特許第6598139号(P6598139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598139表示制御装置、表示制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598139
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20191021BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20191021BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G09G3/20 650A
   G09G5/00 510X
   G09G3/20 633D
   G09G3/20 631V
   G09G3/20 612J
   G09G5/00 550X
   H04N5/66 D
   G09G3/20 650B
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-70541(P2016-70541)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181866(P2017-181866A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友哉
【審査官】 斎藤 厚志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−178114(JP,A)
【文献】 特開2015−135388(JP,A)
【文献】 特開2009−116254(JP,A)
【文献】 特開2007−140180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20
G09G 5/00
H04N 5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号を受け付ける受付手段と、
前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とを測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定されたデータが予め用意されている信号テーブルに保持されていない場合に、前記測定手段による測定結果に対応する暫定信号テーブルを作成するテーブル作成手段と、
前記測定手段による測定結果に基づいて、前記予め用意されている信号テーブルから前記画像信号の有効表示領域情報を前記暫定信号テーブルに格納する格納手段と、
前記格納手段により前記暫定信号テーブルに格納された暫定信号テーブルの有効表示領域情報に基づいて、前記画像信号の有効表示領域情報を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された有効表示領域情報を用いて前記暫定信号テーブルを更新する更新手段と、
を備えたことを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記画像信号の有効表示領域情報が複数検出された場合に、当該検出された複数の有効表示領域情報のうちから、前記格納手段により格納された暫定信号テーブルの有効表示領域情報に類似度が最も高い有効表示領域情報を検出結果として選択することを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記信号テーブルは、クロック情報を格納しており、
前記検出手段は、前記クロック情報と前記水平走査時間とに基づいて前記画像信号の有効表示領域情報を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記テーブル作成手段は、前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とに基づいて前記暫定信号テーブルを作成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記テーブル作成手段は、前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とに近い前記信号テーブルにおける前記垂直走査線数及び前記水平走査時間とを含んだ一組のテーブルを前記暫定信号テーブルとして作成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記受付手段によって受け受けられた画像信号に含まれる水平同期信号から最初の画像データまでのドットクロック数を、出力用左端画素番号として検出することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記受付手段によって受け受けられた画像信号に含まれる水平同期信号から最後の画像データまでのドットクロック数を、出力用右端画素番号として検出することを特徴とする請求項6に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