(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記栽培棚の前記長手方向における一方側及び他方側の少なくとも一方に配置され、前記保持具及び前記スペーサの少なくとも一方を一の前記レールの前記取出口から他の前記レールの供給口に搬送するロボットをさらに有する
ことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の植物栽培システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、植物栽培システムの構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を各図中に示す方向に定義して適宜使用する場合がある。但し、植物栽培システムの各構成の位置関係を限定するものではない。
【0012】
<1.植物栽培システムの構成>
図1乃至
図4を参照しつつ、本実施形態に係る植物栽培システム1の全体構成の一例について説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、植物栽培システム1は、栽培対象である植物2を保持具3で保持し、当該保持具3を所定の期間をかけてレール4に沿って移動させることにより、植物を生育させるシステムである。植物栽培システム1は、栽培棚7と、ロボット8と、2つのUターンユニット12と、プッシャ13と、搬出入ローダ14と、搬出入コンベア15等を有する。なお、
図1では植物の搬送順序の説明の便宜上、ロボット8や搬出入ローダ14等の図示を省略しており、それらの装置による植物の搬送の流れを示している。
【0014】
(1−1.栽培棚)
栽培棚7には、複数のレール4が設置される。栽培棚7は、複数段(この例では6段)に配置された棚部9を有する。複数の棚部9は、上下方向に多段に積み重ねられている。なお、「上下方向」は厳密な鉛直方向である必要はなく、実質的な鉛直方向であればよい。したがって、「上下方向」には鉛直方向に対して若干傾斜した方向も含まれる。また、栽培棚7における棚部9の積み重ね方向は、上下方向に限定されるものではなく、上下方向に対して所定の角度傾斜した方向としてもよい。
【0015】
各棚部9の各々には、複数のレール4が前後方向に沿って水平に延設されている。なお、本実施形態でいう「前後方向」は栽培棚7における植物2の流れ方向であり、レール4の長手方向あるいは延設方向でもある。また、「水平方向」は厳密な水平方向である必要はなく、実質的に水平方向であればよい。したがって、水平方向に対して若干傾斜した方向も含まれる。複数のレール4は、各棚部9において左右方向に並設されており、各レール4は実質的に平行に配置されている。なお、本実施形態でいう「左右方向」は上記上下方向及び前後方向と直交する方向である。
【0016】
詳細な構造については後述するが、レール4は、複数の保持具3を長手方向に沿って移動可能に支持する。また、レール4は、保持具3が前後方向における一方側から供給されるごとに支持された複数の保持具3が前後方向における他方側に向けて供給された保持具3に応じて移動するように構成される。より具体的には、保持具3はレール4に対してスライド可能な構成となっている。そして、レール4では、保持具3が前後方向における一方側から供給されるごとに支持された複数の保持具3が前後方向における他方側に向けて供給された保持具3の個数分ずつスライドされる、押し出し式の搬送が行われる。
【0017】
栽培棚7における棚部9の段数は特に限定されるものではないが、本実施形態では6段である場合を一例として説明する。以下では、説明の便宜上、栽培棚7の棚部9の段について適宜、下から4段目をA段、上2段をまとめてB段、下3段をまとめてC段と言う。すなわち、
図1乃至
図3に示すように、A段は1つの棚部9Aを有し、B段は2つの棚部9Bを有し、C段は3つの棚部9Cを有する。
図3に示すように、棚部9Aには比較的多数(この例では18。
図1では煩雑防止のため一部省略。)のレール4が設置されている。棚部9Bのそれぞれには、A段よりも少ない数(この例では12。
図1では煩雑防止のため一部省略。)のレール4が設置されている。棚部9Cのそれぞれには、B段よりもさらに少ない数(この例では6。
図1では煩雑防止のため一部省略。)のレール4が設置されている。
【0018】
図3に、栽培棚7の各レール4における植物2の流れ方向を示す。なお、
図3中の記号5は、上記前後方向における前側(ロボット8の配置側)から後側(プッシャ13、搬出入ローダ14の配置側)への流れ方向を示し、記号6は、反対に後側から前側への流れ方向を示している。
図3に示すように、A段では、各レール4において保持具3が後側から前側へ向けてスライドされる。B段では、各段とも、複数のレール4のうち上記左右方向に一つ置きのレール4では、保持具3が前側から後側へ向けてスライドされる。一方、上記一つ置きのレール4に対して左右方向に隣り合う一つ置きのレール4では、保持具3が後側から前側へ向けてスライドされる。C段では、各段とも、各レール4において保持具3が前側から後側へ向けてスライドされる。なお、以下では、B段のレール4のうち、保持具3が前側から後側へスライドされるレール4を適宜「行きのレール4a」と言い、保持具3が後側から前側へスライドされるレール4を適宜「戻りのレール4b」と言う。
【0019】
また、
図4に示すように、栽培棚7の各棚部9A〜9Cの上方には、植物2の葉2b(後述の
図7参照)に光を当てるための複数の光源10が設置されている。各光源10は、各棚部9A〜9Cの上方にそれぞれ設けられた支持板11の下面に、左右方向に沿って延在する姿勢で設置されている。各光源10は、前後方向に沿って所定の間隔で配置されている。なお、光源10は特に限定されるものではないが、例えばLEDや蛍光灯等が使用される。
【0020】
(1−2.搬送順序)
次に、植物栽培システム1における植物2の搬送順序の一例について説明する。搬出入コンベア15は、供給用パレットPiの積層体PAから図示しないパレタイザにより供給された供給用パレットPiを搬出入ローダ14に搬送する。供給用パレットPiには、外部の適宜の場所において播種が行われ発芽した状態の植物2が保持された複数の保持具3が、装着されている。
【0021】
搬出入ローダ14は、搬出入コンベア15により搬送された供給用パレットPiを、A段の棚部9Aの後側に搬送してセットする。プッシャ13は、セットされた供給用パレットPiに装着された複数の保持具3を、保持具3の1個分の長さ(後述の
図13に示す長さp)に相当する1ピッチ分前側に向けて押し込む。これにより、A段の各レール4に対し保持具3が1個ずつ供給される。各レール4では、保持具3が後側から1個供給されるごとに、レール4に支持された複数の保持具3が前側に向けて1個分ずつスライドされる。なお、各レール4に一度に供給される保持具3の数は1個ずつに限定されるものではなく、複数としてもよい。
【0022】
