特許第6598161号(P6598161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598161pH応答性ポリマーのライブラリー及びそのナノプローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598161
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】pH応答性ポリマーのライブラリー及びそのナノプローブ
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20191021BHJP
   G01N 21/80 20060101ALI20191021BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20191021BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20191021BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 51/06 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 51/12 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 50/00 20060101ALI20191021BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20191021BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20191021BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20191021BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20191021BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C08F293/00
   G01N21/80
   G01N21/78 C
   G01N21/64 C
   G01N21/64 F
   A61B10/00 E
   A61K51/06 200
   A61K51/12 200
   A61K50/00 200
   C12Q1/02
   C08F220/34
   C08F8/30
   C07C69/54 ZCSP
   C09K11/06 680
【請求項の数】21
【全頁数】137
(21)【出願番号】特願2016-571093(P2016-571093)
(86)(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公表番号】特表2017-526753(P2017-526753A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】US2015034575
(87)【国際公開番号】WO2015188157
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2018年6月1日
(31)【優先権主張番号】62/009,019
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ジンミン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ガン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ティアン
(72)【発明者】
【氏名】マ,シンペン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イグアン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュメール,バラン,ディー.
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0330278(US,A1)
【文献】 特表2013−543489(JP,A)
【文献】 特表2009−539793(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/083845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08F 6/00−246/00
A61B 10/00
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 49/00−49/22
C07C 69/54
C09K 11/06
C12Q 1/02
G01N 21/00−21/958
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
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(V)
のポリマーであって、
式(V)において、
は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)、または
【化2】
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或いは金属キレート基であり;
nは1〜500の整数であり;
及びR2’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;
は、式:
【化3】
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(II)
の基であり、
式(II)において、
は1〜10であり;
、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;
はペンチル、n−プロピル、またはエチルであり;
はペンチルまたはn−プロピルであり;
xは1〜100の整数であり;
は、式:
【化4】
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(IV)
の基であり、
式(IV)において、
は1〜10であり、
、Y、及びYは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;
は、水素、アルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、または蛍光消光剤であり;そして
yは1〜6の整数であり;そして
は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)である、ポリマー。
【請求項2】
が蛍光色素である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記蛍光色素が、インドシアニングリーンである請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
はアルキル(C≦12)である請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
及びR2’は、それぞれアルキル(C≦12)である請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】

【化5】
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である請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
及びXは、それぞれペンチルである請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
及びXは、それぞれn−プロピルである請求項6に記載のポリマー。
【請求項9】
はエチルであり、Xはn−プロピルである請求項6に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーが、以下である請求項1に記載のポリマー。
【化6】
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【請求項11】
前記ポリマーが、以下である請求項1に記載のポリマー。
【化7】
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【請求項12】
式:
【化8】
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のポリマーであって、
上式において、
xが30〜150の整数であり、yが1または2の整数であり;x及びyが当該ポリマー全域にランダムに分布し;そしてICGが蛍光色素インドシアニングリーンである、ポリマー。
【請求項13】
式:
【化9】
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のポリマーであって、
上式において、
xが40〜120の整数であり、yが1、2または3の整数であり;Yが蛍光色素インドシアニングリーンである、ポリマー。
【請求項14】
前記ポリマーが、PEO114−P(C7A40−r−ICG)、PEO114−P(C7A60−r−ICG)、PEO114−P(C7A80−r−ICG)、PEO114−P(C7A100−r−ICG)、またはPEO114−P(C7A120−r−ICG)である請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の1種以上のブロックコポリマーを含むミセル。
【請求項16】
請求項15に記載のミセルを含むpH応答性組成物であって、Yが色素であり、ミセルがpH転移点及び発光スペクトルを有する、pH応答性組成物。
【請求項17】
(a)請求項16のpH応答性組成物を細胞内または細胞外の環境と接触させる工程、
(b)細胞内または細胞外の環境からの1つ以上の光シグナルを検知する工程であって、その光シグナルの検知が、ミセルがそのpH転移点に到達し、解離したことを示す、工程、を含む細胞内または細胞外の環境のpHをイメージングする方法における使用のための、請求項16に記載のpH応答性組成物。
【請求項18】
細胞内の環境は細胞の一部である請求項17に記載のpH応答性組成物。
【請求項19】
細胞外の環境が腫瘍または血管細胞である請求項17に記載のpH応答性組成物。
【請求項20】
(a)請求項16に記載のpH応答性組成物を有効量で患者に投与する工程;
(b)患者の1つ以上の光シグナルを検知する工程であって、その光シグナルは腫瘍の存在を示す、工程;及び
(c)腫瘍を手術により切除する工程、を含む患者の腫瘍を切除する方法における使用のための、請求項16に記載のpH応答性組成物。
【請求項21】
前記腫瘍が、がんによるものであり、前記がんが、乳がん、頭頸部がん、または結腸直腸の腹膜転移である請求項16に記載のpH応答性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年6月6日に出願された米国仮特許出願第62/009,019号の利益を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所に授与された認可番号R01EB013149の下、政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、分子及び細胞生物学、がんイメージング、ナノテクノロジー、並びに蛍光センサーの分野に関する。より詳細には、本開示は、pH変化の検出のためのナノプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0004】
蛍光イメージングは、マイクロスコピック、メゾスコピック及びマクロスコピックレベルで時空間情報を提供することができる能力のために、生細胞中の生体分子、経路及びプロセスの研究において重要なツールとなっている(例えば、Tsien,R.Y.Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2003,4,SS16;Weissleder,R.,Nature 2008,452,580;Fernandez−Suarez,M.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2008,9,929参照)。最近、イオン及びレドックス電位、酵素発現、並びにpH等の生理的刺激に応答性のある、活性化可能イメージングプローブが、細胞生理的プロセスを調査するためにかなり注目を集めている(例えば、de Silva,A.P.,Chem.Rev.1997,97,1515;Zhang,J.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2002,3,906;Lee,S.,Chem.Commun.2008,4250;Kobayashi,H.;Chem.Res.2010,44,83;Lovell,J.F.,Chem.Rev.2010,110,2839;Ueno,T.,Nat.Methods 2011,8,642参照)。これらの刺激の中でも、pHは、細胞内(pH)環境及び細胞外(pH)環境の両方で重大な役割を担う重要な生理的パラメータとして際立っている。(Alberts,B.,Molecular Biology of the Cell;第5版.;Garland Science New York,2008)。
【0005】
様々なpH感受性蛍光プローブが報告されているが(Kobayashi,H.,Chem.Rev.2010,110,2620;Han,J.Y.,Chem.Rev.2010,110,2709)、それらのpH感受性は、フルオロフォアへのpH依存性光誘起電子移動(PeT)特性を有するイオン化可能な残基に主として起因している。これらの蛍光剤についての一つの潜在的な欠点は、Henderson−Hasselbalch式によって規定されるそれらのブロードなpH応答(ΔpH約2)である(Atkins,P.,Physical Chemistry;Oxford University Press,2009)。このような鋭いpH応答の欠如は、酸性細胞内オルガネラ間の僅かなpH差(例えば、初期エンドソームとリソソームとの間の<1pH差)(Maxfield, F. R., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2004, 5, 121; Casey, J. R., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2010, 11, 50)又は正常組織環境(7.4)に対する固形腫瘍中のpHe(6.5〜6.9)(Webb,B.A.,Nat.Rev.Cancer 2011,11,671;Zhang,X., J.Nucl.Med.2010,51,1167.)を検出することが困難である。さらに、pH転移点及び発光波長(特に、近IR範囲内)の同時制御は、小分子色素にとっては困難である。pH感受性蛍光ナノ粒子開発の最近の試みは、小分子pH感受性色素と結合したポリマー(Srikun,D.,J.Chem.Sci.2011,2,1156;Benjaminsen,R.V.,ACS Nano 2011,5,5864;Albertazzi,L.,J.Am.Chem.Soc.2010,132,18158;Urano,Y., Nat.Med.2009,15,104)またはpH非感受性色素を結合するためのpH感受性リンカーの使用(Li,C.,Adv.Funct.Mater.2010,20,2222;Almutairi,A.,J.Am.Chem.Soc.2007,130,444)を主に利用する。これらのナノプローブ設計もブロードなpH応答をもたらし、pH転移点を微調整する能力を欠けている。
【0006】
最近、pH応答性システムを作製するためのポリマーの使用がWO2013/152059に記載されており、このポリマーの使用は、使用される特定のモノマーに基づく比較的狭い範囲のpH転移点を生み出すが、具体的には、pH転移点を微調整するための柔軟性が欠けている。
【0007】
さらに、腫瘍細胞のイメージングは、腫瘍の境界を描き、使用を切除する手術の有効性を高める向上した方法を提供することができる。腫瘍の境界を描くのを助ける様々な方法が提案されている。Brainlab(商標)等の画像ナビゲータを用いる、CT、MRIまたは超音波等の従来のイメージングモダリティでは、まず術前画像を使用し、続いて頭蓋底及び洞がん、並びに脳腫瘍の切除をガイドするための手術基準マーカーが術中使用される。主な欠点は、堅固な骨の境界標識に対して動かない腫瘍のみが、正確に画像化され、術前画像はリアルタイムのフィードバックを提供するために術中操作を埋めるためのアップデートをすることができない。術中MRIは、脳腫瘍の画像化のために少数のセンターで使用されつつあるが、リアルタイムイメージングのために手術スーツに高価な磁石装着の必要があり、最近の検討では、これは従来の手術ナビゲーションに対して大して重要でない利点となっているかもしれないと示唆されている(Kubbenら,2011)。超音波は口腔HNSCCの腫瘍の深さを評価するために使用されてきているが、頭と首の近づき難い原発部位への使用は困難である(Lodderら,2011)。
【0008】
これらの解剖学を基礎とする画像診断法は重要な解決手段ではあるが、疾患の具体的な情報をほとんど提供しない。光イメージング戦略は、細胞イメージング、自然自己蛍光及びラマン散乱に基づいて手術中に組織を画像化するために急速に使用されてきている(Vahrmeijerら,2013;Nguyen & Tsien,2013;Dacostaら,2006;Dragaら,2010;Hakaら,2006; Schwarzら,2009及びMoら,2009)。残念ながら、腫瘍の境界検出のための組織の自動発光の使用は、がんと正常組織との間の強固な分光差が欠如していることよる高い擬陽性及び偽陰性の結果により制限されている(Liuら,2010;Kanterら,2009;Ramanujamら,1996及びSchomackerら,1992)。
【0009】
様々な外因性フルオロフォア(蛍光色素分子)は、術中の境界評価のために開発されている。最も普通の戦略は、葉酸受容体−α(FR−α)(van Damら,2011)、クロロトキシン(Veisehら,2007)、表皮成長因子受容体(EFGR)(Keら,2003、及びUranoら,2009)、Her2/neu(Koyamaら,2007)、腫瘍関連抗体(例、前立腺特異的膜抗原、PSMA) (Tran Caoら,2012,carcinoembryonic antigen and carbohydrate antigen 19−9(CA19−9) (Tran Caoら,2012; Mcelroyら,2008)等の細胞表面受容体に焦点が当てられている。これらの中で、葉酸−FITC及びクロロトキシン−Cy5.5複合体(conjugate)はすでに、それぞれ、卵巣及び皮膚がんの手術におけるフェーズIの臨床実験に進んでいる。これらの成功にもかかわらず、主要な制約の原因の1つは、がん患者における広い腫瘍適応性の欠如である。腫瘍可視化の細胞表面受容体戦略にとって、均一マーカーの欠如は、多様な発がん遺伝子型(oncogenotype)及び解剖学的部位を有する腫瘍を可視化するためにユニバーサルプラットフォームを作製することを困難にする。加えて、比較的低い(fmol−nmol)且つ非常に変わり易い発現レベル(100〜300倍)は、従来のシグナル増幅の無い化学量論戦略(例、リガンド:レセプターが1:1)にとっては困難で挑戦的である。これは、常時接続プローブ型のため血液環境を高めるヒト化mAbの長い循環時間が原因で、特に、mAb−色素複合体(例、エルビタックス−ICG)には困難で挑戦的である。
【0010】
このように、腫瘍をイメージングするためのpH応答性システムを発生させることができる新規なポリマーは、診断及びイメージング・プロトコルの開発にとって有益である。
【発明の概要】
【0011】
要旨
いくつかの態様において、本開示は、
式:
【0012】
【化1】
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(I)
[式(I)において、Rは、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)、または
【0013】
【化2】
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或いは金属キレート基であり;nは1〜500の整数であり;R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;Rは、式:
【0014】
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
(II)
(式(II)において、nは1〜10であり;X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてX及びXは、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX及びXは、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものである。)で表される基であり;xは1〜150の整数であり;、Rは、式:
【0015】
【化4】
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(III)
(式(III)において、nは1〜10であり;X1’、X2’、及びX3’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてX4’及びX5’は、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX4’及びX5’は、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものである。)で表される基であり;yは1〜150の整数であり;Rは、式:
【0016】
【化5】
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(IV)
(式(IV)において、nは1〜10であり;Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてYは、水素、アルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、または蛍光消光剤から選択される。)で表される基であり;zは0〜6であり;そしてRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)であり;且つR及びRが同一の基ではないとの条件で、R、R、及びRは当該ポリマー内においてどのような順序で現れても良い。]で表されるポリマー、を提供する。いくつかの実施形態において、前記化合物は、前記式で表され、さらに、Rは、水素、アルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または
【0017】
【化6】
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或いは金属キレート基であり;nは10〜500の整数であり、R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)から選択され;Rは、式:
【0018】
【化7】
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(II)
(式(II)において、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)から選択され;そしてX及びXは、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX及びXは、一緒になって、アルカンジイル(C≦8)、アルコキシジイル(C≦8)、アルキルアミノジイル(C≦8)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものである。)で表される基であり;xは1〜100の整数であり、Rは、式:
【0019】
【化8】
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(III)
(式(III)において、X1’、X2’、及びX3’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)から選択され;そしてX4’及びX5’は、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX4’及びX5’は、一緒になって、アルカンジイル(C≦8)、アルコキシジイル(C≦8)、アルキルアミノジイル(C≦8)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものである。)で表される基であり;yは1〜100の整数であり、Rは、式:
【0020】
【化9】
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(IV)
(式(IV)において、Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)から選択され;そしてYは、水素、アシル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、または蛍光消光剤から選択される。)で表される基であり、zは0〜6であり;そしてRは、水素、ハロゲン、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)であり;且つR及びRが同一の基ではないとの条件で、R、R、及びRは当該ポリマー内においてどのような順序で現れても良い。いくつかの実施形態において、前記化合物は、前記式で表され、さらに、Rは、水素、アルキル(C≦8)、置換アルキル(C≦8)、または
【0021】
【化10】
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或いは金属キレート基であり;nは10〜200の整数であり、R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)から選択され;Rは、式:
【0022】
【化11】
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(II)
(式(II)において、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)から選択され;そしてX及びXは、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX及びXは、一緒になって、アルカンジイル(C≦8)、または置換アルカンジイル(C≦8)である。)で表される基であり;xは1〜100の整数であり;Rは、式:
【0023】
【化12】
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(III)
(式(III)において、X1’、X2’、及びX3’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)から選択され;そしてX4’及びX5’は、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX4’及びX5’は、一緒になって、アルカンジイル(C≦8)、または置換アルカンジイル(C≦8)であり;yは1〜100の整数であり;Rは、式:
【0024】
【化13】
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(IV)
(式(IV)において、Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦8)、置換アルキル(C≦8)から選択され;そしてYは、水素、色素、または蛍光消光剤から選択される。)で表される基であり;zは0〜6であり;そしてRは、水素、ハロゲン、アルキル(C≦6)、または置換アルキル(C≦6)であり;且つR及びRが同一の基ではないとの条件で、R、R、及びRは当該ポリマー内においてどのような順序で現れても良い。いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態では、Rはアルキル(C≦6)である。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、R
【0025】
【化14】
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である。いくつかの実施形態では、Rは、DOTA、TETA、Diamsar、NOTA、NETA、TACN−TM、DTPA、TRAP、NOPO、AAZTA、DATA、HBED、SHBED、BPCA、CP256、DFO、PCTA、HEHA、PEPA、またはこれらの誘導体から選択される金属キレート基等の金属キレート基である。いくつかの実施形態では、金属キレート基が窒素含有大員環である。いくつかの実施形態では、窒素含有大員環が下記式:
【0026】
【化15】
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[上式において、
、R、R、R10、R7’、R8’、R9’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、−アルカンジイル(C≦12)−アシル(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され;或いはリンカーであり、該リンカーはアルカンジイル(C≦12)−C(O)NH−、または置換アルカンジイル(C≦12)−C(O)NH−であり;或いは
は、R、R、またはR10の1つと一緒になって、アルカンジイル(C≦6)であり;或いは
は、R、R、またはR10の1つと一緒になって、アルカンジイル(C≦6)であり;或いは
は、R、R、またはR10の1つと一緒になって、アルカンジイル(C≦6)であり;或いは
10は、R、R、またはRの1つと一緒になって、アルカンジイル(C≦6)であり;或いは
7’は、R8’またはR9’の1つと一緒になって、アルカンジイル(C≦6)であり;或いは
8’は、R7’またはR9’の1つと一緒になって、アルカンジイル(C≦6)であり;或いは
9’は、R7’またはR8’の1つと一緒になって、アルカンジイル(C≦6)であり;そして
a、b、c、d、a’、b’、及びc’はそれぞれ独立して1、2、3または4から選択される。]
で表される化合物である。
【0027】
いくつかの実施形態では、a、b、c、d、a’、b’、及びc’はそれぞれ独立して2または3である。いくつかの実施形態で、金属キレート基が:
【0028】
【化16】
[この文献は図面を表示できません]
である。
【0029】
いくつかの実施形態では、金属キレート錯体が金属イオンと結合している。いくつかの実施形態で、金属イオンが放射線核種または放射線金属である。いくつかの実施形態で、金属イオンがPETまたはSPECTイメージングに適している。いくつかの実施形態で、金属キレート錯体が遷移金属イオンと結合している。いくつかの実施形態で、金属イオンが、銅イオン、ガリウムイオン、スカンジウムイオン、インジウムイオン、ルテチウムイオン、イッテルビウムイオン、ジルコニウムイオン、ビスマスイオン、鉛イオン、アクチニウムイオン、またはテクニチウムイオンである。いくつかの実施形態では、金属イオンが、99mTc、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、86Y、90Y、89Zr、44Sc、47Sc、66Ga、67Ga、68Ga、111In、177Lu、225Ac、212Pb、212Bi、213Bi、111In、114mIn、114In、186Re、または188Reから選択される同位体である。いくつかの実施形態では、遷移金属が銅(II)イオンである。いくつかの実施形態では、銅(II)イオンが64Cu2+イオンである。いくつかの実施形態では、金属キレート錯体が:
【0030】
【化17】
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である。
【0031】
いくつかの実施形態では、Rがアルキル(C≦6)である。いくつかの実施形態では、Rがメチルである。いくつかの実施形態では、R2’がアルキル(C≦6)である。いくつかの実施形態では、R2’がメチルである。いくつかの実施形態では、Rが、さらに、式:
【0032】
【化18】
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(V)
(式(V)において、Xは、水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)から選択され;そしてX及びXは、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX及びXは、一緒になって、アルカンジイル(C≦8)、または置換アルカンジイル(C≦8)である。)によって定義される。いくつかの実施形態では、Xがアルキル(C≦6)である。いくつかの実施形態では、Xがメチルである。いくつかの実施形態では、Xがアルキル(C≦8)である。いくつかの実施形態では、Xがメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。いくつかの実施形態では、Xがアルキル(C≦8)である。いくつかの実施形態では、前記Xがメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。
【0033】
いくつかの実施形態では、Rが、さらに、式:
【0034】
【化19】
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(VI)
(式(VI)において、X1’は、水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)から選択され;そしてX4’及びX5’は、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX4’及びX5’は、一緒になって、アルカンジイル(C≦8)、または置換アルカンジイル(C≦8)である。)によって定義される。いくつかの実施形態では、X1’がアルキル(C≦6)である。いくつかの実施形態では、Xがメチルである。いくつかの実施形態では、X4’がアルキル(C≦8)である。いくつかの実施形態では、X4’がメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。いくつかの実施形態では、X5’がアルキル(C≦8)である。いくつかの実施形態では、X5’がメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。いくつかの実施形態では、Rが、さらに、式:
【0035】
【化20】
[この文献は図面を表示できません]
(VII)
(式(VII)において、Yは、水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)から選択され;そしてYは、水素、色素または蛍光消光剤である。)よって定義される。いくつかの実施形態では、Yがアルキル(C≦6)である。いくつかの実施形態では、Yがメチルである。いくつかの実施形態では、Yが水素である。いくつかの実施形態では、Yが色素である。いくつかの実施形態では、Yが蛍光色素である。いくつかの実施形態では、蛍光色素が、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、キサンテン、BODIPY(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)、またはシアニン色素である。いくつかの実施形態では、蛍光色素が、インドシアニングリーン、AMCA−x、マリンブルー、PyMPO、Rhodamine Green(商標)、テトラメチルローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン、ボディピー493(Bodipy493)、ボディピーTMR−x、ボディピー630、シアニン5、シアニン5.5、及びシアニン7.5である。いくつかの実施形態では、蛍光色素が、インドシアニングリーンである。いくつかの実施形態では、Yが蛍光消光剤である。いくつかの実施形態では、蛍光消光剤が、QSY7、QSY21、QSY35、BHQ1、BHQ2、BHQ3、TQ1、TQ2、TQ3、TQ4、TQ5、TQ6及びTQ7である。いくつかの実施形態では、nが75〜150である。いくつかの実施形態では、nが100〜125である。いくつかの実施形態では、xが1〜99である。いくつかの実施形態では、xが1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜99またはこれらから導かれ得る範囲である。いくつかの実施形態では、yが1〜99である。いくつかの実施形態では、yが1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜99またはこれらから導かれ得る範囲である。いくつかの実施形態では、zが0〜6である。いくつかの実施形態では、zが1〜6である。いくつかの実施形態では、zが0〜2、2〜4、4〜6、またはこれらから導かれ得る範囲である。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、ポリマー内においてどのような順序でも現れ得る。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、式(I)に記載された順序で現れる。いくつかの実施形態では、ポリマーがさらに標的部分を含む。いくつかの実施形態では、標的部分が、小分子、抗体、抗体断片、またはシグナル伝達ペプチドである。いくつかの実施形態では、R及びR
【0036】
【化21】
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から選択される。いくつかの実施形態では、ポリマーが、PEO114−P(DEA20−D5A60)、PEO114−P(DEA40−D5A40)、PEO114−P(DEA60−D5A20)、PEO114−P(DPA60−DBA20)、PEO114−P(DPA40−DBA40)、PEO114−P(DPA20−DBA60)、PEO114−P(DEA76−DPA24)、PEO114−P(DEA58−DPA42)、PEO114−P(DEA39−DPA61)、PEO114−P(DEA21−DPA79)、PEO114−P(DPA30−DBA50)、PEO114−P(DBA28−D5A52)、PEO114−P(DBA56−D5A24)、PEO114−P(DEA20−D5A60−AMA)、PEO114−P(DEA40−D5A40−AMA)、PEO114−P(DEA60−D5A20−AMA)、PEO114−P(DPA60−DBA20−AMA)、PEO114−P(DPA40−DBA40−AMA)、PEO114−P(DPA20−DBA60−AMA)、PEO114−P(DEA76−DPA24−AMA)、PEO114−P(DEA58−DPA42−AMA)、PEO114−P(DEA39−DPA61−AMA)、PEO114−P(DEA21−DPA79−AMA)、PEO114−P(DPA30−DBA50−AMA)、PEO114−P(DBA28−D5A52−AMA)、またはPEO114−P(DBA56−D5A24−AMA)、PEO114−P(DEA11−EPA89)、PEO114−P(DEA22−EPA78)、PEO114−P(EPA90−DPA10)、PEO114−P(EPA79−DPA21)である。
【0037】
別の態様において、本開示は、式:
【0038】
【化22】
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(V)
[式(V)において、Rは、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)、または
【0039】
【化23】
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或いは金属キレート基であり;nは1〜500の整数であり;R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;Rは、式:
【0040】
【化24】
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(II)
(式(II)において、nは1〜10であり;X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてXはペンチル、n−プロピル、またはエチルであり;そしてXはペンチルまたはn−プロピルである。)で表される基であり;xは1〜100の整数であり;、Rは、式:
【0041】
【化25】
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(IV)
(式(IV)において、Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてYは、水素、アルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、または蛍光消光剤から選択される。)で表される基であり;yは1〜6の整数であり;そしてRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)である。]で表されるポリマーを提供する。いくつかの実施形態において、Yが蛍光色素である。いくつかの実施形態において、蛍光色素がインドシアニングリーンである。いくつかの実施形態において、ポリマーが、PEO114−P(D5A80)、PEO114−P(D5A100)、PEO114−P(DPA80)、PEO114−P(DPA100)、PEO114−P(EPA80)及びPEO114−P(EPA100)である。
【0042】
さらに別の態様において、本開示は、式:
【0043】
【化26】
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で表される化合物を提供する。
【0044】
別の態様において、本開示は、本開示のポリマーのミセルを提供する。
【0045】
さらに別の態様において、本開示は、本開示の第1ポリマーのミセルを含むpH応答性システムであって、zが0でなく、Yが色素であり、そしてミセルがpH転移点及び発光スペクトルを有するpH応答性システムを提供する。いくつかの実施形態において、ミセルがさらに本開示の第2ポリマーを含み、且つzが0でなく、Yが蛍光消光剤である。いくつかの実施形態において、第2ポリマーは、Yが蛍光消光剤である以外は第1のポリマーと同一の式を有する。いくつかの実施形態において、pH転移点が3〜9の間にある。いくつかの実施形態において、pH転移点が4〜8の間にある。いくつかの実施形態において、pH転移点が4〜6の間にある。いくつかの実施形態において、pH転移点が6〜7.5の間にある。いくつかの実施形態において、pH転移点が4.38、4.67、4.96、5.27、5.63、5.91、6.21、6.45、6.76、7.08、または7.44である。いくつかの実施形態において、発光スペクトルが400〜850の間にある。いくつかの実施形態において、システムが1pH単位より小さいpH応答(ΔpH10−90%)を有する。いくつかの実施形態において、pH応答が0.25pH単位より小さい。いくつかの実施形態において、pH応答が0.15pH単位より小さい。いくつかの実施形態において、蛍光シグナルが25より大きい蛍光活性化比を有する。いくつかの実施形態において、蛍光活性化比が50より大きい。
【0046】
さらに別の態様において、細胞内または細胞外の環境のpHをイメージング(画像化)する方法であって、
(a)本開示のミセルを環境と接触させ、
(b)環境からの1つ以上の光シグナルを検知し、且つその光シグナルの検知が、ミセルがそのpH転移点に到達して、解離することを示すことを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、光シグナルが蛍光シグナルである。いくつかの実施形態において、細胞内環境を画像化する際、細胞は、pH応答性システムの取り込みを起こすのに好適な条件下でpH応答性システムと接触する。いくつかの実施形態において、細胞内環境は細胞の一部である。いくつかの実施形態において、細胞の一部が、リソソームまたはエンドソームである。いくつかの実施形態において、細胞外環境が腫瘍または血管細胞である。いくつかの実施形態において、細胞外環境が血管内または血管外である。いくつかの実施形態において、腫瘍環境のpHのイメージングがセンチネルリンパ節または複数のセンチネルリンパ節の画像化を含む。いくつかの実施形態において、センチネルリンパ節または複数のセンチネルリンパ節のイメージングが、腫瘍の外科的切除及び腫瘍転移の診断を可能にする。いくつかの実施形態において、腫瘍環境のpHのイメージングが腫瘍のサイズ及び境界の決定を可能にする。いくつかの実施形態において、腫瘍環境のpHの画像化が、手術中の腫瘍のより正確な除去を可能にする。いくつかの実施形態において、センチネルリンパ節または複数のセンチネルリンパ節のpHのイメージングが、手術中のセンチネルリンパ節または複数のセンチネルリンパ節のより正確な除去を可能にする。いくつかの実施形態において、方法は、さらに:
(a)細胞を対象の化合物と接触させ;
(b)その環境で1つ以上の光シグナルを検知し;及び
