【文献】
Falcao et al.,Journal of Applied Microbiology,2014年 6月,Vol.116, No.6,p.1584-1592
【文献】
Martinez-Absalon et al.,Genetics and Molecular Research,2012年,Vol.11, No.3,p.2665-2673
【文献】
Kumar et al.,Journal of Basic Microbiology,2012年,Vol.52,p.670-678
【文献】
El-Naggar et al.,African Journal of Microbiology Research,2014年 1月15日,Vol.8, No.3,p.286-296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物が抗菌および/または抗真菌活性ならびに植物生長促進活性を有する、請求項1に記載の枯草菌亜種シリラメンシスおよび請求項2に記載の培養濾液由来の抽出物を含む組成物。
病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための抗菌および/または抗真菌ならびに植物生長促進組成物の調製にいずれの場合にも使用される、請求項1もしくは2に記載の枯草菌亜種シリラメンシスもしくは培養濾液由来の抽出物または請求項7〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
新規細菌の単離および同定
本発明者らは、空中菌叢に関する試験を行いながら、ハイデラバードおよびパタンチャール(テランガーナ州、インド)の18の異なる場所から大気サンプルを採取した。培地(T3培地、Traversら, 1987)を含むディスポーザブルペトリプレートを研究室で作製し、様々な場所で大気に曝した。曝したプレートを密閉し、ラボインキュベーターにて30℃でインキュベートした。パタンチャール地方で大気に曝したプレートの1つで、菌糸に取り囲まれた細菌コロニーが見られた(
図1A)。インキュベーションを続けてもクリアランスゾーンは維持され、菌糸の増殖はクリアランスゾーン周辺に限定されたままであった。このコロニー由来の微生物に対して、生物学の標準法を用いることにより精製を行った(
図1B)。個々のコロニーを一般的な真菌フザリウム・オキシスポルムに対して試験した(
図2)。
【0027】
これらのコロニーのうちの1つは真菌増殖の阻害を示し、クリアランスゾーンが見られた(
図2)。コロニー由来の細菌の顕微鏡観察により、桿状の運動性細菌が明らかになった(
図5)。培養培地中で6日のインキュベーション後に、細菌は胞子を生産した。この細菌コロニーは、粘液状、隆起型、円形、平滑、かつ、クリーム色〜灰白色であり(
図4)、菌体は不定グラム染色を示した(
図5)。
【0028】
炭水化物発酵、カタラーゼ活性、酸化発酵試験、デンプン加水分解、硫化水素生産試験、オキシダーゼ活性試験、デオキシコール酸寒天試験を含む一定の範囲の生化学的試験を行った。これらの試験の結果から、前記細菌がカタラーゼ陽性であり、アミラーゼ活性を有し、強い好気性で、硫化水素を生産せず、オキシダーゼ陽性であり、かつ、グラム不定であることが確認された。
【0029】
細菌の同定のために、16S DNAシーケンシングおよびFAME分析を行った。両試験の結果は、これらの細菌は、枯草菌亜種サブティリスと16S DNA配列に0.37%の差異および0.827のFAME類似度指数;バチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus)と16S DNA配列に0.84%の差異および0.749のFAME類似度指数を示していることを示した。よって、これらの結果は、この細菌が枯草菌およびバチルス・アトロファエウスと近縁であるが、ATCCコレクションのカタログの細菌種のいずれとも同一でないことを示唆する。
【0034】
単離された細菌は、バチルス属の亜種の新規メンバーである。細菌命名法の慣例に従い、新規細菌種は、枯草菌亜種シリラメンシスと命名した。この細菌はIMTECH、チャンディガル、インドのマイクロバイアル・タイプ・カルチャー・コレクション(Microbial Type Culture Collection)(MTCC)に寄託されている。この新規な種の寄託番号は(MTCC−5674)である。
【0035】
本発明により提供される受託/寄託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌の特徴
本細菌は、2.45×0.88μmの寸法の桿状、運動性、胞子形成、グラム不定であり;コロニーは、初期段階では平滑、粘液状、灰白色〜クリームがかっているが、長期インキュベーションではしわ型に変わる。細菌は、培地中の栄養が欠乏すると胞子となり、通常、この胞子形成の過程は、30℃および200rpmでの振盪下、25×150mm培養管にて、100μlの5×10
8菌体接種物を含有する10ml培地中、4日のインキュベーションを要する。
【0036】
受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスは、抗菌および/または抗真菌活性を示す。受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物は、抗菌および/または抗真菌活性を示す。この細菌の潜在的適用および使用の範囲は広い。
【0037】
本発明は、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスから抗菌および/または抗真菌抽出物を生産する方法を提供する。
【0038】
抗菌および/または抗真菌剤の生産および単離
受託番号(MTCC−5674)を有する枯草菌亜種シリラメンシスの増殖のための培養培地の組成は次の通りである
1.トリプトン :0.32%(w/v)
2.トリプトース :0.24%(w/v)
3.酵母抽出物 :0.18%(w/v)
4.NaH
2PO
4.H
2O:0.044M
5.Na
2HPO
4 :0.062M
6.MnCl
2 :0.0005%(w/v)
pH=6.8
【0039】
1.培地は付属書類−I(I)に示される方法に従って調製し、100mlアリコートを500mlの三角フラスコに移した。培地は121℃で15分間オートクレーブにかけることにより滅菌した。
2.各フラスコに枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の単一の純粋コロニーを接種し、30℃、200rpmで60時間インキュベートした。
【0040】
培養培地からの抗菌および/または抗真菌剤の単離
T3培養液で60時間、細菌を増殖させた後、その培養物を4℃、12000rpmで10分間遠心分離した。上清を回収し、0.22μmディスクフィルター(Millipore/Sartorius)を用いて濾過した。この濾液を、抗菌および/または抗真菌活性を試験するための詳細な実験のために適当な保存条件下で保存した。
【0041】
本発明は特に、新規微生物、受託番号(MTCC−5674)を有する枯草菌亜種シリラメンシス、ならびに前記新規細菌および/もしくはその抽出物または新規細菌および/もしくはその抽出物の混合物から抗菌および/または抗真菌組成物を生産するための方法を提供する。
【0042】
本発明の一実施形態は、受託番号(MTCC−5674)を有する、抗菌および/または抗真菌活性を示す枯草菌亜種シリラメンシスに属す単離された新規細菌を提供する。
【0043】
本発明の一実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する枯草菌亜種シリラメンシスと呼ばれる新規細菌が提供される。
【0044】
本発明の別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの純粋培養物が提供される。
【0045】
本発明の一実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物が提供され、前記抽出物は抗菌および/または抗真菌活性を示す。
【0046】
本発明の別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物が提供され、抗菌および/または抗真菌活性を示す抽出物は水性抽出物である。本発明のさらに別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物の生産のためのプロセスが提供され、前記プロセスは、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスを栄養培地で増殖させること、および従来の方法を用いて抗真菌性を有する抽出物を回収することを含む。
【0047】
本発明の別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物の生産のためのプロセスが提供され、前記プロセスは、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスを好気条件下で増殖させることを含む。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物の生産のためのプロセスが提供され、前記プロセスは、新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスを栄養培地で増殖させること、抗菌および/または抗真菌活性を有する抽出物を回収すること、および任意選択により、前記抽出物を従来の方法を用いて濃縮すること含む。
【0049】
本発明の一実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスを含む組成物が提供され、前記組成物は抗菌および/または抗真菌活性を有する。
【0050】
本発明の別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物を含む組成物が提供され、前記組成物は抗菌および/または抗真菌活性を有する。
【0051】
