(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598199
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】防護柵支柱用反射部材
(51)【国際特許分類】
E01F 9/615 20160101AFI20191021BHJP
E01F 15/02 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
E01F9/615
E01F15/02
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-194179(P2015-194179)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66763(P2017-66763A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】永石 充
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 智
(72)【発明者】
【氏名】松藤 弘
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−094111(JP,A)
【文献】
特開平10−060845(JP,A)
【文献】
特開2013−087457(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/027103(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/615
E01F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護柵のキャップ付き支柱のキャップに嵌め込まれる、円筒形状の反射部材本体と、前記反射部材本体の下縁に内側に向けて形成された複数個の爪と、前記反射部材本体の側面に設けられた光反射材とからなり、前記反射部材本体の上部には、前記キャップの外面に当接する当接部が形成され、前記反射部材本体の嵌め込み前の前記爪の先端部を結ぶ円の直径は、前記キャップの外周面の直径より小さく、前記反射部材本体を前記キャップに嵌め込む際には、前記爪は、弾性力に抗して外方に広がり、嵌め込みが完了した後は、弾性力により元の状態に復帰する防護柵支柱用反射部材において、
前記当接部は、蓋状に形成され、且つ、その少なくとも一部に複数の光反射面を有し、
前記光反射面には、光反射テープが貼り付けられるか、又は、光反射剤が塗られていることを特徴とする防護柵支柱用反射部材。
【請求項2】
前記光反射面は、前記当接部の全面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の防護柵支柱用反射部材。
【請求項3】
前記光反射面は、前記当接部に放射状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の防護柵支柱用反射部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防護柵支柱用反射部材、特に、防護柵の支柱のキャップに嵌め込まれる、視認性に優れた防護柵支柱用反射部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路等に設置される防護柵は、適宜間隔をあけて立設された、上端部にキャップが嵌め込まれた支柱と、この支柱間に取り付けられたガードレール、ガードパイプあるいはガードケーブル等のガード部材とから構成されている。
【0003】
上記防護柵は、一般に白色塗料が施されているが、近年、周囲の景観を考慮して、茶系統のダーク色が施される傾向にある。このようにダーク色が施された防護柵は、昼間は問題なく視認できるが、夜間になると視認しにくく、事故が起こる危険性があった。なお、白色塗料が施された防護柵であっても、夜間、視認しにくい場合もある。
【0004】
そこで、防護柵の支柱のキャップに嵌め込まれる、夜間の視認性を向上させる機能を有する反射部材の一例が特許文献1に開示されている。以下、この防護柵支柱用反射部材を従来反射部材といい、図面を参照しながら説明する。
【0005】
図8は、従来反射部材を示す正面図、
図9は、従来反射部材を示す平面図、
図10は、従来反射部材を示す側面図、
図11は、従来反射部材を示す底面図、
図12は、
図9のA−A線断面図、
図13は、
図9のB−B線断面図、
図14は、支柱のキャップに嵌め込まれた従来反射部材を示す断面図、
図15は、支柱のキャップに嵌め込まれた、別の従来反射部材を示す断面図である。
【0006】
図8から
図14に示すように、従来反射部材は、丸鋼管からなる支柱1の上端部に取り付けられた金属製キャップ2(
図14参照)に嵌め込まれる円筒形状の樹脂製反射部材本体3と、反射部材本体3の下縁に内側に向けて形成された複数個(この例では3個)の爪4と、反射部材本体3の側面に貼り付けられた光反射テープからなる光反射材5とからなっている。
【0007】
反射部材本体3の上部には、キャップ2の外面に当接する当接部6が形成されている。当接部6は、反射部材本体3の上部を内側にリング状に突出させることにより形成されている。反射部材本体3の内側にリング状に突出した当接部6には、3個の切り欠き6aが形成され、爪4は、この切り欠き6aに対応する反射部材本体3の下縁に形成されている。反射部材本体3の嵌め込み前の爪4の先端部を結ぶ円(O)の直径(R1)は、キャップ2の外周面の直径(R2)より小さい(
