【実施例】
【0054】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた試薬は、以下の通りである。また、各表中の組成の単位は、質量部である。
<試薬>
ヒアルロン酸(160万):ヒアルロン酸ナトリウム、キューピー株式会社製の商品名「ヒアルロンサンHA−LQH」(製品表記:分子量120〜220万;平均分子量160万)
ヒアルロン酸(30万):ヒアルロン酸、キューピー株式会社製の商品名「ヒアルロンサンHA−LF−P」(製品表記:分子量20〜50万;平均分子量30万)
ヒアルロン酸(230万):ヒアルロン酸ナトリウム、キューピー株式会社製の商品名「HYALURONSAN HA−LQSH」(製品表示:分子量160万〜290万、平均分子量230万)
ヒアルロン酸(10万):ヒアルロン酸ナトリウム、キッコーマンバイオケミファ株式会社製の商品名「ヒアルロン酸 FCH−SU」(製品表示:平均分子量5万〜11万)
グリセリン:和光純薬工業株式会社製のグリセリン(特級)
プロピレングリコール:和光純薬工業株式会社製のプロピレングリコール(特級)
ブタンジオール:和光純薬工業株式会社製の1,3−ブタンジオール(特級)
PEG200:和光純薬工業株式会社製のポリエチレングリコール200(一級)
プロパンジオール:和光純薬株式会社製の1,3−プロパンジオール(特級)
ジグリセリン:和光純薬株式会社製のジグリセリン(ガスクロマトグラフ用)
ペンタンジオール:和光純薬株式会社製の1,2−ペンタンジオール
ヘキサンジオール:和光純薬株式会社製の1,2−ヘキサンジオール
10%リン酸:和光純薬工業株式会社製のリン酸(特級)
2%硫酸:和光純薬工業株式会社製の硫酸(特級)
2%塩酸:和光純薬工業株式会社製の塩酸(特級)
ビタミンC:和光純薬工業株式会社製のL(+)−アスコルビン酸(特級)
酢酸:ナカライテスク株式会社製の酢酸(カラムクロマトグラフ用)
クエン酸:和光純薬工業株式会社製のクエン酸一水和物(特級)
サリチル酸:和光純薬工業株式会社製のサリチル酸(特級)
アスコルビン酸エチル:日本精化株式会社製の商品名「VCエチル」
グルコノラクトン:和光純薬株式会社製のグルコノ-δ-ラクトン(薬添規)
ラクトピオン酸:和光純薬株式会社製のラクトピオン酸(一級)
アスパラギン酸:和光純薬株式会社製のDL−アスパラギン酸(特級)
コラーゲン:水溶性コラーゲン液、新田ゼラチン株式会社製の商品名「コラーゲンP(PF)」
ヒアルロン酸(1万):加水分解ヒアルロン酸、キューピー株式会社製の商品名「ヒアロオリゴ」(製品表示:分子量1万以下)
ヒアロリペア:加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12−13)グリセリル、キューピー株式会社製の商品名「ヒアロリペア」
ハチミツ:アピ株式会社製の精製蜂蜜
【0055】
[実施例1〜15及び比較例1]
表1に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合し、ヒアルロン酸水溶液を得た。得られたヒアルロン酸水溶液のpHを、株式会社堀場製作所製のTwinpH(B−212)を用いて測定した。結果を表1に示す。得られたヒアルロン酸水溶液に多価アルコール(グリセリン)を表1の配合比(質量部)となるように加え、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液を50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一の厚みとなるよう塗布し、ホットプレートで90℃、3時間乾燥し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚さ約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。なお、比較例1においては、酸を混合しなかったこと以外は、実施例1〜15と同様にしてシートを得た。ただし、比較例1では、ゲル形成用水溶液を乾燥させても、ゲルは得られず、高粘度溶液が得られた。なお、参考のため、実施例4のヒアルロン酸ゲルシートを製造する際のゲル形成用水溶液と乾燥後のヒアルロン酸ゲルシートの重量をそれぞれ測定したところ、以下の通りであった。
ゲル形成用水溶液の重量:4.10g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.71g
なお、ゲル形成用水溶液の固形分とは、ゲル形成用水溶液の調製に用いた蒸留水以外の成分の合計量である。
【0056】
<ヒアルロン酸ゲルシートの性状評価>
実施例1〜15で得られたヒアルロン酸ゲルシート、及び比較例1で得られたシート状の高粘度液の性状を以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
0:無色透明で、少し固く、高い形状維持性を有するゲル
1:無色透明で、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有するゲル
2:無色透明で、柔らかく、やや高い形状維持性を有するゲル
3:無色透明で、かなり柔らかく、低い形状維持性を有するゲル
4:無色透明の高粘度液
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示される結果から、ヒアルロン酸、グリセリン、酸、及び蒸留水を用いた実施例1〜15においては、ヒアルロン酸ゲルシートが得られることが明らかとなった。また、ヒアルロン酸ゲルシートの調製過程において、ヒアルロン酸、酸、及び蒸留水を混合して得られるヒアルロン酸水溶液のpHを2.0〜3.8の範囲に設定した場合には、弾性、形状維持性の観点から、化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物として皮膚などに特に好適に適用できることが明らかとなった。一方、酸を用いなかった比較例1の場合には、ゲルは得られず、高粘度液が得られた。
【0059】
<ヒアルロン酸ゲルの溶解性試験>
実施例4、6、10、12で得られたヒアルロン酸ゲルシート(4cm×4cm)をpH7.4のリン酸緩衝液100mL中に入れ、37℃で撹拌子を用いて120rpmで4時間撹拌した。その結果、いずれのヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。
【0060】
<ゲル形成用水溶液のpHとヒアルロン酸ゲルシートを蒸留水に溶解して得られた水溶液のpHとの比較>