(c)細胞と対象の化合物との接触後に、光シグナルの変化が起こったか否かを決定することを含む。いくつかの実施形態において、対象の化合物が、薬、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、または小分子である。
【0047】
さらに別の態様において、本開示は、標的細胞に対象の化合物を送達する方法であって、
(a)対象の化合物を、請求項1〜55のポリマーのミセルと接触させ;及び
(b)標的細胞のpHがpH応答性システムの解離及び化合物の放出をトリガーする条件下で、標的細胞をpH応答性システムと接触させ、これにより対象の化合物を送達することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象の化合物を細胞内に送達する。いくつかの実施形態において、対象の化合物を細胞に送達する。いくつかの実施形態において、対象の化合物が、薬、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、または小分子である。いくつかの実施形態において、ミセルを患者に投与する。
【0048】
さらに別の態様において、患者の腫瘍を切除する方法であって、
(a)本開示のpH応答性システムを有効量で患者に投与し;
(b)患者の1つ以上の光シグナルを検知し;且つその光シグナルは腫瘍の存在を示し;そして
(c)腫瘍を手術により切除することを含む前記方法を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態において、光シグナルが腫瘍の領域境界を示す。いくつかの実施形態において、腫瘍を90%切除するか、または95%切除するか、または99%切除する。いくつかの実施形態において、固体腫瘍等の腫瘍が、がん由来のものである。いくつかの実施形態において、がんが、乳がんまたは頭頸部扁平上皮がん等の頭頸部がんである。pH応答性システムが、式:
【0050】
【化27】
[この文献は図面を表示できません]
[上式において、xが30〜150の整数であり、yが1または2の整数であり;x及びyは当該ポリマー全域にランダムに分布し;そしてICGが蛍光色素インドシアニングリーンである。]で表されるポリマーからなる。
【0051】
さらに別の態様において、本開示は、患者におけるエンドソーム/リソソームpH停止を起こし易いがんを治療する方法であって、本開示のpH応答性システムを、それが必要な患者に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、がんが非小細胞肺がん等の肺がんである。いくつかの実施形態において、がんが、KRAS遺伝子の突然変異またはLKB1伝子の突然変異を含む。他の実施形態において、がんが、KRAS及びLKBIの両方の遺伝子の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、方法が、アポトーシスを誘導するのに十分である。
【0052】
さらに別の態様において、本開示は、細胞の遺伝子突然変異の存在を同定する方法であって:
(a)2つ以上のミセルを含むpH応答性システムを、細胞または細胞環境と接触させ、
(b)環境からの2つ以上の光シグナルを検出し、且つ光シグナルの検出が、ミセルの1つがそのpH転移点に到達し、解離したことを示し;及び
(c)細胞中の遺伝子突然変異の存在を判定するために、2つ以上の光シグナルをに関連づけること含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、遺伝子突然変異が、KRAS遺伝子の突然変異である。いくつかの実施形態において、2つ以上のミセルが、6.9、6.2、または5.3のpH転移点を有する3つのミセルを含む。いくつかの実施形態において、3つのミセルのそれぞれがPDPA−TMR、PEPA−BDY493及びPDBA−Cy5から選択されるポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、方法が、インビボで行われ、1つ以上のミセルを患者に投与することにより細胞と接触する。
【0053】
さらに別の態様において、本開示は、腫瘍アシドーシスの経路を同定する方法であって:
(a)本開示の1つ以上のミセルを含むpH応答性システムを、細胞または細胞環境と接触させ、
(b)細胞を、pH調節経路の阻害剤と接触させ;
(c)細胞または細胞環境からの2つ以上の光シグナルを検出し、且つ光シグナルの検出が、ミセルの1つがそのpH転移点に到達し、解離したことを示し;及び
(d)2つ以上の光シグナルを腫瘍アシドーシスの経路の変更(modification)に関連づけることを含む前記方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態において、pH調節経路の阻害剤が、モノカルボキシレート輸送体、炭酸脱水酵素、アニオン交換器、Na−重炭酸塩交換器、Na/H−交換器、またはV−ATPaseの阻害剤である。いくつかの実施形態において、1つ以上のミセルが、ポリマー骨格に結合した2つ以上のフルオロフォアを有するポリマーを含む。いくつかの実施形態において、方法が1つのミセルを含み、ミセルが、異なるフルオロフォアまたは異なるR基を有する2種以上のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ミセルが、異なるフルオロフォア及び異なるR基を有する2種以上のポリマーを含む。
【0055】
腫瘍の存在を決定するために患者をイメージングする方法であって:
(a)本開示の1つ以上のミセルを含むpH応答性システムを、腫瘍と接触させ、このミセルはさらにRに金属キレート基を含んでおり;
(b)1つ以上のPETまたはSPECT画像スキャンを集め;及び
(c)1つ以上の光画像スキャンを集め、且つ光シグナルの検出が、ミセルの1つがそのpH転移点に到達し、解離したことを示すことを含み、且つ
1つ以上のPETまたはSPECT画像スキャン及び1つ以上の光画像スキャンが、腫瘍の同定をもたらす前記方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態において、光画像スキャンが、PETまたはSPECT画像スキャンの前に集められる。他の実施形態において、光画像スキャンが、PETまたはSPECT画像スキャンの後に集められる。いくつかの実施形態において、光画像スキャンが、PETまたはSPECT画像スキャンと同時に集められる。いくつかの実施形態において、画像スキャンが、PET画像スキャンである。他の実施形態において、画像スキャンが、SPECT画像スキャンである。いくつかの実施形態において、金属キレート基が64Cuイオンと結合している。いくつかの実施形態において、金属キレートが、窒素含有大員環である。いくつかの実施形態において、窒素含有大員環が:
【0057】
【化28】
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[上式において、R、R、R、R10、R7’、R8’、R9’、a、b、c、d、a’、b’、及びc’は上記と同義である。]である。いくつかの実施形態において、窒素含有大員環が:
【0058】
【化29】
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である。
【0059】
さらに別の態様において、本開示は、式:
【0060】
【化30】
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(IX)
[式(IX)において、Rは、金属キレート基であり;nは1〜500の整数であり;R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;Rは、式:
【0061】
【化31】
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(II)
(式(II)において、nは1〜10であり;X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてX及びXは、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX及びXは、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものである。)で表される基であり;xは1〜150の整数であり;Rは、式:
【0062】
【化32】
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(IV)
(式(IV)において、nは1〜10であり;Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてYは、水素、アルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、または蛍光消光剤から選択される。)で表される基であり;yは0〜6の整数であり;そしてRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)であり;且つR及びRが同一の基ではないとの条件で、R及びRは当該ポリマー内においてどのような順序で現れても良い。]で表されるポリマーを提供する。いくつかの実施形態において、R
【0063】
【化33】
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[上式において、X、X、及びXは上記と同義である。]
である。
【0064】
いくつかの実施形態において、Xがメチル等のアルキル(C≦12)である。いくつかの実施形態において、X及びXは、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)または置換アルカンジイル(C≦12)である。いくつかの実施形態において、X及びXは、一緒になって、−CHCHCHCHCHCH−である。いくつかの実施形態において、R
【0065】
【化34】
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[上式において、Y及びYは上記と同義である。]である。いくつかの実施形態において、Yが色素である。いくつかの実施形態において、Yが蛍光色素である。いくつかの実施形態において、Yがメチル等のアルキル(C≦12)である。いくつかの実施形態において、xが40、60、80、100、または120である。いくつかの実施形態において、yが1、2、または3であり、yが3である場合もある。いくつかの実施形態において、ポリマーが、PEO114−P(C7A40−r−ICG)、PEO114−P(C7A60−r−ICG)、PEO114−P(C7A80−r−ICG)、PEO114−P(C7A100−r−ICG)、またはPEO114−P(C7A120−r−ICG)であり、且つPEO基は金属キレート基でキャップされている。
【0066】
本明細書で使用されているように、「pH応答性システム」、「ミセル」、「pH応答性ミセル」、「pH感受性ミセル」、「pH活性化ミセル」、及び「pH応答性ミセル(pHAM)ナノ粒子」は、本明細書では区別すること無く使用され、1種以上のコポリマーを含むミセルを意味し、これはpH(例えば、あるpH超過または未満)に依存して解離する。非限定的例として、あるpHにおいて、ブロックコポリマーは実質的にミセル形態にある。pH変化(例えば、減少)として、ミセルは解離し始め、そして、さらなるpH変化(例、さらなる減少)として、ブロックコポリマーは解離した(非−ミセルの)形態で実質的に存在する。
【0067】
本明細書で使用されているように、「pH転移範囲」は、それを超えるとミセルが解離するpH範囲を意味する。
【0068】
本明細書で使用されているように、「pH転移値」(pH)は、ミセルの半分が解離するpHを意味する。
【0069】
本明細書に記載された方法及び組成物のいずれも、他のどの方法及び組成物に関して実施することができると考えられる。
【0070】
用語「含む(comprise)」(及び「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」等の含むの任意の形態)、「有する(have)」(及び「有する(has)」及び「有すること(having)」等の有するの任意の形態)、「含有する(contain)」(及び「含有する(contains)」及び「含有すること(containing)」等の含有するの任意の形態)、並びに「包含する(include)(及び「包含する(includes)」及び「包含すること(including)」等の包含するの任意の形態)は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つ以上の記載された工程または要素を「含む」、「有する」、「含有する」、または「包含する」方法、組成物、キット、またはシステムは、それらの記載の工程または要素を有するが、それらの工程または要素のみを有することに限定されず;それは、記載されていない要素または工程を有してもよい(即ち、カバーしてもよい)。同様に、1つ以上の記載の特徴を「含む」、「有する」、「含有する」、または「包含する」方法、組成物、キット、またはシステムの要素は、それらの特徴を有するが、それらの特徴のみを有することに限定されず;それは、記載されていない特徴を有してもよい。
【0071】
本発明の方法、組成物、キット、及びシステムのいずれかの態様が、記載された工程及び/または特徴を含む/包含する/含有する/有するのではなく、記載された工程及び/または特徴からなるまたはそれらから本質的になっても良い。従って、請求項のいずれかにおいて、用語「からなる」または「から本質的になる」を、そうでなければオープンエンドの連結動詞を使用していたものから所定の請求項の範囲を変更するために、上記に記載のオープンエンドの連結動詞のいずれかに置換してもよい。
【0072】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみを指すようにまたは選択肢が相互に排他的であることが明確に示されない限り、「及び/または」を意味するために使用されるが、本開示は選択肢のみ並びに「及び/または」を指す定義をサポートしている。本出願全体に亘って、用語「約」は、値が、その値を決定するために用いられる装置または方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために用いられる。長年の特許法に従って、単語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、特許請求の範囲または明細書において単語「含む」と共に使用される場合、特段の記載が無い限り、1つまたは複数を意味する。
【0073】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び具体例は、本発明の具体的な態様を示しているが、例示のためのみに記載されていると理解されるべきである、なぜなら、本発明の主旨及び範囲内における様々な変更及び改質はこの詳細な説明から当業者に明らかになるためである。
【0074】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含んでいる。カラー図面を有する本特許または本出願のコピーは、要求により或いは必要な費用の支払いに応じて事務所より提供されるであろう。
【0075】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明のある態様をさらに実証するために含まれている。本開示は、本明細書に示される具体的な態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することによってよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】色素−または蛍光消光剤(FQ)−結合(conjugated)PEO−b−P(R−γ−R)コポリマーの合成を示す。PR断片の疎水性は、2種のモノマー(RまたはR:Et,エチル;Pr,プロピル;Bu,ブチル;Pe,ペンチル)のモル分率を変化させることにより連続的に制御され得る。
図2】ランダムコポリマーの異なるモノマー(DEA及びD5A)比でのPEO−P(DEA−D5A)(x+y=80)のH NMRスペクトルを示す。0.9ppm及び1.1ppmのピークが、疎水性PRブロックのモノマー組成を推定するために使用された。
図3】ランダムコポリマーの異なるモノマー(DPA及びDBA)比でのPEO−P(DPA−DBA)(x+y=80)のH NMRスペクトルを示す。1.3ppm及び1.4ppmのピークが、疎水性PRブロックのモノマー組成を推定するために使用された。
図4】疎水性PRブロックのモノマー(DEA及びDPA)比を調節することにより7.8、7.4、7.1、6.8、6.5及び6.2のpH値を有するナノプローブ組成物のH NMRスペクトルを示す。0.9ppm及び1.0〜1.1ppmのピークが、疎水性PRブロックのモノマー組成を推定するために使用された。
図5】疎水性PRブロックのモノマー(DPA及びDBA)比を調節することにより6.2、5.9、5.6及び5.3のpH値を有するナノプローブ組成物のH NMRスペクトルを示す。1.3ppm及び1.4ppmのピークが、疎水性PRブロックのモノマー組成を推定するために使用された。
図6】疎水性PRブロックのモノマー(DBA及びD5A)比を調節することにより5.3、5.0、4.7及び4.4のpH値を有するナノプローブ組成物のH NMRスペクトルを示す。1.3ppm及び1.4ppmのピークが、疎水性PRブロックのモノマー組成を推定するために使用された。
図7】(図7A)pHの制御に対するPDEA/PD5A分子混合対P(DEA40−D5A40)コポリマーの戦略の比較。(図7B)pHの関数としての2種のモノマーの異なる比を有するP(DEA−D5A)ナノプローブの正規化蛍光強度。(図7C)ナノプローブpHは、PR断片のDEA−MAモノマーのモル分率と直線的に相関している。ポリマー濃度はこれらの検討では0.1mg/mLであった。
図8】PDEA/PD5Aミセルブレンド対P(DEA40−D5A40)コポリマーナノプローブのpH−依存性蛍光スペクトルを示す。Cy5色素(λex/λem=646/662nm)を対応するコポリマーのPRブロックに結合した(conjugated)。正規化蛍光強度対pHの関係は図7Aに示した。
図9】粗調整されたP(DEA−D5A)ナノプローブのpH−依存性蛍光スペクトルを示す。Cy5色素(λex/λem=646/662nm)をコポリマーのPRブロックに結合した。正規化蛍光強度対pHの関係は図7Bに示した。
図10】(図10A)Cy5−結合P(DPA−DBA)ナノプローブについてのpH関数としての正規化蛍光強度。(図10B)P(DPA−DBA)対P(DEA40−D5A40)ナノプローブについてのpH関数としての誘導蛍光プロット(d/dpH、4aからのデータ)。近い疎水性を有するメタクリレートモノマーの使用(即ち、DPA/DBA対DEA/D5A)は極めて鋭いpH転移をもたらした。(図10C)異なるコポリマー組成物の疎水性の小さいモノマーのモル分率の関数としての、ナノプローブpHの直線関係。これらの関係は、オペレータ−予め決められたpHを達成するために最適のコポリマーを選択するための標準曲線として機能する。(図10D)pH(4〜7.4)の全生理的範囲をカバーする0.3pH増加分を有するUPSナノプローブの代表的なライブラリー。全てのナノプローブはCy5色素と結合した。ポリマー濃度は0.1mg/mLであった。
図11】微調整されたP(DPA−DBA)ナノプローブのpH依存蛍光スペクトルを示す。Cy5色素(λex/λem=646/662nm)をコポリマーのPRブロックに結合した。正規化蛍光強度対pHの関係は図10Aに示した。
図12】UPSライブラリーナノプローブのpH依存蛍光スペクトルを示す。UPSナノプローブの組成は表3に示す。Cy5色素(λex/λem=646/662nm)をコポリマーのPRブロックに結合した。正規化蛍光強度対pHの関係は図10Dに示した。
図13】0.3pH増加分を有する10個のナノプローブからなるUPSライブラリーの蛍光イメージングを示す。各UPSナノプローブの組成は表3に示す。Cy5色素(λex/λem=646/662nm)をコポリマーのPRブロックに結合した。ナノプローブの画像はMaestro Imaging systemで撮影された。
図14】(図14A)PEO−POPA−Dye/FQコポリマーの構造、(図14B)大きいストークスシフト(Stokes shift)を有する選択されたフルオロフォアの構造、(図14C)選択されたローダミン色素の構造、(図14D)選択されたBodipy色素の構造、(図14E)選択されたシアニン色素の構造、を示す。全てのフルオロフォアの励起光/蛍光波長を図14B−Eに、それぞれ示した。(図14F)選択された蛍光消光剤の構造を示す。各消光剤の活性消光範囲は丸括弧に示した。
図15】超pH感受性(UPS)ミセルナノプローブの模式図を示す。(図15A)ユニマー状態(pH<pH)において、ポリマー解離がフルオロフォア消光剤の分離及び強い蛍光発光をもたらした。ミセル状態(pH>pH)において、蛍光消光剤が、フルオロフォアの発光強度を劇的に抑制した。(図15B)コポリマー戦略は、PR断片の疎水性を連続的に微調整する能力によってナノプローブpHのオペレータが予め決めた制御を達成するために用いられた。
図16】PDPA−色素/PDPA−FQの異なる比におけるpH5.0(オン)及びpH7.4(オフ)での混合ナノ粒子の蛍光強度比を示す。(図16A)より大きなストークスシフト(AMCA、MB及びPPO)を有するフルオロフォアの結果。(図16B)BODIPY(登録商標)ファミリーのフルオロフォアの結果。フルオロフォア及びFQの構造は図14A〜Fに示した。
図17】(図17A〜F)蛍光消光剤無し(左欄)または蛍光消光剤有り(右欄)のナノプローブのpH依存性蛍光スペクトルを示す。大きなストークスシフトを有するフルオロフォアはこの検討で示した。フルオロフォア及びFQの構造は図14A〜Fに示した。
図18】(図18A〜F)異なるPDPA−色素ナノプローブの蛍光強度比を顕著に増加させたFQ−結合PDPAコポリマーを示す。pH7.4に対する異なるpHでの蛍光強度(FpH/F7.4)がコポリマーついてのみプロットされ(図18A、18C及び18E)、そして加えてFQ−結合コポリマーもプロットされた(図18B、18D及び18F)。フルオロフォア及びFQの構造は図14A〜Fに示した。
図19】(図19A〜F)蛍光消光剤無し(左欄)または蛍光消光剤有り(右欄)のナノプローブのpH依存性蛍光スペクトルを示す。BODIPY(登録商標)ファミリーのフルオロフォアがこの検討で示された。フルオロフォア及びFQの構造は図14A〜Fに示した。
図20】(図20A〜F)蛍光消光剤無し(左欄)または蛍光消光剤有り(右欄)のナノプローブのpH依存性蛍光スペクトルを示す。ローダミンファミリーのフルオロフォアがこの検討で示された。フルオロフォア及びFQの構造は図14A〜Fに示した。
図21】(図21A〜E)蛍光消光剤無し(左欄)または蛍光消光剤有り(右欄)のナノプローブのpH依存性蛍光スペクトルを示す。シアニンファミリーのフルオロフォアがこの検討で示された。フルオロフォア及びFQの構造は図14A〜Fに示した。
図22】ローダミンファミリー及びシアニンファミリーの色素について、pH7.4に対する異なるpHでの蛍光強度(FpH/F7.4)がコポリマーのみについてプロットされ(図22A及び22C)、そして加えてFQ−結合コポリマーもプロットされた(図22B及び22D)ことを示す。フルオロフォア及びFQの構造は図14A〜Fに示した。
図23】(図23A&B)腫瘍における好気的解糖及び酸性細胞外pH(pH)を示す。(図23A)がん細胞は酸素が存在するか否かにかかわらずグルコースをラクテート(乳酸塩)に変換する(Warburg効果)。この図は、Heiden,ら,2009が出典である。(図23B)30の異なるヒトがん細胞株からの269の腫瘍に、酸性pHが測定された。6.71〜7.01の変化範囲での平均pH=6.84は血液pH(7.4)より低い。表はVolk,ら.,1993の出典である。
図24】広いpH範囲(4〜7.4)及び大きい蛍光発光(400〜820nm)に亘る10ナノプローブからなるUPSライブラリーの例を示す。各ナノプローブはそれの転移pH及びフルオロフォアによりコードされる。4.4−AMCA及び4.7−MBの画像は365nmの励起光によりカメラで撮影された。ナノプローブ溶液の残りの画像はMaestro Imaging systemで撮影された。
図25】2つの独立メカニズムによるイオン化可能ポリマーミセルの自己組織化を示す。左のパネルは、pH増加によるミセル化誘導を示し、ここではPR断片は中和され、疎水性になり、ミセル形成を推進する。驚くべきことに、低pHでのカオトロピックイオン(ClO等のCA)の添加がアンモニウムPR断片とのミセル化をもたらす(右のパネル)。異なる疎水性側鎖を有する一連のPEO−b−PRコポリマー(1〜5)の構造を差し込み図で示される。
図26】(図26A)カオトロピックアニオンが、プロトン化PR断片を有するPEO−b−PRコポリマーからミセル自己組織化を誘導するが、これはタンパク質を溶解させる(塩溶)その能力と反対の「塩析」効果による。(図26B)CA−誘導自己組織化ミセルを開発するためのFRET設計の図。CAの添加がミセル形成及び供与体(TMR)から受容体(Cy5)色素への効率の良いエネルギー移動をもたらす。(図26C)カオトロピックアニオンが抗−ホフマイスター・トレンドを示すミセル自己組織化を誘導した。
図27】カオトロッピックアニオンの異なる濃度におけるPEO−b−P(DPA−r−TMR)/PEO−b−P(DPA−r−Cy5)のFRETポリマーペアーの蛍光スペクトルを示す。サンプルは、λex=545nmで励起され、発光スペクトルは560〜750nmから収集された。全ての実験はPEO−b−PDPAの転移pH(pH=6.1)より低いpH=4で行った。
図28】コスモトロッピック及び境界アニオンの異なる濃度におけるPEO−b−P(DPA−r−TMR)/PEO−b−P(DPA−r−Cy5)のFRETポリマーペアーの蛍光スペクトルを示す。サンプルは、λex=545nmで励起され、発光スペクトルが560〜750nmから収集された。全ての実験はPEO−b−PDPAの転移pH(pH=6.1)より低いpH=4で行った。
図29】Clの存在下(図29A)及びClOの存在下(図29B)におけるコポリマー3のミセル転移のTEM及びDLS分析を示す。両方のアニオンの濃度は50mM(pH=5.0)に制御した。スケールバーはTEM画像において100nmである。
図30】pH7.4でCl(50mM)の存在下にコポリマー3ミセルのミセル形態及び流体力学直径についてのTEM分析(図30A)及びDLS分析(図30B)を示す。スケールバーはTEM画像において100nmである。
図31】pH7.4でClO(50mM)の存在下にコポリマー3ミセルのミセル形態及び流体力学直径についてのTEM分析(図31A)及びDLS分析(図31B)を示す。スケールバーはTEM画像において100nmである。
図32】pH7.4及び5.0でClO(50mM)の存在下にPEO−b−PLAコポリマーのミセル形態及び流体力学直径についてのTEM分析(図32A)及びDLS分析(図32B)を示す。スケールバーはTEM画像において100nmである。
図33】Cl(0〜2,000mM)の異なる初期濃度でのPEO−b−P(DPA−r−TMR)/PEO−b−P(DPA−r−Cy5)のFRETポリマーペアーの蛍光スペクトルを示す。異なる濃度のClO(Mで)アニオンがミセル形成の誘導のため添加された。サンプルはλex=545nmで励起され、発光スペクトルが560〜750nmから収集された。全ての実験はPEO−b−PDPAの転移pH(pH=6.1)より低いpH=4で行った。
図34】異なる競合するCl濃度(0〜2,000mM)にて、ClO濃度の関数としてのFRET転移効率を示す。
図35】SO2−(0〜500mM)の異なる初期濃度でのPEO−b−P(DPA−r−TMR)/PEO−b−P(DPA−r−Cy5)のFRETポリマーペアーの蛍光スペクトルを示す。異なる濃度のClO(Mで)がミセル形成の誘導のため添加された。サンプルはλex=545nmで励起され、発光スペクトルが560〜750nmから収集された。全ての実験はPEO−b−PDPAの転移pH(pH=6.1)より低いpH=4で行った。
図36】異なる競合するSO2−濃度(0〜500mM)における、ClO濃度の関数としてのFRET転移効率を示す。
図37】(図37A)SO2−アニオンの異なる濃度の存在下におけるコポリマー3のClO誘導された自己組織化を示す。(図37B)競合Cl及びSO2−アニオンのイオン強度の関数としての、ClO誘導された自己組織化からのFRET効率(FC50)。溶液pHはこれらの検討では4に制御された。
図38】(図38A)PR断片の疎水性強度はミセル誘導のClOの能力に影響を与えることを示す。より疎水性のPR断片(例えば、5のペンチル基)は、ClO感受性を増加させミセル形成を誘導する。(図38B)経験的モデルは、イオン性ポリマーミセルの自己組織化に2つの重要な寄与因子(疎水性アルキル鎖及びカオトロピックアニオン)を描いている。
図39】異なる疎水性強度のPEO−b−P(R−r−TMR)/PEO−b−P(R−r−Cy5)のFRETポリマーペアーの蛍光スペクトルを示す(PR断片はメチルからペンチル側鎖に変化した)。異なる濃度のClO(Mで)がミセル形成の誘導のため添加された。サンプルはλex=545nmで励起され、発光スペクトルが560〜750nmから収集された。全ての実験はPEO−b−PDPAの転移pH(pH=6.1)より低いpH=4で行った。
図40】6.9に極めて鋭いpH転移を有するUPS6.9ナノプローブを示す。(図40A)イオン化可能なブロックコポリマーの構造及びそのpH−依存性蛍光発光性。高いpH(即ち、7.4または7.2)で、UPSは静かに存在する。6.9より低いpHで、UPSはミセル形成の結果として、活性化される。pH応答は、仮定の小分子pHセンサー(青い破線)よりはるかに鋭い。(図40B)異なるpH緩衝液中のUPS6.9溶液の蛍光画像。(図40C)それぞれpH7.4及び6.7における、ミセル及びユニマー状態のUPS6.9の透過型電子顕微鏡写真(ポリマー濃度=1 mg/mL、スケールバー=100nm)。
図41】(図41A及びB)匹敵するサイズを有するがpH転移が異なる(pH=6.3及び6.9)2つのUPSのPK/BDを示す。
図42】(図42A)初期HNSCC腫瘍の除去後、首側の代表的なセンチネルリンパ節のNIR画像を示す。(図42B)組織構造(H&E)が節構造であることを確認することができた。選択された節は、節の皮質領域におけるHN5細胞(黒矢印)の存在を示した。
図43】PINSナノプローブの合成及び最適化を示す。(図43A)ICG結合PEG−b−P(EPA−r―ICG)ブロックコポリマーの合成スキーム。(図43B〜D)PEPA断片長のpH−依存性蛍光特性への影響の調査:(図43B)蛍光強度、(図43C)7.4を超える対象のpHでの蛍光活性化、及び(図43D)正規化蛍光強度。PEPA断片長を変化させ(x=40、60、80、100、120)、ポリマー鎖当たりICG数が1に達した。(図43E〜G)ICG結合数のpH−依存性蛍光特性への影響の調査:(図43E)蛍光強度、(図43F)7.4を超える対象のpHでの蛍光活性化、及び(図43G)正規化蛍光強度。ポリマー鎖当たりICG数を変化させ(y=0.5、1.2)、PEPA断片長を100に制御した。(図43H及びI)(図43H)pH7.4のヒト血清及び(図43I)pH6.0のヒト血清において、PEPA100−ICG(n=0.5、1、2)のモノマーピーク強度(λ=808nm)へ正規化したUV−Vis吸収スペルトル。これらのデータをもとに、PEG−b−P(EPA100−r―ICG)を動物イメージング研究のための最適な組成として選択した。
図44】PINSの特性評価を示す。(図44A)PINS濃度及びpHの関数としての蛍光強度の3Dプロット。(図44B)pH−感受性オフ/オン活性化を示すSPY Elite(登録商標)手術カメラによるPINS溶液の近IR画像。(図44C)それぞれ、pH=7.4及び6.5でのミセル及びユニマー状態における、PINSの透過型電子顕微鏡写真。ポリマー濃度=1mg/mL;スケールバー=100nm。貯蔵時の(図44D)PBS中または(図44E)50%ヒト血清中におけるpH6.5(黒バー)及びpH7.4(白バー)でのPINS蛍光強度。(図44F)貯蔵時のPINSナノプローブの数加重流体力学半径。(図44D図44F):−20℃での10%w/vスクロース溶液の貯蔵条件。これらの結果は、PINSが10%w/vスクロース溶液において−20℃で6カ月にわたる貯蔵において安定であることを示した。
図45】ヒトHN5同所腫瘍を有するマウスにおけるPINSの用量−反応を示す。尾静脈を介して異なる用量のPINS(1.0、2.5及び5.0mg/kg)が注射されたマウスの白色光(図45A)及び近IR(図45B)の画像。HN5腫瘍強度は、PINS用量の増加と共に増加した。25mg/kgPINSに対する等価の色素用量での遊離ICG対照は、観察可能な腫瘍の差異は示さなかった。(図45C):選択された時点での異なる用量のPINSが注射された代表的なマウスのNIR画像。静脈注射(n=3)後の時間の関数としての、腫瘍蛍光強度の定量化(図45D)及びノイズに対する腫瘍コントラストの比(図45E)。5.0mg/kgのより高いPINS用量は、筋肉腫瘍のより高いバックグランドシグナルのため、CNR値の減少をもたらした。図45Eの結果に基づき、2.5mg/kgは、腫瘍アシドーシスイメージングのための最適PINS用量として選択された。
図46】PINSによる腫瘍アシドーシスイメージングを示す。(図46A)FDGを用いるPET、またはPINSを用いるNIR蛍光イメージングによる、腫瘍代謝イメージングの略図。(図46B)大きいまたは小さいHN5同所腫瘍を有するSCIDマウスにおけるFDG−PETとPINSイメージングとの比較。PINSイメージングは、FDG−PETに比べて腫瘍検出の感度及び選択性において劇的に改良された。追加の比較は、図47A〜Eにおいて入手できる(各動物グループについてn=3)。
図47】HN5同所腫瘍を有するマウスにおけるPINSイメージングにおけるFDG−PETとPINSイメージングの比較を示す。大きい腫瘍(200mm図47A)または小さい腫瘍(15mm図47B)を有する同じグループのマウスの、白色光、FDG−PET/CT及びNIR画像。PINSイメージングで、大、小全ての腫瘍に明白な腫瘍境界描写が認められた。大きな腫瘍について、FDG−PETは、腫瘍の周辺で、PINS活性化と両立するより高いシグナルを示した。大きい(図47C)及び小さい(図47D)腫瘍を有する同じグループのマウスの矢状図。(図47E図46A及び46Bに示された大きい及び小さい腫瘍のステッチH&E画像。スケールバー:大きい腫瘍画像で2mm及び小さい腫瘍画像で500μm。
図48】PINSイメージングは広い腫瘍特異性を達成したことを示す。PINSナノプローブ(SPY Elite(登録商標)医療用カメラによるイメージ前の2.5mg/kgの24時間静脈注射)は、異なる腫瘍モデル(頭頸部、胸(乳房)、腹膜転移、腎臓、脳)及び器官部位において広い腫瘍イメージング有効性を示す。
図49】PINSナノプローブと異なる医療用カメラとの適合性を示す。(図49A)医療に用いたICGイメージングシステム:Novadaq SPY Elite(登録商標)、Hamamastu PDE及びLeica FL−800モデル。(図49B)異なる医療用ICGイメージングシステム下で同じ腫瘍を有するマウスの白色光及びNIR画像。
図50】PINS注射後のエクスビボ(ex vivo)器官及び腫瘍蛍光イメージを示す。(図50A)HN5、(図50B)FaDu及び(図50C)HCC4034頭頸部腫瘍、(図50D)NBA−MD−231及び(図50E)乳房腫瘍、及び(図50F)U87グリオーマを有するマウスに、ナノプローブ注射後24時間の蛍光の主な器官のNIR画像及び器官の定量化の筋肉に対する比。データは平均±s.d.(n=3)として示される。肝臓は信号飽和のため計算され得なかった。
図51】同所頭頸部腫瘍を有するマウスの腫瘍アシドーシスガイド手術(TAGS)を示す。(図51A)初期HN5腫瘍の切除及びSPY Elite(登録商標)カメラによる残った腫瘍の検出の成功。目による腫瘍床の視診では、周囲の筋肉組織から残った腫瘍を見分けることができなかった(左頂部)。腫瘍組織(T)及び正常組織(N)は組織構造により確認された。スケールバー=1mm(低倍率)、または100μm(高倍率)。(図51B)予想されたように、減量手術は、未処理対照に対して生存利益をもたらさなかった。TAGSは、白色光及び他の対照グループに対して顕著に改善された長期の生存を示す(****P<0.0001)。対照及び減量グループはn=7;白色光グループはn=15;TAGSグループはn=18。
図52】初期腫瘍、腫瘍境界及び陰性床の組織構造的検証を示す。非生存手術中に集められた試料の各種の5つの代表的H&E組織構造画像。矢印の頭は腫瘍境界試料中におけるがん細胞の存在を示す。スケールバー=1mm(頂部矢印、低倍率)、または100μm(底部矢印、高倍率)。
図53】小さい隠れた乳房腫瘍結節を有するマウスの腫瘍アシドーシスガイド手術を示す。腫瘍病巣(<100万細胞)SPYカメラで見られたが(図53B)、目視検出はされなかった(図53A)。図53C:TAGSの間に切除された小さい乳房腫瘍結節の代表的な組織構造セクション;スケールバー=200μm。図53D:Kaplan−Meier曲線は、白色光及び未処理対照グループに対してTAGSにより顕著に改良された長期生存を示した。対照グループはn=7;白色光及びTAGSグループはn=10;P<0.05。
図54】PINSにより異なる腫瘍アシドーシス経路を狙う小分子阻害剤の評価を示す。図54A:選択された小分子阻害剤の化学構造及び丸括弧内のそれらの対応する標的:アセタゾールアミド(CAIX)、α−シアノ−4−ヒドロキシシナメート、またはCHC(MCT)、カリポリド(NHE1)、及びパントプラゾール(プロトンポンプ)。図54B:PBSまたは他の腫瘍アシドーシス阻害剤の注射後免疫応答性BalB/Cマウスにおいてトリプルネガティブ4T1乳房腫瘍を有するマウスの代表的画像。図54C図54Bで示されたNIR蛍光画像の定量化。蛍光強度はPBS制御に正規化された。アセタゾールアミドによるCAIX阻害剤は腫瘍アシドーシスの最も効率の良い抑制をもたらした。
図55図55A図55Eは健康なC57BL/6マウスにおいて静脈内投与されたPINSの安全性評価を示す。図55A:PBS制御と比較された、200または250mg/kgPINSのボーラス注射後のC57BL/6免疫応答性マウスの体重の正規化変化。図55B〜55E:異なる用量でPINSのボーラス注射後及び選択された時点後に犠牲になったC57BL/6免疫応答性マウスの、肝臓(図55B及び55C)及び腎臓(図55D及び55E)の機能についての血清試験。全グループはn=5。略語:ALT、アラニンアミノトランスフェラーゼ;GOT、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ;BUN、血中尿素窒素;CRE、クレアチニン;点線は、C57BL/6マウスの典型的な野生型平均値を示す。
図56】PINSの安全性評価のための主要な器官の組織構造分析を示す。PINSのボーラス注射(250mg/kg)または注射の繰り返し(25mg/kg、5回注射)後及び選択された時点(各グループn=5)後に犠牲になったC57BL/6免疫応答性マウスからの主な器官の代表的なH&E断面。250mg/kgで、微小脂肪変性が早い時点で(1日目及び7日目)観察されたが、28日目に回復した。脾臓、腎臓及び心臓は異常を示さなかった。繰り返し注射については、主な器官なのいずれにも異常は観察されなかった。
図57】広い生理学的pH範囲に亘って定義された鋭い緩衝能を有するUPSナノ粒子ライブラリーを示す。(図57A)UPSナノ粒子の緩衝効果、及び微調整された疎水性及びpKを有するPEO−b−P(R−r−R)コポリマーの化学構造の略図。各コポリマーの組成は表11に示されている。(図57B)0.4MHClを用いるUPS6.2、UPS5.3及びUPS4.4含有溶液のpH滴定。最大緩衝液pHは各コポリマーの見かけのpKに対応する。クロロキン(CQ、pK=8.3及び10.4)、小分子塩基及びポリエチレンイミン(PEI)を比較のために含んだ。(図57C)UPSライブラリーの各成分の緩衝能(β)を、4.0〜7.4のpH範囲でpH関数としてプロットした。異なるpH値で、UPSナノ粒子は緩衝強度でCQに対して30〜300倍高かった。L.E.及びE.E.は、それぞれ、後期エンドソーム及び早期エンドソームの略語である。
図58】色素−結合(conjugated)ジブロックコポリマーの合成を示す。PR断片は、疎水性とpH転移を微調整するために異なるモル分率の2種のモノマーからのランダムブロックからなる(表10参照)。Cy5色素の構造も示されている。
図59】UPSナノプローブライブラリーのTEM画像を示す。ナノプローブはPBS緩衝液(pH7.4)に溶解され、TEM分析の前にカーボングリッド上で乾燥された。リンタングステン酸は逆染色法に使用された。全ての画像のスケールバー=100nm。
図60】UPSナノプローブライブラリーの各成分のpH滴定を示す。HCl(0.4M)を、10個全てのUPSナノプローブのミセル溶液(2mg/mLポリマー濃度またはアミノ基量に基づく8mM)、クロロキン溶液(2mg/mLまたはアミノ基量に基づく12.5mM)及びPEI(分岐、MW10,000Da、Polyscience, Inc.)溶液(0.3mg/mLまたはアミノ基量に基づく7.3mM)を滴定するために徐々に添加した。pH/導電率計(Mettler Toledo)を、滴下中のpHの変化をモニターするために使用した。
図61】常時オン/オフ−オンのUPSナノ粒子合成及び特性評価を示す。(図61A)及び(図61B)デュアル−レポーターナノ粒子の略図。ミセル状態で、常時オン色素はオン/オフのフルオロフォアの消光剤として機能する。ミセルが解離した時、常時オン及びオン/オフのフルオロフォアは独立して蛍光発光することができる。BODIPY(図61A)及びCy3.5(図61B)のオン/オフ比は、これらの2種の色素と結合したポリマーの比が変化した時に、変化する。60%のBODIPY結合コポリマーと40%のCy3.5結合コポリマーとの重量分率が最後の組み合わせとして選択された。(図61C)pH関数としてのUPS6.2ナノプローブの蛍光シグナル増幅。画像は、グリーン及びイエローフィルタを用いてMaestroインビボイメージングシステム(CRI)で捉えられた。
図62】HeLa細胞におけるエンドサイトーシスオルガネラのpH感受性イメージング及び緩衝化を示す。(図62A)UPS6.2の低用量(100μg/mL)及び高用量(1,000μg/mL)への5分間暴露の後の、指示された時点でのHeLaの代表的共焦点画像。核はHoechstで青に染色した。スケールバー=10μm。(図62B)常時オン/オフ−オンUPS6.2の活性化動力学の定量分析。BODIPYチャンネル(オフ−オン)における斑点の蛍光強度はCy3.5(常時オン)のものに正規化された。(図62C)UPS6.2の指示用量で処理されたHeLa細胞におけるエンド(endo)/リソソームのリアルタイム測定。Lysosensor レシオメトリックイメージングプローブをインビボpH測定に使用した。エラーバーは各時点で50器官からの標準偏差を表す。
図63】HeLa細胞のUPS5.3ナノプローブによるバッファリングエンドサイトーシスオルガネラを示す。(図63A)低用量(100μg/mL)及び高用量(1,000μg/mL)の常時オン(Cy3.5)/オフ−オン(BODIPY)UPS5.3への5分間暴露の後の、指示された時点でのHeLaの共焦点画像。核はHoechstでブルーに染色した。スケールバー=10μm。(図63B)UPS5.3のオフ−オンの活性化プロセスの定量分析。BODIPYチャンネル細胞における斑点の蛍光強度はTMRチャンネルの同じ斑点の蛍光強度に正規化された。(図63C)指示用量の常時オン(Cy3.5)/オフ−オン(BODIPY)UPS5.3へで処理されたHeLa細胞におけるエンド(endo)/リソソームのリアルタイム測定。Lysosensor Yellow/Blue DND160 レシオメトリックイメージングプローブをインビボpH測定に使用した。エラーバーは各時点で50器官からの標準偏差を表す。
図64】エンドサイトーシスオルガネラのpHの緩衝化がそれらの膜タンパク質の動力学に影響を与えることを示す。HeLa細胞は、細胞接種のために1,000μg/mL UPS6.2−Cy5またはUPS4.4−Cy5で5分間処理した。その後これらは、固定前に15分間(図64A)、1時間(図64B)及び2時間(図64C)培養された。免疫蛍光(IF)画像は、初期のエンドソーム(Rab5)またはリソソーム(LAMP2)におけるUPSナノプローブの局在化を示す。スケールバー=10μm及び5μm(差し込み図)。Imarisソフトウェアをz−積層共焦点画像の共局在化を分析するために使用した。Rab5(図64D)及びLAM2(図64E)で共局在化されたUPSの画分、及びLAM2で共局在化されたRab5の画分(図64F)を、マンダーの係数(Mander’s coefficient)、n=10、α=0.05、****p<0.0001、から計算した。2方向ANOVA及びSidakの多重比較試験を、統計的有意性を評価するために行った。
図65】UPSによるエンド(endo)/リソソームのクランピング内腔pHが、アミノ酸−依存性mTORC1活性化を選択的に阻害していることを示している。HeLa細胞はEBSS中で2時間飢えさせ、その後(図65A)UPS6.2/UPS5.3/UPS5.0及び(図65B)UPS4.7/UPS4.4の存在下に指示された時間間隔の間必須アミノ酸(EAA)で刺激した。水と50μMクロロキン(CQ)を対照として使用した。指示されたリンタンパク質を細胞溶解物全体の免疫ブロット法により評価した。(図65C)指示された処理後のGFP−TFEBの細胞核/細胞質分布の定量分析。エラーバーは標準偏差、n=10を表す。(図65D図65Cの代表的画像。スケールバー=10μm。(図65E)mTORC1シグナル経路における遊離アミノ酸に必要なpH転移対アルブミン誘導アミノ酸依存活性化のワーキングモデル。
