特許第6598066号(P6598066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598066
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】耐衝撃カバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/00 20060101AFI20191021BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20191021BHJP
   B62D 29/04 20060101ALI20191021BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20191021BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20191021BHJP
   F01M 11/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B62D25/00
   B60R19/04 N
   B62D29/04
   F16F7/00 J
   F16F7/12
   F01M11/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-201975(P2015-201975)
(22)【出願日】2015年10月13日
(65)【公開番号】特開2017-74810(P2017-74810A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中越 宏明
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓也
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−154298(JP,A)
【文献】 特表2014−503744(JP,A)
【文献】 特開2015−124647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/00
F01M 11/00
F02F 7/00
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両部材に締結具により締結するための締結部を備えたフランジ部と前記フランジ部の内周部に接続されカバーの役割を果たす凸状のカバー本体部とを有し、前記カバー本体部が,互いに接続された、相対的に高剛性を有する高剛性部と相対的に低剛性を有する低剛性部とを有する耐衝撃カバーであって、前記低剛性部は、前記フランジ部に、該フランジ部の内周部の周長の半分以上の領域にて接続され、前記高剛性部は、前記フランジ部に、該フランジ部の内周部の周長の半分未満の領域にて接続されており、かつ、前記高剛性部は、前記フランジ部に、車両進行方向後方側の位置で接続されており、前記低剛性部と前記高剛性部とを互いに接続している接続線の形状が、前記高剛性部の存在域に対し凹状に形成されていることを特徴とする耐衝撃カバー。
【請求項2】
前記高剛性部は、車両進行方向前方側と左右方向側の3方向の位置で前記低剛性部と接続されている、請求項に記載の耐衝撃カバー。
【請求項3】
前記低剛性部と高剛性部の剛性が、カバー本体部の肉厚で調整されている、請求項1または2に記載の耐衝撃カバー。
【請求項4】
前記低剛性部と高剛性部の剛性が、カバー本体部の外側に設けられたリブの厚みおよび/または高さで調整されている、請求項1〜のいずれかに記載の耐衝撃カバー。
【請求項5】
前記低剛性部は、前記高剛性部よりも剛性の低い範囲で剛性分布を有している、請求項1〜のいずれかに記載の耐衝撃カバー。
【請求項6】
前記カバー本体部における前記フランジ部からの高さは、車両進行方向後方側部位より車両進行方向前方側部位の方が低い、請求項1〜のいずれかに記載の耐衝撃カバー。
【請求項7】
全体が一体に成形されている、請求項1〜のいずれかに記載の耐衝撃カバー。
【請求項8】
繊維強化複合材料で構成されている、請求項1〜のいずれかに記載の耐衝撃カバー。
【請求項9】
炭素繊維強化複合材料で構成されている、請求項に記載の耐衝撃カバー。
