【実施例】
【0134】
J.実施例
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を実証するために含む。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分に機能することが本発明者によっ見出された技術を示し、従って、その実施のための好ましいモードを構成すると考えられ得ることを、当業者は認めるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らし、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される具体的な態様において多くの変更を行い、同様または類似の結果をさらに得ることができることを理解するべきである。
【0135】
実施例1:pH応答性ナノプローブのライブラリーを製造するための方法及び材料
1.材料
異なるフルオロフォア及び蛍光消光剤のN−ヒドロキシスクシンイミダル(NHS)エステルを下記のようにして得た:RhoG−NHS、TMR−NHS、ROX−NHS、BDY−NHS、BDY−TMR−NHS、BDY630−NHS、AMCA−x−NHS、MB−NHS、PPO−NHS、QSY35、QSY7及びQSY21エステルを、Invitrogen Companyから購入した;Cy5−NHS、Cy5.5−NHS、Cy7.5−NHSエステルをLumiprobe Corporationから購入した;BHQ−1−NHSエステルをBiosearch Technologiesから購入した。PEOマクロ開始剤、MeO−PEO
114−Br、を2−ブロモ−2−メチルプロパノイルブロミド及びMeO−PEO
114−OHからBronstein,ら(参照により本明細書に取り込まれている)の手順に従い作製した。ブロモプロパン、ブロモブタン、ブロモペンタン、エタノールアミン、メタクリル酸クロリド、及びナトリウム塩をSigma−Aldrichから購入した。モノマー、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMA−MA)、2−(ジエチルアミノ)メタクリレート(DEA−MA)及び2−アミノエチルメタクリレート(AMA)をPolyscience Companyから購入した。AMAは、イソプロパノール及び酢酸エチル(3:7)で2回再結晶した。モノマー、2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)は、既に公表された手順
2に従い合成した。モノマー、2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)及び2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート(D5A−MA)は、本明細書で報告している。AMAモノマーは、使用前にイソプロパノール及び酢酸エチル(3:7)で2回再結晶した。他の溶剤及び薬剤はSigma−AldrichまたはFisher Scientific Inc.から得て使用した。
【0136】
2.新規のメタクリレートモノマーの合成
新規のメタクリレートモノマーは、刊行物記載の方法に従い合成した。2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)の
[2]合成は、実施例としてここに記載される。まず、エタノールアミン(12.2g、0.2mol)及びブロモプロパン(49.2g、0.4mol)を400mLのアセトニトリルに溶解し、この溶液にNa
2CO
3(53.0g、0.5mol)を添加した。一晩反応させた後、溶液をろ過して析出したNaBr塩及び過剰のNa
2CO
3を除去した。CH
3CN溶剤をロータリーエバポレータ(rotovap)により除去した。得られた残渣を真空下で蒸留し(40〜45℃、0.05mmHg)、無色液体として2−(ジプロピルアミノ)エタノールを得た。その後2−(ジプロピルアミノ)エタノール(21.3g、0.1mol)、トリエチルアミン(10.1g、0.1mol)及び阻害剤のヒドロキノン(0.11g、0.001mol)を100mLのCH
2Cl
2に溶解し、塩化メタクリロイル(10.4g、0.1mol)を三口フラスコに滴下した。溶液を一晩環流した。反応後、溶液をろ過し析出したトリエチルアミン−HCl塩を除去し、そしてCH
2Cl
2溶剤をロータリーエバポレータにより除去した。得られた残渣を真空下で蒸留し(47〜53℃、0.05mmHg)、無色液体を得た。合成後、モノマーを
1H−NMRにより特性評価した。全てのNMRスペクトルは、CDCl
3中、内部基準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いVarian 500MHzスペクトロメーターで得た。2つの新しいモノマーの特性は以下の通り:
【0137】
【化55】
[この文献は図面を表示できません]
2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)
1H NMR (TMS,CDCl
3,ppm):6.10(br,1H,CHH=C(CH
3)−),5.54(br,1H,CHH=C(CH
3)−),4.07(t,2H,−OCH
2CH
2N−),3.01(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.68(t,4H,−N(CH
2CH
2CH
3)
2,1.94(s,3H,CH
2=C(CH
3)−),1.44(m、4H,−N(CH
2CH
2CH
3)
2),1.01(t,6H,−N(CH
2CH
2CH
3)
2)
【0138】
【化56】
[この文献は図面を表示できません]
2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート(D5A−MA)
1H NMR (TMS,CDCl
3,ppm):6.10(br,1H,CHH=C(CH
3)−),5.55(br,1H,CHH=C(CH
3)−),4.20(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.74(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.45(t,4H,−N(CH
2CH
2CH
2 CH
2CH
3)
2,1.94(s,3H,CH
2=C(CH
3)−),1.43(m、4H,−N(CH
2CH
2CH
2 CH
2CH
3)
2),1.30(m、4H,−N(CH
2CH
2CH
2 CH
2CH
3)
2),1.24(m、4H,−N(CH
2CH
2CH
2 CH
2CH
3)
2),0.88(t,6H,−N(CH
2CH
2CH
2 CH
2CH
3)
2),
【0139】
【化57】
[この文献は図面を表示できません]
2−(エチルプロピルアミノ)エチルメタクリレート(EPA−MA)
1H NMR (TMS,CDCl
3,ppm):6.10(s,1H,CHH=C(CH
3)−),5.54(s,1H,CHH=C(CH
3)−),4.20(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.75(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.58(q,2H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),2.44(m、2H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),1.94(s,3H,CH
2=C(CH
3)−),1.45(m、2H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),1.02(t,3H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),0.87(t,3H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3))
【0140】
【化58】
[この文献は図面を表示できません]
2−(ブチル(イソプロピル)アミノ)エチルメタクリレート(
niD3.5A−MA)
1H NMR (TMS,CDCl
3,ppm):6.09(s,1H,CHH=C(CH
3)−),5.53(s,1H,CHH=C(CH
3)−),4.11(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.92(m、1H,−N(CH
2CH
2CH
2CH
3)(CH(CH
3)
2),2.64(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.42(t,2H,−N(CH
2CH
2CH
2CH
3)(CH(CH
3)
2),1.93(s,3H,CH
2=C(CH
3)−),1.38(m,2H,−N(CH
2CH
2CH
2CH
3)(CH(CH
3)
2),1.29(m、2H,−N(CH
2CH
2CH
2CH
3)(CH(CH
3)
2),0.97(d,6H,−N(CH
2CH
2CH
2CH
3)(CH(CH
3)
2),0.88(t,3H,−N(CH
2CH
2CH
2CH
3)(CH(CH
3)
2)。
【0141】
3.PEO−b−PRブロックコポリマーの合成
PEO−b−PRブロックコポリマーは、Zhou,ら,2011(参照により本明細書に取り込まれている)に記載されているように原子移動ラジカル重合(ATRP)により合成した。色素無しコポリマーはポリマーの特性評価に使用した。表1〜3に各ポリマーの特性をまとめる。PEO−b−PDPAを、手順を説明する例として使用する。まず、DPA−MA(1.70g、8mmol)、PMDETA(21μL、0.1mmol)及びMeO−PEO
114−Br(0.5g、0.1mmol)を重合管に充填した。その後、2−プロパノール(2mL)及びDMF(2mL)の混合物を添加し、モノマーと開始剤を溶解した。酸素を除去するため凍結脱気(freeze−pump−thaw)を3サイクルした後、CuBr(14mg、0.1mmol)を窒素雰囲気下に重合管に加え、重合管を真空で密封した。重合は40℃で8時間行われた。重合後、反応混合物は10mLのTHFで希釈され、中性Al
2O
3カラムを通過させて触媒を除去した。THF溶剤をロータリーエバポレータにより除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0142】
【表1】
[この文献は図面を表示できません]
【0143】
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0144】
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
【0145】
4.PEO−b−(PR−r−色素/FQ)ブロックコポリマーの合成
AMAを色素または蛍光消光剤の結合のために使用した。PEO−b−(PR−r−AMA)コポリマーの合成は前記の手順に従った。3つの第1級アミノ基を、開始剤に対するAMAモノマーの供給比(比=3)を制御することにより各ポリマー鎖に導入した。合成後、PEO−b−(PR−r−AMA)(10mg)を2mLのDMFに溶解した。その後NHS−エステル(色素−NHSまたはFQ−NHSに対して1.5当量)を添加した。一晩反応後、コポリマーをゲルパーミエ−ションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10m 10E3Å 300×250カラム、Varian製、溶離液としてTHF 5mL/min)により精製し、遊離の色素分子を除去した。製造されたPEO−b−(PR−r−色素/FQ)コポリマーを凍結乾燥し、貯蔵のため−20℃に保持した。
【0146】
5.ミセルナノ粒子の作製
ミセルは、Zhou,ら,2011(参照により本明細書に取り込まれている)に前述されているように、作製した。典型的な手順において、5mgのPDPA−Cy5を0.5mLのTHFに溶解した。その後、溶液を、4mLのMilli−Q脱イオン水に超音波処理下にゆっくり添加した。混合物を、マイクロ限外ろ過システム(MWCO=100KD)を用いて4回ろ過してTHFを除去した。その後、脱イオン水を添加して、ポリマー濃度を貯蔵液としての5mg/mLに調節した。混合ミセルのために、異なる重量比のPR−色素とPR−FQコポリマーを0.5mLのTHFに溶解し、そして同様の手順を用いた。
【0147】
6.蛍光特性
蛍光発光スペクトルを、日立蛍光光度計(F−7500モデル)により得た。各ポリマーについて、最初に、サンプルをMilli−Q水にて2mg/mLの濃度で作製した。その後貯蔵溶液を、異なるpH値を有する0.2Mクエン酸−リン酸塩緩衝液(0.15M塩化ナトリウム含有)で希釈した。最終的なポリマー溶液は100〜200μg/mLに制御された。
【0148】
異なるpH値を有する4.4−7.1−Cy5s、5.0−BDY、5.3−RhoG、5.6−TMR、5.9−ROX、6.2−BDY630、6.5−Cy5、6.8−Cy5.5及び7.1−Cy7.5溶液(各溶液について100μg/mL)の蛍光画像のために、Maestroイメージングシステム(CRI,Inc.,Woburn,MA)を、装置マニュアルに従い適正バンドパス励起フィルタ及び適正ロングパス発光フィルタを選択することにより用いた。4.4−AMCA及び4.7−MBのために、画像は携帯型UV光(365nm)の照射下にカメラにより撮られた。全ての測定は室温で行われた。
【0149】
実施例2:pH応答性ポリマーミセルのライブラリーの合成及び特性評価
1.ATRP法によりコポリマーの合成
触媒としてCuBr及びコポリマー合成用のN,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)リガンドを用いた原子移動ラジカル重合(ATRP)法(Tsarevsky及びMatyjaszewski,2007;Ma,ら,2003)(
図1)を、検討のためのコポリマーを作製するために使用した。ホモポリマーPRブロックを有するPEO−b−PRコポリマーを、前述の単一メタクリレートモノマーを用いて合成した(Zhou,ら,2011;Zhou,ら,2012)。PRセグメントの疎水性を連続的に微調整するために、異なる疎水性を有する2種のメタクリレートモノマーを用いる共重合戦略(
図1)を使用した。2種のモノマーのモル分率は重合の前に正確に制御され、ランダム共重合されたP(R
1−r−R
2)ブロックを得ることができる。異なるジアルキル鎖長(例えば、エチル、プロピル、ブチル及びペンチル)を有する一連のメタクリレートモノマーを、この今の検討に用いた。蛍光及び蛍光消光剤を導入するために、アミノエチルメタクリレート(AMA−MA)(ポリマー鎖当たり3個の繰り返し単位)も導入され、遊離アミノ基が色素またはFQに活性化N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルを介して導入された。
【0150】
合成後、コポリマーは
1H NMRで特性評価され、化学組成が確認され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより数平均及び重量平均分子量及び多分散性が測定された(表1〜3、
図2〜6)。
【0151】
2.pH
t制御に関して共重合と分子混合の戦略の比較
初めに、UPSナノプローブのpH
t値を制御するためその能力についての2つの異なる戦略を比較した。第1の戦略は、異なるpH転移を有する2種のPEO−b−PRコポリマー分子混合に関わる。この実施例では、Cy5−結合PEO−b−ポリ[2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート](PDEA、全てのコポリマーは、以下で特に断りの無い限り、PRセグメントにおいてCy5色素と結合された)及びPEO−b−ポリ[2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート](PD5A)を使用した。PDEA及びPD5Aナノプローブは、それぞれpH転移を4.4と7.8に有していた。溶剤蒸発手順は、各ミセルで同じモル%(即ち50%)を有する両方のコポリマーからなるミセルナノプローブを生成させるために使用された(これはヘテロFRET実験により確認された)。第2の戦略では、Cy5−結合PEO−b−ポリ[2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート−r−2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート]コポリマー(P(DEA
40−D5A
40))を合成し、これはPRセグメントが2種のモノマーのランダムコポリマーからなるものであった(各モノマーについて40の繰り返し単位、表1)。流体力学直径は、PDEA/PD5A(分子混合)及びP(DEA
40−D5A
40)(コポリマー)について、それぞれ65nm及び22nmであった。
【0152】
2種のミセル設計は蛍光発光対pH関係において大きく異なるパターンを示した。PDEA/PD5Aナノプローブについて、pH転移の際立った挙動が、個々のコポリマーに対応して観察され、蛍光オン/オフ転移が4.4及び7.8であった(
図7A、
図8)。この結果は、ミセル内でのPDEAとPD5Aの間の鎖の絡み合いは、個々のポリマーの会合挙動を取り除くには十分でないことを示している。対照的にP(DEA
40−D5A
40)ナノプローブは、6.0の単一のpH転移、PDEAとPD5Aの間のほぼ中間を示した。
【0153】
転移pHの制御を探るために、モル分率を変化させた2種のモノマーの一連のP(DEA
x−D5A
y)コポリマーを合成した。得られたコポリマーは異なるpH転移を示した(
図7B、
図9)。DEAモノマーのモル分率の関数としてのナノプローブのpH
tのプロットは直線関係を示した(
図7C)。疎水性のより少ないモノマー(例えば、DEA−MA)をより高い%で導入することにより、より高いpH転移が得られた。UPSナノプローブの転移pHは、PRセグメントの疎水性を変化させることにより主として制御することができる。この観察は、電子吸引または共与基が微調整に必要である低分子pHセンサーに反している(Urano,ら,2009)。
【0154】
3.モノマー相溶性のpH転移の鋭さへの影響
異なるモノマー%を有するP(DEA
x−D5A
y)ナノプローブは、転移pHの制御を可能にするが(
図7B〜C)、pH転移の鋭さは、ホモポリマーPRセグメントを有する対応するナノプローブより顕著に広範囲となっている。より具体的には、pH
10−90%値(蛍光強度が10%〜90%増加するpH範囲)が、25、50及び75%のDEA−MA組成を有するP(DEA
x−D5A
y)コポリマーについて、それぞれ0.65、0.64及び0.47で、これに比較してPDEA及びPD5Aについてはそれぞれ0.14及び0.19であった。P(DEA
x−D5A
y)コポリマーから得られた広いpH応答は、大きい疎水性差を有するモノマーから得られる不均一な鎖の性質を示唆している。
【0155】
pH転移の鋭さを改善するために、密接に適合した疎水性を有するモノマーを使用することにより調査研究した。例として、2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)及び2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)を選択して一連のP(DPA
x−DBA
y)ナノプローブを製造した。この2種のモノマーは、窒素置換基の1つの炭素が異なっている(即ち、プロピルとブチル)。2種のモノマーの共重合は、鋭いpH転移を有する、より精密に調整可能な一連のナノプローブをもたらした(
図10A、
図11)。pH
10−90%値は、25、50及び75%のDPA−MA組成を有するP(DPA
x−DBA
y)コポリマーについて、それぞれ0.19、0.20及び0.18であった。各コポリマープローブは鋭いpH転移(<0.25pH単位)を維持した。
図10Bは、pHの関数としての蛍光誘導体プロットを示し、さらに一連のP(DPA
x−DBA
y)ナノプローブが、単一のP(DEA
40−D5A
40)ナノプローブに比較して、同じpH範囲で大きく向上した鋭さを有することを示している。
【0156】
DPA−MAモノマーのモル分率の関数としてのP(DPA
x−DBA
y)ナノプローブのpH
t値のプロットは直線関係を与えた(
図10C)。同様に、一連のP(DBA
x−D5A
y)及びP(DEA
x−DPA
y)の標準曲線も、pH
tとモノマーのモル分率との間の直線関係を示すものであることが確立された。これらの標準曲線は、正しいPR組成を有するコポリマーを選択することにより予め定められたpH転移(4.4〜7.8の間)のいずれかを有するUPSナノプローブの合理的設計を可能にする(つまり、モノマー対および特定のモル分率の選択)。概念実証を行ったところ、pHの全生理的範囲(4.4〜7.4)をカバーする0.3pHの増分を有する10のナノプローブからなるUPSライブラリーを作製し、各ナノプローブが鋭いpH転移を維持した(オン及びオフ状態の間で<0.25pH単位、
図10D、
図12〜13)。
【0157】
4.フルオロフォア選択を拡大するための蛍光消光剤の使用
以前、ホモ−FRET誘発蛍光減衰は、UPSナノプローブのオン/オフ活性化設計を達成するための主なメカニズムであると報告された(Zhou,ら,2012)。このメカニズムは、小さいストークシフト(<40nm)を有するフルオロフォア(例えば、ローダミン及びシアニン色素)にのみ適用される。大きなストークシフトを有する色素(例えば、マリーナブルーまたはPPO、λ≧100nm)について、蛍光活性化比(R
F=F
on/F
off、このF
on及びF
offはそれぞれオン、オフ状態の蛍光強度である)は5未満であった。さらに、BODIPY(登録商標)ファミリーの色素について、pH転移は、光子誘発電子移動(PeT)メカニズムの結果により、比較的低いR
F(<15)を有して広範(>0.5pH単位)であった(Petsalakis,ら,2008;Tal,ら,2006;Dale及びRebek,2006)。
【0158】
これらの制約を克服するため、フルオロフォア選択を拡大するための蛍光消光剤の使用が検討された。蛍光消光剤は活性化可能イメージングプローブの設計に多くのグループによって広く使用されてきている(Blum,ら,2005;Lee,ら,2009;Levi,ら,2010;Maxwell,ら,2009)。メカニズムは、所望のフルオロフォアからFQへの蛍光共鳴エネルギー移動に基づいており、その移動後放射エネルギーを熱に消散させる。この設計において、異なる発光波長に感受性を有する一連のFQが作製され、コポリマーに結合される(
図14)。UPSナノプローブは、同一ミセル核内で、FQ−結合ポリマーを色素−結合ポリマーと混合することにより製造される。ミセル状態で、FQは予想されているように、その化合物が、蛍光シグナルを効果的に抑制し、ミセル解離時にFQとフルオロフォアとの分離が蛍光発光の顕著な増加をもたらすと思われる(
図15A)。
【0159】
FQ戦略の有効性を評価するために、PEO−b−ポリ[2−(プロピルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA)をモデルシステムとして使用し、異なるFQとフルオロフォアをコポリマーに結合した。PDPAナノプローブはpH転移を6.2に有していた。まず、大きいストークシフトを有するフルオロフォア(例えば、AMCA:353/442;マリーナブルーまたはMB:362/462;PyMPOまたはPPO:415/570。2つの数字はそれぞれ活性化波長及び発光波長を指す。)のFQ戦略を調査研究した。FQ−結合ポリマーの導入無しでは、PDPA−AMCA及びPDPA−MBナノプローブは、それぞれpH5.0及び7.4においてオンとオフの間で僅か3倍の蛍光活性化しか示さなかった(
図18A)。PDPA−QSY35のPDPA−AMCAまたはPDPA−MBへの導入は蛍光活性化のかなりの増加をもたらし、PDPA−QSY35のモル分率が67%になった時停滞期に達した(
図16A)。この組成で、R
F値は約90倍に達し、これはFQ無しのものより30倍高い(
図18B)。同様に、PDPA−QSY7(50mol%)のPDPA−PPOナノプローブへの導入は、それぞれR
F値を6から>130倍に増加させた(
図18B)。
【0160】
BODIPY(登録商標)ファミリーの色素について、PDPA−BDY493及びPDPA−TMRナノプローブはほんの約15倍の蛍光活性化を与え(
図18C)、生理的利用には十分ではない(例えば、細胞イメージング中では、>30のR
F値が背景シグナルを抑制するには必要である)。PDPA−BHQ1(50mol%)及びPDPA−QSY7(50mol%)のPDPA−BDY493及びPDPA−TMRナノプローブへの導入は、R
F値の劇的な増加をもたらす(共に>100倍、
図18D、
図19)。興味深いことに、PDPA−BDY630のみが40倍のR
F値を達成することができた。PDPA−QSY21の追加がさらにR
F値を250倍超過に増加させた(
図18D).
