の方向Xの開口を塞ぐように設けることで、第1の方向X側の開口から隙間101内にインクが侵入するのを抑制することができる。また、ワイピング面102をワイパー150がワイピングした際に、ワイパー150が、弾性部材160Aに接触しても、異物の発生を抑制することができる。
【0121】
また、空間部101aを形成するように弾性部材160Aを設けることで、弾性部材160Aは、ヘッド本体100の隙間101を形成する側面よりも狭い面積でヘッド本体100の開口側の側面に当接する。したがって、弾性部材160Aの弾性力によってヘッド本体100を押圧する圧力を低減して、ヘッド本体100の位置ずれ等を抑制することができる。
【0122】
さらに、弾性部材160Aは、第3の方向Zにおいて、Z1側のワイピング面102からホルダー200に保持されたZ2側の面に達する高さを部分的に有する。このため、弾性部材160AのZ2側の端面は、ホルダー200に当接することによって、隙間101内で位置ずれが生じ難い。これにより、弾性部材160Aの位置ずれによって、ワイピング面102に隙間101が開口することや、ワイピング面102から弾性部材160Aが突出して、ワイパー150及び弾性部材160Aの摩耗が早まるなどの不具合を抑制することができる。
【0123】
なお、本実施形態では、ヘッド本体100の記録シートSに相対向する面をワイパー150によってワイピングされるワイピング面102としたが、特にこれに限定されず、例えば、ヘッド本体100の第1の方向Xの側面をワイパーによってワイピングされるワイピング面とすることもできる。すなわち、ヘッド本体100の第1の方向Xの側面をワイパーによってワイピングする場合であっても、隙間101の第1の方向X側の開口を塞ぐ弾性部材160Aを設けることによってヘッド本体100の第1の方向Xの側面であるワイピング面から隙間101にインクが侵入するのを抑制して、隙間101に溜まったインクが予期せぬタイミングで落下することを抑制することができる。もちろん、ヘッド本体100の液体噴射面20a側と、第1の方向Xの側面との両方をワイパーによってワイピングされるワイピング面としても、本実施形態の弾性部材160Aで隙間101内へのインクの侵入、ワイパーによる異物の発生を抑制することができる。ちなみに、弾性部材160Aは、ワイパーによってワイピングされるワイピング面側の開口において、ワイピング面よりも突出しないように設けられていればよく、ヘッド本体100の第1の方向Xの側面がワイピング面ではない場合には、弾性部材160Aは、ヘッド本体100の第1の方向Xの側面から突出して設けられていてもよい。
【0124】
なお、本実施形態では、弾性部材160Aを隙間101において、Z1側の開口及び第1の方向Xの両側の開口に沿って、所謂コの字状に設けるようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、弾性部材の変形例を
図16に示す。なお、
図16は、実施形態2に係る記録ヘッドの変形例を示す断面図である。
【0125】
図16に示すように、弾性部材160Bは、隙間101のZ1側の開口、第1の方向Xの両側の開口及びホルダー200に保持されたZ2側の面に沿って連続して、所謂ロの字状に設けられている。そして、隙間101の中央部には、弾性部材160Bが設けられていない空間部101aが形成されている。このような弾性部材160Bであっても、隙間へのインクの侵入を抑制することができると共にワイパー150が接触することによる異物の発生を抑制することができる。また、空間部101aを設けることで、弾性部材160Bは、ヘッド本体100の隙間101を形成する側面よりも狭い面積でヘッド本体100の開口側の側面に当接する。したがって、弾性部材160Bの弾性力によってヘッド本体100を押圧する圧力を低減して、ヘッド本体100の位置ずれ等を抑制することができる。
【0126】
なお、
図16に示す弾性部材160Bは、第3の方向ZのZ2側においてホルダー200に当接する面積が広くなっている。したがって、弾性部材160Bは、隙間101内で位置ずれがさらに生じ難い。
【0127】
ちなみに、上述した例では、弾性部材を隙間101の開口部分のみに設けるようにしたが、特にこれに限定されず、弾性部材160を隙間101の全面に亘って設けるようにしてもよい。このような例を
図17及び
図18に示す。なお、
図17及び
図18は、実施形態2に係る記録ヘッドの変形例を示す要部断面図である。
【0128】
図17及び
