【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1態様によると、X線源及び多画素X線検出器、及びX線源と検出器間に、入射するX線光子を摂動するよう構成される部材を含むX線装置であり、部材は、該部材に入射するX線光子を、該X線光子の入射角度に応じて、異なって摂動するように適合され、部材は、少なくとも部分的にX線光子に対して半透明を示す物質から形成された複数の要素を含むX線装置であって、該装置は:
物質の種類及び/又は物質の厚さを表す値に関する第1データベース、
物質の種類及び/又は物質の厚さを示す散乱放射線値に関する第2データベース、
i)X線検出器の各画素の出力信号と第1データベースの値とを比較して、第1データベースから最も近い物質及び/又は厚さを出力し;
ii)第2データベースから、ステップ(i)における物質の種類及び/又は厚さと関連付けられる散乱放射線を選択し;
iii)散乱放射線を、X線検出器の出力信号から除去する
アルゴリズムを実行するよう構成されたプロセッサ
を更に含むX線装置が提供される。
【0018】
有利には、アルゴリズムは、除去された散乱放射線のX線光子が散乱しなければ相互作用したであろう検出器の空間的位置での出力信号に、除去された散乱放射線を加えることによって、X線検出器の出力信号を修正するステップを含む。
【0019】
物質の種類及び/又は厚さを表す値に関する第1データベースは、例えば、散乱線除去グリッドを利用することによって、散乱を除外して、実質的に作成されてもよい。
【0020】
アルゴリズムは、各画素のX線出力信号に対して、実行されてもよい。
【0021】
好適には、アルゴリズムは、アルゴリズムのステップii及びiiiの少なくとも1回の更なる繰返しで識別された物質及び/又は厚さを利用して、ステップiiiの出力に対して、物質及び/又は厚さ識別ステップを実行するステップを含む。
【0022】
有利には、アルゴリズムは、修正されたX線出力信号が最適化されているか否かを判定する更なるステップを含む。
【0023】
修正されたX線出力信号が最適化されているか否かを判定するステップは、現繰返しの画像における物質の種類及び厚さを示す値を、前の繰返しの画像における物質の種類及び/又は厚さを示す値、又は多数の前の繰返しにおける物質の種類及び/又は厚さを示す値の平均と比較すること、及び現繰返しの画像における物質の種類及び/又は厚さを示す値が、前の繰返しの物質の種類及び/又は厚さを示す値、又は多数の前の繰返しにおける物質の種類及び/又は厚さを示す値の平均の閾値範囲内であるかを判定することを含んでもよい。比較された値が閾値内にある場合、アルゴリズムのステップ(i)〜ステップ(iii)の再繰返しは、停止されてもよい。
【0024】
アルゴリズムは、除去された散乱放射線のX線光子が散乱しなければ相互作用したであろう検出器の空間的位置での出力信号に、除去された散乱放射線を加えることによって、X線検出器の出力信号を修正する更なるステップを含んでもよい。
【0025】
好適には、物質の種類及び/又は厚さを示す散乱放射線値に関する第2データベースの散乱値は、散乱カーネルである。
【0026】
散乱カーネルは、物質を通るX線光子の単一軌道からの散乱を表わすものとして定義されてもよい。
【0027】
データベースは、対象となる物質の範囲の一部に関する素性及び/又は厚さを表す散乱カーネルを追加されてもよい。
【0028】
X線検出器の出力信号から散乱放射線を除去するステップは、検出器の各画素に対して、ステップiiでデータベースから選択された散乱カーネルから散乱カーネルを補間するステップを含んでもよく、各画素に関連付けられる補間された散乱カーネルからX線検出器の出力信号全体に関する散乱推定値を生成する更なるステップも含んでもよい。
【0029】
有利には、部材は、多吸収板(MAP:multi−absorption plate)であり、該MAPは、複数の異なる領域を含む板であり、異なる領域は、入射X線エネルギに対して異なる透明性を有する。複数の異なる領域は、隣接する領域が入射X線エネルギに対して異なる透明性を有する、繰返しパターンで形成されてもよい。
【0030】
部材は、画像キャプチャ中、静止位置に保持されるのが好ましい。
【0031】
本発明の第2態様によると、X線源及び多画素X線検出器、及びX線源と検出器間に、入射するX線光子を摂動するよう構成される部材を含むX線装置であり、部材は、装置の少なくとも2つの異なる構成を提供するように適合され、部材は、異なる構成で、X線光子を異なって摂動するX線装置を提供する。
【0032】
好適には、部材は、上記装置の少なくとも2つの異なる構成を提供するように移動可能である。
【0033】
一実施形態では、部材は、多吸収板(MAP)であり、該MAPは、複数の異なる領域を含む板であり、各領域は、入射X線エネルギに対して異なる透明性を有する。かかるMAPは、1軸で、2軸又は3軸で移動可能としてもよく、これらの軸は、互いに直交してもよい。