本発明の別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスおよび受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物を含む組成物が提供され、前記組成物は抗菌および/または抗真菌活性を有する。
【0052】
本発明の一実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスおよび/もしくは前記新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物、または任意選択により1種類以上の抗菌および/または抗真菌剤を含むそれらの組合せを含む組成物が提供される。
【0053】
本発明の別の実施形態では、任意選択により1種類以上の抗菌および/または抗真菌剤を含む受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物を含む組成物が提供される。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスと任意選択により1種類以上の抗菌および/または抗真菌剤を含むその抽出物との組合せを含む組成物が提供される。
【0055】
本発明の一実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスまたは受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物またはそれらの組合せを含み、任意選択により農業上または薬学上許容される担体を含む組成物が提供される。
【0056】
本発明の別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスを含み、任意選択により農業上または薬学上許容される担体を含む組成物が提供される。
【0057】
本発明のさらに別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物を含有し、任意選択により農業上または薬学上許容される担体を含む組成物が提供される。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスと前記新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物との組合せを含み、任意選択により農業上許容される担体を含む(付属書類IIIを参照)組成物が提供される。
【0059】
本発明の一実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための方法であって、前記病原性真菌および/または細菌を有効量の受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスまたは前記新規細を含む組成物またはその抽出物またはそれらの組合せと接触させることを含む方法が提供される。
【0060】
本発明の一実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための方法であって、前記病原性真菌および/または細菌を有効量の受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスと接触させることを含む方法が提供される。
【0061】
本発明の別の実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための方法であって、前記病原性真菌および/または細菌を有効量の、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスを含む組成物と接触させることを含む方法が提供される。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための方法であって、前記病原性真菌および/または細菌を有効量の、新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の抽出物を含む組成物と接触させることを含み、前記抽出物は抗菌および/または抗真菌活性を有する、方法が提供される。
【0063】
本発明のさらに別の実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための方法であって、前記病原性真菌および/または細菌を有効量の、新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を含む組成物とおよび前記新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物接触させることを含み、前記抽出物が抗菌および/または抗真菌活性を有する、方法が提供される。
【0064】
本発明の一実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための抗菌および/または抗真菌組成物の調製のための、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスまたは前記新規細菌もしくはその抽出物もしくはそれらの組合せを含む組成物の使用が提供される。
【0065】
本発明の別の実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための抗菌および/または抗真菌組成物の調製のための、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの使用が提供される。
【0066】
本発明の別の実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための抗菌および/または抗真菌組成物の調製のための、新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を含む組成物の使用が提供される。
【0067】
本発明の別の実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための抗菌および/または抗真菌組成物の調製のための、新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の抽出物を含む組成物の使用が提供される。
【0068】
本発明の別の実施形態では、病原性真菌および/または細菌の増殖を阻害するための抗菌および/または抗真菌組成物の調製のための、新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の抽出物前記新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスの抽出物を含む組成物の使用が提供される。
【0069】
別の実施形態では、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスを含む薬学上および農業上有効な組成物が提供される。
【0070】
別の実施形態では、新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の抽出物を含む、薬学上および農業上有効な組成物が提供される。
【0071】
本発明のさらに別の実施形態では、前記有効組成物を、受託番号(MTCC−5674)を有する新規細菌である枯草菌亜種シリラメンシスから生産するための方法が提供される。
【0072】
本発明のさらに別の実施形態では、前記組成物/抽出物の生産に必要な工程および時間は、最短期間かつ前記化合物の最大回収率で維持される。
【0073】
本発明の他の利点または利益
細菌の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)はまた、抗菌および/または抗真菌剤とともに、高温、すなわち121℃に15分間曝した後でも活性がある強力な好熱性プロテアーゼおよびアミラーゼも生産する。
【0074】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。以下の実施例は、開示の研究を例示することを意図し、本発明の範囲に限定的に何らかの制限を適用するものではない。当業者は、本明細書に記載の特定の物質に対する等価な置換、または対応する改良は本発明の範囲内であると見なされることを理解するであろう。
【0075】
詳細な方法を以下の実施例で説明する:
本研究で使用した方法は微生物学において周知であり、個々のパラメーターは異なり、本試験に関して最適化されている。
【0076】
実施例1
1.1
大気サンプルの採取および予備スクリーニング
大気サンプルの採取は、ハイデラバードおよびパタンチャール(テランガーナ州、インド)の種々の場所で行った。T3培地を含むディスポーザブルペトリプレートを研究室で作製し、種々の場所で大気に曝した。曝したプレートを密閉し、ラボインキュベーターにて30℃でインキュベートした。パタンチャール地方で大気に曝したプレートの1つで、菌糸に取り囲まれた細菌コロニーが見られた。
【0077】
1.2
抗菌および/または抗真菌活性に関する大気サンプルの予備スクリーニング
インキュベーションを続けてもクリアランスゾーンは維持され、菌糸の増殖はクリアランスゾーン周辺に限定されたままであった。このコロニー由来の微生物に対して、生物学の標準法を用いることにより精製を行った(
図1B)。個々のコロニーを一般的な真菌フザリウム・オキシスポルムに対して試験した(
図2)。コロニーの1つが真菌増殖およびクリアランスゾーンの阻害を示した(
図2)。
【0078】
1.3
新規単離株のスクリーニング
顕微鏡下での細菌の評価により、前記コロニーは桿状運動性細菌であることが明らかになった(
図5)。6日のインキュベーションの後、細菌は胞子を生産した。
【0079】
この細菌のコロニーは粘液状、隆起型、円形、平滑、かつ、クリーム色〜灰白色であり(
図4)、菌体は不定グラム染色を示した(
図5)。
【0080】
実施例2
2.1
新規微生物の特性評価および同定
2.1.1
受託番号(MTCC−5674)を有する新規単離株枯草菌亜種シリラメンシスの特性評価
