特許第6598072号(P6598072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンフォニアテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6598072-シャシダイナモメータ用防音装置 図000002
  • 特許6598072-シャシダイナモメータ用防音装置 図000003
  • 特許6598072-シャシダイナモメータ用防音装置 図000004
  • 特許6598072-シャシダイナモメータ用防音装置 図000005
  • 特許6598072-シャシダイナモメータ用防音装置 図000006
  • 特許6598072-シャシダイナモメータ用防音装置 図000007
  • 特許6598072-シャシダイナモメータ用防音装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598072
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】シャシダイナモメータ用防音装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20191021BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G01M17/007 A
   G10K11/16
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-70653(P2016-70653)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181360(P2017-181360A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘之
(72)【発明者】
【氏名】若林 宏毅
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−082903(JP,U)
【文献】 特開2007−219359(JP,A)
【文献】 特開2003−263171(JP,A)
【文献】 特開2007−277791(JP,A)
【文献】 特開平07−260853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 − 17/10
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験車両の駆動輪を載せて回転するローラを、それの外周面が床面に形成の開口に臨むように設け、前記ローラの外周面と前記開口において該外周面に対向する開口縁部との間に形成される隙間を埋めるカバー部材を、該開口縁部から該ローラの外周面に向けて突出するように設け、前記カバー部材は、前記ローラの回転によって発生する気流を通過させる通過部と該気流を制限する通過制限部とが前記開口縁部に沿う方向で交互に存在するように構成されていることを特徴とするシャシダイナモメータ用防音装置。
【請求項2】
前記開口縁部から前記ローラ側へ突出する前記カバー部材のローラ側端縁の突出度合いを、前記開口縁部に沿う方向で異なるように構成し、前記カバー部材の突出度合いの大きいローラ側端縁が前記通過制限部を構成し、前記カバー部材の突出度合いの小さいローラ側端縁が前記通過部を構成していることを特徴とする請求項1に記載のシャシダイナモメータ用防音装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、単一の線材を複数本備え、該複数本の線材を前記開口縁部に沿う方向で粗密が形成されるように配置し、前記粗が形成されることにより前記通過部を構成し、前記密が形成されることにより前記通過制限部を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャシダイナモメータ用防音装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、単一の線材の複数本を束にした状態の集合体を多数備え、前記各集合体の断面形状が、略円形に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャシダイナモメータ用防音装置。
【請求項5】
前記各単一の線材の断面形状が、略円形に構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のシャシダイナモメータ用防音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシダイナモメータで車両の試験を行う際に、車両の駆動輪の回転に伴いローラが回転することにより発生する騒音を低減するためのシャシダイナモメータ用防音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記シャシダイナモメータ用防音装置としては、駆動輪の横側に配置される左右一対の防音装置が既に提案されている。この防音装置は、位置変更自在な可動式に構成されており、試験終了後の不要時には、上方へ跳ね上げた上昇位置に移動させ、試験時には、車両の駆動輪の周囲を覆うように駆動輪の横側に下降した下降位置に移動させる。そして、この防音装置は、内部に吸音材を備えており、車両の駆動輪の回転に伴いローラが回転することにより発生する騒音を吸音材で吸収することで、試験中に発生する騒音を低減することができるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−24430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記防音装置を備えたシャシダイナモメータにおいては、試験中に発生する騒音を低減することができるものの、以下の不都合が発生している。