【請求項10】
ガラス繊維強化複合材料で構成されている、請求項に記載の耐衝撃カバー。
【請求項11】
樹脂で構成されている、請求項1〜のいずれかに記載の耐衝撃カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両部材に締結具により締結するための締結部を備えたフランジ部と該フランジ部の内周部に接続されカバーの役割を果たす凸状のカバー本体部とを有する耐衝撃カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
締結部を備えたフランジ部を有する耐衝撃カバーは各種分野で使用されており、とくに車両部材に締結される耐衝撃カバーでは、人や飛来物、ガードレールや電柱、縁石等との衝突の際に表面が破断し内部が露出することがないように設計するために、衝突が想定される部分と締結部周りの構造に工夫が必要となることが多い。例えば、上記のような耐衝撃カバーを含めて車両用の各種構造体においては、車両の軽量化のため、衝撃吸収部材など各種車両用部品の樹脂や繊維強化複合材料への置き換えが検討されている。このような素材からなる構造体、締結部やその周囲部を補強するためには、一般的にリブ構造を設けたり、肉厚を上げたりすることで剛性を上げる設計をすることが多い。
【0003】
しかし、ガードレールや電柱、縁石等の地面に固定されている対象物との衝突時には、車両のみが動くことになるため、衝突している耐衝撃カバーのみで車両の衝撃力をすべて受ける必要がある。さらに、点荷重のような局所的な荷重がかかる条件の場合、衝突している部品の一部が変形する変形モードとなりやすく、必ずしも締結部周りを補強するだけでは構造体の破断の抑制には十分でない場合がある。
【0004】
締結部周りの補強を強化して破断を抑制する場合、リブ厚みやカバー本体部の厚みを上げることで締結部周りの剛性を上げて解決するものもあるが、成形上の必要条件や他の制約条件から設計が困難な場合がある。また、剛性を上げる場合は、ほとんどの場合重量増加が生じるので、軽量化効果が小さくなる。
【0005】
一般的に、上記のような締結部を有する構造体の構造は各種知られている。例えば特許文献1には、衝突時に車体の損傷を防ぐために、エネルギー吸収部材の中央部の内部側にリブ構造を設け剛性を上げることで軽量化やエネルギー吸収性などの利点を損なわずに補強する構造が開示されている。しかし、この補強構造は、衝撃を受ける面とは反対側の部材内部側の面に補強リブ構造を設け、衝撃力をその補強リブ構造が受けるために、補強リブがカバー内部に存在する部品に接触する必要がある。そのため、補強リブが接触する相手側の部品の設計にも工夫が必要になる。また、衝撃吸収カバーの内部側の空間が自由に使えないため、カバーとしての利点が小さくなる。さらに、特許文献1では材料がアルミ合金とされており、金属に限定されている。
【0006】
また、特許文献2には、車体の骨格部材に対しヘッドランプなどの車両部品を支持させる樹脂製の支持ブラケットを設けた車両衝突時の緩衝構造が開示されている。しかし、この補強構造では、締結部近くの支持ブラケットを意図的に破断しやすくすることで、衝突された側と周辺部品の損傷を緩和することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−225763号公報
【特許文献2】特許5737717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような従来技術には以下のような問題点が残されている。特許文献1では、カバーの内側に補強リブを設置するため、衝突が想定される部分の補強構造は提案されているが、締結部周りの補強は考慮されていない。したがって、内部の部品が露出するような、あるいはカバー内部に液体が存在する場合にその液体の漏洩を招くような、カバーの破損を防止するには、不十分となるおそれがある。
【0009】
また、特許文献2では、締結部近くの支持ブラケットを意図的に破断しやすくすることで、衝突された側と周辺部品の損傷を緩和することとしている。通常、耐衝撃カバーは、表面が破断し内部が露出しないように設計する必要がある。したがって、特許文献2の技術を応用しても、カバー本体が破壊されて内部が露出してしまう事態が生じるため、破断せずにカバー内部の部品等を守るための耐衝撃カバーには適していない。