【0161】
以前の研究は、小さいストークシフト(<40nm)を有するローダミン及びシアニン色素は、ホモFRET誘発蛍光減衰メカニズムにより大きなR
F値を有するUPSナノプローブを生成させることができた(Zhou,ら,2012)。この研究の結果は、以前のレポート、即ちPDPA色素コポリマーのみが、ローダミン及びシアニン色素に対してそれぞれ>50倍及び>100倍に達することが確認された。FQ結合コポリマーはさらにこれらのナノプローブのRF値を増加させた(
図18F、
図20〜22)。
【0162】
図18E〜Fは、蛍光消光剤の導入有り及び無しのPDPAナノプローブで使用される全てのフルオロフォアについての蛍光活性化比(R
F=F
5.0/F
7.4)をまとめた。データは、FQ結合ポリマーの追加で、全てのフルオロフォア(全部で12)は、ストークシフトまたはPeTメカニズムに関係なく、例外なく高い活性化比(>50倍)を示すことを提示した。加えて、FQ結合ポリマーの導入はpH転移の鋭さへの影響は与えなかった(全ての複合体ナノプローブはオン及びオフ状態の間で<0.25pH単位有していた、
図18B及び18D並びに
図22B〜22D)
【0163】
5.大きいpH転移及び蛍光発光に広がるUPSライブラリー
上記結果に基づき、それぞれ異なる蛍光でコードされた10個のナノプローブからなるUPSライブラリーを製造した。各ナノプローブの組成は、
図10D(詳細は表3参照)に従い、得られた収集されたものは4〜7.4のpHスパンで0.3pH増加分を有するものであった。各ナノプローブについて、同じポリマー濃度(即ち0.1mg/mL)であるが異なるpH値の一連の水溶液を調製した。4.4−AMCA、4.7−MB、5.0−BDY及び6.2−BDY630ナノプローブについて、対応のコポリマーを、同等量のFQ結合適合ポリマーと混合し、高いオン/オフコントラストを獲得した。
図24は、各フルオロフォアに対応する活性化/発光波長でのUPSナノプローブライブラリーの発光画像を示す。
【0164】
図24の結果は、4〜7.4の全生理的pHにわたる外部環境に対するUPSナノプローブの鋭敏なpH感受性を示している。最低pH範囲で、4.4−AMCAナノプローブはpH4.55でオフとなるがpH4.25でオンに変わった。このナノプローブは、ヒドロラーゼが酵素活性のためにより低いpHを必要とする際の機能性リソソームのpHの検出に有用であると言える。ナノプローブのオン/オフ特性により、それらは、リソソーム機能に影響を与える分子経路または小分子摂動体の同定を可能にするスクリーニング用途に特により一層有用となる。より高いpH範囲(例えば、6.5〜7.1)をカバーするナノプローブについて、ナノプローブは、腫瘍の酸性pH
eのイメージングに有用であり、そしてナノプローブ活性化をがん細胞の解糖速度に関連付けることができる(Wang,ら,2014;Ko,ら 2010)。中間範囲(例えば、5.0〜6.5)におけるナノプローブはエンドソーム/リソソームの成熟の研究に有用であり、細胞内イメージングまたは薬品送達用途のためのオルガネラ特定組成物を確立することができる。
【0165】
実施例3:アニオン駆動ミセル形成方法
1.PEO−b−PRブロックコポリマーの合成
PEO−b−PRコポリマー(スキーム1)は、Zhou,ら,2011(参照により本明細書に取り込まれている)に報告された原子移動ラジカル重合(ATRP)により合成された。色素非含有コポリマーはポリマー特性評価で使用された。PEO−b−PDPA(3)は、手順を説明するための例として使用される。まず、DPA−MA(1.70g、8mmol)、PMDETA(21μL、0.1mmol)及びMeO−PEO
114−Br(0.5g、0.1mmol)を重合管に充填した。その後2−プロパノール(2mL)とDMF(2mL)の混合物を加えてモノマー及び開始剤を溶解した。酸素除去のため凍結脱気を3回繰り返した後、CuBr(14mg、0.1mmol)を窒素雰囲気下重合管に加え、重合管を真空下に密封した。重合を40℃で8時間行った。重合後、反応混合物を10mLのTHFで希釈し、中性Al
2O
3カラムを通過させてCu触媒を除去した。THF溶剤をロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥し白色粉末を得た。表4に各コポリマーの特性をまとめる。
【0166】
【化59】
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【0167】
【表4】
[この文献は図面を表示できません]
【0168】
2.PEO−b−(PR−r−TMR/Cy5)ブロックコポリマーの合成
AMAモノマーを色素結合用コポリマーに取り込んだ(スキームS1b)。PEO−b−(PR−r−AMA)の合成は前述の手順に従った。3つの第1級アミノ基を、開始剤に対するAMAモノマーの供給比(比=3)を制御することにより、各ポリマーに導入された。代表的手順では、PEO−b−(PR−r−AMA)(50mg)を2mLのDMFに溶解した。その後NHS−エステル(TMR−NHSに対して2.0当量及びCy5−NHSに対して1.0当量)を加えた。一晩反応後、コポリマーを調製ゲルパーミエ−ションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10m 10E3Å 300×250 カラム、Varian、溶離液としてTHF(5mL/minで))により精製し、遊離色素分子を除去した。製造されたPEO−b−(PR−r−色素)コポリマーを凍結乾燥し、貯蔵中は−20℃に保持した。ブロックコポリマーが自己組織化してミセルを形成した際、色素はHetero FRET及び自己消光の両方を受けることに注目することが重要である。このため各ポリマー鎖の色素結合数がFRET実験には重要である。実験において、TMRとCy5の結合数は、それぞれ、ポリマー鎖当たり2及び1に制御された。
【0169】
3.ミセルナノ粒子の調製
各コポリマーについて、ミセルの貯蔵液は、Nasongkla,ら(2006)(参照により本明細書に取り込まれている)に記載の溶剤蒸発法の後、調製した。PEO−b−(PDPA−r−TMR)ミセル溶液の例では、20mgのコポリマーをまず1.0mLのTHFに溶解し、その後超音波処理下に8mLの脱イオン水に滴下した。THFを、(100KD)膜を用いて限外ろ過を5回行って除去した。その後、脱イオン水を加えて、ポリマー濃度を5mg/mLを調整し、貯蔵液とした。PEO−b−PDMA貯蔵液は、コポリマーを脱イオン水に直接溶解することにより作製することができた。
【0170】
FRET実験用ミセル溶液サンプルを類似の方法で調製した。PEO−b−(PDPA−TMR/Cy5)サンプルの作製を代表的手順として記載した。まず、0.1mLのPDPA−TMR及び0.1mLのPDPA−Cy5貯蔵溶液を1.8mL脱イオン水に加えた。その後1.8μLの1.0M HClを加えて水不溶性ブロックコポリマーを溶解させ、溶液のpHを4に調整した。出発サンプルのHClからのCl
−は<2mMで、実験結果によれば、ミセル化をかく乱するその能力としては無視され得るものであった。
【0171】
4.FRET実験
蛍光発光スペクトルは日立蛍光光度計(F−7500モデル)で得られた。サンプルは545nmで励起され、発光スペクトルは560〜750nmで収集された。異なるアニオンが導入されたPEO−b−PDPAの自己組織化作用についてのFRET実験は、類似の手順に従った。ClO
4−は、以下の実施例として使用された:0.2μLの10M NaClO
4溶液を、2.0mL、0.5mg/mLの色素結合PDPA(PDPA−TMR/PDPA−Cy5=1:1)溶液にpH=4で添加し、ClO
4−濃度を1mMに調節した。その後、小容量の10M NaClO
4溶液を徐々に加えてClO
4−濃度を3.2、5.6、10mMに増加させた。10mM後、固体NaClO
4をその溶液に添加してClO
4−濃度を増加させサンプルの希釈を回避した。添加されたNaClO
4の合計量は2μL未満であり、合計2mLに比べて無視することができる。蛍光発光スペクトルは、NaClO
4のそれぞれの添加後に、4分間渦混合してから収集された。
【0172】
5.TEM及びDLS特性評価
TEM及びDLS分析用サンプルを、前述の手順に従い調製した。PEO−b−PDPAの転移pHは6.1であった。まず、0.1mLのPDPA−TMR及び0.1mLのPDPA−Cy5貯蔵溶液を、1.6mLの脱イオン水に加えた。その後、固体NaClO
4及びNaClをその溶液に加え、渦混合後溶解した。HCl及びNaOH溶液(1M)を用いて溶液のpHを5.0及び7.4に調節した。脱イオン水を加えて合計容量を2mLに調節した。ナノ粒子のモルホロジー及びサイズを透過型電子顕微鏡(TEM,JROL 1200EX model)により特性評価した。流体力学直径(D
h)は動的光散乱(DLS,Malvern MicroV Model,He−Ne Laser,λ=632nm)により測定された。
【0173】
6.アニオン競合実験
ミセルサンプルの作製はFRET実験に記載と同様の手順に従った。固体NaCl及びNa
2SO
4粉末を水溶液に溶解し初期アニオン濃度を達成した。Cl
−の初期濃度は0、50、100、200、500,1000及び2000mMであった。SO
42−の初期濃度は0、25、50、100、200及び500mMであった。蛍光発光スペクトルは、NaClO
4の添加後、渦混合後4分収集された。得られた結果はS字形曲線と一致した。パーコレートの、最大の半分のFRET効率濃度はFC
50として定義され、Cl
−及びSO
42−の競合能力を定量する。
【0174】
7.PEO−b−PRコポリマーのClO
4−誘発ミセル自己組織化
異なるアルキル側鎖を有する一連のPEO−b−PR
コポリマー(
図25の1〜5)が本研究に使用された。ミセルサンプルの調製はFRET実験セクションの記載に従った。この一連の実験で、溶液のイオン強度は100mMのNaCl濃度を用いて緩衝化された。これはNaClO
4からのイオン強度寄与を最小にするために使用される。なぜなら、疎水性PEO−b−PRコポリマー(例えば、5)が多いほどミセル自己組織化を誘発する濃度を小さくする必要があるからである。実験後、FRET効率は、FRETセクションで前述されたように計算された。
【0175】
実施例4:アニオン駆動ミセル形成の結果と考察
pH
t未満のpHでプロトン化PEO−b−PRコポリマーの驚くべきカオトロピックアニオン誘発ミセル化の発見(
図25)を記載する。驚くべきことに、抗ホフマイスター(Hofmeister)傾向が観察され、そこではカオトロピックアニオンがミセル化をもたらすが、それらのタンパク質凝集の効果に反して、コスモトロピックアニオンとはならない(Zhang及びCremer, 2006;Parsons,ら,2011;Kunz,ら,2004)(
図26A)。
【0176】
まず、ミセル自己組織化プロセスを調査するための蛍光エネルギー共鳴移動(FRET)が確立された。FRETはポリマー/タンパク質の立体配座及び相転移の検出に高い感度を有する。なぜなら、これは、エネルギー移動効率が供与体−受容体距離の6乗に反比例するためである(Jares−Erijman及びJovin,2003;Sapsford,ら,2006)。この方法では、ブロックコポリマーは供与体または受容体色素と結合する(
図25の1〜5、表4) (Tsarevsky及びMatyjaszewski,2007;Ma,ら,2003)。PEO−b−ポリ(ジプロピルアミノエチルメタクリレート)(3,pH
t=6.1)がモデルコポリマーとして選択され、供与体/受容体として、それぞれテトラメチルローダミン(TMR,λ
ex/λ
em=545/580nm)/Cy5(λ
ex/λ
em=647/666nm)が選択された(Ha,ら,1999;Grunwell,ら,2001)。
【0177】
pH4で、3の第3級アミン(pH
t=6.1)がプロトン化され、得られたコポリマーは分散カチオン性ユニマーとして水に溶解した。溶液中のユニマー(それ故TMRとCy5)との間の大きな距離のために、FRET効果は観察されなかった。カトロピックアニオン(例えば、ClO
4−、SCN
−またはI
−)の添加は、ポリマーミセルの形成を示す、TMRの蛍光強度の低下及びCy5の発光強度の増加をもたらした(
図27)。ミセル形成がTMRとCy5をミセル核内に極めて近接させ、これによりFRET効率を増加させるとの仮定を立てた(
図26B)。反対に、コスモトロピックアニオン(例えば、SO
42−、H
2PO
4−)は、たとえ濃度をそれらの溶解限界に近付けても、いかなるFRETも引き起こさなかった(
図28)(表5)。
【0178】
【表5】
[この文献は図面を表示できません]
【0179】
ミセル化を起こす能力において異なるアニオンを比較するために、FRET効果を定量化した(
図26C)。FRET効率は(FA/FD)/(FA/FD)
maxとして正規化され、ここでFA及びFDは、それぞれ異なるアニオン濃度でのTMR及びCy5の蛍光強度であり;(FA/FD)
maxは、高いClO
4−濃度でのFA/FDの最大値(3.3)であった。FRET効率は、異なるアニオンについての濃度の関数としてプロットされた。結果は、カオトロピックアニオンがユニマー会合(即ちミセル化)を起こすことができたが、コスモトロピックアニオンはできなかった(
図26C)との抗ホフマイスター傾向を示した。この観察は、タンパク質可溶化における古典的ホフマイスター効果に反しており、この効果ではコスモトロピックイオンは水でのタンパク質凝集を引き起こすことが知られているが、カオトロピックでは知られていない(Hofmeister,1888;Collins及びWashabaugh,1985)。
【0180】
コポリマー3はカオトロピックアニオンに対して異なる検出感度を示した。データはFRET感度がClO
4−>SCN
−>I
−>NO
3−の順に従ったことを示している。FC
50はFRET効率が50%のときのアニオン濃度として定義される。FC
50の値は、ClO
4−、SCN
−及びI
−について、それぞれ11、68及び304mMであった。NO
3−については、その飽和濃度(約3M)でほんの弱いFRET効果が得られたのみであった。より詳細な調査では、FRET効率を10%から90%に増加させるために、3倍のClO
4−濃度変化が必要であるのみであった(即ち、6から18mMへ、
図26C)。この狭い濃度依存性は、以前報告された超pH応答(Zhou,ら,2011;Zhou,ら,2012;Huang,ら,2013;Wang,ら,2013)に類似する高い共同応答を示唆している
【0181】
さらにカオトロピックアニオン誘発ミセル化を確認するために、透過型電子顕微鏡(TEM)及び動的光散乱(DLS)を用いて、それぞれ、ミセル転移中のモルホロジーの変化及び流体力学直径を調査した。クロリドイオン(Cl
−)は陰性対照に用いた。50mMのCl
−の存在で、コポリマー3はpH5.0でユニマーとして留まっていた(6.1のpH
tを下回る、
図29A)。対照的に、コポリマー3はCl
−がClO
4−と置き換わった時球状のミセルに自己組織化した(
図29B)。DLS分析は、アニオンがCl
−からClO
4−に変化した時、流体力学直径は、それぞれ、7±2から26±3nmに増加することを示した(
図29)。ユニマー状態からミセル状態へのコポリマー3の転移を反映するこのサイズの増加は、FRETとTEMのデータと一致している。pH7.4で、コポリマー3は、Cl
−及びClO
4−アニオンの存在下、それぞれ27±2及び28±3nmの流体力学直径を有する球状ミセルとして存在していた(
図30〜31)。PEO−b−ポリ(D,L−乳酸)(PEO−b−PLA)等の非イオンの両親媒性ブロックコポリマーに関しては、pH変化もClO
4−の添加のいずれもミセル状態への影響はなかった(
図32)。
【0182】
カオトロピックアニオン誘発自己組織化は、その後、競合コスモトロピックまたは境界型アニオンの存在で研究を行った。コポリマー3を、異なる初期濃度の競合SO
42−またはCl
−と共にpH4で溶解させた。その後カオトロピックアニオンClO
4−を添加してミセル化を誘発させた(
図33〜36)。
図37Aは、ClO
4−濃度の関数としてのFRET効率の代表例を示す。SO
42−アニオンの添加により、ミセル誘発におけるClO
4−の感受性を減少させることができた。FC
50値は競合アニオンの効果を評価するために定量化された(
図37B)。競合アニオンのイオン強度の関数としての釣鐘曲線が観察された。低いイオン強度(<0.1M)において、競合アニオンの添加は、ミセル形成を誘発するためのClO
4−の能力を低下させ、PRセグメントのアンモニウム基とこれらの競合と一致した。しかしながら、SO
42−またはCl
−の高いイオン強度(>0.5M)では、ClO
4−誘発自己組織化の増加が観察された。この効果は、高いコスモトロピックイオン濃度でのより規則的なバルク水構造に貢献することができ、ミセル自己組織化中の疎水性集合をより有利にする。
【0183】
最後に、PRセグメントの疎水性強度のカオトロピックアニオン誘発ミセル化への影響(
図38A)を調査した。第3級アミノ基のメチルからペンチル基までの異なるアルキル鎖長を有する一連のPEO−b−PRコポリマー(
図25の1〜5)を合成した。結果は、PRセグメントの疎水性へのClO
4−誘発自己組織化の明らかな依存性を示した(
図39)。最も小さい疎水性の側鎖(即ち、1のメチル)では、ミセル化はClO
4−の最高の濃度でさえ観察されなかった(1M)。反対に、最も疎水性の側鎖(5のペンチル)がClO
4−により誘発された最高の感度のミセル化をもたらした。FC
50値は、側鎖がペンチル、ブチル、プロピル、及びエチル基の時、それぞれ2、4、35、134mMであった(
図38A)。
【0184】
上記研究からの結果は、カオトロピックアニオンにより誘発された第3級アンモニウム基を有するブロックコポリマーによる高度に並はずれたミセル自己組織化プロセスを示している。現在のナノシステムにおいていくつかの類の無い特徴がある:第1に、カオトロピックアニオンが、疎水性ミセル核環境において正に電荷されたアンモニウム基を有する安定なイオン対を形成することができた。アンモニウム基の優位性がイオン化状態にあると仮定すれば、これは14nmと推測される核サイズを有するミセル当たり約60,000イオン対と理解される(ミセル当たり800ポリマー鎖を基に計算、(Wang,ら,2013)ポリマー鎖当たりアミノ基含有モノマーの70〜80繰り返し単位、及び6nmのPEO殻サイズ(Leontidis,2002))。第2に、カオトロピックアニオンのみがミセル形成を誘発し、コスモトロピック(SO
42−)及び境界型アニオン(Cl
−)はこの能力を持たない。この傾向は古典的タンパク質安定化の研究と反対と思われる。第3に、ミセル化を誘発するカオトロピックアニオンの能力が、超pH感度応答に類似した正の共同性を示していると思われる。以前の研究では、蛍光活性化(10%〜90%の応答)は0.25pH単位(<[H
+]の2倍)で起こるとされていた。この研究では、FRET移動は3倍の[ClO
4−]変化の範囲で起こることが示されている。最後に、コスモトロピックと境界型アニオンを用いた競合実験では釣鐘曲線挙動が示され、これは現在のシステムにおけるミセル自己組織化プロセスの複雑で微妙な性質を示唆している。
【0185】
実験的モデル(
図38B)が、ミセル自己組織化プロセスに寄与する因子を表現するために構築された。理論に束縛されないが、アルキル鎖長の増加による疎水性の相互作用がミセル形成の主要な推進力を与えると仮定される。これは、第3級アミンの側鎖がメチル基の場合(
図38Bの左腕の破線により示されている)にはミセルの形成の無いことにより支持される。同様に、中和コポリマー1はpH
tより上のpHではミセルを形成しなかった(Zhou,ら,2011)。一方、アニオンも、ミセル化において決定的な役割を演ずる。強い水和殻と弱い極性特性を有するとして知れらているコスモトロピックアニオンは、イオン対の形成及び疎水性核内のイオン対の安定にエネルギー的にほとんど有利とはいえない(Collins,1997;Underwood及びAnacker,1987)。強力な極性を有し、そして水和鞘を除去する際のエネルギーコストが低いカオトロピックアニオンは、疎水性ミセル核において安定したイオン対の形成を可能にする(Zhang及びCremer,2009)。
【0186】
実施例5:センチネルリンパ節の検出
1.UPS6.9による危険性のあるセンチネルリンパ節の同定
UPS
6.9ナノプローブはまた危険性のあるセンチネルリンパ節を同定する能力も示した。
