特許第6597997号(P6597997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6597997
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】熱光発電機
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20191021BHJP
   H02S 10/30 20140101ALI20191021BHJP
   H01L 31/055 20140101ALI20191021BHJP
   H01L 31/056 20140101ALI20191021BHJP
   H02S 40/22 20140101ALI20191021BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20191021BHJP
   G02B 7/182 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H02N11/00 A
   H02S10/30
   H01L31/04 622
   H01L31/04 624
   H02S40/22
   G02B5/08 Z
   G02B7/182 100
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-74171(P2015-74171)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-195492(P2016-195492A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】末光 真大
(72)【発明者】
【氏名】野田 進
(72)【発明者】
【氏名】浅野 卓
(72)【発明者】
【氏名】デ ゾイサ メーナカ
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/136671(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0126783(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/056806(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0217977(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/038203(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
G02B 5/08
G02B 7/182
H01L 31/055
H01L 31/056
H02S 10/30
H02S 40/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱輻射光源と太陽電池セルを有し、集光レンズによって集光した光を前記熱輻射光源に照射して蓄積し、当該熱輻射光源からの輻射光を前記太陽電池セルで受光して発電する熱光発電機において、
前記熱輻射光源は、
前記光を受光する吸収体と、
前記吸収体に熱伝導可能に接続し、
赤外線を透過可能な材料で構成された熱伝導部材と、
前記熱伝導部材に熱伝導可能に接続し、前記熱伝導部材から受け取った熱を前記太陽電池セルでの光電変換に適した光に変換する熱光変換素子とを有し、
前記太陽電池セルは、前記熱光変換素子が輻射する輻射光を受光可能に設けられ
前記吸収体と前記熱伝導部材との間に、前記熱伝導部材よりも熱伝導性の高い光遮断部材が熱伝導可能に配置される熱光発電機。
【請求項2】
前記熱光変換素子は、フォトニック結晶で構成される請求項1に記載の熱光発電機。
【請求項3】
前記輻射光を受光する前記太陽電池セルの受光面の反対面に、前記太陽電池セルを透過した前記輻射光である透過光を前記熱輻射光源に向けて反射する光反射体を備える請求項1又は2に記載の熱光発電機。
【請求項4】
前記熱輻射光源と前記太陽電池セルとが真空容器内に配置される請求項1〜3の何れか1項に記載の熱光発電機。
【請求項5】
前記真空容器内に光を反射する光反射体を有する請求項4に記載の熱光発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱を光に変換する熱光発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物体を加熱すると、物体を構成する物質および物体の温度に応じたスペクトルを有する光、すなわち輻射光を生じる。この輻射光を太陽電池セルで捉え発電する方法を、熱光発電(TPV)という(特許文献1)。輻射光を得るための物質の加熱方法としては例えば、太陽光や各種の燃料の燃焼炎、他の産業活動に伴う副産物である排熱が用いられる。