ロボット8は、栽培棚7の前側においてA段の棚部9Aのレール4から保持具3を受け取り、B段の棚部9Bに移動する。ロボット8は、B段の複数のレール4のうちの行きのレール4aに対し、保持具3を前側から挿入して1ピッチ分押し、レール4上の複数の保持具3を後側に向けてスライドさせる。Uターンユニット12は、栽培棚7の後側において、ロボット8により前側から後側にスライドされた保持具3を行きのレール4aから受け取り、戻りのレール4bに移動させる。そして、Uターンユニット12は、保持具3を戻りのレール4bに後側から挿入して1ピッチ分押し、レール4上の複数の保持具3を前側に向けてスライドさせる。
【0023】
ロボット8は、栽培棚7の前側において、Uターンユニット12によって前側にスライドされた保持具3を戻りのレール4bから受け取り、C段の棚部9Cに移動する。ロボット8は、C段のレール4に対し、保持具3を前側から挿入して1ピッチ分押し、レール4上の複数の保持具3を後側に向けてスライドさせる。搬出入ローダ14は、スライドされた保持具3を出荷用パレットPoで受け取り、搬出入コンベア15に搬送する。出荷用パレットPoには、出荷可能な生育済みの植物2が保持された複数の保持具3が装着される。搬出入コンベア15は、搬出入ローダ14から受け取った出荷用パレットPoを外部(例えば選別ヤード等)に搬送する。
【0024】
なお、以上説明した栽培棚7の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、栽培棚7を多段で構成せずに1段で構成してもよいし、7段以上の構成としてもよい。また、B段又はC段を1段で構成してもよいし、B段をなくしてA段とC段のみの構成としてもよい。さらに、上記では上から順番にB段、A段、C段となるように配置したが、例えば上から順番にA段、B段、C段とする等、各段の配置を変更してもよい。なお、本実施形態のようにB段を上段に配置することにより、Uターンユニット12を上方に配置できる。その結果、例えばA段への保持具3の供給やC段からの保持具3の取り出し等の作業を人手で行うシステム(プッシャ13や搬出入ローダ14の代わりに人が作業するシステム)とした場合に、人手による作業スペースを確保でき、作業性を向上できる。
【0025】
<2.保持具>
次に、
図5乃至
図7を用いて、保持具3の構成の一例について説明する。なお、
図5及び
図6に示す方向は、保持具3がレール4に支持された状態での方向を示す。
【0026】
保持具3は、植物栽培システム1の栽培対象である植物2を1株ごとに保持する部材である。なお、ここでいう「1株」とは、単一の種子から生育される1つの個体をいう。例えば
図7に示す植物2のように、複数(単一でもよい)の葉2bが1本の茎2aによって支持されることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。また、例えば茎が分岐等により複数ある場合でもその根がつながることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。なお、保持具3が、レールに沿って移動可能であり、栽培対象の植物を1株ごとに保持する手段の一例に相当する。
【0027】
図5A〜
図5C、及び
図6に示すように、保持具3は、上下方向、左右方向、前後方向の各方向においてそれぞれ対称な形状を有する。保持具3は、摺動性の高い材料(例えば樹脂。金属等でもよい)で一体成形されており、保持具3を支持するレール4に対してスライド可能に構成されている。保持具3は、上下方向の両側にそれぞれ突起部33a,33bを有し、左右方向の両側にそれぞれ対向部32,32を有する。突起部33a,33bは、レール4のガイド溝43a,43b(後述の
図7参照)に収容されることで、保持具3のレール4に沿った移動を可能とする。対向部32は、上側及び下側にレール4と対向する対向面32a,32bを有し、これら対向面32a,32bがレール4と接触して摺動する。
【0028】
対向部32は、左右両側に突出した略直方体状の部分であり、その上側の面及び下側の面が平行な上記対向面32a,32bとなっている。保持具3は、左右の対向部32の先端部にそれぞれ、ロボット8のハンド21(後述の
図10参照)により把持された際に爪部材25(
図10参照)により支持される支持部35を有する。この例では、支持部35は前後方向から見て例えば等脚台形状に形成されているが、三角形や円形等、他の形状としてもよい。またこの例では、支持部35は対向部32の前後方向に間隔を空けて例えば2つ配置されているが、一繋がりとしてもよいし、3以上としてもよい。また、突起部33a、33bは、上下両側に突出した略直方体状の部分であり、その前後方向略中央部には、上下方向に貫通する穴部34が形成されている。この例では、穴部34は例えば丸穴であるが、四角形等の他の形状としてもよい。
図7に示すように、穴部34には培地36が充填され、培地36に播種された種から発芽した植物2が保持される。培地36としては、例えば寒天等のゲル状培地を使用してもよいし、ウレタン、ロックウール等の固形培地を使用してもよい。
【0029】
対向面32a,32bには、前後方向の2箇所に穴部37が形成されている。この穴部37により保持具3とレール4との接触面積(接触抵抗)が減少され、レール4との摺動性を向上できる。また、突起部33a,33bには、穴部34の前後方向両側に穴部39が形成されている。この穴部39により保持具3の重量が軽減され、レール4との摺動性をさらに向上できる。
【0030】
なお、以上説明した保持具3の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、上記では保持具3を一体成形としたが、複数の部品で構成されてもよい。また、保持具3が車輪を備え、レール4に対して車輪により移動する構成としてもよい。
【0031】
なお、植物栽培システム1では、複数の保持具3の間に挿入されることで保持具3の前後方向の間隔を規定するスペーサ3sが使用される。スペーサ3sは、上記保持具3と共通の部品で構成される。すなわち、スペーサ3sとして、穴部34に培地36を充填しない空の状態の保持具3が使用される。したがって、レール4では、複数の保持具3と共に複数のスペーサ3sも前後方向に沿って移動可能に支持される。そして、スペーサ3sがレール4に前後方向における一方側から供給されるごとに、支持された保持具3及びスペーサ3sが他方側に向けて供給されたスペーサ3sに応じて移動する。
【0032】
<3.レール>
次に、
図7及び
図8を用いて、レール4の構成の一例について説明する。なお、
図7及び
図8に示す方向は、レール4が栽培棚7の棚部9に設置された状態での方向を示す。
【0033】
図7に示すように、レール4は、レール部40と、水槽部47とを有する。レール部40は、左右一対の2つの上レール部41と、左右一対の2つの下レール部42とを有する。上レール部41と下レール部42との間には、保持具3を収容する空間44が形成される。一対の上レール部41の間には、保持具3の突起部33aが収容されるガイド溝43aが形成されている。一対の下レール部42の間には、保持具3の突起部33bが収容されるガイド溝43bが形成されている。
