特許第6598154号(P6598154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIエアロスペースの特許一覧 ▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許6598154-爆発物探知システム 図000002
  • 特許6598154-爆発物探知システム 図000003
  • 特許6598154-爆発物探知システム 図000004
  • 特許6598154-爆発物探知システム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598154
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】爆発物探知システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/18 20100101AFI20191021BHJP
   G01S 17/42 20060101ALI20191021BHJP
   F41H 11/136 20110101ALI20191021BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20191021BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20191021BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20191021BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20191021BHJP
   G01S 5/16 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G01S19/18
   G01S17/42
   F41H11/136
   B64C39/02
   B64D47/00
   B64C13/18 Z
   G05D1/02 H
   G01S5/16
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-217531(P2015-217531)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-90115(P2017-90115A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】生川 俊則
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3376952(JP,B2)
【文献】 特開2002−168623(JP,A)
【文献】 特開2012−037204(JP,A)
【文献】 特開2006−300700(JP,A)
【文献】 特開2015−145784(JP,A)
【文献】 特開2010−250478(JP,A)
【文献】 特開2004−317244(JP,A)
【文献】 特開2015−161552(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0275472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00−19/55
G01S 7/48−7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
G05D 1/00−1/12
F41H 11/12−11/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体と無人地上走行装置とを備える爆発物探知システムであって、
上記無人飛行体が、カメラと、GPS受信器と、無線通信装置とを備え、探知した爆発物位置情報を上記無人地上走行装置に送信するものであり、
上記無人地上走行装置が、爆発物探知装置と、爆発物処理装置と、GPS受信器と、無線通信装置と、演算装置とを備えるものであり、
上記演算装置が、上記無人飛行体及び/又は上記無人地上走行装置が備えるライダーによって取得した上記無人飛行体と上記無人地上走行装置との相対的位置と、上記無人飛行体又は上記無人地上走行装置のいずれか一方の上記GPS受信器で取得したGPS自己位置とから、他方の相対的位置を演算するものであることを特徴とする爆発物探知システム。
【請求項2】
上記無人地上走行装置が、GPS自己位置を取得できないとき、GPS受信エラー、及び、上記相対的位置を送信し、
該GPS受信エラーを受信した無人飛行体が、上記ライダーによる相対的位置取得可能エリア内で爆発物探知を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の爆発物探知システム。
【請求項3】
上記無人地上走行装置が、GPS自己位置を取得できないとき、GPS受信エラー、及び、デッドレコニングによって取得したDR自己位置を送信し、