【0003】
輻射光は、その光源となる物体の材質と、その物体の温度とによって定まる発光スペクトルを有する。一般に、通常の物体を光源として加熱した際の発光スペクトルは、幅広い波長帯に亘る分布を有する。
従来熱光発電においては、その光源として、タンタルやタングステンなどの金属やシリコン炭化ケイ素などの半導体を使った方式、絶縁体を使った方式、それら金属もしくは半導体もしくは絶縁体に周期構造等の加工を施し輻射を制御した方式等が提案されている。これら方式は太陽電池セルが発電に利用できない光も光源から発せられ、発電に利用できない光エネルギーは捨てられるので太陽電池セルの発電効率(光電変換効率)が低くなる。
【0004】
そこで、この所望のピーク波長を有する輻射光を得ることができる光源としての熱光変換素子(例えば一次元、二次元、三次元フォトニック結晶)を利用し、光電変換効率の高い熱光発電機が提案されている。この方法は、太陽電池と、その太陽電池に適したピーク波長を有する輻射光を得ることができる熱光変換素子とを組み合わせることにより、高い光電変換効率を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4710161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この方法は、熱光変換素子の発光スペクトルに起因する光電変換効率の改善については適切な効果が得られるものの、熱光変換素子の加熱の方法に工夫の余地があった。
【0007】
フォトニック結晶はたとえばシリコンのロッド型構造である。このようなフォトニック結晶を、熱光変換素子として産業上利用可能な光源として用いるためには、このフォトニック結晶を保持する基体や、太陽光を受けて熱に変換する吸収体、吸収体からフォトニック結晶に熱を伝達して加熱する熱伝導部材などを組み合わせて熱輻射光源として構成する必要がある。このとき、熱輻射光源を構成する部材、たとえば熱伝導部材からの輻射や放熱は発電に寄与せず、エネルギーの損失になる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み、熱光発電において、このような発電に寄与しない無駄な輻射や放熱を削減した熱輻射光源の構造と、これを用いた最適な熱光発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る熱光発電機は、熱輻射光源と太陽電池セルを有し、集光レンズによって集光した光を前記熱輻射光源に照射して蓄積し、当該熱輻射光源からの輻射光を太陽電池セルで受光して発電する熱光発電機において、その特徴構成は、前記熱輻射光源は、光を受光する吸収体と、前記吸収体に熱伝導可能に接続し、赤外線を透過可能な材料で構成された熱伝導部材と、前記熱伝導部材に熱伝導可能に接続し、前記性熱伝導部材から受け取った熱を前記太陽電池セルでの光電変換に適した光に変換する熱光変換素子とを有し、前記太陽電池セルは、前記熱光変換素子が輻射する輻射光を受光可能に設けられ
前記吸収体と前記熱伝導部材との間に、前記熱伝導部材よりも熱伝導性の高い光遮断部材が熱伝導可能に配置される点にある。
【0010】
本特徴構成によれば、吸収体で光を受光するため、効率よく光を熱に変換することができる。さらに吸収体の熱を熱光変換素子に伝導するための熱伝導部材を赤外線を透過可能な材料で構成しているため、熱伝導部材からの赤外線の輻射を少なくすることができ、また、吸収体からの輻射を効率よく熱光変換素子に伝えることができる。そして熱を伝達された熱光変換素子は、太陽電池セルの発電に適した波長の輻射光を輻射するので、太陽電池セルは、その輻射光を受光して発電することができるため、高い光電変換効率で発電することができる。その結果、高い発電効率で発電することができる。
【0012】
更に、本特徴構成によれば、吸収体から熱伝導部材への熱伝導性が高まり、吸収体からの輻射の内太陽電池側への輻射を遮断するため効率よく太陽光を熱に変換できる。そして、吸収体の温度に対して熱光変換素子の温度が上昇しやすくなるため、吸収体からの光電変換セル側への輻射を遮断しつつ、熱輻射光源の輻射効率を高めることができる。その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0013】
本発明に係る熱光発電機の更なる特徴構成は、前記熱光変換素子は、フォトニック結晶で構成される点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、フォトニック結晶が熱光変換素子として、太陽電池セルでの発電に適した波長で強い強度を有する発光スペクトルの輻射光を発することができるため、太陽電池での光電変換効率を高めることができる。