図18に示すように、弾性部材160Cは、隙間101の全面に亘って設けられている。すなわち、弾性部材160Cは、ヘッド本体100の隙間101を形成する側面と略同じ面積を有する。このような弾性部材160Cによれば、さらに隙間101内での位置ずれや撓みを抑制することができる。
【0129】
(実施形態3)
図19は、本発明の実施形態3に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0130】
図示するように、本実施形態では、第2の方向Yで隣り合うヘッド本体100の隙間101には、弾性部材160Dが弾性変形した状態で保持されている。
【0131】
弾性部材160Dは、実施形態1と同様に、隙間101のワイピング面102側の開口に沿って設けられている。
【0132】
また、弾性部材160Dは、ワイピング面102側の開口よりも内側の厚さが、開口側よりも薄くなっている。
【0133】
このような弾性部材160Dであっても、隙間101のワイピング面102側の開口を確実に塞ぐことができる。また、弾性部材160Dの開口よりも内側の厚さを薄くすることで、弾性部材160Dがヘッド本体100の第2の方向Yの側面を押圧する圧力を低減することができ、ヘッド本体100の位置ずれ等を抑制することができる。
【0134】
(実施形態4)
図20は、本発明の実施形態4に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0135】
図示するように、本実施形態の記録ヘッド3は、インクを吐出するヘッド本体100と、ホルダー200Aとを具備する。
【0136】
ホルダー200Aは、Z1側の面にヘッド本体100を収容可能な凹形状を有する収容部201を有する。そして、ホルダー200Aの収容部201内には、第2の方向Yにおいて収容部201の内壁面との間に隙間101を介した状態で、1つのヘッド本体100が保持されている。
【0137】
また、ホルダー200AのZ1側の面は、ヘッド本体100のワイピング面102と同じ方向を向いて設けられており、第3の方向Zにおいて略同じ位置となっている。そして、このホルダー200AのZ1側の面は、ワイパー150によってワイピングされるワイピング面202となっている。
【0138】
すなわち、本実施形態では、ヘッド本体100のワイピング面102が第1ワイピング面に相当し、ヘッド本体100に隙間101を介して並設されたホルダー200Aが、被ワイピング部材に相当する。また、ホルダー200Aのワイピング面202が第2ワイピング面に相当する。
【0139】
このような記録ヘッド3において、ヘッド本体100とホルダー200Aとの隙間101には、ワイピング面102、202側の開口を塞ぐ弾性部材160が、弾性変形した状態で保持されている。なお、弾性部材160については、上述した実施形態1と同様である。もちろん、弾性部材160は特にこれに限定されず、上述した実施形態2及び3の弾性部材160A〜160Dであってもよい。
【0140】
このようにホルダー200Aとヘッド本体100との隙間101に弾性部材160を設けることで、ワイピング面102、202をワイパー150によってワイピングした際に隙間101にインクが侵入するのを抑制することができる。また、ワイパーが弾性部材160に接触することによる異物の発生を抑制することができる。
【0141】
なお、本実施形態では、ホルダー200Aの収容部201内に1つのヘッド本体100を保持するようにしたが、特にこれに限定されず、上述した実施形態1と同様に、ホルダー200Aに複数のヘッド本体100を保持させるようにしてもよい。このような例を
図21に示す。なお、
図21は、実施形態4に係る記録ヘッドの変形例を示す側面図である。
【0142】
図21に示すように、ホルダー200Aの収容部201内には、4つのヘッド本体100が隙間101を介して第2の方向Yに併設されている。そして、上述した実施形態1と同様に、隣り合うヘッド本体100の隙間101には弾性部材160が設けられている。また、ヘッド本体100とホルダー200Aとの隙間101にも弾性部材160が設けられている。すなわち、
図21に示す例では、複数のヘッド本体100のうち、任意の1つのヘッド本体100のワイピング面102を第1ワイピング面とすれば、任意の1つのヘッド本体100に隙間101を介して並設されたヘッド本体100が被ワイピング部材に相当し、このヘッド本体100のワイピング面102が第2ワイピング面に相当する。また、収容部201内において、第2の方向Yの両端部に設けられたヘッド本体100のワイピング面102を第1ワイピング面とすれば、ホルダー200Aが被ワイピング部材に相当し、ホルダー200Aのワイピング面202が第2ワイピング面に相当する。