【0010】
このように、これらの従来技術は、衝突時に表面が破断し内部が露出しないことを目的とする耐衝撃カバーに適用出来るものではなかった。
【0011】
そこで本発明の課題は、上述した従来技術における問題点に鑑み、とくに地面に固定されている対象物との点接触等を想定した衝突時に、表面が破断し内部が露出することを適切に防止できるようにした、フランジ部を有する耐衝撃カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る耐衝撃カバーは、車両部材に締結具により締結するための締結部を備えたフランジ部と前記フランジ部の内周部に接続されカバーの役割を果たす凸状のカバー本体部とを有し、前記カバー本体部が,互いに接続された、相対的に高剛性を有する高剛性部と相対的に低剛性を有する低剛性部とを有する耐衝撃カバーであって、前記低剛性部は、前記フランジ部に、該フランジ部の内周部の周長の半分以上の領域にて接続され、前記高剛性部は、前記フランジ部に、該フランジ部の内周部の周長の半分未満の領域にて接続されており、かつ、前記低剛性部と前記高剛性部とを互いに接続している接続線の形状が、前記高剛性部の存在域に対し凹状に形成されていることを特徴とするものからなる。
【0013】
このような本発明に係る耐衝撃カバーにおいては、フランジ部の内周部に接続されるカバー本体部は,互いに接続された、相対的に高剛性の(つまり、より変形し難い)高剛性部と相対的に低剛性の(つまり、より変形し易い)低剛性部とを有しており、高剛性部はフランジ部に該フランジ部の内周部の周長の半分未満の領域にて(つまり、フランジ部の内周部の周長のより短い領域にて)接続されており、低剛性部はフランジ部に該フランジ部の内周部の周長の半分以上の領域にて(つまり、フランジ部の内周部の周長のより長い領域にて)接続されているので、カバー本体部全体としては、高剛性部を介して適度に高剛性に維持された状態で、かつ、低剛性部を介して適度に低剛性に維持された状態で高剛性部とは別の接続領域にて、車両部材に締結されるフランジ部に対して接続されることになる。その結果、フランジ部に接続されたカバー本体部は、部位に応じて配置された、相対的に高剛性に維持された高剛性部と相対的に低剛性に維持された低剛性部とを併せ持つことが可能になる。この併せ持つ高剛性部と低剛性部との存在領域の振り分けを適切に行うために、低剛性部と高剛性部とを互いに接続している接続線の形状が、高剛性部の存在域に対し凹状に形成されるように、高剛性部と低剛性部との存在領域を決めることにより、フランジ部に接続されたカバー本体部に、とくに地面に固定されている対象物と衝突したときに容易には破損しないだけの高剛性部と、高剛性部が衝撃等を受けたときに自身の変形や変位により適切に衝撃エネルギーを吸収してカバー本体部の破損を防止することが可能な(換言すれば、カバー本体部全体として衝撃等を受けるためにふんばりすぎず、適度に変形できるようにした)低剛性部とを共に形成することが可能になり、カバー本体部全体にわたって、表面が破断することによる内部の露出等を防止し得る、目標とする性能を付与することが可能になる。
【0014】
上記本発明に係る耐衝撃カバーにおいては、上記高剛性部は、上記フランジ部に、車両進行方向後方側の位置で接続されていることが好ましい。高剛性部がフランジ部に車両進行方向後方側の位置で接続されていれば、その高剛性部に凹状の接続線を介して接続される低剛性部は相対的に車両進行方向前方側の位置で接続されていることになり、地面に固定されている対象物と衝突したときに、まず車両進行方向前方側の位置で接続されている低剛性部で適度に衝撃エネルギーを吸収し、車両進行方向後方側の位置で接続されている高剛性部でカバー本体部に破損が生じないようにふんばることが可能になり、より望ましい目標性能を発揮させることが可能になる。
【0015】
また、上記高剛性部は、車両進行方向前方側と左右方向側の3方向の位置で上記低剛性部と接続されていることが好ましい。このように構成すれば、車両進行時に、実質的のどの方向から衝撃が加わっても、上記のような,まず低剛性部で適度に衝撃エネルギーを吸収させ、高剛性部でカバー本体部に破損が生じないようにふんばらせるという、望ましい目標性能を発揮させることが可能になる。
【0016】