図9、
図14参照)。
【0008】
これによって、反射部材本体3をキャップ2に嵌め込む際には、爪4は、弾性力に抗して外方に広がり、嵌め込みが完了した後は、弾性力により元の状態に復帰する。爪4が元の状態に復帰し、爪4がキャップ2の下部端面に当接する結果、反射部材本体3に引き抜き力が作用しても反射部材本体3は、キャップ2から外れることはない(
図14参照)。
【0009】
なお、当接部6は、
図8に示すように、キャップ2を覆うような蓋状に形成しても良い。
【0010】
また、光反射材5は、光反射テープ以外に、光反射塗料を反射部材本体3の側面に塗布して形成した光反射塗膜であっても良い。
【0011】
以上のように構成されている、従来反射部材は、以下のようにして、支柱のキャップに嵌め込まれる。
【0012】
反射部材本体3をキャップ2に当てがい、手のひらで反射部材本体3を押し下げる。このときの押し下げ力は、爪4の弾性力が大きくないので、容易に押し下げることができる。反射部材本体3が押し下げられると、爪4は、キャップ2の側面に沿って、弾性力に抗して外方に広がりながら下降する。爪4は、キャップ2を通過すると、弾性力により元の状態に復帰する。これによって、爪4は、キャップ2の下部端面に当接する結果、反射部材本体3に引き抜き力が作用しても反射部材本体3は、キャップ2から外れることはない。
【0013】
このようにして、従来反射部材は、防護柵の支柱のキャップに容易かつ確実に嵌め込まれ、反射部材に引き抜き力が作用しても反射部材がキャップ2から容易に外れることはない。
【0014】
ここで、防護柵は、支柱間にガードレール、ガードパイプあるいはガードケーブルを取り付けたもの、あるいは、転落防止柵や横断防止柵等であっても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2015−94111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来反射部材は、以下のような利点を有している。
【0017】
(1)部品数は、支柱用反射部材3と光反射材5のみであるので、製造コストが安くつく。
(2)支柱1のキャップ2に嵌め込むものであるので、高い嵌め込み強度を必要としない。この結果、ハンマー等の工具等を使わず人手により容易にキャップ2に嵌め込むことができる。
(3)高い嵌め込み強度を必要としないので、支柱1のキャップ2に対して嵌め込み損じるおそれがなく、たとえ、嵌め込み損じても容易に嵌め込みし直すことができる。
(4)高い強度を必要としないので、防護柵への車の衝突事故等により破損して飛散し、人に当たった場合であっても人に与える影響が少ない。
(5)従来キャップに取付可能のため、既に組立が完了している防護柵支柱に取り付けることができる。
【0018】
しかし、従来反射部材において、さらに高い光反射効果を有する防護柵支柱用反射部材の開発が望まれている。
【0019】
従って、この発明の目的は、従来反射部材の利点をそのまま有し、さらに高い光反射効果を有する、視認性に優れた防護柵支柱用反射部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0021】
請求項1に記載の発明は、防護柵のキャップ付き支柱のキャップに嵌め込まれる、円筒形状の反射部材本体と、前記反射部材本体の下縁に内側に向けて形成された複数個の爪と、前記反射部材本体の側面に設けられた光反射材とからなり、前記反射部材本体の上部には、前記キャップの外面に当接する当接部が形成され、前記反射部材本体の嵌め込み前の前記爪の先端部を結ぶ円の直径は、前記キャップの外周面の直径より小さく、前記反射部材本体を前記キャップに嵌め込む際には、前記爪は、弾性力に抗して外方に広がり、嵌め込みが完了した後は、弾性力により元の状態に復帰する防護柵支柱用反射部材において、前記当接部は、蓋状に形成され、
且つ、その少なくとも一部に複数の光反射面を有し、前記光反射面には、光反射テープが貼り付けられるか、又は、光反射剤が塗られていることを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記光反射面は、前記当接部の全面に形成されていることに特徴を有するものである。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記光反射面は、前記当接部に放射状に形成されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、キャップの外面に当接する当接部に光反射面を形成することによって、従来反射部材が有する、反射部材本体の側面に貼り付けられた光反射テープからなる光反射材による反射効果との相乗効果により、さらに高い光反射効果を得られるので、視認性を一層、向上させることができる。
【0030】
この発明によれば、光反射面に光反射テープを張り付けたり、光反射剤を塗ることによって、さらに光反射効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】この発明の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【
図2】この発明の別の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【
