特許第6598195号(P6598195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社木幡計器製作所の特許一覧

<>
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000002
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000003
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000004
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000005
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000006
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000007
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000008
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000009
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000010
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000011
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000012
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000013
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000014
  • 特許6598195-呼吸測定装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598195
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】呼吸測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/085 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   A61B5/085
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-142516(P2015-142516)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-23224(P2017-23224A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】512239206
【氏名又は名称】株式会社木幡計器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171435
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】中家 崇厳
(72)【発明者】
【氏名】輪地 惣一
(72)【発明者】
【氏名】木幡 巌
【審査官】 牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−043647(JP,A)
【文献】 特開2009−045446(JP,A)
【文献】 特開平11−042219(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0099471(US,A1)
【文献】 特開2003−290174(JP,A)
【文献】 特開2012−228540(JP,A)
【文献】 特表2012−531244(JP,A)
【文献】 特開2015−8953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
A61B 5/00 − 5/03
A61B 9/00 −10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口にくわえることにより陽陰圧を入力する陽陰圧入力部と、この陽陰圧を測定する圧力センサと、同圧力センサからの信号を処理する処理部と、同処理部に接続され陽陰圧を時間軸と圧力軸で二次元表示する表示部とを有し、表示部には時間の進行に伴って時間軸の進行方向に対して前記陽陰圧を表示し、所定時間内における最大平均呼気口腔内圧(PEmax)と所定時間内における最大平均吸気口腔内圧(PImax)とを測定する呼吸測定装置であって、