【0005】
かかるシャシダイナモメータでは、車両の駆動輪の回転に伴い回転するローラが、床面に形成の開口に外周面が臨むように床下に設置される。このとき、ローラの外周面とこれに対向する開口の開口縁部との間に隙間が発生してしまう。この隙間を通してボルトやナット等の部品が床下に落下してしまう不都合がある。しかし、この不都合に対して何ら対策が取られておらず、早期改善が要望されている。
【0006】
そこで本発明は、ローラの外周面と開口縁部との間の隙間から部品が床下に落下することを抑制することができながらも、試験中に発生する騒音を低減することができるシャシダイナモメータ用防音装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャシダイナモメータ用防音装置は、被試験車両の駆動輪を載せて回転するローラを、それの外周面が床面に形成の開口に臨むように設け、前記ローラの外周面と前記開口において該外周面に対向する開口縁部との間に形成される隙間を埋めるカバー部材を、該開口縁部から該ローラの外周面に向けて突出するように設け、前記カバー部材は、前記ローラの回転によって発生する気流を通過させる通過部と該気流を制限する通過制限部とが前記開口縁部に沿う方向で交互に存在するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ローラの外周面と開口縁部との間に形成される隙間を埋めるカバー部材を、開口縁部からローラの外周面に向けて突出するように設けることによって、隙間を通して床下に落下しようとする部品がカバー部材に受け止められて、床下に落下することを抑制することができる。受け止められた部品は、試験を終了した後又は試験を中断してから、直ちに掴んで所望の場所へ移動することができる。さらに、前記ローラの回転によって、ローラの外周付近に発生する速い流れの気流がローラの外周面に近接して配置される物体に衝突することで渦流又は乱流が発生し、この渦流又は乱流の変化によって気圧の変動が生じることで騒音が発生するため、気流を通過させる通過部と気流を制限する通過制限部とが開口縁部に沿う方向で交互に存在するように構成された前記カバー部材を設けることで、空気とカバー部材の境界が曖昧になる、即ち空気と物体の中間となる抵抗部材としてカバー部材が働くことで渦流又は乱流が抑制される。これにより、渦流又は乱流による気圧の変動が緩和され、騒音を低減することができる。
【0009】
また、本発明のシャシダイナモメータ用防音装置は、前記開口縁部から前記ローラ側へ突出する前記カバー部材のローラ側端縁の突出度合いを、前記開口縁部に沿う方向で異なるように構成し、前記カバー部材の突出度合いの大きいローラ側端縁が前記通過制限部を構成し、前記カバー部材の突出度合いの小さいローラ側端縁が前記通過部を構成していてもよい。
【0010】
上記構成によれば、部材のローラ側端縁のローラ側への突出度合いを開口縁部に沿う方向で異ならせるだけで、通過部と通過制限部とを形成することができ、試験中に発生する騒音を効果的に低減することができる。
【0011】
また、本発明のシャシダイナモメータ用防音装置は、前記カバー部材が、単一の線材を複数本備え、該複数本の線材を前記開口縁部に沿う方向で粗密が形成されるように配置し、前記粗が形成されることにより前記通過部を構成し、前記密が形成されることにより前記通過制限部を構成していてもよい。
【0012】
上記構成によれば、単一の複数本の線材を、開口縁部に沿う方向で粗密になるように配置することで、通過部と通過制限部とを形成することができ、試験中に発生する騒音を効果的に低減することができる。
【0013】
また、本発明のシャシダイナモメータ用防音装置は、前記カバー部材は、単一の線材の複数本を束にした状態の集合体を多数備え、前記各集合体の断面形状が、略円形に構成されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、集合体に当たった気流は、略円形に構成された集合体に沿ってスムーズに回り込みながら、移動することができるので、騒音をより一層効果的に低減することができる。
【0015】
また、本発明のシャシダイナモメータ用防音装置は、前記各単一の線材の断面形状が、略円形に構成されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、線材に当たった気流が略円形に構成された線材に沿ってスムーズに回り込みながら、移動することができるので、騒音をより一層効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隙間を埋めるカバー部材を、騒音を低減する部材に構成することによって、ローラの外周面と開口縁部との間の隙間から部品が床下に落下することを抑制することができながらも、試験中に発生する騒音を低減することができるシャシダイナモメータ用防音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の防音装置を備えたシャシダイナモメータの縦断側面図である。