炭水化物発酵、カタラーゼ試験、酸化−発酵試験、デンプン加水分解、硫化水素生産試験、オキシダーゼ活性試験を含む一定の範囲の生化学的試験を行った。これらの試験の結果から、前記細菌がカタラーゼ陽性、アミラーゼ陽性、オキシダーゼ陽性、かつ、強い好気性であることが確認された。
【0081】
2.1.1.1
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)−コロニー形態
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)のコロニーは、粘液状、隆起型、円形、平滑、かつ、クリーム色〜灰白色である(
図4)。
【0082】
2.1.1.2
培養の特徴
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)は、30℃(15℃から55℃まで増殖可能)で最適増殖を示す。それは好気性細菌であるので、その増殖に十分な酸素を必要とし、培養液中での培養に連続的振盪を要する。
【0083】
2.1.1.2
菌体の形態
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体は、桿状、双桿菌および運動性である(
図5)。
【0084】
2.1.1.3.1
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)と枯草菌お9よびバチルス・アトロファエウスとのコロニー増殖および形態の比較
【0086】
2.1.1.4
カタラーゼ試験
材料
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の培養試験管
・過酸化水素
【0087】
方法
・LB培地を含む3本の試験管に「試験」、「陽性対照」および「陰性対照」と表示し、これらの試験管に白金耳1杯の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)、大腸菌(Escherichia coli)および肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)をそれぞれ接種した。30℃で24時間のインキュベーション後に、全ての試験管に数滴の過酸化水素を加え、泡の生成を観察した。
【0088】
結果
気泡は「試験」および「陽性対照」の両試験管から生成し、このことは枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)がカタラーゼ陽性であることを示す(
図6)。
【0089】
2.1.1.5
デンプン加水分解
材料
・草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養濾液
・デンプン寒天プレート
・ヨウ素
・インキュベーター
【0090】
方法
デンプン寒天培地は付属書類−I(VI)に示す方法に従って調製した。デンプン寒天培地を含むプレート内に等距離で2つのウェルを作り、「試験」および「陰性対照」と表示した。枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養濾液および無菌蒸留水の各500μlアリコートを「試験」および「陰性対照」と表示したウェルに分注した。このプレートを50℃で4時間インキュベートした。
【0091】
結果
4時間のインキュベーション後に試験ウェルを取り囲む青色が消え、このことは枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養濾液がデンプン分解活性を有することを示す。対照ウェルを取り囲む領域では青色の変化は見られなかった(
図7)。
【0092】
2.1.1.6
O/F(酸化−発酵)試験
材料
・Hugsh LeifsonのOF基本培地
・試験管
・大腸菌培養物
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)
・インキュベーター
【0093】
方法
Hugsh LeifsonのOF基本培地(OFBM)(付属書類−I(VII))を含む3本の試験管を「陰性対照」、「陽性対照」および「試験」と表示し、これらの試験管に白金耳1杯のアルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、大腸菌および枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)をそれぞれ接種した。これらの試験管を30℃で48時間インキュベートし、変色を観察した。
【0094】
結果
これらの観察から、試験生物(枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)は、培地内の深部では炭水化物を発酵しなかったので、偏性好気性であると結論付けられた。培地の表面では酸素が利用可能であるためにいくらかの変色が見られた。一方、大腸菌は培地内の深部で極めてよく増殖し、炭水化物を発酵し(気体の生成と培地の変色の両方)、このことは大腸菌が条件的嫌気性菌であることを示す(
図8)。陰性対照では、気体の発生も変色も見られなかった。
【0095】
2.1.1.7
硫化水素生産試験
材料
・SIM(Sulfide Indole Motility)培地
・培養試験管
・大腸菌培養物
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)
・インキュベーター
【0096】
方法
SIM[dole Motility、{付属書類−I(VII)}]培地を含む試験管を「陰性対照」および「試験」と表示し、これらの試験管に白金耳1杯の大腸菌および枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)をそれぞれ接種し、30℃で24時間インキュベートし、変色を観察した。
【0097】
結果
これらの観察から、培地が黒くならなかったので、試験生物はH
2S生産陰性であると結論付けられた。同じ結果が陰性対照でも見られた(
図9)。
【0098】
2.1.1.8
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の増殖に及ぼすpHの影響
3.4〜11.0(酸性〜塩基性)の範囲の種々のpH値に調整した標準培養培地(LB)を含む培養試験管を、標準条件下での枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の増殖のために使用した。枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の増殖は6.4〜7.2のpH範囲で見られ、最適pHは7.0であることが判明した。
【0099】
2.1.1.9
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の抗生物質感受性試験
24時間経過した枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養物をT3寒天の表面に拡げた。各抗生物質の表示をしたこれらT3寒天プレートの表面に種々の抗生物質ディスクを置いた。これらのプレートを30℃で24時間インキュベートした。
【0100】
表−1 枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)RES−耐性、INT−中間、SEN−感受性の抗生物質感受性の観察
【0102】
結果
これらの観察から、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)は、抗生物質−アンピシリン、カルベニシリン、カナマイシン、エンロフロキサシン、リンコマイシン、アモキシシリン、クリンダマイシン、ネオマイシン、アジスロマイシンに耐性であると結論付けられた。試験細菌は、ゲンタマイシン、トブラマイシン(tobramicin)、バンコマイシン(vancomicin)、ノボビオシン、スルフイソキサゾール、セファロチン、クロラムフェニコール、セフトリアキソンおよびバシトラシンに感受性であり、オキサシリン、アミカシン、ストレプトマイシンおよびエリスロマイシンには中間の耐性を示した。
【0103】
2.1.2
新規単離株である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の同定
細菌の同定のため、16S DNAシーケンシングおよびFAM分析を行った。両試験の結果は、この細菌が枯草菌亜種サブティリスと16S DNA配列に0.37%の差異および0.827のFAME類似度指数;バチルス・アトロファエウスと16S DNA配列に0.84%の差異および0.749のFAME類似度指数を示していることを示した。よって、これらの結果は、この細菌が枯草菌およびバチルス・アトロファエウスと近縁であるが、ATCCコレクションのカタログの細菌種のいずれとも同一でないことを示唆する。
【0104】
2.1.2.1
16S DNA配列比較の結果
【0106】
2.1.2.2
FAME分析比較の結果
【0108】
単離された細菌は、バチルス属の新規メンバーである。細菌命名法の慣例に従い、新規細菌種は、枯草菌亜種シリラメンシスと命名した。この細菌はIMTECH、チャンディガル、インドのマイクロバイアル・タイプ・カルチャー・コレクション(MTCC)に寄託されている。この新規な種の寄託番号は(MTCC−5674)である。
【0109】
実施例3
3.1
抗菌および/または抗真菌剤の生産およびスクリーニング
3.1.1
抗菌および/または抗真菌剤生産
材料
・T3培養液−1L
・三角フラスコ−2L容
・カナマイシン(30μg/ml)
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)接種物
・振盪インキュベーター(温度30℃および振盪200rpmに設定)
【0110】
方法
T3培養液は付属書類−I(1)に記載の方法に従って調製した。枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の培養物1mlを無菌T3培養液に接種し、振盪インキュベーターにて200rpmで振盪しながら30℃で60時間インキュベートした。T3培養液中、60時間、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を増殖させた後、培養培地を12000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を回収し、0.22μmフィルターで濾過して残りの菌体から分離した。濾液を4℃で維持した。