該GPS受信エラーを受信した無人飛行体が、上記無人地上走行装置のDR自己位置に基づいて、上記ライダーによる相対的位置取得可能エリア内を飛行するものであることを特徴とする請求項1に記載の爆発物探知システム。
【請求項4】
上記無人地上走行装置が、GPS自己位置及び上記相対的位置を取得できないとき、
GPS受信できた位置までデッドレコニング航法により走行するものであることを特徴とする請求項3に記載の爆発物探知システム。
【請求項5】
上記無人地上走行装置が、上記無人飛行体からの爆発物位置情報に基づいて爆発物を処理するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。
【請求項6】
上記無人地上走行装置が、上記無人飛行体に電力を供給する給電装置を備えるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。
【請求項7】
上記無人飛行体が、無線通信の中継を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。
【請求項8】
無人飛行体及び/又は無人地上走行装置をそれぞれ複数備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆発物探知システムに係り、更に詳細には、無人飛行体と無人地上走行装置とが連携して爆発物を探知するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球上においては、しばしば紛争が発生することがあり、戦闘に使用される武器の1つに地雷等の爆発物がある。地雷は戦闘の終了後においても人や車両等に被害を及ぼすものであり、戦闘終了地域の安全な通行等を確保するためには、地雷を処理する必要がある。
【0003】
従来、地雷の処理は、作業者が地雷探知器を持ち歩き、地雷探知器を操作しながら地雷の位置を確認して、地雷を爆破したり、掘り起こして回収したりすることが行われており、地雷の探知ミス等によって作業者に被害が及ぶ危険性がある。
つまり、作業者が地上を移動しながら地雷を探知する場合は危険を伴うため、常に探知精度が高精度であることが要求される。
【0004】
特許文献1の特許第3376952号公報には、GPSにより位置情報を取得しながら、無人走行車を走行させることで、無人走行車に設けられた地雷探知装置の検出範囲をオーバーラップさせた探索ルートを設定することができ、探索範囲全域の地雷を漏れなく探知できる旨が開示されている。
【0005】
また、ブルドーザやショベルカー等の地雷処理作業車を地雷掃討に使用することで、作業者が地雷掃討に伴う危険に曝されることなく、地雷を処理し、無力化することが行われている。
【0006】
上記地雷処理作業車は、地雷の存在箇所がわかっている場合には有効であるが、地上を移動ながら地雷を探知し、地雷処理を行う場合は膨大な時間がかかり、迅速な地雷処理を行うことが困難である。
【0007】
特許文献2の特開2002−168623号公報には、飛翔体を用いて簡略的に広範囲の地雷を探知し、取得した地雷探知情報及び地形情報を、地上歩行ロボットに送信することで、地上歩行ロボットが地雷等の障害物を回避しながら、詳細な地雷探知情報を円滑に取得できる旨が開示されている。
【0008】
また、特許文献3の特開2012−37204号公報には、無人飛行手段が障害物検出部を備えることで、地表近くを低空飛行しても障害物を回避することができ、地雷の探知精度を向上できる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3376952号公報
【特許文献2】特開2002−168623号公報
【特許文献3】特開2012−37204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、無人探知装置等が移動するには、自己位置を把握しなければならず、GPSによる自己位置の取得には、複数のGPS衛星からの電波を同時に受信できる状態である必要がある。
したがって、特許文献1乃至3に記載のものにあっては、森の中や谷間等、GPS電波を受信し難い場所では、正確な地雷等の爆発物の位置情報の記録だけでなく、爆発物探知や爆発物処理のための走行又は飛行自体が困難であり、また、基地局との通信が途切れて無人探知装置を失うことがある。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、森の中や谷間等、GPS電波を受信し難い場所においても能率的な爆発物の探知・処理を行うことができる爆発物探知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、無人飛行体と無人地上走行装置の相対的な位置関係を取得することで、無人飛行体又は無人地上走行装置の一方がGPS電波を受信困難な場所であっても、自己位置情報を得ることができ、爆発物の探知・処理が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、上記課題は、本発明の下記(1)〜(7)の「爆発物探知システム」によって解決される。