【0034】
上レール部41は、左右方向に所定の幅を有し前後方向に延設されたガイド板41aと、ガイド板41aの左右方向の一端部から下方に突出した一対の装着部41bとを有する。2つの装着部41bの対向面には、凹凸部41cが形成されている。
【0035】
下レール部42は、左右方向に所定の幅を有し前後方向に延設されたガイド板42aと、ガイド板42aの左右方向一端部から上方に突出した突起部42bと、ガイド板42aの左右方向一端部から下方に突出した一対の装着部42dとを有する。突起部42bの外面には、凹凸部42cが形成されている。また、2つの装着部42dのうちの外側の装着部42dは、下端に凸部42eを有する。
【0036】
水槽部47は、上側が開放された断面略U字状の長尺の水槽であり、内部に培養液48が貯留される。培養液48は、例えばポンプ等の適宜の流動手段により前後方向に流動される。水槽部47の左右両側の側壁部47dは、上端に突起部47cを有する。突起部47cの外面の下部には凹部47aが形成されている。また、側壁部47dは、上端の内側に左右方向に突出した凸部47bを有する。
【0037】
一対の下レール部42は、それぞれ2つの装着部42dが水槽部47の対応する側の側壁部47dの突起部47cに装着されることで、水槽部47の上部に着脱自在に取り付けられる。このとき、内側の装着部42dの下端が凸部47bに突き当たり、外側の装着部42dの凸部42eが突起部47cの凹部47aに引っ掛かる。水槽部47上に取り付けられた一対の下レール部42は、ガイド板42aの先端部が左右方向に間隔を空けて対向し、ガイド溝43bを形成する。
【0038】
一対の上レール部41は、それぞれ2つの装着部41bが対応する側の下レール部42の突起部42bに装着され、装着部41bの凹凸部41cと突起部42bの凹凸部42cとがはまり合うことにより、一対の下レール部42上に着脱自在に取り付けられる。一対の下レール部42上に取り付けられた一対の上レール部41は、ガイド板41aの先端部が左右方向に間隔を空けて対向し、ガイド溝43aを形成する。また、一対の上レール部41と一対の下レール部42との間に、保持具3を収容する上記空間44が形成される。
【0039】
レール4に挿入された保持具3は、レール部40の空間44に収容される。保持具3は、上下の突起部33a,33bがそれぞれ上下のガイド溝43a,43bに収容されることで、レール4の長手方向に沿って移動可能に支持される。また、保持具3の左右の対向部32の対向面32a,32bはそれぞれ、左右の上レール部41のガイド板41aの下面、左右の下レール部42のガイド板42aの上面にスライド可能に接触する。これにより、保持具3はレール4の長手方向に滑らかに移動可能に支持される。このように、レール4の上レール部41と下レール部42により保持具3を上下から挟み込む構成とすることで、保持具3の傾きや倒れを防止することができる。
【0040】
本実施形態では、レール4は、水槽部47が前後方向に一続きに連続して設けられ、レール部40が前後方向に複数に分割されて設けられる。これにより、培養液48の漏れを防止できる。また、例えば引っかかりや詰まり等により保持具3がレール4の長手方向の途中で移動不能となったような場合でも、該当する位置においてレール部40を取り外すことで保持具3を取り出すこと等が可能である。なお、レール4の構成は上記に限定されるものではなく、水槽部47が複数に分割されてもよいし、レール部40が前後方向に一続きに連続してもよい。
【0041】
保持具3の穴部34内には、培地36が充填され、保持具3は培地36に播種された種から生育した植物2の茎2aを保持する。植物2は、根2cを下方に垂らして培養液48に浸しつつ、葉2bをレール4の上方で成長させることができる。
【0042】
図8に示すように、レール4の前後方向の一方側の端部(この例では右端部)には、保持具3及びスペーサ3sの少なくとも一方がレール4に供給される供給口4pが設けられる。また、レール4の前後方向の他方側の端部(この例では左端部)には、保持具3及びスペーサ3sの少なくとも一方がレール4から取り出される取出口4qが設けられる。これら供給口4p及び取出口4qは、例えば保持具3の略1つ分の長さで設けられている。供給口4p及び取出口4qは、レール4の長手方向の一端部及び他端部から、例えばレール部40の2つの上レール部41を除去し、2つの下レール部42を保持具3の略1つ分の長さだけ露出することにより形成される。このとき、下レール部42の突起部42bは例えば切削等により削除される。なお、供給口4pと取出口4qは同じ構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。
【0043】
A段のレール4では、前後方向の後側に供給口4p、前側に取出口4qが設けられる。B段のレール4では、行きのレール4aでは前側に供給口4p、後側に取出口4qが設けられ、戻りのレール4bでは後側に供給口4p、前側に取出口4qが設けられる。C段のレール4では、前側に供給口4p、後側に取出口4qが設けられる。
【0044】
なお、以上説明したレール4の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、レール4を上レール部41と下レール部42とで構成し、水槽部47をレール4とは別体としてもよい。また、上レール部41を設けない構成としてもよい。
【0045】
<4.ロボット>
次に、
図9及び
図10を用いて、ロボット8の構成の一例について説明する。なお、
図9及び
図10において、X軸正の方向が右、X軸負の方向が左、Y軸正の方向が後、Y軸負の方向が前、Z軸正の方向が上、Z軸負の方向が下に対応する。
【0046】
(4−1.全体構成)
ロボット8は、栽培棚7の前側に配置され、保持具3及びスペーサ3sを一のレール4の取出口4qから他のレール4の供給口4pに搬送する。
図9に示すように、ロボット8は、基台16と、基台16上に設置された門型の支持枠17と、支持枠17に設けられたアクチュエータ30と、ハンド21とを有する。
【0047】
支持枠17は、基台16上にX軸方向に対向するようにZ軸方向に沿って設置された一対の支柱17aと、一対の支柱17aの上端にX軸方向に沿って架け渡された略水平な梁17bとを有する。
【0048】
アクチュエータ30は、X軸ユニット18、Z軸ユニット19、及びY軸ユニット20を有する。X軸ユニット18は、ビーム18aと、スライダ18bと、X軸モータ18cとを有する。ビーム18aは、一対の支柱17a間にX軸方向に略水平に架設される。スライダ18bは、ビーム18aにX軸方向に沿って移動自在に支持される。X軸モータ18cは、ビーム18aの左端に取り付けられ、スライダ18bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ18bをX軸方向に駆動する。