図2】同シャシダイナモメータの縦断正面図である。
図3】(a)は防音装置の取付部を示す縦断側面図、(b)は防音装置を下から見た底面図、(c)は防音装置を前後方向から見た正面図である。
図4】(a)は他の防音装置の底面図、(b)は他の防音装置の正面図である。
図5】(a)は他の防音装置の斜視図、(b)は防音装置の一部を拡大した正面図、(c)は図5の(b)の防音装置の一部を変形した他の形状の防音装置の正面図である。
図6図5(b)の防音装置で渦度のシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図7】(a)は、一対のローラに車の前輪を載置した状態を示す平面図、(b)は騒音レベルを実験した時のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に、本発明の防音装置1を備えたシャシダイナモメータMを示している。このシャシダイナモメータMは、ピットP内のベース部材BにダイナモユニットDUを配置して構成される。ダイナモユニットDUは、被試験車両Tの駆動輪である左右一対の前輪2,2を載せて回転する左右一対の円柱状のローラ3,3を備えている。左右一対のローラ3,3の間隔は、一対の前輪2,2を載せることができる間隔に設定されている。ローラ3,3は、前輪2,2よりも幅広な左右幅を有し、かつ、大きな直径を有するように構成されている。
【0020】
左右一対のローラ3,3の回転中心には、一体回転する回転軸4,5を備え、それら回転軸4,5は、ローラ3,3から左右方向両外側に突出され、ローラ3,3の両側に配置された左右のブラケット6,7に回転自在に支持され、両回転軸4,5が、第1カップリング8を介して一体回転するように連結されている。また、図2において、左側の回転軸4の左側端が第2カップリング9を介してダイナモ(図示せず)の出力軸(図示せず)に連結されており、ダイナモの駆動力が、第2のカップリング9を介して左側の回転軸4に伝達されるとともに、第1カップリング8を介して右側の回転軸5にも伝達されるようになっている。また、左右一対のローラ3,3を、それの上端面が床面を構成するピットカバー10に形成の開口11に臨むように設けている。開口11は、被試験車両Tの前後方向に長い長方形状に構成されている。尚、左右一対のローラ3,3の上端面は、ピットカバー10の上面よりも少し高い位置にあってもよいし、ピットカバー10の上面と同一高さにあってもよいし、ピットカバー10の上面よりも少し低い位置にあってもよい。
【0021】
左右一対のローラ3,3に一対の前輪2,2を載せて、前輪2,2を駆動させると、ダイナモにより、ローラ3,3に現実の道路の走行抵抗に対応する回転抵抗が付与されることにより、ローラ3,3が模擬道路として機能する。これにより、室内において被試験車両Tの動的試験を行うことができる。ここでは、前輪駆動車の試験を行う場合を示しているが、後輪駆動車の試験を行うようにしてもよいし、四輪駆動車の場合には、前輪用の一対のローラと後輪用の一対のローラとを備えて試験を行うことになる。また、単一のローラを備えて、二輪車の試験を行うこともできる。
【0022】
図1及び図3(a)に示すように、ローラ3,3の外周面は、上端面から回転方向下手側及び回転方向上手側に向かうほど下方へ位置する構成になっているため、開口11を構成する4辺の開口縁部のうちの前後に位置する2辺の開口縁部11A,11Bとこれの直下方に対向して位置するローラ3の外周面との間に隙間SA,SBが発生する。これらの隙間SA,SBを通してボルトやナット等の部品が、ピットP内に落下することがないように、隙間SA,SBを埋めるカバー部材12を設置している。このカバー部材12は、基端部が前後に位置する2辺の開口縁部11A,11Bにボルトやビス等の止め具を用いて取り付けられ、かつ、先端部がローラ3の外周面に向けて突出している。尚、図1及び図3(a)では、一方のローラ3のみ図示している。
【0023】
ところで、ローラ3,3が高速で回転することによって、図3(a)に示すように、ローラ3,3の外周に速い流れの気流Rが発生する。この気流Rの一部が、前記カバー部材12に衝突することによりカバー部材12に沿って移動して開口縁部11A,11B付近で渦流R1が発生する。ここでは、渦流R1が発生している場合を示しているが、乱流が発生する場合もある。この渦流R1の変化によって気圧の変動を生じさせ、騒音が発生する。この騒音を低減するために、前記カバー部材12を、ブラシから構成することによって、防音装置1を構成している。このブラシは、図3(b),(c)に示すように、気流を通過させる通過部12Aと気流を制限する通過制限部12Bとが開口縁部11A,11Bに沿う方向(左右方向)で交互に存在するように構成されている。このようにカバー部材12が、通過部12Aと通過制限部12Bとを左右方向で交互に備えることによって、空気とカバー部材12の境界が曖昧になる、即ち空気と物体の中間となる抵抗部材としてカバー部材12が働くことで渦流Rが抑制される。これにより、渦流Rによる気圧の変動が緩和され、騒音を低減することができる。尚、カバー部材12のローラ3に対する姿勢を、ローラ3の径方向に対して傾斜する姿勢にすることによって、カバー部材12が気流Rの流れに対して大きな抵抗にならないようにしている。
【0024】