(1)「無人飛行体と無人地上走行装置とを備える爆発物探知システムであって、
上記無人飛行体が、カメラと、GPS受信器と、無線通信装置とを備え、探知した爆発物位置情報を上記無人地上走行装置に送信するものであり、
上記無人地上走行装置が、爆発物探知装置と、爆発物処理装置と、GPS受信器と、無線通信装置と、演算装置とを備えるものであり、
上記演算装置が、上記無人飛行体及び/又は上記無人地上走行装置が備えるライダーによって取得した上記無人飛行体と上記無人地上走行装置との相対的位置と、上記無人飛行体又は上記無人地上走行装置のいずれか一方の上記GPS受信器で取得したGPS自己位置とから、他方の相対的位置を演算するものであることを特徴とする爆発物探知システム。」、
(2)「上記無人地上走行装置が、GPS自己位置を取得できないとき、GPS受信エラー、及び、上記相対的位置を送信し、
該GPS受信エラーを受信した無人飛行体が、上記ライダーによる相対的位置取得可能エリア内で爆発物探知を行うものであることを特徴とする上記第(1)項に記載の爆発物探知システム。」、
(3)「上記無人地上走行装置が、GPS自己位置を取得できないとき、GPS受信エラー、及び、デッドレコニングによるDR自己位置を送信し、
該GPS受信エラーを受信した無人飛行体が、上記無人地上走行装置のDR自己位置に基づいて、上記ライダーによる相対的位置取得可能エリア内を飛行するものであることを特徴とする上記第(1)項に記載の爆発物探知システム。」、
(4)「上記無人地上走行装置が、GPS自己位置及び上記相対的位置を取得できないとき、
GPS受信できた位置までデッドレコニング航法により走行するものであることを特徴とする上記第(3)項に記載の爆発物探知システム。」、
(5)「上記無人地上走行装置が、上記無人飛行体からの爆発物位置情報に基づいて爆発物を処理するものであることを特徴とする上記第(1)項〜上記第(4)項のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。」、
(6)「上記無人飛行体が、上記無人走行装置から電力及び/又は燃料の供給を受けるものであることを特徴とする上記第(1)項〜上記第(5)項のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。」、
(7)「上記無人飛行体が、無線通信の中継を行うことを特徴とする上記第(1)項〜上記第(6)項のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。」、
(8)「無人飛行体及び/又は無人走行装置を複数備えることを特徴とする上記第(1)項〜上記第(7)項のいずれか1つの項に記載の爆発物探知システム。」によって解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無人飛行体と無人地上走行装置との相対的な位置情報と、無人飛行体または無人地上走行装置のいずれか一方のGPS受信器で取得した位置情報とから、他方の位置情報を取得することとしたため、GPS電波を受信し難い場所においても能率的に爆発物の探知・処理を行うことができる爆発物探知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】無人地上走行装置がGPS電波を受信し難い場所にいる場合の運用状態の一例を示す概略図である。
図2】無人地上走行装置がGPS電波を受信できる場所にいる場合の運用状態の一例を示す概略図である。
図3】本発明の無人飛行体の一例を示す概略図である。
図4】本発明の無人地上走行装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の爆発物探知システムについて詳細に説明する。
本発明の爆発物探知システムは、地雷、不発弾、時限爆弾等の爆発物を探知し、処理するものである。
【0017】
本発明の爆発物探知システムは、無人飛行体と無人地上走行装置とを用いるものであり、上記無人飛行体又は上記無人地上走行装置のいずれか一方のGPS受信器で取得したGPS−自己位置と、ライダーによって取得した上記無人飛行体と上記無人地上走行装置との相対的位置とから、他方の位置を演算して相対的−自己位置を取得することで、GPS電波を受信し難い場所においても無人地上走行装置又は無人飛行体を運用することができ、高精度の爆発物探知が可能である。
【0018】
そして、GPS電波を受信できる場所と受信し難い場所とで、無人飛行体の運用状態を切り替えることで、高精度の爆発物探知を能率よく行うことができる。
【0019】
具体的には、無人地上走行装置がGPS電波を受信し難い場所にいる場合においては、図1に示すように、無人飛行体がGPS電波を受信して得た飛行装置のGPS−自己位置情報と、ライダーから得た上記無人飛行体と無人走行装置との相対的な位置情報とから、上記無人地上走行装置の位置を演算して相対的自己位置を取得し、爆発物探知を継続して行う。