【0049】
Z軸ユニット19は、ビーム19aと、スライダ19bと、Z軸モータ19cとを有する。ビーム19aは、上端が梁17bにX軸方向に移動自在に支持されるとともに、スライダ18bに固定される。スライダ19bは、ビーム19aにZ軸方向に沿って移動自在に支持される。Z軸モータ19cは、ビーム19aの下端に取り付けられ、スライダ19bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ19bをZ軸方向に駆動する。
【0050】
Y軸ユニット20は、ビーム20aと、スライダ20bと、Y軸モータ20cとを有する。スライダ20bは、スライダ19bに固定される。ビーム20aは、スライダ20bがY軸方向に沿って移動自在に支持される。Y軸モータ20cは、ビーム20aの前端に取り付けられ、スライダ20bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ20bをY軸方向に駆動するY軸モータ20cとを有する。
【0051】
アクチュエータ30では、X軸モータ18cによりスライダ18bがX軸方向に駆動すると、ビーム19aがX軸方向に移動し、スライダ19b及びスライダ20bを介してビーム20aがX軸方向に移動する。また、Z軸モータ19cによりスライダ19bがZ軸方向に駆動すると、スライダ19b及びスライダ20bを介してビーム20aがZ軸方向に移動する。また、Y軸モータ20cによりスライダ20bをY軸方向に駆動すると、スライダ20bを介してビーム20aがY軸方向に移動する。このようにして、アクチュエータ30は、ビーム20aをX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に移動することができる。
【0052】
ハンド21は、アクチュエータ30のビーム20aの後側の先端に取り付けられ、保持具3及びスペーサ3sを把持する。アクチュエータ30は、ビーム20aを三軸方向に移動することにより、ハンド21を三軸方向に移動することができる。すなわち、アクチュエータ30は、ハンド21を前後方向(レール4の長手方向)に沿って移動させる。またアクチュエータ30は、前後方向と垂直且つ互いに直交する2方向、すなわち左右方向(レール4の並設方向。略水平方向でもある)と上下方向(棚部9の積み重ね方向。高さ方向でもある)の2方向に沿って移動させることができる。
【0053】
(4−2.ハンド)
図10に示すように、ハンド21は、ベース22と、一対のスライダ24と、一対の爪部材25と、駆動ブロック26とを有する。一対のスライダ24は、ベース22の下面に設けられたX軸方向のガイド穴23に摺動自在に収容されている。一対の爪部材25は、一対のスライダ24の下端にそれぞれ取り付けられ、X軸方向に略平行に配置されている。駆動ブロック26は、ベース22の上部に設けられ、駆動機構(図示せず)を内蔵している。駆動機構は、例えばエアーコンプレッサ等の圧力源からの流体圧力でスライダ24を駆動し、一対の爪部材25をX軸方向に略平行な姿勢を保持しつつ互いに進退するように開閉させる。一対の爪部材25の先端の爪部28の内側には、保持具3の支持部35を支持する溝部28aが形成されている。溝部28aは、Y軸方向から見た形状が支持部35の形状に対応した形状(この例では等脚台形状)となっている。
【0054】
ハンド21は、例えばレール4の取出口4qに位置する保持具3を受け取る際には、駆動機構の作動で一対の爪部材25を保持具3に対し閉じ、爪部材25の先端の爪部28で保持具3を両側から挟む。このとき、保持具3の支持部35が爪部28の内側の溝部28aに収容される。このようにして、ハンド21は保持具3を把持する。また、ハンド21は、例えばレール4の供給口4pから保持具3を挿入する際には、把持した保持具3をアクチュエータ30の駆動により別のレール4の供給口4pに移動させ、レール4に載置する。そして、保持具3を把持したままY軸方向(前後方向)に1ピッチ分押す。このとき、爪部28の溝部28aの端面28bが保持具3の支持部35の端面に突き当たり、ハンド21の推進力を保持具3に効率良く伝達できる。これにより、供給口4pに挿入した保持具3とレール4上に支持されている複数の保持具3及びスペーサ3sを1ピッチ分スライドさせることができる。その後、ハンド21は一対の爪部材25を開いて保持具3の把持を解除する。なお、スペーサ3sの受け取りや移動、挿入についても、上記保持具3の場合と同様に行われる。
【0055】
なお、ハンド21が保持具3を押す際に、次のように動作してもよい。すなわち、ハンド21が保持具3をレール4に載置した後、把持を解除してレール外部側に移動し、一対の爪部材25を閉じて、それら爪部材25の先端で保持具3を押してもよい。この場合、ハンド21による保持具3の把持位置のバラツキによる影響を防止でき、保持具3の移動量(押して移動させる量)を略一定にすることができる。
【0056】
ハンド21の例えば駆動ブロック26の前面には、ハンド21で把持された保持具3の植物2の生育状況を検出するセンサ27が取り付けられている。センサ27は、例えば植物2の葉2bの高さを検出可能な反射型フォトセンサや赤外線センサ等である。センサ27による検出結果は図示しない制御部に送信され、例えば所定のしきい値と比較する等により、植物2の生育状況が判断される。生育状況が不良と判断された場合には、ハンド21は当該保持具3をレール4に移動せずに、例えば廃棄場所に搬送する。なお、センサ27は植物2の生育状況を検出可能なものであればよく、上記に限定されるものではない。例えば、植物2の生育状況を重量で判断するための重量センサ等でもよい。また、センサ27は駆動ブロック26以外の場所に設置されてもよいし、ハンド21ではなくアクチュエータ30に設置されてもよい。
【0057】
なお、以上説明したロボット8の配置や構成は一例であり、上記以外の配置や構成としてもよい。例えば、ロボット8を栽培棚7の前後方向両側に配置してもよい。この場合、後側においては、ロボット8がUターンユニット12やプッシャ13、搬出入ローダ14等の代わりの操作を行ってもよい。また例えば、アクチュエータ30を3軸以上の多軸(例えば6軸等)構成としてもよい。例えば6軸のアクチュエータを旋回可能な構成としたロボットとすることにより、ハンド21とレール4との位置合わせが容易となり、栽培棚7の棚部9の設置精度を落とすことが可能となる。これにより、栽培棚7をコンパクト化できる。
【0058】
<5.Uターンユニット>
次に、
図11A〜
図11Dを用いて、Uターンユニット12の構成及び動作の一例について説明する。
【0059】
図11A〜
図11Dに示すように、B段の各段の複数(この例では12)のレール4のうち、行きのレール4aは、後側の端部に取出口4qを有し、戻りのレール4bは、後側の端部に供給口4pを有する。また、
図11A〜
図11Dに示す例では、各レール4において保持具3とスペーサ3sとが前後方向に交互に配置されるように支持されている。
【0060】