記受付手段によって受け付けられた画像信号に含まれる垂直同期信号から最初の画像データを含む水平同期期間までの間のドットクロック数を、出力用上端走査線番号として検出することを特徴とする請求項7に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記受付手段によって受け付けられた画像信号に含まれる垂直同期信号から最後の画像データを含む水平同期期間までの間のドットクロック数を、出力用下端走査線番号として検出することを特徴とする請求項8に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記有効表示領域情報は、垂直走査線数と水平走査時間と左端画素番号と右端画素番号と上端走査線番号と下端走査線番号とを少なくとも含む画像の有効表示領域を規定するためのデータであることを特徴とする請求項9に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記更新手段は、前記暫定信号テーブルにおける前記左端画素番号を前記出力用左端画素番号に更新し、前記暫定信号テーブルにおける前記右端画素番号を前記出力用右端画素番号に更新し、前記暫定信号テーブルにおける前記上端走査線番号を前記出力用上端走査線番号に更新し、前記暫定信号テーブルにおける前記下端走査線番号を前記出力用下端走査線番号に更新することを特徴とする請求項10に記載の表示制御装置。
【請求項12】
表示制御装置により実行される表示制御方法であって、
画像信号を受け付ける受付ステップと、
前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とを測定する測定ステップと、
前記測定ステップ測定されたデータが予め用意されている信号テーブルに保持されていない場合に、前記測定ステップでの測定結果に対応する暫定信号テーブルを作成するテーブル作成ステップと、
前記測定ステップでの測定結果に基づいて、前記予め用意されている信号テーブルから前記画像信号の有効表示領域情報を前記暫定信号テーブルに格納する格納ステップと、
前記格納ステップで前記暫定信号テーブルに格納された暫定信号テーブルの有効表示領域情報に基づいて、前記画像信号の有効表示領域情報を検出する検出ステップと、
前記検出ステップ検出された有効表示領域情報を用いて前記暫定信号テーブルを更新する更新ステップと、
を順に実行することを特徴とする表示制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、
画像信号を受け付ける受付手段、
前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とを測定する測定手段、
前記測定手段によって測定されたデータが予め用意されている信号テーブルに保持されていない場合に、前記測定手段による測定結果に対応する暫定信号テーブルを作成するテーブル作成手段、
前記測定手段による測定結果に基づいて、前記予め用意されている信号テーブルから前記画像信号の有効表示領域情報を前記暫定信号テーブルに格納する格納手段、
前記格納手段により前記暫定信号テーブルに格納された暫定信号テーブルの有効表示領域情報に基づいて、前記画像信号の有効表示領域情報を検出する検出手段、
前記検出手段により検出された有効表示領域情報を用いて前記暫定信号テーブルを更新する更新手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイやプロジェクタなどの二次元表示装置に用いられる表示制御装置、表示制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプロジェクタなどの二次元表示装置(以下、単に表示装置)は、たとえば、パーソナルコンピュータやVTR(Video Tape Recorder)またはDVD(Digital Versatile Disc)プレイヤーなどの映像ソースから出力される様々な画像信号を表示するために用いられる。
【0003】
表示装置に入力される画像信号は、解像度などの違いによって様々な種類がある。たとえば、VGA(Video Graphics Array)、SVGA(Super VGA)、XGA(Extended Graphics Array)、WXGA(Wide XGA)、SXGA(Super XGA)、SXGA+などの規格化された信号(以下、標準信号)である。