【0015】
本発明に係る熱光発電機の更なる特徴構成は、前記輻射光を受光する前記太陽電池セルの受光面の反対面に、前記太陽電池セルを透過した前記輻射光である透過光を前記熱輻射光源に向けて反射する光反射体を備える点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、太陽電池セルが受光した輻射光のうち、太陽電池セルが電気に変換せず太陽電池セルを透過した透過光を光反射体が反射し、反射光として熱輻射光源に照射することができる。そして当該反射光を受光した熱輻射光源は、熱伝導部材を経て伝導される熱と吸収体からの輻射光と受光した反射光とで加熱される。言い換えると、熱輻射光源は、反射光として受光した当該透過光を熱エネルギーに再度変換した後、ふたたび輻射光へと変換する。このようにすることで、エネルギーのロスを減らし、その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0017】
本発明に係る熱光発電機の更なる特徴構成は、前記熱輻射光源と前記太陽電池セルとが真空容器内に配置される点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、前記熱輻射光源の周囲を真空にすることで、熱輻射光源からの熱伝導を抑制し保温できる。また、輻射光が空気に吸収されることを防ぐことができる。
【0019】
本発明に係る熱光発電機の更なる特徴構成は、前記真空容器内に光を反射する光反射体を有する点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、内部に備える光反射体は、熱輻射光源やその他の発電機の各部の容器内部での輻射光を容器内部で繰り返し反射し、その繰り返す反射の過程においてその反射光の一部は熱輻射光源に照射され、再び熱エネルギーに変換される。また、真空容器内であるから、反射光が空気に吸収されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一実施形態を示す図
図2】熱光変換素子の例を示す模式図
図3】発光スペクトルの一例を示す図
図4】第二実施形態を示す図
図5】第二実施形態の発電効率を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第一実施形態〕
図1に基づいて、本発明の第一実施形態に係る熱光発電機について説明する。
【0023】
本実施形態に係る熱光発電機は、熱輻射光源1と太陽電池セル2としてのシリコン太陽電池セルを有し、集光レンズ3によって集光した光4を熱輻射光源1に照射して蓄積し、熱輻射光源1からの輻射光を太陽電池セル2に向けて照射して発電する。
熱輻射光源1は、光を受光する平板状の吸収体11と、吸収体11に熱伝導可能に密接して接続した光遮断部材12である平板状のタンタルと、光遮断部材12と熱伝導可能に密接して接続した熱伝導部材13である平板状のMgOからなる赤外線を透過可能な赤外透明ガラスと、熱伝導部材13と熱伝導可能に密接して接続し、前記熱伝導部材13から受け取った熱を太陽電池セル2での光電変換に適した光に変換する熱光変換素子14で構成されている。
そして、太陽電池セル2は、熱輻射光源1の熱光変換素子14が輻射する輻射光を受光可能となるように、太陽電池セル2の受光面が熱光変換素子14の輻射面に対向する状態で、熱光変換素子14の輻射面に平行して設けられている。
【0024】
吸収体11は、例えば直径5mm程度の平板状に構成される。典型的には直径1〜30mm程度の平板とされるが、発電機のサイズに依存する。
また、吸収体11の厚みは、1μm〜2mm程度に構成される。
本例では吸収体11は、その一例として黒体で構成した例を示している。吸収体11としては、光を受光し、熱に変換できるものであれば、いわゆる黒体以外を用いることも当然できる。
【0025】
光遮断部材12と熱伝導部材13との接続面の面積は、吸収体11と光遮断部材12との接続面の面積よりも大きくするとよい。
【0026】
このように構成すると、光遮断部材12から熱伝導部材13への熱伝導効率が高くなり、その結果、吸収体11の温度に対して熱光変換素子14の温度が上昇しやすくなるため、吸収体11からの輻射を抑制しつつ、熱輻射光源1の輻射効率を高めることができる。その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0027】
光遮断部材12は、平板状のタンタルを例示したが、その他の材料で構成してもよい。光遮断部材12の熱伝導率は、吸収体11の熱伝導率よりも高く、かつ熱伝導部材13の熱伝導率よりも高ければその他の材料でもよい。その他の利用可能な材料としてはたとえば、モリブデン、タングステンなどの金属が好適である。