図66】UPS暴露時のmTORCシグナル定量及びカテプシンB活性を示す。(図66A及び66B)図64A及び64Bにおける総タンパク質レベルにより正規化されたリン酸化S6タンパク質の定量分析。各時点の対照(水)とUPS処理グループとの間の統計学的差異は、2方向ANOVA及びDunnettのマルチプル比較試験により検出した、α=0.05、**p<0.01、****p<0.0001即ち有意ではない(n.s.)。対照とUPS処理グループとの間の統計学的差異は、図66Bにおけるいずれの時点でも有意ではなかった。エラーバーは標準偏差、n=3を示す。(図66C)カテプシンB活性は、指示された処理(n=2)に応じて測定された。「Fed」と他の全てのグループとの間の統計学的差異は1方向ANOVA及びDunnettのマルチプル比較試験により検出した、α=0.05、**p<0.05、即ち有意ではない(n.s.)。
図67】アルブミン依存性mTORC1経路活性化はUPS4.4により阻害される。(図67A)HeLa細胞は2時間栄養物を奪われ、次いで指示されたUPSナノプローブ(1,000μg/ml)の存在下または不在下にBSAの摂取(2%)がなされた。指示されたリンタンパク質の蓄積を全細胞溶解物の免疫ブロット法によりモニターした。(図67B)GFP−タグ付きTFEBの核/細胞質分布を指示された条件に応じてモニターした。(図67C)(図67A)においてその合計タンパク質レベルにより正規化されたリン酸化S6タンパク質の定量分析。エラーバーは標準偏差、n=3を示す。各時点での対照とUPS処理グループは、2方向ANOVA及びDunnettのマルチプル比較試験により検出した、α=0.05、**p<0.01、****p<0.0001即ち有意ではない(n.s.)。(図67D)(図67B)で示された結果におけるTFEBの位置の定量分析(サイトゾル(細胞質ゾル)=0において、核=1において)。エラーバーは標準偏差を表す。スケールバー=10μm。
図68】リソソームpHの選択バッファリングが細胞の代謝産物の貯蔵を調節することを示す。(図68A)系統樹は、合計でタンパク質含有量に正規化された、いっぱいの(供給された)栄養物または奪われた(欠乏した)培地において指示された代謝産物の相対存在量を示す。細胞は、指示された用量にてUPS4.4で処理された。(図68B)十分な栄養物及び奪われた栄養物の条件下で選択されたアミノ酸の正規化存在量。エラーバーは標準偏差、n=6を表す。(図68C)細胞代謝産物の貯蔵のバランスに基づき、環境及びリソソームpHの結果を示す略図。
図69】UPSナノ粒子がリソソームのストレスに感受性のあるNSCLC細胞を選択的に殺すことを示す。(図69A)使用される細胞モデル及びそれらのリソソームの成熟に対する対応する脆弱性の略図。(図69B)有効量のUPS(UPS6.2及びUPS5.3=400μg/ml、UPS4.4=1,000μg/ml)に暴露するまたはしないHBEC30KT及びHCC4017細胞の相対生存能力を示すDIC画像。スケールバー=100μm。(図69C〜69E)HBEC30KT、HBEC30KT KP、HBEC30KT KPL及びHCC4017細胞におけるカスパーゼ3/7活性が、指示用量のUPSに暴露された後72時間で測定された。2方向ANOVA及びSidakの多重比較試験が、HBEC30KTとHCC4017とHBEC30KT KとHBEC30KT KPLとの間の観察される差異の統計的有意性を評価するために、行われた、α=0.05、**p<0.01、****p<0.0001。(図69F及び69G)HCC4017(図69F)及びHBEC30 KT KPL(図69G)を1000μg/mLのUPS6.2に、指示濃度のピルビン酸メチル(MP)、ジメチル−2−オキソグルタレート(MOG)、または水(破線)と共に、72時間暴露後細胞ATPのレベルが測定された。値は、処理無しの(UPS無し)対照に正規化された。エラーバーは標準偏差を示し、n=4。
図70】I−UPS6.9ナノプローブを示す。(図70A)ICG−結合ブロックコポリマー、PEG−b−P(C7A−r―ICG)。(図70B)pH−感受性オフ/オン活性化を示すSPY Elite(登録商標)手術用カメラによるI−UPS6.9の近IR画像。(図70C)pHの関数としての正規化蛍光強度が、より少し低いpH転移及びより鋭い応答をもたらすより長いPC7Aセグメントを示す。(図70D)プローブ濃度及びpHの関数としての蛍光強度の3Dプロット。図70B〜70Dのデータは、20%血清含有溶液において得られた。
図71】キレート剤結合ポリマー、CB−TE2A−PEG−PC7A、の提案された合成ルートを示す。
図72】FDG−PET及びI−UPSにより画像化された同所性NH5腫瘍を有するマウスを示す。マウスは矢印位置で画像化され、FDG−PET画像において褐色脂肪または首の筋肉(矢印)から擬陽性を示した。
図73】異なる腫瘍モデル(頭頸部、乳房、結腸直腸の腹膜転移、腎臓、脳)の広いがん特異性を有するI−UPSによる腫瘍アシドーシスイメージングを示す。黄色矢じりは腫瘍の位置を指示する。I−UPS6.9(2.5mg/kg)を、SPYカメラによるイメージングの24時間前に、i.v.(静脈)に注射した
図74】(図74A)同所性4T1乳房腫瘍のI−UPS6.9−ガイド切除を示す。腫瘍巣(<百万細胞)はSPYカメラで見えるが(右パネル)、視覚的検出では見えない(右パネル右)。(図74B)Kaplan−Meier曲線は、白色光(P<0.05)及び未処理対照グループ(P<0.01)に対して、I−UPS6.9−ガイド切除が改善された長期間生存を有することを示している。
図75】常時−オン/オフ−オン・デュアルレポーターシグナルを有するUPSナノプローブを示す。UPS6.9はサンプルとして使用し、BODIPY/CY3.5をFRET供与体/受容体として使用する。
図76】微調整pH転移を有するUPSナノプローブを示す。(図76A)PRブロックにDPA−MA及びDEA−MAサブユニットのモル分率を変化させたPEG−b−PRコポリマーの合成スキームを示す。(図76B)異なるPR組成に対するUPSナノプローブのpH応答。Cy5.5をモデル色素として使用した。(図76C)DPAのモル%の関数としての転移pHは、予め定められたpH転移を有するUPSの合理的デザインのための標準カーブを確立する。
図77】がん細胞のpH調節機構を示す。プロトンポンピングは、微環境における腫瘍アシドーシスをもたらし、並びに細胞内pHを細胞の増殖及び移動が促進するように向上させる(Neri & Supuran,2011)。
図78】UPS6.9ナノプローブはA549肺腫瘍における腫瘍pHを具体的に画像化することができることを示している。(図78A)好気的解糖はがん細胞中のグルコースをラクテート(乳酸塩)に変換する。2−DG及びCHCは、それぞれ、グルコース摂取及び乳酸分泌のための代謝阻害剤である。(図78B)A549細胞において乳酸分泌の速度に対する2−DGまたはCHCの効果。(図78C)6時間培養後の、2−DG及びCHCの存在下のA549細胞培地の酸性化。ビヒクル(vehicle)グループに比較して、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。(図78D)UPS6.9(10mg/kg)の注射後24時間でのA549腫瘍を有するマウスの重ね撮り蛍光画像。対照グループにおいて、2−DG(250mg/kg)またはCHC(250mg/kg)をUPS6.9の投与の12時間前に注射した。Cy5.5(光点)及び自己蛍光(背景光)を複合画像に示す。(図78E)UPS6.9の注射後の時間の関数としての腫瘍と正常組織との間のNIR蛍光強度比(T/N比)。データは、平均±s.d.(n=4)。
図79】同所性4T1乳房腫瘍のI−UPSイメージングを示す。腫瘍巣(<百万細胞)をSPYカメラ下で見ることができるが(ヒートモード、図79B)、視覚的検出では見えない(図79A)。腫瘍の存在は、組織構造により確認された(図79C)。スケールバーは図79Cにおいて200μmである。
図80】FDG−PET及びI−UPSにより画像化された同所性HN5腫瘍を有するマウスを示す。マウスは、FDG−PET画像における首(3マウスからの2マウス)の褐色脂肪組織の擬陽性を示すため、矢状位置で画像化された。
図81】80のヒト非小細胞肺がん細胞のパネルからグルコース消費及びラクテート分泌の速度を示す。これらの肺がん細胞は、Lacout/Gluinの比により表されるような異なる解糖速度を示す。
図82】BODIPY及びCy3.5シグナルを定量化し、組織構造により描かれた真の腫瘍境界と相関する概略図を示す。腫瘍標的点に垂直の線に沿った蛍光強度が測定される。平均強度対距離は、腫瘍境界に沿った多数の接点から決定される。
図83】匹敵するサイズを有するがpH転移が異なる2つのUPSナノプローブのPK/BDの比較を示す。
図84】マルチ−スペクトルハイブリッドUPSナノプローブの略図及び動作原理を示す。図84A:マルチ−スペクトルハイブリッドUPSナノプローブは、それぞれ異なる蛍光色素でコードされた3種のPEG−b−PRブロックコポリマーにより操作される。ハイブリッドUPSナノプローブは、中性pHで「オフ」に留まる。pHが低い場合、PEG−b−(PR−r−色素)成分は分解し、微妙なpH変化に合うと異なる色を連続的に示す蛍光を発する。図84B:PEG−b−PRブロックコポリマー及び蛍光色素結合ポリマーの化学構造。図84C:受容体を介したエンドサイトーシス(例えば、内皮成長因子受容体(EGFR))を介しての生細胞内のマルチ−スペクトルハイブリッドUPSナノプローブの内在化及び活性化。内在化後、PEPA−BDY493はクラスリン被覆小胞によりオンに変えられ(CCV、pH約6.8)、その後PEPA−TMRは初期エンドソームにより活性化され(pH約6.0)、最後にPDBA−Cy5は後期エンドソーム/リソソームによりオンに変えられる(pH約5.0〜5.5)。
図85】(図85A)pH−依存性蛍光発光スペクトル及び(図85B)0.1MのPBS溶液のpHの関数としてのPEPA−BDY493の蛍光強度比。サンプルは488nmで励起され、発光スペクトルは500〜650nmで集められる。ポリマー濃度は0.1mg/mLに制御される。
図86】(図86A)pH−依存性蛍光発光スペクトル及び(図86B)0.1MPBS溶液の関数としてのPDPA−TMRの蛍光強度比を示す。サンプルは545nmで励起され、発光スペクトルは560〜750nmで集められる。ポリマー濃度は0.1mg/mLに制御される。
図87】(図87A)pH−依存性蛍光発光スペクトル及び(図87B)0.1MPBS溶液の関数としてのPDBA−Cy5の蛍光強度比を示す。サンプルは640nmで励起され、発光スペクトルは650〜750nmで集められる。ポリマー濃度は0.1mg/mLに制御される。
図88】PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5ミセルのpHの関数としての正規化蛍光強度を示す。ポリマー濃度は100μg/mLであった。
図89】分子的に混合されたミセル及びミセル混合物の蛍光特性評価を示す。(図89A)pH7.4で1:19のモル比を有するPDBA−Cy5及びPEG−b−(PR−r−AMA)の分子的に混合されたミセルの蛍光強度。(図89B)pH7.4で1:19のモル比を有するPDBA−Cy5ミセル及びPEG−b−(PR−r−AMA)ミセルのミセル混合物の蛍光強度。
図90】蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)実験が、マルチ−スペクトルハイブリッドUPSナノプローブの形成を実証していることを示す。PEG−b−PRブロックコポリマーは異なる色素でコードされる。PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5を含む、3つの例のPEG−b−(PR−r−色素)ブロックコポリマーは、色素/ポリマー比(1:1)で合成され、ホモFRET効果を最小化する。図90A:PEPA−BDY493、PDPA−TMR、PEPA−BDY493/PDPA−TMR(1:1)ミセル、及びPEPA−BDY493とPDPA−TMRとのミセル混合物は、485nmで励起され、その後発光スペクトルは490〜720nmで集められた。PEPA−BDY493からPDPA−TMRへの強いFRET効果が観察され、PEPA/PDPAハイブリッドナノ粒子の形成を示す。図90B:PDPA−TMRからPDBA−Cy5への強いFRET効果が観察され、PDPA/PDBAハイブリッドナノ粒子の形成を示す。図90C:PEPA−BDY493からPDBA−Cy5への強いFRET効果が観察され、PEPA/PDBAハイブリッドナノ粒子の形成を示す。図90D:BDY493からTMRへ、最終的Cy5への強いFRET効果が観察され、PEPA/PDPA/PDBAハイブリッドナノ粒子の形成を示す。
図91】PEPA−BDY493(1)、PDPA−TMR(2)、PDBA−Cy5(3)及びスリーインワン・ハイブリッドナノプローブ(4)を含む色素−結合ポリマーミセルの代表例を示す。
図92】ハイブリッドナノプローブのインビボ特性評価を示す。(図92A〜92D)異なるpH緩衝液におけるハイブリッドナノプローブの蛍光スペクトル。BDY493、TMR、及びCy5のシグナルは、それぞれ485、545、及び640nmで励起される。BDY493、TMR、及びCy5の発光スペクトルは、それぞれ490−750nm、560−750nm、及び650−750nmで集められる。(図92E)ハイブリッドナノプローブの計数率及び正規化蛍光強度は時間の関数としてプロットされる。異なるpHでの計数率は、ダイナミック光散乱分析により決定される。マルチ−スペクトルハイブリッドUPSナノプローブのマルチ−ステージ活性化は、異なるpH範囲で、グリーン、レッド、及びブルーの色のS字形曲線によって示される。(図92F)異なるpH範囲でのマルチ−スペクトルUPSナノプローブの代表的蛍光画像が捉えられる。イエローは、グリーンとレッドのシグナルの合併色である。ホワイトはブルー、グリーン及びレッドのシグナルの合併色である。
図93図93A−93Fは、ハイブリッドナノプローブのpH−依存性蛍光発光スペクトルを示す。BDY493、TMR、及びCy5シグナルは、それぞれ485nm、545nm、及び640nmで励起された。対応する発光スペクトルは、それぞれ490−750nm、560−750nm、及び650−750nmで集められた。
図94】pHの関数としての、ハイブリッドUPSナノプローブのPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5成分の正規化蛍光強度を示す。
図95】異なるpH溶液における、ハイブリッドナノプローブのモルホロジー(形態)及び粒径の(図95A)TEM及び(図95B)DLS分析を示す。スケールバーはTEM画像において100nmである。
図96】A549細胞におけるエルビタックス(Erbitux)−結合PDPA−TMRナノプローブの特定の蛍光活性化を示す。細胞をエルビタックス−結合PDPA−TMRミセル(上側)またはPDPA−TMRミセル(下側)で、それぞれ1時間処理した。スケールバーは40μmである。
図97】A549ヒト肺がん細胞の単一エンドサイトーシスオルガネラにおけるエルビタックス(Erbitux)−コードしたUPSナノプローブの同期摂取を示す。腫瘍細胞をナノプローブで3時間処理し、次いで共焦点イメージングを行った。スケールバーは40μmである。
図98】肺がんA549細胞において、多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重化イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図99】頭頸部がんHN5細胞において、多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重化イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図100】KRAS遺伝子突然変異を有するヒト肺がんH460細胞株における、多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重化イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図101】KRAS遺伝子突然変異を有するヒト肺がんA549細胞株における、多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重化イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図102】P53遺伝子突然変異を有するヒト肺がんH2882細胞株における、多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重化イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図103】肺がん細胞株のパネルにおいてオルガネラ成熟を示す。初期エンドソーム(図103A)及び後期エンドソーム/リソソーム(図103B)の成熟速度の定量化は、Kras突然変異が表現型差異に起因することを特定する。30分での初期エンドソーム(EE)のPDPA−TMR(I6.2)の蛍光強度はPEPA−BDY493シグナル(I6.9)により正規化される。75分での後期エンドソーム/リソソーム(LE/Lys)におけるPDBA−Cy5(I5.3)の蛍光強度はPEPA−BDY493シグナル(I6.9)により正規化される。KRAS変異細胞株とKras野生型細胞株との顕著な差異は、Kras突然変異が後期エンドソーム/リソソーム成熟に起因することを示している。**P<0.01、対の、両側の、t−試験;n=10。
図104】肺がん細胞株のパネルにおけるオルガネラ成熟を示す。初期エンドソーム(図104A)及び後期エンドソーム/リソソーム(図104B)の成熟速度の定量化は、Kras突然変異が表現型差異に起因することを特定する。図104C:30分での初期エンドソーム(EE)のPDPA−TMR(I6.2)の蛍光強度はPEPA−BDY493シグナル(I6.9)により正規化される。図104D:75分での後期エンドソーム/リソソーム(LE/Lys)におけるPDBA−Cy5(I5.3)の蛍光強度はPEPA−BDY493シグナル(I6.9)により正規化される。K−ras変異細胞株とK−ras野生型細胞株との顕著な差異は、KRAS突然変異が後期エンドソーム/リソソーム成熟に起因することを示している。**P<0.01、対の、両側の、t−試験;n=10。
図105】生体細胞におけるマルチ−スペクトルハイブリッドUPSナノプローブを用いるエンドサイトーシスの間のオルガネラ成熟のマルチステージpHイメージングを示す。HBEC30上皮細胞(図105A)及び遺伝子同質のHCC4017肺がん細胞(図105B)は、100μg/mLのエルビタックス(Erbitux)−結合ハイブリッドUPSナノプローブで4℃、30分間培養され、洗浄され、そして共焦点顕微鏡を用いて37℃でリアルタイムで画像化される。PEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5シグナルは、それぞれ488、543、及び637nmで励起される。FITC(515/30BP)、TRITC(590/75BP)、及びCy5(650LP)フィルタは、それぞれ、PEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5画像キャプチャーに使用される。BDY493、TMR、及びCy5は、それぞれ、グリーン、レッド及びブルーの色である。スケールバーは20μmである。
図106】HBEC30KTヒト上皮細胞の多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図107】ヒト遺伝子同質のHCC4017ヒト肺がん細胞の多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図108】HBEC30KT−shTP53細胞の多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図109】HBEC30KT−shTP53/KRASG12V細胞の多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図110】HBEC30KT−shTP53/KRASG12V/shLKB1細胞の多色ハイブリッドナノプローブによるエンドソーム成熟の多重イメージングを示す。スケールバーは20μmである。
図111】同質遺伝子進行シリーズ(isogenic progression series)のHBEC30細胞の経時的オルガネラ成熟を示す。初期エンドソーム(図111A)及び後期エンドソーム/リソソーム(図111B)の成熟速度の定量化は、Kras突然変異が表現型差異に起因することを特定する。図111C:30分での初期エンドソーム(EE)のPDPA−TMR(I6.2)の蛍光強度は、PEPA−BDY493シグナル(I6.9)により正規化された。HBEC30KT−shTP53及びHBEC30KT−shTP53/KRASG12V細胞との顕著な差異は、Kras突然変異が早期エンドソーム成熟に起因することを示している。**P<0.01、対の、両側の、t−試験;n=10。図111D:150分での後期エンドソーム/リソソーム(LE/Lys)におけるPDBA−Cy5(I5.3)の蛍光強度は、PEPA−BDY493シグナル(I6.9)により正規化された。HBEC30KT−shTP53とHBEC30KT−shTP53/KRASG12Vとの顕著な差異は、Kras突然変異が後期エンドソーム/リソソーム成熟に起因することを示している。**P<0.01、対の、両側の、t−試験;n=10。
図112】常時オン/オフ−オンUPSナノ粒子の合成と特性評価を示す。(図112A)及び(図112B)デュアル−レポーターナノ粒子の略図。ミセル状態で、常時オン色素は、オン/オフ・フルオロフォアの消光剤として機能する。ミセルが解離すると、常時−オン及びオン/オフ・フルオロフォアが独立して蛍光を発する。BODIPY(図112A)及びCy3.5(図112B)のオン/オフ比は、これらの2種の色素と結合したポリマーの比が変化した時に、変化する。60%のBODIPY−結合コポリマーと40%のCy3.5結合コポリマーとの重量分率が最終的な組み合わせとして選択された。(図112C)pH関数としてのUPS6.2ナノプローブの蛍光シグナル増幅。画像は、グリーン及びイエローフィルタを用いてMaestroインビボイメージングシステム(CRI)で捉えられた。
図113】トリブロックコポイマーPEO−b−P(DEA−b−D5A)、PEO−b−P(D5A40−b−DEA40)及びランダムブロックコポリマーPEO−b−P(DEA−r−D5A)の化学構造を示す(図113A)。第3級アミノ基のモル分率の関数としての、PEO−b−P(D5A40−b−DEA40)、PEO−b−P(DEA40−b−D5A40)及びPEO−b−P(D5A40−r−DEA40)コポリマーのpH滴定曲線(図113B)。
図114】分子的に混合されたミセル及びミセル混合物の蛍光特性評価を示す。(図114A)pH7.4で1:19のモル比を有するPEPA−Cy5及びPEG−b−(PR−r−AMA)の分子的に混合されたミセルの蛍光強度。(図114B)pH7.4で1:19のモル比を有するPEPA−Cy5ミセル及びPEG−b−(PR−r−AMA)ミセルのミセル混合物の蛍光強度。
【発明を実施するための形態】
【0077】
いくつかの態様において、本開示は、特定のpH転移より上に装うpH応答性ナノ粒子を形成することができるポリマーを提供する。いくつかの実施形態では、これらのポリマーは、0.25pH単位より小さい所望のpH転移点(ΔPH10−90%)に特別に合わせるようにすることができ、並びに約pH4〜約pH8のpH転移点の範囲のpHプローブに発展させることができる、異なったモノマーの混合物を含む。pH転移点が広い範囲であることは、広範囲な応用・利用を可能にし、その応用・利用として、小胞輸送、腫瘍のpHのイメージング、特定の組織への医薬化合物の送達、腫瘍を可視化して腫瘍組織を切除する外科医の能力の向上、或いはエンドソーム/リソソームの成熟または成長の検討が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様では、本開示は、前述のように、これらのポリマーをpH応答性システムにさらなる方法を提供する。本開示のポリマー及び得られるpH応答性システムを使用する付加的方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2013/152059に記載されている。
【0078】
A.化学的定義
化学基に関連して使用する際:「水素」は−Hを意味し;「ヒドロキシ」は−OHを意味し;「カルボキシ」は−C(=O)OH(−COOHまたはCOHとも記載);「ハロゲン」は、独立して−F、−Cl、−BrまたはIを意味し;「アミノ」は−NHを意味し;「ニトロ」は−NOを意味し;「シアノ」は−CNを意味し;1価に関連する「ホスフェート」は−OP(O)(OH)またはその脱プロトン化体を意味し;2価に関連する 「ホスフェート」は−OP(O)(OH)O−またはその脱プロトン化体を意味し;「メルカプト」は−SHを意味し:「チオ」は=Sを意味し:「スルホニル」は−S(O)−を意味し:「スルフィニル」は−S(O)−を意味する。
【0079】
化学式に関連して、記号「−」は単結合を表し;「=」は2重結合を表し;「≡」は3重結合を表す。記号
【0080】
【化35】
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は、任意の結合で、存在する場合は単結合または2重結合である。記号
【0081】
【化36】
[この文献は図面を表示できません]
は単結合または2重結合である。従って、。式
【0082】
【化37】
[この文献は図面を表示できません]
は、
【0083】
【化38】
[この文献は図面を表示できません]

を包含する。そして、このような環の原子は一つも2重結合を超える部分を形成しないと理解される。さらに、共有結合の記号「−」は、1または2個の立体的原子に結合した場合、好ましい立体化学を示すものではない。むしろ、それは全ての立体異性体及びその混合物を含むものである。記号
【0084】
【化39】
[この文献は図面を表示できません]
は、結合にわたって垂直にひかれた場合(例えば、メチル等の
【0085】
【化40】
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その基に結合する点を示すものである。結合点を一義的に特定できるように読者を助けるために、この結合点は一般により大きな基に対してのみこのように特定されることが知られている。記号
【0086】
【化41】
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は、くさび状の厚い端部に結合した基が「頁から外側に」ある場合の単結合を意味する。記号
【0087】
【化42】
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は、くさび状の厚い端部に結合した基が「頁の中側に」ある場合の単結合を意味する。記号
【0088】
【化43】
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は、2重結合の周囲の形状(例、EまたはZ)が定義されていない場合の単結合を意味する。このため、両方の選択肢、並びにその組み合わせが意図されている。この出願で示される構造の原子への定義されていない原子価はいずれもその原子に結合した水素原子を暗に表す。炭素原子上の太い点は、その炭素に結合した水素は紙の平面から傾斜していることを示している。
【0089】
基「R」は環系の「浮遊基」として、例えば
【0090】
【化44】
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で表現される場合、安定な構造が形成される限りにおいて、Rは環原子のいずれかと結合した水素原子と置き換わっても良く、描かれた、暗示された、または明確に定義された水素を包含する。基「R」は、縮合環系の「浮遊基」として、例えば
【0091】
【化45】
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として表現される場合、特に断らない限り、Rは縮合環のどちらかの環原子のいずれかと結合した水素原子と置き換わっても良い。置き換わることができる水素としては、描かれた水素(例、上式の窒素と結合した水素)、暗示された水素(例、示されていないが存在すると理解される上式の水素)、明確に定義された水素、及び、安定な構造が形成される限りにおいて、その存在が環原子との同一性に依存している任意の水素(例、基Xが−CH−の場合、Xに結合した水素)が挙げられる。描かれた例において、Rは、縮合環系の5員環または6員環のいずれかに存在しても良い。上式において、括弧内に包含される基「R」直後の下付き文字「y」は、可変数値を表す。特に規定が無い限り、この可変数値は0、1、2、または2より大きい全ての整数であることができるが、環または環システムの置換可能な水素原子の最大数にのみ限定される。
【0092】
以下の基及びクラスについて、以下の括弧内下付き文字は以下のように基/クラスを定義する:「Cn」は、基/クラスの炭素原子の正確な数(n)を定義する。「C≦n」は基/クラスで存在し得る炭素原子の最大数(n)を定義し、且つその最小数は問題の基について可能な限り小さいものであり、例えば、基「アルケニル(C≦8)」またはクラス「アルケエン(C≦8)」の炭素原子の最小数は2である。例えば、「アルコキシ(C≦10)」は、1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基を指定する。「Cn−n’」は、その基において、最小(n)及び最大(n’)の炭素原子の両方を定義する。同様に、「アルキル(C2−10)」は2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を指定する。
【0093】
本明細書で使用される用語「飽和した」は、そのように修飾された化合物または基は、炭素−炭素2重結合を持たず、また炭素−炭素3重結合を持たないが、以下のものは除く。飽和基の置換形態において、1個以上の炭素酸素2重結合または1個以上の炭素窒素2重結合は存在しても良い。そして、このような結合が存在する場合、ケト−エノール互変異性またはイミン/エナミン互変異性の一部として現れても良い炭素酸素2重結合は除外されない。
【0094】
「置換(された)」の修飾語句無しに使用された場合の用語「脂肪族」は、そのように修飾された化合物または基は、非環状または環状であるが、非芳香族炭化水素化合物または基であることを意味する。脂肪族化合物/基では、炭素原子は、直鎖、分岐鎖また非芳香族環(脂環式)で一緒に結合することができる。脂肪族化合物/基は飽和されていても良く、即ち単結合(アルカン/アルキル)で結合していても良く、或いは、1個以上の2重結合(アルケン/アルケニル)で、または1個以上の3重結合(アルキン/アルキニル)で不飽和化されていても良い。
【0095】
「置換(された)」の修飾語句無しに使用された場合の用語「アルキル」は、結合点として炭素原子を有し、直鎖または分岐の非環式構造を有し、そして炭素及び水素以外の原子を持たない1価の飽和の脂肪族基を指す。基−CH(Me)、−CHCH(Et)、−CHCHCH(n−Prまたはプロピル)、−CH(CH(i−Pr、Prまたはイソプロピル)、−CHCHCHCH(n−Bu)、−CH(CH)CHCH(sec−ブチル)、−CHCH(CH(イソブチル)、−C(CH(tert−ブチル、t−ブチル、t−BuまたはBu)、及び−CHC(CH(neo−ペンチル)が、アルキル基の非限定的例である。「置換(された)」の修飾語句無しに使用された場合の用語「アルカンジイル」は、結合点として1個または2個の飽和炭素原子を有し、直鎖または分岐の非環式構造を有し、炭素炭素2重結合または3重結合を持たず、そして炭素及び水素以外の原子を持たない2価の飽和の脂肪族基を指す。基、−CH−(メチレン)、−CHCH−、−CHC(CHCH−及び−CHCHCH−が、アルンジイル基の非限定的例である。「置換された」の修飾語句無しに使用された場合の用語「アルカンジエン」は、2価の基=CRR’(但し、R及びR’は独立して水素またはアルキルを表す)を指す。アルカンジエンの非限定的例としては、=CH、=CH(CHCH)、及び=C(CHを挙げることができる。「アルカン」は、化合物H−R(Rは上記定義されたアルキルである)を指す。これらの用語のいずれかが「置換(された)」の修飾語と共に使用された場合、1個以上の水素原子は独立して、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−NH、−NO、−COH、−COCH、−CN、−SH、−OCH、−OCHCH、−C(O)CH、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−C(O)NH、−OC(O)CH、または−S(O)NHによって置換されている。下記の基が置換アルキル基の非限定的例である:−CHOH、−CHCl、−CF、−CHCN、−CHC(O)OH、−CHC(O)OCH、−CHC(O)NH、−CHC(O)CH、−CHOCH、−CHOC(O)CH、−CHNH、−CHN(CH、及び−CHCHCl。用語「ハロアルキル」は、置換アルキルの一部であり、1個以上の水素がハロゲン基で置換されており、炭素、水素及びハロゲンを除いて他の原子は存在しない。基−CHClはハロアルキルの非限定的例である。用語「フルオロアルキル」は、置換アルキルの一部であり、1個以上の水素がフルオロ基で置換されており、炭素、水素及びフッ素を除いて他の原子は存在しない。基は、−CHF、−CF、及び−CHCFはフルオロアルキル基の非限定的例である。
【0096】
「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「シクロアルキル」は、結合点としての炭素原子を有し、直鎖または分岐のシクロまたは環状の構造を有し、炭素炭素2重結合または3重結合は無く、そして炭素及び水素以外の原子は持たない1価の飽和脂肪族基を指す。本明細書で使用されているように、シクロアルキル基は、結合点が環系である限り、環系に結合する1個以上の分岐アルキル基(炭素数制限が許すなら)を含んでも良い。シクロアルキルの非限定的例として:−CH(CH(シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルが挙げられる。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「シクロアルカンジイル」は、結合点としての1個または2個の炭素原子を有し、直鎖または分岐のシクロまたは環状の構造を有し、炭素炭素2重結合または3重結合は無く、そして炭素及び水素以外の原子は持たない2価の飽和脂肪族基を指す。
【0097】
【化46】
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は、アルカンジイルの非限定的例である。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「シクロアルキリデン」は、2価の基=CRR’(但し、R及びR’は一緒になって少なくとも2個の炭素を有するシクロアルカンジイル基を形成する)を指す。アルキリデン基の非限定的例としては:=C(CH及び=C(CHが挙げられる。「シクロアルカン」は化合物H−R(但し、Rは、シクロアルキルであり、この用語は上記で定義されている)を指す。これらの用語のいずれかが「置換(された)」の修飾語と共に使用された場合、1個以上の水素原子は独立して、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−NH、−NO、−COH、−COCH、−CN、−SH、−OCH、−OCHCH、−C(O)CH、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−C(O)NH、−OC(O)CH、または−S(O)NHによって置換されている。下記の基が置換シクロアルキル基の非限定的例:−C(OH)(CH
【0098】
【化47】
[この文献は図面を表示できません]

である。
【0099】
「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アリール」は、結合点としての芳香族炭素原子を有し、この炭素原子は1個以上の6員芳香族環構造の一部を形成し、且つその環の原子は全て炭素であり、且つ当該基は炭素及び水素以外の原子は持たない、1価の不飽和芳香族基を指す。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくても良い。本明細書で使用されるように、この用語は、第1の芳香環または存在する付加的な芳香環に結合する1個以上のアルキルまたはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を除外しない。アリール基の非限定的例として、フェニル(Ph)、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、−CCHCH(エチルフェニル)、ナフチル、及びビフェニルから誘導される1価の基が挙げられる。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アレーンジイル」は、結合点としての2個の芳香族炭素原子を有し、この炭素原子は1個以上の6員芳香族環構造の一部を形成し、且つその環の原子は全て炭素であり、且つこの1価の基は炭素及び水素以外の原子は持たない、2価の不飽和芳香族基を指す。本明細書で使用されているように、用語は、第1の芳香環または存在する付加的な芳香環に結合する1個以上のアルキル、アリール、またはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を排除しない。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくても良い。非縮合環は、1個以上の下記のもの:共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数制限が許すなら)を介して結合されていても良い。アレーンジイル基の非限定的例として:
【0100】
【化48】
[この文献は図面を表示できません]

が挙げられる。「アレーン」は、化合物H−R(但し、Rは、この基として上記で定義されたアリールである)を指す。ベンゼン及びトルエンはアレーンの非限定的例である。これらの用語のいずれかが「置換(された)」の修飾語と共に使用された場合、1個以上の水素原子は独立して、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−NH、−NO、−COH、−COCH、−CN、−SH、−OCH、−OCHCH、−C(O)CH、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−C(O)NH、−OC(O)CH、またはS(O)NHによって置換されている。
【0101】
「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「ヘテロアリール」は、結合点としての芳香族炭素原子または窒素原子を有し、この炭素原子または窒素原子は1個以上の芳香族環構造の一部を形成し、且つその環の原子の少なくとも1つは窒素、酸素またはイオウであり、且つ当該ヘテロアリール基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素及び芳香族イオウ以外の原子からならない、1価の芳香族基を指す。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくても良い。本明細書で使用されているように、用語は、芳香環または芳香環系に結合する1個以上のアルキル、アリール、及び/またはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を排除しない。ヘテロアリール基の非限定的例としては、フラニル、イミダゾリル、イドリル、インダゾリル(Im)、イソオキサゾリル、メチルピリジニル、オキサゾリル、フェニルピリジニル、ピリジニル、ピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、及びトリアゾリルが挙げられる。用語「N−ヘテロアリール」は、結合点として窒素を有するヘテロアリール基を指す。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「ヘテロアレーンジイル」は、2個の結合点としての、2個の芳香族炭素原子、2個の芳香族窒素、または1個の芳香族炭素原子及び1個の芳香族窒素原子を有し、この原子は1個以上の芳香族環構造の一部を形成し、且つその環の原子の少なくとも1つは窒素、酸素またはイオウであり、且つ当該2価の基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素及び芳香族イオウ以外の原子からならない、2価の芳香族基を指す。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくても良い。非縮合環は、1個以上の下記のもの:共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数制限が許すなら)を介して結合されていても良い。本明細書で使用されているように、用語は、芳香環または芳香環系に結合する1個以上のアルキル、アリール、及び/またはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を排除しない。ヘテロアレーンジイル基の非限定的例として:
【0102】
【化49】
[この文献は図面を表示できません]

が挙げられる。「ヘテロアレーン」は、化合物H−R(但し、Rはヘテロアリールである)を指す。ピリジンとキノリンはヘテロアレーンの非限定的例である。「置換された」の修飾語と共に使用される場合のこれらの用語「ヘテロアレーンジイル」は、1個以上の水素原子は独立して、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−NH、−NO、−COH、−COCH、−CN、−SH、−OCH、−OCHCH、−C(O)CH、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−C(O)NH、−OC(O)CH、またはS(O)NHによって置換されている。
【0103】
「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アシル」は、基−C(O)R(但し、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロアリールであり、これらは上記で定義されている。)を指す。基、−CHO、−C(O)CH(アセチル、Ac)、−C(O)CHCH、−C(O)CHCHCH、−C(O)CH(CH、−C(O)CH(CH、−C(O)C、−C(O)CCH、−C(O)CH、−C(O)(イミダゾリル)は、アシル基の非限定的例である。「チオアシル」は、−C(O)Rの酸素原子が−C(S)Rのイオウ原子に代わった以外、同様に定義される。用語「アルデヒド」は、上記で定義されたアルカンに対応し、アルカンにおいて、少なくとも1個の水素原子が−CHO基と置換されている。これらの用語のいずれかが「置換(された)」の修飾語と共に使用される場合、1個以上の水素原子(もしあれば、カルボニルまたはチオカルボニル基に直接結合した水素を含む)は、独立して、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−NH、−NO、−COH、−COCH、−CN、−SH、−OCH、−OCHCH、−C(O)CH、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−C(O)NH、−OC(O)CH、またはS(O)NHによって置換されている。基、−C(O)CHCF、−COH(カルボキシル)、−COCH(メチルカルボキシル)、−COCHCH、−C(O)NH(カルバモイル)、及び−CON(CHは、置換アシル基の非限定的例である。
【0104】
「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アルコキシ」は、基−OR(但し、Rは、アルキルであり、この用語は上記で定義されている)を指す。アルコキシ基の非限定的例として:−OCH(メトキシ)、−OCHCH(エトキシ)、−OCHCHCH、−OCH(CH(イソプロポキシ)及び−OC(CH(tert−ブトキシ)が挙げられる。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「シクロアルコキシ」、「アルケニルオキシ」、「シクロアルケニルオキシ」、「アルキニルオキシ」、「アリールオキシ」、「アラルコキシ」、「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、及び「アシルオキシ」は、−OR(但し、Rが、それぞれ、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル及びアシルである)で定義される基を指す。用語「アルコキシジイル」は、−O−アルカンジイル−、−O−アルカンジイル−O−、またはアルカンジイル−O−アルカンジイル−の2価の基を指す。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アルキルチオ」、「シクロアルキルチオ」、及び「アシルチオ」は、基−SR(但し、Rは、それぞれ、アルキル、シクロアルキル、及びアシルである)を指す。用語「アルコール」は上で定義されたアルカンに対応し、その際、水素原子の少なくとも1個がヒドロキシ基と置換されている。用語「エーテル」は上記で定義されたアルカンに対応し、その際、水素原子の少なくとも1個がアルコキシまたはシクロアルコキシ基と置換されている。これらの用語のいずれかを「置換(された)」の修飾語と共に使用された場合、1個以上の水素原子は、独立して、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−NH、−NO、−COH、−COCH、−CN、−SH、−OCH、−OCHCH、−C(O)CH、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−C(O)NH、−OC(O)CH、またはS(O)NHによって置換されている。