【0111】
3.1.2
上記工程3.1.1で回収した培養濾液の抗菌および/または抗真菌活性のスクリーニング
材料
・抗菌および/または抗真菌剤を含有する枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の培養濾液
・PDAプレート
・試験真菌フザリウム・オキシスポルム
・インキュベーター
【0112】
方法
濾液中の抗菌および/または抗真菌剤の活性を試験するために、PDA寒天プレートの一方のコーナーにウェルを作り、500μlの濾液をそのウェルに入れた。同じPDA寒天プレートの他方のコーナーに白金耳1杯の真菌フザリウム・オキシスポルムを接種し、室温で5日間インキュベートした。真菌フザリウム・オキシスポルムに対する濾液の阻害活性を、ウェル周囲の阻害ゾーンとしてミリメートルで記録した。
【0113】
結果
ウェルの周囲には14mmの透明な阻害ゾーンが見られ、これは抗菌および/または抗真菌剤の生産に用いた方法が最適であることを示唆する。
【0114】
3.2
抗菌および/または抗真菌剤の特性評価
抗菌および/または抗真菌活性を生じる薬剤の性質を確認するために、枯草菌亜種シリラメンシスに関連する抗菌および/または抗真菌活性を検討した。
【0115】
材料
・T3培養液−1L
・三角フラスコ−2L容
・カナマイシン(30μg/ml)
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)接種物
・振盪インキュベーター
【0116】
方法
T3培養液は付属書類−I(1)に記載の方法に従って調製した。24時間経過した枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の1mlアリコートを無菌T3培養液に接種し、振盪インキュベーターにて200rpmで振盪しながら30℃で60時間インキュベートした。T3培養液中、60時間、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を増殖させた後、培養培地を12000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を回収し、0.22μmフィルターで濾過して残りの菌体から分離した。
【0117】
3.2.1
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を用いた抗菌および/または抗真菌アッセイ
これらの菌体による抗菌および/または抗真菌剤の活性を試験するために、T3寒天プレートの一方のコーナーに白金耳1杯の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を接種し、同じT3寒天プレートの他方のコーナーに白金耳1杯の真菌フザリウム・オキシスポルムを接種し、室温で5日間インキュベートした。真菌フザリウム・オキシスポルムに対する菌体の阻害活性を、菌体コロニー周囲の阻害ゾーンとしてミリメートルで記録した。
【0118】
結果
菌体コロニーの周囲には14mmの透明な阻害ゾーンが見られ(
図11A)、これは抗菌および/または抗真菌剤の生産に用いた方法が最適であることを示唆する。菌体により分泌された活性化合物が培養培地に拡散するようになり、その結果、菌体コロニーから離れてクリアランスゾーンが生じることを示唆する。
【0119】
3.2.2
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養濾液を用いた抗菌および/または抗真菌アッセイ
濾液中の抗菌および/または抗真菌剤の性質を試験するために、500μlの濾液をそのウェルに入れた。同じPDA寒天プレートの対角の端に白金耳1杯の真菌フザリウム・オキシスポルムを接種し、室温で5日間インキュベートした。真菌フザリウム・オキシスポルムに対する濾液の阻害活性を、ウェル周囲の阻害ゾーンとしてミリメートルで記録した。
【0120】
結果
ウェルの周囲には14mmの透明な阻害ゾーン(
図11B)が見られ、これは濾液が抗菌および/または抗真菌活性を保持し、従って、活性化合物が菌体外の培養培地中に分泌されることを示すということを示唆する。
【0121】
3.3
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)抗菌および/または抗真菌剤のMICの決定
3.3.1
抗菌および/または抗真菌剤の凍結乾燥
材料
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の培養濾液
・硫酸アンモニウム
・凍結乾燥機
【0122】
方法
抗菌および/または抗真菌剤を3.1.1で説明した方法により生産および精製した。培養濾液の800mlアリコートを382.18gの硫酸アンモニウムと70%(w/v)飽和で混合し(Jingら,2009の改変プロトコール)、溶液を4℃で一晩撹拌することにより穏やかに混合した。この懸濁液を4℃にて10,000rpmで10分間遠心分離した。このようにしてえられたペレットを凍結乾燥機で24時間凍結乾燥させ、乾燥したペレットを室温で保存した。
【0123】
3.3.2
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)抗菌および/または抗真菌剤のMIC
方法
3.3.2.1 試験管希釈法
3.3.2.2 寒天拡散法
凍結乾燥抗菌および/または抗真菌剤の保存溶液の調製
保存溶液は、抗菌および/または抗真菌剤の1gの凍結乾燥粉末を50mlリン酸バッファー(pH7.0)に溶かすことにより調製した。保存溶液の終濃度は20μg/μlに調整した。この保存溶液を、PDB培地を用い、表−1に示されるような種々の比率で希釈液を作製するために使用した。
【0124】
3.3.2.1
試験管希釈法
材料
・1.5ml試験管
・PDB培地
・抗菌および/または抗真菌剤保存液
・フザリウム・オキシスポルム胞子懸濁液
【0125】
方法
抗菌および/または抗真菌剤のMICアッセイは、1.5ml試験管で行った。10μg/μl(1:1)〜198ng/μl(1:100)の範囲の抗菌および/または抗真菌剤の種々の希釈液をPDB培地(表−2)中で調製した。MICアッセイは、フザリウム・オキシスポルムに対して、30μl(5×10
6cfu/ml)の胞子懸濁液を全ての試験管に加えることにより行い、180rpmで振盪しながら28℃で2日間インキュベートした。
【0126】
3つの対照を用い、1つ目は非希釈抗菌および/または抗真菌剤保存液を用い、2つ目はPDB中70%硫酸アンモニウムを用い、3つ目はPDBのみを用いた。これら3本の試験管の培地に30μl(5×10
6cfu/ml)のフザリウム・オキシスポルム胞子懸濁液を接種し、180rpmで振盪しながら28℃で2日間インキュベートした。
【0127】
3.3.2.2
寒天拡散法
材料
・PDA(バレイショデキストロース寒天)プレート
・PDB(バレイショデキストロース培養液)培地
・抗菌および/または抗真菌剤保存液
・フザリウム・オキシスポルム
【0128】
方法
凍結乾燥枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)抗菌および/または抗真菌剤のMICアッセイはまた寒天拡散法によっても行った。PDAプレートに等距離で各9mm径の4つのウェルを作った。10μg(1:1)〜198ng(1:100)の範囲の抗菌および/または抗真菌剤の種々の希釈液をPDB(表−3)中で調製した。各希釈溶液の200μlアリコートを、各希釈率を表示したウェルに入れた。試験真菌フザリウム・オキシスポルムをこのPDA培地の中心に接種し、これらのプレートを28℃で4日間インキュベートした。
【0129】
1つ目は非希釈抗菌および/または抗真菌剤保存液を含有するもの、2つ目はPDB培養液のみを含有するもの、3つ目はPDBを70%硫酸アンモニウムとともに含有するものの、3つの対照を含むプレートを対照として使用した。この活性はウェルを取り囲む阻害ゾーンのミリメートルとして測定した。
【0130】
結果
試験管希釈法(図12)
これらのサンプルを48時間のインキュベーション後に光学顕微鏡下で胞子発芽に関して観察した。胞子は、抗菌および/または抗真菌剤を1:1、1:2、1:3および1:4の比率で含有する試験管では発芽しなかった。抗菌および/または抗真菌剤を1:5、1:6、1:7、1:8および1:9希釈の比率で含有する試験管では、中等度の胞子発芽が見られ、抗菌および/または抗真菌剤を1:10〜1:100の比率で含有する残りの試験管では正常な胞子発芽および菌糸の形成が見られた(表−2)。
【0131】
表−2 試験管希釈法による抗菌および/または抗真菌剤のMIC
【0133】
寒天拡散法(図13)
抗菌および/または抗真菌剤を1:1、1:2、1:3および1:4の比率で含有するウェルの周囲では菌糸増殖の阻害が見られた(表−3)。抗菌および/または抗真菌剤を1:5、1:6および1:7希釈の比率で含有するウェルの周囲では、中等度の阻害が見られ、残りの希釈率(1:8〜1:100)では、阻害は見られなかった(表−3)。
【0134】
結論
上記実験から、粗抽出物の粉末中の抗菌および/または抗真菌剤は胞子発芽ならびに菌糸増殖を1:4(v/v)の希釈率まで濃度依存的に阻害していることが結論付けられる。
【0135】
表−3 寒天拡散法による抗菌および/または抗真菌剤のMIC
【0137】
3.4
新規な単離株である枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の菌体溶解液の抗菌および/または抗真菌活性の試験
材料
・PDA寒天プレート
・LB培養液
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体
・リゾチーム
・インキュベーター
【0138】
方法
3.4.1
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体溶解