光遮断部材12の厚みは、100nm〜200μm程度に構成される。本例では200μmである。
【0028】
また、光遮断部材12は通常、吸収体11よりも大きく構成される。吸収体11が直径5mmの時には、光遮断部材12は6mm、乃至は6mm以上で構成される。
また、光遮断部材12の厚みは、100nm〜100μm程度に構成される。
【0029】
熱伝導部材13として赤外線を透過可能な赤外透明ガラスを用いることで、熱伝導部材13からの赤外線の輻射はきわめて少なくなる。また、吸収体11からの輻射を効率よく熱光変換素子14に伝えることができる。
【0030】
熱伝導部材13である赤外透明ガラスとしてはたとえば、MgO、SiC、ダイヤモンド、サファイア、アルミニウムナイトライド、ガリウムナイトライド、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ジンクセレン、フッ化バリウムなどを用いることができる。
また、熱伝導部材13の厚みは、10μm〜3mm程度に構成される。本例では、MgOを0.5mmで用いている。SiCを用いる場合はたとえば50μm程度にする。
【0031】
熱光変換素子14としてはフォトニック結晶が特に適している。たとえば、シリコンフォトニック結晶、SiCフォトニック結晶、Taフォトニック結晶、Wフォトニック結晶などを好適に用いることができる。その他のフォトニック結晶でも、輻射光のスペクトルを制御できるのであればその種類を問わない。
本例では熱光変換素子14は、その一例としてシリコンフォトニック結晶で構成した例を示している。
【0032】
熱光変換素子14は、熱光発電機としてはたとえば3インチの方形や円形で用いられ、典型的には0.5〜10インチ程度のサイズで用いられる。
熱光変換素子14の厚みは、50〜2000nm程度に構成される。Siで構成される場合、その厚みは500〜900nm程度が特に好ましい。
【0033】
熱光変換素子14として用いたシリコンフォトニック結晶の模式図を図2に示す。熱光変換素子14は、シリコンで構成される基体141と、基体141の表面に設けられたロッド142で構成される。ロッド142の半径rはおよそ110nmである。また、ロッド142の高さhはおよそ500nmである。ロッド142は正方格子状に配列され、正方格子の周期長a(隣り合うロッドの中心間の距離)はおよそ500nmである。この熱光変換素子14であるシリコンフォトニック結晶の輻射の発光スペクトルを「フォトニック結晶」として図3に示す。比較として、吸収体11である黒体の輻射の発光スペクトルを「黒体」として同じく図3に示す。
【0034】
本例で示したシリコンフォトニック結晶の場合は、例えばロッド142の半径rと、正方格子の周期長aを変えることで、輻射の波長を変更することができる。
【0035】
本例の熱光変換素子14の輻射の発光スペクトルは、吸収体11の発光スペクトルと比べて、バンドギャップエネルギーの値が約1.25eV付近(輻射の発光スペクトルのピーク波長約990nm)にピークを有する狭帯域のスペクトルであることが分かる。
【0036】
つまり本実施形態の熱輻射光源1は、光4を受光する吸収体11と光遮断部材12と、および光遮断部材12と熱伝導部材13とは熱伝導可能に接続して構成される。熱輻射光源1の構成の具体的例示としては、本実施形態で示したように、それぞれを密接させて、互いの接続面の間の伝熱係数を小さくし、熱伝導率を大きくするよう構成することができる。
【0037】
このようにすると、熱輻射光源1全体の熱伝導率が向上するから、吸収体11の温度に対して熱光変換素子14の温度が上昇しやすくなり、熱輻射光源1からの輻射を抑制し、光電変換効率を高めることができる。その結果、高い光電変換効率で発電することができる。
【0038】
特に本実施形態では、吸収体11と光遮断部材12と熱伝導部材13と熱光変換素子14とを以下のようにして熱輻射光源1を構成している。
吸収体11と光遮断部材12とは、互いの平板としての重心で密接するように接続させている。
また、光遮断部材12と熱伝導部材13とは、互いの平板としての重心で密接するように接続させている。
さらに、熱伝導部材13と熱光変換素子14とは、互いの平板としての重心で密接するように接続させている。
【0039】
このようにすると、それぞれ互いの接続面からの熱伝導率が向上する。その結果、熱輻射光源1全体の熱伝導率が向上するから、吸収体11の温度に対して熱光変換素子14の温度が上昇しやすくなり、熱輻射光源1からの輻射を抑制し、光電変換効率を高めることができる。その結果、高い光電変換効率で発電することができる。
【0040】
このように構成された熱輻射光源1は、以下のように光4を、太陽電池セル2での発電に適した発光スペクトルの輻射光に変換する。