カバー部材12は、前後の開口縁部11A,11Bのそれぞれに固定される基台121に同一長さに構成された複数(図3(b)では19本であるが、何本でもよい)の線材122を束にした集合体123の多数を所定間隔を置いて植設して構成されている。この集合体123が、前記通過制限部12Bを構成している。尚、通過制限部12Bは、気流の通過を完全に遮断する構成であってもよいし、気流の通過を一部許容する(気流の一部を制限する)構成のいずれであってもよい。また、左右方向で隣り合う集合体123,123同士間の隙間(何も突出していない部分)が、前記通過部12Aを構成している。前記左右方向で隣り合う集合体123,123同士間の所定間隔は、部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。また、集合体123の突出端とローラ3の外周面との間隔も、部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。線材122の断面形状は、円形に構成されているが、楕円形等の略円形であってもよい。また、集合体123の断面形状が、略円形に構成されている。この集合体123に当たった気流が、略円形の集合体123に沿ってスムーズに回り込みながら、移動することができ、騒音の低減をより一層効果的に図ることができる。尚、外側に位置する線材122のうちの外周方向で隣り合う線材122,122同士間に内側に少し引っ込む凹部が発生しているが、この凹部を埋めて、集合体123の断面形状を完全な円形に形成して実施してもよい。線材122は、各種の合成樹脂や各種動物の毛であってもよいが、部品が集合体123や集合体123,123間に載った時に、集合体123が容易に変形して下方に部品が落下しないように有る程度の剛性を有する材料から構成することになる。ここでは、集合体123の外形を略円形にしているが、矩形状や楕円形あるいは多角形状にしてもよい。
【0025】
前記のように前後の開口縁部11A,11Bに、隙間SA,SBを埋めるカバー部材12,12を設けることによって、隙間SA,SBを通して床下(ピットP内)に落下しようとする部品をカバー部材12,12に受け止めることができる。受け止められた部品は、試験を終了した後又は試験を中断してから、直ちに掴んで所望の場所へ移動することができる。しかも、カバー部材12は、気流を通過させる通過部12Aと気流を制限する通過制限部12Bとが開口縁部11A,11Bに沿う方向で交互に存在するように構成されているので、ローラ3,3の回転により発生する気流の流速変化を緩やかにするとともに気流が開口縁部11A,11B付近で大きな渦流(又は乱流)となることを抑制することができるので、試験中にローラ3,3の回転により発生する騒音を低減することができる。
【0026】
尚、本発明に係る衝突試験装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0027】
前記実施形態では、同一の長さの複数の線材122を束にした集合体123の多数を所定間隔を置いて設けることによって、集合体123,123間のローラ側へ突出していない隙間部分で通過部12Aを構成し、かつ、ローラ側へ突出している集合体123で通過制限部12Bを構成したが、図4(a)及び図5(a)に示すように、前後2辺の開口縁部11A,11B(図5(a)では一方のみ図示している)からローラ側へ突出するカバー部材12のローラ側端縁の突出度合いを、開口縁部11A,11Bに沿う方向で異なるように構成することで、通過部12Aと通過制限部12Bとを構成してもよい。
【0028】
具体的には、図4(a)では、図3で示したブラシを構成する線材122を、長さの異なる3種類(2種類又は4種類以上でもよい)の線材122A,122B,122Cから構成している。つまり、図4(a)において、右端から順に、最も長い第1線材122A、次に第1線材122Aよりも短い長さ(第1線材122Aの約半分の長さ)の第2線材122B、次に第2線材122Bよりも短い長さ(第2線材122Bの約半分の長さ)の第3線材122Cを配置し、これら3種類の線材122A,122B,122Cを前記の順番で繰り返し配置している。第1線材122Aと第2線材122Bとの間隔と、第2線材122Bと第3線材122Cとの間隔と、第3線材122Cと第1線材122Aとの間隔とを、同一としている。また、隣り合う第1線材122A,122A間の間隔は、部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。また、第1線材122Aの突出端とローラ3の外周面との間隔も、部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。また、第1線材122Aに部品が当接しても、第1線材122Aが容易に変形して部品が下方へ落下しないように受け止めることができる剛性を有するように第1線材122Aを構成しておく必要がある。前記多数の第1線材122Aが、通過制限部12Bを構成し、第1線材122A,122A間に形成される隙間が、通過部12Aを構成している。尚、図4(a)では、3種類の線材122A,122B,122Cを示しているが、長さの異なる複数種類の丸棒や板状部材から構成することができる。
【0029】