【0105】
「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アルキルアミノ」は、基−NHR(但し、Rはアルキルであり、この用語は上記で定義されている)を指す。アルキルアミノ基の非限定的例として:−NHCH及び−NHCHCHが挙げられる。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「ジアルキルアミノ」は、基−NRR’(但し、R及びR’は、それぞれ独立して、同一または異なるアルキル基であり、或いはR及びR’は、一緒になってアルカンジイルを表すことができる)を指す。ジアルキルアミノ基の非限定的例として:−N(CH、−N(CH)(CHCH)、及びN−ピロリジニルが挙げられる。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アルコキシアミノ」、「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「シクロアルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、及び「アルキルスロホニルアミノ」は、−NHR(但し、Rは、それぞれ、アルコキシ、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル及びアルキルスルホニルである)として定義される基を指す。アリールアミノ基の非限定的例は−NHCである。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アミド(アシルアミノ)」は、−NHR(但し、Rは、アシルであり、その用語は上記で定義されている)を指す。アミド基の非限定的例は−NHC(O)CHである。「置換(された)」の修飾語が無く使用される場合の用語「アルキルイミノ」は2価の基=NR(但し、Rはアルキルであり、この用語は上記で定義されている)を指す。用語「アルキルアミノジイル」は、−NH−アルカンジイル−、−NH−アルカンジイル−NH−、またはアルカンジイル−NH−アルカンジイル−を指す。これらの用語のいずれかを「置換(された)」の修飾語と共に使用された場合、1個以上の水素原子は、独立して、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−NH、−NO、−COH、−COCH、−CN、−SH、−OCH、−OCHCH、−C(O)CH、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−C(O)NH、−OC(O)CH、またはS(O)NHによって置換されている。基−NHC(O)OCH及び−NHC(O)NHCHは置換アミド基の非限定的例である。
【0106】
B.細胞外pH
本開示はまた、細胞または細胞群の細胞外pH(pH)のイメージングに関する。特に、細胞外環境は腫瘍細胞であり得る。がん細胞がグルコースを優先的に取り込み、それを乳酸に変換する好気的解糖(別名、Warburg効果、図23A)が、腫瘍組織の存在を決定する方法として、腫瘍細胞のイメージングへの強い関心を再燃させた(Heidenら,2009)。Warburg効果の臨床的関連性は、腫瘍診断のための及び治療反応をモニターするための、2−18F−デオキシグルコース(FDG)の広い臨床用途により明らかになっている。腫瘍の微環境において、乳酸は、がん細胞膜で上昇するモノカルボキシレート輸送体により、優先的に細胞外空間で蓄積される(Halestrap & Prince 1999)。結果として得られた腫瘍内の細胞外pH(pH)の酸性化は、腫瘍の浸潤及び転移の増大のための細胞外マトリックスの再構成を促進する。最近、Barberと共同研究者が、別の「がんの顕著な特徴」として腫瘍内の無調節pHを記述した(Webbら,2011)。
【0107】
多くの以前の研究は、腫瘍の微環境におけるpHを定量化するために行われてきた(Gilliesら,1994;Gilliesら,2004;van Sluisら,1999及びVolkら,1993)。図23Bは、30の異なるヒトがん細胞株から得た268の腫瘍における代表的なpH研究である(Volkら,1993)。血液のpH(7.4)に比べて、全ての腫瘍のpHは、6.71〜7.01の範囲で、平均6.84の酸性である。腫瘍pHの酸性は持続的であるが、腫瘍特異的イメージングのためにそれを有効に使うことは、比較的小さなpH差(即ち、<1pH単位)のため、困難で挑戦的なことであるが、このような小さなpH差が、本出願の特別な興味である極めて狭いpH転移を有するプローブを創製させた。
【0108】
いくつかの実施形態において、本開示は、画像化することができ、そして生理学的及び/または病理学的に処理することができ、細胞内もしくは細胞外pHに影響を与えられるか、または影響を与える、pH応答性システムにおいて使用することができるポリマー及びミセルを提供する。このような細胞内または細胞外pHとしては、感染症、瘻、潰瘍、糖尿病または他の疾患からのケトアシドーシス、低酸素症、代謝性アシドーシス、呼吸性アシドーシス、毒素の摂取、中毒、骨代謝回転、変性疾患、傷、及び放射線または他の原因の火傷による組織損傷が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
C.腫瘍境界の手術用イメージング
外科的切除における端部でのがんの存在により定義される陽性腫瘍境界は、術後のHNSCC患者の腫瘍の再発及び生存に関して最も重要な指標である(Woolgar & Triantafyllou 2005;McMahonら,2003;Ravaszら, Atkinsら,2012及びIczkowski & Lucia 2011)。いくつかの実施形態において、正常な生理pHの環境とは異なる細胞外pHの環境を示すがん細胞はどれでも本明細書に開示されたpH応答性システムを用いて画像化することができる。さらに、pH応答性色素で使用される色素を修飾することにより、様々な異なる市販の手術イメージングシステムを用いて腫瘍の境界を測定することができる。これらのシステムとしては、観血的手術システム(例、SPY Elite(登録商標))、マイクロ手術(Carl Zeiss, Leica)、腹腔鏡手術 (Olympus,Karl Storz)及びロボット外科手術(da Vinci(登録商標))等のシステムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの臨床システムの多くは、手術中のリアルタイムイメージングを可能にする早い取得時間を有する。さらに、本明細書に開示された混合ポリマー及び混合ポリマーを作製するために使用される個々のモノマーのホモポリマーが、手術中のイメージングのためのpH応答性システムに使用することができる。
【0110】
D.ブロックコポリマー及び蛍光色素
本明細書に開示されたpH応答性ミセル及びナノ粒子は、ブロックコポリマー及び蛍光色素を含む。ブロックコポリマーは、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントを含む。疎水性ポリマーセグメントはpH感受性である。例えば、疎水性ポリマーセグメントは、pH感受性の状態にするイオン化可能アミン基を含むことができる。ブロックコポリマーは、これらのイオン化可能ブロックコポリマーの超分子自己組織化に基づくpH活性化ミセル(pHAM)ナノ粒子を形成する。より高いpHでは、ブロックコポリマーはミセルに集合し、一方より低いpHで、疎水性ポリマーセグメントのアミン基のイオン化がミセルの解離をもたらす。イオン化基は、異なるpHで微調整可能な親水性/疎水性ブロックとして機能することができ、ミセルの動的自己組織化に直接影響を与えることができる。
【0111】
診断またはpHモニターの用途のために、標識部分をブロックコポリマーに結合する(conjugate)ことができる。いくつかの実施形態において、標識(例えば、蛍光標識)は、pHがミセル形成に有利に働く時、ミセルの内側に隔離される。ミセルの隔離は標識シグナル(例えば、蛍光の消光により)の減少をもたらす。特定のpH条件は、ミセルの急速なプロトン化と解離に導いてユニマーとし、これにより標識を露出させて、標識シグナルを増加させることができる(例えば、蛍光発光の増加)。本開示のミセルは、診断利用において1つ以上の優位性をもたらすことができる、例えば:(1)以前のミセル組成物では数時間または数日であったのに反して、特定のpH環境(例えば、酸性環境)下に短時間内(例えば、数分内)にミセルの解離(及び標識シグナルの急速増加);(2)イメージング・ペイロードの増加;(3)標識の所望の部位(例えば、腫瘍または特定のエンドサイトーシス区域)への選択的ターゲティング;(4)長時間の血液循環;(5)特定の狭いpH範囲内での反応性(例、特定オルガネラへのターゲティングのため);(6)高いコントラスト感度及び特異性。例えば、ミセルが、正常な生理的条件(例えば、血液循環、細胞培地の条件)下では最小の背景シグナル内で静かに留まっている(または、オフ状態にある)が、ミセルが目的の分子標的に到達した場合イメージングシグナルが大きく増幅することができる(例えば、細胞外腫瘍環境または細胞オルガネラ)。
【0112】
多数の蛍光色素(染料)は当該技術分野で知られている。本開示のある態様において、蛍光色素はpH感受性色素である。いくつかの実施形態において、蛍光色素は蛍光消光剤とペアとなって活性化時の大きなシグナル変化を得る。蛍光色素は、直接またはリンカー部分を介してコポリマーに結合される。当該技術分野で公知の方法が蛍光色素を、例えば、疎水性ポリマーに結合するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、蛍光色素はアミド結合を介して疎水性ポリマーのアミンに結合することができる。
【0113】
ブロックコポリマー及び蛍光色素に結合するブロックコポリマーの例として:
【0114】
【化50】
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(I)
[式(I)において、Rは、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)、または
【0115】
【化51】
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或いは金属キレート基であり;nは1〜250の整数であり;R及びR2’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;Rは、式:
【0116】
【化52】
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(II)
(式(II)において、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてX及びXは、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX及びXは、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものである。)で表される基であり;
xは1〜100の整数であり;Rは、式:
【0117】
【化53】
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(III)
(式(III)において、X1’、X2’、及びX3’は、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてX4’及びX5’は、それぞれ独立して、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、アリール(C≦12)、ヘテロアリール(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものから選択され、或いはX4’及びX5’は、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、またはこれらの基のいずれかの置換されたものである。)で表される基であり;yは1〜100の整数であり;Rは、式:
【0118】
【化54】
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(IV)
(式(IV)において、Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)から選択され;そしてYは、水素、アルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、または蛍光消光剤から選択される。)で表される基であり;zは0〜6の整数であり;そしてRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)であり;且つR及びRが同一の基ではないとの条件で、R、R、及びRは当該ポリマー内においてどのような順序で現れても良い。]を挙げることができる。いくつかの実施形態において、ポリマーの特定の組成物(R、R、及びRのモノマーのモル分率)はそのポリマーを用いて製造されるナノ粒子の特定のpH転移点に関係する。
【0119】
E.ミセルシステム及び組成物
本明細書に開示されたシステム及び組成物は、異なるpHレベルに調整された単一ミセルまたは一連のミセルを利用する。さらに、ミセルは狭いpH転移範囲を有する。いくつかの実施形態において、ミセルは約1pH単位より小さいpH転移範囲を有する。様々な実施形態において、ミセルは約0.9pH単位より小さい、約0.8pH単位より小さい、約0.7pH単位より小さい、約0.6pH単位より小さい、約0.5pH単位より小さい、約0.4pH単位より小さい、約0.3pH単位より小さい、約0.25pH単位より小さい、約0.2pH単位より小さい、約0.1pH単位より小さいpH転移範囲を有する。狭いpH転移範囲は、pHの微妙な変化を有するフルオロフォアの完全なターン−オンをもたらし得るより鋭いpH応答性を有利に提供する。
【0120】
従って、pH誘導ミセル化をさせ及びミセル核でのフルオロフォアを消光化させる単一または一連のpH調節可能な多色蛍光ナノ粒子は、pH転移(ポリマーを介して)、蛍光発光、または蛍光消光剤使用の独立制御メカニズムを提供する。蛍光波長は、例えば、紫色から近IR発光範囲(400〜820nm)まで微調整することができる。これらの蛍光オン/オフ活性化は、小分子pHセンサーと比較してはるかにより狭い0.25pH単位未満で達成することができる。いくつかの実施形態において、蛍光オン/オフ活性化の狭い範囲は、0.2pH単位以下で達成することができる。いくつかの実施形態において、その範囲は、0.15pH単位以下である。さらに、蛍光消光剤の使用は、会合及び非会合ナノ粒子間の差が会合ナノ粒子の50倍より大きくなるように、蛍光活性化を増加させることもできる。いくつかの実施形態において、蛍光活性は会合ナノ粒子の75倍より大きい。この多色pH調節可能かつ活性化可能蛍光ナノプラットフォームは、がん、リソソーム蓄積症、及び神経障害に関連する、エンドサイトーシス・オルガネラ、受容体サイクリング、及びエンドサイトーシス輸送中のpH調節等の基本的な細胞生理的プロセスを調査するための価値あるツールを提供する。
【0121】
ミセルのサイズは、典型的にはナノメートルスケール(即ち、直径約1nm〜1μm)である。いくつかの実施形態において、ミセルは約10〜約200nmのサイズを有する。いくつかの実施形態において、ミセルは約20〜約100nmのサイズを有する。いくつかの実施形態において、ミセルは約30〜約50nmのサイズを有する。
【0122】
F.標的指向部分
ミセル及びナノ粒子は標的指向部分をさらに含むことができる。標的指向部分は、ナノ粒子またはミセルを、例えば、特定の細胞表面受容体、細胞表面マーカー、またはオルガネラ(例えば、核、ミトコンドリア、小胞体、葉緑体、アポプラスト、またはペルオキシソーム)へ標的指向させるために使用することができる。このような標的指向部分は、受容体リサイクリング、マーカーリサイクリング、細胞内pH調節、エンドサイトーシス輸送の研究において有利である。
【0123】
標的指向部分は、例えば、抗体または抗体断片(例えば、Fab’断片)、タンパク質、ペプチド(例えば、シグナルペプチド)、アプタマー、または小分子(例えば、葉酸)でもよい。当該技術分野において公知の方法を用いて、標的指向部分を、ブロックコポリマーに結合することができる(例えば、親水性ポリマーセグメントに結合する)。標的指向部分の選択は個々の標的に依存する。例えば、抗体、抗体断片、小分子、または結合パートナーが、細胞表面受容体及び細胞表面マーカーを標的とするためにより適切であり得るが、一方ペプチド、特にシグナルペプチドも、オルガネラを標的とするためにより適切であり得る。
【0124】
G.蛍光検出
本発明の様々な態様は、蛍光シグナルの増加を検出することによるミセル解離の直接的または間接的な検出に関する。蛍光色素からの蛍光シグナルを検出するための技術は当業者に公知である。例えば、下記の実施例に記載される蛍光共焦点顕微鏡法はこのような技術の一つである。
【0125】
例えば、フローサイトメトリー(Flow cytometry)は、蛍光シグナルを検出するために使用することができる別の技術である。フローサイトメトリーは、液体試料中の細胞または他の粒子、例えばマイクロスフェア、の分離を伴う。フローサイトメトリーの基本的工程は、液体流がセンシング領域を通過するように、装置により流体試料の方向を規定することを含む。粒子は、センサーのそばを1つずつ通過し、サイズ、屈折、光散乱、不透明性、粗さ、形状、蛍光等に基づいて分類されるはずである。
【0126】
本明細書に記載された測定は、1つ以上の細胞画像を分析し、複数の検出波長での及び/または複数の時点での蛍光発光の大きさを示す数値等の1つ以上の細胞の特性を決定するための、画像処理を含むことができる。
【0127】
H.キット
本開示はまたキットを提供する。本明細書に開示された成分のいずれかをキット中に組み込むことができる。ある実施形態において、キットは、前述のpH応答性システムまたは組成物を含む。
【0128】
キットは、成分を入れることができる、好ましくは、適切に等分され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器または他の容器を概して含む。キット中に2種以上の成分が存在する場合、キットはまた、追加の成分が別に入れられ得る、第2、第3または他の追加の容器を概して含有する。しかしながら、成分の様々な組み合わせが1つの容器中に含まれてもいてもよい。いくつかの実施形態において、シリーズ中のミセル集団の全てが単一の容器中で組み合わされる。他の実施形態において、シリーズ中のミセル集団の一部または全てが別々の容器中に提供される。
【0129】
本開示のキットはまた、概して、商品販売のため厳重に密封した様々な容器を含有する包装を含む。このような包装は、所望の容器が保持される、ボール紙または射出若しくはブロー成形プラスチック包装を含み得る。キットはまた、キット成分を使用するための説明書を含んでもよい。説明書は、実施することができるバリエーションを含んでもよい。
【0130】
I.SPECT及びPET
放射線核種イメージング法(様式)(陽電子発光断層撮影法、(PET);単光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT))は、放射線核種標識化放射線トレーサーの位置及び濃度の地図を描く診断断面イメージング技術である。CT及びMRIは、腫瘍の位置と程度についてかなり解剖学的情報をもたらすが、これらのイメージング法は、浮腫、放射線壊死、悪性度分類(grading)、またはグリオーシスから侵襲性病変を的確に見分けることができない。PET及びSPECTは、代謝活性を測定することにより腫瘍を位置づけ及び特性づけに使用することができる。
【0131】
PET及びSPECTは、細胞生存率等の細胞レベルでの情報に関する情報を提供する。PETでは、陽電子を発する少し放射能のある物質が患者に摂取または注入され、物質が体を通過するのをモニターすることができる。1つの通常の利用では、例えば、患者が、結合した陽電子エミッターを有するグルコースが与えられ、彼らの脳が様々な働きを行うので、モニターされる。脳は働くとともにグルコースを使用するので、PET画像は、どこの脳の活性が高いかを示す。
【0132】
単光子放出コンピューター断層撮影、即ちSPECTは、PETに密接に関係している。これら2つの主要な相違は陽子発生物質の代わりにSPECTは低エネルギー光子を発する放射能のあるトレーサーを使用する。SPECTは、冠動脈疾患を診断するために有用であり、既におよそ250万のSPECTによる心臓研究が、毎年米国で行われている。
【0133】
イメージングするためのPET放射線医薬品は、通常、11C、13N、15O、18F、82Rb、62Cu、及び68Ga等の陽電子放射体で標識化される。SPECT放射線医薬品は、通常99mTc、201Tl及び67Ga等の陽電子放射体で標識化される。脳イメージングに関して、PETとSPECT放射線医薬品は、血液脳関門透過性(BBB)、脳かん流及び代謝受容体結合、並びに抗原抗体結合に従って分類される(Sahaら,1994)。血液脳関門SPECT製剤、例えば、99mTcO4−DTPA、201Tl、及び[67Ga]クエン酸塩、は正常脳細胞により除去されが、変更されたBBBのため腫瘍細胞に入る。SPECT血流製剤、例えば[123I]IMP、[99mTc]HMPAO、[99mTc]ECDは親油性薬物であり、それ故正常脳に拡散する。重要な受容体結合SPECT放射性医薬品としては、[123I]QNE、[123I]IBZM、及び[123I]イオマゼニルが挙げられる。これらのトレーサーは特定の受容体に結合し、受容体関連疾患の評価において重要なものである。
【実施例】
【0134】
J.実施例
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を実証するために含む。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分に機能することが本発明者によっ見出された技術を示し、従って、その実施のための好ましいモードを構成すると考えられ得ることを、当業者は認めるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らし、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される具体的な態様において多くの変更を行い、同様または類似の結果をさらに得ることができることを理解するべきである。
【0135】
実施例1:pH応答性ナノプローブのライブラリーを製造するための方法及び材料
1.材料
異なるフルオロフォア及び蛍光消光剤のN−ヒドロキシスクシンイミダル(NHS)エステルを下記のようにして得た:RhoG−NHS、TMR−NHS、ROX−NHS、BDY−NHS、BDY−TMR−NHS、BDY630−NHS、AMCA−x−NHS、MB−NHS、PPO−NHS、QSY35、QSY7及びQSY21エステルを、Invitrogen Companyから購入した;Cy5−NHS、Cy5.5−NHS、Cy7.5−NHSエステルをLumiprobe Corporationから購入した;BHQ−1−NHSエステルをBiosearch Technologiesから購入した。PEOマクロ開始剤、MeO−PEO114−Br、を2−ブロモ−2−メチルプロパノイルブロミド及びMeO−PEO114−OHからBronstein,ら(参照により本明細書に取り込まれている)の手順に従い作製した。ブロモプロパン、ブロモブタン、ブロモペンタン、エタノールアミン、メタクリル酸クロリド、及びナトリウム塩をSigma−Aldrichから購入した。モノマー、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMA−MA)、2−(ジエチルアミノ)メタクリレート(DEA−MA)及び2−アミノエチルメタクリレート(AMA)をPolyscience Companyから購入した。AMAは、イソプロパノール及び酢酸エチル(3:7)で2回再結晶した。モノマー、2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)は、既に公表された手順に従い合成した。モノマー、2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)及び2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート(D5A−MA)は、本明細書で報告している。AMAモノマーは、使用前にイソプロパノール及び酢酸エチル(3:7)で2回再結晶した。他の溶剤及び薬剤はSigma−AldrichまたはFisher Scientific Inc.から得て使用した。
【0136】
2.新規のメタクリレートモノマーの合成
新規のメタクリレートモノマーは、刊行物記載の方法に従い合成した。2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)の[2]合成は、実施例としてここに記載される。まず、エタノールアミン(12.2g、0.2mol)及びブロモプロパン(49.2g、0.4mol)を400mLのアセトニトリルに溶解し、この溶液にNaCO(53.0g、0.5mol)を添加した。一晩反応させた後、溶液をろ過して析出したNaBr塩及び過剰のNaCOを除去した。CHCN溶剤をロータリーエバポレータ(rotovap)により除去した。得られた残渣を真空下で蒸留し(40〜45℃、0.05mmHg)、無色液体として2−(ジプロピルアミノ)エタノールを得た。その後2−(ジプロピルアミノ)エタノール(21.3g、0.1mol)、トリエチルアミン(10.1g、0.1mol)及び阻害剤のヒドロキノン(0.11g、0.001mol)を100mLのCHClに溶解し、塩化メタクリロイル(10.4g、0.1mol)を三口フラスコに滴下した。溶液を一晩環流した。反応後、溶液をろ過し析出したトリエチルアミン−HCl塩を除去し、そしてCHCl溶剤をロータリーエバポレータにより除去した。得られた残渣を真空下で蒸留し(47〜53℃、0.05mmHg)、無色液体を得た。合成後、モノマーをH−NMRにより特性評価した。全てのNMRスペクトルは、CDCl中、内部基準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いVarian 500MHzスペクトロメーターで得た。2つの新しいモノマーの特性は以下の通り:
【0137】
【化55】
[この文献は図面を表示できません]
2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)
H NMR (TMS,CDCl,ppm):6.10(br,1H,CHH=C(CH)−),5.54(br,1H,CHH=C(CH)−),4.07(t,2H,−OCHCHN−),3.01(t,2H,−OCHCHN−),2.68(t,4H,−N(CHCHCH,1.94(s,3H,CH=C(CH)−),1.44(m、4H,−N(CHCHCH),1.01(t,6H,−N(CHCHCH
【0138】
【化56】
[この文献は図面を表示できません]
2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート(D5A−MA)
H NMR (TMS,CDCl,ppm):6.10(br,1H,CHH=C(CH)−),5.55(br,1H,CHH=C(CH)−),4.20(t,2H,−OCHCHN−),2.74(t,2H,−OCHCHN−),2.45(t,4H,−N(CHCHCH CHCH,1.94(s,3H,CH=C(CH)−),1.43(m、4H,−N(CHCHCH CHCH),1.30(m、4H,−N(CHCHCH CHCH),1.24(m、4H,−N(CHCHCH CHCH),0.88(t,6H,−N(CHCHCH CHCH),
【0139】
【化57】
[この文献は図面を表示できません]
2−(エチルプロピルアミノ)エチルメタクリレート(EPA−MA)
H NMR (TMS,CDCl,ppm):6.10(s,1H,CHH=C(CH)−),5.54(s,1H,CHH=C(CH)−),4.20(t,2H,−OCHCHN−),2.75(t,2H,−OCHCHN−),2.58(q,2H,−N(CHCHCH)(CHCH)),2.44(m、2H,−N(CHCHCH)(CHCH)),1.94(s,3H,CH=C(CH)−),1.45(m、2H,−N(CHCHCH)(CHCH)),1.02(t,3H,−N(CHCHCH)(CHCH)),0.87(t,3H,−N(CHCHCH)(CHCH))
【0140】
【化58】
[この文献は図面を表示できません]
2−(ブチル(イソプロピル)アミノ)エチルメタクリレート(niD3.5A−MA)
H NMR (TMS,CDCl,ppm):6.09(s,1H,CHH=C(CH)−),5.53(s,1H,CHH=C(CH)−),4.11(t,2H,−OCHCHN−),2.92(m、1H,−N(CHCHCHCH)(CH(CH),2.64(t,2H,−OCHCHN−),2.42(t,2H,−N(CHCHCHCH)(CH(CH),1.93(s,3H,CH=C(CH)−),1.38(m,2H,−N(CHCHCHCH)(CH(CH),1.29(m、2H,−N(CHCHCHCH)(CH(CH),0.97(d,6H,−N(CHCHCHCH)(CH(CH),0.88(t,3H,−N(CHCHCHCH)(CH(CH)。
【0141】
3.PEO−b−PRブロックコポリマーの合成
PEO−b−PRブロックコポリマーは、Zhou,ら,2011(参照により本明細書に取り込まれている)に記載されているように原子移動ラジカル重合(ATRP)により合成した。色素無しコポリマーはポリマーの特性評価に使用した。表1〜3に各ポリマーの特性をまとめる。PEO−b−PDPAを、手順を説明する例として使用する。まず、DPA−MA(1.70g、8mmol)、PMDETA(21μL、0.1mmol)及びMeO−PEO114−Br(0.5g、0.1mmol)を重合管に充填した。その後、2−プロパノール(2mL)及びDMF(2mL)の混合物を添加し、モノマーと開始剤を溶解した。酸素を除去するため凍結脱気(freeze−pump−thaw)を3サイクルした後、CuBr(14mg、0.1mmol)を窒素雰囲気下に重合管に加え、重合管を真空で密封した。重合は40℃で8時間行われた。重合後、反応混合物は10mLのTHFで希釈され、中性Alカラムを通過させて触媒を除去した。THF溶剤をロータリーエバポレータにより除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥して白色粉末を得た。
【0142】
【表1】
[この文献は図面を表示できません]
【0143】
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0144】
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
【0145】
4.PEO−b−(PR−r−色素/FQ)ブロックコポリマーの合成
AMAを色素または蛍光消光剤の結合のために使用した。PEO−b−(PR−r−AMA)コポリマーの合成は前記の手順に従った。3つの第1級アミノ基を、開始剤に対するAMAモノマーの供給比(比=3)を制御することにより各ポリマー鎖に導入した。合成後、PEO−b−(PR−r−AMA)(10mg)を2mLのDMFに溶解した。その後NHS−エステル(色素−NHSまたはFQ−NHSに対して1.5当量)を添加した。一晩反応後、コポリマーをゲルパーミエ−ションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10m 10E3Å 300×250カラム、Varian製、溶離液としてTHF 5mL/min)により精製し、遊離の色素分子を除去した。製造されたPEO−b−(PR−r−色素/FQ)コポリマーを凍結乾燥し、貯蔵のため−20℃に保持した。
【0146】
5.ミセルナノ粒子の作製
ミセルは、Zhou,ら,2011(参照により本明細書に取り込まれている)に前述されているように、作製した。典型的な手順において、5mgのPDPA−Cy5を0.5mLのTHFに溶解した。その後、溶液を、4mLのMilli−Q脱イオン水に超音波処理下にゆっくり添加した。混合物を、マイクロ限外ろ過システム(MWCO=100KD)を用いて4回ろ過してTHFを除去した。その後、脱イオン水を添加して、ポリマー濃度を貯蔵液としての5mg/mLに調節した。混合ミセルのために、異なる重量比のPR−色素とPR−FQコポリマーを0.5mLのTHFに溶解し、そして同様の手順を用いた。
【0147】
6.蛍光特性
蛍光発光スペクトルを、日立蛍光光度計(F−7500モデル)により得た。各ポリマーについて、最初に、サンプルをMilli−Q水にて2mg/mLの濃度で作製した。その後貯蔵溶液を、異なるpH値を有する0.2Mクエン酸−リン酸塩緩衝液(0.15M塩化ナトリウム含有)で希釈した。最終的なポリマー溶液は100〜200μg/mLに制御された。
【0148】
異なるpH値を有する4.4−7.1−Cy5s、5.0−BDY、5.3−RhoG、5.6−TMR、5.9−ROX、6.2−BDY630、6.5−Cy5、6.8−Cy5.5及び7.1−Cy7.5溶液(各溶液について100μg/mL)の蛍光画像のために、Maestroイメージングシステム(CRI,Inc.,Woburn,MA)を、装置マニュアルに従い適正バンドパス励起フィルタ及び適正ロングパス発光フィルタを選択することにより用いた。4.4−AMCA及び4.7−MBのために、画像は携帯型UV光(365nm)の照射下にカメラにより撮られた。全ての測定は室温で行われた。
【0149】
実施例2:pH応答性ポリマーミセルのライブラリーの合成及び特性評価
1.ATRP法によりコポリマーの合成
触媒としてCuBr及びコポリマー合成用のN,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)リガンドを用いた原子移動ラジカル重合(ATRP)法(Tsarevsky及びMatyjaszewski,2007;Ma,ら,2003)(図1)を、検討のためのコポリマーを作製するために使用した。ホモポリマーPRブロックを有するPEO−b−PRコポリマーを、前述の単一メタクリレートモノマーを用いて合成した(Zhou,ら,2011;Zhou,ら,2012)。PRセグメントの疎水性を連続的に微調整するために、異なる疎水性を有する2種のメタクリレートモノマーを用いる共重合戦略(図1)を使用した。2種のモノマーのモル分率は重合の前に正確に制御され、ランダム共重合されたP(R−r−R)ブロックを得ることができる。異なるジアルキル鎖長(例えば、エチル、プロピル、ブチル及びペンチル)を有する一連のメタクリレートモノマーを、この今の検討に用いた。蛍光及び蛍光消光剤を導入するために、アミノエチルメタクリレート(AMA−MA)(ポリマー鎖当たり3個の繰り返し単位)も導入され、遊離アミノ基が色素またはFQに活性化N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルを介して導入された。
【0150】
合成後、コポリマーはH NMRで特性評価され、化学組成が確認され、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより数平均及び重量平均分子量及び多分散性が測定された(表1〜3、図2〜6)。
【0151】
2.pH制御に関して共重合と分子混合の戦略の比較
初めに、UPSナノプローブのpH値を制御するためその能力についての2つの異なる戦略を比較した。第1の戦略は、異なるpH転移を有する2種のPEO−b−PRコポリマー分子混合に関わる。この実施例では、Cy5−結合PEO−b−ポリ[2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート](PDEA、全てのコポリマーは、以下で特に断りの無い限り、PRセグメントにおいてCy5色素と結合された)及びPEO−b−ポリ[2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート](PD5A)を使用した。PDEA及びPD5Aナノプローブは、それぞれpH転移を4.4と7.8に有していた。溶剤蒸発手順は、各ミセルで同じモル%(即ち50%)を有する両方のコポリマーからなるミセルナノプローブを生成させるために使用された(これはヘテロFRET実験により確認された)。第2の戦略では、Cy5−結合PEO−b−ポリ[2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート−r−2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート]コポリマー(P(DEA40−D5A40))を合成し、これはPRセグメントが2種のモノマーのランダムコポリマーからなるものであった(各モノマーについて40の繰り返し単位、表1)。流体力学直径は、PDEA/PD5A(分子混合)及びP(DEA40−D5A40)(コポリマー)について、それぞれ65nm及び22nmであった。
【0152】
2種のミセル設計は蛍光発光対pH関係において大きく異なるパターンを示した。PDEA/PD5Aナノプローブについて、pH転移の際立った挙動が、個々のコポリマーに対応して観察され、蛍光オン/オフ転移が4.4及び7.8であった(図7A図8)。この結果は、ミセル内でのPDEAとPD5Aの間の鎖の絡み合いは、個々のポリマーの会合挙動を取り除くには十分でないことを示している。対照的にP(DEA40−D5A40)ナノプローブは、6.0の単一のpH転移、PDEAとPD5Aの間のほぼ中間を示した。
【0153】
転移pHの制御を探るために、モル分率を変化させた2種のモノマーの一連のP(DEA−D5A)コポリマーを合成した。得られたコポリマーは異なるpH転移を示した(図7B図9)。DEAモノマーのモル分率の関数としてのナノプローブのpHのプロットは直線関係を示した(図7C)。疎水性のより少ないモノマー(例えば、DEA−MA)をより高い%で導入することにより、より高いpH転移が得られた。UPSナノプローブの転移pHは、PRセグメントの疎水性を変化させることにより主として制御することができる。この観察は、電子吸引または共与基が微調整に必要である低分子pHセンサーに反している(Urano,ら,2009)。
【0154】
3.モノマー相溶性のpH転移の鋭さへの影響
異なるモノマー%を有するP(DEA−D5A)ナノプローブは、転移pHの制御を可能にするが(図7B〜C)、pH転移の鋭さは、ホモポリマーPRセグメントを有する対応するナノプローブより顕著に広範囲となっている。より具体的には、pH10−90%値(蛍光強度が10%〜90%増加するpH範囲)が、25、50及び75%のDEA−MA組成を有するP(DEA−D5A)コポリマーについて、それぞれ0.65、0.64及び0.47で、これに比較してPDEA及びPD5Aについてはそれぞれ0.14及び0.19であった。P(DEA−D5A)コポリマーから得られた広いpH応答は、大きい疎水性差を有するモノマーから得られる不均一な鎖の性質を示唆している。
【0155】
pH転移の鋭さを改善するために、密接に適合した疎水性を有するモノマーを使用することにより調査研究した。例として、2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)及び2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)を選択して一連のP(DPA−DBA)ナノプローブを製造した。この2種のモノマーは、窒素置換基の1つの炭素が異なっている(即ち、プロピルとブチル)。2種のモノマーの共重合は、鋭いpH転移を有する、より精密に調整可能な一連のナノプローブをもたらした(図10A図11)。pH10−90%値は、25、50及び75%のDPA−MA組成を有するP(DPA−DBA)コポリマーについて、それぞれ0.19、0.20及び0.18であった。各コポリマープローブは鋭いpH転移(<0.25pH単位)を維持した。図10Bは、pHの関数としての蛍光誘導体プロットを示し、さらに一連のP(DPA−DBA)ナノプローブが、単一のP(DEA40−D5A40)ナノプローブに比較して、同じpH範囲で大きく向上した鋭さを有することを示している。
【0156】
DPA−MAモノマーのモル分率の関数としてのP(DPA−DBA)ナノプローブのpH値のプロットは直線関係を与えた(図10C)。同様に、一連のP(DBA−D5A)及びP(DEA−DPA)の標準曲線も、pHとモノマーのモル分率との間の直線関係を示すものであることが確立された。これらの標準曲線は、正しいPR組成を有するコポリマーを選択することにより予め定められたpH転移(4.4〜7.8の間)のいずれかを有するUPSナノプローブの合理的設計を可能にする(つまり、モノマー対および特定のモル分率の選択)。概念実証を行ったところ、pHの全生理的範囲(4.4〜7.4)をカバーする0.3pHの増分を有する10のナノプローブからなるUPSライブラリーを作製し、各ナノプローブが鋭いpH転移を維持した(オン及びオフ状態の間で<0.25pH単位、図10D図12〜13)。
【0157】
4.フルオロフォア選択を拡大するための蛍光消光剤の使用
以前、ホモ−FRET誘発蛍光減衰は、UPSナノプローブのオン/オフ活性化設計を達成するための主なメカニズムであると報告された(Zhou,ら,2012)。このメカニズムは、小さいストークシフト(<40nm)を有するフルオロフォア(例えば、ローダミン及びシアニン色素)にのみ適用される。大きなストークシフトを有する色素(例えば、マリーナブルーまたはPPO、λ≧100nm)について、蛍光活性化比(R=Fon/Foff、このFon及びFoffはそれぞれオン、オフ状態の蛍光強度である)は5未満であった。さらに、BODIPY(登録商標)ファミリーの色素について、pH転移は、光子誘発電子移動(PeT)メカニズムの結果により、比較的低いR(<15)を有して広範(>0.5pH単位)であった(Petsalakis,ら,2008;Tal,ら,2006;Dale及びRebek,2006)。
【0158】
これらの制約を克服するため、フルオロフォア選択を拡大するための蛍光消光剤の使用が検討された。蛍光消光剤は活性化可能イメージングプローブの設計に多くのグループによって広く使用されてきている(Blum,ら,2005;Lee,ら,2009;Levi,ら,2010;Maxwell,ら,2009)。メカニズムは、所望のフルオロフォアからFQへの蛍光共鳴エネルギー移動に基づいており、その移動後放射エネルギーを熱に消散させる。この設計において、異なる発光波長に感受性を有する一連のFQが作製され、コポリマーに結合される(図14)。UPSナノプローブは、同一ミセル核内で、FQ−結合ポリマーを色素−結合ポリマーと混合することにより製造される。ミセル状態で、FQは予想されているように、その化合物が、蛍光シグナルを効果的に抑制し、ミセル解離時にFQとフルオロフォアとの分離が蛍光発光の顕著な増加をもたらすと思われる(図15A)。
【0159】
FQ戦略の有効性を評価するために、PEO−b−ポリ[2−(プロピルアミノ)エチルメタクリレート](PDPA)をモデルシステムとして使用し、異なるFQとフルオロフォアをコポリマーに結合した。PDPAナノプローブはpH転移を6.2に有していた。まず、大きいストークシフトを有するフルオロフォア(例えば、AMCA:353/442;マリーナブルーまたはMB:362/462;PyMPOまたはPPO:415/570。2つの数字はそれぞれ活性化波長及び発光波長を指す。)のFQ戦略を調査研究した。FQ−結合ポリマーの導入無しでは、PDPA−AMCA及びPDPA−MBナノプローブは、それぞれpH5.0及び7.4においてオンとオフの間で僅か3倍の蛍光活性化しか示さなかった(図18A)。PDPA−QSY35のPDPA−AMCAまたはPDPA−MBへの導入は蛍光活性化のかなりの増加をもたらし、PDPA−QSY35のモル分率が67%になった時停滞期に達した(図16A)。この組成で、R値は約90倍に達し、これはFQ無しのものより30倍高い(図18B)。同様に、PDPA−QSY7(50mol%)のPDPA−PPOナノプローブへの導入は、それぞれR値を6から>130倍に増加させた(図18B)。
【0160】
BODIPY(登録商標)ファミリーの色素について、PDPA−BDY493及びPDPA−TMRナノプローブはほんの約15倍の蛍光活性化を与え(図18C)、生理的利用には十分ではない(例えば、細胞イメージング中では、>30のR値が背景シグナルを抑制するには必要である)。PDPA−BHQ1(50mol%)及びPDPA−QSY7(50mol%)のPDPA−BDY493及びPDPA−TMRナノプローブへの導入は、R値の劇的な増加をもたらす(共に>100倍、図18D図19)。興味深いことに、PDPA−BDY630のみが40倍のR値を達成することができた。PDPA−QSY21の追加がさらにR値を250倍超過に増加させた(図18D).