【0143】
(実施形態5)
図22は、本発明の実施形態5に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0144】
図22に示すように、互いに隣り合うヘッド本体100の隙間101には、弾性部材160Eが弾性変形した状態で保持されている。
【0145】
弾性部材160Eは、ヘッド本体100に向けて突出した突起部161を有する。突起部161は、本実施形態では、突出する先端に向かって第3の方向Zの幅が漸小する形状を有する。また、突起部161は、隙間101のワイピング面102側の開口に沿って連続して設けられている。
【0146】
このように弾性部材160Eに突起部161を設けることで、弾性部材160Eとヘッド本体100とが当接する面積を減少させて、弾性部材160Eの弾性変形によるヘッド本体100を押圧する圧力を低減することができ、ヘッド本体100の位置ずれを抑制することができる。
【0147】
なお、突起部161の数は特に限定されず、例えば、2つ以上を設けるようにしてもよい。このような例を
図23に示す。
【0148】
図23に示すように、弾性部材160Fには、各ヘッド本体100に向かって突出する突起部161が2つずつ設けられている。このような構成としても、弾性部材160Fとヘッド本体100とが当接する面積を減少させて、弾性部材160Fの弾性変形によるヘッド本体100を押圧する圧力を低減することができ、ヘッド本体100の位置ずれを抑制することができる。
【0149】
(実施形態6)
図24は、本発明の実施形態6に係る記録ヘッドの要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0150】
図24に示すように、本実施形態では、実施形態5と同様の弾性部材160Fは、隙間101の開口以外の部分が接着剤170によって接着されている。
【0151】
具体的には、接着剤170は、2つの突起部161の間とヘッド本体100の側面との間に設けられている。
【0152】
このように弾性部材160Fを隙間101の開口以外の部分で接着剤170によって接着することで、弾性部材160Fの位置ずれを抑制することができる。
【0153】
また、接着剤170は、隙間101の開口以外の部分に設けられているため、インクの浸食による異物化や、ワイパー150に接触することによる異物化するのを抑制することができる。ちなみに、隙間101の開口部側に接着剤170が設けられていると、接着剤170にインクが接触して浸食されて、異物が発生する。また、接着剤170がワイパー150に接触することで異物が発生する。
【0154】
なお、本実施形態では、弾性部材160Fを第2の方向Yの両側のヘッド本体100と接着剤170によって接着するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、一方側のヘッド本体100のみと接着するようにしてもよい。
【0155】
このように弾性部材160Fをヘッド本体100に接着した場合であっても、弾性部材160Fは、隙間101に弾性変形した状態で保持されていると言える。つまり、弾性部材160Fとヘッド本体100とは突起部161において直接接触しており、弾性部材160Fの両面に設けられた突起部161の先端同士の幅が隙間101よりも広ければ、弾性変形していると言える。
【0156】
また、弾性部材160Fをヘッド本体100に接着する場合には、上述した実施形態1とは異なる製造方法によっても記録ヘッド3を製造することができる。ここで、本実施形態の製造方法について
図25〜
図27を参照して説明する。なお、
図25〜
図27は、記録ヘッドの製造方法を示す側面図である。
【0157】
まず、
図25に示すように、1つ目のヘッド本体100の第2の方向Yの側面に弾性部材160Fを接着剤170によって接着する。このヘッド本体100への弾性部材160Fの接着は、ヘッド本体100をホルダー200に固定する前に行ってもよく、ヘッド本体100をホルダー200に固定した後に行ってもよい。
【0158】
次に、
図26に示すように、2つめ目のヘッド本体100を1つ目のヘッド本体100に対して相対位置決めしてホルダー200に固定する。これにより、2つのヘッド本体100の隙間101に弾性部材160Fを弾性変形させた状態で保持させることができる。なお、2つ目のヘッド本体100には、予め又はホルダー200に固定した後に弾性部材160Fを接着しておく。その後は、3つめ以降のヘッド本体100についても同様に位置決めしながらホルダー200に固定することで、記録ヘッド3とすることができる。なお、2つ目のヘッド本体100をホルダー200に固定した後に、2つのヘッド本体100の間の弾性部材160Fと2つ目のヘッド本体100とを接着剤170によって接着すれば、上述した