図42Aは、SPY Elite(登録商標)カメラによる腫瘍部位近くの首側にある代表的センチネルリンパ節の同定を示す。初期頭頸部がんを有する4つの異なる動物(動物当たり2つ)において、8つのリンパ節を同定した。これらの節は、マウス内の初期頭頸部がんに流入し、且つ解剖学的にはマウス内に典型的に見られる頸部節に対応する頸部流域にあった。8つの節の全ての構造はUPS
6.9のみにより同定された;それらは白色光で見るには余りにも小さく、ミリメートル以下であり、頸部脂肪及び唾液腺と密接に関わっているが、SPYカメラで可視化された時には輝いた。臨床病理医によるH&E分析で、同定された構造はリンパ節と確認された。8つの節の1つは、
図42Bの底部パネルの黒矢印に指示されるように、HN5がん細胞の存在を示した。いくつかの場合においては、腫瘍の節再発は初期腫瘍を完全に切除したマウスに観察された。大きい腫瘍が、初期腫瘍の部位に代わって頸部側面に現れた。これらのデータは、腫瘍の完全切除を達成するために危険なリンパ節の同定の重要性を示唆している。腫瘍に流入する単一の節は同定され、多くはがん細胞を含まなかったとの事実は、これらの節は初期腫瘍部位からリンパ管に流入する活性化ポリマープローブを収集するSLNを表していることを示唆している。
【0187】
実施例6:pH活性化インドシアニングリーン・コード・ナノセンサー(PINS)の開発
1.PINSの調製及びナノセンサー特性
ポリ(エチルグリコール)−b−ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート)コポリマー(PEG−b−(PEPA
x−r―ICG
y)(但し、x及びyは、それぞれ、EPAモノマーとICG色素のランダム繰り返し単位の数を表す;
図43A〜43I))のミセルを含むpH活性化可能インドシアニングリーン・コード・ナノセンサー(PINS)を合成した。疎水性ミセル化及びホモFRET誘発蛍光消光(Zhouら,2011及びZhouら,2012)がpH応答を劇的に鋭くした。PEPAセグメント長及びICG結合数の系統的最適化(
図44A〜44F)により、6.9の鋭いpH転移、高い蛍光活性化比、最適な粒径(25nm)及びシグナル増幅のためのナノプローブ当たり800ICGの平均を有する最適なPINS組成が得られた。報告されているpH感受性プローブ(例えば、小分子色素(Uranoら,2009)、ペプチド(Weerakkodyら,2013)または2pHにわたり10倍のシグナル変化を有するPeTナノプローブ(Diaz−Fernandezら,2006))に比較して、PINS設計は、6.9で0.15のpH範囲で>100倍のシグナル増加を達成した。ICGに結合した追加のポリマーを製造し、特性評価して表6に示す。
【0188】
【表6】
[この文献は図面を表示できません]
【0189】
ナノセンサーを用いた初期の用量−応答研究を、本明細書に記載の他のpH応答性システムを用いるはずのものに類似のヒト頭頸部HN5同所性腫瘍異種移植片を有するマウスにおいて実施した。PINSを、尾静脈を介して静脈内注射を行い、医療用SPY Elit(登録商標)カメラを、動物を画像化するために用いた(
図45A〜45E)。2.5mg/kgの量を、持続時間ウ
インドウ(12〜24時間)にわたってノイズ比に対して大きな腫瘍コントラス(CNR=27)を得るために、イメージング用量として使用するのに選択した。安定な時間ウ
インドウは、速い腎クリアランスが原因で、一時的ウ
インドウ(2〜3時間)(Choiら,2013)を用いる小分子トレーサーに対する腫瘍外科手術に有利である。2.5mg/kgPINSの場合のような当量の色素用量での遊離ICGの注射は、観察し得る腫瘍コントラストは見られなかった(
図45B)。
【0190】
PINSによる腫瘍アシドーシスイメージングは、脳及び褐色脂肪組織を擬陽性の類似臨床観察に導くFDG−PETに比べて、腫瘍検出の感度及び選択性が改良された(
図46B及び
図47A〜47E)(Cookら,2004及びFukuiら,2005)。FDG−PETは大きなHN5腫瘍(約200mm
3)を検出するけれども、PET法は小さ腫瘍結節(約15mm
3、表7)の検出には成功しなかった。多数の異なる腫瘍サイズを、PINSを用いて正常組織に対する腫瘍の高いコントラス(CNR>20)で検出することができた。さらに、PINSはミリメートル未満の空間分解能で腫瘍境界を描くことができた(
図46B及び
図47A〜47E)。
【0191】
【表7】
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【0192】
幅広い腫瘍検出を評価するため、3つの同所性頭頸部腫瘍(HN5、FaDu及びHCC4034、B.D.S患者からの腫瘍異種移植片)、皮下乳房腫瘍(MDA−MB−231)、乳房内同所性乳房腫瘍(3種陰性4T1)、HCT116結腸直腸がん細胞からの腹膜転移モデル、患者由来の腎臓がんの異種移植片、及びU87神経膠腫細胞からの同所性脳腫瘍が画像化された。全ての腫瘍は、免疫応答性BalB/Cマウスの4Tl腫瘍無しのNOD−SCIDマウスで確立された。輝く蛍光照明が全ての腫瘍のタイプについて観察された(
図48)。エクスビボ・イメージングは高いがん選択性で筋肉に対して腫瘍の高いコントラスト比(20〜50倍)を明らかにした(
図49A及び49B)。HN5腫瘍モデルを用いて、PINSイメージングと多眼医療用カメラとの適合性が実証された(
図50A〜50F)。
【0193】
SPYカメラを用いて、HN5頭頸部がんまたは4T1乳がんを有するマウスにおいてリアルタイム腫瘍アシドーシス誘導手術(TAGS)を行った。PINS(2.5mg/kg)を、手術の12〜24時間前に静脈内注射した。初期腫瘍切除後の、HN5腫瘍を有するマウスの代表的手術で、残存腫瘍をSPYカメラにより明確に視認でき(
図51Aの左中断パネル)、白色光ではできなかった(左頂部パネル)。境界抽出の正確性を調査するため、HN5頭頸部腫瘍を有する9匹のマウスにおける非生存手術を、二重盲検プロトコルを用いて分析した。外科医は、PINS照明下で腫瘍を切除し、組織試料(2〜3mmサイズ)を、蛍光に基づき初期腫瘍、腫瘍境界または陰性筋肉組織としてマークした。試料はその後冷凍され、分割され、H&Eで着色された。組織学的評価は臨床病理医により独立して行われた(
図52)。究極の判断基準として組織構造を用いて、PINS蛍光評価は、89.5%と100%との間の、95%の検出精度信頼性を持つものであった(n=27)。長期間生存の手術成果は、白色光手術(WLS)、減量手術及び未処理対照に対してTAGSを用いることにより局所領域制御及び全生存が改良された(
図51B)。肉眼的に断端陽性を有する減量手術は一般に頭頸部がんの生存利益は無く、WLSの妥当性について調整するために機能する。WLSは、良好で公平な技術を示唆する同等の生存を示した減量及び未処理対照(P<0.0001)より優れていた。TAGSは、最高の成果、即ち18の内13の動物(72%)が術後150日での治癒、を示した(P<0.0001対WLS、
図51B)。
【0194】
肉眼で発見できないがん性小結節を同定することが、腫瘍境界より優先されるかもしれない臨床シナリオを模倣するために、小さい同所性乳房腫瘍が、免疫応答性雌Ba1B/Cマウスにおいて確立された。5×10
4の3種陰性4T1乳がん細胞が鼠径の乳腺体に注射された。24時間の推定倍増時間で、結節サイズは、4日目の増殖巣で<100万4T1細胞を示す。SPYカメラ下のPINSは4T1増殖巣を同定することが可能であり、組織構造により確認された(
図53A〜53C)。腫瘍は、目視検査または触診で検出することはできなかった。白色光制御について、腫瘍は約25mm
3まで増殖させて可視化させ、注意深く初期腫瘍と周囲の境界を切除した。TAGSは、より優れた可視化をもたらし、未処理対照及びWLSに対して切除後の生存を改善させ(P<0.05、
図53D)、PINSによる素晴らしいイメージング感度を実証した。
【0195】
異なる腫瘍アシドーシス経路を標的とする小分子阻害剤に応答する腫瘍を、PINSにより評価した(
図54A〜54C)。4種の阻害剤を選択した:炭酸脱水酵素IX型(CAIX),V)(Neri & Supuran,2011)、モノカルボキシレートトランスポート(MCT)のためのα−シアノ−4−ヒドロキシシンナメート(CHC)(Sonveauxら,2008)、ナトリウムプロトン交換体1型のためのカリポリド(cariporide)(NHE1)(Cardoneら,2005)、及びプロトンポンプ阻害剤(PPI)としてのパントプラゾール(Vishvakarma & Singh,2011)。PINSは、4T1腫瘍を有するBalB/Cマウスに静脈内注射され、次いで阻害剤が投与された。PINS注射24時間後のNIRイメージンは、PBS対照に対してCAIX阻害剤アセタゾールアミドにより劇的な阻害(74.2%)を示した。MCT阻害剤CHCによる穏やかな阻害(29.3%)も観察した。カリポリドまたはパントプラゾールでは顕著な阻害は見られなかった。PINS応答は、4T1腫瘍内のCAIX阻害剤の以前報告された抗腫瘍有効性と一致する(Louら,2011及びPacchianoら,2011)。
1H/
31P
19または過分極
13C MRI法(Gallagherら,2008)に比較して、PINSイメージングは、腫瘍アシドーシスの機構調査及び固体がんの無調節pHを標的とする薬の開発のための簡単で便利なレポーターアッセイを提供する(Neri & Supuran,2011及びParksら,2013)。
【0196】
免疫応答性C57BL/6マウスにおけるPINSの安全性評価は、高い用量で一時的な体重減少を示した(
図55A及び表8&9)。最大耐性用量は250mg/kgで、イメージング用量より100倍高い。マウスは、200及び250mg/kgにおいて1、7及び28日目に犠牲になった。肝臓及び腎臓機能が測定された(
図55B〜55D)。肝臓の酵素レベルは(ALT及びGOT)はPINS注射1日後増加し、7日後に正常に戻った。組織構造分析(
図56)は、250mg/kgグループの肝臓に1日目で微小脂肪変性が起こり、28日目までに正常に戻ったことを示した。他の主要な臓器(例えば、腎臓、心臓、脾臓、脳)は正常である。
【0197】
【表8】
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【0198】
【表9】
[この文献は図面を表示できません]
【0199】
2.材料及び方法
PINSのモノマー及びポリマーの特性評価。2−(エチルプロピルアミノ)エチルメタクリレート(EPA−MA)及びポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート)コポリマー(PEG−b−(PEPA))合成は、前の方法セクションで記載した。以下に、モノマー及びポリマーの化学特性を示す。
【0200】
2−(エチルプロピルアミノ)エチルメタクリレート(EPA−MA):
1H NMR(TMS,CDCl
3,ppm)6.10(s,1H,CHH=C(CH
3)−),5.54 (s,1H,CHH=C(CH
3)−),4.20(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.75(t,2H,−OCH
2CH
2N−),2.58(q,2H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),2.44(m、2H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),1.94(s,3H,CH
2=C(CH
3)−),1.45(m、2H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),1.02(t,3H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),0.87(t,3H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3))。
13CNMR (CDCl
3,ppm):167.42,136.36,125.35,63.20,56.31,51.51,48.32,20.54,18.33,12.09,11.82。[M+H]
+:200.2(計算値200.3)。
【0201】
ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート)(PEO−b−P(EPA)
100):
1H NMR(TMS,CDCl
3,ppm):3.99 (b,204H,−COOCH
2−),3.83−3.45(m、450H,−CH
2CH
2O−),3.38(s,3H,CH
3O−),2.68(b,204H−OCH
2CH
2N),2.55(b,204H,N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),2.41(b,204H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),1.78−1.90(m、270H,CCH
3C & C(CH
3)
2),1.45(m、204H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),1.02(b,306,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3)),0.88(b,306H,−N(CH
2CH
2CH
3)(CH
2CH
3))。
13CNMR(CDCl
3,ppm):177.73,177.33,176.61,70.58,63.26,63.13,56.21,51.09,45.05,44.70,38.69,31.92,30.33,29.69,29.36,28.90,23.72,22.98,22.69,20.62,16.53,14.13,12.18,11.91。
【0202】
PINSの蛍光活性化。異なるpH緩衝液におけるPINSの蛍光強度は日立蛍光光度計(F−7500モデル)で測定された。各PINS組成については、2.5mg/mL濃度のMilliQ水の貯蔵溶液を調製した。その後、貯蔵溶液を、異なるpHを有する80mMホスフェート緩衝化生理食塩水(PBS)緩衝液、或いは異なるpHを有する80mMPBS緩衝液中の50%ヒト血清のいずれかで希釈した。最終ミセル濃度は、PBS中0.05mg/mL、または50%ヒト血清中0.025mg/mLに調整された。ナノプローブ溶液は780nmで励起され、そして発光スペクトルは800nm〜900nmで集められた。PBSの815nmでの及び50%ヒト血清の830nmでの発光強度が、ナノプローブのpH応答性の定量化のために使用された。異なるpH値での、試験管内のPINS溶液(0.05mg/mL)の蛍光画像は、SPY Elite(登録商標)イメージングシステムにより撮影された。
【0203】
貯蔵期間の研究。新しく調製されたナノプローブ水溶液(5mg/mL)を、同量の20%スクロース水溶液と混合し、10%スクロース中の2.5mg/mL貯蔵溶液を得た。貯蔵溶液は分割され、数個の試験管内に密封し、−20℃の冷凍機で冷凍した。サンプルを指定された時点で解凍し、前述のPBSまたは50%ヒト血清中で蛍光活性化の試験を行った。
【0204】
細胞培養。インビボで腫瘍モデルに使用されるがん細胞株としては、HN5、FaDu、HCC4034ヒト頭頸部がん、MDA−MB−231及び4T1乳がん、U87神経膠腫、並びにHCT116大腸がん細胞が挙げられる。HN5及びFaDu細胞株はMichael Story’s labから得られ;HCC4034は、Dr.Baran Sumerの頭頸部患者の切除腫瘍からJohn Minna’s labにより確立され;MDA−MB−231、4T1及びHCT116はDavid Boothman labから得られ;U87はDawen Zhao labより得られた。全ての細胞株は、使用前にマイコプラズマ汚染の試験を受けた。汚染の否定された状態が、BiotoolからのMycoplasma Detection Kitで確認された。細胞は10%のウシ胎仔血清及び抗生物質と共にDMEMで培養された。
【0205】
動物モデル。この研究に関連する動物プロトコルは、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により再調査され、承認された。雌NOD−SCIDマウス(6〜8週間)は、テキサス大学南西医療センター繁殖コア(UT Southwestern Medical Center Breeding Core)から購入した。同所性頭頸部腫瘍について、HN5、FaDuまたはHCC4034細胞(マウス当たり2×10
6)が顎下の三角エリアに注射された。接種1週間後、100〜200mm
3のサイズの腫瘍を有する動物が研究をイメージングするために使用された。皮下の乳房腫瘍は、右脇腹にMDA−MB−231(マウス当たり2×10
6)を注射することにより確立された。腹膜転移は、HCT−116(マウス当たり2×10
6)を腹腔内注射し、その後腹部を優しくマッサージすることにより確立された。同所性U87神経膠腫を有するマウスは、U87の頭蓋内注射により確立された。XP296患者由来の腎臓異種移植片を有するマウスはJames Brugarolas labより提供された。雌BalB/Cマウス(6〜8週間)は、テキサス大学南西医療センター繁殖コア(UT Southwestern Medical Center Breeding Core)から購入した。同所性乳房腫瘍は、4T1(マウス当たり5×10
4)細胞の胸部乳腺への注射によりBalB/Cマウスに確立された。
【0206】
用量−応答の研究。HN5腫瘍を有するマウス(各グループ3)に1.0、2.5または5.0mg/kgのPINS等張溶液を注射した。対照グループに0.08mg/kg遊離ICG色素(2.5mg/kgPINS中の色素含有量に相当)を注射した。指定された時点で、マウスを2.5%イソフルラン(isofluorane)で麻酔し、SPY Elite(登録商標)で画像化した。蛍光強度をImage Jで測定した。コントラスト対ノイズ比(CNR)は以下の式で計算された:
【0207】
【数1】
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FI(Tumors) 及び FI(Normal Tissue)は、それぞれ腫瘍及び正常組織の蛍光強度である。背景ノイズは正常組織蛍光の標準偏差として測定された。
【0208】
インビボ及びエクスビボ蛍光イメージング。ナノプローブ(U87及びXP296に対して3.0mg/kgとした以外は、全ての腫瘍モデルに対しては2.5mg/kg)は、腫瘍を有するマウスの尾静脈を介して静脈内投与した。24時間後、動物はSPY Elite(登録商標)医療用カメラにより画像化された。エクスビボ・イメージングについては、腫瘍及び主要な器官が摘出され、画像化された。腫瘍及び器官の蛍光強度は、匹敵するサイズの筋肉組織に正規化された。
【0209】
実施例7:エンドサイトーシスオルガネラを評価するためのミセルの使用並びにシグナル伝達及び増殖におけるそれらの使用
1.pH応答性システムの調製
オルガネラの生理的役割を評価するために、一連の両親媒性ブロックコポリマーPEO−b−P(R
1−r−R
2)[但し、PEOはポリ(エチレンオキシド)であり、P(R
1−r−R
2)はイオン化可能ランダムコポリマーブロックである]を合成した(
図57A及び
図58)。各コポリマーの分子組成を表10に示す。高いpH(例えば、ホスフェート緩衝化生理食塩水において7.4)において、これらのコポリマーは核−殻(コア−シェル)ミセル構造にに自己組織化する(直径30〜60nm、表面静電電位−2〜0mV、表10及び
図59)。各コポリマーの見かけのpK
aより低いpHで、ミセルは、第3級アミンのプロトン化のために、ユニマーに解離する。以前の研究では、鋭いpH依存性ミセル転移を、一連の、微調整、超pH感受性の蛍光センサーの開発のために利用した(Ma,ら,2014)。
【0210】
【表10】
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【0211】
本明細書には、広い範囲のpH(4.0〜7.4)における狭いpH間隔で非常に優れたpH調節緩衝能力を有するUPSナノプローブが記載されている。
図57Bは、150mM NaClの存在下における、3つの例、UPS
4.4、UPS
5.3及びUPS
6.2ナノプローブ(各下付き文字は、対応コポリマーのpKaを指示する、表10)のpH滴定曲線を示す。UPS
4.4、UPS
5.3及びUPS
6.2(2mg/mL)は、HCl(0.4M)がポリマー溶液に添加された時、それぞれ、そのpHを4.4、5.3及び6.2の見かけのpK
aに緩衝化され得る。対照的に、クロロキン(CQ)、生物学的研究において広く使用されている小分子ベースは、pH6〜9(pK