前記陽陰圧の表示は時間軸の所定位置を超えないようにスクロールされ、
前記陽陰圧が呼気閾値(+PEth)または吸気閾値(−PIth)に至る閾値到達時点以降、前記スクロールを停止すると共に前記陽陰圧が再度前記呼気閾値または前記吸気閾値に至る閾値再到達時点まで、時間軸の進行方向に対して前記陽陰圧を表示する呼吸測定装置。
【請求項2】
前記閾値到達時点以降、時間軸の進行方向に対して表示される前記陽陰圧の二次元グラフに、さらに最大平均呼気口腔内圧(PEmax)及び最大平均吸気口腔内圧(PImax)の算出時間範囲(Ae,Ai)を表示する請求項1記載の呼吸測定装置。
【請求項3】
前記閾値再到達時点以降で所定設定時間後に前記陽陰圧の表示を停止する請求項1記載の呼吸測定装置。
【請求項4】
前記圧力センサで陽圧を検出することにより最大平均呼気口腔内圧(PEmax)測定用の陽圧グラフ軸を表示し、前記圧力センサで陰圧を検出することにより最大平均吸気口腔内圧(PImax)測定用の陰圧グラフ軸を表示する請求項1記載の呼吸測定装置。
【請求項5】
データを記憶するメモリをさらに備え、前記閾値到達時点以降データ記憶を開始し、前記閾値再到達時点以降、データ記憶を終了する請求項1記載の呼吸測定装置。
【請求項6】
前記圧力センサと前記処理部とは筐体に収納され、前記陽陰圧入力部と前記圧力センサとの間をチューブで接続してある請求項1〜5のいずれかに記載の呼吸測定装置。
【請求項7】
陽陰圧入力部に外部と接続して開閉可能なバイパス用のバルブを備え、同バルブの弁座に押圧力を抵抗値に変換する第二圧力センサを設け、同第二圧力センサによる電圧が所定の閾値Vthを超えた場合には、バルブが閉じられている適性な測定状態であるとの判定を行う請求項1〜5のいずれかに記載の呼吸測定装置。
【請求項8】
さらに最大呼気口腔内圧(PEpeak)及び最大吸気口腔内圧(PIpeak)が測定可能であり、前記陽陰圧入力部と前記圧力センサとの間に吸息筋訓練器又は呼気陽圧訓練器を接続可能な訓練器接続部を備えている請求項1〜5のいずれかに記載の呼吸測定装置。
【請求項9】
さらに最大呼気口腔内圧(PEpeak)及び最大吸気口腔内圧(PIpeak)が測定可能であり、前記陽陰圧入力部と前記圧力センサとの間に吸息筋訓練器又は呼気陽圧訓練器を接続可能な訓練器接続部を備え、前記陽陰圧入力部に校正圧力調節用シリンダーを接続可能である請求項1〜5のいずれかに記載の呼吸測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸測定装置に関する。さらに詳しくは、口にくわえることにより陽陰圧を入力する陽陰圧入力部と、この陽陰圧を測定する圧力センサと、同圧力センサからの信号を処理する処理部と、同処理部に接続され陽陰圧を時間軸と圧力軸で二次元表示する表示部とを有し、表示部には時間の進行に伴って時間軸の進行方向に対して前記陽陰圧を表示し、所定時間内における最大平均呼気口腔内圧(PEmax)と所定時間内における最大平均吸気口腔内圧(PImax)とを測定する呼吸測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より呼吸測定装置としては、特許文献1、2に記載されているような呼吸機能検査装置が知られている。前者は安静呼吸状態等の呼吸努力を要しない状態で呼吸機能検査を行うことを目的とし、測定系統に抵抗体を備え、その抵抗体有無又は抵抗の負荷度合いによる口腔内圧の変化により呼吸機能を診断する。後者は、測定結果に対して予め登録してあるデータベースから、その登録されている数値と測定結果を比較して自動的に呼吸機能の低下度合いや、病期分類が文字により表示される。
【0003】
一方、最大平均呼気口腔内圧(PEmax)及び最大平均吸気口腔内圧(PImax)の測定にあっては、呼気または吸気は被験者のコンディションによって変化するため、これらの状況が適切であるかをチェックしながら試験を行うのが望ましい。しかし、限られた表示部で最大平均呼気口腔内圧(PEmax)及び最大平均吸気口腔内圧(PImax)を適切に表示するための工夫については上記先行技術を始め他の文献にも記載が見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−187292号公報
【特許文献2】国際公開第2005/115240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、呼吸筋力測定時において、呼気または吸気の適切性を判断できるように口腔内圧力を表示可能な呼吸測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る呼吸測定装置の特徴は、口にくわえることにより陽陰圧を入力する陽陰圧入力部と、この陽陰圧を測定する圧力センサと、同圧力センサからの信号を処理する処理部と、同処理部に接続され陽陰圧を時間軸と圧力軸で二次元表示する表示部とを有し、表示部には時間の進行に伴って時間軸の進行方向に対して前記陽陰圧を表示し、最大平均呼気口腔内圧(PEmax)と最大平均吸気口腔内圧(PImax)とを測定する構成において、前記陽陰圧の表示は時間軸の所定位置を超えないようにスクロールされ、前記陽陰圧が呼気閾値(+PEth)または吸気閾値(−PIth)に至る閾値到達時点以降、前記スクロールを停止すると共に前記陽陰圧が再度前記呼気閾値または前記吸気閾値に至る閾値再到達時点まで、時間軸の進行方向に対して前記陽陰圧を表示することにある。