吸収体11が集光された光(たとえば太陽光)を光4として受光すると、吸収体11で光エネルギーが熱に転換される。そして、吸収体11の熱は、吸収体11から熱伝導性の高い光遮断部材12で熱伝導部材13上に拡散して伝達され、さらに熱伝導部材13を経て、熱光変換素子14であるフォトニック結晶へ伝導された後、輻射光として輻射される。
このとき、熱輻射光源1はたとえばおよそ1500Kまで昇温する。
【0041】
太陽電池セル2は、一般的な太陽電池を用いることができる。たとえば、シリコン太陽電池、ガリウムアンチモン太陽電池、ゲルマニウム太陽電池、インジウムガリウムヒ素系太陽電池を用いることができる。もちろん、太陽電池セル2の発電に適する波長と、熱光変換素子14の輻射の発光スペクトルが適する組合せにする必要がある。
【0042】
たとえば太陽電池セル2としてシリコン太陽電池を用いる場合、熱光変換素子14の発光スペクトルの波長のピークは1120nm未満とすることが好ましい。これは、シリコン太陽電池は一般に、波長が1120nmを超える光を光電変換することができないためである。その他の太陽電池セルを用いる場合にも、熱光変換素子14の発光スペクトルの波長のピークは同様に定めることができる。
【0043】
太陽電池セル2は熱輻射光源1に対して距離を設けて配置される。太陽電池セル2は熱輻射光源1に対して直接接してはならない。
太陽電池セル2と熱輻射光源1との距離はできるだけ近接させることが好ましい。
本実施形態では太陽電池セル2は熱輻射光源1に対して2mmの距離を設けて配置されている。
【0044】
また、太陽電池セル2は、熱光変換素子14が輻射する輻射光を受光可能に設けられていればよい。例えば平面で構成した熱光変換素子14の輻射面に対向する状態に太陽電池セル2を設ければよい。
【0045】
太陽電池セル2は熱輻射光源1と同じか、熱輻射光源1よりもやや大きく構成するとよい。このように構成することで、熱輻射光源1の熱輻射を効率よく受光することができるので、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0046】
そして熱を伝達された熱光変換素子14は、太陽電池セル2にとって発電に適した波長の輻射光を輻射するのであるが、太陽電池セル2は、その輻射光を受光して発電することができるため、高い光電変換効率で発電することができる。その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0047】
なお、集光レンズ3は、公知のものを用いてよい。本例では凸面レンズ状のレンズを用いており、典型的にはたとえば直径100〜300mm程度のレンズを用いる。しかし、熱光発電機が大きくなれば、集光レンズ3も大きくしてよい。
【0048】
〔第二実施形態〕
つぎに、図4に基づいて、本発明の第二実施形態に係る熱光発電機について説明する。
【0049】
本実施形態に係る熱光発電機は、上記第一実施形態の熱光発電機が、真空容器の内部に光を反射する光反射体7を有する真空容器5内に配置された構成である。以下、第一実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0050】
真空容器5は、熱輻射光源1の周囲を真空にすることで熱輻射光源1からの熱伝導を抑制し保温する。また、輻射光が空気に吸収されることを防いでいる。
真空容器5の外部に設けられる集光レンズ3によって集光した光4は、真空容器5に設けられた密閉性を有しつつ光を透過可能な窓6を透過して、熱輻射光源1に照射される。
【0051】
真空容器5の内部に設けられた光反射体7は、太陽電池セルと異なる方向に発せられた輻射光を熱輻射光源1に向けて反射する。本例ではその一形態として、熱輻射光源1からの輻射光を熱輻射光源1に向けて反射する光反射体71として構成されている。
【0052】
このようにすることで、熱輻射光源1の各部から輻射される輻射光を真空容器5内部で光反射体71によって反射し、熱輻射光源1に照射して再び熱エネルギーに変換することができる。
【0053】
なお、光反射体71の反射光を熱輻射光源1向けて反射するように構成すると、熱伝導部材13は赤外線を透過可能な材料であるから、当該反射光は熱光変換素子14に照射されることになる。
つまり、熱伝導部材13として赤外線を透過可能な材料とすることで、熱光変換素子14は反射光から直接エネルギーを受け取り、再び輻射光へ変換できる。その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0054】
ここで、光反射体71の具体的な配置例を説明する。