図24に示す記録ヘッド3とすることができる。もちろん、この接着は必須なものではなく、1つ目のヘッド本体100に接着された弾性部材160Fと2つ目のヘッド本体100とを接着しないようにしてもよい。
【0159】
このように、ヘッド本体100に弾性部材160Fを接着してから次のヘッド本体100をホルダー200に固定することで、ヘッド本体100と弾性部材160Fとの位置決めを容易に且つ高精度に行うことができる。したがって、弾性部材160Fがワイピング面102から突出するなどの不具合を抑制することができる。
【0160】
なお、本実施形態では、弾性部材160Fをヘッド本体100に接着するようにしたが、特にこれに限定されず、上述した実施形態1〜5の弾性部材160〜160Eをヘッド本体100に接着するようにしてもよい。この場合であっても、ヘッド本体100と弾性部材160〜160Eを接着する接着剤が、隙間101のワイピング面102側の開口以外の部分に設けられていれば、接着剤の異物化を抑制することができる。また、例えば、
図27に示すように、実施形態1の弾性部材160を隙間101に設けた場合には、隙間101の弾性部材160とホルダー200との間の空間に接着剤170を設けて、ヘッド本体100同士を接着するようにしてもよい。このような接着剤170は、上述した実施形態1と同様の製造方法によって記録ヘッド3を製造した後、空間部分に接着剤170を充填することで製造することができる。このようにヘッド本体100同士を接着剤170によって接着することで、ヘッド本体100の相対的な位置ずれを抑制することができる。なお、本実施形態では、接着剤170は、弾性部材160とヘッド本体100とを接着するようにしたが、接着剤170は弾性部材160とヘッド本体100とを接着しなくてもヘッド本体100同士の位置ずれを抑制することができる。本実施形態では、
図27に示すように、接着剤170がヘッド本体100と弾性部材160とを接着することで、弾性部材160の位置ずれを抑制することもできる。
【0161】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0162】
例えば、上述した実施形態1では、ヘッドチップ110は、流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、保護基板30、コンプライアンス基板45、ケース40等の複数の部材を備えるとしたが、液体噴射面20aに設けられたノズル開口21から液体を噴射するために、当該ノズル開口21と連通した圧力発生室12に圧力を発生させる圧力発生手段と、当該圧力発生手段が設けられ、所定の方向に沿って並設された複数の圧力発生室12とを少なくとも備えていればよい。すなわち、上述した実施形態1では、保持部材120のZ1側がヘッドチップ110のZ2側と接着され、ヘッドチップ110がケース40を最もZ2側に積層していたが、ヘッドチップ110は、ケース40を介して保持部材120と接着される必要はなく、ヘッドチップ110は、ケース40を介さずに保持部材120と接着されていてもよい。
【0163】
また、上述した各実施形態では、ヘッド本体100の液体噴射面20a側に設けられた固定板であるカバー130と、ヘッドチップ110のノズル開口21が設けられたノズルプレート20とを別体としたが、特にこれに限定されず、カバー130を設けずに、ノズルプレート20のみが設けられていてもよい。この場合には、例えば、ノズルプレート20をヘッドチップ110の外側まで延設し、延設した端部をZ2方向に折り曲げて折り曲げ部132を設けるようにしてもよい。また、ヘッド本体100の液体噴射面20a側に固定板よりもZ1側にノズルプレート20とは異なる他の部材が設けられていてもよい。何れの場合であっても、ワイパーによってワイピングされるワイピング面を有するものであれば、ワイピング面にノズル開口21が形成されていなくてもよく、ヘッド本体100の構成は特に限定されるものではない。
【0164】