また、GPS電波を受信できる場所においては、図2に示すように、上記無人飛行体が簡略的に広範囲の爆発物探知を迅速に行い、無人飛行体が取得した爆発物位置情報に基づいて、上記無人走行装置が詳細かつ高精度の爆発物探知を行うことで、爆発物探知を能率よく行うことができる。
【0020】
さらに、無人飛行体と無人地上走行装置とを組み合わせ、無人飛行体が爆発物検知を行い、無人地上走行装置が爆発物確認・除去を行い、無人飛行体のバッテリー切れに対して、無人地上走行装置から給電する等、それぞれが役割分担することで爆発物探知を能率よく行うことができる。給電により、相対的自己位置の取得データを送信可能にすることができる。
【0021】
<無人飛行体>
上記紀無人飛行体(以下、UAV(Unmanned Air Vehicle)ということがある。)は、自律飛行して、上空から地上を撮影して簡略的に広範囲の爆発物を探知し、探知した爆発物位置情報を後述する無人地上走行装置に無線送信するものである。
【0022】
上記無人飛行体は、カメラと、GPS受信器と、無線通信装置、及び飛行制御装置を備え、必要に応じて、ライダー反射用マーカ等を有することができる。
【0023】
上記無人飛行体としては、基本的な飛行機能を有するものであればよく、例えば、ドローン、マルチコプター等を挙げることができる。
【0024】
図3に無人飛行体1の一例を示す。
図3中、11はカメラ、12は飛行体演算装置、13はGPS受信器、14は無線通信装置、15は飛行センサ、16はライダー、17は飛行装置、18は反射板、19は電源装置である。
【0025】
上記カメラ11としては、可視光カメラ、赤外線カメラを挙げることができる。撮影画像を飛行体演算装置12によって処理し爆発物を探知する。可視光カメラの画像からは、散布地雷等、地表に露出した地雷を探知することができ、また、赤外線カメラの画像からは、周囲との温度差や周囲との放射率の差等から埋設された地雷を探知することができる。
また、撮影した画像を無人地上走行装置に送信することで、無人地上走行装置は地形情報等を得ることができ、走行経路の設定に利用できる。
なお、無人飛行体1による爆発物の探知は、上記カメラ11だけでなく磁気センサで行ってもよい。
【0026】
上記GPS受信器13は、上空にある数個のGPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信し、自己の現在位置を取得するものであり、GPS受信器によりGPS−UAV自己位置を取得できる。
【0027】
また、無線通信装置14は、基地局及び/又は無人走行装置との無線通信を行うものであり、基地局と無人走行装置間の無線通信の中継をも行うことができる。
【0028】
上記飛行体演算装置12は、無線通信装置14を介して基地局及び/又は無人走行装置から送信される指令、及び/又は、予め設定された指令に基づいて飛行経路を演算する。
そして、飛行センサ15は、高度センサ、速度センサ、地磁気センサ 姿勢センサ、加速度センサ等の各種センサを備え、上記GPS受信器13から水平面位置情報と併せて、高度、速度、方位情報等、飛行のための情報をそれぞれ出力する。なお、上記高度センサは、後述するライダー16であってもよい。
【0029】
上記ライダー16(以下、LIDAR(Light Detection and Ranging)ということがある。)は、多点レーザー送受信センサを内蔵し、全方位を高速でスキャンして360°全周のリアルタイム3Dイメージを取得するものである。
上記ライダーは、無人飛行体と無人地上走行装置との距離及び方角を計測し、また障害物の有無、地上までの距離等の周囲情報を取得する。
【0030】
上記飛行装置17は、無人飛行体を飛行させるための装置であり、例えば、ロータ等が挙げられる。飛行装置は17、飛行体演算装置12からの指令により動作する。
【0031】
また、飛行体演算装置12は、自律飛行中に、姿勢センサから姿勢角の情報を取得するとともに、加速度センサから、前後、左右、上下の加速度情報を取得し、これら情報に基づいて制御指令や操舵指令の修正信号を生成し、飛行装置の姿勢を制御して無人飛行体を自律飛行させる。
【0032】
上記無人飛行体1は、ライダー反射用マーカとしての反射板18を備えることが好ましい。上記反射板18によって、無人飛行体と無人地上走行装置との、正確な距離及び正確な方角を得ることができ、相対的位置の精度が向上する。
【0033】
<無人地上走行装置>
上記無人地上走行装置(以下、UGV(unmanned ground vehicle)ということがある。)は、上記無人飛行体からの爆発物位置情報及び/又は予め設定された探知ルートに基づいて自律走行し、地雷等の爆発物を処理して無力化するものである。
【0034】
上記無人走行装置は、基本的な走行の機能を有するものであればよく、エンジン車、電動車又はこれらを合わせたハイブリッド車であってもよく、また、装輪タイプ、装軌(無限軌道)タイプ、又は、これらを合わせたハイブリッドタイプなどを挙げることができる。
【0035】