a=8.3)の範囲の広いpH応答を示し、同様にポリエチレンイミンも広いpH緩衝を示した(Suhら,1994)。pH滴定曲線(
図57C及び
図60)からの緩衝能力の決定により、pH4.0〜7.4の範囲で特定のpHで非常に優れた緩衝強度を示した。より具体的には、UPS
4.4、UPS
5.6及びUPS
7.1ナノプローブの最大値は、ナノプローブ40mg当たり1.4、1.5及び1.6mmol HClであり、これはそれぞれ、pH4.4、5.6及び7.1において339倍、75倍及び30倍CQより高かった(
図57C)。UPSナノプローブのこの収集は、初期エンドソーム(E.E.,6.0−6.5)(Weisz,2003)から後期エンドソーム(L.E.,5.0−5.5)(Weisz,2003)へ、リソソーム(4.0−4.5) (Casey,2010)へのオルガネラpHの機能的範囲に、独特な一連のpH特異的「プロトン・スポンジ」を提供する。
【0212】
2.pH緩衝能力及びプロトンポンプ速度
イメージング及び緩衝の同時研究のために、デュアル蛍光レポータを有する新しいナノ粒子設計が確立された:pH環境に拘わりなく細胞内ナノ粒子分布をたどる「常時オン」レポータ、及びpH活性化可能レポータ(細胞外媒体pH7.4でオフ及びエンドサイトーシス後の特定のオルガネラpHでオン)。PEOの末端に色素(例えば、Cy3.5)を結合させる際の初期の試みでは常時オンシグナルで成功するが、得られたナノ粒子は、色素が血清タンパク質に結合する結果として不安定であった。この制約を除去するために、ミセルの核に導入された1対のフルオロフォアを用いたヘテロFRET設計が使用された。例えば、FRETペア(例えば、BODIPY及びCy3.5、それぞれ供与体及び受容体である)をUPS
6.2コポリマーのPRセグメントに結合した。同じミセル核内で2種の色素結合コポリマー(供与体/受容体の最適なモル比=2:1)を混合することにより、ミセル状態(pH>pK
a)で共与体色素(例えば、BODIPY)のヘテロFRET誘発蛍光の消光を可能にするが、ミセル分解後のユニマー状態での蛍光回復はより低いpHで可能である(
図61A上側パネル)。「常時オン」シグナルを発生させるために、ミセル中のCy3.5結合コポリマーの重量分率を低く維持して(例えば、40%)、ミセル状態での受容体色素のホモFRET誘発蛍光の消光を回避した(Zhou,ら,2012)(
図61B)。得られたUPSナノ粒子は、広いpH範囲にわたりCy3.5チャンネルにおいて一定の蛍光強度を示し、BODIPYシグナルについては特定のpHで超pH感受性活性化を達成した(
図61C)。両方のフルオロフォアがミセル核内に埋め込まれたので、得られるUPSナノ粒子は安定で、プロテイン結合はしない。
【0213】
UPS
6.2及びUPS
5.3は、それらの見かけのpK
aが、それぞれ早期エンドソームから後期エンドソームへ、及びリソソームへの転移に対応するので(Weisz,2003)、イメージング及び緩衝化の研究のために選択された。HeLa細胞を、増大する用量(100、400及び1,000μg/mL)のUPS
6.2またはUPS
5.3で37℃において5分間培養させ、エンドサイトーシスにより粒子を摂取させ(Conner & Schmid,2003)、その後新鮮な媒体(DMEM中10%FBS)で洗浄した。100μg/mLで、最大の半分のUPS
6.2活性化(BODIPYチャンネル)が30分まで観察され、最大の半分のUPS
5.3活性化(BODIPYチャンネル)が60分まで観察された(UPS
6.2に関する
図62A及び62B;UPS
5.3に関する
図63A及び63B)。対照的に、1,000μg/mLで、BODIPYシグナルの活性化が、Cy3.5シグナルによるHeLa細胞内の粒子摂取の明確な指示にも拘わらず、少なくとも60分まで遅れた(
図62A及び62B並びに
図63A及び63B)。インサイチューで、リソセンサーによるエンドソームのpHの定量は、細胞を400及び1,000μg/mLのUPS
6.2(
図62C)及びUPS
5.3(
図63C)に曝した時に、それぞれpH6.2及び5.3において用量依存性の持続的なpH停滞期(plateaus)を示した。いずれのナノ粒子についても、100μg/ml用量ではオルガネラの酸性化を遅らせるには不十分であった。
【0214】
さらに酸性化速度を定量化するため、HeLa細胞当たりのミセルナノ粒子の数を、細胞数で割られた取り込まれたUPSの蛍光強度に基づいて測定した(下記方法を参照)。データは、より高い摂取用量でのナノ粒子が増加することを示している(表11)。ミセル(64,000)当たりのアミノ基の数、及び細胞当たりの200エンドソーム/リソソームの平均(Holtzman,1989)に基づいて、酸性化速度は各オルガネラについて1秒当たり約150〜210プロトンと計算された。この結果は、V−ATPase当たり加水分解されたATP当たり2プロトン(Deamerら,1999)、1回転当たり消費される3ATP分子(Cross & Muller,2004)、1秒当たり2.4回転(Imamuraら,2003)、及びオルガネラ当たり20V−ATPaseの平均(Imamuraら,2003)に基づく計算と一致している。
【0215】
【表11】
[この文献は図面を表示できません]
【0216】
3.mTORC1活性化の2つの異なるモデルに関するpH閾値
エンドソームタンパク質被覆成熟及びエンド/リソソーム−依存性シグナルの形質導入に対する内腔(管腔)pHのUPS緩衝化の影響を調査した。この目的のため、別々に報告され且つpH6.2、5.3、5.0、4.7及び4.4で緩衝作用を示すUPSナノ粒子が選択された。この範囲は、早期エンドソーム、後期エンドソーム、及びリソソームにおける確立された内腔pH値をカバーする。早期エンドソーム生合成の際立った特徴は、Rab5 GTPaseの漸増(Huotari,& Helenius,2011)であり、それは6.0〜6.5の内腔pH範囲に対応する(Weisz,2003)。完全成熟リソソームは、4.0〜4.5の内腔pH範囲を有するLAMP2陽性である(Caseyら,2010)。エンドソーム成熟マーカーを有するUPS陽性エンドソームの共局在化の定量を可能にするために、Cy5をコードしたUPS
6.2及びUPS
4.4を、ミセル状態で蛍光を検出可能にする低い色素/ポリマー比で開発した(Wangら,2014)(
図64A)。1,000μm/mLの濃度で15分以内に、60%を超えるUPS
6.2及びUPS
4.4陽性エンドソームもまたRab5陽性であった(
図64A及び64D)。UPS
4.4陽性エンドソームはさらに60分以内にRab5陰性/LAMP2陽性の成熟状態に転移した(
図64B及び64E〜64F)。特に、この転移に通常伴う内腔の酸性化の阻害にもかかわらず、UPS
6.2陽性エンドソームも類似の時間枠でLAMP2陽性になった(
図64B及び64D)。しかしながら、UPS
6.2はRab5の放出を遅らせ、60分で異常なRab5/LAMP2陽性エンドソームの過渡的な蓄積をもたらした(
図64B及び64F)。これらの観察されたものは、内腔pH及び内腔pH感受性Rab5放出メカニズムの存在に依存しない新生エンドソームにLAMP2を補強する調整メカニズムの存在を示唆している。
【0217】
内腔pHがエンド/リソソーム生態に固定された影響を調査するために、リソソーム生合成−、即ちラパマイシン錯体1(mTORC1)の哺乳類標的を介して細胞増殖の栄養依存活性化に繋がると最近報告された重要な調整システムが評価された。哺乳類細胞では、mTORC1は、取り込まれた遊離アミノ酸に呼応してエンド/リソソーム膜に局在する(Sancakら,2010)。さらに、エンド/リソソーム膜上のV−ATPase及びRag GTPasesの間の物理的相互作用が、栄養の利用に呼応してmTORC1活性化のために必要である(Zoncuら,2011)。アミノ酸誘発mTORC1活性化を評価するために、mTORC1経路活性化の2つの定量レポータが使用された:mTORC1基質p70S6キナーゼ(p70S6K)のリン酸化反応/活性化及びmTORC1基質TFEBの核/細胞質分布。
【0218】
栄養分を含まない平衡塩類溶液(EBSS)においてHeLa細胞の2時間の培養は、p70S6K及びそれの基質S6の両方における活性化部位リン酸化反応の蓄積が減少したことにより誘発されるmTORC1活性を阻害するために十分であった。必須アミノ酸の添加は、5分以内に経路活性化を誘発するために十分であった(
図65A、及び
図66A及び66B)。1,000μg/mlのUPS
4.7またはUPS
4.4での処理は、遊離アミノ酸に対するmTORC1応答への影響はほとんどまたは全く無かった。対照的に、1,000μg/mlのUPS
6.2、UPS
5.3及びUPS
5.0による前処理は遊離アミノ酸に対するmTORC1応答を遅らせ且つ顕著に抑制した(
図65A及び65B、並びに
図66A及び66B)。mTORC1経路応答の選択的UPS阻害は、TFEB核/細胞質分布とよく似ている。mTORC1によるこの転写因子のリン酸化反応は核排除をもたらし、これにより栄養が十分な状態でのTFEB転写プログラムを阻害する(Pena−Llopisら,2011,Settembreら,2012及びRoczniak−Fergusonら,2012)。Hela細胞において、GFP−標識づけされたTFEBの安定した発現を用いた場合、UPS
6.2、UPS
5.3及びUPS
5.0は、遊離アミノ酸添加時のTFEBの細胞質への再分配を阻害した。対照的に、UPS
4.7及びUPS
4.4で前処理された細胞においては、THEB再分配は正常に進行した(
図65C及び65D)。
【0219】
上記データは、pH5の閾値を下回るエンドソームの酸性化には、mTORC1の遊離アミノ酸誘発活性化が必要であることを示唆している。類似の実験が、遊離アミノ酸よりむしろ高分子の栄養源として牛血清アルブミン(BSA)を用いて行われた。遊離アミノ酸のように、BSA暴露が、mTORC1の再活性化と、それに続く栄養飢餓に十分であった(
図67A〜67D)。しかしながら、遊離アミノ酸と対照的に、UPS
4.4はBSAに呼応してmTORC1の活性化を遅らせた(
図67A&67D)。UPS
4.4で処理された細胞が遊離アミノ酸に正常に応答したことを考慮すると、遅れた応答は、BSAと推量され、即ちリソソーム内の酸性加水分解酵素によるBSAのタンパク質分解阻害の結果と推量された。これに合致して、UPS
4.4の存在でカテプシンB活性の顕著な阻害が見られた(
図66C)。同時に、これらの観察は、明らかなリソソームpH閾値は酸性加水分解酵素活性対遊離アミノ酸検知(sensing)に必要であることを示唆している(
図65E)。
【0220】
4.緩衝化リソソームpHによる細胞代謝産物プールの調節
代謝中間体を製造するためのリソソーム再循環細胞内高分子及び破片は、エネルギー製造、または細胞環境の栄養状態に呼応した新しい細胞成分の構築のために配置された(Settembreら,2013)。リソソーム中の脂質及び糖タンパク質などの大きな分子の異常な蓄積は、代謝障害と関連する。リソソームの酸性化の高度に選択的な摂動と関連する変化について広く評価するために、細胞内の小さな代謝産物の蓄積は、栄養飢餓対栄養十分な成長条件下でUPS
4.4を投与することにより定量化された。0、200及び400μg/mlのUPS
4.4に12時間曝した後、HeLa細胞を溶解し、細胞な代謝産物を液体クロマトグラフィ−三連四重極質量分析計(LC/MS/MS)を用いて定量化した。68の代謝産物が3×10
6HeLaから定量可能であり、リソソーム内の4.4でのpH停止における用量依存性及び栄養依存性の多数の結果を明らかにした(
図68A)。栄養十分な状態で、UPS
4.4用量の増加と共に、比較的大量のほとんどの代謝産物も、細胞タンパク質含有量を正規化すると、増加した。これはほとんどのアミノ酸を包含し(
図68B上側パネル)、これらのアミノ酸は、アミノ酸のリソソーム排出におけるタンパク質合成及び/または欠陥のためにそれらを使用する必要がある同化シグナルの阻害と一致している。栄養不足の条件で、UPS
4.4は、比較的多量のヌクレオチド及びそれらの前駆体(例えば、
図68Aの底部一群)を増進させ、そして第2のメッセンジャーcAMPを大幅に抑制した。リシン、バリン、メチオニン、及びアルギニン等の多くの必須アミノ酸の損失も観察され、アルブミンのような高分子の飢餓誘発異化作用の阻害と一致した(
図68B下側パネル)。これらの結果は、オルガネラ酸性化と代謝産物プールとの間の機構的関連を示唆しており、また、妥当なリソソームの酸性度は、栄養が存在しても存在しなくても、多くの代謝経路の恒常性に必要であることを示唆している(
図68C)。
【0221】
5.NSCLC細胞のエンド/リソソームのpH停止への影響
本発明者等は、最近、非小細胞肺がん(NSCLC)における選択的代謝脆弱性を記述したが、これによれば、KRASがん遺伝子及びLKB1腫瘍抑制遺伝子における共発生突然変異が、ミトコンドリアの健康維持のためのリソソーム異化の細胞依存性をもたらす(Kimら,2013)。V−ATPase活性度の遺伝性または化学的阻害は、この発がん性の背景においてプログラム細胞死を選択的に誘発させるのに十分であった。これが、ATP産生のためのTCAサイクル基質のリソソームに依存する供給を阻害する直接的な影響であると提案された。UPSライブラリーは、がん細胞において、細胞質pH及びmTORC1/AMPKタンパク質錯体に対するV−ATPasesの多面的寄与に関連する交絡因子の非存在下にこの仮説を直接試験する機会を提供した(Zoncuら,2011 Zhangら,2014)。モデルシステムとして、同一の患者から得られた正常(HBEC30KT)及び腫瘍由来(HCC4017)の細胞株を、KRAS及びLKB1の病変が、背景の正常細胞に人工的に導入された一連の同質遺伝子進行細胞と一緒に使用した(
図69A)(Ramirezら,2004)。高い用量のUPS
6.2、UPS
5.3及びUPS
4.4で処理されたHCC4017とHBEC30KTとの間の細胞数及びモルホロジーの比較が、これらのUPSナノ粒子のHCC4017に対する高度に選択的な毒性を明らかにした(
図69B)。LKB1の阻害と一緒に発がん性KRASの発現が、UPS誘発プログラム細胞死に対して気管支上皮細胞の選択性を誘発するのに十分であった(
図69C〜69E)。重要なことは、この表現型が、腫瘍由来細胞(
図69G)及び遺伝的に操作された細胞(
図69G)の両方において、TCAサイクル基質(ピルビン酸メチル及びα−ケトグルタレート)の細胞透過性相似器官の添加時に、救出されたことである。従って、リソソーム機能に対するKRAS/LKB1共成熟NSCLC細胞の選択的脆弱性は、細胞外高分子の異化作用への依存に由来している。さらにUPS
4.4に対するUPS
6.2のより高い細胞毒性は、mTORC1阻害がさらにこれらの細胞の致死率に寄与したことを示している。
【0222】
6.考察
内腔酸性化は、異なるステージでの受容体リサイクリング、オルガネラ輸送及びタンパク質/脂質異化作用などの際立った細胞機能を与える哺乳類の細胞におけるエンドサイト―シスオルガネラの成熟の特徴である(Maxfield & McGraw,2004及びYeungら,2006)。現存する手段または試薬(例えば、クロロキン、NH
4Cl、bafilomycin A1)は、細胞透過性であり、広い範囲のpH活性度をブロックする。結果として、これらの試薬を用いたエンドソーム/リソソームの機能についての生物学的質問として、調合された非特異的pH効果、並びに他の酸性オルガネラ(例えばゴルジ(Golgi))からの寄与されるものを受けるかもしれない。対照的に、現在のUPSナノ粒子は専らエンドサイトーシスを経由して細胞に入る;さらにそれらは、エンドサイトーシス経路に沿ってオペレータが予め定めた閾値にて内腔pHの強固で微細な緩衝化(buffering)を可能にする。素晴らしいpH特異緩衝効果は、以前報告された超pH感受性蛍光応答(Zhouら,2011及びZhouら,2012)と共に、自己組織化システムにおいて独特のナノスケール特性であり、そこでは疎水性ミセル化(相転移)が、第3級アミンの共同プロトン化に導くpH転移を劇的に鋭くする。結果として、UPSナノ粒子は0.3pH単位以内で高い解像度の緩衝効果をもたらした。UPSプラットフォームの緩衝化pH範囲(ほぼ見かけのpK
aの中心)は、電子吸引/供与性の置換基によりほとんど制御される小分子pH緩衝液/センサーとは異なるPRセグメントの疎水性により微調整することができる(Urano,ら,2008)。独特のpH特異性の、調整可能な「プロトン・スポンジ」効果は、他の低分解能ポリ塩基緩衝液(例えば、ポリエチレンイミン、
図57C)とは異なる。さらに、イメージング及び緩衝化能力を同時に達成するために、常時オン/オフ−オン組成を、ヘテロFRET戦略を用いて構築した。このナノ粒子の設計は、HeLa細胞内でのエンドサイトーシス・オルガネラの酸性化速度(1秒当たり150〜210プロトン)の最初の測定を可能にし、それは文献データに基づく推定(240〜310)の大きさと同じオーダー(order)にある。
【0223】
UPSライブラリーの詳細な評価では、エンドサイトーシスオルガネラの内腔pHの摂動がいかに多細胞生理的プロセスに影響を与えたかについて説明した。そして、これはエンドソームの生態及びバイオナノ相互作用を理解する上で貢献している。より具体的には、ライブラリーの「摂動を与える、及び報告する(perturb and report)」との特徴は、エンドソームの成熟の時間分解された定量を可能にし、エンドソームのコートタンパク質の交換での内腔pHの以前正しく評価されていなかった重大な結果を明らかにした。とりわけ、「成熟」リソソームマーカー、LAMP2、の増強が、内腔酸性化と関係なく起こることが分かった。一方、初期エンドソームマーカーRab5の放出は、内腔アルカリ化により遅れるようにされ、Rab5/LAMP2陽性エンドソームのデノボ(de novo)蓄積をもたらす。このことは、現在は述べられていないが探求可能な、エンドソーム/リソソーム生合成を統括するpH感受性及びpH非感受性のメカニズムの存在を示唆している。UPS緩衝容量を微調整する能力はまた、mTORC1経路の遊離アミノ酸対アルブミンに依存する活性化に必要な確かなpH閾値の識別を可能にする。いかなる理論に束縛されることを望むものではないが、pH5.0以下の酸性化が、V−ATPaseタンパク質錯体との「内側から外側の」やりとりのための、またはアミノ酸センシング中のV−ATPaseにおける立体構造変化の誘導のための、遊離アミノ酸を放出するのに必要である(Zoncuら,2011)。同様に、pH4.4以下の酸性化が、mTORC1経路のアルブミン依存活性化に使用され、多分、加水分解酵素の活性化、それに続くタンパク質異化作用に必要である。UPS合成の拡張性は、細胞外高分子のリソソーム消費の阻害時における細胞代謝環境を広範囲に定量化することを可能にした。エンドサイトーシスオルガネラ内のUPSの排他的摂取は、増殖調節の信号伝達の経路及び細胞代謝においてエンドソーム/リソソームのpHの参加を具体的に評価する機会を提供した。
【0224】
7.方法
1.化学品
Cy5―NHS、BODIPY―NHS及びCy3.5―NHSエステルはLumiprobe Corpより購入した(FL,USA)。モノマーの、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEA−MA)及び2−アミノエチルメタクリレート(AMA)はPolyscience Companyより購入した。モノマーの、2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)(Zhouら,2011)、2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)及び2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート(D5A−MA)(Liら,2014)は発明者の以前の著作物に記載された方法に従い調製し、同様にPEOマクロ開始剤(MeO−PEO
114−Br)
1も調製した。N,N,N’,N”,N”’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)はSigma−Aldrichより購入した。Amiconウルトラ−15遠心ろ過管(Amicon ultra−15 centrifugal filter tubes)(MWCO=100K)をMillipore(MA)より購入した。他の試薬及び有機溶剤はSigma−AldrichまたはFisher Scientific Inc.製の分析グレードであった。
【0225】
2.細胞、培地、及び生物試薬