また、上述した各実施形態では、ホルダー200に保持された複数のヘッド本体100の並設方向を、記録シートSの搬送方向である第1の方向Xに対して垂直な方向である第2の方向Yとしたが、特にこれに限定されず、ヘッド本体100をホルダー200の長手方向に並設した記録ヘッドを、複数のヘッド本体100の並び方向が、記録シートSの搬送方向である第1の方向Xに対して交差する角度、すなわち、第1の方向Xに対して90度よりも小さな角度となるように配置してもよい。このとき、液体噴射面20aの面内方向において、ノズル列は、ホルダー200の長手方向に垂直な方向に設けられていても、記録ヘッド全体を傾けることで、搬送方向である第1の方向Xに対して傾斜したノズル列を配置させることができる。
【0165】
さらに、上述した各実施形態では、ヘッドチップ110のノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaが、搬送方向である第1の方向Xに直交する第2の方向Yに対して傾斜した方向となるように配置するようにしたが、ノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaが搬送方向である第1の方向Xと同じ方向となるようにしてもよく、また、ノズル開口21の並設方向である第4の方向Xaが第2の方向Yと同じ方向になるようにしてもよい。さらに、ノズル開口21は、列状に設けられているものに限定されるものではなく、ノズル開口21をマトリックス状に配置するようにしてもよい。さらに、上述した実施形態1では、保持部材120が液体噴射面20aに垂直な第3の方向Zから平面視した際に、略平行四辺形状となるようにしたが、特にこれに限定されず、矩形状、台形形状、多角形状等であってもよい。ここで、このような一例を
図28に示す。なお、
図28は、本発明の他の実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの液体噴射面側からの平面図である。
【0166】
図28に示すように、ヘッド本体100Aは、液体噴射面20a側から平面視した際に台形状を有する。また、複数のヘッド本体100Aは、第2の方向Yに並設されてホルダー200に固定されており、第2の方向Yに並設されたヘッド本体100Aは、1個置きに液体噴射面20aの面内方向で180度回転して配置されている。
【0167】
このようなヘッド本体100Aには、ノズル開口21が液体噴射面20aにマトリックス状に配置されている。このような構成であっても、上述した各実施形態と同様に、隙間101のワイピング面102、202側の開口を弾性部材160〜160Fによって塞ぐことで、隙間101へのインクの侵入、ワイピングした際の異物の発生を抑制することができる。
【0168】
さらに、上述した実施形態1では、インクジェット式記録装置1として、記録ヘッド3が装置本体2に固定されて、記録シートSを搬送するだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置を例示したが、特にこれに限定されず、記録ヘッド3を記録シートSの搬送方向である第1の方向Xとは交差する方向、例えば、第2の方向Yに移動するキャリッジに搭載して、記録ヘッド3を搬送方向とは交差する方向に移動しながら印刷を行う、所謂シリアル型記録装置にも本発明を適用することができる。また、記録ヘッド3に対して記録シートSを搬送する構成に限定されず、記録シートSに対して記録ヘッド3を移動させる構成により印刷を行ってもよく、記録シートSを記録ヘッド3に対して相対的に搬送すればよい。
【0169】
また、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、第3の方向Zに積層された圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、圧電アクチュエーター300は、例えば、成膜及びリソグラフィー法によって形成された薄膜型や、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型等であってもよい。また、圧電アクチュエーター300は、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型を使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口21から液滴を噴射するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口21から液滴を噴射させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0170】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。