【0161】
以前の研究は、小さいストークシフト(<40nm)を有するローダミン及びシアニン色素は、ホモFRET誘発蛍光減衰メカニズムにより大きなR値を有するUPSナノプローブを生成させることができた(Zhou,ら,2012)。この研究の結果は、以前のレポート、即ちPDPA色素コポリマーのみが、ローダミン及びシアニン色素に対してそれぞれ>50倍及び>100倍に達することが確認された。FQ結合コポリマーはさらにこれらのナノプローブのRF値を増加させた(図18F図20〜22)。
【0162】
図18E〜Fは、蛍光消光剤の導入有り及び無しのPDPAナノプローブで使用される全てのフルオロフォアについての蛍光活性化比(R=F5.0/F7.4)をまとめた。データは、FQ結合ポリマーの追加で、全てのフルオロフォア(全部で12)は、ストークシフトまたはPeTメカニズムに関係なく、例外なく高い活性化比(>50倍)を示すことを提示した。加えて、FQ結合ポリマーの導入はpH転移の鋭さへの影響は与えなかった(全ての複合体ナノプローブはオン及びオフ状態の間で<0.25pH単位有していた、図18B及び18D並びに図22B〜22D)
【0163】
5.大きいpH転移及び蛍光発光に広がるUPSライブラリー
上記結果に基づき、それぞれ異なる蛍光でコードされた10個のナノプローブからなるUPSライブラリーを製造した。各ナノプローブの組成は、図10D(詳細は表3参照)に従い、得られた収集されたものは4〜7.4のpHスパンで0.3pH増加分を有するものであった。各ナノプローブについて、同じポリマー濃度(即ち0.1mg/mL)であるが異なるpH値の一連の水溶液を調製した。4.4−AMCA、4.7−MB、5.0−BDY及び6.2−BDY630ナノプローブについて、対応のコポリマーを、同等量のFQ結合適合ポリマーと混合し、高いオン/オフコントラストを獲得した。図24は、各フルオロフォアに対応する活性化/発光波長でのUPSナノプローブライブラリーの発光画像を示す。
【0164】
図24の結果は、4〜7.4の全生理的pHにわたる外部環境に対するUPSナノプローブの鋭敏なpH感受性を示している。最低pH範囲で、4.4−AMCAナノプローブはpH4.55でオフとなるがpH4.25でオンに変わった。このナノプローブは、ヒドロラーゼが酵素活性のためにより低いpHを必要とする際の機能性リソソームのpHの検出に有用であると言える。ナノプローブのオン/オフ特性により、それらは、リソソーム機能に影響を与える分子経路または小分子摂動体の同定を可能にするスクリーニング用途に特により一層有用となる。より高いpH範囲(例えば、6.5〜7.1)をカバーするナノプローブについて、ナノプローブは、腫瘍の酸性pHのイメージングに有用であり、そしてナノプローブ活性化をがん細胞の解糖速度に関連付けることができる(Wang,ら,2014;Ko,ら 2010)。中間範囲(例えば、5.0〜6.5)におけるナノプローブはエンドソーム/リソソームの成熟の研究に有用であり、細胞内イメージングまたは薬品送達用途のためのオルガネラ特定組成物を確立することができる。
【0165】
実施例3:アニオン駆動ミセル形成方法
1.PEO−b−PRブロックコポリマーの合成
PEO−b−PRコポリマー(スキーム1)は、Zhou,ら,2011(参照により本明細書に取り込まれている)に報告された原子移動ラジカル重合(ATRP)により合成された。色素非含有コポリマーはポリマー特性評価で使用された。PEO−b−PDPA(3)は、手順を説明するための例として使用される。まず、DPA−MA(1.70g、8mmol)、PMDETA(21μL、0.1mmol)及びMeO−PEO114−Br(0.5g、0.1mmol)を重合管に充填した。その後2−プロパノール(2mL)とDMF(2mL)の混合物を加えてモノマー及び開始剤を溶解した。酸素除去のため凍結脱気を3回繰り返した後、CuBr(14mg、0.1mmol)を窒素雰囲気下重合管に加え、重合管を真空下に密封した。重合を40℃で8時間行った。重合後、反応混合物を10mLのTHFで希釈し、中性Alカラムを通過させてCu触媒を除去した。THF溶剤をロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥し白色粉末を得た。表4に各コポリマーの特性をまとめる。
【0166】
【化59】
[この文献は図面を表示できません]
【0167】
【表4】
[この文献は図面を表示できません]
【0168】
2.PEO−b−(PR−r−TMR/Cy5)ブロックコポリマーの合成
AMAモノマーを色素結合用コポリマーに取り込んだ(スキームS1b)。PEO−b−(PR−r−AMA)の合成は前述の手順に従った。3つの第1級アミノ基を、開始剤に対するAMAモノマーの供給比(比=3)を制御することにより、各ポリマーに導入された。代表的手順では、PEO−b−(PR−r−AMA)(50mg)を2mLのDMFに溶解した。その後NHS−エステル(TMR−NHSに対して2.0当量及びCy5−NHSに対して1.0当量)を加えた。一晩反応後、コポリマーを調製ゲルパーミエ−ションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10m 10E3Å 300×250 カラム、Varian、溶離液としてTHF(5mL/minで))により精製し、遊離色素分子を除去した。製造されたPEO−b−(PR−r−色素)コポリマーを凍結乾燥し、貯蔵中は−20℃に保持した。ブロックコポリマーが自己組織化してミセルを形成した際、色素はHetero FRET及び自己消光の両方を受けることに注目することが重要である。このため各ポリマー鎖の色素結合数がFRET実験には重要である。実験において、TMRとCy5の結合数は、それぞれ、ポリマー鎖当たり2及び1に制御された。
【0169】
3.ミセルナノ粒子の調製
各コポリマーについて、ミセルの貯蔵液は、Nasongkla,ら(2006)(参照により本明細書に取り込まれている)に記載の溶剤蒸発法の後、調製した。PEO−b−(PDPA−r−TMR)ミセル溶液の例では、20mgのコポリマーをまず1.0mLのTHFに溶解し、その後超音波処理下に8mLの脱イオン水に滴下した。THFを、(100KD)膜を用いて限外ろ過を5回行って除去した。その後、脱イオン水を加えて、ポリマー濃度を5mg/mLを調整し、貯蔵液とした。PEO−b−PDMA貯蔵液は、コポリマーを脱イオン水に直接溶解することにより作製することができた。
【0170】
FRET実験用ミセル溶液サンプルを類似の方法で調製した。PEO−b−(PDPA−TMR/Cy5)サンプルの作製を代表的手順として記載した。まず、0.1mLのPDPA−TMR及び0.1mLのPDPA−Cy5貯蔵溶液を1.8mL脱イオン水に加えた。その後1.8μLの1.0M HClを加えて水不溶性ブロックコポリマーを溶解させ、溶液のpHを4に調整した。出発サンプルのHClからのClは<2mMで、実験結果によれば、ミセル化をかく乱するその能力としては無視され得るものであった。
【0171】
4.FRET実験
蛍光発光スペクトルは日立蛍光光度計(F−7500モデル)で得られた。サンプルは545nmで励起され、発光スペクトルは560〜750nmで収集された。異なるアニオンが導入されたPEO−b−PDPAの自己組織化作用についてのFRET実験は、類似の手順に従った。ClOは、以下の実施例として使用された:0.2μLの10M NaClO溶液を、2.0mL、0.5mg/mLの色素結合PDPA(PDPA−TMR/PDPA−Cy5=1:1)溶液にpH=4で添加し、ClO濃度を1mMに調節した。その後、小容量の10M NaClO溶液を徐々に加えてClO濃度を3.2、5.6、10mMに増加させた。10mM後、固体NaClOをその溶液に添加してClO濃度を増加させサンプルの希釈を回避した。添加されたNaClOの合計量は2μL未満であり、合計2mLに比べて無視することができる。蛍光発光スペクトルは、NaClOのそれぞれの添加後に、4分間渦混合してから収集された。
【0172】
5.TEM及びDLS特性評価
TEM及びDLS分析用サンプルを、前述の手順に従い調製した。PEO−b−PDPAの転移pHは6.1であった。まず、0.1mLのPDPA−TMR及び0.1mLのPDPA−Cy5貯蔵溶液を、1.6mLの脱イオン水に加えた。その後、固体NaClO及びNaClをその溶液に加え、渦混合後溶解した。HCl及びNaOH溶液(1M)を用いて溶液のpHを5.0及び7.4に調節した。脱イオン水を加えて合計容量を2mLに調節した。ナノ粒子のモルホロジー及びサイズを透過型電子顕微鏡(TEM,JROL 1200EX model)により特性評価した。流体力学直径(D)は動的光散乱(DLS,Malvern MicroV Model,He−Ne Laser,λ=632nm)により測定された。
【0173】
6.アニオン競合実験
ミセルサンプルの作製はFRET実験に記載と同様の手順に従った。固体NaCl及びNaSO粉末を水溶液に溶解し初期アニオン濃度を達成した。Clの初期濃度は0、50、100、200、500,1000及び2000mMであった。SO2−の初期濃度は0、25、50、100、200及び500mMであった。蛍光発光スペクトルは、NaClOの添加後、渦混合後4分収集された。得られた結果はS字形曲線と一致した。パーコレートの、最大の半分のFRET効率濃度はFC50として定義され、Cl及びSO2−の競合能力を定量する。
【0174】
7.PEO−b−PRコポリマーのClO誘発ミセル自己組織化
異なるアルキル側鎖を有する一連のPEO−b−PRコポリマー図25の1〜5)が本研究に使用された。ミセルサンプルの調製はFRET実験セクションの記載に従った。この一連の実験で、溶液のイオン強度は100mMのNaCl濃度を用いて緩衝化された。これはNaClOからのイオン強度寄与を最小にするために使用される。なぜなら、疎水性PEO−b−PRコポリマー(例えば、5)が多いほどミセル自己組織化を誘発する濃度を小さくする必要があるからである。実験後、FRET効率は、FRETセクションで前述されたように計算された。
【0175】
実施例4:アニオン駆動ミセル形成の結果と考察
pH未満のpHでプロトン化PEO−b−PRコポリマーの驚くべきカオトロピックアニオン誘発ミセル化の発見(図25)を記載する。驚くべきことに、抗ホフマイスター(Hofmeister)傾向が観察され、そこではカオトロピックアニオンがミセル化をもたらすが、それらのタンパク質凝集の効果に反して、コスモトロピックアニオンとはならない(Zhang及びCremer, 2006;Parsons,ら,2011;Kunz,ら,2004)(図26A)。
【0176】
まず、ミセル自己組織化プロセスを調査するための蛍光エネルギー共鳴移動(FRET)が確立された。FRETはポリマー/タンパク質の立体配座及び相転移の検出に高い感度を有する。なぜなら、これは、エネルギー移動効率が供与体−受容体距離の6乗に反比例するためである(Jares−Erijman及びJovin,2003;Sapsford,ら,2006)。この方法では、ブロックコポリマーは供与体または受容体色素と結合する(図25の1〜5、表4) (Tsarevsky及びMatyjaszewski,2007;Ma,ら,2003)。PEO−b−ポリ(ジプロピルアミノエチルメタクリレート)(3,pH=6.1)がモデルコポリマーとして選択され、供与体/受容体として、それぞれテトラメチルローダミン(TMR,λex/λem=545/580nm)/Cy5(λex/λem=647/666nm)が選択された(Ha,ら,1999;Grunwell,ら,2001)。
【0177】
pH4で、3の第3級アミン(pH=6.1)がプロトン化され、得られたコポリマーは分散カチオン性ユニマーとして水に溶解した。溶液中のユニマー(それ故TMRとCy5)との間の大きな距離のために、FRET効果は観察されなかった。カトロピックアニオン(例えば、ClO、SCNまたはI)の添加は、ポリマーミセルの形成を示す、TMRの蛍光強度の低下及びCy5の発光強度の増加をもたらした(図27)。ミセル形成がTMRとCy5をミセル核内に極めて近接させ、これによりFRET効率を増加させるとの仮定を立てた(図26B)。反対に、コスモトロピックアニオン(例えば、SO2−、HPO)は、たとえ濃度をそれらの溶解限界に近付けても、いかなるFRETも引き起こさなかった(図28)(表5)。
【0178】
【表5】
[この文献は図面を表示できません]
【0179】
ミセル化を起こす能力において異なるアニオンを比較するために、FRET効果を定量化した(図26C)。FRET効率は(FA/FD)/(FA/FD)maxとして正規化され、ここでFA及びFDは、それぞれ異なるアニオン濃度でのTMR及びCy5の蛍光強度であり;(FA/FD)maxは、高いClO濃度でのFA/FDの最大値(3.3)であった。FRET効率は、異なるアニオンについての濃度の関数としてプロットされた。結果は、カオトロピックアニオンがユニマー会合(即ちミセル化)を起こすことができたが、コスモトロピックアニオンはできなかった(図26C)との抗ホフマイスター傾向を示した。この観察は、タンパク質可溶化における古典的ホフマイスター効果に反しており、この効果ではコスモトロピックイオンは水でのタンパク質凝集を引き起こすことが知られているが、カオトロピックでは知られていない(Hofmeister,1888;Collins及びWashabaugh,1985)。
【0180】
コポリマー3はカオトロピックアニオンに対して異なる検出感度を示した。データはFRET感度がClO4−>SCN>I>NOの順に従ったことを示している。FC50はFRET効率が50%のときのアニオン濃度として定義される。FC50の値は、ClO4−、SCN及びIについて、それぞれ11、68及び304mMであった。NOについては、その飽和濃度(約3M)でほんの弱いFRET効果が得られたのみであった。より詳細な調査では、FRET効率を10%から90%に増加させるために、3倍のClO濃度変化が必要であるのみであった(即ち、6から18mMへ、図26C)。この狭い濃度依存性は、以前報告された超pH応答(Zhou,ら,2011;Zhou,ら,2012;Huang,ら,2013;Wang,ら,2013)に類似する高い共同応答を示唆している
【0181】
さらにカオトロピックアニオン誘発ミセル化を確認するために、透過型電子顕微鏡(TEM)及び動的光散乱(DLS)を用いて、それぞれ、ミセル転移中のモルホロジーの変化及び流体力学直径を調査した。クロリドイオン(Cl)は陰性対照に用いた。50mMのClの存在で、コポリマー3はpH5.0でユニマーとして留まっていた(6.1のpHを下回る、図29A)。対照的に、コポリマー3はClがClOと置き換わった時球状のミセルに自己組織化した(図29B)。DLS分析は、アニオンがClからClOに変化した時、流体力学直径は、それぞれ、7±2から26±3nmに増加することを示した(図29)。ユニマー状態からミセル状態へのコポリマー3の転移を反映するこのサイズの増加は、FRETとTEMのデータと一致している。pH7.4で、コポリマー3は、Cl及びClOアニオンの存在下、それぞれ27±2及び28±3nmの流体力学直径を有する球状ミセルとして存在していた(図30〜31)。PEO−b−ポリ(D,L−乳酸)(PEO−b−PLA)等の非イオンの両親媒性ブロックコポリマーに関しては、pH変化もClOの添加のいずれもミセル状態への影響はなかった(図32)。
【0182】
カオトロピックアニオン誘発自己組織化は、その後、競合コスモトロピックまたは境界型アニオンの存在で研究を行った。コポリマー3を、異なる初期濃度の競合SO2−またはClと共にpH4で溶解させた。その後カオトロピックアニオンClOを添加してミセル化を誘発させた(図33〜36)。図37Aは、ClO濃度の関数としてのFRET効率の代表例を示す。SO2−アニオンの添加により、ミセル誘発におけるClOの感受性を減少させることができた。FC50値は競合アニオンの効果を評価するために定量化された(図37B)。競合アニオンのイオン強度の関数としての釣鐘曲線が観察された。低いイオン強度(<0.1M)において、競合アニオンの添加は、ミセル形成を誘発するためのClOの能力を低下させ、PRセグメントのアンモニウム基とこれらの競合と一致した。しかしながら、SO2−またはClの高いイオン強度(>0.5M)では、ClO誘発自己組織化の増加が観察された。この効果は、高いコスモトロピックイオン濃度でのより規則的なバルク水構造に貢献することができ、ミセル自己組織化中の疎水性集合をより有利にする。
【0183】
最後に、PRセグメントの疎水性強度のカオトロピックアニオン誘発ミセル化への影響(図38A)を調査した。第3級アミノ基のメチルからペンチル基までの異なるアルキル鎖長を有する一連のPEO−b−PRコポリマー(図25の1〜5)を合成した。結果は、PRセグメントの疎水性へのClO誘発自己組織化の明らかな依存性を示した(図39)。最も小さい疎水性の側鎖(即ち、1のメチル)では、ミセル化はClOの最高の濃度でさえ観察されなかった(1M)。反対に、最も疎水性の側鎖(5のペンチル)がClOにより誘発された最高の感度のミセル化をもたらした。FC50値は、側鎖がペンチル、ブチル、プロピル、及びエチル基の時、それぞれ2、4、35、134mMであった(図38A)。
【0184】
上記研究からの結果は、カオトロピックアニオンにより誘発された第3級アンモニウム基を有するブロックコポリマーによる高度に並はずれたミセル自己組織化プロセスを示している。現在のナノシステムにおいていくつかの類の無い特徴がある:第1に、カオトロピックアニオンが、疎水性ミセル核環境において正に電荷されたアンモニウム基を有する安定なイオン対を形成することができた。アンモニウム基の優位性がイオン化状態にあると仮定すれば、これは14nmと推測される核サイズを有するミセル当たり約60,000イオン対と理解される(ミセル当たり800ポリマー鎖を基に計算、(Wang,ら,2013)ポリマー鎖当たりアミノ基含有モノマーの70〜80繰り返し単位、及び6nmのPEO殻サイズ(Leontidis,2002))。第2に、カオトロピックアニオンのみがミセル形成を誘発し、コスモトロピック(SO2−)及び境界型アニオン(Cl)はこの能力を持たない。この傾向は古典的タンパク質安定化の研究と反対と思われる。第3に、ミセル化を誘発するカオトロピックアニオンの能力が、超pH感度応答に類似した正の共同性を示していると思われる。以前の研究では、蛍光活性化(10%〜90%の応答)は0.25pH単位(<[H]の2倍)で起こるとされていた。この研究では、FRET移動は3倍の[ClO]変化の範囲で起こることが示されている。最後に、コスモトロピックと境界型アニオンを用いた競合実験では釣鐘曲線挙動が示され、これは現在のシステムにおけるミセル自己組織化プロセスの複雑で微妙な性質を示唆している。
【0185】
実験的モデル(図38B)が、ミセル自己組織化プロセスに寄与する因子を表現するために構築された。理論に束縛されないが、アルキル鎖長の増加による疎水性の相互作用がミセル形成の主要な推進力を与えると仮定される。これは、第3級アミンの側鎖がメチル基の場合(図38Bの左腕の破線により示されている)にはミセルの形成の無いことにより支持される。同様に、中和コポリマー1はpHより上のpHではミセルを形成しなかった(Zhou,ら,2011)。一方、アニオンも、ミセル化において決定的な役割を演ずる。強い水和殻と弱い極性特性を有するとして知れらているコスモトロピックアニオンは、イオン対の形成及び疎水性核内のイオン対の安定にエネルギー的にほとんど有利とはいえない(Collins,1997;Underwood及びAnacker,1987)。強力な極性を有し、そして水和鞘を除去する際のエネルギーコストが低いカオトロピックアニオンは、疎水性ミセル核において安定したイオン対の形成を可能にする(Zhang及びCremer,2009)。
【0186】
実施例5:センチネルリンパ節の検出
1.UPS6.9による危険性のあるセンチネルリンパ節の同定
UPS6.9ナノプローブはまた危険性のあるセンチネルリンパ節を同定する能力も示した。図42Aは、SPY Elite(登録商標)カメラによる腫瘍部位近くの首側にある代表的センチネルリンパ節の同定を示す。初期頭頸部がんを有する4つの異なる動物(動物当たり2つ)において、8つのリンパ節を同定した。これらの節は、マウス内の初期頭頸部がんに流入し、且つ解剖学的にはマウス内に典型的に見られる頸部節に対応する頸部流域にあった。8つの節の全ての構造はUPS6.9のみにより同定された;それらは白色光で見るには余りにも小さく、ミリメートル以下であり、頸部脂肪及び唾液腺と密接に関わっているが、SPYカメラで可視化された時には輝いた。臨床病理医によるH&E分析で、同定された構造はリンパ節と確認された。8つの節の1つは、図42Bの底部パネルの黒矢印に指示されるように、HN5がん細胞の存在を示した。いくつかの場合においては、腫瘍の節再発は初期腫瘍を完全に切除したマウスに観察された。大きい腫瘍が、初期腫瘍の部位に代わって頸部側面に現れた。これらのデータは、腫瘍の完全切除を達成するために危険なリンパ節の同定の重要性を示唆している。腫瘍に流入する単一の節は同定され、多くはがん細胞を含まなかったとの事実は、これらの節は初期腫瘍部位からリンパ管に流入する活性化ポリマープローブを収集するSLNを表していることを示唆している。
【0187】
実施例6:pH活性化インドシアニングリーン・コード・ナノセンサー(PINS)の開発
1.PINSの調製及びナノセンサー特性
ポリ(エチルグリコール)−b−ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート)コポリマー(PEG−b−(PEPA−r―ICG)(但し、x及びyは、それぞれ、EPAモノマーとICG色素のランダム繰り返し単位の数を表す;図43A〜43I))のミセルを含むpH活性化可能インドシアニングリーン・コード・ナノセンサー(PINS)を合成した。疎水性ミセル化及びホモFRET誘発蛍光消光(Zhouら,2011及びZhouら,2012)がpH応答を劇的に鋭くした。PEPAセグメント長及びICG結合数の系統的最適化(図44A〜44F)により、6.9の鋭いpH転移、高い蛍光活性化比、最適な粒径(25nm)及びシグナル増幅のためのナノプローブ当たり800ICGの平均を有する最適なPINS組成が得られた。報告されているpH感受性プローブ(例えば、小分子色素(Uranoら,2009)、ペプチド(Weerakkodyら,2013)または2pHにわたり10倍のシグナル変化を有するPeTナノプローブ(Diaz−Fernandezら,2006))に比較して、PINS設計は、6.9で0.15のpH範囲で>100倍のシグナル増加を達成した。ICGに結合した追加のポリマーを製造し、特性評価して表6に示す。
【0188】
【表6】
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【0189】
ナノセンサーを用いた初期の用量−応答研究を、本明細書に記載の他のpH応答性システムを用いるはずのものに類似のヒト頭頸部HN5同所性腫瘍異種移植片を有するマウスにおいて実施した。PINSを、尾静脈を介して静脈内注射を行い、医療用SPY Elit(登録商標)カメラを、動物を画像化するために用いた(図45A〜45E)。2.5mg/kgの量を、持続時間ウンドウ(12〜24時間)にわたってノイズ比に対して大きな腫瘍コントラス(CNR=27)を得るために、イメージング用量として使用するのに選択した。安定な時間ウンドウは、速い腎クリアランスが原因で、一時的ウンドウ(2〜3時間)(Choiら,2013)を用いる小分子トレーサーに対する腫瘍外科手術に有利である。2.5mg/kgPINSの場合のような当量の色素用量での遊離ICGの注射は、観察し得る腫瘍コントラストは見られなかった(図45B)。
【0190】
PINSによる腫瘍アシドーシスイメージングは、脳及び褐色脂肪組織を擬陽性の類似臨床観察に導くFDG−PETに比べて、腫瘍検出の感度及び選択性が改良された(図46B及び図47A〜47E)(Cookら,2004及びFukuiら,2005)。FDG−PETは大きなHN5腫瘍(約200mm)を検出するけれども、PET法は小さ腫瘍結節(約15mm、表7)の検出には成功しなかった。多数の異なる腫瘍サイズを、PINSを用いて正常組織に対する腫瘍の高いコントラス(CNR>20)で検出することができた。さらに、PINSはミリメートル未満の空間分解能で腫瘍境界を描くことができた(図46B及び図47A〜47E)。
【0191】
【表7】
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【0192】
幅広い腫瘍検出を評価するため、3つの同所性頭頸部腫瘍(HN5、FaDu及びHCC4034、B.D.S患者からの腫瘍異種移植片)、皮下乳房腫瘍(MDA−MB−231)、乳房内同所性乳房腫瘍(3種陰性4T1)、HCT116結腸直腸がん細胞からの腹膜転移モデル、患者由来の腎臓がんの異種移植片、及びU87神経膠腫細胞からの同所性脳腫瘍が画像化された。全ての腫瘍は、免疫応答性BalB/Cマウスの4Tl腫瘍無しのNOD−SCIDマウスで確立された。輝く蛍光照明が全ての腫瘍のタイプについて観察された(図48)。エクスビボ・イメージングは高いがん選択性で筋肉に対して腫瘍の高いコントラスト比(20〜50倍)を明らかにした(図49A及び49B)。HN5腫瘍モデルを用いて、PINSイメージングと多眼医療用カメラとの適合性が実証された(図50A〜50F)。
【0193】
SPYカメラを用いて、HN5頭頸部がんまたは4T1乳がんを有するマウスにおいてリアルタイム腫瘍アシドーシス誘導手術(TAGS)を行った。PINS(2.5mg/kg)を、手術の12〜24時間前に静脈内注射した。初期腫瘍切除後の、HN5腫瘍を有するマウスの代表的手術で、残存腫瘍をSPYカメラにより明確に視認でき(図51Aの左中断パネル)、白色光ではできなかった(左頂部パネル)。境界抽出の正確性を調査するため、HN5頭頸部腫瘍を有する9匹のマウスにおける非生存手術を、二重盲検プロトコルを用いて分析した。外科医は、PINS照明下で腫瘍を切除し、組織試料(2〜3mmサイズ)を、蛍光に基づき初期腫瘍、腫瘍境界または陰性筋肉組織としてマークした。試料はその後冷凍され、分割され、H&Eで着色された。組織学的評価は臨床病理医により独立して行われた(図52)。究極の判断基準として組織構造を用いて、PINS蛍光評価は、89.5%と100%との間の、95%の検出精度信頼性を持つものであった(n=27)。長期間生存の手術成果は、白色光手術(WLS)、減量手術及び未処理対照に対してTAGSを用いることにより局所領域制御及び全生存が改良された(図51B)。肉眼的に断端陽性を有する減量手術は一般に頭頸部がんの生存利益は無く、WLSの妥当性について調整するために機能する。WLSは、良好で公平な技術を示唆する同等の生存を示した減量及び未処理対照(P<0.0001)より優れていた。TAGSは、最高の成果、即ち18の内13の動物(72%)が術後150日での治癒、を示した(P<0.0001対WLS、図51B)。
【0194】
肉眼で発見できないがん性小結節を同定することが、腫瘍境界より優先されるかもしれない臨床シナリオを模倣するために、小さい同所性乳房腫瘍が、免疫応答性雌Ba1B/Cマウスにおいて確立された。5×10の3種陰性4T1乳がん細胞が鼠径の乳腺体に注射された。24時間の推定倍増時間で、結節サイズは、4日目の増殖巣で<100万4T1細胞を示す。SPYカメラ下のPINSは4T1増殖巣を同定することが可能であり、組織構造により確認された(図53A〜53C)。腫瘍は、目視検査または触診で検出することはできなかった。白色光制御について、腫瘍は約25mmまで増殖させて可視化させ、注意深く初期腫瘍と周囲の境界を切除した。TAGSは、より優れた可視化をもたらし、未処理対照及びWLSに対して切除後の生存を改善させ(P<0.05、図53D)、PINSによる素晴らしいイメージング感度を実証した。
【0195】
異なる腫瘍アシドーシス経路を標的とする小分子阻害剤に応答する腫瘍を、PINSにより評価した(図54A〜54C)。4種の阻害剤を選択した:炭酸脱水酵素IX型(CAIX),V)(Neri & Supuran,2011)、モノカルボキシレートトランスポート(MCT)のためのα−シアノ−4−ヒドロキシシンナメート(CHC)(Sonveauxら,2008)、ナトリウムプロトン交換体1型のためのカリポリド(cariporide)(NHE1)(Cardoneら,2005)、及びプロトンポンプ阻害剤(PPI)としてのパントプラゾール(Vishvakarma & Singh,2011)。PINSは、4T1腫瘍を有するBalB/Cマウスに静脈内注射され、次いで阻害剤が投与された。PINS注射24時間後のNIRイメージンは、PBS対照に対してCAIX阻害剤アセタゾールアミドにより劇的な阻害(74.2%)を示した。MCT阻害剤CHCによる穏やかな阻害(29.3%)も観察した。カリポリドまたはパントプラゾールでは顕著な阻害は見られなかった。PINS応答は、4T1腫瘍内のCAIX阻害剤の以前報告された抗腫瘍有効性と一致する(Louら,2011及びPacchianoら,2011)。H/3119または過分極13C MRI法(Gallagherら,2008)に比較して、PINSイメージングは、腫瘍アシドーシスの機構調査及び固体がんの無調節pHを標的とする薬の開発のための簡単で便利なレポーターアッセイを提供する(Neri & Supuran,2011及びParksら,2013)。
【0196】
免疫応答性C57BL/6マウスにおけるPINSの安全性評価は、高い用量で一時的な体重減少を示した(図55A及び表8&9)。最大耐性用量は250mg/kgで、イメージング用量より100倍高い。マウスは、200及び250mg/kgにおいて1、7及び28日目に犠牲になった。肝臓及び腎臓機能が測定された(図55B〜55D)。肝臓の酵素レベルは(ALT及びGOT)はPINS注射1日後増加し、7日後に正常に戻った。組織構造分析(図56)は、250mg/kgグループの肝臓に1日目で微小脂肪変性が起こり、28日目までに正常に戻ったことを示した。他の主要な臓器(例えば、腎臓、心臓、脾臓、脳)は正常である。
【0197】
【表8】
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【0198】
【表9】
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【0199】
2.材料及び方法
PINSのモノマー及びポリマーの特性評価。2−(エチルプロピルアミノ)エチルメタクリレート(EPA−MA)及びポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート)コポリマー(PEG−b−(PEPA))合成は、前の方法セクションで記載した。以下に、モノマー及びポリマーの化学特性を示す。
【0200】
2−(エチルプロピルアミノ)エチルメタクリレート(EPA−MA):H NMR(TMS,CDCl,ppm)6.10(s,1H,CHH=C(CH)−),5.54 (s,1H,CHH=C(CH)−),4.20(t,2H,−OCHCHN−),2.75(t,2H,−OCHCHN−),2.58(q,2H,−N(CHCHCH)(CHCH)),2.44(m、2H,−N(CHCHCH)(CHCH)),1.94(s,3H,CH=C(CH)−),1.45(m、2H,−N(CHCHCH)(CHCH)),1.02(t,3H,−N(CHCHCH)(CHCH)),0.87(t,3H,−N(CHCHCH)(CHCH))。13CNMR (CDCl,ppm):167.42,136.36,125.35,63.20,56.31,51.51,48.32,20.54,18.33,12.09,11.82。[M+H]:200.2(計算値200.3)。
【0201】
ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート)(PEO−b−P(EPA)100):H NMR(TMS,CDCl,ppm):3.99 (b,204H,−COOCH−),3.83−3.45(m、450H,−CHCHO−),3.38(s,3H,CHO−),2.68(b,204H−OCHCHN),2.55(b,204H,N(CHCHCH)(CHCH)),2.41(b,204H,−N(CHCHCH)(CHCH)),1.78−1.90(m、270H,CCHC & C(CH),1.45(m、204H,−N(CHCHCH)(CHCH)),1.02(b,306,−N(CHCHCH)(CHCH)),0.88(b,306H,−N(CHCHCH)(CHCH))。13CNMR(CDCl,ppm):177.73,177.33,176.61,70.58,63.26,63.13,56.21,51.09,45.05,44.70,38.69,31.92,30.33,29.69,29.36,28.90,23.72,22.98,22.69,20.62,16.53,14.13,12.18,11.91。
【0202】
PINSの蛍光活性化。異なるpH緩衝液におけるPINSの蛍光強度は日立蛍光光度計(F−7500モデル)で測定された。各PINS組成については、2.5mg/mL濃度のMilliQ水の貯蔵溶液を調製した。その後、貯蔵溶液を、異なるpHを有する80mMホスフェート緩衝化生理食塩水(PBS)緩衝液、或いは異なるpHを有する80mMPBS緩衝液中の50%ヒト血清のいずれかで希釈した。最終ミセル濃度は、PBS中0.05mg/mL、または50%ヒト血清中0.025mg/mLに調整された。ナノプローブ溶液は780nmで励起され、そして発光スペクトルは800nm〜900nmで集められた。PBSの815nmでの及び50%ヒト血清の830nmでの発光強度が、ナノプローブのpH応答性の定量化のために使用された。異なるpH値での、試験管内のPINS溶液(0.05mg/mL)の蛍光画像は、SPY Elite(登録商標)イメージングシステムにより撮影された。
【0203】
貯蔵期間の研究。新しく調製されたナノプローブ水溶液(5mg/mL)を、同量の20%スクロース水溶液と混合し、10%スクロース中の2.5mg/mL貯蔵溶液を得た。貯蔵溶液は分割され、数個の試験管内に密封し、−20℃の冷凍機で冷凍した。サンプルを指定された時点で解凍し、前述のPBSまたは50%ヒト血清中で蛍光活性化の試験を行った。
【0204】
細胞培養。インビボで腫瘍モデルに使用されるがん細胞株としては、HN5、FaDu、HCC4034ヒト頭頸部がん、MDA−MB−231及び4T1乳がん、U87神経膠腫、並びにHCT116大腸がん細胞が挙げられる。HN5及びFaDu細胞株はMichael Story’s labから得られ;HCC4034は、Dr.Baran Sumerの頭頸部患者の切除腫瘍からJohn Minna’s labにより確立され;MDA−MB−231、4T1及びHCT116はDavid Boothman labから得られ;U87はDawen Zhao labより得られた。全ての細胞株は、使用前にマイコプラズマ汚染の試験を受けた。汚染の否定された状態が、BiotoolからのMycoplasma Detection Kitで確認された。細胞は10%のウシ胎仔血清及び抗生物質と共にDMEMで培養された。
【0205】