Uターンユニット12は、B段の各段に1つずつ、計2つ設置されている。Uターンユニット12は、プレート50と、クランク機構部51と、シリンダ52と、プッシャ55とを有する。プレート50は、レール4aと同数(レール4bと同数でもある。この例では6)の受け部50aを有し、これら受け部50aが各レール4a(又は各レール4b)に対応する位置で前側に櫛歯状に突出している。クランク機構部51は、シリンダ52の伸縮動作をプレート50の左右方向の移動動作に変換して伝達すると共に、プッシャ55の前後方向の動作に変換して伝達する。シリンダ52は、クランク機構部51に連結されたロッド52aを伸縮動作させる。プッシャ55(
図11A、
図11Bでは煩雑防止のため図示を省略している)は、プレート50の上側において前後方向に移動可能に設置されている。
図11C及び
図11Dに示すように、プッシャ55は、レール4bと同数(レール4aと同数でもある。この例では6)の突起部55aを有し、これら突起部55aが各レール4bに対応する位置で前側に櫛歯状に突出している。
【0061】
まず、
図11Aに示すように、Uターンユニット12は、シリンダ52によるクランク機構部51の動作により、プレート50の複数の受け部50aが複数の行きのレール4aの取出口4qの後側端部に位置するようにプレート50を移動する。この状態でUターンユニット12は待機する。そして、行きのレール4aの前側端部では、ロボット8のハンド21が1つの保持具3を保持して供給口4pに供給し、保持具3を1ピッチ分だけ押し込む。このハンド21による押し込み動作が、行きのレール4aの全てに対し繰り返されることにより、複数の行きのレール4aの取出口4qから保持具3が1つずつ押し出される。Uターンユニット12は、複数の行きのレール4aの取出口4qから1つずつ押し出される複数の保持具3(図中ハッチングで示す)を複数の受け部50aで受け取る。
【0062】
次に、
図11Bに示すように、Uターンユニット12は、シリンダ52によるクランク機構部51の動作により、プレート50を右方向にレール1ピッチ(左右方向に隣接するレール4同士の間隔)分だけ移動する。これにより、プレート50の受け部50aは、行きのレール4aに隣接する戻りのレール4bの供給口4pの後側端部に位置する。戻りのレール4bの供給口4pには、前回のプッシャ55による押し動作により保持具3及びスペーサ3sが位置しておらず、供給口4pは空の状態となっている。
【0063】
次に、
図11Cに示すように、Uターンユニット12は、シリンダ52によるクランク機構部51の動作により、プッシャ55を前側に向けて保持具3の1ピッチ分だけ前進させる。これにより、プッシャ55の複数の突起部55aが、受け部50a上の保持具3を押して戻りのレール4bの供給口4p(空の状態)に挿入する。
【0064】
次に、
図11Dに示すように、Uターンユニット12は、シリンダ52によるクランク機構部51の動作により、プッシャ55を前側に向けて保持具3の1ピッチ分だけさらに前進させる。これにより、プッシャ55の複数の突起部55aが、戻りのレール4bの供給口4pにある保持具3を前側に向けて1ピッチ分押し込んで、戻りのレール4b上の複数の保持具3及びスペーサ3sを1ピッチ分だけ前側にスライドさせる。
【0065】
なお、行きのレール4a上を保持具3同士の間に介挿されて搬送されるスペーサ3sについても、Uターンユニット12により上記保持具3と同様に操作される。
【0066】
このようにして、Uターンユニット12は、B段の行きのレール4a上を1ピッチずつ間欠的に後側にスライドされる複数の保持具3及びスペーサ3sを受け取る。そして、Uターンユニット12は、保持具3及びスペーサ3sを戻りのレール4bに移動して挿入する。そして、Uターンユニット12は、保持具3及びスペーサ3sを前側に向けて押すことによって戻りのレール4b上を1ピッチずつ前側に間欠的にスライドさせ、ロボット8側にUターンさせる。
【0067】
なお、以上説明したUターンユニット12の構成及び動作は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、モータ等の回転動作可能なアクチュエータを用いてUターンユニットを構成してもよい。但し、本実施形態のようにシリンダによる1軸アクチュエータ構成とすることにより、構成を簡素化でき、コストを削減できる。
【0068】
<6.レールの配置間隔>
次に、
図12を用いて、レール4の並設方向の配置間隔の一例について説明する。
【0069】
図12に示すように、各段におけるレール4の並設方向(左右方向)の配置間隔PW、言い換えると保持具3のレール並設方向の配置間隔は、当該段における植物2の生育状況に応じて設定されている。具体的には、配置間隔PWは、例えば保持具3で保持した植物2が当該段において最も成長した際に葉2bが重ならない程度の間隔に設定されている。本実施形態では、A段の棚部9Aでは、レール4の間隔PWaは、発芽したての小さな植物2が棚部9Aにおいて一番成長するレール4の前側の端部において葉2bが重ならない程度の大きさに設定されている。この例では、間隔PWaは、棚部9Aの幅Lをレール4の数18で割ったL/18程度である。また、B段の棚部9Bでは、レール4の間隔PWbは、A段のレール4から移動されたある程度成長した植物2が、棚部9Bにおいて一番成長する戻りのレール4bの前側の端部において葉2bが重ならない程度の大きさに設定されている。この例では、間隔PWbは、棚部9Bの幅Lをレール4の数12で割ったL/12程度である。また、C段の棚部9Cでは、レール4の間隔PWcは、B段のレール4から移動されたある程度成長した植物2が、棚部9Cにおいて出荷状態にまで成長するレール4の後側の端部において葉2bが重ならない程度の大きさに設定されている。この例では、間隔PWcは、棚部9Cの幅Lをレール4の数6で割ったL/6程度である。
【0070】
なお、上記のレール間隔は一例であり、各段におけるレール4の配置間隔を上記以外の大きさに設定してもよい。
【0071】
<7.スペーサの挿入個数>
次に、
図13を用いて、保持具3間へ挿入するスペーサ3sの挿入個数の一例について説明する。
【0072】
図13に示すように、各段におけるスペーサ3sの挿入個数N、言い換えるとレール長手方向における保持具3の配置間隔PDは、当該段における植物2の生育状況に応じて設定されている。具体的には、挿入個数N(配置間隔PD)は、例えば保持具3で保持した植物2が当該段において最も成長した際に葉2bが重ならない程度の間隔となるように設定されている。本実施形態では、A段の棚部9Aでは発芽したての小さな植物2が移動されることから、スペーサ3sの挿入個数Nは0に設定されている。つまり、保持具3の配置間隔PDaは、保持具3の一個分のレール長手方向の長さをpとした場合に、1×pに設定されている。
【0073】