【0007】
同特徴構成によれば、前記陽陰圧の表示は時間軸の所定位置を超えないようにスクロールされるため、本来の測定に関係の無い部分の表示で表示部の画面が占有されることがない。しかも、時間軸の所定範囲で測定値がスクロールされるため、信号入力の状況はチェックされる。そして、前記陽陰圧が呼気閾値(+PEth)または吸気閾値(−PIth)に至る閾値到達時点以降、前記スクロールを停止すると共に時間軸の進行方向に対して前記陽陰圧を表示する。これにより、測定の本質的部分の表示に表示部の画面を充当することができる。
【0008】
呼気(吐気)または吸気は、最大平均呼気口腔内圧(PEmax)及び最大平均吸気口腔内圧(PImax)の測定にあって、適切であるかどうかは、表示部のグラフを見ればある程度の判断は可能である。例えば、呼気が急に落ち込む場合は、マウスピース横からの呼気の漏れが予想される。心電図や血圧測定等と異なり、最大平均呼気口腔内圧(PEmax)及び最大平均吸気口腔内圧(PImax)の測定は、呼気または吸気を時間の経過とともに例えば右側に順次表示されることにより、適切な測定となるように呼気または吸気を本人の意思で適切となるように調整することができる。
【0009】
前記閾値到達時点以降、時間軸の進行方向に対して表示される前記陽陰圧の二次元グラフに、さらに最大平均呼気口腔内圧(PEmax)及び最大平均吸気口腔内圧(PImax)の算出時間範囲(Ae,Ai)を表示するとよい。この算出時間範囲(Ae,Ai)の表示により測定の適切性がさらにチェック可能となる。
【0010】
前記閾値再到達時点以降で所定設定時間後に前記陽陰圧の表示を停止してもよい。これにより、測定に必要な本質的部分のグラフが記録され、測定の適切性がグラフ全体のプロフィルより判定可能である。
【0011】
前記圧力センサで陽圧を検出することにより最大平均呼気口腔内圧(PEmax)測定用の陽圧グラフ軸を表示し、前記圧力センサで陰圧を検出することにより最大平均吸気口腔内圧(PImax)測定用の陰圧グラフ軸を表示してもよい。同構成によれば、将来に向かってグラフの本質的部分を表示する他、陽圧と陰圧により表示を切り替えて、最大平均呼気口腔内圧(PEmax)または最大平均吸気口腔内圧(PImax)のいずれかに適切なグラフ範囲を大きく表示できることとなり、測定のチェックの精度が向上する。
【0012】
データを記憶するメモリをさらに備え、前記閾値到達時点以降データ記憶を開始し、前記閾値再到達時点以降、データ記憶を終了してもよい。同構成により、データとして最大平均呼気口腔内圧(PEmax)及び最大平均吸気口腔内圧(PImax)に必要な部分だけを合理的に保存することが可能となる。
【0013】
前記圧力センサと前記処理部とは筐体に収納され、前記陽陰圧入力部と前記圧力センサとの間をチューブで接続することが好ましい。同構成によれば、陽陰圧入力部と本体とを離隔して、表示部による表示を被験者が目視で確認しながら測定を実施することができる。
【0014】
陽陰圧入力部に外部と接続して開閉可能なバイパス用のバルブを備え、同バルブの弁座に押圧力を抵抗値に変換する第二圧力センサを設け、同第二圧力センサによる電圧が所定の閾値Vthを超えた場合には、バルブが閉じられている適性な測定状態であるとの判定を行ってもよい。同構成によれば、マウスピース等を口にくわえた状態で呼気または吸気前の吸気または呼気動作を行うことができ、ボタンの押圧と判定により適切な測定動作をよりスムースに開始することができる。
【0015】
さらに、最大呼気口腔内圧(PEpeak)及び最大吸気口腔内圧(PIpeak)を測定可能とし、前記陽陰圧入力部と前記圧力センサとの間に吸息筋訓練器又は呼気陽圧訓練器を接続可能な訓練器接続部を備えてもよい。ところで、吸息筋訓練器又は呼気陽圧訓練器は、弾性体により弁の開閉圧力を調整する必要がある。同構成によれば、これらの訓練器を本装置に接続することにより、最大呼気口腔内圧(PEpeak)及び最大吸気口腔内圧(PIpeak)の測定をもって、これら訓練器の負荷圧力を校正することができる。
【0016】
そして、前記陽陰圧入力部に校正圧力調節用シリンダーを接続可能としてもよい。同シリンダーにより、安定して上記訓練器の校正作業が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明に係る呼吸測定装置の特徴によれば、呼吸筋力測定時において、呼気または吸気の適切性を判断できるように口腔内圧力を表示可能な呼吸測定装置を提供するに至った。