表示装置の多くはこれらの標準信号に対応している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−282443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、映像ソースによっては規格外の画像信号(以下、非標準信号)を出力するものがあり、表示装置は、そのような非標準信号を表示することができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、規格外の画像信号(非標準信号)であっても表示できる表示制御装置、表示制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表示制御装置は、画像信号を受け付ける受付手段と、前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とを測定する測定手段と、前記測定手段によって測定されたデータが予め用意されている信号テーブルに保持されていない場合に、前記測定手段による測定結果に対応する暫定信号テーブルを作成するテーブル作成手段と、前記測定手段による測定結果に基づいて、前記予め用意されている信号テーブルから前記画像信号の有効表示領域情報を前記暫定信号テーブルに格納する格納手段と、前記格納手段により前記暫定信号テーブルに格納された暫定信号テーブルの有効表示領域情報に基づいて、前記画像信号の有効表示領域情報を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された有効表示領域情報を用いて前記暫定信号テーブルを更新する更新手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る表示制御方法は、表示制御装置により実行される表示制御方法であって、画像信号を受け付ける受付ステップと、前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とを測定する測定ステップと、前記測定ステップで測定されたデータが予め用意されている信号テーブルに保持されていない場合に、前記測定ステップでの測定結果に対応する暫定信号テーブルを作成するテーブル作成ステップと、前記測定ステップでの測定結果に基づいて、前記予め用意されている信号テーブルから前記画像信号の有効表示領域情報を前記暫定信号テーブルに格納する格納ステップと、前記格納ステップで前記暫定信号テーブルに格納された暫定信号テーブルの有効表示領域情報に基づいて、前記画像信号の有効表示領域情報を検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出された有効表示領域情報を用いて前記暫定信号テーブルを更新する更新ステップと、を順に実行することを特徴とする。
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、画像信号を受け付ける受付手段、前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とを測定する測定手段、前記測定手段によって測定されたデータが予め用意されている信号テーブルに保持されていない場合に、前記測定手段による測定結果に対応する暫定信号テーブルを作成するテーブル作成手段、前記測定手段による測定結果に基づいて、前記予め用意されている信号テーブルから前記画像信号の有効表示領域情報を前記暫定信号テーブルに格納する格納手段、前記格納手段により前記暫定信号テーブルに格納された暫定信号テーブルの有効表示領域情報に基づいて、前記画像信号の有効表示領域情報を検出する検出手段、前記検出手段により検出された有効表示領域情報を用いて前記暫定信号テーブルを更新する更新手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、規格外の画像信号(非標準信号)であっても表示できる表示制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プロジェクタの概念構成図である。
図2】常用信号テーブル19の構成図である。
図3】標準信号の一表示例を示す図である。
図4】暫定信号テーブル20の構成図である。
図5】プロジェクタの概略動作フロー(1/2)である。
図6】プロジェクタの概略動作フロー(2/2)である。
図7】非標準信号の一例説明図である。
図8】アクティブエリアの水平方向の検出概念図である。
図9】アクティブエリアの垂直方向の検出概念図である。
図10】非標準信号の他の一例説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、プロジェクタ(画像投影装置ともいう)への適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、プロジェクタの概念構成図である。
この図において、プロジェクタ1は、たとえば、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)レシーバ2、ADC(Analog to Digital Converter)3、Videoデコーダ4、記憶部5、RAM(Random Access Memory)6、OPM(Optical Module)7、CPU8、オーディオデバイス9、操作部10、ポジションセンサ11、モータドライバ12、カラーホイール13、DMD(Digital Mirror Device)14を備える。
【0012】