動物モデル。この研究に関連する動物プロトコルは、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により再調査され、承認された。雌NOD−SCIDマウス(6〜8週間)は、テキサス大学南西医療センター繁殖コア(UT Southwestern Medical Center Breeding Core)から購入した。同所性頭頸部腫瘍について、HN5、FaDuまたはHCC4034細胞(マウス当たり2×10)が顎下の三角エリアに注射された。接種1週間後、100〜200mmのサイズの腫瘍を有する動物が研究をイメージングするために使用された。皮下の乳房腫瘍は、右脇腹にMDA−MB−231(マウス当たり2×10)を注射することにより確立された。腹膜転移は、HCT−116(マウス当たり2×10)を腹腔内注射し、その後腹部を優しくマッサージすることにより確立された。同所性U87神経膠腫を有するマウスは、U87の頭蓋内注射により確立された。XP296患者由来の腎臓異種移植片を有するマウスはJames Brugarolas labより提供された。雌BalB/Cマウス(6〜8週間)は、テキサス大学南西医療センター繁殖コア(UT Southwestern Medical Center Breeding Core)から購入した。同所性乳房腫瘍は、4T1(マウス当たり5×10)細胞の胸部乳腺への注射によりBalB/Cマウスに確立された。
【0206】
用量−応答の研究。HN5腫瘍を有するマウス(各グループ3)に1.0、2.5または5.0mg/kgのPINS等張溶液を注射した。対照グループに0.08mg/kg遊離ICG色素(2.5mg/kgPINS中の色素含有量に相当)を注射した。指定された時点で、マウスを2.5%イソフルラン(isofluorane)で麻酔し、SPY Elite(登録商標)で画像化した。蛍光強度をImage Jで測定した。コントラスト対ノイズ比(CNR)は以下の式で計算された:
【0207】
【数1】
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FI(Tumors) 及び FI(Normal Tissue)は、それぞれ腫瘍及び正常組織の蛍光強度である。背景ノイズは正常組織蛍光の標準偏差として測定された。
【0208】
インビボ及びエクスビボ蛍光イメージング。ナノプローブ(U87及びXP296に対して3.0mg/kgとした以外は、全ての腫瘍モデルに対しては2.5mg/kg)は、腫瘍を有するマウスの尾静脈を介して静脈内投与した。24時間後、動物はSPY Elite(登録商標)医療用カメラにより画像化された。エクスビボ・イメージングについては、腫瘍及び主要な器官が摘出され、画像化された。腫瘍及び器官の蛍光強度は、匹敵するサイズの筋肉組織に正規化された。
【0209】
実施例7:エンドサイトーシスオルガネラを評価するためのミセルの使用並びにシグナル伝達及び増殖におけるそれらの使用
1.pH応答性システムの調製
オルガネラの生理的役割を評価するために、一連の両親媒性ブロックコポリマーPEO−b−P(R−r−R)[但し、PEOはポリ(エチレンオキシド)であり、P(R−r−R)はイオン化可能ランダムコポリマーブロックである]を合成した(図57A及び図58)。各コポリマーの分子組成を表10に示す。高いpH(例えば、ホスフェート緩衝化生理食塩水において7.4)において、これらのコポリマーは核−殻(コア−シェル)ミセル構造にに自己組織化する(直径30〜60nm、表面静電電位−2〜0mV、表10及び図59)。各コポリマーの見かけのpKより低いpHで、ミセルは、第3級アミンのプロトン化のために、ユニマーに解離する。以前の研究では、鋭いpH依存性ミセル転移を、一連の、微調整、超pH感受性の蛍光センサーの開発のために利用した(Ma,ら,2014)。
【0210】
【表10】
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【0211】
本明細書には、広い範囲のpH(4.0〜7.4)における狭いpH間隔で非常に優れたpH調節緩衝能力を有するUPSナノプローブが記載されている。図57Bは、150mM NaClの存在下における、3つの例、UPS4.4、UPS5.3及びUPS6.2ナノプローブ(各下付き文字は、対応コポリマーのpKaを指示する、表10)のpH滴定曲線を示す。UPS4.4、UPS5.3及びUPS6.2(2mg/mL)は、HCl(0.4M)がポリマー溶液に添加された時、それぞれ、そのpHを4.4、5.3及び6.2の見かけのpKに緩衝化され得る。対照的に、クロロキン(CQ)、生物学的研究において広く使用されている小分子ベースは、pH6〜9(pK=8.3)の範囲の広いpH応答を示し、同様にポリエチレンイミンも広いpH緩衝を示した(Suhら,1994)。pH滴定曲線(図57C及び図60)からの緩衝能力の決定により、pH4.0〜7.4の範囲で特定のpHで非常に優れた緩衝強度を示した。より具体的には、UPS4.4、UPS5.6及びUPS7.1ナノプローブの最大値は、ナノプローブ40mg当たり1.4、1.5及び1.6mmol HClであり、これはそれぞれ、pH4.4、5.6及び7.1において339倍、75倍及び30倍CQより高かった(図57C)。UPSナノプローブのこの収集は、初期エンドソーム(E.E.,6.0−6.5)(Weisz,2003)から後期エンドソーム(L.E.,5.0−5.5)(Weisz,2003)へ、リソソーム(4.0−4.5) (Casey,2010)へのオルガネラpHの機能的範囲に、独特な一連のpH特異的「プロトン・スポンジ」を提供する。
【0212】
2.pH緩衝能力及びプロトンポンプ速度
イメージング及び緩衝の同時研究のために、デュアル蛍光レポータを有する新しいナノ粒子設計が確立された:pH環境に拘わりなく細胞内ナノ粒子分布をたどる「常時オン」レポータ、及びpH活性化可能レポータ(細胞外媒体pH7.4でオフ及びエンドサイトーシス後の特定のオルガネラpHでオン)。PEOの末端に色素(例えば、Cy3.5)を結合させる際の初期の試みでは常時オンシグナルで成功するが、得られたナノ粒子は、色素が血清タンパク質に結合する結果として不安定であった。この制約を除去するために、ミセルの核に導入された1対のフルオロフォアを用いたヘテロFRET設計が使用された。例えば、FRETペア(例えば、BODIPY及びCy3.5、それぞれ供与体及び受容体である)をUPS6.2コポリマーのPRセグメントに結合した。同じミセル核内で2種の色素結合コポリマー(供与体/受容体の最適なモル比=2:1)を混合することにより、ミセル状態(pH>pK)で共与体色素(例えば、BODIPY)のヘテロFRET誘発蛍光の消光を可能にするが、ミセル分解後のユニマー状態での蛍光回復はより低いpHで可能である(図61A上側パネル)。「常時オン」シグナルを発生させるために、ミセル中のCy3.5結合コポリマーの重量分率を低く維持して(例えば、40%)、ミセル状態での受容体色素のホモFRET誘発蛍光の消光を回避した(Zhou,ら,2012)(図61B)。得られたUPSナノ粒子は、広いpH範囲にわたりCy3.5チャンネルにおいて一定の蛍光強度を示し、BODIPYシグナルについては特定のpHで超pH感受性活性化を達成した(図61C)。両方のフルオロフォアがミセル核内に埋め込まれたので、得られるUPSナノ粒子は安定で、プロテイン結合はしない。
【0213】
UPS6.2及びUPS5.3は、それらの見かけのpKが、それぞれ早期エンドソームから後期エンドソームへ、及びリソソームへの転移に対応するので(Weisz,2003)、イメージング及び緩衝化の研究のために選択された。HeLa細胞を、増大する用量(100、400及び1,000μg/mL)のUPS6.2またはUPS5.3で37℃において5分間培養させ、エンドサイトーシスにより粒子を摂取させ(Conner & Schmid,2003)、その後新鮮な媒体(DMEM中10%FBS)で洗浄した。100μg/mLで、最大の半分のUPS6.2活性化(BODIPYチャンネル)が30分まで観察され、最大の半分のUPS5.3活性化(BODIPYチャンネル)が60分まで観察された(UPS6.2に関する図62A及び62B;UPS5.3に関する図63A及び63B)。対照的に、1,000μg/mLで、BODIPYシグナルの活性化が、Cy3.5シグナルによるHeLa細胞内の粒子摂取の明確な指示にも拘わらず、少なくとも60分まで遅れた(図62A及び62B並びに図63A及び63B)。インサイチューで、リソセンサーによるエンドソームのpHの定量は、細胞を400及び1,000μg/mLのUPS6.2図62C)及びUPS5.3図63C)に曝した時に、それぞれpH6.2及び5.3において用量依存性の持続的なpH停滞期(plateaus)を示した。いずれのナノ粒子についても、100μg/ml用量ではオルガネラの酸性化を遅らせるには不十分であった。
【0214】
さらに酸性化速度を定量化するため、HeLa細胞当たりのミセルナノ粒子の数を、細胞数で割られた取り込まれたUPSの蛍光強度に基づいて測定した(下記方法を参照)。データは、より高い摂取用量でのナノ粒子が増加することを示している(表11)。ミセル(64,000)当たりのアミノ基の数、及び細胞当たりの200エンドソーム/リソソームの平均(Holtzman,1989)に基づいて、酸性化速度は各オルガネラについて1秒当たり約150〜210プロトンと計算された。この結果は、V−ATPase当たり加水分解されたATP当たり2プロトン(Deamerら,1999)、1回転当たり消費される3ATP分子(Cross & Muller,2004)、1秒当たり2.4回転(Imamuraら,2003)、及びオルガネラ当たり20V−ATPaseの平均(Imamuraら,2003)に基づく計算と一致している。
【0215】
【表11】
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【0216】
3.mTORC1活性化の2つの異なるモデルに関するpH閾値
エンドソームタンパク質被覆成熟及びエンド/リソソーム−依存性シグナルの形質導入に対する内腔(管腔)pHのUPS緩衝化の影響を調査した。この目的のため、別々に報告され且つpH6.2、5.3、5.0、4.7及び4.4で緩衝作用を示すUPSナノ粒子が選択された。この範囲は、早期エンドソーム、後期エンドソーム、及びリソソームにおける確立された内腔pH値をカバーする。早期エンドソーム生合成の際立った特徴は、Rab5 GTPaseの漸増(Huotari,& Helenius,2011)であり、それは6.0〜6.5の内腔pH範囲に対応する(Weisz,2003)。完全成熟リソソームは、4.0〜4.5の内腔pH範囲を有するLAMP2陽性である(Caseyら,2010)。エンドソーム成熟マーカーを有するUPS陽性エンドソームの共局在化の定量を可能にするために、Cy5をコードしたUPS6.2及びUPS4.4を、ミセル状態で蛍光を検出可能にする低い色素/ポリマー比で開発した(Wangら,2014)(図64A)。1,000μm/mLの濃度で15分以内に、60%を超えるUPS6.2及びUPS4.4陽性エンドソームもまたRab5陽性であった(図64A及び64D)。UPS4.4陽性エンドソームはさらに60分以内にRab5陰性/LAMP2陽性の成熟状態に転移した(図64B及び64E〜64F)。特に、この転移に通常伴う内腔の酸性化の阻害にもかかわらず、UPS6.2陽性エンドソームも類似の時間枠でLAMP2陽性になった(図64B及び64D)。しかしながら、UPS6.2はRab5の放出を遅らせ、60分で異常なRab5/LAMP2陽性エンドソームの過渡的な蓄積をもたらした(図64B及び64F)。これらの観察されたものは、内腔pH及び内腔pH感受性Rab5放出メカニズムの存在に依存しない新生エンドソームにLAMP2を補強する調整メカニズムの存在を示唆している。
【0217】
内腔pHがエンド/リソソーム生態に固定された影響を調査するために、リソソーム生合成−、即ちラパマイシン錯体1(mTORC1)の哺乳類標的を介して細胞増殖の栄養依存活性化に繋がると最近報告された重要な調整システムが評価された。哺乳類細胞では、mTORC1は、取り込まれた遊離アミノ酸に呼応してエンド/リソソーム膜に局在する(Sancakら,2010)。さらに、エンド/リソソーム膜上のV−ATPase及びRag GTPasesの間の物理的相互作用が、栄養の利用に呼応してmTORC1活性化のために必要である(Zoncuら,2011)。アミノ酸誘発mTORC1活性化を評価するために、mTORC1経路活性化の2つの定量レポータが使用された:mTORC1基質p70S6キナーゼ(p70S6K)のリン酸化反応/活性化及びmTORC1基質TFEBの核/細胞質分布。
【0218】
栄養分を含まない平衡塩類溶液(EBSS)においてHeLa細胞の2時間の培養は、p70S6K及びそれの基質S6の両方における活性化部位リン酸化反応の蓄積が減少したことにより誘発されるmTORC1活性を阻害するために十分であった。必須アミノ酸の添加は、5分以内に経路活性化を誘発するために十分であった(図65A、及び図66A及び66B)。1,000μg/mlのUPS4.7またはUPS4.4での処理は、遊離アミノ酸に対するmTORC1応答への影響はほとんどまたは全く無かった。対照的に、1,000μg/mlのUPS6.2、UPS5.3及びUPS5.0による前処理は遊離アミノ酸に対するmTORC1応答を遅らせ且つ顕著に抑制した(図65A及び65B、並びに図66A及び66B)。mTORC1経路応答の選択的UPS阻害は、TFEB核/細胞質分布とよく似ている。mTORC1によるこの転写因子のリン酸化反応は核排除をもたらし、これにより栄養が十分な状態でのTFEB転写プログラムを阻害する(Pena−Llopisら,2011,Settembreら,2012及びRoczniak−Fergusonら,2012)。Hela細胞において、GFP−標識づけされたTFEBの安定した発現を用いた場合、UPS6.2、UPS5.3及びUPS5.0は、遊離アミノ酸添加時のTFEBの細胞質への再分配を阻害した。対照的に、UPS4.7及びUPS4.4で前処理された細胞においては、THEB再分配は正常に進行した(図65C及び65D)。
【0219】
上記データは、pH5の閾値を下回るエンドソームの酸性化には、mTORC1の遊離アミノ酸誘発活性化が必要であることを示唆している。類似の実験が、遊離アミノ酸よりむしろ高分子の栄養源として牛血清アルブミン(BSA)を用いて行われた。遊離アミノ酸のように、BSA暴露が、mTORC1の再活性化と、それに続く栄養飢餓に十分であった(図67A〜67D)。しかしながら、遊離アミノ酸と対照的に、UPS4.4はBSAに呼応してmTORC1の活性化を遅らせた(図67A&67D)。UPS4.4で処理された細胞が遊離アミノ酸に正常に応答したことを考慮すると、遅れた応答は、BSAと推量され、即ちリソソーム内の酸性加水分解酵素によるBSAのタンパク質分解阻害の結果と推量された。これに合致して、UPS4.4の存在でカテプシンB活性の顕著な阻害が見られた(図66C)。同時に、これらの観察は、明らかなリソソームpH閾値は酸性加水分解酵素活性対遊離アミノ酸検知(sensing)に必要であることを示唆している(図65E)。
【0220】
4.緩衝化リソソームpHによる細胞代謝産物プールの調節
代謝中間体を製造するためのリソソーム再循環細胞内高分子及び破片は、エネルギー製造、または細胞環境の栄養状態に呼応した新しい細胞成分の構築のために配置された(Settembreら,2013)。リソソーム中の脂質及び糖タンパク質などの大きな分子の異常な蓄積は、代謝障害と関連する。リソソームの酸性化の高度に選択的な摂動と関連する変化について広く評価するために、細胞内の小さな代謝産物の蓄積は、栄養飢餓対栄養十分な成長条件下でUPS4.4を投与することにより定量化された。0、200及び400μg/mlのUPS4.4に12時間曝した後、HeLa細胞を溶解し、細胞な代謝産物を液体クロマトグラフィ−三連四重極質量分析計(LC/MS/MS)を用いて定量化した。68の代謝産物が3×10HeLaから定量可能であり、リソソーム内の4.4でのpH停止における用量依存性及び栄養依存性の多数の結果を明らかにした(図68A)。栄養十分な状態で、UPS4.4用量の増加と共に、比較的大量のほとんどの代謝産物も、細胞タンパク質含有量を正規化すると、増加した。これはほとんどのアミノ酸を包含し(図68B上側パネル)、これらのアミノ酸は、アミノ酸のリソソーム排出におけるタンパク質合成及び/または欠陥のためにそれらを使用する必要がある同化シグナルの阻害と一致している。栄養不足の条件で、UPS4.4は、比較的多量のヌクレオチド及びそれらの前駆体(例えば、図68Aの底部一群)を増進させ、そして第2のメッセンジャーcAMPを大幅に抑制した。リシン、バリン、メチオニン、及びアルギニン等の多くの必須アミノ酸の損失も観察され、アルブミンのような高分子の飢餓誘発異化作用の阻害と一致した(図68B下側パネル)。これらの結果は、オルガネラ酸性化と代謝産物プールとの間の機構的関連を示唆しており、また、妥当なリソソームの酸性度は、栄養が存在しても存在しなくても、多くの代謝経路の恒常性に必要であることを示唆している(図68C)。
【0221】
5.NSCLC細胞のエンド/リソソームのpH停止への影響
本発明者等は、最近、非小細胞肺がん(NSCLC)における選択的代謝脆弱性を記述したが、これによれば、KRASがん遺伝子及びLKB1腫瘍抑制遺伝子における共発生突然変異が、ミトコンドリアの健康維持のためのリソソーム異化の細胞依存性をもたらす(Kimら,2013)。V−ATPase活性度の遺伝性または化学的阻害は、この発がん性の背景においてプログラム細胞死を選択的に誘発させるのに十分であった。これが、ATP産生のためのTCAサイクル基質のリソソームに依存する供給を阻害する直接的な影響であると提案された。UPSライブラリーは、がん細胞において、細胞質pH及びmTORC1/AMPKタンパク質錯体に対するV−ATPasesの多面的寄与に関連する交絡因子の非存在下にこの仮説を直接試験する機会を提供した(Zoncuら,2011 Zhangら,2014)。モデルシステムとして、同一の患者から得られた正常(HBEC30KT)及び腫瘍由来(HCC4017)の細胞株を、KRAS及びLKB1の病変が、背景の正常細胞に人工的に導入された一連の同質遺伝子進行細胞と一緒に使用した(図69A)(Ramirezら,2004)。高い用量のUPS6.2、UPS5.3及びUPS4.4で処理されたHCC4017とHBEC30KTとの間の細胞数及びモルホロジーの比較が、これらのUPSナノ粒子のHCC4017に対する高度に選択的な毒性を明らかにした(図69B)。LKB1の阻害と一緒に発がん性KRASの発現が、UPS誘発プログラム細胞死に対して気管支上皮細胞の選択性を誘発するのに十分であった(図69C〜69E)。重要なことは、この表現型が、腫瘍由来細胞(図69G)及び遺伝的に操作された細胞(図69G)の両方において、TCAサイクル基質(ピルビン酸メチル及びα−ケトグルタレート)の細胞透過性相似器官の添加時に、救出されたことである。従って、リソソーム機能に対するKRAS/LKB1共成熟NSCLC細胞の選択的脆弱性は、細胞外高分子の異化作用への依存に由来している。さらにUPS4.4に対するUPS6.2のより高い細胞毒性は、mTORC1阻害がさらにこれらの細胞の致死率に寄与したことを示している。
【0222】
6.考察
内腔酸性化は、異なるステージでの受容体リサイクリング、オルガネラ輸送及びタンパク質/脂質異化作用などの際立った細胞機能を与える哺乳類の細胞におけるエンドサイト―シスオルガネラの成熟の特徴である(Maxfield & McGraw,2004及びYeungら,2006)。現存する手段または試薬(例えば、クロロキン、NHCl、bafilomycin A1)は、細胞透過性であり、広い範囲のpH活性度をブロックする。結果として、これらの試薬を用いたエンドソーム/リソソームの機能についての生物学的質問として、調合された非特異的pH効果、並びに他の酸性オルガネラ(例えばゴルジ(Golgi))からの寄与されるものを受けるかもしれない。対照的に、現在のUPSナノ粒子は専らエンドサイトーシスを経由して細胞に入る;さらにそれらは、エンドサイトーシス経路に沿ってオペレータが予め定めた閾値にて内腔pHの強固で微細な緩衝化(buffering)を可能にする。素晴らしいpH特異緩衝効果は、以前報告された超pH感受性蛍光応答(Zhouら,2011及びZhouら,2012)と共に、自己組織化システムにおいて独特のナノスケール特性であり、そこでは疎水性ミセル化(相転移)が、第3級アミンの共同プロトン化に導くpH転移を劇的に鋭くする。結果として、UPSナノ粒子は0.3pH単位以内で高い解像度の緩衝効果をもたらした。UPSプラットフォームの緩衝化pH範囲(ほぼ見かけのpKの中心)は、電子吸引/供与性の置換基によりほとんど制御される小分子pH緩衝液/センサーとは異なるPRセグメントの疎水性により微調整することができる(Urano,ら,2008)。独特のpH特異性の、調整可能な「プロトン・スポンジ」効果は、他の低分解能ポリ塩基緩衝液(例えば、ポリエチレンイミン、図57C)とは異なる。さらに、イメージング及び緩衝化能力を同時に達成するために、常時オン/オフ−オン組成を、ヘテロFRET戦略を用いて構築した。このナノ粒子の設計は、HeLa細胞内でのエンドサイトーシス・オルガネラの酸性化速度(1秒当たり150〜210プロトン)の最初の測定を可能にし、それは文献データに基づく推定(240〜310)の大きさと同じオーダー(order)にある。
【0223】
UPSライブラリーの詳細な評価では、エンドサイトーシスオルガネラの内腔pHの摂動がいかに多細胞生理的プロセスに影響を与えたかについて説明した。そして、これはエンドソームの生態及びバイオナノ相互作用を理解する上で貢献している。より具体的には、ライブラリーの「摂動を与える、及び報告する(perturb and report)」との特徴は、エンドソームの成熟の時間分解された定量を可能にし、エンドソームのコートタンパク質の交換での内腔pHの以前正しく評価されていなかった重大な結果を明らかにした。とりわけ、「成熟」リソソームマーカー、LAMP2、の増強が、内腔酸性化と関係なく起こることが分かった。一方、初期エンドソームマーカーRab5の放出は、内腔アルカリ化により遅れるようにされ、Rab5/LAMP2陽性エンドソームのデノボ(de novo)蓄積をもたらす。このことは、現在は述べられていないが探求可能な、エンドソーム/リソソーム生合成を統括するpH感受性及びpH非感受性のメカニズムの存在を示唆している。UPS緩衝容量を微調整する能力はまた、mTORC1経路の遊離アミノ酸対アルブミンに依存する活性化に必要な確かなpH閾値の識別を可能にする。いかなる理論に束縛されることを望むものではないが、pH5.0以下の酸性化が、V−ATPaseタンパク質錯体との「内側から外側の」やりとりのための、またはアミノ酸センシング中のV−ATPaseにおける立体構造変化の誘導のための、遊離アミノ酸を放出するのに必要である(Zoncuら,2011)。同様に、pH4.4以下の酸性化が、mTORC1経路のアルブミン依存活性化に使用され、多分、加水分解酵素の活性化、それに続くタンパク質異化作用に必要である。UPS合成の拡張性は、細胞外高分子のリソソーム消費の阻害時における細胞代謝環境を広範囲に定量化することを可能にした。エンドサイトーシスオルガネラ内のUPSの排他的摂取は、増殖調節の信号伝達の経路及び細胞代謝においてエンドソーム/リソソームのpHの参加を具体的に評価する機会を提供した。
【0224】
7.方法
1.化学品
Cy5―NHS、BODIPY―NHS及びCy3.5―NHSエステルはLumiprobe Corpより購入した(FL,USA)。モノマーの、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEA−MA)及び2−アミノエチルメタクリレート(AMA)はPolyscience Companyより購入した。モノマーの、2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)(Zhouら,2011)、2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)及び2−(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート(D5A−MA)(Liら,2014)は発明者の以前の著作物に記載された方法に従い調製し、同様にPEOマクロ開始剤(MeO−PEO114−Br)も調製した。N,N,N’,N”,N”’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)はSigma−Aldrichより購入した。Amiconウルトラ−15遠心ろ過管(Amicon ultra−15 centrifugal filter tubes)(MWCO=100K)をMillipore(MA)より購入した。他の試薬及び有機溶剤はSigma−AldrichまたはFisher Scientific Inc.製の分析グレードであった。
【0225】
2.細胞、培地、及び生物試薬
NSCLC細胞株HCC4017及びそれに合った正常気管支上皮細胞株HBEC30KTは、同一の患者から培養した。これらの細胞株の発生及び対応するのHBEC30KT発がん進行シリーズの発生は以前に報告された(Ramirez,ら,2004)。HCC4017及び全てのHBEC30由来細胞株をACL4(0.02mg/mlインスリン、0.01mg/mlトランスフェリン、25nM亜セレン酸ナトリウム、50nMヒドロコルチゾン、10mM HEPES、1ng/ml EGF、0.01mMエタノールアミン、0.01mM O−ホスホリルエタノールアミン、0.1nMトリヨードチロニン、2mg/ml BSA、0.5mMピルビン酸ナトリウムが添加されたRPMI 1640)で、2%ウシ胎仔血清(FBS,Atlanta Biologicals)及び1%抗生物質(GIBCO)と共に培養した。HeLa及びGFP−TFEB HeLa細胞をDMEM(Invitrogen)中で10%FBS及び1%抗生物質(Invitrogen)と共に培養した。Earle‘s Balanced Salt Solution (EBSS,10×,Sigma)を、2.2g/L重炭酸ナトリウム(Sigma)が添加されたMilli−Q水で1xに希釈した。抗生物質は、Cell Signaling(S6K−pT389,S6K,S6−Ribosomal−Protein−pS235/236,S6 Ribsomal Protein Rab5及びRab7)及びAbcam(LAMP2)から得た。他の生物試薬は、Hoechst 33342(Invitrogen)、LysoSensor Yellow/Blue DND 160(Invitrogen)、Magic Red(商標)Cathepsin B Assay Kit(Immunochemistry Technology)、Bafilomycin A1(Sigma)、Chloroquine(Sigma)及びBCA Protein Assay Kit(Thermo)等であった。
【0226】
3.色素結合PEO−b−(P(R−r−R))ブロックコポリマーの合成
アミノエチルメタクリレート(AMA)を色素との結合に使用した。3つの第1級アミノ基を、AMAモノマー対開始剤の供給比(モル比=3)を制御することにより各ポリマー鎖に導入した。合成後、PEO−b−(PR−r−AMA)を2mL DMFに溶解した。その後、色素−NHSエステル(色素−NHSとして1.5当量)を加えた。1晩反応後、コポリマーを、予備ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10μm 10Å, 300×25mm column by varian,溶離液としてTHFを5mL/分で)により精製し、遊離の色素分子を除去した。得られたコポリマーを凍結乾燥し、貯蔵のため−20℃に保持した。常時−オン/オフ−オンUPSナノ粒子のためのコポリマー合成の唯一の相違は、3つのAMA基がBODIPY結合のためのポリマー鎖に導入され、他方1つのAMA基がCy3.5結合にのために導入される点である。
【0227】
4.UPSナノ粒子ミセルの作製及び特性
典型的手順において、10mg UPSポリマーを500μLのTHF(色素結合無し)またはメタノール(色素結合有り)に溶解した。常時−オン/オフ−オンUPSナノ粒子として、BODIPY−結合ポリマーとCy3.5結合ポリマーを、指示した重量比(図112)で混合し、BODIPYチャンネルでの高いオン/オフ比とCy3.5チャンネルでの安定した常時オンシグナルを与える最良の組み合わせを決定した。溶液を10mLのMilli−Q水に滴下した。有機溶剤を除去するために、ミクロ限外ろ過システム(<100kDa,Amicon Ultra filter units,Millipore)による4〜5回ろ過を用いた。UPSナノ粒子の水溶液を、0.22μmフィルタユニット(Millex−GP syringe filter unit,Millipore)を用いて殺菌した。透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL 1200 EX model,東京,日本)をミセルサイズ及びモルホロジーを調査するために使用した。動的光散乱(DLS, Malvern Nano−ZS model,He−Neレーザ,=633nm)を用いて、100μg/mLミセルPBS溶液の流体力学直径(D)を測定した。示されたデータは5つの独立した測定値の平均であった。ゼータ電位は、ひだ状のキャピラリセル(folded capillary cell)を用いて測定した(Malvern Instruments,Herrenberg,Germany)。示されたデータは3つの独立した測定値の平均であった。
【0228】
5.UPSナノプローブの細胞摂取の定量
HeLa細胞(ウェル当たり1×10)を、6ウェルの組織培養皿に播種した。12〜16時間後、細胞を、血清非含有DMEM中で、UPS6.2−TMR及び/またはUPS5.3−TMRに5分間曝し、その後PBSで3回洗浄した。さらに2時間DMEM+10%FBSで培養後、UPSナノプローブを細胞からメタノールで抽出した。UPSナノプローブミセルはメタノール中でユニマーに解離した。日立蛍光光度計(F−7500モデル)を、UPS−TMRユニマー溶液のRFUを570nmで測定するために使用した。取り込まれたUPSナノプローブの用量はRFU及びUPS−TMR溶液の標準曲線から計算された。
【0229】
6.エンド/リソソームpHの測定
HeLa細胞を、4−または8−ウェルNunc(商標)Lab−Tek(商標)IIChambered Coverglass(Thermo Scientific)に固定し、48時間培養させた。その後、細胞を、血清非含有媒体中の25μMのLysoSensor Yellow/Blue DND−160及び1,000μg/mLのUPSナノプローブに37℃で5分間浸した。細胞は2回洗浄され、即座に画像化(イメージング)された。イメージングは、ディジタルモノクロCoolsnap HQ2カメラ(Roper Scientific,Tucson,AZ)を装備した落射蛍光顕微鏡(Deltavision,Applied Precision)を用いて実施した。蛍光画像は、SoftWoRx v3.4.5(Universal Imaging,Downingtown,PA)を用いて収集された。データは、360/460nm及び360/520nmの励起/発光波長で記録された。DAPI(360nm)のための単一帯域通過励起フィルタは40nmであり、DAPI(460nm)及びFITC(520nm)のための発光フィルタの帯域通過はそれぞれ50nm及び38nmである。細胞蛍光比は、ImageJソフトウェアを用いて保存された単一波長画像の画像分析により決定した。各細胞について、対象範囲は、UPSナノプローブ及びLysoSensorの両方からの蛍光シグナルを発光したサイトゾルの斑点(punctae)として定義される。蛍光強度比は、各細胞内斑点についてR=(F−B)/(F−B)(但し、F及びFはそれぞれ360/520及び360/460での蛍光強度であり、B及びBは、サイトゾルの斑点の近くにある同じ画像上の領域から決定される対応する背景値である)として計算された。RとpH間の関係を標準化するために、我々はDiwuら(1999)により確立された改良プロトコルを用いた。細胞はLysoSensorで一杯にされ、その後10μMのモネンシン及び10μMのニゲリシンで透過処理した。これらの細胞を、30分間、5mMのNaCl、115mMのKCl、1.2mMのMgSO及び25mMのMES(MESバッファー)からなる、pH4.0と7.4との間で変化する平衡緩衝液で処理した。細胞はイメージングまで緩衝液中に保持された。
【0230】
7.共局在化分析
免疫蛍光検査法からの画像を、回転盤共焦点顕微鏡(Andor)を用いて撮影された。Z−スタック(Z−stack)画像は、共局在化分析におけるデコンボリューションの後に用いた。データはImaris7.7(Bitplane)のColocモジュールを用いて分析した。閾値Mander’s係数は、全シグナルにわたって共局在化シグナルの割合の指標として用いた(Mandersら,1993及びBolte & Cordelieres,2006)。
【0231】
8.メタボロミクス解析
HeLa細胞を100mm皿で80%融合まで培養させ、栄養豊富グループと栄養枯渇グループに分けた。栄養枯渇グループ細胞の培地を、生理食塩水で2回洗浄する前に、EBSSに変えた。その後、200または400μg/mLのUPS4.4(最終濃度)または同じ容量の水(対照として、各条件は6つの複製を含む)を、両方のグルームに添加し、1晩置いた。この後に、細胞は氷冷生理食塩水で2回洗浄し、500μLの冷却メタノール/水(50/50、v/v)で覆った。細胞をEppendorf管に移し、3回の凍結融解サイクルに付した。激しいボルテックスの後、破片(debris)を、16,000×g、4℃で15分間遠心分離することによりペレット化した。ペレットはタンパク質定量化に使用した(BCA Protein Assay Kit,Thermo)。上澄みを新しい管に移し、SpeedVac濃縮機(Thermo Savant,Holbrook,NY)を用いて蒸発させて乾燥させた。代謝産物を、100μLの0.03%ギ酸の分析グレード水でもどし、ボルテックス混合し、そして遠心分離して破片を除去した。その後、メタボロミクス研究のために、上澄みをHPLCバイアルに移した。
【0232】
標的の代謝産物プロファイリングを、液体クロマトグラフィ−質量分析/質量分析(LC/MS/MS)アプローチを用いて行った。分離は、Nexera Ultra High Performance Liquid Chromatograph(UHPLC)system(Shimadzu Corporation,京都,日本)を用いてPhenomenex Synergi Polar−RP HPLCカラム(150×2mm、 4μm、80Å)で行った。使用した移動相は、0.03%ギ酸水溶液(A)及び0.03%ギ酸アセトニトリル溶液(B)であった。勾配プログラムは以下の通りであった:0〜3分、100% A;3〜15分、100%〜0% A;15〜21分、0% A;21〜21.1分、0%〜100% A;21.1〜30分、100% A。カラムは35℃に維持され、サンプルは大気中で4℃に保持された。流速は0.5mL/分、注入量は10μLであった。質量分析器は、多重反応モニター(MRM)モードの、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えたAB QTRAP 5500(Applied Biosystems SCIEX,Foster City,CA)であった。サンプル分析は、正/負切換型で行った。デクラスタリング電位(DP)及び衝突エネルギー(CE)は、サンプル分析の前に注射器ポンプを用いて参照基準を直接注入することにより、各代謝産物のために最適化された。MRM MS/MS検出器は以下のように設定した:カーテンガス 30psi;イオンスプレー電圧 5000V(正)及び−1500V(負);温度 650℃;イオン源ガス1 50psi;イオン源ガス2 50psi;インターフェースヒータオン;入口電圧 10V。合計で、69の水溶性内因性代謝物を上記のように明確に検出した、その際ベースラインは細胞非含有サンプルにより設定された。細胞サンプルはランダムな順序で分析され、MRMデータは、Analyst 1.6.1ソフトウェア(Applied Biosystems SCIEX,Foster City,CA)を用いて得られた。