NSCLC細胞株HCC4017及びそれに合った正常気管支上皮細胞株HBEC30KTは、同一の患者から培養した。これらの細胞株の発生及び対応するのHBEC30KT発がん進行シリーズの発生は以前に報告された(Ramirez,ら,2004)。HCC4017及び全てのHBEC30由来細胞株をACL4(0.02mg/mlインスリン、0.01mg/mlトランスフェリン、25nM亜セレン酸ナトリウム、50nMヒドロコルチゾン、10mM HEPES、1ng/ml EGF、0.01mMエタノールアミン、0.01mM O−ホスホリルエタノールアミン、0.1nMトリヨードチロニン、2mg/ml BSA、0.5mMピルビン酸ナトリウムが添加されたRPMI 1640)で、2%ウシ胎仔血清(FBS,Atlanta Biologicals)及び1%抗生物質(GIBCO)と共に培養した。HeLa及びGFP−TFEB HeLa細胞をDMEM(Invitrogen)中で10%FBS及び1%抗生物質(Invitrogen)と共に培養した。Earle‘s Balanced Salt Solution (EBSS,10×,Sigma)を、2.2g/L重炭酸ナトリウム(Sigma)が添加されたMilli−Q水で1xに希釈した。抗生物質は、Cell Signaling(S6K−pT389,S6K,S6−Ribosomal−Protein−pS235/236,S6 Ribsomal Protein Rab5及びRab7)及びAbcam(LAMP2)から得た。他の生物試薬は、Hoechst 33342(Invitrogen)、LysoSensor Yellow/Blue DND 160(Invitrogen)、Magic Red(商標)Cathepsin B Assay Kit(Immunochemistry Technology)、Bafilomycin A1(Sigma)、Chloroquine(Sigma)及びBCA Protein Assay Kit(Thermo)等であった。
【0226】
3.色素結合PEO−b−(P(R
1−r−R
2))ブロックコポリマーの合成
アミノエチルメタクリレート(AMA)を色素との結合に使用した。3つの第1級アミノ基を、AMAモノマー対開始剤の供給比(モル比=3)を制御することにより各ポリマー鎖に導入した。合成後、PEO−b−(PR−r−AMA)を2mL DMFに溶解した。その後、色素−NHSエステル(色素−NHSとして1.5当量)を加えた。1晩反応後、コポリマーを、予備ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10μm 10
3Å, 300×25mm column by varian,溶離液としてTHFを5mL/分で)により精製し、遊離の色素分子を除去した。得られたコポリマーを凍結乾燥し、貯蔵のため−20℃に保持した。常時−オン/オフ−オンUPSナノ粒子のためのコポリマー合成の唯一の相違は、3つのAMA基がBODIPY結合のためのポリマー鎖に導入され、他方1つのAMA基がCy3.5結合にのために導入される点である。
【0227】
4.UPSナノ粒子ミセルの作製及び特性
典型的手順において、10mg UPSポリマーを500μLのTHF(色素結合無し)またはメタノール(色素結合有り)に溶解した。常時−オン/オフ−オンUPSナノ粒子として、BODIPY−結合ポリマーとCy3.5結合ポリマーを、指示した重量比(
図112)で混合し、BODIPYチャンネルでの高いオン/オフ比とCy3.5チャンネルでの安定した常時オンシグナルを与える最良の組み合わせを決定した。溶液を10mLのMilli−Q水に滴下した。有機溶剤を除去するために、ミクロ限外ろ過システム(<100kDa,Amicon Ultra filter units,Millipore)による4〜5回ろ過を用いた。UPSナノ粒子の水溶液を、0.22μmフィルタユニット(Millex−GP syringe filter unit,Millipore)を用いて殺菌した。透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL 1200 EX model,東京,日本)をミセルサイズ及びモルホロジーを調査するために使用した。動的光散乱(DLS, Malvern Nano−ZS model,He−Neレーザ,=633nm)を用いて、100μg/mLミセルPBS溶液の流体力学直径(D
h)を測定した。示されたデータは5つの独立した測定値の平均であった。ゼータ電位は、ひだ状のキャピラリセル(folded capillary cell)を用いて測定した(Malvern Instruments,Herrenberg,Germany)。示されたデータは3つの独立した測定値の平均であった。
【0228】
5.UPSナノプローブの細胞摂取の定量
HeLa細胞(ウェル当たり1×10
6)を、6ウェルの組織培養皿に播種した。12〜16時間後、細胞を、血清非含有DMEM中で、UPS
6.2−TMR及び/またはUPS
5.3−TMRに5分間曝し、その後PBSで3回洗浄した。さらに2時間DMEM+10%FBSで培養後、UPSナノプローブを細胞からメタノールで抽出した。UPSナノプローブミセルはメタノール中でユニマーに解離した。日立蛍光光度計(F−7500モデル)を、UPS−TMRユニマー溶液のRFUを570nmで測定するために使用した。取り込まれたUPSナノプローブの用量はRFU及びUPS−TMR溶液の標準曲線から計算された。
【0229】
6.エンド/リソソームpHの測定
HeLa細胞を、4−または8−ウェルNunc(商標)Lab−Tek(商標)IIChambered Coverglass(Thermo Scientific)に固定し、48時間培養させた。その後、細胞を、血清非含有媒体中の25μMのLysoSensor Yellow/Blue DND−160及び1,000μg/mLのUPSナノプローブに37℃で5分間浸した。細胞は2回洗浄され、即座に画像化(イメージング)された。イメージングは、ディジタルモノクロCoolsnap HQ2カメラ(Roper Scientific,Tucson,AZ)を装備した落射蛍光顕微鏡(Deltavision,Applied Precision)を用いて実施した。蛍光画像は、SoftWoRx v3.4.5(Universal Imaging,Downingtown,PA)を用いて収集された。データは、360/460nm及び360/520nmの励起/発光波長で記録された。DAPI(360nm)のための単一帯域通過励起フィルタは40nmであり、DAPI(460nm)及びFITC(520nm)のための発光フィルタの帯域通過はそれぞれ50nm及び38nmである。細胞蛍光比は、ImageJソフトウェアを用いて保存された単一波長画像の画像分析により決定した。各細胞について、対象範囲は、UPSナノプローブ及びLysoSensorの両方からの蛍光シグナルを発光したサイトゾルの斑点(punctae)として定義される。蛍光強度比は、各細胞内斑点についてR=(F
1−B
1)/(F
2−B
2)(但し、F
1及びF
2はそれぞれ360/520及び360/460での蛍光強度であり、B
1及びB
2は、サイトゾルの斑点の近くにある同じ画像上の領域から決定される対応する背景値である)として計算された。RとpH間の関係を標準化するために、我々はDiwuら(1999)により確立された改良プロトコルを用いた。細胞はLysoSensorで一杯にされ、その後10μMのモネンシン及び10μMのニゲリシンで透過処理した。これらの細胞を、30分間、5mMのNaCl、115mMのKCl、1.2mMのMgSO
4及び25mMのMES(MESバッファー)からなる、pH4.0と7.4との間で変化する平衡緩衝液で処理した。細胞はイメージングまで緩衝液中に保持された。
【0230】
7.共局在化分析
免疫蛍光検査法からの画像を、回転盤共焦点顕微鏡(Andor)を用いて撮影された。Z−スタック(Z−stack)画像は、共局在化分析におけるデコンボリューションの後に用いた。データはImaris7.7(Bitplane)のColocモジュールを用いて分析した。閾値Mander’s係数は、全シグナルにわたって共局在化シグナルの割合の指標として用いた(Mandersら,1993及びBolte & Cordelieres,2006)。
【0231】
8.メタボロミクス解析
HeLa細胞を100mm皿で80%融合まで培養させ、栄養豊富グループと栄養枯渇グループに分けた。栄養枯渇グループ細胞の培地を、生理食塩水で2回洗浄する前に、EBSSに変えた。その後、200または400μg/mLのUPS
4.4(最終濃度)または同じ容量の水(対照として、各条件は6つの複製を含む)を、両方のグルームに添加し、1晩置いた。この後に、細胞は氷冷生理食塩水で2回洗浄し、500μLの冷却メタノール/水(50/50、v/v)で覆った。細胞をEppendorf管に移し、3回の凍結融解サイクルに付した。激しいボルテックスの後、破片(debris)を、16,000×g、4℃で15分間遠心分離することによりペレット化した。ペレットはタンパク質定量化に使用した(BCA Protein Assay Kit,Thermo)。上澄みを新しい管に移し、SpeedVac濃縮機(Thermo Savant,Holbrook,NY)を用いて蒸発させて乾燥させた。代謝産物を、100μLの0.03%ギ酸の分析グレード水でもどし、ボルテックス混合し、そして遠心分離して破片を除去した。その後、メタボロミクス研究のために、上澄みをHPLCバイアルに移した。
【0232】
標的の代謝産物プロファイリングを、液体クロマトグラフィ−質量分析/質量分析(LC/MS/MS)アプローチを用いて行った。分離は、Nexera Ultra High Performance Liquid Chromatograph(UHPLC)system(Shimadzu Corporation,京都,日本)を用いてPhenomenex Synergi Polar−RP HPLCカラム(150×2mm、 4μm、80Å)で行った。使用した移動相は、0.03%ギ酸水溶液(A)及び0.03%ギ酸アセトニトリル溶液(B)であった。勾配プログラムは以下の通りであった:0〜3分、100% A;3〜15分、100%〜0% A;15〜21分、0% A;21〜21.1分、0%〜100% A;21.1〜30分、100% A。カラムは35℃に維持され、サンプルは大気中で4℃に保持された。流速は0.5mL/分、注入量は10μLであった。質量分析器は、多重反応モニター(MRM)モードの、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えたAB QTRAP 5500(Applied Biosystems SCIEX,Foster City,CA)であった。サンプル分析は、正/負切換型で行った。デクラスタリング電位(DP)及び衝突エネルギー(CE)は、サンプル分析の前に注射器ポンプを用いて参照基準を直接注入することにより、各代謝産物のために最適化された。MRM MS/MS検出器は以下のように設定した:カーテンガス 30psi;イオンスプレー電圧 5000V(正)及び−1500V(負);温度 650℃;イオン源ガス1 50psi;イオン源ガス2 50psi;インターフェースヒータオン;入口電圧 10V。合計で、69の水溶性内因性代謝物を上記のように明確に検出した、その際ベースラインは細胞非含有サンプルにより設定された。細胞サンプルはランダムな順序で分析され、MRMデータは、Analyst 1.6.1ソフトウェア(Applied Biosystems SCIEX,Foster City,CA)を用いて得られた。
【0233】
クロマトグラムの調査及びピーク領域の積分は、MultiQuantソフトウェア バージョン2.1(Applied Biosystems SCIEX,Foster City,CA)を用いて行った。細胞の数は類似しており、各サンプルは完全に同じように且つランダムに処理されたが、それぞれの検出された代謝産物のピーク領域は、機器分析によるサンプル操作からもたらされるばらつきを修正するためにそのサンプルのタンパク質含有量に対して正規化された。正規化された領域値は多変量及び単変量の統計的データ解析の変数として用いた。共通のMRM転移を有するクロマトグラフィによる共溶出代謝産物は分類されたフォーマット(即ち、ロイシン/イソロイシン)で示した。正規化データに基づくすべての多変量分析及びモデル化は、SIMCA−P(version 13.0.1,Umetrics,Umea Sweden)を用いて行った。予め処理されたデータセットは完全連結法を用いる監視なし階層的クラスタ分析により評価された。
【0234】
実施例8: PET及び蛍光イメージングを用いたデュアルイメージング法
1.蛍光レポータを有する超pH感受性(UPS)ナノプローブの発生
最近、ICG−官能化UPSナノプローブで、6.9にpH転移を有するものが本発明者により開発された。PEG−b−PEPAを、PEPAセグメントの繰り返し単位を変えながら原子移動ラジカル重合法を用いて合成した(40〜120、
図70A)。その後、ICG、即ちFDA是認近赤外色素を、異なる色素濃度を有するPEPAセグメントに結合させた(ポリマー鎖当たり1、3及び6個のICG)。正常組織の血液pH(7.4)または間質pH(7.2)において、I−UPS
6.9ナノプローブは、ホモFRET誘発蛍光消光の結果として、静かにしている(
図70D)(Zhouら,2012及びZhouら,2011)。これらのpHでは、UPS
6.9は、動的光散乱分析による25.3±1.5nmの直径及びTEMによる球状モルホロジー(データは示されない)を有する自己組織化ミセルとして存在した。転移pH、応答の鋭さ、蛍光活性化比及びナノプローブの直径に対するポリマー鎖長及びICG濃度の影響を調査した。
図70Bは、PEPAセグメント長を変化させた代表的な研究を示す。データは、PEPAの繰り返し単位の40から120への増加がより鋭いpH転移(例えば、それぞれ0.30から0.13に縮減されたpH
オン/オフ)及びわずかに低いpH転移(それぞれ6.96から6.91に)をもたらすことを示している。粒径はまたPC7A長(15から30nm)と共に増加した。ポリマー鎖当たり3つのICGは、オン状態での高い蛍光活性化比及び輝く蛍光強度と共に最も典型的な色素濃度を可能にした。これらのデータをもとに、鎖当たり100の繰り返し単位のPC7A及び3つのICG色素を有するUPS組成が選択された。得られたUPSナノプローブは鋭いpH転移(pH
オン/オフ=0.15)、高い蛍光活性比(オンとオフ状態の間の>100倍)(
図70C)、及び腫瘍透過の典型的粒径(25nm)を有する。この戦略を用いて、多様ながんタイプ及び器官部位を有する一連の広範な動物腫瘍において、腫瘍対腫瘍組織の大きい比を有する広い腫瘍特異性が実証された(Wangら,2014)。腫瘍特異イメージングは、1mm
3くらい小さい腫瘍において達成された。加えて、I−UPS
6.9ナノプローブは血清含有(20%FBS)培地において48時間わたって安定であり、鋭いpH応答及び高い蛍光活性化比を維持している(
図70B〜70D)。
【0235】
2.PETイメージングのための放射性トレーサーとしての
64CuのUPSナノプローブへの導入
他の非標準PET核種に比べて、
64Cu(t
1/2=12.7h;β+0.653MeV,17.4%)は、低い陽電子範囲、市場入手容易性、及び合理的な長い崩壊半減期のために、ナノ粒子、抗体及びペプチドに基づく多くのイメージング剤に使用されている(Rossinら,2008及びHaubner & Wester,2004)。金属とキレート剤との間の安定性は、放射線医薬様式設計における成果に重要である。多くのキレート剤は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−テトラ酢酸(DOTA)及び1,4,7−トリアザシクロノナン−トリ酢酸(NOTA)等の
64Cu用キレートリガンドとして開発されてきた(Wadasら,2007)。これらの中で、CB−TE2A(
図71)がSun及び共同研究者によって報告され、
64Cuとの最も安定な錯体の1つを形成するものであり(Sunら,2002)、Cu(II)−CB−TE2A錯体は、他のテトラ大環状錯体と比べて還元的金属損失耐性に優れている(Woodinら,2005)。CB−TE2Aは、
64CuをUPSに誘導するためのキレート剤として使用される。NHSエステル官能化CB−TE2Aは文献に報告された手順に従って製造される(Liuら,Angew Chem Int Ed Engl.,48:7346−7349,2009)。ナノプローブ側では、第1級アミノ基が、ポリマー鎖のPEG末端に導入される。NH
2−PEG−PC7Aは
図71に記載の経路で合成される。市販のFmoc−PEG−OHはATRP用のマクロ開始剤の作製に使用される。ATRP後、ポリマーを脱保護した後、第1級アミノ基は再生することができ、NHSエステル官能化CB−TE2Aへの結合に使用することができる。ハイブリッドミセルは、超音波処理及び溶剤蒸発法により、CB−TE2A−PEG−PC7A及びPEG−PC7A−ICGの混合物から形成される。ハイブリッドミセルは、
64CuCl
2とミセルを緩衝化溶液で培養し、その後限外ろ過することにより
64Cuで標識化される。
【0236】
3.デュアルモダリティUPS及びPETとFDGのみとのイメージング有効性の比較
同所性HN5頭頸部腫瘍を有するマウスにおける予備結果では、3匹のマウスの内2匹に肩甲骨間BATからの強い擬陽性信号が示され、一方I−UPS蛍光は高い特異性を有する腫瘍を描いた(
図72)。臨床的には、頭頸部がん患者のBATまたは緊張した頸筋は、上昇したグルコース消費により、PETイメージングにおける異常なものとの誤解に導いた。
64CuのUPSナノプローブへの導入により、PET核種の分布が腫瘍アシドーシスを標的することによりシフトされ、このためFDGを有するPETから潜在的擬陽性を除去すると予想される。
【0237】
デュアルモダリティUPSが、PETスキャンによるFDGに対してより確実な腫瘍検出を提供するかどうかを比較検討するために、活性化BATが、イメージング有効性を評価するためにモデルとして用いられる。マウスに同所性頭頸部腫瘍モデルを確立した後、活性BATへのPETイメージングの前に、腫瘍を有するマウスを冷却処理する(Wangら,2012)。特異的であるために、腫瘍を有するマウスを12時間絶食にし、PETイメージングの前に、4℃の冷却部屋内の予備冷却かごに4時間入れる。マウスは均等に3つのグループに分けられ、それぞれ以下の試薬を尾静脈から注射される:1)FDG;2)デュアルモダリティUPS;3)プロプラノロールとFDG。プロプラノロールは、BAT活性化を抑制し、負の制御として機能するβアドレナリン受容体阻害剤である。PET画像が得られ、3D Ordered Subsets Expectation Maximization(3D配列分画期待値最大化)(OSEM3D/MAP)アルゴリズムを用いて単枠に再構築される。対象領域(ROI)は、腫瘍を含む全ての面における腫瘍/BATを包括して、手動で取り出される。標的の活性度は、グラム当たりの注射容量%(%ID/g)として計算される。標準化摂取値(SUV)も、腫瘍、肩甲骨間のBAT、並びに潜在的擬陽性の評価のための周囲の正常組織について計算される。組織構造は、がん組織またはBATの存在の判断のための究極の判断基準として役立つ。FDGグループまたはUPSグループからの頭頸領域において陽性を示す全ての組織は、パラフィン包埋及び切片法により収集される。H&E染色は、各グループの結果と関係する組織構造検証のためにこれらのスライドから調製される。それぞれの試料は、FDG+/−(PETから)、
64Cu−UPS+/−(PETから)、がん細胞+/−(組織構造から)及びBAT+/−(組織構造から)に割り当てられる。統計分析は、デュアルモダリティUPSが検出精度を顕著に改善したか否かを判断するために使用される。
【0238】
実施例9:UPSナノプローブを用いたがん手術及び腫瘍除去プロセス
1.UPSナノプローブを用いた多重腫瘍タイプの広域がん特異的イメージング
I−UPS設計の1つの優位性は、観血的手術(SPY Elite(登録商標) by Novadaq)、マイクロ手術(Leica, Carl Zeiss)、腹腔鏡検査(Karl Storz, Olympus)、及びロボット手術 (da Vinci(登録商標))においてICGに基づくイメージングのために既に承認されている現存の手術室カメラシステムと適合しており、臨床解釈の障壁を低くしている。SPYカメラを用いて、多発性がんタイプにおける腫瘍アシドーシスを画像化するI−UPS