HDMI(登録商標)レシーバ2は、HDMI(登録商標)信号15(HDMI(登録商標)規格の画像信号)を取り込み、また、ADC3は、RGB信号16(色の三原色の画像信号)を取り込み、さらに、Videoデコーダ4は、Video信号17(同期信号などを含む画像信号)を取り込み、これらのHDMI(登録商標)レシーバ2、ADC3及びVideoデコーダ4は、取り込んだ画像信号から、映像投影に必要な各種信号(垂直同期信号、水平同期信号、映像信号及びドットクロックなど)を生成してCPU8に出力する。
【0013】
記憶部5は、CPU8の動作に必要な各種データを保持する記憶要素である。各種データの一つは、CPU8がプログラム制御方式の制御要素(マイクロコンピュータを主体にしたハードウェア)で構成されている場合、その制御要素の動作を規定する制御プログラム18(マイクロコンピュータで動作するソフトウェア)である。各種データの他の一つは、画像信号の種類に対応した標準信号用の信号テーブル19であり、さらに他の一つは、規格外の画像信号(非標準信号)が入力された場合に一時的に使用する仮の信号テーブル20である。以下、これら二つの信号テーブル19、20を区別するため、便宜的に、前者の信号テーブル19を「常用信号テーブル19」と呼称し、後者の信号テーブル20を「暫定信号テーブル20」と呼称することにする。常用信号テーブル19と暫定信号テーブル20の詳細は、後で説明する。
【0014】
RAM6は、CPU8のワークエリアとして機能し、また、OPM7は、プロジェクタ1の電動ズーム・フォーカスを制御する。
【0015】
CPU8は、プロジェクタ1の動作を統括的に制御する制御要素であり、また、オーディオデバイス9は、CPU8から出力されたオーディオデータを再生出力するスピーカ等の音響要素であり、さらに、操作部10は、プロジェクタ1に対するユーザの入力操作を受け付けるボタンやタッチパネル等のユーザインターフェイス要素である。
【0016】
カラーホイール13は、赤、青、緑のフィルタを一体にした回転円盤であり、モータドライバ12は、このカラーホイール13を回転駆動し、ポジションセンサ11は、このカラーホイール13の回転角度を検出する。
【0017】
DMD14は、多数の微小鏡面(可動式のマイクロミラー)を平面に配列した表示素子である。鏡面下部に設けた電極を駆動することにより、各マイクロミラーに「ON」と「OFF」の二つの状態及びその間の任意の角度状態を持たせることができる。ミラーが「ON」のときは不図示の内部光源からの光を外部に反射して不図示のスクリーンに投射し、「OFF」のときは光を内部の吸収体に反射して外部には投射しない。また、任意角度にしたときはその角度に対応した大きさの光を反射する。これにより、各マイクロミラーを個別に駆動することにより、表示画素ごとに光の投射を制御することができる。
【0018】
常用信号テーブル19と暫定信号テーブル20の詳細について説明する。
図2は、常用信号テーブル19の構成図である。なお、図示の常用信号テーブル19は、No.1からNo.32までの32種類の規格の標準信号に対応しているが、これらの規格は一例に過ぎない。代表的なものだけを網羅してもよく、あるいは他の規格を含めてもよい。
【0019】
ここで、規格の表記法は{水平画素数}×{垂直画素数}/{フレーム周波数}の形式になっている。たとえば、No.1の規格は、水平画素数=640(画素)、垂直画素数=350(画素)、フレーム周波数=85(Hz)である。
【0020】
常用信号テーブル19のレコードは、少なくとも、7つのフィールドで構成されており、各フィールドの名称と意味は、以下のとおりである。
V−TotalLine:垂直走査線数
H−TotalTime(ns):水平走査時間
ActiveLeftPixel:有効表示領域左端画素番号
ActiveRightPixel:有効表示領域右端画素番号
ActiveTopLine:有効表示領域上端走査線番号
ActiveBottomLine:有効表示領域下端走査線番号
ADC−SampleClock:サンプリングクロック数
【0021】
図3は、標準信号の一表示例を示す図である。図3(a)において、外側の横長矩形21の短辺長(縦長)はV−TotalLine、長辺長(横長)はH−TotalTime(ns)であり、この横長矩形21の内側に位置する横長矩形は、画像の有効表示領域22(アクティブエリアともいう)を表している。
【0022】
有効表示領域22の左端はActiveLeftPixelで与えられ、右端はActiveRightPixelで与えられる。さらに、有効表示領域22の上端はActiveTopLineで与えられ、下端はActiveBottomLineで与えられる。
【0023】
図3(b)において、たとえば、図2の標準信号のNo.13を例にすると、
V−TotalLine=806
H−TotalTime(ns)=20677
ActiveLeftPixel=297
ActiveRightPixel=1320
ActiveTopLine=35
ActiveBottomLine=802
であるので、有効表示領域22の短辺長(縦長:V−ActivePixel)と長辺長(横長:H−ActivePixel)は、それぞれ、
V−ActivePixel=802−35+1=768
H−ActivePixel=1320−297+1=1024
となる。
【0024】