LB培養液は、付属書類−I(3)に記載の方法に従って調製した。枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の単一コロニーを無菌LB培養液に接種し、30℃で24時間インキュベートした。24時間のインキュベーション後、栄養菌体を4℃、6500rpmでの遠心分離により回収し、これらの菌体を無菌蒸留水で3回洗浄し、リゾチーム中、37℃で2時間のインキュベーションにより菌体溶解を行った。溶解後、この懸濁液を4℃、10,000rpmで10分間遠心分離して菌体残渣を除去した。上清を回収し、0.22μmフィルターに通し、4℃で保存した。
【0139】
3.4.2
菌体溶解液の抗菌および/または抗真菌アッセイ
ペトリプレートのPDA寒天の対角の2端に2つのウェルを作り、一方を「試験」、他方を「対照」と表示した。溶解液の500μlアリコートを試験ウェルに加え、500μlのリゾチームのみを対照ウェルに加えた。試験真菌フザリウム・オキシスポルムをPDA寒天の中心に接種し、室温で5日間インキュベートした。
【0140】
結果
菌体溶解液は真菌フザリウム・オキシスポルムに対して抗菌および/または抗真菌活性を示さず(
図15)、このことは抗菌および/または抗真菌剤が主として培地中に分泌されることを示唆する。
【0141】
実施例4
4.1
他の病原性真菌に対する抗菌および/または抗真菌活性の試験
材料
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)
・植物病原性真菌
1.リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)(ナス科のメンバーの紋枯病を引き起こす)
2.サロクラジウム・オリゼ(Sarocladium oryzae)(イネに葉鞘腐敗病を引き起こす)
3.コレトトリクム・カプシシ(Colletotrichum capsicii)(トウガラシに炭疽病を引き起こす)
4.エクセロフィルム・ツルシクム(Exerohilum turcicum)(ツルシクム紋枯病を引き起こす)
5.マクロフォミア・ファセオリナ(Macrophomina phaseolina)(炭腐病を引き起こす)
・T3培養液
・T3寒天プレート
・PDA寒天プレート
・インキュベーター
【0142】
方法
4.1.1
様々な植物病原性真菌に対する枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を用いた抗菌および/または抗真菌活性の試験
白金耳1杯の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体および白金耳1杯の試験真菌を、各真菌の表示をしたT3プレートの対角上の反対側に接種し、菌体コロニーの近傍に菌糸の増殖が見られるまで28℃でインキュベートした。
【0143】
4.1.2
様々な植物病原性真菌に対する濾液を用いた抗菌および/または抗真菌活性の試験
抗菌および/または抗真菌剤を含有する培養濾液の500μlアリコートを、PDA寒天に作ったウェルに加え、各真菌の表示をした各プレートの他方のコーナーに白金耳1杯の試験真菌を接種し、培養濾液を含有するウェルの近傍に菌糸の増殖が見られるまで28℃でインキュベートした。
【0144】
ウェルの周囲に阻害ゾーンが形成した際に、標的真菌に対する濾液の阻害活性をミリメートルで記録した。
【0145】
結果
植物に病害を引き起こす一定範囲の真菌種を抗菌および/または抗真菌アッセイで試験したところ、それらは全て、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体およびまたその培養濾液の存在下で完全な増殖阻害を示した。
【0146】
4.2
真菌攻撃からのイネ種子の保護における抗菌および/または抗真菌剤の有効性
イネ種子をフザリウム・オキシスポルム胞子および枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養濾液で処理し、無添加寒天を含むペトリプレートに置き、発芽中の種子に対する真菌攻撃の阻害における枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)抗菌および/または抗真菌剤の有効性を確認した。
【0147】
対照種子は、フザリウム・オキシスポルム真菌胞子のみで処理した。
【0148】
結果
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)抗菌および/または抗真菌剤の存在下では、真菌は種子に感染できず、イネ種子は正常に発芽した。しかしながら、真菌のみで処理した種子は重度の感染を示し、発芽できなかった(
図17)。
【0149】
4.3
植物の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の病原特性の試験
材料
・噴霧可能なフォームの1%CMC中の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)
・イネ、ワタ、タバコ、トウモロコシおよびトマト植物
・噴霧器
【0150】
方法
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養物を、一定範囲の植物種に対して、存在する場合に病原性挙動に関して包括的に試験した。
【0151】
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を2L三角フラスコ中の1L無菌LB培養液に接種し、200rpmで振盪しながら30℃で24時間インキュベートした。細菌の増殖後、4℃、6,500rpmで10分間遠心分離することによって菌体を採取した。ペレットをリン酸バッファー(pH7.0)中で2回洗浄し、リン酸バッファー(pH7.0)中1%CMC(カルボキシメチルセルロース)でスラリーとした。この懸濁液をイネ、タバコ、トウモロコシ、トマトおよびワタなどの作物に噴霧するために使用した。
【0152】
結果
これらの観察から、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を噴霧した全ての植物種(イネ、タバコ、トウモロコシ、トマトおよびワタ)がいずれの種類の病害症状も示さなかったことが結論付けられ、それらの生育は対照植物と等しく、このことは枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)が植物種に対して非病原性であることを示す(
図18)。
【0153】
実施例5
生物防除剤としての枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を含有する抗菌および/または抗真菌組成物の配合剤
材料
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)
・LB培養液
・PDB(バレイショデキストロース培養液)
・リン酸バッファー(pH7.0)
・CMC(カルボキシメチルセルロース)
【0154】
方法
5.1.1
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体懸濁液の調製
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を2L三角フラスコ中の1L無菌LB培養液に接種し、200rpmで振盪しながら30℃で24時間インキュベートした。枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の増殖後、培養物を4℃、6,500rpmで10分間遠心分離した。ペレットをリン酸バッファー(pH7.0)で2回洗浄し、リン酸バッファー(pH7.0)中1%CMC(カルボキシメチルセルロース)と混合して6×10
7cfu/mlを含むスラリーを調製した。枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を含むスラリーを、植物に噴霧し、浸漬により植物の実生の根を処理するために使用した。
【0155】
5.1.2
トマト植物の根におけるリゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)感染を阻害するための抗菌および/または抗真菌剤を含有する配合剤の有効性の試験
材料
・枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を含むスラリー
・リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)真菌(ナス科のメンバーの紋枯病を引き起こす)
・ソイルライト
・トマト実生
【0156】
5.1.3
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)の調製
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)は、バレイショデキストロース培養液(付属書類−I(V)培地に示される方法に従って調製)中で6日間増殖させた。
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)の増殖後、それをソイルライトと十分に混合し、室温で15日間インキュベートした。真菌を含むソイルライトを土壌と1:1比で混合した。
【0157】
・
トマト実生
本試験には草丈10cmのトマト実生を使用した。
【0158】
方法
本試験は下記のように行った。
A.トマト実生を
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)を含むが枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)で処理していな土壌に植え付けた。
B.トマト実生の根を、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)を含むスラリーで処理し、
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)を含む土壌に植え付けた。
C.無処理のトマト実生。
【0159】
A.