また、B段の棚部9Bでは、A段のレール4から移動されたある程度成長した植物2が移動されることから、スペーサ3sの挿入個数Nは1に設定されている。つまり、保持具3の配置間隔PDbは、2×pに設定されている。また、C段の棚部9Cでは、B段のレール4から移動されたさらに成長した植物2が移動されることから、スペーサ3sの挿入個数Nは2に設定されている。つまり、保持具の配置間隔PDcは、3×pに設定されている。
【0074】
なお、上記のスペーサ3sの挿入個数は一例であり、上記以外の個数に設定してもよい。
【0075】
<8.植物栽培システムの動作>
次に、
図14〜
図16を用いて植物栽培システム1の動作の一例を説明する。
【0076】
図14に示すように、搬出入ローダ14により植物2を保持した複数の保持具3がA段のレール4の供給口4pに搬送され挿入(載置)されると、プッシャ13が保持具3を前側に向けて押し、保持具3を1ピッチ分押し込む。これにより、レール4上の複数の保持具3が1ピッチずつ前側へ同時にスライドされ、その結果、レール4の前側の端部の空いていた取出口4qに保持具3が移動する。なお、このプッシャ13による押し込みは、レール4の1本1本に対して個別に行われてもよいし、A段の複数のレール4に対して一度に行われてもよい。
【0077】
上記プッシャ13による押し込みにより、A段において間隔PWaで並設された複数のレール4(第1のレールの一例)に沿って保持具3は1ピッチずつスライドされ、所定の期間をかけて前側に向けて移動される。
【0078】
保持具3が取出口4qに移動すると、ロボット8がハンド21をA段のレール4の取出口4qに移動し、ハンド21で保持具3を把持して受け取る。そして、ロボット8は、保持具3をB段の複数のレール4のうちの行きのレール4aに移動し、供給口4pに保持具3を挿入(載置)する。この際、行きのレール4の供給口4pは、前にハンド21によりスペーサ3sが挿入されて1ピッチ分スライドされていることにより、空いた状態になっている。これにより、保持具3はA段の間隔PWa(第1の間隔の一例)よりも広い間隔PWb(第2の間隔の一例)で並設されたB段の行きのレール4a(第2のレールの一例)に移し替えられる。
【0079】
ハンド21は、保持具3を行きのレール4の供給口4pに挿入すると、保持具3を把持したまま後側に向けて1ピッチ分押し込む。これにより、行きのレール4上の複数の保持具3及びスペーサ3sが1ピッチ分後側へスライドされる。ロボット8は、上述の保持具3のA段のレール4からB段の行きのレール4aへの移動、挿入及び押し込みの一連の動作を、A段の複数のレール4の取出口4qに位置する保持具3の1つ1つに対して順次行う。行きのレール4aの後方側では、Uターンユニット12が、行きのレール4aの取出口4qから押し出された保持具3を、プレート50の受け部50aで順次受け取る。
【0080】
次に、
図15に示すように、Uターンユニット12は、プレート50をレール4の並設方向に移動させ、複数の受け部50aで受け取った複数の保持具3を行きのレール4aに隣接する戻りのレール4bの供給口4pの後端部に位置させる。
【0081】
その後、Uターンユニット12は、プッシャ55を前方向に移動させて複数の突起部55aで複数の保持具3を1ピッチ分押し込み、保持具3を戻りのレール4bの空いていた供給口4pに挿入する。さらに、Uターンユニット12は、プッシャ55をさらに前方向に移動させ、複数の突起部55aで複数の保持具3を供給口4pから1ピッチ分押し込む。これにより、戻りのレール4b上の複数の保持具3及びスペーサ3sが1ピッチ分だけ前側にスライドする。その結果、戻りのレール4bの前端部の空いていた取出口4qにそれぞれ保持具3が移動する。
【0082】
上記ロボット8による押し込み及びUターンユニット12による押し込みにより、B段において行きのレール4a及び戻りのレール4b(第2のレールの一例)に沿って保持具3は1ピッチずつスライドされ、所定の期間をかけて後側及び前側に向けて移動される。
【0083】
戻りのレール4bの前方側では、ロボット8がハンド21を取出口4qに移動し、ハンド21で戻りのレール4bの取出口4qに移動した保持具3を把持して受け取る。
【0084】
そして、
図16に示すように、ロボット8は、ハンド21により把持した保持具3をC段の複数のレール4の1つに移動し、供給口4pに保持具3を挿入(載置)する。この際、レール4の供給口4pは、前にハンド21によりスペーサ3sが挿入されて1ピッチ分スライドされていることにより、空いた状態になっている。これにより、保持具3はB段の間隔PWb(第1の間隔の一例)よりも広い間隔PWc(第2の間隔の一例)で並設されたC段のレール4(第2のレールの一例)に移し替えられる。
【0085】
ハンド21は、保持具3をレール4の供給口4pに挿入すると、保持具3を把持したまま後側に向けて1ピッチ分押し込む。これにより、C段のレール4上の複数の保持具3及びスペーサ3sが1ピッチ分後側へスライドされる。上記ロボット8による押し込みにより、C段において間隔PWcで並設された複数のレール4に沿って保持具3は1ピッチずつスライドされ、所定の期間をかけて後側に向けて移動される。
【0086】
ロボット8は、上述の保持具3のB段の戻りのレール4bからC段のレール4への移動、挿入及び押し込みの一連の動作を、B段の各段の複数の戻りのレール4bの取出口4qに位置する保持具3の1つ1つに対して順次行う。C段のレール4の後方側では、搬出入ローダ14が出荷用パレットPoを配置しており、各レール4から1つずつ押し出される複数の保持具3を出荷用パレットPoに装着して受け取り、搬出入コンベア15に搬出する。
【0087】
<9.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の植物栽培システム1は、栽培対象の植物2を1株ごとに保持する保持具3と、レール4とを有する。レール4は、複数の保持具3を長手方向に沿って移動可能に支持し、保持具3が長手方向における一方側から供給されるごとに複数の保持具3が長手方向における他方側に向けて供給された保持具3に応じて移動するように構成される。これにより、次の効果を奏する。
【0088】
すなわち、植物栽培システム1では、栽培対象の植物2を1株ごとに保持する複数の保持具3が、レール4により長手方向に沿って移動可能に支持される。レール4では、保持具3が長手方向における一方側から供給されるごとに、複数の保持具3が長手方向における他方側に向けて供給された保持具3に応じて移動される。これにより、播種が行われた後に植物2が発芽した保持具3について、所定の期間をかけてレール4に沿って移動させつつ葉に光を当てることで、人手を介することなく植物2を生育させることが可能となる。したがって、植物2の発芽後から収穫前までの栽培を自動化することができる。
【0089】
また、レール4に保持された複数の保持具3が供給された保持具3に応じて移動される押し出し式の搬送であるため、モータ等の機械的な搬送機構が不要である。したがって、植物栽培システム1を簡素化、小型化及び低コスト化できる。
【0090】
さらに、人手を介することがないので衛生的な植物2を提供できると共に、植物2に最適な環境条件(例えば人にとっては厳しいCO