【0233】
クロマトグラムの調査及びピーク領域の積分は、MultiQuantソフトウェア バージョン2.1(Applied Biosystems SCIEX,Foster City,CA)を用いて行った。細胞の数は類似しており、各サンプルは完全に同じように且つランダムに処理されたが、それぞれの検出された代謝産物のピーク領域は、機器分析によるサンプル操作からもたらされるばらつきを修正するためにそのサンプルのタンパク質含有量に対して正規化された。正規化された領域値は多変量及び単変量の統計的データ解析の変数として用いた。共通のMRM転移を有するクロマトグラフィによる共溶出代謝産物は分類されたフォーマット(即ち、ロイシン/イソロイシン)で示した。正規化データに基づくすべての多変量分析及びモデル化は、SIMCA−P(version 13.0.1,Umetrics,Umea Sweden)を用いて行った。予め処理されたデータセットは完全連結法を用いる監視なし階層的クラスタ分析により評価された。
【0234】
実施例8: PET及び蛍光イメージングを用いたデュアルイメージング法
1.蛍光レポータを有する超pH感受性(UPS)ナノプローブの発生
最近、ICG−官能化UPSナノプローブで、6.9にpH転移を有するものが本発明者により開発された。PEG−b−PEPAを、PEPAセグメントの繰り返し単位を変えながら原子移動ラジカル重合法を用いて合成した(40〜120、図70A)。その後、ICG、即ちFDA是認近赤外色素を、異なる色素濃度を有するPEPAセグメントに結合させた(ポリマー鎖当たり1、3及び6個のICG)。正常組織の血液pH(7.4)または間質pH(7.2)において、I−UPS6.9ナノプローブは、ホモFRET誘発蛍光消光の結果として、静かにしている(図70D)(Zhouら,2012及びZhouら,2011)。これらのpHでは、UPS6.9は、動的光散乱分析による25.3±1.5nmの直径及びTEMによる球状モルホロジー(データは示されない)を有する自己組織化ミセルとして存在した。転移pH、応答の鋭さ、蛍光活性化比及びナノプローブの直径に対するポリマー鎖長及びICG濃度の影響を調査した。図70Bは、PEPAセグメント長を変化させた代表的な研究を示す。データは、PEPAの繰り返し単位の40から120への増加がより鋭いpH転移(例えば、それぞれ0.30から0.13に縮減されたpHオン/オフ)及びわずかに低いpH転移(それぞれ6.96から6.91に)をもたらすことを示している。粒径はまたPC7A長(15から30nm)と共に増加した。ポリマー鎖当たり3つのICGは、オン状態での高い蛍光活性化比及び輝く蛍光強度と共に最も典型的な色素濃度を可能にした。これらのデータをもとに、鎖当たり100の繰り返し単位のPC7A及び3つのICG色素を有するUPS組成が選択された。得られたUPSナノプローブは鋭いpH転移(pHオン/オフ=0.15)、高い蛍光活性比(オンとオフ状態の間の>100倍)(図70C)、及び腫瘍透過の典型的粒径(25nm)を有する。この戦略を用いて、多様ながんタイプ及び器官部位を有する一連の広範な動物腫瘍において、腫瘍対腫瘍組織の大きい比を有する広い腫瘍特異性が実証された(Wangら,2014)。腫瘍特異イメージングは、1mmくらい小さい腫瘍において達成された。加えて、I−UPS6.9ナノプローブは血清含有(20%FBS)培地において48時間わたって安定であり、鋭いpH応答及び高い蛍光活性化比を維持している(図70B〜70D)。
【0235】
2.PETイメージングのための放射性トレーサーとしての64CuのUPSナノプローブへの導入
他の非標準PET核種に比べて、64Cu(t1/2=12.7h;β+0.653MeV,17.4%)は、低い陽電子範囲、市場入手容易性、及び合理的な長い崩壊半減期のために、ナノ粒子、抗体及びペプチドに基づく多くのイメージング剤に使用されている(Rossinら,2008及びHaubner & Wester,2004)。金属とキレート剤との間の安定性は、放射線医薬様式設計における成果に重要である。多くのキレート剤は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−テトラ酢酸(DOTA)及び1,4,7−トリアザシクロノナン−トリ酢酸(NOTA)等の64Cu用キレートリガンドとして開発されてきた(Wadasら,2007)。これらの中で、CB−TE2A(図71)がSun及び共同研究者によって報告され、64Cuとの最も安定な錯体の1つを形成するものであり(Sunら,2002)、Cu(II)−CB−TE2A錯体は、他のテトラ大環状錯体と比べて還元的金属損失耐性に優れている(Woodinら,2005)。CB−TE2Aは、64CuをUPSに誘導するためのキレート剤として使用される。NHSエステル官能化CB−TE2Aは文献に報告された手順に従って製造される(Liuら,Angew Chem Int Ed Engl.,48:7346−7349,2009)。ナノプローブ側では、第1級アミノ基が、ポリマー鎖のPEG末端に導入される。NH−PEG−PC7Aは図71に記載の経路で合成される。市販のFmoc−PEG−OHはATRP用のマクロ開始剤の作製に使用される。ATRP後、ポリマーを脱保護した後、第1級アミノ基は再生することができ、NHSエステル官能化CB−TE2Aへの結合に使用することができる。ハイブリッドミセルは、超音波処理及び溶剤蒸発法により、CB−TE2A−PEG−PC7A及びPEG−PC7A−ICGの混合物から形成される。ハイブリッドミセルは、64CuClとミセルを緩衝化溶液で培養し、その後限外ろ過することにより64Cuで標識化される。
【0236】
3.デュアルモダリティUPS及びPETとFDGのみとのイメージング有効性の比較
同所性HN5頭頸部腫瘍を有するマウスにおける予備結果では、3匹のマウスの内2匹に肩甲骨間BATからの強い擬陽性信号が示され、一方I−UPS蛍光は高い特異性を有する腫瘍を描いた(図72)。臨床的には、頭頸部がん患者のBATまたは緊張した頸筋は、上昇したグルコース消費により、PETイメージングにおける異常なものとの誤解に導いた。64CuのUPSナノプローブへの導入により、PET核種の分布が腫瘍アシドーシスを標的することによりシフトされ、このためFDGを有するPETから潜在的擬陽性を除去すると予想される。
【0237】
デュアルモダリティUPSが、PETスキャンによるFDGに対してより確実な腫瘍検出を提供するかどうかを比較検討するために、活性化BATが、イメージング有効性を評価するためにモデルとして用いられる。マウスに同所性頭頸部腫瘍モデルを確立した後、活性BATへのPETイメージングの前に、腫瘍を有するマウスを冷却処理する(Wangら,2012)。特異的であるために、腫瘍を有するマウスを12時間絶食にし、PETイメージングの前に、4℃の冷却部屋内の予備冷却かごに4時間入れる。マウスは均等に3つのグループに分けられ、それぞれ以下の試薬を尾静脈から注射される:1)FDG;2)デュアルモダリティUPS;3)プロプラノロールとFDG。プロプラノロールは、BAT活性化を抑制し、負の制御として機能するβアドレナリン受容体阻害剤である。PET画像が得られ、3D Ordered Subsets Expectation Maximization(3D配列分画期待値最大化)(OSEM3D/MAP)アルゴリズムを用いて単枠に再構築される。対象領域(ROI)は、腫瘍を含む全ての面における腫瘍/BATを包括して、手動で取り出される。標的の活性度は、グラム当たりの注射容量%(%ID/g)として計算される。標準化摂取値(SUV)も、腫瘍、肩甲骨間のBAT、並びに潜在的擬陽性の評価のための周囲の正常組織について計算される。組織構造は、がん組織またはBATの存在の判断のための究極の判断基準として役立つ。FDGグループまたはUPSグループからの頭頸領域において陽性を示す全ての組織は、パラフィン包埋及び切片法により収集される。H&E染色は、各グループの結果と関係する組織構造検証のためにこれらのスライドから調製される。それぞれの試料は、FDG+/−(PETから)、64Cu−UPS+/−(PETから)、がん細胞+/−(組織構造から)及びBAT+/−(組織構造から)に割り当てられる。統計分析は、デュアルモダリティUPSが検出精度を顕著に改善したか否かを判断するために使用される。
【0238】
実施例9:UPSナノプローブを用いたがん手術及び腫瘍除去プロセス
1.UPSナノプローブを用いた多重腫瘍タイプの広域がん特異的イメージング
I−UPS設計の1つの優位性は、観血的手術(SPY Elite(登録商標) by Novadaq)、マイクロ手術(Leica, Carl Zeiss)、腹腔鏡検査(Karl Storz, Olympus)、及びロボット手術 (da Vinci(登録商標))においてICGに基づくイメージングのために既に承認されている現存の手術室カメラシステムと適合しており、臨床解釈の障壁を低くしている。SPYカメラを用いて、多発性がんタイプにおける腫瘍アシドーシスを画像化するI−UPS6.9ナノプローブの実現性を調査した。多発性がんタイプとしては、頭頸部(ヒトHN5、SCIDマウスのFaDu及びHCC4034同所性異種移植片;HCC4034)、乳房(SCIDマウ内のヒトMDA−MB−231及びBALB/Cマウス内のマウス4T1)、腎臓(SCIDマウス内のヒト同所性XP296腫瘍)、脳(ヒト膠芽細胞腫U87異種移植片)、及びGIトラクトからの腹膜転移(SCIDマウス内のヒト結腸直腸HCT−116腫瘍、図73)が挙げられる。結果は、この一連の広域な腫瘍において高い腫瘍/正常組織のコントラスト(T/N比>20)を示している。特に、頭頸部(例えば、褐色脂肪)並びに脳実質(UPS摂取を防ぐ血液脳関門(Hawkins & Davis,2005及びKreuter,2001)による可能性が高い)における典型的な擬陽性腫瘍を、I−UPSシグナルは欠いていた。これらの結果は、がん標的として細胞外酸性pHのロバスト性、及び広範に応用できるがん特異性検出がI−UPSナノプローブにより可能であることを実証している。
【0239】
実施例10:デュアル蛍光レポータUPSナノプローブ
1.デュアル蛍光レポータを有するUPSナノプローブ
腫瘍アシドーシスイメージングにおいてナノプローブ用量とpH活性化を独立して評価するために、デュアル蛍光レポータを有するUPSナノプローブが構成される:pHに関係なくナノ粒子分布を追跡する「常時オン」レポータ、及びpH活性化可能レポータ。PEO(UPSナノプローブの表面など)の末端に色素(例えば、Cy5.5)を結合させる最初の試みは、常時オンシグナルに成功したが、得られたナノ粒子は色素が血清タンパク質と結合するため不安定であった。この制限を除去するため、ミセルの核に導入される一対のフルオロフォアを用いたヘテロFRETを使用する。例えば、FRET対(例えば、供与体と受容体としてそれぞれBODIPYとCy3.5)をUPS6.9コポリマーのPRセグメントに別々に結合させた。同じミセル核内の2種の色素結合コポリマー(供与体/受容体=2:1の最適比)は、ミセル状態(pH>pK)で供与体色素(例えば、BODIPY、λex/λem=493/503nm)のヘテロFRET誘発蛍光消光を可能にしたが、ミセル解離後のユニマー状態での蛍光回復がより低いPHであった(図76A〜C)。「常時オン」を発生させるため、ミセル状態のCy3.5結合コポリマーの重量分率を、ミセル状態で受容体色素(Cy3.5、λex/λem=591/604nm)のヘテロFRET誘発蛍光消光を避けるため、低く保持した(例えば、40%)(Zhouら,2011;2012)。得られたUPSナノ粒子は、広いpH範囲にわたってCy3.5チャンネルにおいて一定の蛍光強度を示し、超pH感受性活性化をBODIPYシグナルの6.9で達成する(図75)。両方のフルオロフォアはミセル核内に埋め込まれるので、得られるUPSナノ粒子は安定で、タンパク質汚染は無い。
【0240】
現在の研究では、ヘテロFRET設計及びBODIPY/Cy3.5組み合わせは、UPSナノプローブに常時−オン/オフ−オンデュアルレポータを導入するために使用される。ミセル形成後、ナノプローブは、まず動的光散乱(DLS,Malvern Zetasizer Nano−ZS model)で流体力学直径(D)及びゼータ電位により特性評価される。UPSナノプローブのサイズとモルホロジーはさらに透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL 1200 EX model)により分析され、DLS結果と関連付けられる。pHへの応答における蛍光活性化の研究のために、ミセルは異なるpH緩衝液(pHは6.0〜7.4に、0.1pH増分で制御される)で0.1mg/mLの濃度において作製される。ナノプローブは、日立蛍光光度計(F−7500モデル)でフルオロフォアに対応する波長で励起される。発光強度はオン/オフ比を定量化するために使用される。臨界ミセル濃度(CMC)はピレン法(Kalyanasundaram & Thomas,1977及びWinnik,1993)を用いて測定する。新しいマウス血清におけるデュアルレポータUPSナノプローブの安定性も、以前記載されたように試験される(Wangら,2014)。
【0241】
2.6.5〜7.1のpH転移を有するUPSナノプローブ
一連の微調整可能な6.5〜7.1のUPSナノプローブは、アシドーシスの種々の段階を有する腫瘍pHを標的にして合成される。オペレータ既定のpH転移(4.0〜7.4)及び鋭いpHを有するUPSライブラリーを構成するためのランダムコポリマー戦略は本明細書に報告され、(Maら,2014)に報告されている。3つの設計基準に合わなければならない:(1)PEO−b−PRコポリマーにおいて、ランダムPRブロック(P(R−r−R))(但し、R及びRは第3級アミン上で異なるアルキル鎖長を有するモノマーである)は単一のpH転移を確実にするために使用されなければならない。ブロック化PRセグメント(P(R−b−R))は、R及びRブロックの異なるイオン化挙動を反映する2つのpH転移をもたらした;(2)R及びRにおける近接して良く合った疎水性を有するモノマーは鋭いpH応答を達成するのに必要である。非限定的な1つの例では、近接アルキル基が使用された時(例えば、R/R=エチル/プロピル)、ΔpHオフ/オンは<0.25であり、R/Rがエチル/ペンチルの時はΔpHオフ/オンは<0.5である;(3)P(R−r−R)セグメントの疎水性は、RとRモノマーのモル分率を制御することにより微調整することができ、正確に制御された転移pHが得られる。
【0242】
上記基準に基づいて、2種のモノマー、ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEA−MA)及びジイソプロピルアミノエチルメタクリレート(DPA−MA)の比を変化させた一連のPEO−b−P(DEA−r−DPA)コポリマー(図76A)を合成する。合計繰り返し単位は100(x+y=100)で制御される。アミノエチルメタクリレート(AMA−MA)がフルオロフォア結合のために導入される(鎖当たりz=3)。図76Bは、代表的色素のCy5.5を用いたpH依存性UPS活性化のデータを示す。結果は、6.3〜7.8のpH範囲に微調整された一連のUPSナノプローブを示している。全てのナノプローブは鋭いpH応答(ΔpHオフ/オン<0.25)を維持した。転移pH対DPAモル%(H NMRにより定量化)のプロットは、直線関係を示す(図76C)。この関係は、6.5、6.7、6.9及び7.1のpH転移を標的とするPEO−b−P(DEA−r−DPA)コポリマーの組成を決定するための標準曲線として使用する。各転移pHのために、SPYイメージング用ICG結合またはメカニズム研究のためのデュアル蛍光レポータを有するナノプローブを製造する。
【0243】
実施例11:腫瘍進行におけるpH調節メカニズムの分析
1.腫瘍進行の種々の段階での異なる糖分解表現型における腫瘍アシドーシスのpH調節メカニズム
本明細書に記載のデュアルレポータUPSナノプローブを用いて、分岐解糖傾向を有する腫瘍が、腫瘍アシドーシスを達成するのに使用される異なるpH調節経路を決定するために調査される。より具体的には、より高い解糖性腫瘍はpH調節のためモノカルボキシレート輸送体(例えば、MCT1/4)を優先的に使用し、一方解糖性が損なわれた腫瘍は腫瘍アシドーシスにおいて炭酸脱水酵素IX型を利用するか否かが調査される。適格解糖性頭頸部がん細胞(例えば、HN5またはFaDu)は、陽性対照として使用され、重要な解糖酵素(例えば、LDHAまたはPKM2)の安定的ノックダウンにより同質遺伝子の解糖性が損なわれた腫瘍を創製する。以前の研究では、LDHAまたはPKM2のshRNAノックダウンが選択的に解糖を阻害し、OXPHOS経路に向かって細胞を再プログラミングすることが示されていた(Christofkら,2008;Fantinら,2006)。小分子阻害剤(例えば、MCT1/4の自殺阻害剤、またはCAIXのアリールスルホンアミド)が、MCT1/4とCAIXとの免疫組織化学の組み合わせで使用される。UPS活性化のパターンは、腫瘍部におけるpH調節タンパク質の空間発現と関係している。
【0244】
2.小分子阻害剤の摂動による腫瘍アシドーシスの機構的研究
腫瘍生体エネルギー学は、解糖機構またはミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)経路の向上と関係する。いくつかの分子レベルのメカニズムが、がん細胞におけるアルカリ性pH及び腫瘍ミクロ環境における酸性pHを維持することに関与している(図77)。pH調節機構は、モノカルボキシレート輸送体(MCT1及びMCT4)(Enerson & Drewes,2003及びHalestrap & Price,1999)、炭酸脱水酵素(CAIX及びCAXII)(Supuran,2008及びSupuran,2010)、アニオン交換体 (AE1、2及び3)(Sterling,ら,2002;Morgan,2004)、Na−重炭酸塩交換体(NBC)(Pouyssegurら,2006)、Na/H交換体(NHE)(Pouyssegurら,2006)及びV−ATPase(Perez−Sayansら,2009)等の多種タンパク質の相互作用と関係している。
【0245】
異なる解糖機構を有する腫瘍におけるアシドーシス機構を調査するために、本発明者等はまずアシドーシスプロセスにおける2つの主要な規制タンパク質の阻害剤から始める:MCT1/4のための自殺CHC阻害剤(図78A〜78E)及びCAIXのためのアセタゾールアミド。本明細書に記載のデュアルレポータUPSナノプローブは、腫瘍のマイクロ環境におけるpH調節性に摂動を与えるために静脈内投与され、酸性化の時空応答をイメージングするためにデュアルレポータUPSナノプローブを使用する。3つのグループのマウスは、以下の異なる解糖表現型を有する皮下肺腫瘍と共に使用される:1)適格解糖速度を有する同所性 HN5またはFaDu;2)LDHAのshRNAにより解糖が損なわれた同所性HN5またはFaDu(Fantinら,2006)。腫瘍サイズは全てのグループにおいて約200mmに制御される。各グループからのマウスは、その後4つのサブグループに分けられる。各サブグループのマウスは以下を受ける:1)PBS;2)CHC阻害剤;3)アセタゾールアミド;4)CHC阻害剤とアセタゾールアミドの両方、それぞれ、その後デュアルレポータUPSが投与される。UPS注射の1、2、4、12及び24時間後に、各腫瘍からのBODIPY(オフ−オン)蛍光強度(FI)及びCy3.5分布(常時オン)がMaestro小動物イメージングシステム(PerkinElmer)により測定され、画像Jにより定量化される。3つの異なるグループ間とFI(サブグループ1)と比較することにより、分岐解糖速度を有するがん細胞が全て、腫瘍マイクロ環境において酸性pHを生成させるか否かが決定される。同じグループからFI(サブグループ2/3/4)/FI(サブグループ1)の比を計算することにより、各経路が、異なる解糖速度を有する腫瘍の全アシドーシスに如何に貢献するかを決定する。各実験の最後に、腫瘍は集められ、凍結切片が試料から調製される。各腫瘍切片について、活性化ナノプローブのBODIPY画像及び絶対プローブ分布のCy3.5画像が記録される。MCT1/4またはCAIXの腫瘍アシドーシスへの相対的寄与は、活性化オン/オフBODIPY対常時オンCy3.5蛍光強度から正規化される。凍結切片はH&Eまたは抗体によって着色され、腫瘍のMCT1/4またはCAIXの発現プロファイルと関連付けられる。低酸素バイオマーカーHIFIαはまた、分布パターンを活性化ナノプローブと比較するために着色される。
【0246】
3.腫瘍進行の異なる段階での腫瘍アシドーシスの腫瘍内異質性の調査
生体エネルギーリモデリングの連続が腫瘍進行と共に存在することは知られている(Joseら,2011)。小さい腫瘍は、グルコースからラクテートへの変換が低い傾向があるが、グルタミンからラクテートへの変換は比較的高い。一方、大きい腫瘍は、グルコース及び酸素の供給が低いにも拘わらず高いグルコース及び酸素利用速度を有する(Eigenbrodtら,1998)。データは、I−UPS法が、SPYカメラで輝く斑点として、極めて小さい腫瘍巣(<1mm、またはBalB/Cマウス内の100万未満の4T1がん細胞、図79A〜79C)を検出することができることを示している。この結果は、I−UPSは、進行の早い段階での小さい腫瘍結節を検出するのに十分な感度を有する。
【0247】
腫瘍増殖中に腫瘍アシドーシス機構の電位スイッチングをモニターするために、HN5及びHN5の解糖性が損なわれたモデルを研究し、腫瘍増殖の異なる段階でのナノプローブ活性化を評価する。腫瘍が10、100、500及び1000mmに増殖した時、動物はまずMCT1/4またはCAIX阻害剤の注射無しで画像化される。その後、CHC阻害剤またはアセタゾールアミドを静脈注射し、対応するpH調節経路を遮断し、動物は再び画像化され、摂動前後の蛍光強度を比較する。CHC阻害剤またはアセタゾールアミド注射の結果としての蛍光強度%の低下が定量化され、それぞれ腫瘍切片におけるMCT1/4またはCAIXの発現レベルと関連づけられる。血管系(アンチ−CD31)及び低酸素症(ピモニダゾール)の着色も、(Wangら,2014)に記載の腫瘍進行の異なる段階での血管新生及び低酸素症のUPS活性化についての評価をするために行われる。
【0248】
実施例11:分岐解糖系表現型を有する腫瘍の検出におけるUPSイメージング
1.分岐解糖速度を有するマウス腫瘍モデル
1つのシリーズで、同所性頭頸部腫瘍(HN5、FaDu、またはHCC4034、図73)は確立され、それらの同系の解糖性が損なわれた腫瘍が、本明細書に記載のLDHAの安定的ノックダウンにより確立される。別のシリーズでは、以前に確立した80の細胞株のパネルから構造的に高い解糖速度対低い解糖速度を有するいくつかの非小細胞肺がん株が選択される。これらの分岐解糖系表現型を有する動物モデルを用いて、I−UPSナノプローブによるアシドーシスイメージングが、がん特異性をより高くするとの仮説が、FDG−PETにより、特に、解糖性が損なわれた腫瘍について試験される。加えて、正常組織における両方のイメージング法からの擬陽性シグナルも調査される。
【0249】
2.頭頸部の正常及び解糖性が損なわれた腫瘍モデルにおけるI−UPSとFDG−PETイメージングの比較
適格な解糖性及び損なわれた解糖性を有するマウスにおいて一連の同所性頭頸部腫瘍モデルを確立する。具体的には、10の選択された頭頸部がん細胞(HN5、FaDuまたはHCC4034)をSCIDマウスのおとがい下三角の領域に注射し、腫瘍を約200mmまで増殖させる。マウスを2つのグループに分ける:1つのグループは、適格解糖性グループとしてスクランブル短ヘアピンRNA(shRNAscr)が注射され;他のグループは、解糖性が損なわれたグループとして、ラクテート形成を遮断するためのラクテート脱水素酵素(LDHA)ノックダウウン短ヘアピンRNA(shRNALDHA)が注射される(Fantinら,2006)。マウスはPETイメージング前に12時間絶食させる。各マウスは、生理食塩水150μL中の150μCiのFDGの尾静脈注射を静脈内より受けた。PET画像は注射1時間後15分間で得られる。PET画像は、3D Ordered Subsets Expectation Maximization(3D配列分画期待値最大化)(OSEM3D/MAP)アルゴリズムを用いて単枠に再構築される。対象領域(ROI)は、腫瘍を含む全ての面における腫瘍を包括して、手動で取り出される。標的の活性度は、グラム当たりの注射容量%(%ID/g)として計算される。標準化摂取値(SUV)も、潜在的擬陽性の評価のために、腫瘍、並びに周囲の正常組織及び他の興味ある臓器(例えば、脳、腎臓、心臓、及びへんとう腺)について計算される。同所性HN5頸部腫瘍を有するマウスにおける最初のデータは、3匹のマウスの内2匹に褐色脂肪組織からの強い擬陽性シグナルを示し(Christofkら,2008;Fantinら,2006)、一方UPSは高い特異性を持つ腫瘍を検出した(図80)。臨床的には、頭頸部がん患者の肩甲骨間の褐色脂肪組織または緊張した頸筋は、上昇したグルコース消費のためPETイメージングにおいては異常なものとして誤った解釈に導く(Mirbolooki,2011; Wangら,2012)。正常組織の構造は擬陽性シグナルの組織源を確認するために前もって作製される。
【0250】
PETイメージング後、マウスは、放射線トレーサー(18F,t1/2=110分)を再活性させるために1晩置かれる。I−UPS(2.5mg/kg)は、その後、尾静脈より注射される。マウスは、注射の24時間後、マウスはSPY Elite(登録商標)医療用カメラで画像化される。全ての体のイメージングの後、マウスは主要な臓器(例えば、心臓、肝臓、腎臓、肺、脳、脾臓等)を除去するため解剖する。腫瘍及び正常組織のエクスビボ・イメージングはSPY Elite(登録商標)医療用カメラで画像化される。腫瘍及び正常組織の比(T/N)は、全ての蛍光画像についてImage Jソフトウェアを用いて定量化される。2つの分岐解糖性動物グループの間で、PETイメージングの解糖度への影響%ID/gまたはSUV、及び蛍光イメージングのT/Nが比較される。蛍光イメージング後、動物の主要な臓器は凍結断片化され、H&Eで着色される。床病理医は、悪性腫瘍の存在及び擬陽性シグナルの組織源の存在を確認する。
【0251】
3.非小細胞肺腫瘍モデルにおけるI−UPSイメージング特異性の調査
頭頸部がんモデルに加えて、分岐解糖速度を有する選択された肺がんモデルにおいてI−UPS及びFDG−PETのイメージング特異性もまた調査する。肺がんSPOREの一部として、細胞培地における80を超える非小細胞肺がん(NSCLC)のパネルについてグルコース消費速度及びラクテート分泌速度(図81)を予め定量した。解糖速度(ラクテートout/グルコースin)対細胞株のプロットは、NSCLC細胞に対して細胞自律的な構造的分岐解糖表現型を描いている。このデータに基づき、高い及び低い解糖速度有する2グループの肺がん細胞を選択する。具体的には、H2170、HCC515及びH2347は、高い解糖パネル(ラクテートout/グルコースinが約2.0)として選択され、そしてH228、H1755及びHCC78は低い解糖パネル(ラクテートout/グルコースinが<0.5)として選択される。これらの細胞株は、UTSW/MDACC肺SPOREから入手でき、SCIDマウスにおいて皮下腫瘍を作りだすことが示された。典型的な手順において、2×10の肺がん細胞はまずマウスの左脇の皮下に注射され、SCIDマウス内に細胞異種移植片を形成する。腫瘍が約200mmに増殖した時、マウスはまずPETで画像化され、その後、前述の手順を用いてI−UPSナノプローブの注射後蛍光イメージングがなされる。I−UPSイメージングの成果は、FDG−PETのものと比較される。特に、I−UPSイメージングはFDG−PETの認識された擬陽性組織(例えば、褐色脂肪、組織学的胸筋)について何も示さないか否かが、評価され、そしてまたI−UPSイメージングは、FDG−PETでは潜在的に検出されない構造的に低い解糖速度を有する肺腫瘍を明らかにすることができる。
【0252】
実施例12:がん細胞における顕微鏡的腫瘍境界と最適UPSナノプローブ活性化との比較
1.UPS活性化プロファイルの定量化及び顕微鏡的腫瘍境界との関連
選択された腫瘍モデルに対して、常時オン/オフ−オン・デュアルレポータを有するナノプローブが静脈内注射される。注射後15分で始めて、1、4及び24時間後に、腫瘍と周囲の組織を集め、凍結切片を試料から調製する。各腫瘍切片について、BODIPY画像が活性化ナノプローブのために記録され、Cy3.5画像が絶対プローブ分布のために記録される。凍結切片はH&Eで着色され、真の腫瘍境界が同定される(現在の医療の最高標準)。より大きい腫瘍のために、複数の画像を記録し、それらを繋ぎ合わせて総合的な比較を行う。
【0253】
定量的画像分析のために、(1)組織構造画像により同定された真の腫瘍境界点(ゼロ点)からの接線を引く(図82)、(2)接線に垂直な別の線を引く、(3)ImageJプログラムを用いて垂直線に沿ってBODIPY及びCy3.5蛍光強度(例えば、ゼロ点から±500μm)を同定する、(4)各腫瘍スライスの複数の境界点から工程1〜3を繰り返し、複数の線形プロファイルの平均値を求める、そして(5)平均蛍光強度対BODIPYとCy3.5チャンネルの距離をプロットする。図82は、デュアルレポータ・ナノプローブによる境界分析のスキームを示す。
【0254】
プローブが解糖性がん細胞によるpH活性化を介して腫瘍を描くことができるか否かを知るために、プローブはH&E画像及びBODIPY(pH活性化可能レポータ)マップを比較して決定される。対処すべきいくつかの特定の問題が挙げられる:(1)ラクテート分泌細胞の分布及び性質はどんなものであるか、並びにラクテート分泌とは、従って腫瘍のサイズ、タイプ及びステージの影響を受ける境界の正確さとは何であるか、(2)UPSナノプローブは、腫瘍の境界の内側及び/または向こう側にpH異質性を識別することができるか否か、及び正常組織に浸潤する残ったがん細胞を、EPR効果の欠如があることにより境界を越えて検出することができるか否か。CFPとCy3.5(常時オンレポータ)を比較することにより、細胞内側のプローブの分布が、時間にわたって腫瘍周囲の正常組織に対して決定される。BODIPYとCy3.5シグナルを比較することにより、プローブ活性化(IBODIPY/ICy3.5)は、プローブ蓄積(ICy3.5)と相対的に決定される。いかなる理論に束縛されることを望むものではないが、用量蓄積対EPR効果またはpH活性化は境界描写を駆動させると考えられる。6.3〜7.1の異なるpH転移を有する一連のデュアルレポータプローブのこの一連の曲線により、pH転移の調整が腫瘍境界描写の感度及び特異性を変化させるか否かが確立され、調査される。最適I−UPSは自在に調べられ、または腫瘍のタイプ及び/またはサイズに依存している。結局、CFP標識化がん細胞は、境界を越えた正常組織に浸潤するがん細胞の検出のためのプローブの感度及び特異性をさらに試験するために使用される。
【0255】
2.抗腫瘍の有効性及び長期間生存の研究
同所性腫瘍異種移植片(頭頸部がんのHN5及びFaDu、乳がんの4T1及びMD−MBA−231)はI−UPS誘導切除の抗腫瘍有効性を評価するために使用される。各研究について、I−UPSナノプローブは手術の24時間前に静脈注射される。動物は4グループ(各グループについてn=10または15)に分割される:(1)手術なし;(2)腫瘍の大部分の除去による制御(見える腫瘍の部分的除去);(3)白色光手術による腫瘍完全除去(外科医の推測できる限りで)及び(4)SPY誘導腫瘍除去。これらの実験グループは、白色光下の通常手術と蛍光手術との間の差異の調査を可能にしている。試験的研究はI−UPS6.9プローブを用いて行われている(図74A&74B及び78A〜78E)。追加の腫瘍モデル(例えば、FaDu及びMDA−MB−231)における最適I−UPSプローブのための同様の実験が行われる。
【0256】
手術の後、Kaplan−Meier生存曲線が、各グループ間の抗腫瘍有効性を比較するために決定される。全ての切除された動物について、最初の部位での腫瘍発生が検討され、記録される。加えて、マウスの嚥下機能への手術の影響を推定する。いかなる理論に束縛されることを望むわけではないが、腫瘍切除中に除去された正常組織の量が多いほど、動物の得られる機能、それ故嚥下機能の低下が大きくなる。マウスについて、手術の前及び後に重量を測る。手術後、毎日重量を1週間記録し、その後1週間に2回記録する。体の損失重量%は、摂取及び嚥下機能の代用として使用される。重量は、動物の成長を説明するために初期重量に正規化される。
【0257】
実施例13:生物学的プロファイル及び薬物動態
1.薬物動態/生体内分布(PK/BD)の研究
H−標識化PEG−b−PC7A(UPS6.9)及びPEG−b−PDPA(UPS6.3)を用いて以前の研究は、類似の流体力学(それぞれ25.3±1.5対24.9±0.8nm)、ゼータ電位(−0.7±1.1対−3.5±0.6mV)、及びPEG長(共に5kD)にもかかわらず得られるUPSナノプローブは顕著に異なるPK/PDのプロファイル(特徴)を有することを示している。α−相の半減期は、UPS6.9及びUPS6.3について、それぞれ1.0±0.2及び4.3±0.7時間(P<0.05)、そしてβ−相の半減期は、7.5±0.3及び19.6±2.1時間(P<0.01)であった。ナノ粒子注射の24時間後における生体内分布の研究は、肝臓と脾臓は両方のナノ粒子のクリアランス(除去)のための主要な臓器であることを示した。UPS6.3に対してUPS6.9のより速いクリアランスは、より高い転移pHに、且つUPS活性化及びクリアランスにおいて血液からより高い影響を受け易いことに起因する。
【0258】
この研究において、PK/BDの研究はまず、以前確立したH標識化コポリマー(各グループについてn=5)を用いて本明細書に記載の最適化I−UPS組成物について行われる。血液は、注射後、2分、0.5、1、3、6及び24時間後に集められる。実験の最後に、動物は犠牲にされ、腫瘍組織及び腫瘍臓器(心臓、肝臓、脾臓、腎臓)が除去される。解剖された臓器は重量が測られ、均質化され、シンチレーション混合物で処理される。血液と組織サンプルの両方は液体シンチレーションカウンター(Beckman LS 6000 IC)により定量化される。異なる臓器/組織におけるUPS分布は、組織のグラム当たりの注入された用量のパーセンテージとして計算される。血液と組織サンプルに加えて、尿及び糞サンプルも、腎臓分泌及びGI管によりI−UPSのクリアランスを分析するために集められる。これらの実験は、キャンパス内の指定動物の施設の代謝かごで行われる。
【0259】
2.先天性免疫反応の評価