【0018】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかる呼吸測定装置の外観を示す図である。
図2図1のシステム構成を示す図である。
図3】バイパス弁近傍の縦断面図である。
図4】最大平均呼気口腔内圧(PEmax)測定時の表示部を示す図である。
図5】最大平均吸気口腔内圧(PImax)測定時の表示部を示す図である。
図6】最大平均呼気口腔内圧(PEmax)測定時の表示部を示す図であって、(a)は呼気閾値(+PEth)到達前の状態、(b)は呼気閾値(+PEth)到達後の状態、(c)は呼気閾値(+PEth)への再度の到達時の状態、(d)は呼気閾値(+PEth)への再度到達後TE時間経過後の状態、(e)はメモリへ取り込まれるデータのグラフと最大平均呼気口腔内圧(PEmax)導出の時間範囲Aeを表示した状態である。
図7】吸息筋訓練器の使用状態を示す図である。
図8】吸息筋訓練器の縦断面図である。
図9図8のA−A線断面図である。
図10】吸息筋訓練器の校正状態を示す図である。
図11】呼気陽圧訓練器の縦断面図である。
図12】呼気陽圧訓練器の校正状態を示す図である。
図13】最大吸気口腔内圧(PIpeak)を利用した校正時の表示部を示す図である。
図14】最大呼気口腔内圧(PEpeak)を利用した校正時の表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1、2は、本発明にかかる呼吸測定装置の外観、システム構成を示す図である。
呼吸測定装置1は陽陰圧入力部2,本体3を接続チューブ5で接続してなる。前記接続チューブ5の両端と前記陽陰圧入力部2,前記本体3とにはそれぞれソケット5aが備わり、着脱自在に接続できる。陰陽圧入力部2はHが口にくわえ、呼気、吸気を行い、その陽陰圧が前記接続チューブ5を通じて前記本体3の圧力センサ31に送られ、前記本体3で測定がなされる。前記陰陽圧入力部2,前記本体3が分離してなり、前記本体3の表示部33を見ながら、前記陰陽圧入力部2で呼気、吸気動作を行うことができる。
【0021】
前記陰陽圧入力部2は、マウスピース21,バクテリアフィルタ22,胴部23に分割されており、組み立て可能となっている。前記マウスピース21は先端が細く薄く形成されており、口にくわえやすい。前記バクテリアフィルタ22は、バクテリアが前記圧力センサ31へ到達することを防ぐ。前記胴部23の内部には気密空洞23aが収納され、前記マウスピース21と前記バクテリアフィルタ22に接続されて、呼気、吸気を前記接続チューブ5を通じて前記圧力センサ31へと導く。圧力センサ31は、ダイアフラム式のセンサであり、呼気、吸気の一部はリーク流路29よりリークされる。前記気密空洞23aの上部にはバイパス弁24が接続されており、通常は外気へ連通するバイパス路が形成されている。
【0022】
測定にあたっては、前記バイパス弁24がオープンの状態で吸気または呼気を行い、ボタン25を押し前記バイパス弁24を閉じてから測定を開始する。前記バイパス弁24には圧電抵抗素子27が接続され、具体的には、図3に示すように、弁座に抵抗体26が設けられている。バイパス弁24の押圧状態において前記圧電抵抗素子27が受ける押圧力を抵抗値に変換し、所定の電圧を超えた場合に適性にバルブが閉じられていると判断される。
【0023】
本体3は、筐体7の中に圧力センサ31、処理部32、表示部33、操作部34、通信制御部35及びメモリ36を備えてなる。表示部33は例えば液晶ディスプレイが用いられ、図4−6のごときグラフが表示される。処理部32のコントロールは操作部34の操作によって行われ、表示部33への表示内容が処理、生成される。接続チューブ5からの呼気の正圧、負圧は、圧力センサ31で測定され、呼気は吸排気流路37で外気に連通する。
【0024】
処理部32、通信制御部35等で使用されるプログラムはメモリ36に記憶され、処理部32にロードされて実行される。また、処理部32での処理により得られたデータは同時にメモリ36に記憶されるため、このメモリ36の一部は着脱可能に構成してもよい。通信制御部35は測定結果を外部の機器にブルートゥース(登録商標)などの無線通信により送受信する。
【0025】
上述の圧電抵抗素子27のデータは、接続ケーブル6で処理部32に送られる。通信モジュール28で前記通信制御部35に送ることもできる。呼吸筋力測定において適切な測定が開始できるか否かの判断材料として、上記抵抗値の電圧が本体3に送られる。同時に、測定開始のトリガーとしても使うこともできる。
【0026】