また、図5(a),(b)では、カバー部材12を開口縁部11A,11Bに沿う方向に長い板状部材から構成し、カバー部材12の突出端部(先端部)を、開口縁部11A,11Bに沿う方向(左右方向)において山形状の隙間である通過部12Aと逆山形状の突起部である通過制限部12Bとが交互に存在する鋸歯状に構成している。通過部(隙間)12Aの先端の間隔L1を部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。また、通過制限部12Bの突出端とローラ3の外周面との間隔を部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。また、通過制限部(突起部)12Bで部品を確実に受け止めることができるように通過制限部(突起部)12Bの剛性を設定している。また、図5(c)に示すように、突起部である通過制限部12Bの先端を丸くするとともに、通過部(隙間)12Aの基端も丸くして実施することも可能である。図5(c)においても、通過部(隙間)12Aの先端の間隔L1を部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。また、通過制限部12Bの突出端とローラ3の外周面との間隔を部品がすり抜けることができない間隔(例えば5mm)にしている。また、通過制限部(突起部)12Bで部品を確実に受け止めることができるように通過制限部(突起部)12Bの剛性を設定している。尚、カバー部材12の先端部の表裏面に起毛処理を行って、気流Rの流れの急激な変化を緩和するようにすれば、渦流の発生を更に軽減することができる。また、図5(a),(b)では、鋸歯状のカバー部材12を示しているが、櫛歯状やメッシュ状のカバー部材等、どのような形状に構成してもよい。また、カバー部材12に吸音材を取り付けて、吸音効果を発揮させることにより、更に騒音の低減を図るようにしてもよい。
【0030】
図5(a),(b)で示したカバー部材12を用いて渦度(平均)のシミュレーションを行った結果をグラフにしたものを図6に示している。図5(b)の隙間12Aの長さhを10mm、20mm、30mm、40mmにした4種類のカバー部材12を用意してそれぞれを装着したときの渦度(平均)のシミュレーションを行った。隙間12Aの長さhを10mmの場合には、渦度が約9800渦度であり、隙間12Aの長さhを20mmの場合には、渦度が約7900渦度であり、隙間12Aの長さhを30mmの場合には、渦度が約7000渦度であり、隙間12Aの長さhを40mmの場合には、渦度が約6000渦度であった。この結果から、隙間12Aの長さhを長くするほど、渦度が小さくなる傾向にあることが分かる。前記カバー部材12を用いていない(騒音対策をしていない)場合、つまり隙間SA,SBを埋めるだけの通常の平板を設置している場合の渦度(平均)は、約17,000(1/sec)であり、前記カバー部材12を用いた場合の渦度(平均)の値を小さくすることができ、騒音の低減を確実に図ることができる。
【0031】
また、前記実施形態では、同一の長さの複数の線材122を束にした集合体123の多数を同一間隔で配置して通過部12Aと通過制限部12Bとを構成したが、図4(b)に示すように、多数の集合体123を所定間隔置きに配置して、密の部分を構成し、単一の線材122を所定間隔で配置して疎の部分を構成することによって、カバー部材12を、気流が通過する開口縁部11A,11Bに沿う方向(左右方向)で粗密になるように構成してもよい。このように、単一の線材122と、単一の線材122の複数本を束にした状態の集合体123とを、開口縁部11A,11Bに沿う方向で粗密になるように配置していれば、試験中に発生する騒音を効果的に低減することができる。
【0032】
また、図5(a),(b)で示したカバー部材12を装着した状態と、装着していない状態とで騒音レベルの実験した結果を、図7(b)のグラフに示した。実験は、図7(a)に示すように、被試験車両Tの左右一対の前輪2,2をローラ3,3に載置した状態で所定回転数まで回転させた時の騒音レベルをB,C,D,Eの4箇所で騒音計により測定し、その騒音値を図7(b)に書き込んで、折れ線グラフにした。図7(b)の破線13がカバー部材12を装着していない未対策の場合の結果を示し、図7(b)の実線14がカバー部材12を装着した場合の結果を示している。図7(b)のグラフから、B〜Eの4箇所のいずれの位置においても、カバー部材12を装着した場合の騒音レベルが、カバー部材12を装着していない場合の騒音レベルよりも低い値になっており、カバー部材12による騒音低減効果があることが明らかである。
【0033】
また、前記実施形態では、前後の2辺の開口縁部11A,11Bのそれぞれにのみカバー部材12を設けたが、残る左右の2辺の開口縁部のそれぞれにもカバー部材12を設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…防音装置、2…前輪(駆動輪)、3…ローラ、4,5…回転軸、6,7…ブラケット、8…第1カップリング、9…第2カップリング、10…ピットカバー(床面)、11…開口、11A,11B…開口縁部、12…カバー部材、12A…通過部(隙間)、12B…通過制限部、13…破線、14…実線、121…基台、122…線材、122A,122B,122C…第1〜第3線材、123…集合体、DU…ダイナモユニット、B…ベース部材、L1…間隔、M…シャシダイナモメータ、P…ピット、R…気流、R1…渦流、SA,SB…隙間、T…被試験車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7