図4は、暫定信号テーブル20の構成図である。この暫定信号テーブル20も、前記の常用信号テーブル19と同名の少なくとも7つのフィールドからなるレコードで構成されている。前記の常用信号テーブル19との違いは、1レコードであること、及び、各フィールドに仮の値(たとえば“0”)が格納されていることである。この暫定信号テーブル20は、プロジェクタ1に、規格外の画像信号(非標準信号)が入力されたときに使用される。
【0025】
図5図6は、プロジェクタの概略動作フローである。
図5において、CPU8は、まず、入力された画像信号のV−TotalLineとH−TotalTimeを測定する(ステップS11及びステップS12)。前述のとおり、V−TotalLineは垂直走査線数であり、H−TotalTimeは水平走査時間であるので、V−TotalLineは、連続する一の垂直同期信号から二の垂直同期信号までの間の水平同期信号の「数」で与えられ、H−TotalTimeは、連続する一の水平同期信号から二の水平同期信号までの「時間」で与えられる。
【0026】
次に、CPU8は、測定されたV−TotalLine及びH−TotalTimeと等値のデータが常用信号テーブル19に格納されているか否かを判定する(ステップS12)。
【0027】
たとえば、測定されたV−TotalLineとH−TotalTimeがそれぞれ「26413」と「445」であった場合は、これらと等値のデータが常用信号テーブル19のNo.1に格納されているので、CPU8は、このNo.1のデータを使用することを決定する。CPU8は、アクティブエリアの設定に用いる数値として、使用を決定したNo.1のテーブルデータの各値を参照し、設定を行うことで、投影を行う(ステップS13)。
【0028】
一方、ステップS12の判定結果がNOの場合、つまり、測定されたV−TotalLine及びH−TotalTimeと等値のデータが常用信号テーブル19に格納されていなかった場合は、図6の処理に分岐する。以下、説明の便宜上、測定されたV−TotalLine及びH−TotalTimeをそれぞれ「806」と「20500」と仮定する。
【0029】
図6において、記憶部5から暫定信号テーブル20を読み込み(ステップS14)、CPU8は、測定されたV−TotalLine及びH−TotalTimeの値を暫定信号テーブル20に書き込む(ステップS15)。
【0030】
このとき、暫定信号テーブル20の他の値(V−TotalLineとH−TotalTime以外の値)は、常用信号テーブル19の近いデータを暫定値として採用する。いま、常用信号テーブル19のNo.13が、V−TotalLine及びH−TotalTime「806」と「20500」に最も近いので、このNo.13のデータを、他の値(ActiveLeftPixel、ActiveRightPixel、ActiveTopLine、ActiveBottomLine、ADC−SampleClock)として暫定採用し、CPU8は、暫定信号テーブル20に書き込む(テーブル作成手段)。なお、常用信号テーブル19から最も近いデータを選択する手法としては、V−TotalLineもしくはH−TotalTimeのどちらか所定の一方の数値が最も近いテーブルデータを選択することが考えられる。また、測定されたV−TotalLine及びH−TotalTimeの数値の合計値と、常用信号テーブル19の各テーブルデータにおけるV−TotalLine及びH−TotalTimeの合計値とを比較し、その差が最も小さいテーブルデータを選択する等も考えられる。
【0031】
次いで、信号サーチ、すなわち、CPU8で入力信号の有無を検出し、信号があれば、それがどのような信号かを判別する処理を実行する(ステップS16)。
【0032】
次に、CPU8は、暫定信号テーブル20の各値をアクティブエリアの設定に用いる数値として決定し、暫定信号テーブル20の各値を参照し(ステップS17)、アクティブエリア(有効表示領域22)を検出する(ステップS18)。
【0033】
そして、CPU8は、アクティブエリアの各データ、すなわち、ActiveLeftPixel(有効表示領域左端画素番号)、ActiveRightPixel(有効表示領域右端画素番号)、ActiveTopLine(有効表示領域上端走査線番号)、ActiveBottomLine(有効表示領域下端走査線番号)を検出する。なおアクティブエリアの各データの検出手法に関しては後述する。また、ADC−SampleClock(サンプリングクロック数)を暫定信号テーブル20の値を参照することで決定し(ステップS19)、暫定信号テーブル20を更新するとともに、更新後の暫定信号テーブル20を常用信号テーブル19に追加する(ステップS20)。
【0034】
次いで、CPU8は、信号をサーチし(ステップS21)、新しい信号テーブル(暫定信号テーブル20)の各値をアクティブエリアの設定に用いる数値として設定することで投影を行う(ステップS22)。
【0035】
図7は、非標準信号の一例説明図である。この図において、V−TotalLineの「806」とH−TotalTimeの「20500」の双方と等値のデータは、常用信号テーブル19に格納されていない。最も近いデータはNo.13である。最も近いデータの選択方法については上述の通りである。