熱輻射光源1からみて太陽電池セル2と反対側に光反射体71を配置すると熱輻射光源1からみて太陽電池セル2と反対側に輻射された輻射光を再び熱輻射光源1で熱エネルギーに変換できるため、エネルギーのロスを減らすことができる。その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0055】
図2では光反射体71は、熱輻射光源1と窓6との間に、光反射体71の反射面を熱輻射光源1に向けて空間を介して設けられている。また光反射体71は、光4が吸収体11に照射可能となるように、光4の光路を確保すべく中心部に開口部を有している。本実施形態では特に、光反射体71を熱輻射光源1よりも大きなドーナツ形状とした例を例示している。
【0056】
さらに本実施形態では、熱輻射光源1からの輻射光を受光する太陽電池セル2の受光面の反対面に、太陽電池セル2を透過した輻射光である透過光を熱光変換素子14に向けて反射する光反射体72を備えている。
【0057】
このようにすると、太陽電池セル2が受光した輻射光のうち、太陽電池セル2が電気に変換せず太陽電池セル2を透過した透過光を光反射体72が反射し、反射光として熱光変換素子14に再び照射することができる。そして当該反射光を受光した熱光変換素子14は、熱伝導部材13を経て伝導される熱と受光した透過光とで加熱される。言い換えると、熱光変換素子14は、反射光として受光した透過光を熱エネルギーに再度変換した後、ふたたび輻射光へと変換する。このようにすることで、エネルギーのロスを減らし、その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0058】
光反射体72は太陽電池セル2よりもやや大きく構成するとよい。
【0059】
このように構成することで、太陽電池セル2が電気に変換せず太陽電池セル2を透過した透過光の全てを反射することができるので、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0060】
ここで光反射体7は、光を反射するものであればよい。特に好適なものとしては、反射面の材質が金、銀、アルミニウム製であって、鏡面にその材質が露出したものであるとよい。
【0061】
さらに本実施形態では、太陽電池セル2と熱交換可能に接続する冷却機構9を、輻射光を受光する前記太陽電池セル2の受光面の反対面に設けている。
【0062】
このようにすることで、太陽電池セル2を冷却することができ、太陽電池セル2を発電に適した温度で使用することができる。その結果、太陽電池セル2の光電変換効率を高く維持することができる。
【0063】
補足すると、太陽電池セル2に照射された輻射光は、その一部が電気に変換され、多くは太陽電池セル2を透過し、残りの一部は太陽電池セル2の温度を上昇させる熱エネルギーに変わるため、発電中の太陽電池セル2の温度は通常は上昇する。特に真空容器5の内部では空気を介した熱伝導が抑制され太陽電池セル2はその温度が上昇しやすい環境にある。
しかし太陽電池セル2と熱交換可能に接続する冷却機構9を設けることで、太陽電池セル2を冷却することができ、太陽電池セル2を発電に適した温度で使用することができる。その結果、太陽電池セル2の光電変換効率を高く維持することができる。
【0064】
このとき、冷却機構9の太陽電池セル2との接続面は、太陽電池セル2よりもやや大きく構成するとよい。
【0065】
このように構成することで、太陽電池セル2を確実に冷却できるので、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0066】
冷却機構9は、冷やしすぎるとエネルギーロスにつながるし、適度に冷やさなければ太陽電池セル2の光電変換効率が低下する。概ね0〜100℃に調整するが、典型的には25℃程度に保つ。
【0067】
冷却機構9は、本実施形態では冷媒として冷却水で冷却しているが、冷却の媒体は水に限られない。水以外ではたとえばエタノールやエチレングリコールでもよく、いわゆる不凍液を用いることもできる。また、ヒートポンプなどの方法で冷却することもできる。冷却できればその方法は問わない。
【0068】
さらに本実施形態では、冷却機構9は光反射体72を介して接続している。そして、太陽電池セル2と光反射体72とはそれぞれ密接している。また、光反射体72と冷却機構9とはそれぞれ密接している。
【0069】
このように構成することで、冷却機構9は光反射体72をコンパクトに構成することができる。
【0070】
冷却機構9が光反射体72を介して接続されるとき、冷却機構9は光反射体72と同じか、光反射体72よりもやや大きく構成するとさらによい。
【0071】
このように構成することで、太陽電池セル2を確実に冷却できるので、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0072】
以下に、本実施形態のその他の特徴について説明を加える。
【0073】