6.9ナノプローブの実現性を調査した。多発性がんタイプとしては、頭頸部(ヒトHN5、SCIDマウスのFaDu及びHCC4034同所性異種移植片;HCC4034)、乳房(SCIDマウ内のヒトMDA−MB−231及びBALB/Cマウス内のマウス4T1)、腎臓(SCIDマウス内のヒト同所性XP296腫瘍)、脳(ヒト膠芽細胞腫U87異種移植片)、及びGIトラクトからの腹膜転移(SCIDマウス内のヒト結腸直腸HCT−116腫瘍、
図73)が挙げられる。結果は、この一連の広域な腫瘍において高い腫瘍/正常組織のコントラスト(T/N比>20)を示している。特に、頭頸部(例えば、褐色脂肪)並びに脳実質(UPS摂取を防ぐ血液脳関門(Hawkins & Davis,2005及びKreuter,2001)による可能性が高い)における典型的な擬陽性腫瘍を、I−UPSシグナルは欠いていた。これらの結果は、がん標的として細胞外酸性pHのロバスト性、及び広範に応用できるがん特異性検出がI−UPSナノプローブにより可能であることを実証している。
【0239】
実施例10:デュアル蛍光レポータUPSナノプローブ
1.デュアル蛍光レポータを有するUPSナノプローブ
腫瘍アシドーシスイメージングにおいてナノプローブ用量とpH活性化を独立して評価するために、デュアル蛍光レポータを有するUPSナノプローブが構成される:pHに関係なくナノ粒子分布を追跡する「常時オン」レポータ、及びpH活性化可能レポータ。PEO(UPSナノプローブの表面など)の末端に色素(例えば、Cy5.5)を結合させる最初の試みは、常時オンシグナルに成功したが、得られたナノ粒子は色素が血清タンパク質と結合するため不安定であった。この制限を除去するため、ミセルの核に導入される一対のフルオロフォアを用いたヘテロFRETを使用する。例えば、FRET対(例えば、供与体と受容体としてそれぞれBODIPYとCy3.5)をUPS
6.9コポリマーのPRセグメントに別々に結合させた。同じミセル核内の2種の色素結合コポリマー(供与体/受容体=2:1の最適比)は、ミセル状態(pH>pK
a)で供与体色素(例えば、BODIPY、λ
ex/λ
em=493/503nm)のヘテロFRET誘発蛍光消光を可能にしたが、ミセル解離後のユニマー状態での蛍光回復がより低いPHであった(
図76A〜C)。「常時オン」を発生させるため、ミセル状態のCy3.5結合コポリマーの重量分率を、ミセル状態で受容体色素(Cy3.5、λ
ex/λ
em=591/604nm)のヘテロFRET誘発蛍光消光を避けるため、低く保持した(例えば、40%)(Zhouら,2011;2012)。得られたUPSナノ粒子は、広いpH範囲にわたってCy3.5チャンネルにおいて一定の蛍光強度を示し、超pH感受性活性化をBODIPYシグナルの6.9で達成する(
図75)。両方のフルオロフォアはミセル核内に埋め込まれるので、得られるUPSナノ粒子は安定で、タンパク質汚染は無い。
【0240】
現在の研究では、ヘテロFRET設計及びBODIPY/Cy3.5組み合わせは、UPSナノプローブに常時−オン/オフ−オンデュアルレポータを導入するために使用される。ミセル形成後、ナノプローブは、まず動的光散乱(DLS,Malvern Zetasizer Nano−ZS model)で流体力学直径(D
h)及びゼータ電位により特性評価される。UPSナノプローブのサイズとモルホロジーはさらに透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL 1200 EX model)により分析され、DLS結果と関連付けられる。pHへの応答における蛍光活性化の研究のために、ミセルは異なるpH緩衝液(pHは6.0〜7.4に、0.1pH増分で制御される)で0.1mg/mLの濃度において作製される。ナノプローブは、日立蛍光光度計(F−7500モデル)でフルオロフォアに対応する波長で励起される。発光強度はオン/オフ比を定量化するために使用される。臨界ミセル濃度(CMC)はピレン法(Kalyanasundaram & Thomas,1977及びWinnik,1993)を用いて測定する。新しいマウス血清におけるデュアルレポータUPSナノプローブの安定性も、以前記載されたように試験される(Wangら,2014)。
【0241】
2.6.5〜7.1のpH転移を有するUPSナノプローブ
一連の微調整可能な6.5〜7.1のUPSナノプローブは、アシドーシスの種々の段階を有する腫瘍pH
eを標的にして合成される。オペレータ既定のpH転移(4.0〜7.4)及び鋭いpHを有するUPSライブラリーを構成するためのランダムコポリマー戦略は本明細書に報告され、(Maら,2014)に報告されている。3つの設計基準に合わなければならない:(1)PEO−b−PRコポリマーにおいて、ランダムPRブロック(P(R
1−r−R
2))(但し、R
1及びR
2は第3級アミン上で異なるアルキル鎖長を有するモノマーである)は単一のpH転移を確実にするために使用されなければならない。ブロック化PRセグメント(P(R
1−b−R
2))は、R
1及びR
2ブロックの異なるイオン化挙動を反映する2つのpH転移をもたらした;(2)R
1及びR
2における近接して良く合った疎水性を有するモノマーは鋭いpH応答を達成するのに必要である。非限定的な1つの例では、近接アルキル基が使用された時(例えば、R
1/R
2=エチル/プロピル)、ΔpH
オフ/オンは<0.25であり、R
1/R
2がエチル/ペンチルの時はΔpHオフ/オンは<0.5である;(3)P(R
1−r−R
2)セグメントの疎水性は、R
1とR
2モノマーのモル分率を制御することにより微調整することができ、正確に制御された転移pHが得られる。
【0242】
上記基準に基づいて、2種のモノマー、ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEA−MA)及びジイソプロピルアミノエチルメタクリレート(DPA−MA)の比を変化させた一連のPEO−b−P(DEA
x−r−DPA
y)コポリマー(
図76A)を合成する。合計繰り返し単位は100(x+y=100)で制御される。アミノエチルメタクリレート(AMA−MA)がフルオロフォア結合のために導入される(鎖当たりz=3)。
図76Bは、代表的色素のCy5.5を用いたpH依存性UPS活性化のデータを示す。結果は、6.3〜7.8のpH範囲に微調整された一連のUPSナノプローブを示している。全てのナノプローブは鋭いpH応答(ΔpH
オフ/オン<0.25)を維持した。転移pH対DPAモル%(
1H NMRにより定量化)のプロットは、直線関係を示す(
図76C)。この関係は、6.5、6.7、6.9及び7.1のpH転移を標的とするPEO−b−P(DEA
x−r−DPA
y)コポリマーの組成を決定するための標準曲線として使用する。各転移pHのために、SPYイメージング用ICG結合またはメカニズム研究のためのデュアル蛍光レポータを有するナノプローブを製造する。
【0243】
実施例11:腫瘍進行におけるpH調節メカニズムの分析
1.腫瘍進行の種々の段階での異なる糖分解表現型における腫瘍アシドーシスのpH調節メカニズム
本明細書に記載のデュアルレポータUPSナノプローブを用いて、分岐解糖傾向を有する腫瘍が、腫瘍アシドーシスを達成するのに使用される異なるpH調節経路を決定するために調査される。より具体的には、より高い解糖性腫瘍はpH調節のためモノカルボキシレート輸送体(例えば、MCT1/4)を優先的に使用し、一方解糖性が損なわれた腫瘍は腫瘍アシドーシスにおいて炭酸脱水酵素IX型を利用するか否かが調査される。適格解糖性頭頸部がん細胞(例えば、HN5またはFaDu)は、陽性対照として使用され、重要な解糖酵素(例えば、LDHAまたはPKM2)の安定的ノックダウンにより同質遺伝子の解糖性が損なわれた腫瘍を創製する。以前の研究では、LDHAまたはPKM2のshRNAノックダウンが選択的に解糖を阻害し、OXPHOS経路に向かって細胞を再プログラミングすることが示されていた(Christofkら,2008;Fantinら,2006)。小分子阻害剤(例えば、MCT1/4の自殺阻害剤、またはCAIXのアリールスルホンアミド)が、MCT1/4とCAIXとの免疫組織化学の組み合わせで使用される。UPS活性化のパターンは、腫瘍部におけるpH調節タンパク質の空間発現と関係している。
【0244】
2.小分子阻害剤の摂動による腫瘍アシドーシスの機構的研究
腫瘍生体エネルギー学は、解糖機構またはミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)経路の向上と関係する。いくつかの分子レベルのメカニズムが、がん細胞におけるアルカリ性pH
i及び腫瘍ミクロ環境における酸性pH
eを維持することに関与している(
図77)。pH調節機構は、モノカルボキシレート輸送体(MCT1及びMCT4)(Enerson & Drewes,2003及びHalestrap & Price,1999)、炭酸脱水酵素(CAIX及びCAXII)(Supuran,2008及びSupuran,2010)、アニオン交換体 (AE1、2及び3)(Sterling,ら,2002;Morgan,2004)、Na
+−重炭酸塩交換体(NBC)(Pouyssegurら,2006)、Na
+/H
+交換体(NHE)(Pouyssegurら,2006)及びV−ATPase(Perez−Sayansら,2009)等の多種タンパク質の相互作用と関係している。
【0245】
異なる解糖機構を有する腫瘍におけるアシドーシス機構を調査するために、本発明者等はまずアシドーシスプロセスにおける2つの主要な規制タンパク質の阻害剤から始める:MCT1/4のための自殺CHC阻害剤(
図78A〜78E)及びCAIXのためのアセタゾールアミド。本明細書に記載のデュアルレポータUPSナノプローブは、腫瘍のマイクロ環境におけるpH調節性に摂動を与えるために静脈内投与され、酸性化の時空応答をイメージングするためにデュアルレポータUPSナノプローブを使用する。3つのグループのマウスは、以下の異なる解糖表現型を有する皮下肺腫瘍と共に使用される:1)適格解糖速度を有する同所性 HN5またはFaDu;2)LDHAのshRNAにより解糖が損なわれた同所性HN5またはFaDu(Fantinら,2006)。腫瘍サイズは全てのグループにおいて約200mm
3に制御される。各グループからのマウスは、その後4つのサブグループに分けられる。各サブグループのマウスは以下を受ける:1)PBS;2)CHC阻害剤;3)アセタゾールアミド;4)CHC阻害剤とアセタゾールアミドの両方、それぞれ、その後デュアルレポータUPSが投与される。UPS注射の1、2、4、12及び24時間後に、各腫瘍からのBODIPY(オフ−オン)蛍光強度(FI)及びCy3.5分布(常時オン)がMaestro小動物イメージングシステム(PerkinElmer)により測定され、画像Jにより定量化される。3つの異なるグループ間とFI(サブグループ1)と比較することにより、分岐解糖速度を有するがん細胞が全て、腫瘍マイクロ環境において酸性pH
eを生成させるか否かが決定される。同じグループからFI(サブグループ2/3/4)/FI(サブグループ1)の比を計算することにより、各経路が、異なる解糖速度を有する腫瘍の全アシドーシスに如何に貢献するかを決定する。各実験の最後に、腫瘍は集められ、凍結切片が試料から調製される。各腫瘍切片について、活性化ナノプローブのBODIPY画像及び絶対プローブ分布のCy3.5画像が記録される。MCT1/4またはCAIXの腫瘍アシドーシスへの相対的寄与は、活性化オン/オフBODIPY対常時オンCy3.5蛍光強度から正規化される。凍結切片はH&Eまたは抗体によって着色され、腫瘍のMCT1/4またはCAIXの発現プロファイルと関連付けられる。低酸素バイオマーカーHIFIαはまた、分布パターンを活性化ナノプローブと比較するために着色される。
【0246】
3.腫瘍進行の異なる段階での腫瘍アシドーシスの腫瘍内異質性の調査
生体エネルギーリモデリングの連続が腫瘍進行と共に存在することは知られている(Joseら,2011)。小さい腫瘍は、グルコースからラクテートへの変換が低い傾向があるが、グルタミンからラクテートへの変換は比較的高い。一方、大きい腫瘍は、グルコース及び酸素の供給が低いにも拘わらず高いグルコース及び酸素利用速度を有する(Eigenbrodtら,1998)。データは、I−UPS法が、SPYカメラで輝く斑点として、極めて小さい腫瘍巣(<1mm、またはBalB/Cマウス内の100万未満の4T1がん細胞、
図79A〜79C)を検出することができることを示している。この結果は、I−UPSは、進行の早い段階での小さい腫瘍結節を検出するのに十分な感度を有する。
【0247】
腫瘍増殖中に腫瘍アシドーシス機構の電位スイッチングをモニターするために、HN5及びHN5の解糖性が損なわれたモデルを研究し、腫瘍増殖の異なる段階でのナノプローブ活性化を評価する。腫瘍が10、100、500及び1000mm
3に増殖した時、動物はまずMCT1/4またはCAIX阻害剤の注射無しで画像化される。その後、CHC阻害剤またはアセタゾールアミドを静脈注射し、対応するpH調節経路を遮断し、動物は再び画像化され、摂動前後の蛍光強度を比較する。CHC阻害剤またはアセタゾールアミド注射の結果としての蛍光強度%の低下が定量化され、それぞれ腫瘍切片におけるMCT1/4またはCAIXの発現レベルと関連づけられる。血管系(アンチ−CD31)及び低酸素症(ピモニダゾール)の着色も、(Wangら,2014)に記載の腫瘍進行の異なる段階での血管新生及び低酸素症のUPS活性化についての評価をするために行われる。
【0248】
実施例11:分岐解糖系表現型を有する腫瘍の検出におけるUPSイメージング
1.分岐解糖速度を有するマウス腫瘍モデル
1つのシリーズで、同所性頭頸部腫瘍(HN5、FaDu、またはHCC4034、
図73)は確立され、それらの同系の解糖性が損なわれた腫瘍が、本明細書に記載のLDHAの安定的ノックダウンにより確立される。別のシリーズでは、以前に確立した80の細胞株のパネルから構造的に高い解糖速度対低い解糖速度を有するいくつかの非小細胞肺がん株が選択される。これらの分岐解糖系表現型を有する動物モデルを用いて、I−UPSナノプローブによるアシドーシスイメージングが、がん特異性をより高くするとの仮説が、FDG−PETにより、特に、解糖性が損なわれた腫瘍について試験される。加えて、正常組織における両方のイメージング法からの擬陽性シグナルも調査される。
【0249】
2.頭頸部の正常及び解糖性が損なわれた腫瘍モデルにおけるI−UPSとFDG−PETイメージングの比較
適格な解糖性及び損なわれた解糖性を有するマウスにおいて一連の同所性頭頸部腫瘍モデルを確立する。具体的には、10
6の選択された頭頸部がん細胞(HN5、FaDuまたはHCC4034)をSCIDマウスのおとがい下三角の領域に注射し、腫瘍を約200mm
3まで増殖させる。マウスを2つのグループに分ける:1つのグループは、適格解糖性グループとしてスクランブル短ヘアピンRNA(shRNA
scr)が注射され;他のグループは、解糖性が損なわれたグループとして、ラクテート形成を遮断するためのラクテート脱水素酵素(LDHA)ノックダウウン短ヘアピンRNA(shRNA
LDHA)が注射される(Fantinら,2006)。マウスはPETイメージング前に12時間絶食させる。各マウスは、生理食塩水150μL中の150μCiのFDGの尾静脈注射を静脈内より受けた。PET画像は注射1時間後15分間で得られる。PET画像は、3D Ordered Subsets Expectation Maximization(3D配列分画期待値最大化)(OSEM3D/MAP)アルゴリズムを用いて単枠に再構築される。対象領域(ROI)は、腫瘍を含む全ての面における腫瘍を包括して、手動で取り出される。標的の活性度は、グラム当たりの注射容量%(%ID/g)として計算される。標準化摂取値(SUV)も、潜在的擬陽性の評価のために、腫瘍、並びに周囲の正常組織及び他の興味ある臓器(例えば、脳、腎臓、心臓、及びへんとう腺)について計算される。同所性HN5頸部腫瘍を有するマウスにおける最初のデータは、3匹のマウスの内2匹に褐色脂肪組織からの強い擬陽性シグナルを示し(Christofkら,2008;Fantinら,2006)、一方UPSは高い特異性を持つ腫瘍を検出した(
図80)。臨床的には、頭頸部がん患者の肩甲骨間の褐色脂肪組織または緊張した頸筋は、上昇したグルコース消費のためPETイメージングにおいては異常なものとして誤った解釈に導く(Mirbolooki,2011; Wangら,2012)。正常組織の構造は擬陽性シグナルの組織源を確認するために前もって作製される。
【0250】
PETイメージング後、マウスは、放射線トレーサー(
18F,t
1/2=110分)を再活性させるために1晩置かれる。I−UPS(2.5mg/kg)は、その後、尾静脈より注射される。マウスは、注射の24時間後、マウスはSPY Elite(登録商標)医療用カメラで画像化される。全ての体のイメージングの後、マウスは主要な臓器(例えば、心臓、肝臓、腎臓、肺、脳、脾臓等)を除去するため解剖する。腫瘍及び正常組織のエクスビボ・イメージングはSPY Elite(登録商標)医療用カメラで画像化される。腫瘍及び正常組織の比(T/N)は、全ての蛍光画像についてImage Jソフトウェアを用いて定量化される。2つの分岐解糖性動物グループの間で、PETイメージングの解糖度への影響%ID/gまたはSUV、及び蛍光イメージングのT/Nが比較される。蛍光イメージング後、動物の主要な臓器は凍結断片化され、H&Eで着色される。床病理医は、悪性腫瘍の存在及び擬陽性シグナルの組織源の存在を確認する。
【0251】
3.非小細胞肺腫瘍モデルにおけるI−UPSイメージング特異性の調査
頭頸部がんモデルに加えて、分岐解糖速度を有する選択された肺がんモデルにおいてI−UPS及びFDG−PETのイメージング特異性もまた調査する。肺がんSPOREの一部として、細胞培地における80を超える非小細胞肺がん(NSCLC)のパネルについてグルコース消費速度及びラクテート分泌速度(
図81)を予め定量した。解糖速度(ラクテート
out/グルコース
in)対細胞株のプロットは、NSCLC細胞に対して細胞自律的な構造的分岐解糖表現型を描いている。このデータに基づき、高い及び低い解糖速度有する2グループの肺がん細胞を選択する。具体的には、H2170、HCC515及びH2347は、高い解糖パネル(ラクテート
out/グルコース
inが約2.0)として選択され、そしてH228、H1755及びHCC78は低い解糖パネル(ラクテート
out/グルコース
inが<0.5)として選択される。これらの細胞株は、UTSW/MDACC肺SPOREから入手でき、SCIDマウスにおいて皮下腫瘍を作りだすことが示された。典型的な手順において、2×10
6の肺がん細胞はまずマウスの左脇の皮下に注射され、SCIDマウス内に細胞異種移植片を形成する。腫瘍が約200mm
3に増殖した時、マウスはまずPETで画像化され、その後、前述の手順を用いてI−UPSナノプローブの注射後蛍光イメージングがなされる。I−UPSイメージングの成果は、FDG−PETのものと比較される。特に、I−UPSイメージングはFDG−PETの認識された擬陽性組織(例えば、褐色脂肪、組織学的胸筋)について何も示さないか否かが、評価され、そしてまたI−UPSイメージングは、FDG−PETでは潜在的に検出されない構造的に低い解糖速度を有する肺腫瘍を明らかにすることができる。
【0252】
実施例12:がん細胞における顕微鏡的腫瘍境界と最適UPSナノプローブ活性化との比較
1.UPS活性化プロファイルの定量化及び顕微鏡的腫瘍境界との関連
選択された腫瘍モデルに対して、常時オン/オフ−オン・デュアルレポータを有するナノプローブが静脈内注射される。注射後15分で始めて、1、4及び24時間後に、腫瘍と周囲の組織を集め、凍結切片を試料から調製する。各腫瘍切片について、BODIPY画像が活性化ナノプローブのために記録され、Cy3.5画像が絶対プローブ分布のために記録される。凍結切片はH&Eで着色され、真の腫瘍境界が同定される(現在の医療の最高標準)。より大きい腫瘍のために、複数の画像を記録し、それらを繋ぎ合わせて総合的な比較を行う。
【0253】
定量的画像分析のために、(1)組織構造画像により同定された真の腫瘍境界点(ゼロ点)からの接線を引く(
図82)、(2)接線に垂直な別の線を引く、(3)ImageJプログラムを用いて垂直線に沿ってBODIPY及びCy3.5蛍光強度(例えば、ゼロ点から±500μm)を同定する、(4)各腫瘍スライスの複数の境界点から工程1〜3を繰り返し、複数の線形プロファイルの平均値を求める、そして(5)平均蛍光強度対BODIPYとCy3.5チャンネルの距離をプロットする。
図82は、デュアルレポータ・ナノプローブによる境界分析のスキームを示す。
【0254】