【0036】
したがって、この場合は、暫定信号テーブル20のV−TotalLineとH−TotalTimeに、それぞれ「806」と「20500」が格納されるとともに、他の値(A〜E)には、常用信号テーブル19のNo.13のデータ(「297」、「1320」、「35」、「802」、「1344」)が暫定的に格納される。
【0037】
暫定信号テーブル20に格納された常用信号テーブル19のNo.13のデータは、入力信号の実際の数値とは異なる場合がある。しかし、入力信号のV−TotalLine及びH−TotalTimeと近しい値を持つ常用信号テーブル19のデータは、他の値についても入力信号の数値と近い数値である。
【0038】
この時、実際の入力信号に含まれるADC−SampleClockの値と、暫定信号テーブル20のADC−SampleClockの値とが異なる場合があるが、異なったとしても、近しい数値である。そのため、入力されている画像データの外周部分が僅かにズレるだけで済む。よって、投影内容への影響は少ない。
【0039】
暫定信号テーブル20を作成することで、有効表示領域22の検出時に、例えば、入力信号のノイズ等により、端となる候補の値が複数箇所検出される場合などにおいて、暫定信号テーブル20に保持されている値に近い候補を選択することにより、より正確な数値に近い有効表示領域22を検出することができる。
【0040】
暫定信号テーブル20を作成後、入力信号に含まれる値の検出を行い、それらの実測値で暫定信号テーブル20の各値を更新する。ここで、入力信号が表す画像データが仮に全黒画像である場合、もしくは画像の外周部分が黒である場合などにおいては、RGBの値が全て0となり、アクティブエリアの検出が正確に行えない。このような場合においては、先に述べた暫定信号テーブル20の数値をそのまま投影時の設定として用いることで、ズレの少ない投影を行うことが可能となる。
【0041】
図8は、アクティブエリアの水平方向の検出概念図である。なお、図の(a)は点検用カラーバーのように明暗がはっきりしている画像信号例を示し、図の(b)はパーソナルコンピュータのように明暗が微妙に変化する画像信号例を示している。以下で述べる各値の検出は、暫定信号テーブル20で指定されているADC−SampleClockを用いることで可能となる。例えば、暫定信号テーブル20で指定されているADC−SampleClockの値が1344である場合は、図8における水平同期信号が立ち上がってから、次に水平同期信号が立ち上がるまでの間に、1344のドットクロックがある状態となる。
【0042】
ここで、暫定信号テーブル20の各値を、入力信号の実測値に更新するため、H−TotalTimeの値でADC−SampleClockの値を割る。これにより、ドットクロック1つの周期時間が算出される。算出されたドットクロック1つの周期時間を利用することで、入力信号からActiveLeftPixel、ActiveRightPixel、ActiveTopLine、ActiveBottomLineの値を算出することができる。上記それぞれの算出方法を以下に述べる。
【0043】
他の値のA、つまり、ActiveLeftPixel(有効表示領域左端画素番号)は、水平同期信号から最初の画像データ(R、G、Bデータ)までの間のドットクロック数で算出される。
【0044】
また、他の値のB、つまり、ActiveRightPixel(有効表示領域右端画素番号)は、水平同期信号から最後の画像データ(R、G、Bデータ)までの間のドットクロック数で算出される。
【0045】
図9は、アクティブエリアの垂直方向の検出概念図である。
他の値のC、つまり、ActiveTopLine(有効表示領域上端走査線番号)は、垂直同期信号から最初の画像データ(R、G、Bデータ)を含む水平同期期間までの間のドットクロック数で算出される。
【0046】
また、他の値のD、つまり、ActiveBottomLine(有効表示領域下端走査線番号)は、垂直同期信号から最後の画像データ(R、G、Bデータ)を含む水平同期期間までの間のドットクロック数で算出される。
【0047】
このようにして、暫定信号テーブル20のV−TotalLineとH−TotalTime並びにAからEまでの他の値を決定し、この暫定信号テーブル20を用いて有効表示領域22の設定を行うことにより、非標準信号の画像を支障なく投影することができる。
【0048】
すなわち、図7(a)に示すように、
V−TotalLine=806
H−TotalTime(ns)=20500
ActiveLeftPixel=197
ActiveRightPixel=1220
ActiveTopLine=35
ActiveBottomLine=802
ADC−SampleClock=1344
の画像を表示(ここでは投影)することができる。
【0049】
図10は、非標準信号の他の一例説明図である。この図において、V−TotalLineの「806」とH−TotalTimeの「20450」の双方と等値のデータは、常用信号テーブル19に格納されていない。最も近いデータはNo.13である。最も近いデータの選択方法については上述の通りである。