熱輻射光源1は、真空容器5内で、熱伝導率の小さな部材で保持することが好ましい。熱伝導率が小さい部材で保持することで、熱輻射光源1の熱を、真空容器5の外部に熱伝導で逃がしてしまうことを抑制できる。
【0074】
本実施形態では、熱輻射光源1は、真空容器5の内部で、熱伝導率を小さく構成された支持体である支持体8にて支持される。具体的には支柱となる少なくとも一対の支柱81を経て、支柱81で張架した金属細線である金属細線82で保持される。
【0075】
窓6は、太陽光を透過する材料で構成する。本例では、赤外線を透過可能な赤外透明ガラスを用いている。
窓6の形状は本例では平板としている。窓6のその他の形状としては、たとえば吸収体11に対して集光レンズ3に突出するようなドーム状で構成してもよい。
また、窓6は、集光レンズ3と共に機能するレンズとして機能させてもよい。この場合、例えば窓6を凸面レンズ状としてもよい。
【0076】
金属細線82は細線であり、細いため熱伝導率が小さい。それ故、熱輻射光源1の熱を熱輻射光源1から熱伝導によって真空容器5を経て、その外部に熱を逃がしてしまうことを抑制できる。
【0077】
金属細線82は、細くて高温に強く、機械的強度に優れていればよいが、例えばタンタル、モリブデン、タングステン細線が好適である。金属の細線を用いる場合、その直径はたとえば150〜500μm程度である。
【0078】
以上のように構成すると、例えば図5に示すような熱光発電効率を得ることができる。図5について補足すると、図の横軸は太陽電池セル2の出力電圧を示す電圧(V)、縦軸は、本実施形態の熱光発電機に与えた光エネルギーのうち、太陽電池セル2で電気に変換できるエネルギーの割合(すなわち効率(%))を示す。つまり本実施形態の構成では、最大約60%の効率で発電できる。
【0079】
[別実施形態]
(1)上記実施形態では太陽電池セル2は、平面で構成された熱光変換素子14が輻射する輻射光を受光可能となるように熱光変換素子14の輻射面に対向する状態で、熱光変換素子14の輻射面に平行して設けたが、太陽電池セル2は熱光変換素子14が輻射する輻射光を受光可能に設けられていればよく、具体的には輻射光の太陽電池セル2への入射角が90°でなくてもよい。また、熱光変換素子14が輻射する輻射光を、別途反射体を設けて反射して輻射光の向きを転換してから太陽電池セル2で受光するような、光学機構を介して受光する構成としてもよい。
【0080】
このように構成すると、太陽電池セル2は熱光変換素子14の位置関係を、対向して平行に配置する以外の任意の位置関係とすることができるため、例えば大型の熱光発電機を構成する際には装置をコンパクト化できる余地があり好ましい。
【0081】
(2)上記実施形態では、吸収体11と、光遮断部材12との接続、および光遮断部材12と熱伝導部材13との接続、および熱伝導部材13と熱光変換素子14との接続は、密接して接続するものとしたが、接着もしくは接合して構成することもできる。つまり、効率よく熱伝導可能に接続されるならばその方法は問わない。接着や接合は、たとえば接続面で互いの材料が相互拡散するような状態で接続面が遷移的に形成されていてもよい。
【0082】
このように構成すると各々の接続面での熱伝導率が向上し、その結果、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0083】
(3)上記実施形態では、光反射体72と冷却機構9は別々の部材で構成したが、これらは一体で構成してもよい。具体的にはたとえば、冷却機構9の太陽電池セル2に対向する面を、鏡面状に磨き上げ、光反射体72として用いることもできる。
【0084】
このように構成すると、光反射体72と冷却機構9をコンパクトに構成することができる。さらに、光反射体72と冷却機構9との熱伝導率を大きく取ることができる。その結果、太陽電池セル2を効率よく冷却できるため、高い熱光発電効率で発電することができる。
【0085】
(4)上記実施形態では、集光レンズ3として凸面レンズ状のレンズを図示したが、集光レンズ3として反射板を用いてもよい。たとえば複数の反射板を組み合わせて集光する反射板の集合体として集光レンズ3とすることができる。また、パラボラ状の反射鏡で集光レンズ3を構成することもできる。レンズ同様に集光できる光学機構であればその方法は問わない。
【0086】
このように構成すると、より多くの光を集光したいとき(集光レンズ3を大型化したいとき)に、凸面状レンズを用いるよりも軽量で安価に集光レンズ3を構築することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 熱輻射光源
11 吸収体
12 光遮断部材
13 熱伝導部材
14 熱光変換素子
2 太陽電池セル
3 集光レンズ
4 光
図1
図2
図3
図4
図5