プローブが解糖性がん細胞によるpH活性化を介して腫瘍を描くことができるか否かを知るために、プローブはH&E画像及びBODIPY(pH活性化可能レポータ)マップを比較して決定される。対処すべきいくつかの特定の問題が挙げられる:(1)ラクテート分泌細胞の分布及び性質はどんなものであるか、並びにラクテート分泌とは、従って腫瘍のサイズ、タイプ及びステージの影響を受ける境界の正確さとは何であるか、(2)UPSナノプローブは、腫瘍の境界の内側及び/または向こう側にpH異質性を識別することができるか否か、及び正常組織に浸潤する残ったがん細胞を、EPR効果の欠如があることにより境界を越えて検出することができるか否か。CFPとCy3.5(常時オンレポータ)を比較することにより、細胞内側のプローブの分布が、時間にわたって腫瘍周囲の正常組織に対して決定される。BODIPYとCy3.5シグナルを比較することにより、プローブ活性化(I
BODIPY/I
Cy3.5)は、プローブ蓄積(I
Cy3.5)と相対的に決定される。いかなる理論に束縛されることを望むものではないが、用量蓄積対EPR効果またはpH活性化は境界描写を駆動させると考えられる。6.3〜7.1の異なるpH転移を有する一連のデュアルレポータプローブのこの一連の曲線により、pH転移の調整が腫瘍境界描写の感度及び特異性を変化させるか否かが確立され、調査される。最適I−UPSは自在に調べられ、または腫瘍のタイプ及び/またはサイズに依存している。結局、CFP標識化がん細胞は、境界を越えた正常組織に浸潤するがん細胞の検出のためのプローブの感度及び特異性をさらに試験するために使用される。
【0255】
2.抗腫瘍の有効性及び長期間生存の研究
同所性腫瘍異種移植片(頭頸部がんのHN5及びFaDu、乳がんの4T1及びMD−MBA−231)はI−UPS誘導切除の抗腫瘍有効性を評価するために使用される。各研究について、I−UPSナノプローブは手術の24時間前に静脈注射される。動物は4グループ(各グループについてn=10または15)に分割される:(1)手術なし;(2)腫瘍の大部分の除去による制御(見える腫瘍の部分的除去);(3)白色光手術による腫瘍完全除去(外科医の推測できる限りで)及び(4)SPY誘導腫瘍除去。これらの実験グループは、白色光下の通常手術と蛍光手術との間の差異の調査を可能にしている。試験的研究はI−UPS
6.9プローブを用いて行われている(
図74A&74B及び78A〜78E)。追加の腫瘍モデル(例えば、FaDu及びMDA−MB−231)における最適I−UPSプローブのための同様の実験が行われる。
【0256】
手術の後、Kaplan−Meier生存曲線が、各グループ間の抗腫瘍有効性を比較するために決定される。全ての切除された動物について、最初の部位での腫瘍発生が検討され、記録される。加えて、マウスの嚥下機能への手術の影響を推定する。いかなる理論に束縛されることを望むわけではないが、腫瘍切除中に除去された正常組織の量が多いほど、動物の得られる機能、それ故嚥下機能の低下が大きくなる。マウスについて、手術の前及び後に重量を測る。手術後、毎日重量を1週間記録し、その後1週間に2回記録する。体の損失重量%は、摂取及び嚥下機能の代用として使用される。重量は、動物の成長を説明するために初期重量に正規化される。
【0257】
実施例13:生物学的プロファイル及び薬物動態
1.薬物動態/生体内分布(PK/BD)の研究
3H−標識化PEG−b−PC7A(UPS
6.9)及びPEG−b−PDPA(UPS
6.3)を用いて以前の研究は、類似の流体力学(それぞれ25.3±1.5対24.9±0.8nm)、ゼータ電位(−0.7±1.1対−3.5±0.6mV)、及びPEG長(共に5kD)にもかかわらず得られるUPSナノプローブは顕著に異なるPK/PDのプロファイル(特徴)を有することを示している。α−相の半減期は、UPS
6.9及びUPS
6.3について、それぞれ1.0±0.2及び4.3±0.7時間(P<0.05)、そしてβ−相の半減期は、7.5±0.3及び19.6±2.1時間(P<0.01)であった。ナノ粒子注射の24時間後における生体内分布の研究は、肝臓と脾臓は両方のナノ粒子のクリアランス(除去)のための主要な臓器であることを示した。UPS
6.3に対してUPS
6.9のより速いクリアランスは、より高い転移pHに、且つUPS活性化及びクリアランスにおいて血液からより高い影響を受け易いことに起因する。
【0258】
この研究において、PK/BDの研究はまず、以前確立した
3H標識化コポリマー(各グループについてn=5)を用いて本明細書に記載の最適化I−UPS組成物について行われる。血液は、注射後、2分、0.5、1、3、6及び24時間後に集められる。実験の最後に、動物は犠牲にされ、腫瘍組織及び腫瘍臓器(心臓、肝臓、脾臓、腎臓)が除去される。解剖された臓器は重量が測られ、均質化され、シンチレーション混合物で処理される。血液と組織サンプルの両方は液体シンチレーションカウンター(Beckman LS 6000 IC)により定量化される。異なる臓器/組織におけるUPS分布は、組織のグラム当たりの注入された用量のパーセンテージとして計算される。血液と組織サンプルに加えて、尿及び糞サンプルも、腎臓分泌及びGI管によりI−UPSのクリアランスを分析するために集められる。これらの実験は、キャンパス内の指定動物の施設の代謝かごで行われる。
【0259】
2.先天性免疫反応の評価
I−UPSが強い先天性免疫を引き起こすか否かを判断するために、I−UPSナノプローブを、免疫反応性C57BL/6マウス(各グループについてn=5)に1×、10×及び50×のイメージング用量で静脈注射する。2、6及び24時間にて、尾静脈からの血液サンプル(100μL)を集める。血清を分離し、サイトカインプロファイルを分析する。現在のLuminex(商標)多重分析は、25μLの血清から23のサイトカイン(例えば、IFN−α及びβ、IL−2、IL−4、IL−12、IL−17、等)を検出することができる。PBSが陰性対照として使用される。サイトカインに顕著の増加が観察された場合、免疫反応に対しより詳しい分析が(例えば、好中球または他の白血球の生成、相補体活性化、脾臓及びリンパ節における炎症活性の調査)、2〜4週間等のより長い時間枠で行われる。
【0260】
実施例14:多様な異なるポリマーを含有するUPSナノ粒子
1.多様な異なるポリマーを有するミセルの使用
初めに、一連の両親媒性のブロックコポリマーPEG−b−PR(但し、PEGはポリ(エチレングリコール)であり、そしてPRはイオン化可能セグメントである)(スキーム1及び表12)を合成した。
スキーム1:イオン化可能セグメントの合成
【0261】
【化60】
[この文献は図面を表示できません]
【0262】
【表12】
[この文献は図面を表示できません]
【0263】
PEG−b−PRコポリマーは異なるフルオロフォアでコードされた。3つの例のPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5蛍光ポリマーを選択し、色素結合数及び効率並びに量子収率について特性評価した(
図84B及び表13)。PEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5ナノプローブは、クラスリン被覆小胞(CCV)から初期エンドソームへ(pH約6.0)、その後の後期エンドソーム/リソソームへ(pH約5.0〜5.5)のエンドサイトーシスの経路の間におけるpH変化をカバーする、6.9、6.2及び5.3でpH転移を有していた(Huotari & Helenius,2011)。これらのナノ粒子の粒径は狭い分布を持つ23〜25nmであった。蛍光活性化比(R
F)は、鋭いpH応答を有するPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5ナノプローブについて、30、91及び107倍であった(ΔpH
10−90%=0.18〜0.22、表14及び
図85〜88)。超音波処理法を用いて、3つの成分のPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5からなるハイブリッドUPSナノプローブシステムを、
図84A〜84Cで示されるように操作した。いかなる理論に束縛されることを望まないが、3つの蛍光ポリマーは、より高いpHで自己組織化して、均一なハイブリッドUPSナノプローブを形成する。エンドサイトーシスの後、ハイブリッドUPSナノプローブは、各ポリマーの個々のpH
t(例えば、6.9、6.2、5.3)で連続的に解離して蛍光を発し、生存細胞において単一のオルガネラ解像度での微妙なpH変化に関連するエンドソーム成熟プロセスを辿る(
図84C)。
【0264】
【表13】
[この文献は図面を表示できません]
【0265】
【表14】
[この文献は図面を表示できません]
【0266】
均一ハイブリッドナノ粒子の形成を実証するため、一連のホモFRET及びヘテロFRET実験は設計され、実施された。ホモFRET実験は蛍光PEG−b−PRポリマー及び異なるpH転移を有する他の標識無しPEG−b−PRポリマーに関連する。この実施例では、PEPA−Cy5が使用され、PEPA、PDPA、またはPDBAポリマーと、指標化ポリマー対指標無しポリマーのモル比が1:19で混合される。結果として、PEPA−Cy5とPEPA、PDPAまたはPDBAとの分子混合ミセルの形成が、ホモFRET効果を除去してCy5蛍光シグナルの回復により示される同じミセルにおいて、なされたことが示された(
図114A&114B)(Zhouら,2012)。対照的に、PEPA−Cy5及び別の指標無しミセルのミセル混合物はCy5シグナル回復を示さなかった。同じ結果がまたPDBA−Cy5及び別の指標無しPEG−b−PRポリマーの分子混合ミセルにおいても観察された(
図89A&89B)。全てのこれらの結果は、PEPA、PDPA、及びPDBAポリマーは均一なハイブリッドナノプローブを形成することができることを示した。
【0267】
ハイブリッドナノプローブの形成をさらに確認するため、蛍光移動効果は、異なるヘテロ−FRET色素:PEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5でコードされたコポリマーで検討された。ホモFRETを最小化するために、各コポリマーでは疎水性PRセグメントが1つの色素でコードされた。2つまたは3つのコポリマーがTHFに溶解され、その後水中に滴下され、本明細書に記載の分子混合ミセルを製造した。PEPA−BDYとPDPA−TMRの組み合わせ(モル比=1:1)において、分子混合ミセルのBDY493発光波長(510nm)での蛍光強度は、PEPA−BDY493のみのミセル溶液に比べて4倍を超えて減少した。さらに、TMR発光(580nm)での蛍光強度は、PDPA−TMRミセル溶液に対して、混合ミセル溶液の4倍を超える増加を示した(
図90A)。他の3つのヘテロ−FRETポリマーのセット:(i)PDPA−TMR及びPDBA−Cy5、(ii)PEPA−BDY493及びPDBA−Cy5;(iii)PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5も広く調査した(
図90B〜90D)。PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5蛍光ポリマーのセットでは、BDY493からTMRへの連続FRET効果が観察され、最後はCy5まで観察される(
図90D)。ハイブリッドナノプローブのBDY493発光における蛍光強度は、PEPA−BDY493のみのミセル溶液に比べて4倍を超えて減少し、一方、Cy5シグナルはPDBA−Cy5に対してハイブリッドナノプロの25倍を超えて増加した。これらの結果は、3つのPEG−b−PRコポリマーは、PEG−b−PRコポリマーが自己組織化して均一ハイブリッドUPSナノプローブを形成することができることを明確に実証した。
【0268】
ハイブリッドUPSナノプローブの形成の実証後、ハイブリッドナノプローブシステムは、各PR鎖が約2.2個の色素で結合された、PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5蛍光ポリマーを用いて製造された(
図91)。異なる励起波長(485、545、640nm)及び異なるpH(7.4、6.7、5.8、及び5.0)における蛍光発光スペクトルが集められ、プロットされた(
図92A〜92D及び
図93A〜93F及び
図94)。結果として、全ての3つの蛍光ポリマー成分は中性pHでは「静か」な状態を保つことが示された。pHが6.7に低下した時、PEPA−BDY成分がまず放出され、活性化され、青信号を発生し、一方他の2成分は「オフ」のまま留まった。pHが5.8に低下した時、PDPA−TMRシグナルは活性化されて赤信号を発生し、PDBA−Cy5成分はこの段階では完全に「静か」な状態であった。最後に、溶液pHが5.0に低下した時、PDBA−Cy5成分が活性化された。この段階で、3つの蛍光ポリマーは完全に活性化した。動的光散乱分析(DLS)により測定された、ハイブリッドUPSナノプローブの粒径は7.4と5.8との間のpHで約30〜40nmであり、ユニマーとしてはpH5.0で8.7nmに低下した同様の観察がTEM分析によってなされた(
図95A&95B)。ハイブリッドUPSナノプローブのPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5成分のpH
t値は、6.9、6.2、及び5.3であり、これらの対応する単位成分ナノプローブに合致した。全体として、PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5の蛍光活性化比は、鋭いpH応答(ΔpH
10−90%=0.20−0.25、補足表S4)で74、123、及び30であった。DLS分析を用いて、ハイブリッドナノプローブ対pH値の計数率はプロットされ、
図92Eに示されるように、多段活性化パターンが観察された。各段階で、1つの蛍光ポリマーが放出され、蛍光を発し、最後に全てのポリマーは解離するが、これは0に到達した計数率で示される。ハイブリッドUPSナノプローブの異なるpHでの多段階活性化も、
図92Fに示されるように、MaestroCRIイメージングシステムにより画像化され、確認された。
【0269】
ハイブリッドUPSナノプローブの3成分の同期細胞摂取を検査するため、UPSナノプローブを本明細書に記載のチオール−マレイミド結合を介して5%Erbitux(humanized EGFR antibody)(Adams & Weiner,2005)で官能化した。Erbコード化ハイブリッドナノプローブは、6.9、6.2、及び5.3のpHで、0.20−0.25のΔpH
10−90%を有する3つの特有のpH転移を持っていた。ハイブリッドナノプローブの蛍光オン/オフ活性化比は、BDY493、TMR、及びCy5チャンネルの、それぞれ200、191、及び35倍であった。Erbコード化UPSナノプローブの特異性を調査するため、A549細胞は、Erbコード化PDPA−TMRナノプローブで培養された。Erbコード化PDPA−TMRナノプローブの培養の15分後、斑点状の蛍光活性化が細胞内で観察された。1時間で、Erbコード化PDPA−TMRナノプローブにおいて、PDPA−TMRナノプローブ制御基に対して250倍を超える蛍光増加が観察され、EGFRバイオマーカーに対して高い特異性を示した(
図96)。Erb結合UPSナノプローブの特異性の確認後、Erbコード化ハイブリッドUPSナノプローブの同期摂取が検査された(
図97)。A549細胞はErbコード化ハイブリッドUPSナノプローブで3時間培養され、共焦点顕微鏡で画像化された。対照グループにおいては、A549細胞は、PEPA−BDY493、Erb−コード化PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5の3つのナノプローブの混合物で培養された。単一のエンドサイトーシス・オルガネラにおけるErbコード化ハイブリッドナノプローブの同期摂取が観察され、一方対照グループにおいてはErb−コード化PDPA−TMRナノプローブのみが取り込まれ細胞内で活性化された。重要なことは、斑点状のブルー及びレッドの蛍光ドットはグリーン蛍光ドットの一部で共局在化され、ハイブリッドナノプローブはエンドサイトーシス・オルガネラ成熟の評価に利用することができることを示唆した。
【0270】
リアルタイムでエンドソーム成熟を追跡するために、A549細胞をErb−コード化ハイブリッドUPSナノプローブで4℃にて30分間培養して、特異性細胞結合を起こさせ、その後培地を除去し、2回洗浄した。ハイブリッドナノプローブの37℃での細胞内摂取及び活性化を共焦点顕微鏡で画像化した。期待通り、PEPA−BDY493成分がまず放出され、活性化されて、10分でグリーン蛍光ドットを形成し、その強度を上昇させ、30分の培養後安定状態の到達した(
図98)。その後、レッドPDPA−TMRシグナルは20〜30分で現れ始めた。全てのレッドドットはこの段階でグリーンドットの一部と共局在化された。最後に、PDBA−Cy5成分が、90〜180分で疑似カラーのブルードットで活性化し、全てのブルードットはこの期間にレッドドットの一部と共局在化された。エンドサイトーシス・オルガネラは3つの集団に分割することができる:(i)グリーンドット(6.2<pH<6.9);(ii)イェロードット(5.3<pH<6.2);(iii)ホワイトドット(pH<5.3)、それぞれクラスリン被覆小胞のpH約6.8、初期エンドソームのpH約6.0、及び後期エンドソーム/リソソームのpH約5.0〜5.5を示した。同様に、連続して起こる活性化は、HN5頭頸部がん細胞株の単一酸性オルガネラの内側に観察された(
図99)。従って、ハイブリッドUPSナノプローブは、単一オルガネラ分解で特異性エンドサイトーシス経路に沿って時空pH変化を報告することに成功した。
【0271】
ハイブリッドUPSナノプローブの独特の能力を実証したので、オルガネラ成熟中に酸性化速度の劇的増加に起因する独特の発がん性の痕跡を調査した。異なる遺伝子突然変異の背景を有する7つの肺がん株を選択し、評価した(表15)。細胞を、100μg/mLのErbコード化ハイブリッドUPSナノプローブで4℃にて30分間培養し、3回洗浄し、その後37℃にてリアルタイムで画像化し、オルガネラ酸性化能力を示すナノプローブ活性化速度を辿った(
図100〜102)。結果として、HCC44、H2009、H460、及びA549を含むKRAS突然変異細胞の活性化速度は、KRAS野生型細胞(H2882、H1991、及びH1819)より顕著に早いことを示した。異なる細胞株における摂取の差異を正規化するために、PDPA−TMR(早期エンドソーム)及びPDBA−Cy5(後期エンドソーム/リソソーム)のシグナルの蛍光強度を、PEPA−BDY493シグナルにより分割した、それは早ければ15分で活性化した。時間関数としてのI
6.2/I
6.9及びI
5.3/I
6.9 をプロットした(
図103A&103B及び
図104A〜104D)。30分で、TMRチャンネルの顕著な活性化の差異(I
6.2/I
6.9)は観察されなかった。75分で、KRAS突然変細胞のI
5.3/I
6.9比は70%のブルー陽性オルガネラに到達し、一方KRAS野生型細胞はわずか40%未満のブルー陽性オルガネラしか持てなかった。これらの結果は、KRAS突然変異はpH調節と関係するリソソームの異化の原因となることを示唆した。
【0272】
【表15】
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【0273】
KRAS突然変異は、恐らく、リソソームの酸性化速度の上方調節の原因となると仮定し、ハイブリッドUPSナノプローブが遺伝子突然変異に関係するオルガネラpHを直接捉えるために利用された。モデルシステムとして、同じ肺がん患者から得た腫瘍由来(HCC4017)及び正常細気管支上皮由来(HBEC30KT)の細胞株を、TP53(HBEC30KT−shTP53)の段階的な安定的抑制、KRAS
G12V(HBEC30KT−shTP53/KRAS
G12V)の安定的発現、及びLKB1(HBEC30KT−shTP53/KRAS
G12V/shLKB1)の安定的抑制を有する同系進行の一連のHBEC30KTと共に、選択し、画像化した(Ramirezら,2004)。
図105A及び105Bは、HBEC30KT上皮細胞に対する悪性のHCC4017細胞においてエンドサイトーシス・オルガネラのより早い成熟速度における劇的な差異を示した(
図106及び107)。元の腫瘍及びHCC4017細胞株の遺伝子型決定が、TP53、LKB1及びKRASの成熟を明らかにした。データは、KRAS/LKB1成熟細胞が、増殖及び生存ためのリソソームの異化に依存しているとの以前の発見に合致している(Kimら,2013)。さらに、どの発がん痕跡がオルガネラ成熟における差異の原因であるかを正確に示すために、一連の同系進行のHBEC30KTにおけるハイブリッドナノプローブの蛍光活性化パターンを画像化した(