上述の如く、上記低剛性部と高剛性部には相対的な剛性差が付与されているが、この剛性差は、カバー本体部の肉厚で調整することができる。あるいは、肉厚による調整とは別に、または、肉厚による調整とともに、低剛性部と高剛性部の剛性を、カバー本体部の外側に設けられたリブの厚みおよび/または高さで調整することもできる。さらに、これらに加えて、リブの配置密度で剛性差を調整することも可能である。
【0017】
また、上記低剛性部は、上記高剛性部よりも剛性の低い範囲で剛性分布を有していてもよい。この剛性分布は、剛性の段階的変化によるもの、連続的変化によるもののいずれでもよい。適切な剛性分布を持たせることにより、低剛性部に変形が生じる際の挙動をより好ましいものとすることが可能になる。上記高剛性部についても、同様に、低剛性部よりも剛性の高い範囲で剛性分布を有していてもよい。
【0018】
また、上記カバー本体部の凸状の形状は、とくに限定されないが、例えば、本耐衝撃カバーの設置場所によっては、上記カバー本体部における上記フランジ部からの高さについて、車両進行方向後方側部位より車両進行方向前方側部位の方が低い形態が好ましい場合がある。このように構成すれば、地面に固定されている対象物がカバー本体部に接近してきた際に、より滑らかにカバー本体部に接触させることが可能になり、衝撃エネルギーの吸収性能、カバー本体部の破損防止性能の一層の向上をはかることが可能になる。
【0019】
上記本発明に係る耐衝撃カバーは、その全体が一体に成形されているものから構成することもできるし、例えば、カバー本体部とフランジ部を別に成形し、両者を接合したものから構成することもできる。
【0020】
また、本発明に係る耐衝撃カバーは、その全体を、あるいは少なくとも一部を、繊維強化複合材料で構成することができる。繊維強化複合材料で構成することにより、耐衝撃カバーに高い剛性、強度を持たせつつ、金属製に比べ軽量化が可能になる。
【0021】
繊維強化複合材料で構成する場合、高い剛性、強度を持たせたい場合には、炭素繊維強化複合材料で構成されていることが好ましく、適度に高い剛性、強度を持たせつつより安価な製造コストが望まれる場合には、ガラス繊維強化複合材料で構成されていることが好ましい。勿論、その他の強化繊維を含む繊維強化複合材料で構成されてもよく、さらに、複数種の強化繊維を含む繊維強化複合材料で構成されてもよい。
【0022】
また、本発明に係る耐衝撃カバーは、その全体を、あるいは少なくとも一部を、樹脂で構成することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る耐衝撃カバーによれば、とくに地面に固定されている対象物との点接触等を想定した衝突時に、表面が破断し内部が露出することを適切に防止できるようにした、フランジ部を有する耐衝撃カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両の進行方向を示す車両前部の概略構成図である。
図2】本発明を適用し、カバー本体部の肉厚のみで高剛性部と低剛性部を設定した、本発明の一実施形態に係る耐衝撃カバーの斜視図である。
図3図2の耐衝撃カバーを真上から見た平面図である。
図4】本発明を適用し、カバー本体部の肉厚を一定としてリブの高さのみで高剛性部と低剛性部を設定した、本発明の一実施形態に係る耐衝撃カバーの斜視図である。
図5】本発明を適用し、カバー本体部の肉厚のみで高剛性部と低剛性部を設定し、高剛性部に傾斜がついている場合の本発明の一実施形態に係る耐衝撃カバーの斜視図である。
図6図5の耐衝撃カバーを真上から見た平面図である。
図7】本発明の別の実施形態に係る耐衝撃カバーの斜視図である。
図8図7の耐衝撃カバーを真上から見た場合のリブを省略した平面図である。
図9図7の耐衝撃カバーを別の角度から見た場合の斜視図である。
図10図7の耐衝撃カバーの変形例に関し、高剛性部に傾斜がついている場合の耐衝撃カバーの斜視図である。
図11図10の耐衝撃カバーを真上から見た場合のリブを省略した平面図である。