2濃度や、赤色や青色等の視認性の悪い光の照射など)にて植物2を栽培することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では特に、植物栽培システム1は、複数の保持具3の間に挿入されることで保持具3の長手方向の間隔を規定するスペーサ3sを有する。また、レール4は、複数のスペーサ3sを長手方向に沿って移動可能に支持し、スペーサ3sが一方側から供給されるごとに保持具3及びスペーサ3sが他方側に向けて供給されたスペーサ3sに応じて移動するように構成される。
【0092】
本実施形態によれば、複数の保持具3の間に適宜の数のスペーサ3sを挿入することで、植物2の生育状況に応じてレール長手方向における植物2間の間隔を調整することができる。これにより、ウレタンやロックウール等の培地を別の栽培プレートに移し替える等の作業が不要となるため、自動機(ロボット等)によるハンドリングが可能となり、移植作業の自動化が可能となる。
【0093】
また、本実施形態では特に、植物栽培システム1は、複数のレール4が設置された栽培棚7を有する。複数のレール4の各々は、一方側の端部に保持具3及びスペーサ3sの少なくとも一方が供給される供給口4pを有し、他方側の端部に保持具3及びスペーサ3sの少なくとも一方が取り出される取出口4qを有する。これにより、次の効果を奏する。
【0094】
すなわち、本実施形態では、栽培棚7に設置された複数のレール4の各々が、一方側の端部に供給口4pを有し、他方側の端部に取出口4qを有する。これにより、栽培棚7の一方側及び他方側から複数のレール4の各々に対し保持具3及びスペーサ3sを出し入れすることが容易となる。したがって、自動機(プッシャー、Uターンユニット、ロボット等)を用いて保持具3及びスペーサ3sの出し入れの自動化が可能となる。また、例えば人が出し入れ作業をする場合には作業性を向上できる。
【0095】
また、本実施形態では特に、栽培棚7は、複数段に配置された棚部9を有し、棚部9の各々にはレール4が設置されている。このように、栽培棚7を複数段構成とすることで、植物栽培システム1の設置スペースを抑制しつつ植物2の栽培スペースを増大できる。また、植物2の生育状況に応じて各棚部9の構成を異ならせる等、システム設計の自由度を高めることができる。
【0096】
また、本実施形態では特に、棚部9には複数のレール4が並設されており、栽培棚7の複数の棚部9は、レール4の並設方向の間隔が互いに異なる棚部(すなわち、A段の棚部9A、B段の棚部9B、C段の棚部9C)を含む。
【0097】
これにより、保持具3をレール間隔が異なる他の棚部9に移動させることで、植物2の生育状況に応じてレール並設方向における植物2間の間隔を調整することができる。したがって、ウレタンやロックウール等の培地を別の栽培プレートに移し替える等の作業が不要となるため、自動機(ロボット等)によるハンドリングが可能となり、移植作業の自動化が可能となる。
【0098】
また、本実施形態では特に、複数のレール4の各々は、栽培棚7において水平に設置されている。これにより、レール4の内部に培養液48を貯留することが可能となるので、レール4とは別に水槽を設ける必要が無くなり、構成を簡素化できる。また、保持具3やスペーサ3sが重力により移動するのを防止できる。
【0099】
また、本実施形態では特に、植物栽培システム1は、栽培棚7の長手方向における一方側に配置され、保持具3及びスペーサ3sの少なくとも一方を一のレール4の取出口4qから他のレール4の供給口4pに搬送するロボット8を有する。
【0100】
これにより、ロボット8を用いて保持具3をレール間隔が異なる他のレール4に移動させることで、植物2の生育状況に応じてレール並設方向における植物2間の間隔を自動で調整することができる。また、ロボット8を用いて保持具3の間に適宜の数のスペーサ3sを挿入することができるので、植物2の生育状況に応じてレール長手方向における植物2間の間隔を自動で調整することができる。したがって、移植作業を自動化できる。
【0101】
また、本実施形態では特に、ロボット8は、保持具3及びスペーサ3sの少なくとも一方を把持するハンド21と、ハンドを少なくとも長手方向に垂直且つ互いに直交する2方向(左右方向と上下方向)に沿って移動させるアクチュエータ30とを有する。
【0102】
これにより、ロボット8は、栽培棚7に設置された複数のレール4に対し、レール4の並設方向(左右方向)及び棚部9の積み重ね方向(上下方向)に沿ってハンド21を移動することが可能である。したがって、ロボット8は保持具3及びスペーサ3sの少なくとも一方を栽培棚7の任意のレール4に搬送することができる。
【0103】
また、本実施形態では特に、アクチュエータ30は、ハンド21を長手方向に沿って移動させる。これにより、ロボット8はハンド21を用いてレール4の供給口4pに位置する保持具3又はスペーサ3sを押して移動させることができる。したがって、ロボット8により保持具3及びスペーサ3sに対し押し出し式の搬送を行わせることができるので、モータ等の機械的な搬送機構が不要となり、植物栽培システム1を簡素化、小型化及び低コスト化できる。
【0104】
また、本実施形態では特に、ハンド21は、保持具3及びスペーサ3sを支持する溝部28aが形成された一対の爪部材25を有する。これにより、ハンド21の爪部材25により保持具3及びスペーサ3sに対して各種の操作(受け取り、移動、押し込み等)を行う際に、安定して把持できることにより落下や滑り等を抑制でき、操作の確実性を向上できる。
【0105】
また、本実施形態では特に、保持具3は、レール4のガイド溝43a,43bに収容される突起部33a,33bと、レール4と対向する対向部32bと、ハンド21に把持された際に爪部材25により支持される支持部35とを有する。突起部33a,33bには、植物2を保持するための穴部34が形成される。これにより、次の効果を奏する。
【0106】
すなわち、保持具3が植物2を保持するための穴部34を有することにより、植物2の根2cを下方に垂らして培養液38に浸しつつ、植物2の葉2bを上方で成長させることができる。また、保持具3及びスペーサ3sが突起部33a,33b及び対向部32bを有することにより、レール上を滑らかにスライドさせることができる。また、保持具3及びスペーサ3sが支持部35を有することにより、ハンド21による各種操作(受け取り、移動、押し込み等)の確実性を向上できる。
【0107】
また、本実施形態では特に、保持具3及びスペーサ3sは、共通の部品で構成される。これにより、保持具3とスペーサ3sを共通化できるので、別々の部品で構成する場合に比べてコストを削減できる。また、保持具3とスペーサ3sの両方を支持するレール4や両方を把持するハンド21等の設計が容易となる。
【0108】