図4は表示部33に表示される最大平均呼気口腔内圧(PEmax)の測定状態のグラフであり、例えば、縦軸に口腔内圧力、横軸に時間をとる。測定に際しては、先のボタン25解放状態で可能な限り吸気し、限界に達した時点でボタン25を押して弁を閉じ、ノズルに呼気することで測定を開始する。このグラフでは、便宜上、データ記録開始時Te1を時刻ゼロとし、右に向かって時刻の経過を表示しているが、実際の時刻目盛りは図6のように固定してもよい。
【0027】
測定開始後の待機時は図6で後述するように左から1秒(折り返し時間TR)以内の位置で測定値が順次左側にスクロールされる。口腔内圧が閾値+PEthに到達した時点(Te1)から表示のスクロールを停止し、右側に向かってグラフが描かれる。再度閾値+PEthに到達した時点(Te2)から所定時間TE後に表示を停止する。例えば閾値(+PEth)として600Pa、TEとして1.5秒を設定することができる。
【0028】
口腔内圧力は順次圧力センサ31で測定され、時間ごとに処理部32及びメモリ36に蓄積、積分計算される。このとき、所定時間、例えば、算出時間範囲Ae=1秒の範囲での移動平均を算出し、その移動平均の最大値が最大平均呼気口腔内圧(PEmax)であり、処理部32で計算され、表示部33に表示される。当該最大平均呼気口腔内圧(PEmax)の算出時間範囲(Ae)の位置、測定範囲における最大呼気口腔内圧(PEpeak) も表示される。
【0029】
口腔内圧力は順次圧力センサ31で測定され、時間ごとに処理部32及びメモリ36に蓄積、積分計算される。このとき、算出時間範囲Ae=1秒の範囲での平均の口腔内圧力が最大平均呼気口腔内圧(PEmax)である。当該最大平均呼気口腔内圧(PEmax)の算出時間範囲(Ae)の位置も表示される。
【0030】
図5は表示部33に表示されるPImaxの測定状態のグラフであり、例えば、縦軸にマイナスの口腔内圧力、横軸に時間をとる。スクロールや測定開始は上記図4と同様であり、吸気測定・口腔内圧がマイナスである部分が異なる。可能な限り排気し、限界に達した時点でボタン25を押して弁を閉じ、吸気することにより測定を開始する。
【0031】
算出時間範囲Ai=1秒の範囲での移動平均の最大絶対値をとる値が最大平均吸気口腔内圧(PImax)であり、表示部33に表示される。当該最大平均吸気口腔内圧(PImax)の算出時間範囲(Ai)の位置、測定範囲における最大吸気口腔内圧(PIpeak) も表示される。
【0032】
口腔内圧が閾値−PIthに到達した時点(Ti1)から表示のスクロールを停止し、右側に向かってグラフが描かれる。再度閾値−PIthに到達した時点(Ti2)から所定時間TI後に表示を停止する。例えば、本実施形態では、閾値(−PIth)として−600Pa、遮断時間TIとして1.5秒を設定してある。
【0033】
図4に関する最大平均呼気口腔内圧(PEmax)の表示の例を図6を参照しながら時系列で説明する。図6(a)は呼気閾値(+PEth)到達前の状態であり、表示部33には7秒超の時間軸が横軸として表示され、この横軸の1秒の範囲で表示は左へスクロールされる。1秒以内であれば、右に向かって表示され、1秒に達した時点で、現時点の値は1秒の位置に表示され、過去の値は左にスクロールされる。
【0034】
図6(b)に示すように、口腔内圧力が呼気閾値(+PEth)に到達した後は、折り返し時間である1秒の位置から右に向かって表示がなされる。これにより、被験者である人Hは、自らの呼気の状態が正常であるかどうかを確認しつつ測定を行うことができ、呼気の漏れ、息切れなどの状態をチェックすることができる。
【0035】
図6(c)は呼気閾値(+PEth)への再度の到達時の状態である。その後、図6(d)に示す呼気閾値(+PEth)への再度到達後の遮断時間TE(=1.5秒)経過後に測定は停止される。図6(e)はメモリ33へ取り込まれるデータのグラフと最大平均呼気口腔内圧(PEmax)導出の時間範囲Aeを表示した状態である。メモリ33に取り込まれたデータは通信制御部37を通じて、または、メモリ33を取り外してパーソナルコンピュータ等に転送され、処理が可能である。
【0036】
図5のPImaxの測定に関しては、図6とは口腔内圧力がプラスマイナス反転するのみで、他は同様である。PEmax、PImaxの切り替えは、圧電抵抗素子27による正常測定開始検出後、圧力センサ31による最初の測定の口腔内圧力により処理部32で判定され、表示部33の表示が切り替えられる。圧力センサ31による計測が陽圧のときは、口腔内圧力をプラス軸で表示してPEmaxを測定・表示し、圧力センサ31による計測が陰圧のときは、口腔内圧力をマイナス軸で表示してPImaxを測定・表示する。
【0037】
上記実施形態では、表示部によるスクロール表示を最大1秒に到達した時点で順次左送りとしたが、1秒ごとに表示をリフレッシュして、右端から始めても良い。この場合1秒ごとに左端から右端にグラフが描かれることとなる。
【0038】
次に、図7図10を参照しながら、吸息筋訓練器の仕組みと本装置を用いた訓練器の校正について説明する。