図12図10の耐衝撃カバーを別の角度から見た場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、車両100の進行方向101と車両本体102を示している。この進行方向101を基準として、車両100の要求部位に、図2図3に示すような本発明の一実施形態に係る耐衝撃カバー200が取り付けられる。耐衝撃カバー200は、車両部材に(例えば、図1に示したような車両本体102のいずれかの部位に)締結具により締結するための締結部202aを備えたフランジ部202と、フランジ部202の内周部に接続されカバーの役割を果たす凸状のカバー本体部としてのカバー本体部1(203)、カバー本体部2(204)、カバー本体部3(205)を有している。これらカバー本体部1(203)〜カバー本体部3(205)は肉厚が互いに異なっており、カバー本体部1(203)が最も薄く、カバー本体部2(204)、カバー本体部3(205)の順で厚くなっている。これらカバー本体部には、相対的に高剛性を有する高剛性部と、カバー本体部内で相対的に低剛性を有する低剛性部があり、本実施形態に係る耐衝撃カバー200では、カバー本体部の肉厚で調整している。高剛性部はカバー本体部3(205)の部分からなり、低剛性部はカバー本体部1(203)、カバー本体部2(204)からなっており、低剛性部は高剛性部よりも剛性の低い範囲でカバー本体部1(203)とカバー本体部2(204)の剛性差による剛性分布を有している。ただし、この耐衝撃カバー200では、低剛性部に上記剛性分布を有しているが、低剛性部全体にわたって一定の剛性で構成してもよい。
【0026】
低剛性部(カバー本体部1(203)、カバー本体部2(204))は、フランジ部202に、該フランジ部202の内周部の周長の半分以上の領域で接続されている。また、高剛性部(カバー本体部3(205))は、車両進行方向後方に位置でフランジ部202と接続されており、フランジ部202に、該フランジ部202の内周部の周長の少なくとも半分未満の領域で接続されている。加えて、とくに図3に示すように、低剛性部(カバー本体部1(203)、カバー本体部2(204))は、高剛性部(カバー本体部3(205))との接続線206の形状が、高剛性部(カバー本体部3(205))の存在域に対して凹状に形成されており、高剛性部(カバー本体部3(205))は、低剛性部(カバー本体部1(203)、カバー本体部2(204))とのとの接続線206の形状が、低剛性部の存在域に対して凸状にそれぞれ湾曲して形成されており、本実施形態では、耐衝撃カバー200の全体が一体に成形されている。また、本実施形態では、耐衝撃カバー200は、繊維強化複合材料で構成されており、炭素繊維強化複合材料またはガラス繊維強化複合材料で構成されている。
【0027】
上記のような耐衝撃カバー200においては、進行方向201上にガードレールや電柱、縁石等の地面に固定されている障害物が存在し接触する場合、車両のみが動き、障害物が動かないため、集中荷重のような局所的な荷重がかかり、局所変形が生じ、カバー本体部が破断しようとする。しかし、そのような障害物が例えば高剛性部(カバー本体部3(205))に接触した場合、障害物からの集中荷重による耐衝撃カバー200の変形は、より剛性の低い低剛性部(カバー本体部1(203)、カバー本体部2(204))が変形することにより局所的な変形とはならず、障害物からの集中荷重(衝撃エネルギー)が円滑に吸収されて、効率的に破断(カバー表面の破断)が回避されることになる。
【0028】
また本実施形態では、高剛性部(カバー本体部3(205))は、フランジ部202と接続されている位置が車両進行方向後方側の位置に設定されており、さらに、高剛性部(カバー本体部3(205))が低剛性部(カバー本体部1(203)、カバー本体部2(204))と接続する位置が車両進行方向前方側と左右方向の3方向の位置とされている。これは、地面に固定されている障害物は車両の進行方向からぶつかることが多く、前方側の部分を低剛性とすることで低剛性部の変形量が大きくなり、より効率的に衝撃のエネルギー吸収が可能となるためである。
【0029】
図4は、別の実施形態に係る耐衝撃カバー300を示している。本実施形態では、フランジ部302の内周部に接続されるカバー本体部は、車両進行方向301後方側の位置に接続されている高剛性部303と、車両進行方向前方側の位置に接続されている低剛性部304から構成されているが、高剛性部303と低剛性部304の剛性、とくに剛性差をリブの高さによって設定したものである。高剛性部303に設けられたリブ1(305)の高さは、低剛性部304に設けられたリブ2(306)よりも低く設定されている。このように、リブの構成を変えることで剛性の変化をつけることができる。