無人地上走行装置は、爆発物探知器と、爆発物処理装置と、ライダーと、GPS受信器と、無線通信装置と、演算装置とを備え、必要に応じて飛行体離発着ポートを有することができる。
【0036】
図4に無人地上走行装置2の一例を示す。図4(a)は無人地上走行装置の側面図、図4(b)は無人地上走行装置の平面図である。
図4中、21は爆発物探知器、22は爆発物処理装置、23はライダー、24はGPS受信器、25は無線通信装置、26は演算装置、27は飛行体離発着ポート、28は給電装置、29は、飛行体離発着ポート位置マーカである。
上記ライダー23及びGPS受信器24は、無人飛行体が備えるものと同じであるので、説明を省略する。
【0037】
上記爆発物探知装置21としては、電磁波、超音波、レーザー等の探知波を地面方向に向けて送信して反射波を受信し、反射波の強度や波形等から、地中に埋設された埋設物の材質や構造等を解析して爆発物を探知するものや、磁気で爆発物を探知するものを挙げることができる。
上記爆発物探知装置21によって、高精度な爆発物探知を行うことで、確実に爆発物を処理することができる。
【0038】
上記爆発物処理装置22としては、ディスラプタによる信管破壊、マニピュレータ等により爆発物を掘り起こして回収する爆発物処理装置、カッターで爆発物を破壊するロータリードラムカッター式爆発物処理装置、チェーンを回転によって地面に叩きつけ、地中に埋まる爆発物を爆発させるチェーン式爆発物処理装置等を挙げることができる。
【0039】
上記ライダー23は、無人飛行体と無人地上走行装置との距離及び方角を計測し、また障害物の有無等の周囲情報を取得するものである。上記GPS受信器24は、GPS−UGV自己位置を取得するものであり、上記無線通信装置25は、基地局及び/又は無人飛行体との無線通信を行うものである。
【0040】
上記演算装置26は、上記無人飛行体からの爆発物位置情報及び/又は予め設定された探知範囲と、無人地上走行装置2の自己位置とに基づいて走行経路を設定する。
【0041】
そして、上記走行経路を走行させるために、アクセル、ブレーキ、及びステアリングを制御する機能を有し、これらを作動させるアクチュエータ等の制御量を算出して信号を送信し、無人地上走行装置2を走行させる。
【0042】
上記走行経路は、上記ライダーからの情報に基づいて障害物を回避したものとすることができ、加えて、無人飛行体の爆発物探知結果及び/又は撮影画像に基づいて安全な箇所を走行するように設定され、目的地までの迅速な到達が可能となる。
【0043】
上記無人地上走行装置の自己位置は、GPS−UGV自己位置、相対的−UGV自己位置、又はDR−UGV自己位置のいずれであってもよい。
【0044】
本発明において、上記GPS自己位置は、GPS受信器から得た自己位置である。
また、上記相対的−自己位置は、上記ライダーが計測した無人飛行体と無人地上走行装置との距離及び方角から、無人飛行体と無人地上走行装置との相対的位置を演算し、該相対的位置と無人飛行体のGPS自己位置とから得た自己位置である。
【0045】
さらに、DR自己位置は、ジャイロセンサ、加速度センサ、速度センサ等の各種センサからの情報を合わせて演算処理したデッドレコニング(Dead Reckoning)によって得た自己位置である。なお、デッドレコニングに必要な各種センサは無人地上走行装置に搭載される。
【0046】
また、上記演算装置は、上記爆発物位置情報に基づいて爆発物をマッピングした地図を生成し、上記走行経路及び爆発物処理終了箇所を基地局に送信すると共に記憶装置に記録する。
【0047】
上記飛行体離発着ポート27は、上記無人飛行体を保持するものであり、無人飛行体に電力を供給する給電装置28を備えることが好ましい。無人飛行体1は、バッテリー容量の制約から長時間の飛行が不可能であるが、給電装置を備えることで、飛行の中断時間を短縮することが可能になり、能率的に爆発物探知・処理を行うことができる。
【0048】
上記給電装置28は、バッテリー充電器やバッテリー交換機を挙げることができ、いずれか一方を有すればたりるが、両方を有することが好ましい。無人飛行体が飛行している間に予備バッテリーの充電を行って、次のバッテリー交換の準備をすることができ、飛行の中断時間を最小限にすることができる。
【0049】
次に、本発明の爆発物探知システムの動作について説明する。
【0050】
無人飛行体(UAV)は設定された爆発物探知範囲を飛行し、高所から地上を撮影し、演算装置で画像を処理し爆発物の探知を行う。UAVは、飛行しながらGPS−UAV自己位置、及び、バッテリー残量等の飛行状態データを、無線通信機によって逐次送信する。なお、上記GPS自己位置には、タイムスタンプが付加されている。
【0051】
無人地上走行装置(UGV)は、GPS−UGV自己位置又はDR−UGV自己位置を逐次送信する。LIDARによってUAVとUGVとの相対的位置を得られるときは、併せて送信してもよい。
【0052】
UAVは爆発物を探知すると、撮影画像から爆発物の方角、高度センサ、及びGPS自己位置から、爆発物の位置を算出し、爆発物位置情報を送信する。上記爆発物位置情報は、UAVに備えるLIDARによる測距データを用いて算出してもよい。また、撮影画像からの爆発物探知は、UGVの演算装置が行うこともできる。