吸息筋訓練器40は、図7に示すように、被験者Hが本体41を把持してマウスピース42を口にくわえ、吸気弁の解放圧力に抗しながら一定圧力で吸気を続けることにより、吸息筋を訓練するものである。この吸気弁の解放圧力を本発明の装置1を用いることで、校正することが目的である。
【0039】
この吸息筋訓練器40は、図8,9に示すように、本体41にマウスピース42を嵌合させてなり、本体41は、筐体43、吸気弁44及びその調節機構45を備えている。筐体43は径の異なる4つの円筒が順次組み合わさった中空筒であり、吸気弁44の弁体44aをスプリング45cで閉じ、スライダー45aを回転体45bで調整する。弁体44aは3本のハブに支持されたボスにスライド自在に嵌合する軸よりなるスライド機構44cで筐体43に支持されている。
【0040】
調節機構45において、スライダー45aは筐体43内の3ヶ所に設けられた突条43aに溝45a1を嵌め込んで、回転はしないが軸方向に移動する構造である。一方、回転体45bは3枚の板状体が120度隔てて合わさったもので、軸方向に空気の流通を許容し、筐体43のマウスピース側段差に係止して軸方向の抜けが防止され、周囲に形成した雄ねじ部5b2をスライダー内部の雌ねじ部45a2に螺合させて、摘み45b1の回転操作でスライダー45aの位置を決める。スライダー45aはその位置が目盛41aで表示され、スプリング45cで弁体44aを弁座44bに押し付け、弁体の解放圧力を表示するのであるが、必ずしも正確な開放圧力の表示されていない場合もある。
【0041】
そこで、図10のように、吸息筋訓練器40を本装置1に接続し、弁体の解放圧力を校正する。本実施形態では、呼吸測定装置1は3方につながるT字管60を備えている。T字管60の右側には、先のマウスピース42を取り外した孔に嵌合できる筒部を介して吸息筋訓練器40を接続してある。一方、T字管60の左側には、校正圧力調整用シリンダー70を筒部を介して接続してある。T字管60の左側の筒部には先のマウスピース21やバクテリアフィルタ22を接続可能であり、右側の筒部をキャップで塞ぐことにより、第一実施形態と同様の測定が可能となる。
【0042】
校正に際しては、ノブ72を引き出してピストン71を左側に移動させることにより、吸息筋訓練器40に負圧を付与する。このとき、1の表示部には、図13に示すように、最大吸気口腔内圧(PIpeak)が表示され、この値をもって吸息筋訓練器40の負荷圧力とする。また、この値が所定の値と異なる場合には、先の摘み45b1を回転させて、弁体44aの解放圧力を調整する。
【0043】
本発明に係る呼吸測定装置1は呼気陽圧訓練器50の校正にも適用が可能であり、吸気を呼気に変えればよい。図11の呼気陽圧訓練器の縦断面図、図12の呼気陽圧訓練器の校正状態を示す図、図14の最大呼気口腔内圧(PEpeak)を利用した校正時の表示部に構造と方法を記載した。呼気陽圧訓練器50の構造は、吸息筋訓練器40とは吸気を呼気に変えればよく、説明は省略する。たとえば、弁体44aは弁体54aと対応する。
【0044】
なお、呼気閾値(+PEth)、吸気閾値(−PIth)、遮断時間(TE,TI)、折り返し時間(TR)、算出時間範囲Ae,Aiは上記実施形態に限らず任意の値に適宜設定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、呼吸測定装置のほか、モニタを行いながら呼気、吸気を測定する呼吸関係の測定器に適用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:呼吸測定装置(呼吸筋力測定装置),2:陽陰圧入力部,3:本体,5:接続チューブ,5a:ソケット,6:接続ケーブル,7:筐体,H:被験者、21:マウスピース,22:バクテリアフィルタ,23:胴部,23a:気密空洞,24:バイパス弁,25:ボタン,26:抵抗体,27:圧電抵抗素子,28:通信モジュール,29:リーク流路,31:圧力センサ,32:処理部,33:表示部,34:操作部,35:通信制御部,36:メモリ,37:吸排気流路,40:吸息筋訓練器、41:本体、41a:目盛、42:マウスピース、43:筐体、43a:突条、44:吸気弁、44a:弁体、44b:弁座、44c:スライド機構、45調節機構、45a:スライダー、45a1:溝、45a2:雌ねじ部、45b:回転体、45b1:摘み、45b2:雄ねじ、45c:スプリング、50:呼気陽圧訓練器、51:本体、51a:目盛、53:筐体、53a:突条、54:吸気弁、54a:弁体、54b:弁座、54c:スライド機構、55調節機構、55a:スライダー、55a1:溝、55a2:雌ねじ部、55b:回転体、55b1:摘み、55b2:雄ねじ、55c:スプリング、60:T字管、70:校正圧力調節用シリンダー、71:ピストン、72:ノブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14