【0030】
また、図5および図6は、さらに別の実施形態に係る耐衝撃カバー400を示している。本実施形態では、フランジ部402の内周部に接続されるカバー本体部は、車両進行方向401後方側の位置に接続されている高剛性部(カバー本体部3(405)、カバー本体部4(406))と、車両進行方向前方側の位置に接続されている低剛性部(カバー本体部1(403)、カバー本体部2(404))から構成されているが、カバー本体部のフランジ部402からの高さが車両進行方向後方より車両進行方向前方の方を低く設定されており、図示例では、カバー本体部4(406)からカバー本体部1(403)に向かって前方部分ほどテーパー状に順に低くなるように設定されている。これは、前方部分から障害物に衝突するため、徐々に荷重が加わるようにすることで、より確実に破断の回避を狙ったものである。
【0031】
また、図7図9は、さらに別の実施形態に係る耐衝撃カバー500を示している。本実施形態では、フランジ部502の内周部に接続されるカバー本体部には、部位に応じてリブ1(503)とリブ2(504)が設けられており、カバー本体部は、車両進行方向501後方側の位置に接続されている高剛性部(カバー本体部2(506)、カバー本体部3(507))と、車両進行方向前方側の位置に接続されている低剛性部(カバー本体部1(505))から構成されている。このカバー本体部(カバー本体部1(505)、カバー本体部2(506)、カバー本体部3(507))のフランジ部502からの高さを車両進行方向後方側より車両進行方向前方側の方が低く設定されている。このように、リブ付きカバー本体部についても、図5および図6に示した実施形態と同様に、前方部分ほどテーパー状に順に低くなるように設定されることにより、前方部分から障害物との衝突による荷重が徐々に加わるようにすることで、より確実に破断の回避をはかることができる。
【0032】
図10図12は、図7図9に示した実施形態の変形例として、さらに別の実施形態に係る耐衝撃カバー600を示している。本実施形態では、図7図9に示した実施形態と同様に、フランジ部602の内周部に接続されるカバー本体部には、部位に応じてリブ1(603)とリブ2(604)が設けられており、カバー本体部は、車両進行方向601後方側の位置に接続されている高剛性部(カバー本体部2(606)、カバー本体部3(607))と、車両進行方向前方側の位置に接続されている低剛性部(カバー本体部1(605))から構成されている。そして、図7図9に示した実施形態に比べ、カバー本体部の車両進行方向後方側の部分の高さが若干低く設定されており、高剛性部におけるカバー本体部3(607)部分が後方に向けてスロープ状に下がる形状に形成されている。このように高剛性部(カバー本体部3(607))には、スロープを付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車両部材に締結具により締結するための締結部を備えたフランジ部を有するあらゆる耐衝撃カバーに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0034】
100 車両
101 車両進行方向
102 車両本体
200 耐衝撃カバー
201 車両進行方向
202 フランジ部
202a 締結部
203 カバー本体部1
204 カバー本体部2
205 カバー本体部3
206 接続線
300 耐衝撃カバー
301 車両進行方向
302 フランジ部
303 高剛性部
304 低剛性部
305 リブ1
306 リブ2
400 耐衝撃カバー
401 車両進行方向
402 フランジ部
403 カバー本体部1
404 カバー本体部2
405 カバー本体部3
406 カバー本体部4
500 耐衝撃カバー
501 車両進行方向
502 フランジ部
503 リブ1
504 リブ2
505 カバー本体部1
506 カバー本体部2
507 カバー本体部3
600 フランジを有する耐衝撃カバー
601 車両進行方向
602 フランジ部
603 リブ1
604 リブ2
605 カバー本体部1
606 カバー本体部2
607 カバー本体部3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12