図108〜110)。時間の関数としてのI
6.2/I
6.9及びI
5.3/I
6.9をプロットした(
図111A〜111D)。結果は、KRAS成熟が、エンドサイトーシス・オルガネラの酸性化及び成熟の劇的増加が原因であることを明らかに示唆した。
【0274】
2.方法及び材料
1.ハイブリッドナノプローブの合成及び特性
色素結合PEG−b−PR及びマレイミド−末端PEG−b−PDPA(Mal−PEG−PDPA)ブロックコポリマーを原子移動ラジカル重合法により合成した。ハイブリッドナノプローブは、以前の刊行物の手順に従って調製された(Wangら,2014)。典型的な手順では、PEG−b−PEPA−BDY493、PEG−b−PDPA−TMR、及びPEG−b−PDBA−Cy5ポリマーをそれぞれ5mg、1mLのTHFに溶解した。その後、混合物を10mLのMilli−Q水に超音波処理下に加えた。混合物を4回ろ過し、マイクロ−超遠心分離システムを用いてTHFを除去した。その後、蒸留水を加えて最終ポリマー濃度を5mg/mLに調節した。Erbitux−結合ハイブリッドナノプローブを調製するため、0.6mgのMal−PEG−PDPA、それぞれが4mgのPEG−b−PEPA−BDY493、PEG−b−PDPA−TMR、及びPEG−b−PDBA−Cy5ポリマーを1mLのTHFに溶解し、そして上記と同様の手順を用いて5%マレイミド変性ハイブリッドナノプローブを調製した。一方、Erbitux Fab’−SH断片(3mg,M
w=55kDa)を刊行物の手順に従い調製した。その後、マレイミド変性ハイブリッドナノプローブとErbitux Fab’−SH溶液を混合し、1mMのEDTAを含む100mMのリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS,pH7.4)において一晩室温で反応させた。その後、混合物を6回ろ過し、遊離のFab’−SHをマイクロ−超遠心分離システム(MWCO=100K,Millipore)を用いて除去した。その後、100mMのPBS(pH7.4)を添加して最終ポリマー濃度を5mg/mLに調節した。透過型電子顕微鏡検査を、1%リンタングステン酸逆染色法を用い、JEOL 1200EX電子顕微鏡(JEOL 1200EX)で可視化して行った。ナノプローブの粒径及び分布は動的光散乱(DLS)分析により測定した。pH値の関数としてのナノ粒子の平均計数速度もまたDLS分析により測定した。
【0275】
2.UPSナノプローブの蛍光活性化
異なるpH緩衝溶液においてハイブリッドUPSナノプローブの蛍光発光スペクトルが、日立蛍光光度計(F−7500モデル)により得られた。最終のポリマー濃度が、異なるpH値を有する100mMのPBSを用いて100μg/mLに調節された。ハイブリッドナノプローブは、485、545、及び640nmでそれぞれ励起された。対応する発光スペクトルは、それぞれ490〜750、560〜750、及び650〜750nmで集められた。510、580、及び710nmでの発光ピークが、BDY493、TMR、及びCy5チャンネルの蛍光活性化比を定量化するために使用された。異なるpH値でのハイブリッドナノプローブ溶液(100μg/mL)の蛍光画像が、ブルー(515nm LP)、グリーン(580nm LP)、及びオレンジ(645nm LP)のフィルタを用いてMaestroイメージングシステム(CRI)により記録された。その後、画像は個々の色素の標準蛍光スペクトルを用いてスペクトル的な混在はされずに、マルチカラー画像を得た。
【0276】
3.細胞培養
肺がん細胞株A549及び頭頸部がん細胞株HN5は、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)、100IU/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen)を含有するDMEM(Invitrogen)で培養された。HBEC30KT進行シリーズ及びHCC4017細胞は、2%のウシ胎仔血清及び抗生物質で懸濁されたACL4培地で5%CO
2雰囲気下37℃にて培養された。
【0277】
4.細胞イメージング
A549及びHN5細胞が、2mLの完全なDMEM培地内のガラスボトムディッシュ(MatTek、MA)に固定された。Erbitux−結合ナノプローブの特性を試験するために、完全な培地内のA549細胞を4℃で10分間保持した後、100μg/mLのErb−PDPA−TMRミセルを添加し、表皮増殖因子受容体(EGFR)結合のために4℃で30分間保持し、その後培地を除去して氷冷PBSで3回洗浄した。その後、細胞を完全培地で37℃にて2時間培養した。共焦点画像をNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で60×対物レンズで記録した。
【0278】
ハイブリッドナノプローブにおける3つの成分の同期摂取を実証するため、完全培地内のA549細胞を4℃で10分間保持し、その後100μg/mLのErb−結合ハイブリッドナノプローブを添加し、EGFR結合のために4℃で30分間保持した。培地は除去され、3回洗浄された。その後、細胞を完全培地で37℃にて3時間培養した。TMR及びCy5をそれぞれ488、543、及び633nmで活性化させた。FITC(515±15nm)、TRITC(590±25nm)及びCy5(650nm LP)のフィルタを、それぞれBDY493、TMR、及びCy5のイメージングのために使用した。対照グループとして、PEPA−BDY493、Erb−PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5のミセルを作製し、混合し、A549細胞で培養した。同様の手順が細胞イメージングのために利用された。
【0279】
エンドソーム成熟プロセスを辿るために、細胞サンプルを前述と同様の手順を用いて調製した。共焦点画像はNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で100×対物レンズで、37℃で培養後0、15、30、60分、2.5、及び5時間において記録された。BDY493、TMR、及びCy5の3つのチャンネルは活性化され、前述の記載と同じ設定で集められた。画像はImage−Jソフトウェアを用いて分析された。5つの独立の測定は、平均±標準偏差で表した。
【0280】
5.統計的分析
データは、平均±s.d.で表した。グループ間の差異は一対の両側スチューデントt−検定(paired, two−sided Student t−test)を用いて評価した。
*P<0.05は有意と考えられ、
**P<0.01はかなり有意と考えられる。
【0281】
6.材料
テトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル(TMR−NHS)及びBODIPY(登録商標)493/503スクシンイミジルエステル(BDY493―NHS)は、Invitrogen Inc.より購入した。Cy5NHSエステル(Cy5―NHS)はLumiprobe Companyより購入した。2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)、及び2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)を含むモノマーは最近報告された(Zhouら,2011;Maら,2014)。2−アミノエチルメタクリレート(AMA)はPolyscience Companyより購入した。AMAはイソプロパノールと酢酸エチル(3:7)で2回再結晶した。PEGマクロ開始剤、MeO−PEG
114−Br、はα−ブロモイソブチルブロミド及びMeO−PEG
114−OHから刊行物(Zhouら,2011)の手順に従い調製した。他の溶剤及び試薬はSigma−AldrichまたはFisher Scientific Inc.より得て使用した。
【0282】
7.PEG−b−(PR−r−Dye)ブロックコポリマーの合成
PEG−b−(PR−r−AMA)コポリマー(スキーム1)をまず原子移動ラジカル重合(ATRP)法により合成した。第1級アミノ基は、AMAモノマーの開始剤に対する供給比(比=3)を制御することにより各ポリマー鎖に導入された。色素非含有コポリマーはポリマーの特性化に使用された(表12)。PEG−b−P(DPA−r−AMA)を、手順を説明するための例として用いた。まず、DPA−MA(1.7g,8mmol)、AMA(50mg,3mmol)、PMDETA(21μL,0.1mmol)、及びMeO−PEG
114−Br(0.5g,0.1mmol)を重合管に充填した。その後、2−プロパノール(2mL)及びDMF(2mL)の混合物を加えてモノマーと開始剤を溶解した。酸素を除去するために3サイクルの凍結脱気をした後、CuBr(14.4mg,0.1mmol)を窒素雰囲気下に反応管に添加し、管を真空で密封した。40℃で12時間、重合を行った。重合後、反応混合物を10mLのTHFで希釈し、Al
2O
3カラムを通過させて触媒を除去した。THF溶剤はロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥して白色粉末を得た。得られたPEG−b−(PR−r−AMA)コポリマーを、500MHz
1H−NMR、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(Viscotech GPCmax,PLgel 5μm MIXED−Dカラム,Polymer Labs製,溶離液としてのTHFを1mL/分で使用)により特性評価した。表12は、各ポリマーの収率、分子量(M
n及びM
w)及び多分散指数(PDI)を示す。
【0283】
色素結合コポリマーの合成は以下に記載の代表的手順に従った。TMR結合のため、PEG−b−P(DPA−r−AMA)(50mg)をまず2mLのDMFに溶解した。その後、TMR―NHSエステル(第1級アミノ基のモル量に対して1.5当量)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。コポリマーを分離用ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10μm 10E3Å 300×25mmカラム,Varian製,溶離液としてのTHFを5mL/minで使用)で生成し、遊離の色素分子を除去した。製造したPEG−b−P(DPA−TMR)コポリマーを凍結乾燥し、さらなる調査のため−20℃で貯蔵した。色素結合効率及び量子収率を文献記載の手順に従い測定した(Maら,2014)。
【0284】
8.ミセルナノ粒子の作製
ミセルを以前の刊行物記載の手順に従い調製した。典型的手順において、10mgのPDPA−TMRを0.5mLのTHFに溶解した。その後、混合物を4mLのMilli−Q水に超音波処理下にゆっくり加えた。混合物はマイクロ限界ろ過システムを用いて4回ろ過し、THFを除去した。その後、蒸留水を加えてポリマー濃度を5mg/mLに調節し、貯蔵溶液とした。マルチカラーハイブリッドナノ粒子のために、5mgのPEPA−BDY、5mgのPDPA−TMR、及び5mgのPDBA−Cy5を1mLのTHFに溶解した。その後、同様の手順を、ハイブリッドナノ粒子を調製するために使用した。ナノ粒子は、ミセルサイズ及びモルホロジーについて透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL 1200 EX model)により、流体力学直径(D
h)について動的光散乱(DLS,Malvern Zetasizer Nano−ZS,λ=632nm)により特性評価された。
【0285】
Erbitux結合ハイブリッドナノプローブのために、4mgのPEPA−BDY、4mgのPDPA−TMR、4mgのPDBA−CY5、及び0.6mgのMAL−PEG−PDPAを1mLのTHFに溶解した。その後、同様の手順をMal−ハイブリッドナノプローブを調製するために使用した。ミセル形成の後、1mMのEDTAを含むPBS緩衝液中の過剰量のErbitux Fab‘−SH断片(55kD)を加えた。その結合物をN
2雰囲気下に一晩置き、その後6回限外ろ過し、遊離のFab’−SHを除去した。得られたErb結合ハイブリッドナノプローブを、細胞イメージング研究のために5mg/mLのポリマー濃度に調節した。Erb結合PDPA−TMRミセルも同様の手順を用いて作製した。
【0286】
9.蛍光特性評価
異なるpH緩衝溶液における蛍光発光スペクトルを日立蛍光光度計(F−7500モデル)により得た。各ポリマーミセルのために、サンプル(5mg/mL)をMilli−Q水溶液として調製した。その後、溶液を、異なるpH値を有する100mMのリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)で希釈した。最後のポリマー濃度は0.1mg/mLに制御された。
【0287】
異なるポリマーが均一なハイブリッドミセルを形成することができるか否かを実証するため、本発明者等は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)実験を用いてハイブリッドミセルの蛍光特性を調査した。各ナノプローブのために、サンプル(5mg/mL)をMilli−Q水溶液として調製した。溶液を、100mMのPBS緩衝液(pH=7.4)中の100μg/mLに希釈した。その後、ナノプローブを、適当な励起光(λ
ex=485、545、及び640nm)で励起させ、そして発光スペクトルを集めた。
【0288】
異なるpHでのハイブリッドナノプローブ溶液(0.1mg/mL)の蛍光画像を、適当なバンドパス励起フィルタ及び適当なロングパス発光フィルタを用いてMaestroインビボイメージングシステム(CRI Inc.Woburn,MA)で記録した。
【0289】
10.細胞培養
ヒト肺小細胞肺がんA549細胞及び頭頸部がんHN5細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、100IU/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンが追加されたDMEM培地(Invitrogen,CA)で、5%CO
2雰囲気下37℃で培養した。
【0290】
同じ肺がん患者から、腫瘍−由来(HCC4017)及び正常細気管支上皮−由来(HBEC30)の細胞株を得た。正常細気管支上皮細胞を、CDK4及びhTERTの安定な発現により不死化し、HBEC30KTを製造した。p53(HBEC30KT−shTP53)の段階的安定な発現、KRAS
G12V(HBEC30KT−shTP53/KRAS
G12V)の安定な発現、及びLKB1(HBEC30KT−shTP53/KRAS
G12V/shLKB1)の安定な抑制を有するHBEC30KT誘導体の一連の細胞株も得た。
【0291】
HBEC30KT進行シリーズ及びHCC4017細胞は、2%ウシ胎仔血清(FBS)、100IU/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンが追加されたACL4培地(Invitrogen,CA)で、5%CO
2雰囲気下37℃で培養した。
【0292】
11.生細胞におけるErbitux−結合ハイブリッドナノプローブの多段活性化
A549及びHN5細胞を、2mLの完全DMEM培地内のガラスボトムディッシュ(MatTek,MA)に固定した。Erbitux−結合ハイブリッドナノプローブの特異性を試験するために、A549細胞を、Erb−PDPA−TMRを含む完全培地で37℃にて1時間培養し、その後培地を除去して3回洗浄した。共焦点画像を、60×対物レンズを備えたNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で記録した。
【0293】
ハイブリッドナノプローブにおける3つの成分の同期摂取を実証するために、完全培地中のA549細胞を4℃で10分間保持し、その後100μg/mLのErb−結合ハイブリッドナノプローブを加えて、表皮増殖因子受容体(EGFR)結合のために4℃で30分間保持した。培地を除去して、氷冷PBSで3回洗浄した。その後細胞を完全培地で37℃にて3時間培養した。BDY493、TMR、及びCy5を、それぞれ488、543、及び633nmで励起させた。FITC(515±15nm)、TRITC(590±25nm)及びCy5(650nm LP)フィルタを、それぞれBDY493、TMR、及びCy5イメージングに使用した。対照グループとして、PEPA−BDY493、Erb−PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5ミセルを作製し、混合しA549細胞で培養した。同様の手順をパルス・チェイス研究のために利用した。
【0294】
12.Erbitux−結合ハイブリッドナノプローブを用いたエンドサイトーシス中におけるエンドソーム成熟の追跡
パルス・チェイス実験を、エンドソーム成熟プロセスを辿るために利用した。完全培地内の細胞を4℃で10分間保持し、その後100μg/mLのErb−結合ハイブリッドナノプローブを加えて、EGFR結合のために4℃で30分間保持した。培地を除去し、氷冷PBSで3回洗浄した。その後、細胞を完全培地で37℃にて培養した。共焦点画像を、ミセル添加後0、15、30、60分、2.5及び5時間において、100×対物レンズを備えたNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で記録した。BDY493、TMR、及びCy5を、それぞれ488、543、及び633nmで励起した。FITC(515±15nm)、TRITC(590±25nm)及びCy5(650nm LP)フィルタを、それぞれBDY493、TMR、及びCy5イメージングに使用した。画像はImage−Jソフトウェアで分析した。5つの独立した測定法は平均±標準偏差として表した。
【0295】
実施例15:トリブロックコポリマーPEG−b−P(R
1−b−R
2)の合成
PEG−b−P(R
1−b−R
2)トリブロックを、以前報告された類似の手順の後ATRP法により合成した。PEO−b−P(D5A−b−DEA)を、手順を説明する例として使用する。まず、D5A−MA(0.54g,2mmol)、PMDETA(12μL,0.05mmol)及びMeO−PEO
114−Br(0.25g,0.05mmol)を重合管に充填した。その後、2−プロパノール(1mL)及びDMF(1mL)を加えてモノマー及び開始剤を溶解した。凍結脱気を3サイクルして酸素を除去した後、CuBr(7mg,0.05mmol)を窒素雰囲気下に重合管に添加し、管を真空で密封した。40℃にて8時間の重合を行った後、酸素を除去したDEA−MA(0.368,2mmol)を反応溶液に気密注射器により注入し、反応混合物を40℃でさらに8時間撹拌した。重合化後、反応混合物は10mLのTHFで希釈し、中性Al
2O
3カラムを通して触媒を除去した。THF溶剤はロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥して白色粉末を得た。PEO−b−P(DEA−b−D5A)はまたDEA及びD5Aの供給順序を反転することにより合成した。pH滴定実験は、PEO−b−P(D5A
40−b−DEA
40)またはPEO−b−P(DEA
40−b−D5A
40)の2つの際立ったイオン化転移を示した。対照的に、対応するランダムPRブロックコポリマーについては、1つのpH転移のみが観察された(
図113A&113B)。
【0296】
本明細書において開示され、特許請求の範囲に記載された組成物及び方法は全て、本開示を考慮することにより過度の実験なしに作製、実施することができる。本発明の組成物及び方法を特定の実施形態の観点から説明したが、本発明の概念、趣旨及び範囲を逸脱することなく、組成物及び方法に対して、並びに本明細書に記載の方法の工程または工程の順序に対して、変更しても良いことは当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的の両方に関連するある薬剤を本明細書に記載の薬剤に変更してももよく、それにより同一または同様の結果が達成されることが明らかであろう。当業者に明らかなこのような同様の置換及び変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲及び概念の内にあると考えられる。
【0297】
参考文献
下記の参考文献は、本明細書の記載を補う手順の例または他の詳細をそれらが提供することができる程度で、参照により本明細書に具体的に取り込まれる。
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