I−UPSが強い先天性免疫を引き起こすか否かを判断するために、I−UPSナノプローブを、免疫反応性C57BL/6マウス(各グループについてn=5)に1×、10×及び50×のイメージング用量で静脈注射する。2、6及び24時間にて、尾静脈からの血液サンプル(100μL)を集める。血清を分離し、サイトカインプロファイルを分析する。現在のLuminex(商標)多重分析は、25μLの血清から23のサイトカイン(例えば、IFN−α及びβ、IL−2、IL−4、IL−12、IL−17、等)を検出することができる。PBSが陰性対照として使用される。サイトカインに顕著の増加が観察された場合、免疫反応に対しより詳しい分析が(例えば、好中球または他の白血球の生成、相補体活性化、脾臓及びリンパ節における炎症活性の調査)、2〜4週間等のより長い時間枠で行われる。
【0260】
実施例14:多様な異なるポリマーを含有するUPSナノ粒子
1.多様な異なるポリマーを有するミセルの使用
初めに、一連の両親媒性のブロックコポリマーPEG−b−PR(但し、PEGはポリ(エチレングリコール)であり、そしてPRはイオン化可能セグメントである)(スキーム1及び表12)を合成した。
スキーム1:イオン化可能セグメントの合成
【0261】
【化60】
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【0262】
【表12】
[この文献は図面を表示できません]
【0263】
PEG−b−PRコポリマーは異なるフルオロフォアでコードされた。3つの例のPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5蛍光ポリマーを選択し、色素結合数及び効率並びに量子収率について特性評価した(図84B及び表13)。PEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5ナノプローブは、クラスリン被覆小胞(CCV)から初期エンドソームへ(pH約6.0)、その後の後期エンドソーム/リソソームへ(pH約5.0〜5.5)のエンドサイトーシスの経路の間におけるpH変化をカバーする、6.9、6.2及び5.3でpH転移を有していた(Huotari & Helenius,2011)。これらのナノ粒子の粒径は狭い分布を持つ23〜25nmであった。蛍光活性化比(R)は、鋭いpH応答を有するPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5ナノプローブについて、30、91及び107倍であった(ΔpH10−90%=0.18〜0.22、表14及び図85〜88)。超音波処理法を用いて、3つの成分のPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5からなるハイブリッドUPSナノプローブシステムを、図84A〜84Cで示されるように操作した。いかなる理論に束縛されることを望まないが、3つの蛍光ポリマーは、より高いpHで自己組織化して、均一なハイブリッドUPSナノプローブを形成する。エンドサイトーシスの後、ハイブリッドUPSナノプローブは、各ポリマーの個々のpH(例えば、6.9、6.2、5.3)で連続的に解離して蛍光を発し、生存細胞において単一のオルガネラ解像度での微妙なpH変化に関連するエンドソーム成熟プロセスを辿る(図84C)。
【0264】
【表13】
[この文献は図面を表示できません]
【0265】
【表14】
[この文献は図面を表示できません]
【0266】
均一ハイブリッドナノ粒子の形成を実証するため、一連のホモFRET及びヘテロFRET実験は設計され、実施された。ホモFRET実験は蛍光PEG−b−PRポリマー及び異なるpH転移を有する他の標識無しPEG−b−PRポリマーに関連する。この実施例では、PEPA−Cy5が使用され、PEPA、PDPA、またはPDBAポリマーと、指標化ポリマー対指標無しポリマーのモル比が1:19で混合される。結果として、PEPA−Cy5とPEPA、PDPAまたはPDBAとの分子混合ミセルの形成が、ホモFRET効果を除去してCy5蛍光シグナルの回復により示される同じミセルにおいて、なされたことが示された(図114A&114B)(Zhouら,2012)。対照的に、PEPA−Cy5及び別の指標無しミセルのミセル混合物はCy5シグナル回復を示さなかった。同じ結果がまたPDBA−Cy5及び別の指標無しPEG−b−PRポリマーの分子混合ミセルにおいても観察された(図89A&89B)。全てのこれらの結果は、PEPA、PDPA、及びPDBAポリマーは均一なハイブリッドナノプローブを形成することができることを示した。
【0267】
ハイブリッドナノプローブの形成をさらに確認するため、蛍光移動効果は、異なるヘテロ−FRET色素:PEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5でコードされたコポリマーで検討された。ホモFRETを最小化するために、各コポリマーでは疎水性PRセグメントが1つの色素でコードされた。2つまたは3つのコポリマーがTHFに溶解され、その後水中に滴下され、本明細書に記載の分子混合ミセルを製造した。PEPA−BDYとPDPA−TMRの組み合わせ(モル比=1:1)において、分子混合ミセルのBDY493発光波長(510nm)での蛍光強度は、PEPA−BDY493のみのミセル溶液に比べて4倍を超えて減少した。さらに、TMR発光(580nm)での蛍光強度は、PDPA−TMRミセル溶液に対して、混合ミセル溶液の4倍を超える増加を示した(図90A)。他の3つのヘテロ−FRETポリマーのセット:(i)PDPA−TMR及びPDBA−Cy5、(ii)PEPA−BDY493及びPDBA−Cy5;(iii)PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5も広く調査した(図90B〜90D)。PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5蛍光ポリマーのセットでは、BDY493からTMRへの連続FRET効果が観察され、最後はCy5まで観察される(図90D)。ハイブリッドナノプローブのBDY493発光における蛍光強度は、PEPA−BDY493のみのミセル溶液に比べて4倍を超えて減少し、一方、Cy5シグナルはPDBA−Cy5に対してハイブリッドナノプロの25倍を超えて増加した。これらの結果は、3つのPEG−b−PRコポリマーは、PEG−b−PRコポリマーが自己組織化して均一ハイブリッドUPSナノプローブを形成することができることを明確に実証した。
【0268】
ハイブリッドUPSナノプローブの形成の実証後、ハイブリッドナノプローブシステムは、各PR鎖が約2.2個の色素で結合された、PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5蛍光ポリマーを用いて製造された(図91)。異なる励起波長(485、545、640nm)及び異なるpH(7.4、6.7、5.8、及び5.0)における蛍光発光スペクトルが集められ、プロットされた(図92A〜92D及び図93A〜93F及び図94)。結果として、全ての3つの蛍光ポリマー成分は中性pHでは「静か」な状態を保つことが示された。pHが6.7に低下した時、PEPA−BDY成分がまず放出され、活性化され、青信号を発生し、一方他の2成分は「オフ」のまま留まった。pHが5.8に低下した時、PDPA−TMRシグナルは活性化されて赤信号を発生し、PDBA−Cy5成分はこの段階では完全に「静か」な状態であった。最後に、溶液pHが5.0に低下した時、PDBA−Cy5成分が活性化された。この段階で、3つの蛍光ポリマーは完全に活性化した。動的光散乱分析(DLS)により測定された、ハイブリッドUPSナノプローブの粒径は7.4と5.8との間のpHで約30〜40nmであり、ユニマーとしてはpH5.0で8.7nmに低下した同様の観察がTEM分析によってなされた(図95A&95B)。ハイブリッドUPSナノプローブのPEPA−BDY493、PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5成分のpH値は、6.9、6.2、及び5.3であり、これらの対応する単位成分ナノプローブに合致した。全体として、PEPA−BDY493、PDPA−TMR及びPDBA−Cy5の蛍光活性化比は、鋭いpH応答(ΔpH10−90%=0.20−0.25、補足表S4)で74、123、及び30であった。DLS分析を用いて、ハイブリッドナノプローブ対pH値の計数率はプロットされ、図92Eに示されるように、多段活性化パターンが観察された。各段階で、1つの蛍光ポリマーが放出され、蛍光を発し、最後に全てのポリマーは解離するが、これは0に到達した計数率で示される。ハイブリッドUPSナノプローブの異なるpHでの多段階活性化も、図92Fに示されるように、MaestroCRIイメージングシステムにより画像化され、確認された。
【0269】
ハイブリッドUPSナノプローブの3成分の同期細胞摂取を検査するため、UPSナノプローブを本明細書に記載のチオール−マレイミド結合を介して5%Erbitux(humanized EGFR antibody)(Adams & Weiner,2005)で官能化した。Erbコード化ハイブリッドナノプローブは、6.9、6.2、及び5.3のpHで、0.20−0.25のΔpH10−90%を有する3つの特有のpH転移を持っていた。ハイブリッドナノプローブの蛍光オン/オフ活性化比は、BDY493、TMR、及びCy5チャンネルの、それぞれ200、191、及び35倍であった。Erbコード化UPSナノプローブの特異性を調査するため、A549細胞は、Erbコード化PDPA−TMRナノプローブで培養された。Erbコード化PDPA−TMRナノプローブの培養の15分後、斑点状の蛍光活性化が細胞内で観察された。1時間で、Erbコード化PDPA−TMRナノプローブにおいて、PDPA−TMRナノプローブ制御基に対して250倍を超える蛍光増加が観察され、EGFRバイオマーカーに対して高い特異性を示した(図96)。Erb結合UPSナノプローブの特異性の確認後、Erbコード化ハイブリッドUPSナノプローブの同期摂取が検査された(図97)。A549細胞はErbコード化ハイブリッドUPSナノプローブで3時間培養され、共焦点顕微鏡で画像化された。対照グループにおいては、A549細胞は、PEPA−BDY493、Erb−コード化PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5の3つのナノプローブの混合物で培養された。単一のエンドサイトーシス・オルガネラにおけるErbコード化ハイブリッドナノプローブの同期摂取が観察され、一方対照グループにおいてはErb−コード化PDPA−TMRナノプローブのみが取り込まれ細胞内で活性化された。重要なことは、斑点状のブルー及びレッドの蛍光ドットはグリーン蛍光ドットの一部で共局在化され、ハイブリッドナノプローブはエンドサイトーシス・オルガネラ成熟の評価に利用することができることを示唆した。
【0270】
リアルタイムでエンドソーム成熟を追跡するために、A549細胞をErb−コード化ハイブリッドUPSナノプローブで4℃にて30分間培養して、特異性細胞結合を起こさせ、その後培地を除去し、2回洗浄した。ハイブリッドナノプローブの37℃での細胞内摂取及び活性化を共焦点顕微鏡で画像化した。期待通り、PEPA−BDY493成分がまず放出され、活性化されて、10分でグリーン蛍光ドットを形成し、その強度を上昇させ、30分の培養後安定状態の到達した(図98)。その後、レッドPDPA−TMRシグナルは20〜30分で現れ始めた。全てのレッドドットはこの段階でグリーンドットの一部と共局在化された。最後に、PDBA−Cy5成分が、90〜180分で疑似カラーのブルードットで活性化し、全てのブルードットはこの期間にレッドドットの一部と共局在化された。エンドサイトーシス・オルガネラは3つの集団に分割することができる:(i)グリーンドット(6.2<pH<6.9);(ii)イェロードット(5.3<pH<6.2);(iii)ホワイトドット(pH<5.3)、それぞれクラスリン被覆小胞のpH約6.8、初期エンドソームのpH約6.0、及び後期エンドソーム/リソソームのpH約5.0〜5.5を示した。同様に、連続して起こる活性化は、HN5頭頸部がん細胞株の単一酸性オルガネラの内側に観察された(図99)。従って、ハイブリッドUPSナノプローブは、単一オルガネラ分解で特異性エンドサイトーシス経路に沿って時空pH変化を報告することに成功した。
【0271】
ハイブリッドUPSナノプローブの独特の能力を実証したので、オルガネラ成熟中に酸性化速度の劇的増加に起因する独特の発がん性の痕跡を調査した。異なる遺伝子突然変異の背景を有する7つの肺がん株を選択し、評価した(表15)。細胞を、100μg/mLのErbコード化ハイブリッドUPSナノプローブで4℃にて30分間培養し、3回洗浄し、その後37℃にてリアルタイムで画像化し、オルガネラ酸性化能力を示すナノプローブ活性化速度を辿った(図100〜102)。結果として、HCC44、H2009、H460、及びA549を含むKRAS突然変異細胞の活性化速度は、KRAS野生型細胞(H2882、H1991、及びH1819)より顕著に早いことを示した。異なる細胞株における摂取の差異を正規化するために、PDPA−TMR(早期エンドソーム)及びPDBA−Cy5(後期エンドソーム/リソソーム)のシグナルの蛍光強度を、PEPA−BDY493シグナルにより分割した、それは早ければ15分で活性化した。時間関数としてのI6.2/I6.9及びI5.3/I6.9 をプロットした(図103A&103B及び図104A〜104D)。30分で、TMRチャンネルの顕著な活性化の差異(I6.2/I6.9)は観察されなかった。75分で、KRAS突然変細胞のI5.3/I6.9比は70%のブルー陽性オルガネラに到達し、一方KRAS野生型細胞はわずか40%未満のブルー陽性オルガネラしか持てなかった。これらの結果は、KRAS突然変異はpH調節と関係するリソソームの異化の原因となることを示唆した。
【0272】
【表15】
[この文献は図面を表示できません]
【0273】
KRAS突然変異は、恐らく、リソソームの酸性化速度の上方調節の原因となると仮定し、ハイブリッドUPSナノプローブが遺伝子突然変異に関係するオルガネラpHを直接捉えるために利用された。モデルシステムとして、同じ肺がん患者から得た腫瘍由来(HCC4017)及び正常細気管支上皮由来(HBEC30KT)の細胞株を、TP53(HBEC30KT−shTP53)の段階的な安定的抑制、KRASG12V(HBEC30KT−shTP53/KRASG12V)の安定的発現、及びLKB1(HBEC30KT−shTP53/KRASG12V/shLKB1)の安定的抑制を有する同系進行の一連のHBEC30KTと共に、選択し、画像化した(Ramirezら,2004)。図105A及び105Bは、HBEC30KT上皮細胞に対する悪性のHCC4017細胞においてエンドサイトーシス・オルガネラのより早い成熟速度における劇的な差異を示した(図106及び107)。元の腫瘍及びHCC4017細胞株の遺伝子型決定が、TP53、LKB1及びKRASの成熟を明らかにした。データは、KRAS/LKB1成熟細胞が、増殖及び生存ためのリソソームの異化に依存しているとの以前の発見に合致している(Kimら,2013)。さらに、どの発がん痕跡がオルガネラ成熟における差異の原因であるかを正確に示すために、一連の同系進行のHBEC30KTにおけるハイブリッドナノプローブの蛍光活性化パターンを画像化した(図108〜110)。時間の関数としてのI6.2/I6.9及びI5.3/I6.9をプロットした(図111A〜111D)。結果は、KRAS成熟が、エンドサイトーシス・オルガネラの酸性化及び成熟の劇的増加が原因であることを明らかに示唆した。
【0274】
2.方法及び材料
1.ハイブリッドナノプローブの合成及び特性
色素結合PEG−b−PR及びマレイミド−末端PEG−b−PDPA(Mal−PEG−PDPA)ブロックコポリマーを原子移動ラジカル重合法により合成した。ハイブリッドナノプローブは、以前の刊行物の手順に従って調製された(Wangら,2014)。典型的な手順では、PEG−b−PEPA−BDY493、PEG−b−PDPA−TMR、及びPEG−b−PDBA−Cy5ポリマーをそれぞれ5mg、1mLのTHFに溶解した。その後、混合物を10mLのMilli−Q水に超音波処理下に加えた。混合物を4回ろ過し、マイクロ−超遠心分離システムを用いてTHFを除去した。その後、蒸留水を加えて最終ポリマー濃度を5mg/mLに調節した。Erbitux−結合ハイブリッドナノプローブを調製するため、0.6mgのMal−PEG−PDPA、それぞれが4mgのPEG−b−PEPA−BDY493、PEG−b−PDPA−TMR、及びPEG−b−PDBA−Cy5ポリマーを1mLのTHFに溶解し、そして上記と同様の手順を用いて5%マレイミド変性ハイブリッドナノプローブを調製した。一方、Erbitux Fab’−SH断片(3mg,M=55kDa)を刊行物の手順に従い調製した。その後、マレイミド変性ハイブリッドナノプローブとErbitux Fab’−SH溶液を混合し、1mMのEDTAを含む100mMのリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS,pH7.4)において一晩室温で反応させた。その後、混合物を6回ろ過し、遊離のFab’−SHをマイクロ−超遠心分離システム(MWCO=100K,Millipore)を用いて除去した。その後、100mMのPBS(pH7.4)を添加して最終ポリマー濃度を5mg/mLに調節した。透過型電子顕微鏡検査を、1%リンタングステン酸逆染色法を用い、JEOL 1200EX電子顕微鏡(JEOL 1200EX)で可視化して行った。ナノプローブの粒径及び分布は動的光散乱(DLS)分析により測定した。pH値の関数としてのナノ粒子の平均計数速度もまたDLS分析により測定した。
【0275】
2.UPSナノプローブの蛍光活性化
異なるpH緩衝溶液においてハイブリッドUPSナノプローブの蛍光発光スペクトルが、日立蛍光光度計(F−7500モデル)により得られた。最終のポリマー濃度が、異なるpH値を有する100mMのPBSを用いて100μg/mLに調節された。ハイブリッドナノプローブは、485、545、及び640nmでそれぞれ励起された。対応する発光スペクトルは、それぞれ490〜750、560〜750、及び650〜750nmで集められた。510、580、及び710nmでの発光ピークが、BDY493、TMR、及びCy5チャンネルの蛍光活性化比を定量化するために使用された。異なるpH値でのハイブリッドナノプローブ溶液(100μg/mL)の蛍光画像が、ブルー(515nm LP)、グリーン(580nm LP)、及びオレンジ(645nm LP)のフィルタを用いてMaestroイメージングシステム(CRI)により記録された。その後、画像は個々の色素の標準蛍光スペクトルを用いてスペクトル的な混在はされずに、マルチカラー画像を得た。
【0276】
3.細胞培養
肺がん細胞株A549及び頭頸部がん細胞株HN5は、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)、100IU/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen)を含有するDMEM(Invitrogen)で培養された。HBEC30KT進行シリーズ及びHCC4017細胞は、2%のウシ胎仔血清及び抗生物質で懸濁されたACL4培地で5%CO雰囲気下37℃にて培養された。
【0277】
4.細胞イメージング
A549及びHN5細胞が、2mLの完全なDMEM培地内のガラスボトムディッシュ(MatTek、MA)に固定された。Erbitux−結合ナノプローブの特性を試験するために、完全な培地内のA549細胞を4℃で10分間保持した後、100μg/mLのErb−PDPA−TMRミセルを添加し、表皮増殖因子受容体(EGFR)結合のために4℃で30分間保持し、その後培地を除去して氷冷PBSで3回洗浄した。その後、細胞を完全培地で37℃にて2時間培養した。共焦点画像をNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で60×対物レンズで記録した。
【0278】
ハイブリッドナノプローブにおける3つの成分の同期摂取を実証するため、完全培地内のA549細胞を4℃で10分間保持し、その後100μg/mLのErb−結合ハイブリッドナノプローブを添加し、EGFR結合のために4℃で30分間保持した。培地は除去され、3回洗浄された。その後、細胞を完全培地で37℃にて3時間培養した。TMR及びCy5をそれぞれ488、543、及び633nmで活性化させた。FITC(515±15nm)、TRITC(590±25nm)及びCy5(650nm LP)のフィルタを、それぞれBDY493、TMR、及びCy5のイメージングのために使用した。対照グループとして、PEPA−BDY493、Erb−PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5のミセルを作製し、混合し、A549細胞で培養した。同様の手順が細胞イメージングのために利用された。
【0279】
エンドソーム成熟プロセスを辿るために、細胞サンプルを前述と同様の手順を用いて調製した。共焦点画像はNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で100×対物レンズで、37℃で培養後0、15、30、60分、2.5、及び5時間において記録された。BDY493、TMR、及びCy5の3つのチャンネルは活性化され、前述の記載と同じ設定で集められた。画像はImage−Jソフトウェアを用いて分析された。5つの独立の測定は、平均±標準偏差で表した。
【0280】
5.統計的分析
データは、平均±s.d.で表した。グループ間の差異は一対の両側スチューデントt−検定(paired, two−sided Student t−test)を用いて評価した。P<0.05は有意と考えられ、**P<0.01はかなり有意と考えられる。
【0281】
6.材料
テトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル(TMR−NHS)及びBODIPY(登録商標)493/503スクシンイミジルエステル(BDY493―NHS)は、Invitrogen Inc.より購入した。Cy5NHSエステル(Cy5―NHS)はLumiprobe Companyより購入した。2−(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA−MA)、及び2−(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA−MA)を含むモノマーは最近報告された(Zhouら,2011;Maら,2014)。2−アミノエチルメタクリレート(AMA)はPolyscience Companyより購入した。AMAはイソプロパノールと酢酸エチル(3:7)で2回再結晶した。PEGマクロ開始剤、MeO−PEG114−Br、はα−ブロモイソブチルブロミド及びMeO−PEG114−OHから刊行物(Zhouら,2011)の手順に従い調製した。他の溶剤及び試薬はSigma−AldrichまたはFisher Scientific Inc.より得て使用した。
【0282】
7.PEG−b−(PR−r−Dye)ブロックコポリマーの合成
PEG−b−(PR−r−AMA)コポリマー(スキーム1)をまず原子移動ラジカル重合(ATRP)法により合成した。第1級アミノ基は、AMAモノマーの開始剤に対する供給比(比=3)を制御することにより各ポリマー鎖に導入された。色素非含有コポリマーはポリマーの特性化に使用された(表12)。PEG−b−P(DPA−r−AMA)を、手順を説明するための例として用いた。まず、DPA−MA(1.7g,8mmol)、AMA(50mg,3mmol)、PMDETA(21μL,0.1mmol)、及びMeO−PEG114−Br(0.5g,0.1mmol)を重合管に充填した。その後、2−プロパノール(2mL)及びDMF(2mL)の混合物を加えてモノマーと開始剤を溶解した。酸素を除去するために3サイクルの凍結脱気をした後、CuBr(14.4mg,0.1mmol)を窒素雰囲気下に反応管に添加し、管を真空で密封した。40℃で12時間、重合を行った。重合後、反応混合物を10mLのTHFで希釈し、Alカラムを通過させて触媒を除去した。THF溶剤はロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥して白色粉末を得た。得られたPEG−b−(PR−r−AMA)コポリマーを、500MHz H−NMR、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(Viscotech GPCmax,PLgel 5μm MIXED−Dカラム,Polymer Labs製,溶離液としてのTHFを1mL/分で使用)により特性評価した。表12は、各ポリマーの収率、分子量(M及びM)及び多分散指数(PDI)を示す。
【0283】
色素結合コポリマーの合成は以下に記載の代表的手順に従った。TMR結合のため、PEG−b−P(DPA−r−AMA)(50mg)をまず2mLのDMFに溶解した。その後、TMR―NHSエステル(第1級アミノ基のモル量に対して1.5当量)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。コポリマーを分離用ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(PLgel Prep 10μm 10E3Å 300×25mmカラム,Varian製,溶離液としてのTHFを5mL/minで使用)で生成し、遊離の色素分子を除去した。製造したPEG−b−P(DPA−TMR)コポリマーを凍結乾燥し、さらなる調査のため−20℃で貯蔵した。色素結合効率及び量子収率を文献記載の手順に従い測定した(Maら,2014)。
【0284】
8.ミセルナノ粒子の作製
ミセルを以前の刊行物記載の手順に従い調製した。典型的手順において、10mgのPDPA−TMRを0.5mLのTHFに溶解した。その後、混合物を4mLのMilli−Q水に超音波処理下にゆっくり加えた。混合物はマイクロ限界ろ過システムを用いて4回ろ過し、THFを除去した。その後、蒸留水を加えてポリマー濃度を5mg/mLに調節し、貯蔵溶液とした。マルチカラーハイブリッドナノ粒子のために、5mgのPEPA−BDY、5mgのPDPA−TMR、及び5mgのPDBA−Cy5を1mLのTHFに溶解した。その後、同様の手順を、ハイブリッドナノ粒子を調製するために使用した。ナノ粒子は、ミセルサイズ及びモルホロジーについて透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL 1200 EX model)により、流体力学直径(D)について動的光散乱(DLS,Malvern Zetasizer Nano−ZS,λ=632nm)により特性評価された。
【0285】
Erbitux結合ハイブリッドナノプローブのために、4mgのPEPA−BDY、4mgのPDPA−TMR、4mgのPDBA−CY5、及び0.6mgのMAL−PEG−PDPAを1mLのTHFに溶解した。その後、同様の手順をMal−ハイブリッドナノプローブを調製するために使用した。ミセル形成の後、1mMのEDTAを含むPBS緩衝液中の過剰量のErbitux Fab‘−SH断片(55kD)を加えた。その結合物をN雰囲気下に一晩置き、その後6回限外ろ過し、遊離のFab’−SHを除去した。得られたErb結合ハイブリッドナノプローブを、細胞イメージング研究のために5mg/mLのポリマー濃度に調節した。Erb結合PDPA−TMRミセルも同様の手順を用いて作製した。
【0286】
9.蛍光特性評価
異なるpH緩衝溶液における蛍光発光スペクトルを日立蛍光光度計(F−7500モデル)により得た。各ポリマーミセルのために、サンプル(5mg/mL)をMilli−Q水溶液として調製した。その後、溶液を、異なるpH値を有する100mMのリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)で希釈した。最後のポリマー濃度は0.1mg/mLに制御された。
【0287】
異なるポリマーが均一なハイブリッドミセルを形成することができるか否かを実証するため、本発明者等は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)実験を用いてハイブリッドミセルの蛍光特性を調査した。各ナノプローブのために、サンプル(5mg/mL)をMilli−Q水溶液として調製した。溶液を、100mMのPBS緩衝液(pH=7.4)中の100μg/mLに希釈した。その後、ナノプローブを、適当な励起光(λex=485、545、及び640nm)で励起させ、そして発光スペクトルを集めた。
【0288】
異なるpHでのハイブリッドナノプローブ溶液(0.1mg/mL)の蛍光画像を、適当なバンドパス励起フィルタ及び適当なロングパス発光フィルタを用いてMaestroインビボイメージングシステム(CRI Inc.Woburn,MA)で記録した。
【0289】
10.細胞培養
ヒト肺小細胞肺がんA549細胞及び頭頸部がんHN5細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、100IU/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンが追加されたDMEM培地(Invitrogen,CA)で、5%CO雰囲気下37℃で培養した。
【0290】
同じ肺がん患者から、腫瘍−由来(HCC4017)及び正常細気管支上皮−由来(HBEC30)の細胞株を得た。正常細気管支上皮細胞を、CDK4及びhTERTの安定な発現により不死化し、HBEC30KTを製造した。p53(HBEC30KT−shTP53)の段階的安定な発現、KRASG12V(HBEC30KT−shTP53/KRASG12V)の安定な発現、及びLKB1(HBEC30KT−shTP53/KRASG12V/shLKB1)の安定な抑制を有するHBEC30KT誘導体の一連の細胞株も得た。
【0291】
HBEC30KT進行シリーズ及びHCC4017細胞は、2%ウシ胎仔血清(FBS)、100IU/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンが追加されたACL4培地(Invitrogen,CA)で、5%CO雰囲気下37℃で培養した。
【0292】
11.生細胞におけるErbitux−結合ハイブリッドナノプローブの多段活性化
A549及びHN5細胞を、2mLの完全DMEM培地内のガラスボトムディッシュ(MatTek,MA)に固定した。Erbitux−結合ハイブリッドナノプローブの特異性を試験するために、A549細胞を、Erb−PDPA−TMRを含む完全培地で37℃にて1時間培養し、その後培地を除去して3回洗浄した。共焦点画像を、60×対物レンズを備えたNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で記録した。
【0293】
ハイブリッドナノプローブにおける3つの成分の同期摂取を実証するために、完全培地中のA549細胞を4℃で10分間保持し、その後100μg/mLのErb−結合ハイブリッドナノプローブを加えて、表皮増殖因子受容体(EGFR)結合のために4℃で30分間保持した。培地を除去して、氷冷PBSで3回洗浄した。その後細胞を完全培地で37℃にて3時間培養した。BDY493、TMR、及びCy5を、それぞれ488、543、及び633nmで励起させた。FITC(515±15nm)、TRITC(590±25nm)及びCy5(650nm LP)フィルタを、それぞれBDY493、TMR、及びCy5イメージングに使用した。対照グループとして、PEPA−BDY493、Erb−PDPA−TMR、及びPDBA−Cy5ミセルを作製し、混合しA549細胞で培養した。同様の手順をパルス・チェイス研究のために利用した。
【0294】
12.Erbitux−結合ハイブリッドナノプローブを用いたエンドサイトーシス中におけるエンドソーム成熟の追跡
パルス・チェイス実験を、エンドソーム成熟プロセスを辿るために利用した。完全培地内の細胞を4℃で10分間保持し、その後100μg/mLのErb−結合ハイブリッドナノプローブを加えて、EGFR結合のために4℃で30分間保持した。培地を除去し、氷冷PBSで3回洗浄した。その後、細胞を完全培地で37℃にて培養した。共焦点画像を、ミセル添加後0、15、30、60分、2.5及び5時間において、100×対物レンズを備えたNikon ECLIPSE TE2000−E共焦点顕微鏡で記録した。BDY493、TMR、及びCy5を、それぞれ488、543、及び633nmで励起した。FITC(515±15nm)、TRITC(590±25nm)及びCy5(650nm LP)フィルタを、それぞれBDY493、TMR、及びCy5イメージングに使用した。画像はImage−Jソフトウェアで分析した。5つの独立した測定法は平均±標準偏差として表した。
【0295】
実施例15:トリブロックコポリマーPEG−b−P(R−b−R)の合成
PEG−b−P(R−b−R)トリブロックを、以前報告された類似の手順の後ATRP法により合成した。PEO−b−P(D5A−b−DEA)を、手順を説明する例として使用する。まず、D5A−MA(0.54g,2mmol)、PMDETA(12μL,0.05mmol)及びMeO−PEO114−Br(0.25g,0.05mmol)を重合管に充填した。その後、2−プロパノール(1mL)及びDMF(1mL)を加えてモノマー及び開始剤を溶解した。凍結脱気を3サイクルして酸素を除去した後、CuBr(7mg,0.05mmol)を窒素雰囲気下に重合管に添加し、管を真空で密封した。40℃にて8時間の重合を行った後、酸素を除去したDEA−MA(0.368,2mmol)を反応溶液に気密注射器により注入し、反応混合物を40℃でさらに8時間撹拌した。重合化後、反応混合物は10mLのTHFで希釈し、中性Alカラムを通して触媒を除去した。THF溶剤はロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥して白色粉末を得た。PEO−b−P(DEA−b−D5A)はまたDEA及びD5Aの供給順序を反転することにより合成した。pH滴定実験は、PEO−b−P(D5A40−b−DEA40)またはPEO−b−P(DEA40−b−D5A40)の2つの際立ったイオン化転移を示した。対照的に、対応するランダムPRブロックコポリマーについては、1つのpH転移のみが観察された(図113A&113B)。
【0296】
本明細書において開示され、特許請求の範囲に記載された組成物及び方法は全て、本開示を考慮することにより過度の実験なしに作製、実施することができる。本発明の組成物及び方法を特定の実施形態の観点から説明したが、本発明の概念、趣旨及び範囲を逸脱することなく、組成物及び方法に対して、並びに本明細書に記載の方法の工程または工程の順序に対して、変更しても良いことは当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的の両方に関連するある薬剤を本明細書に記載の薬剤に変更してももよく、それにより同一または同様の結果が達成されることが明らかであろう。当業者に明らかなこのような同様の置換及び変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲及び概念の内にあると考えられる。
【0297】
参考文献
下記の参考文献は、本明細書の記載を補う手順の例または他の詳細をそれらが提供することができる程度で、参照により本明細書に具体的に取り込まれる。
WO 2013/152059
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