図3】この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【
図4】この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【
図5】この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【
図6】この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【
図7】この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【
図14】支柱のキャップに嵌め込まれた従来反射部材を示す断面図である。
【
図15】支柱のキャップに嵌め込まれた、別の従来反射部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の防護柵支柱用反射部材の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、この発明の防護柵支柱用反射部材を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、正面図である。
【0034】
図1に示すように、この発明の防護柵支柱用反射部材は、丸鋼管からなる支柱1の上端部に取り付けられた金属製キャップ2(
図14参照)に嵌め込まれる円筒形状の樹脂製反射部材本体3と、反射部材本体3の下縁に内側に向けて形成された複数個(この例では3個)の爪4(
図8、
図9参照)と、反射部材本体3の側面に貼り付けられた光反射テープからなる光反射材5とからなっている。
【0035】
反射部材本体3の上部には、キャップ2の外面を覆うような四角形の蓋状に形成された当接部6が形成されている。光反射面7は、当接部6の各辺に形成されている。
【0036】
反射部材本体3の嵌め込み前の爪4の先端部を結ぶ円(O)の直径(R1)は、キャップ2の外周面の直径(R2)より小さい(
図9、
図14参照)。
【0037】
これによって、反射部材本体3をキャップ2に嵌め込む際には、爪4は、弾性力に抗して外方に広がり、嵌め込みが完了した後は、弾性力により元の状態に復帰する。爪4が元の状態に復帰し、爪4がキャップ2の下部端面に当接する結果、反射部材本体3に引き抜き力が作用しても反射部材本体3は、キャップ2から外れることはない(
図14参照)。
【0038】
図2に示す、この発明の別の防護柵支柱用反射部材は、当接部6が五角形の蓋状に形成され、光反射面7が当接部6の各辺に形成されているものである。
【0039】
図3に示す、この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材は、当接部6が六角形の蓋状に形成され、光反射面7が当接部6の各辺に形成されているものである。
【0040】
図4に示す、この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材は、当接部6が八角形の蓋状に形成され、光反射面7が当接部6の各辺に形成されているものである。
【0041】
図5に示す、この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材は、当接部6が蓋状に形成され、光反射面7が当接部6に渦巻状に形成されているものである。
【0042】
図6に示す、この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材は、当接部6が蓋状に形成され、光反射面7が当接部6の全面に形成されているものである。
【0043】
図7に示す、この発明の更に別の防護柵支柱用反射部材は、当接部6が蓋状に形成され、光反射面7が当接部6に放射状に形成されているものである。
【0044】
以上、
図1から
図7に示す例は、何れも、当接部6がキャップ2の外面を覆うような蓋状に形成されたものであるが(
図15参照)、
図6、
図7に示す防護柵支柱用反射部材を除いて、当接部6は、反射部材本体3の上部を内側にリング状に突出させることにより形成しても良い。
【0045】
図1から
図7に示す防護柵支柱用反射部材における当接部6に形成された光反射面7に光反射テープを張り付けたり、光反射剤を塗ることによって、さらに光反射効果を高めることができる。
【0046】
ここで、車両等のライトの光源に対し、支柱の表面を反射する反射光は、通常、支柱が円筒形状のため車両等の移動に伴いその表面を滑らかに移動していく。従って、反射光の光量は比較的に一定であるため、視認性向上効果は薄い。
【0047】
この発明によれば、支柱の上部に光反射面7が形成されるので、車両等の反射光は光反射面7に反射する位置と反射しない位置とで光量に差異が生じるため、ストロボ効果が生じ、視認性向上効果が向上する。
【0048】
以上、説明したように、この発明によれば、当接部6に光反射面7を形成することによって、従来反射部材が有する、反射部材本体3の側面に貼り付けられた光反射テープからなる光反射材5による反射効果との相乗効果により、さらに高い光反射効果が得られるので、視認性を一層、向上させることができる。
【0049】
また、光反射面に光反射テープを張り付けたり、光反射剤を塗ることによって、さらに光反射効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0050】
1:支柱
2:キャップ
3:反射部材本体
4:爪
5:光反射材
6:当接部
7:光反射面