【0053】
上記爆発物位置情報を受信した無人地上走行装置(UGV)は、爆発物をマッピングした地図を生成し、直接又はUAVを介して基地局に送信する。
【0054】
UGVの演算装置は、上記UAVからの爆発物位置情報等又は基地局からの指令とUGV自己位置に基づいて爆発物までの走行経路を設定する。UAVは設定された走行経路を走行して爆発物付近に到達し、UGVに備える爆発物探知装置によって詳細な爆発物探知を行う。
【0055】
爆発物を探知したUGVは、上記爆発物処理装置によって爆発物を無力化する。そして、爆発物処理の結果を直接又はUAVを介して基地局に送信する。
【0056】
上記UAVからの爆発物位置情報を複数受信したときには、次の爆発物まで走行し、爆発物探知・処理を繰り返し行い、すべての爆発物を無力化する。
【0057】
上記UGVは、GPS−UGV自己位置を取得できないとき、GPS受信エラー及び上記相対的位置を送信し、上記UAVの飛行範囲をライダー16で見通せる範囲、すなわち相対的位置取得可能エリア内に制限する。
【0058】
そして、ライダーの測距データからUAVとUGVとの相対的位置を演算した時間と、同じ時間に送信されたGPS−UAV自己位置とから、相対的−UGVの自己位置を演算して取得し、爆発物処理を継続する。
【0059】
なお、GPS受信エラーを受信し、飛行範囲の制限を受けたUAVは、相対的位置取得可能エリア内で爆発物探知を行ってもよい。
【0060】
また、上記UAVがライダーで見通せる範囲外で爆発物探知を行っている場合に、GPS−UGV自己位置を取得できないとき、上記UGVは、GPS受信エラー及び上記DR−UGV自己位置を送信する。
【0061】
上記UAVは、GPS受信エラー、及びDR−UGV自己位置を受信すると、上記DR−UGV自己位置に基づいて飛行し、LIDARで見通せる範囲に移動する。
【0062】
そして、UAVがライダーによって見通せる範囲に入ったら、上記UGVは、UAVとUGVとの相対的位置を演算した時間と、同じ時間に送信されたGPS−UAV自己位置とから、相対的−UGV自己位置を演算し、爆発物処理を継続する。
【0063】
さらに、上記GPS受信エラー及び上記DR−UGV自己位置を送信しても、相対的−UGV自己位置を取得できないとき、UGVは、最後にGPS−UGV自己位置を得られた位置まで、デッドレコニング航法により走行してきた経路を戻る。したがって、自己位置が得られずUGVが走行不能になることが防止される。
【0064】
そして、GPS−UGV自己位置を取得したUGVは、GPS−UGV自己位置を送信し、UAVの飛行制限を解除する。GPS−UGV自己位置を受信したUAVは、爆発物探知を中断した場所に戻り、爆発物探知を再開する。
【0065】
また、UAVが、GPS−UAV自己位置を取得できなくなった場合は、UGVがGPS−UGV自己位置と相対的位置とから、相対的−UAV自己位置を演算し、UAVに逐次送信し、UAVは飛行を継続する。また、UGVからの相対的−UAV自己位置を受信できないときは、UGVと同様、最後にGPS−UAV自己位置を得られた位置まで、飛行した経路をデッドレコニング航法により戻る。
【0066】
さらに、UAVとUGVの無線通信が途切れた場合は、UAVとUGVの両方が、最後に無線通信ができていた場所まで戻って無線通信を確立する。
【0067】
本発明の爆発物探知システムは、複数のUAVを備えることができる。複数のUAVは探知範囲を分担して爆発物探知を行ってもよく、無線通信の中継を行うUAVと爆発物探知を行うUAVとに役割を分けて運用することもできる。
【0068】
上記複数のUAVうち、一のUAVが、ライダーによって見通せる範囲内でUGVの上空を飛行し、UGVと他のUAV間、UGVと基地局間の無線通信を中継することで、UGV自己位置の取得及び無線通信が確立され、爆発物探知を継続して行うことができる。
【0069】
また、UAVのバッテリー残量が少なくなった場合は、UAVはUGVまで飛行し、UGVの離発着ポートに降りて給電を受ける。UGVから給電を受けることで、充電のために基地局まで戻る必要がなく、能率的な爆発物探知を行うことができる。
【0070】
上記のように本発明の爆発物探知システムは、GPS電波を受信し難い場所においても無人で爆発物探知・処理を行うことができ、基地局で爆発物探知システムとの運用状態を把握でき、爆発物探知システムを失うことが防止される。
【符号の説明】
【0071】
1 無人飛行体
11 カメラ
12 飛行体演算装置
13 GPS受信器
14 無線通信装置
15 飛行センサ
16 ライダー
17 飛行装置
18 反射板
19 電源装置
2 無人地上走行装置
21 爆発物探知器
22 爆発物処理装置
23 ライダー
24 GPS受信器
25 無線通信装置
26 演算装置
27 飛行体離発着ポート
28 給電装置
29 飛行体離発着ポート位置マーカ
図1
図2
図3
図4