【0050】
このような非標準信号の場合も、(a)に示すように、
V−TotalLine=806
H−TotalTime(ns)=20450
ActiveLeftPixel=180
ActiveRightPixel=1199
ActiveTopLine=35
ActiveBottomLine=802
ADC−SampleClock=1344
の画像を表示(ここでは投影)することができる。
【0051】
なお、以上の説明では、プロジェクタ1への適用を例にしたが、これに限定されない。様々な規格の画像信号を表示する表示装置、または、その表示装置に用いられる表示制御装置であればよい。
【0052】
以下に、本件出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0053】
(付記)
[1]付記1は、画像信号を受け付ける受付手段と、
前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とを測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定されたデータが予め用意されている信号テーブルに保持されていない場合に暫定信号テーブルを作成するテーブル作成手段と、
前記画像信号から画像の有効表示領域を規定するためのデータを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果で前記暫定信号テーブルを更新する更新手段と、
を備えたことを特徴とする表示制御装置である。
[2]付記2は、前記画像信号の有効表示領域を規定するためのデータを含む各種データを記憶した前記信号テーブルを格納する格納手段を更に備え、
前記格納手段に格納されている前記信号テーブルは、少なくとも7つの要素で構成されており、
前記信号テーブルは、垂直走査線数と水平走査時間と左端画素番号と右端画素番号と上端走査線番号と下端走査線番号とを少なくとも含む一組のテーブルが少なくとも1つ格納されていることを特徴とする付記1に記載の表示制御装置である。
[3]付記3は、前記信号テーブルは、クロック情報を格納しており、
前記検出手段は、前記クロック情報と前記水平走査時間とに基づいて前記画像信号から画像の有効表示領域を規定するためのデータを検出することを特徴とする付記1又は2に記載の表示制御装置である。
[4]付記4は、前記テーブル作成手段は、前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とに基づいて前記暫定信号テーブルを作成することを特徴とする付記1又は2に記載の表示制御装置である。
[5]付記5は、前記テーブル作成手段は、前記画像信号の垂直走査線数と水平走査時間とに近い前記信号テーブルにおける前記垂直走査線数及び前記水平走査時間とを含んだ前記一組のテーブルを前記暫定信号テーブルとして作成することを特徴とする付記2に記載の表示制御装置である。
[6]付記6は、前記検出手段は、前記受付手段によって受け受けられた画像信号に含まれる水平同期信号から最初の画像データまでのドットクロック数を、出力用左端画素番号として検出することを特徴とする付記1〜5の何れか一項に記載の表示制御装置である。
[7]付記7は、前記検出手段は、前記受付手段によって受け受けられた画像信号に含まれる水平同期信号から最後の画像データまでのドットクロック数を、出力用右端画素番号として検出することを特徴とする付記6に記載の表示制御装置である。
[8]付記8は、前記検出手段は、前記受付手段によって受け受けられた画像信号に含まれる垂直同期信号から最初の画像データを含む水平同期期間までの間のドットクロック数を、出力用上端走査線番号として検出することを特徴とする付記7に記載の表示制御装置である。
[9]付記9は、前記検出手段は、前記受付手段によって受け受けられた画像信号に含まれる垂直同期信号から最後の画像データを含む水平同期期間までの間のドットクロック数を、出力用下端走査線番号として検出することを特徴とする付記8に記載の表示制御装置である。
[10]付記10は、前記更新手段は、前記暫定信号テーブルにおける前記左端画素番号を前記出力用左端画素番号に更新し、前記暫定信号テーブルにおける前記右端画素番号を前記出力用右端画素番号に更新し、前記暫定信号テーブルにおける前記上端走査線番号を前記出力用上端走査線番号に更新し、前記暫定信号テーブルにおける前記下端走査線番号を前記出力用下端走査線番号に更新することを特徴とする付記9に記載の表示制御装置である。
【符号の説明】
【0054】
1 プロジェクタ(表示制御装置)
2 HDMI(登録商標)レシーバ(受付手段)
3 ADC(受付手段)
4 Videoデコーダ(受付手段)
5 記憶部(格納手段)
8 CPU(測定手段、テーブル作成手段、検出手段、更新手段)
15 HDMI(登録商標)信号(画像信号)
16 RGB信号(画像信号)
17 Video信号(画像信号)
19 常用信号テーブル(信号テーブル)
20 暫定信号テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10