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体および真菌リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)による実生の処理
トマト実生の根を枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体配合剤に30分間浸漬した。処理した実生を、真菌
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)と混合した土壌を含むポットに植え付けた。
【0160】
対照実生
実生に病害を引き起こすために、トマト実生(無処理)を、真菌
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)と混合した土壌を含むポットに植え付けた。
【0161】
陰性対照として、トマト実生(無処理)を、真菌
リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)と混合しない土壌を含むポットに植え付けた。
【0162】
トマト実生を含む全てのポットを温室に移し、着果期まで維持した。
【0163】
結果
これらの観察から、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)と真菌リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)の組合せで処理した実生は対照植物と同等に極めて良好に生長したが、真菌リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)を含むポットに植え付けた実生(無処理)は、対照に比べて生長の遅れ、不十分な開花および果実形成を示したことが結論付けられた。ゆえに、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)は、トマト実生の根圏で真菌リゾクトニア・ソラニ(NFCCI−3194)の増殖を阻害し、病害を引き起こす真菌から実生を保護したと結論付けることができる(
図19)。
【0164】
実施例6
6.1
土壌および種実伝染性の真菌病原体ペニシリウム・オクサリクム)(NFCCI−1997)による発芽中のトウモロコシ種実の感染を防除することができる枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体の最小数のin vitro評価
6.1.1 細菌および真菌懸濁培養物の調製
材料
a.枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)
b.ペニシリウム・オクサリクム(NFCCI−1997)−植物病原性真菌
c.カルベンダジムWP50(市販の殺真菌剤)
d.Luria Bertani培養液(LB)
【0165】
方法
6.1.1.1
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の懸濁培養物の調製
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の純粋コロニー(
図20−1)を10mlのLB培養液に接種し、30℃で24時間、180rpmでインキュベートした。生物防除配合剤の調製については、1mlの新鮮培養物を100mlのLB培養液に接種し、30℃で24時間、180rpmでインキュベートした。培養物の増殖は625nmでの培養物の吸光度を周期的に測定することにより経過観察した。菌体を遠心分離により回収し、4℃、5500rpmで10分の遠心分離により無菌リン酸バッファーで洗浄した。最終的に菌体を5mlの無菌リン酸バッファーに懸濁させた。この濃縮懸濁液を生物防除配合剤の調製に使用した。
【0166】
6.1.1.2
ペニシリウム・オクサリクム(NFCCI−1997)(真菌病原体)の懸濁培養物の調製
ペニシリウム・オクサリクム(NFCCI−1997)の純粋コロニー(
図20−2)をPDAプレートに接種し、胞子形成まで28℃でインキュベートした。白金耳1杯の真菌胞子を100mlのPDBに接種し、28℃で7日間、180rpmでインキュベートした。真菌胞子を含む培養物の水性部分を50mlポリプロピレン試験管に採取した。これらの胞子を4℃、8000rpmで10分の遠心分離により無菌リン酸バッファーで洗浄した。胞子を必要な容量の無菌リン酸バッファーに、cfuが6×10
4ml
−1となるように懸濁させた。
【0167】
6.1.2
P.オキサリクム(NFCCI−1997)(真菌病原体)による土壌汚染
土壌媒体に十分な真菌胞子量を維持するために、50ml真菌胞子懸濁液(6×10
4cfu/ml)をオートクレーブにかけた1kgのソイルライトと混合し、28℃で10日間インキュベートした。真菌が定着したソイルライトを土壌と1:1比で均一に混合し、96カップトレイに充填した。
【0168】
6.1.3
土壌伝染性植物病害の生物防除のための枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)の配合剤の調製
材料
a.CMC(カルボキシメチルセルロース)
b.スクロース
c.レッドポリマー(殺真菌剤不含)
d.枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体懸濁液(生物防除剤)
e.カルベンダジム(市販の殺真菌剤)
【0169】
発芽中のトウモロコシ種実に対してP.オキサリクム(NFCCI−1997)の増殖および病原性を抑制することができる枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体の有効濃度を評価するために、4つの異なる配合剤を設計した(詳細は下表に示す)。生物防除剤のみ、市販の殺真菌剤のみを含む配合剤、および生物防除剤も殺真菌剤も含まない配合剤を対照として用いた。全ての配合剤が結合剤−CMC(カルボキシメチルセルロース)、炭素源(スクロース)およびレッドポリマー(殺真菌剤不含)を含む。
【0170】
1.
対照−1(真菌病原体および生物防除剤を含まない配合剤)
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、およびレッドポリマーから構成される。この配合剤は生物防除剤、病害誘導因子および殺真菌剤を含まない。この配合剤で処理した種実を対照種実として用いた。
【0173】
2.
対照−2(真菌病原体を含むが生物防除剤を含まない配合剤)
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、およびレッドポリマーから構成される。この配合剤は生物防除剤/市販の殺真菌剤を含まないが、この配合剤で処理した種実をP.オキサリクム(NFCCI−1997)真菌を接種した土壌に播種した。種実周囲には生物学的保護も化学的保護もないので、真菌は旺盛に増殖し、種実に感染し、実生に病害が発生する。この配合剤で処理した種実を病害対照として用いた。
【0176】
3.
対照−3(市販の殺真菌剤「カルベンダジムWP50」を含む配合剤)
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、レッドポリマーおよび市販の殺真菌剤カルベンダジムWP50(商標バビスチン)から構成され、500μg/mlの濃度で使用した(Mohiddinら,2013)。この配合剤は、発芽中の種実の近傍の真菌増殖の抑制における生物防除剤および市販の殺真菌剤の両方の効果を比較するために用いた。
【0179】
4a.
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)(5×104cfu)を含む配合剤
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、レッドポリマーおよび5×10
4cfu/ml濃度の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体から構成される。この配合剤は最小数の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を含む。
【0182】
4b.
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体(5×105cfu)を含む配合剤
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、レッドポリマーおよび5×10
5cfu/ml濃度の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体から構成される。
【0185】
4c.
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体(5×106cfu)を含む配合剤
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、レッドポリマーおよび5×10
6cfu/ml濃度の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体から構成される。
【0188】
4d.
枯草菌亜種シリラメンシス菌体(5×107cfu)を含む配合剤
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、レッドポリマーおよび5×10
7cfu/ml(5000万菌体/ml担体)濃度の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体から構成される。この配合剤は最大数の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を含む。
【0191】
5.
枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体(5×107cfu)のみを含む配合剤
この配合剤は、1%CMC、2%スクロース、レッドポリマーおよび5×10
7cfu/ml濃度の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体から構成される。この配合剤は、最大数の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を含み、種子発芽および植物生長に対する生物防除剤の効果を検討するために用いた。
【0195】
【表17】
*1(対照−1)−真菌病原体および抗真菌剤を含まない配合剤;
*2(対照−2)−真菌病原体を含むが生物防除剤を含まない配合剤;
*3(対照−3)−市販の殺真菌剤「カルベンダジムWP50」を含む配合剤;
*4a−枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)(5×10
4cfu)を含む配合剤;
*4b−枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体(5×10
5cfu)を含む配合剤;
*4c−枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体(5×10
6cfu)を含む配合剤;
*4d−枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体(5×10
7cfu)を含む配合剤および
*5−枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体(5×10
7cfu)のみを含む配合剤。
【0196】
種実のコーティング
上記に示す組成に従う生物防除配合剤をトウモロコシ種実にコーティングした(
図21)。各処理に対して3反復で20粒のトウモロコシ種実(合計60粒)を0.1%HgCl
2で10分間表面殺菌し、各10分間、95%エタノールですすぎ、無菌水で洗浄した。乾燥した種実を171μl/60粒の種々の配合剤でコーティングし、2時間風乾した。
【0197】
播種
処理した全ての種実を96カップトレイに、各処理3反復で播種した。全てのトレイを温室で保持し、管理された条件下で維持した。種実発芽以降から5週間まで、これらのトレイを経過観察した。
【0198】
データの記録
発芽パーセンテージ
全ての種実処理の発芽パーセンテージを播種1週間後に記録した。
【0199】
病害発生率
病害発生率は、播種4週間のパーセンテージとして記録した。病害発生率の記録のために使用した式(Hoffmanら,2002)は次の通りである:
【0201】
結果
種実発芽および実生生存率
配合剤−3(対照−3)、4c、1(対照−1)、4b、4dおよび5で処理した種実でそれぞれ、最適な種実発芽、すなわち、93.33%、96.66%、100.00%、100.00%、100.00%および100.00%、次いで、配合剤−4aおよび2(対照−2)で処理した種実で83.33%、33.33%が記録された。播種4週間後の実生生存率は、配合剤−3(市販の殺真菌剤を含む)で処理した種実以外の上記全ての配合剤で処理した種実で100.00%と記録され、これは明らかに、市販の殺真菌剤「カルベンダジムWP50」は、真菌増殖の抑制に有効であったとしても100.00%の効果は無いことを示す。種々の濃度(最小数の菌体を含む配合剤4a以外)の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を含む配合剤は、土壌中に存在するP.オキサリクム(NFCCI−1997)からの種実の保護に100.00%有効であることが分かった。
【0202】
配合剤−4a(菌体の最小濃度50,000菌体/ml担体を含む配合剤)で処理した種実の発芽率の低下は、発芽中の種実に対して土壌中に存在するP.オキサリクム(NFCCI−1997)からの保護を付与するためには基本量の菌体が要されることを明確に示す。よって、細菌濃度が5×10
5cfu/ml(50万菌体/ml)である配合剤−4bは、P.オキサリクム(NFCCI−1997)からの良好な保護を与え、かつ、対照種実と同様の100%の種実発芽および実生生存を与えた。
【0203】
表−5 P.オキサリクム(NFCCI−1997)の増殖および病原性を抑制するための枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体の有効濃度(cfu/g担体)の検出
【0204】
【表18】
*1−トウモロコシ種子+レッドポリマー+CMC+スクロース;
*2−トウモロコシ種子+レッドポリマー+CMC+スクロース+P.オキサリクム(NFCCI−1997);
*3−トウモロコシ種子+レッドポリマー+CMC+スクロース+P.オキサリクム(NFCCI−1997)+カルベンダジム;
*4a〜4d−トウモロコシ種子+レッドポリマー+CMC+スクロース+P.オキサリクム(NFCCI−1997)+種々の濃度の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC.5674)菌体;
*5−トウモロコシ種子+レッドポリマー+CMC+スクロース+枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)。
【0205】
病害発生率
本試験の結果は、処理間に有意差があったことを示した。配合剤1、4b、4c、4dおよび5で処理した種実はいずれの病害症状も示さず、対照実生と同様の健康な生長を示し、このことは、これらの配合剤中に存在する生物防除剤枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)が真菌P.オキサリクム(NFCCI−1997)の増殖および病原性を大幅に抑制し、従って、種実を真菌感染から保護したことを示す。配合剤−3(市販の殺真菌剤カルベンダジム50WPを含む)で処理した種子は3.57%の病害発生率を示し、このことは、市販の殺真菌剤は真菌増殖の抑制に有効であったが、本試験で用いた生物防除剤ほど良好でなかったことを示す。
【0206】
表−6 種々の配合剤で処理したトウモロコシ実生の病害発生のパーセンテージ
【0208】
配合剤4aおよび2で処理した種実ではそれぞれ82%および100%の病害発生率が記録された。これらの結果は、配合剤4aに存在する枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体密度は真菌増殖の抑制に有効でなく、従って、発芽中の種実は真菌に感染し、発芽2週間後に枯死したことを示す。予想されたように、生物防除剤も市販の殺真菌剤も含まない配合剤−2で処理した種実は100%の病害発生率を示し、このことは、この真菌が発芽中の種子に感染し、発芽2週間以内にそれらの実生を枯死させたことを示す。
【0209】
結論
上記の結果は、5×10
5cfu/ml濃度の枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)(配合剤−4b)は真菌病原体の増殖の抑制に有効であり、トウモロコシの発芽実生に100%の保護を与えることを明らかに示す。ゆえに、この生物防除剤は、土壌伝染性の病原性真菌P.オキサリクム(NFCCI−1997)の有効な防除のための種実のコーティングに首尾良く使用できる。
【0210】
6.2
植物の生長および収量の向上における枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体配合剤の有効性の試験
材料および方法
材料
1.6.1.3(4b)に記載の配合剤で処理したトウモロコシ、トマトおよびナスの種子。
2.トウモロコシ、トマトおよびナスの対照種子。
【0211】
方法
種子のコーティング
トウモロコシ、トマトおよびナスの種子を6.1.3(4b)に記載の配合剤で処理し、風乾した。
【0212】
播種
トウモロコシ、トマトおよびナスの処理および無処理(対照)の種子(各3反復、各反復は23種子を含む)を面積4平方メートルの圃場に播種した。植物間20cmおよび畝間60cmの距離の標準的な空間寸法を維持した。適当な農学慣行に従ってこれらの作物を登熟まで生育させた。
【0213】
結果
圃場条件下で植物生長パラメーターおよび収量に有意な増加が見られた。枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体を含む配合剤でコーティングした種子は、トウモロコシ、ナスおよびトマトの収量をそれぞれ17.60、37.15および1.58%増大させた(表−7)。トウモロコシ、ナスおよびトマト植物は、より高い生育率およびバイオマス蓄積率を示した(処理および無処理トウモロコシの差異の代表的な写真を
図25に示す)。植物生長促進剤に関する初期の報告には、枯草菌を含む配合剤は植物の生長を増大させ、かつ、60種の異なるタイプの二次代謝産物を生産することにより、病害保護のための全身耐性を誘導したことも報告されている(Compantら,2005およびMohan Kumarら,2015)。
【0214】
表−7 トウモロコシ、トマトおよびナスの収量に対する枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)菌体配合剤の効果
【0216】
実施例7
7.1
ヒト病原性真菌の増殖を阻害する抗真菌/抗菌剤の有効性のスクリーニング
ヒトに疾患を引き起こす一定範囲の真菌種を様々な皮膚および肺感染を患う人から単離した。抗真菌および/または抗菌活性を単離されたヒト病原性真菌の全てに対して試験した。
【0217】
材料および方法
材料
1.ペニシリウム亜種
2.アスペルギルス・フラブス
3.アスペルギルス・ニガー
4.アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)
5.PDAプレート
6.枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)から単離された抗真菌/抗菌剤
【0218】
方法
抗菌および/または抗真菌剤を含む培養濾液の500μlアリコートを、PDA寒天に作ったウェル中に加え、各真菌の表示をした各プレートの他方のコーナーに白金耳1杯の試験真菌を接種し、培養濾液を含有するウェルの近傍に菌糸の増殖が見られるまで28℃でインキュベートした。
【0219】
標的真菌に対する濾液の阻害活性を、ウェルの周囲に形成した阻害ゾーンとしてミリメートルで記録した。
【0220】
結果
ヒトに疾患を引き起こす一定範囲の真菌種を様々な皮膚者および肺感染を患う人から単離し、抗菌および/または抗真菌アッセイで試験したところ、それらは全て、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)培養濾液の存在下で完全な増殖阻害を示した(
図24)。
【0221】
結論
これらの所見から、枯草菌亜種シリラメンシス(MTCC−5674)から単離された抗真菌/抗菌剤は医薬適用にも使用可能であると結論付けられた。
【0222】
参照文献
1. Compant , S., Duffy, B., Nowak, J., Clement, C. and Barka, E.A. (2005). Use of plants growth promoting bacteria for biocontrol of plant diseases: Principles, Mechanisms of action, and future prospects. Appl. Environ. Microbiol. 71:4951-4959. Sci. World J., Vol 2012, pp. 001-012.