また、本実施形態の植物栽培システム1では、栽培対象の植物2を1株ごとに保持する保持具3を、所定の期間をかけて第1の間隔で並設された第1のレール4に沿って移動させることと、保持具3を第1の間隔よりも広い第2の間隔で並設された第2のレール4に移し替えることと、保持具3を所定の期間をかけて第2のレール4に沿って移動させることと、を有する植物栽培方法が実施される。
【0109】
すなわち、上記植物栽培方法では、栽培対象の植物2を1株ごとに保持する保持具3を、所定の期間をかけてA段のレール4、B段のレール4、及びC段のレール4に沿って移動させる。これにより、播種が行われた後に植物2が発芽した保持具3について各レール4に沿って移動させつつ葉2bに光を当てることで、人手を介することなく植物を生育させることが可能となる。したがって、植物2の発芽後から収穫前までの栽培を自動化することができる。
【0110】
また、保持具3を第1のレール4からより間隔の広い第2のレール4に移し替えることで、植物2の生育状況に応じてレール並設方向における植物2間の間隔を調整することができる。したがって、ウレタンやロックウール等の培地を別の栽培プレートに移し替える等の作業が不要となるため、自動機(ロボット等)によるハンドリングが可能となり、移植作業の自動化が可能となる。
【0111】
また、本実施形態では特に、ロボット8は、ハンド21に配置され、ハンド21により把持された保持具3の植物2の生育状況を検出するセンサ27を有する。これにより、次の効果を奏する。
【0112】
仮に、生育状況が不良である植物2を栽培棚7にそのまま配置しておくと、栽培スペースに無効なスペースが生じることになる。本実施形態では、ロボット8のハンド21が保持具3を把持した際にセンサ27が植物2の生育状況を検出する。これにより、例えば生育状況が不良である場合には当該保持具3をレール4に搬送せずに廃棄場所に搬送することが可能となる。その結果、栽培棚7には生育状況が良好な植物2のみが配置されることになるので、栽培スペースを有効活用することができる。
【0113】
<10.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0114】
(10−1.C段のレールの保持具をパレットを用いて押す場合)
上記実施形態では、ロボット8のハンド21により、C段の複数のレール4に対して保持具3を各レールごとに1つ1つ押すようにしたが、例えばパレットを用いて複数の保持具3をまとめて押してもよい。本変形例の一例を
図17に示す。
【0115】
図17に示すように、パレットPcは、複数の保持具3を装着するための複数の切り欠き状の凹部60を有する。凹部60の間隔は、C段の棚部9Cにおけるレール4の間隔PWcと略一致している。ロボット8は、複数の保持具3が装着されたパレットPcをハンド21により保持し、後側に向けて押すことにより、各レール4に支持された複数の保持具3を一度に後側に向けてスライドさせることが可能となる。したがって、ロボット8によるC段での押し込み作業を効率化できる。また、パレットPcを保持具3の間に挿入してレール4に沿って移動させることで、パレットPcをスペーサとして使用することもできる。
【0116】
なお、パレットPcの凹部60の切り込み長さを、例えば左右方向(パレットの長手方向)に沿って交互に変化させることで、保持具3(植物2)を千鳥状に配置することができる。これにより、C段のレール間隔をより狭くして保持具3(植物2)を密集配置することが可能となり、栽培棚7の栽培スペースをより有効活用することが可能となる。
【0117】
(10−2.レール間隔が異なる複数種類のレール群が同じ棚部に配置される場合)
上記実施形態では、栽培棚7のA段の棚部9A、B段の棚部9B、C段の棚部9C間では、レール4の並設方向の間隔が互いに異なるが、1つの棚部内ではレール4の並設方向の間隔が同一となるように構成される。但し、これに限定されるものではなく、栽培棚7がレール4の並設方向の間隔が互いに異なる複数種類のレール群が共に配置された棚部を有してもよい。本変形例の一例を
図18に示す。
【0118】
図18に示すように、栽培棚7が備える棚部9’には、並設された複数のレール4の並設方向の間隔が互いに異なる2種類のレール群65Aとレール群65Bとが配置されている。レール群65Aは、レール4の並設方向の間隔が広く、レール4が粗に配置され、レール群65Bは、レール群65Aよりもレール4の並設方向の間隔が狭く、レール4が密に配置されている。
【0119】
本変形例によれば、同一の棚部9’において保持具3をレール間隔が異なる他のレール群に移動させることで、植物2の生育状況に応じてレール並設方向における植物2間の間隔を調整することができる。したがって、ウレタンやロックウール等の培地を別の栽培プレートに移し替える等の作業が不要となるため、自動機(ロボット等)によるハンドリングが可能となり、移植作業の自動化が可能となる。
【0120】
(10−3.保持具の穴部に網状シートを設置する場合)
上記実施形態では、保持具3で保持した植物2は、穴部34に充填した培地36に種子を播種して発芽させたものであるが、穴部34に培地36なしに種子を播種し、発芽させてもよい。上記実施形態の保持具3を
図19Aに示し、本変形例の保持具3’を
図19Bに示す。
【0121】
図19Aに示すように、上記実施形態では、保持具3の穴部34に培地36を充填し、その培地36により播種した植物2の種子63を保持し、植物2を生育させる。
【0122】
一方、
図19Bに示すように、本変形例では、保持具3’の穴部34の底に網状シート64が取り付けられており、網状シート64で播種した植物2の種子63を保持し、植物2を生育させる。
【0123】
本変形例の保持具3’によれば、培地なしで種子63を保持することができる。
【0124】
(10−4.旋回可能なロボットの周囲に複数の栽培棚を設けた場合)
本変形例では、
図20A及び
図20Bに示すように、ロボット8’が旋回可能に構成されており、そのロボット8’の周囲の複数箇所に栽培棚7が配置される。例えば
図20Aに示す例では、2つの栽培棚7がロボット8’を挟むように配置される。また例えば、
図20Bに示す例では、4つの栽培棚7がロボット8’の周囲を囲むように配置される。ロボット8’は、旋回移動又は旋回動作により複数の栽培棚7に対して順次相対しつつ、上記実施形態におけるロボット8と同様の操作を行う。
【0125】
本変形例によれば、1台のロボット8’で複数の栽培棚7に対して各種の操作を行うことが可能となる。言い換えると、複数の栽培棚7でロボット8’を共用できる。したがって、植物栽培システムを簡素化、小型化及び低コスト化できる。
【0126】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0127】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0128】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0129】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。