隣接する領域が入射X線エネルギに対して異なる透明性を有する、繰返しパターンで形成されてもよい。
【0034】
部材を移動することによって、どれか一つのX線光子が衝突する可能性がある部材の部分は、構成別に異なり、従って、装置の構成別に散乱パターンは異なる。
【0035】
直接放射線の場合、既知の異なる構成間で移動する効果は、常に同じである。即ち、構成(a)から構成(b)に部材を移動すると、直接放射線に対して常に同じ効果を有する。構成(b)から構成(c)に部材を移動しても、直接放射線に対して常に同じ効果を有するが、その効果は、構成(a)から構成(b)に移動する効果とは異なるかも知れない。この知識を用いて、直接放射線を識別できる、従って、散乱放射線も、直接放射線でないものという理由で、識別できる。
【0036】
別の実施形態では、部材は、個々の薄層がフレーム内で回転可能に取付けられることを除いて、散乱線除去グリッドに酷似する。フレーム内で薄層を回転させると、装置の構成は変化するが、これは、薄層がX線源からX線検出器に延伸する軸と平行になる散乱パターンが、薄層が上記軸と平行から例えば5度傾く散乱パターンと異なるためである。
【0037】
別の実施形態では、MAPを移動する、又は散乱線除去グリッドの薄層を、回転するように構成する代わりに、部材は、電流等の信号を印加すると平坦構成と屈曲構成との間で変化する形状記憶合金から形成されてもよい。
【0038】
別の実施形態では、部材は、電流を印加すると大きさを変える圧電物質から形成される。
【0039】
部材は、フレーム内で回転可能に取付けられる個々の薄層を含んでもよい。
【0040】
部材は、信号の印加時に形状を変えることによって構成間で変化する形状記憶合金から形成されてもよい。部材は、信号の受信時に平坦構成と屈曲構成との間で変化する形状記憶合金から形成されてもよい。
【0041】
部材は、電流の印加時に大きさ及び/又は形状を変化させる圧電物質から形成されてもよい。
【0042】
本発明の別の態様によると、X線源及び多画素X線検出器、及びX線源と検出器間に、入射するX線光子を摂動するよう構成される部材を含むX線装置であり、部材は、該部材に入射するX線光子を、該X線光子の入射角度に応じて、異なって摂動するように適合され、部材は、少なくとも部分的にX線光子に対して半透明を示す物質から形成された複数の要素を含むX線装置が提供される。
【0043】
好適には、上記要素は、X線源からX線検出器に延伸する軸の方向に、該軸と直角を成す方向よりは、更に延伸する。
【0044】
散乱X線光子が、要素の1つに衝突すると、散乱X線光子が、該要素を通過するか、該要素によって吸収されるか、及び散乱X線光子が該要素を通過する場合、該光子のエネルギは、X線光子の該要素に対する入射角に応じて決まる。これは、X線光子の入射角によって、入射したX線光子が通過しなければならない物質の厚さが決まるからである(勿論、該要素の角に最も近くに入射するX線光子は、同じ入射角で、該要素の角から最も遠くに入射した場合よりも、物質の厚さが薄くなるかも知れない)。
【0045】
本発明の他の態様によれば、X線画像から散乱放射線を除去する方法を提供し、該方法は、本発明の第1態様の装置において、被験物質を、X線光子に当て、試験中に、部材の構成を変化させるステップ;X線画像を分析し、X線画像における直接放射線と散乱放射線を識別し、X線画像から識別された散乱放射線を除去するステップを含む。
【0046】
X線画像から散乱放射線を除去する方法は、物質の種類及び/又は物質の厚さを識別する更なるステップを含んでもよい。
【0047】
物質の種類及び/又は厚さは、除去された散乱放射線から識別されてもよい。X線画像は、識別された物質の種類及び/又は厚さに従い、修正されてもよい。
【0048】
本発明の他の態様によれば、散乱X線放射線と直接X線放射線の両方を含む原X線画像において散乱放射線から物質及び/又は物質の厚さを識別する方法が提供される。
【0049】
未知の物質及び/又は厚さが、本発明の装置を使用して試験される場合、結果として得られた散乱パターンは、最も近い物質及び/又は厚さが識別され得るデータベース中の散乱パターンと比較され、それにより物質及び/又は厚さを識別できる。
【0050】
物質及び/又は厚さの識別を実行するために、既知の厚さの既知の物質に、部材の構成が試験中に変化される本発明の第2態様の装置で、X線光子を当ててもよい。これにより、部材の異なる構成と一致する異なる散乱パターンを、既知の物質及び/又は厚さに対して生成できる。これは、データベースに保存されることができる。これは、画素毎に行われてもよい、即ち、多画素検出器の各画素の出力に対して行われてもよい。
【0051】
また、既知の物質の種類及び/又は厚さに対する散乱パターンも、データベースに記録され、保存されてもよい。
【0052】
図面は、本発明の好適実施形態を説明しており、例として挙げたものである。