2. Hoffmann, W.A. and Poorter, H. 2002. Avoiding Bias in Calculations of Relative Growth Rate. Ann. Bot., Vol.90 (1), pp. 37-42.
3. Li, J. Yang, Q. Zhao, L-H, Zhang, S.M., Wang, Y.X. Xiao-yu and Zhao, X.Y. 2009. Purification and characterization of a novel antifungal protein from Bacillus subtilis strain B29. J. Zhejiang Univ. Sci. B.,Vol.10 (4) pp. 264-272.
4. Malusa, E. Sas-Paszt, L. and Ciesielska, J. 2012. Technologies for Beneficial Microorganisms Inocula Used as Biofertilizers.
Mena-Violante, H.G. and Olalde-Portugal, V. 2007. Alteration of tomato fruit quality by root inoculation with plant growth-promoting rhizobacteria (PGPR): Bacillus subtilis BEB-13bs. Sci. Hort.,Vol.1 (113), pp. 103-106.
6. Mohan Kumar, S.P., Chowdappa, P. and Krishna, V. (2015). Development of seed coating formulation using consortium of Bacillus subtilis OTPB1 and Trichoderma harzianum OTPB3 for plant growth promotion and induction of systemic resistance in field and horticultural crops. Indian Phytopath. 68 (1):25-31.
7. Mohiddin, F. A. and Khan, M. R. 2013. Tolerance of fungal and bacterial bio-control agents to six pesticides commonly used in the control of soil borne plant pathogens. Global J. Pests, Dis. Crop Prot., Vol. 1 (1), pp. 001-004.
関連特許
1. A novel strain of Bacillus for controlling plant diseases and corn rootworm. (EP981540A1).
2. Strain of Bacillus subtilis for agricultural use. (WO2009031874A1).
3. Antifungal Bacillus subtilis and a microorganism wettable powder containing the same (KR2011075132A).
【0223】
付属書類I
使用した培養培地の組成
注: 培地調製の一般法を以下に示す。下記に示す培地組成は全て100ml容量に関するものである。組成は必要量に応じて変わる。
【0224】
(I)
T3培養液(pH−6.8)び調製
T3培地の組成
【0226】
方法
全ての培地成分をガラス瓶に秤り取り、蒸留水に溶かした。培地を含む容器を121℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0227】
(II)
T3寒天プレート(pH−6.8)の調製
T3培地の組成
【0229】
方法
全ての培地成分をガラス瓶に秤り取り、蒸留水に溶かした。培地を含むガラス瓶を121℃で15分間オートクレーブにかけた。オートクレーブ後、培地を無菌ペトリプレートに注いだ。
【0230】
(III)
LB培養液(pH−7.0)の調製
LB培地の組成
【0232】
方法
全ての培地成分をガラス瓶に秤り取り、蒸留水に溶かした。培地を含む容器を121℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0233】
(IV)
LB寒天プレート(pH−7.0)の調製
LB培地の組成
【0235】
方法
全ての培地成分をガラス瓶に秤り取り、蒸留水に溶かした。培地を含むガラス瓶を121℃で15分間オートクレーブにかけた。オートクレーブ後、培地を無菌ペトリプレートに注いだ。
【0236】
(V)
PDB培養液(pH−6.0)の調製
PDB培地の組成
【0238】
方法
50mlの蒸留水を含む250mlガラス瓶にバレイショ粉末(2.0g)を秤り取り、5分間煮沸した。煮沸したバレイショ水を、モスリン布を用いて濾過した。濾液を新しい250mlガラス瓶に回収し、それに2.0gのデキストロースを加えた。総容量を100mlとした後に、培地を含む瓶を121℃で15分間オートクレーブにかけた。
【0239】
(VI)
PDA寒天プレート(pH−6.0)の調製
PDA培地の組成
【0241】
方法
50mlの蒸留水を含む250mlガラス瓶にバレイショ粉末(2.0g)を秤り取り、5分間煮沸した。煮沸したバレイショ水を、モスリン布を用いて濾過した。濾液を新しい250mlガラス瓶に回収し、それに2.0gのデキストロースおよび2.0gの寒天を加えた。総容量を100mlとした後に、培地を含む瓶を121℃で15分間オートクレーブにかけた。融解したPDAを無菌ペトリプレートに注いだ。
【0242】
(VII)
Hugh and Leifson OF Basal Medium(OFBM)(pH−7.1)の調製
OFBM培地の組成
【0244】
方法
全ての培地成分をガラス瓶に秤り取り、蒸留水に溶かした。培地を含むガラス瓶を121℃で15分間オートクレーブにかけた。オートクレーブ後、培地を無菌培養試験管に注いだ。
【0245】
(VI)
SIM(Sulphide Indole Motility)培地(pH−7.3)の調製
SIM培地の組成
【0247】
方法
全ての培地成分をガラス瓶に秤り取り、蒸留水に溶かした。培地を含むガラス瓶を121℃で15分間オートクレーブにかけた。オートクレーブ後、培地を無菌培養試験管に注いだ。
【0248】
付属書類II
リン酸バッファーの調製
【0250】
方法
両リン酸塩をガラスビーカーに取り、塩に50mlの蒸留水を加え、マグネチックバーを用いてマグネチックスターラーで撹拌した。リン酸塩が完全に溶けたことを確認した後、その溶液を蒸留水で100mlとした。
【0251】
付属書類III
試験に使用した担体および他の薬剤