実施例3,5、7で調製したゲル形成用水溶液のpHを、それぞれ株式会社堀場製作所製のTwinpH(B−212)を用いて測定した。結果を表2に示す。次に、実施例3、5、7で得られたヒアルロン酸ゲルシートに対して、ゲル形成用水溶液と同じ組成になるようにして、それぞれ蒸留水を加えて、水溶液を調製した。得られた水溶液のpHを、それぞれ、株式会社堀場製作所製のTwinpH(B−212)を用いて測定した。結果を表2に示す。なお、加えた蒸留水の量は、ヒアルロン酸ゲルシートに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して、実施例3では199質量部、実施例5では198質量部、実施例7では190質量部であった。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示されるように、ゲル形成用水溶液のpHと、当該ゲル形成用水溶液から調製された水溶性ヒアルロン酸ゲルを蒸留水に溶解させて得られる水溶液のpHとは、ほぼ同程度となった。
【0063】
[実施例16〜20及び比較例2]
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量160万)の代わりに、ヒアルロン酸(分子量30万)を用い、表3に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合したこと以外は、実施例1〜15と同様にしてヒアルロン酸ゲルシートを得た。なお、比較例2においては、酸を混合しなかったこと以外は、実施例16〜20と同様にしてシートを得た。
【0064】
次に、実施例1〜15と同様にして、実施例16〜20で得られたヒアルロン酸ゲルシート、及び比較例2で得られたシート状の高粘度液の性状を評価した。また、別途、グリセリンを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、10%リン酸、及びビタミンCの量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示される結果から、ヒアルロン酸ナトリウムの代わりにヒアルロン酸を用いた実施例16〜20においても、ヒアルロン酸、グリセリン、酸、及び蒸留水を混合して得られるゲル形成用水溶液から調製することにより、実施例1〜15と同様に、ヒアルロン酸ゲルシートが得られることが明らかとなった。一方、酸を混合しなかった比較例2では、比較例1と同様、ゲルは得られず、高粘度溶液が得られた。
【0067】
また、実施例17、20のヒアルロン酸ゲルについて、実施例4、6、10、12と同様にして、リン酸緩衝液への溶解性試験を行った。その結果、いずれのヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。
【0068】
[実施例21〜25]
グリセリンの配合比(質量部)を表4のようにしたこと以外は、実施例1〜15と同様にして、実施例21〜25のヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例21〜25で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
表4に示される結果から、ヒアルロン酸1質量部に対して、グリセリンが1〜100質量部の範囲で配合されている場合にも、ヒアルロン酸ゲルシートが得られることが明らかとなった。
【0071】
また、実施例23のヒアルロン酸ゲルについて、実施例4、6、10、12と同様にして、リン酸緩衝液への溶解性試験を行った。その結果、このヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。なお、参考のため、実施例23,25のヒアルロン酸ゲルシートを製造する際のゲル形成用水溶液と乾燥後のヒアルロン酸ゲルシートの重量をそれぞれ測定したところ、以下の通りであった。
(実施例23)
ゲル形成用水溶液の重量:13.12g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.70g
(実施例25)
ゲル形成用水溶液の重量:2.09g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.75g
なお、ゲル形成用水溶液の固形分とは、ゲル形成用水溶液の調製に用いた蒸留水以外の成分の合計量である。
【0072】
[実施例26〜37]
グリセリンの代わりに表5に記載の多価アルコールを用い、配合比(質量部)が表5となるようにしたこと以外は、実施例1〜15と同様にして、実施例26〜37の水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例26〜37で得られた水溶性ヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5に示される結果から、グリセリンの代わりに、他の多価アルコールとして、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコールを用いた場合にも、水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが明らかとなった。
【0075】
また、実施例29、33、37のヒアルロン酸ゲルについて、実施例4、6、10、12と同様にして、リン酸緩衝液への溶解性試験を行った。その結果、いずれのヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。
【0076】
<ヒアルロン酸ゲルシートの貼付試験による保湿効果評価>
ボランティア6名(A〜F)の右前腕部に朝夜2回、それぞれ実施例4及び実施例16のヒアルロン酸ゲルシート(2cm×2cm)を30分間貼り付けた。その後、ゲルの上に精製水約10mLを少しずつ加えて約3分間マッサージしながら溶かしたのち、精製水で十分に洗浄して、自然乾燥させた。この処置を7日間連続で行った後、最終日の翌日の朝(処置開始から8日後の朝)の肌水分量についてモバイルコントローラーMSC100/コルネオメータCM825(株式会社インテグラル製)を用いて皮膚水分量を測定した。また、比較対象として、同一ボランティアの無処置の左前腕部の皮膚水分量を測定した。比較対象の左前腕部の皮膚水分量に対する同一ボランティアのヒアルロン酸ゲルシートを適用した右前腕部の皮膚水分量の増加率(%)及び平均±SDを表6に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
表6に示されるように、実施例4及び実施例16で得られたヒアルロン酸ゲルシートは、無処理の場合に比して、有意な肌水分量の増加効果が認められた。また、ヒアルロン酸ゲルシートは適度な弾性を有し、形状維持性も優れているため、取り扱いも容易であり、皮膚刺激などの問題も生じなかった。
【0079】
[実施例32
A〜33
A]
表7に記載のとおり、酸をサリチル酸にしたこと以外は、実施例1〜15と同様にして、実施例32
A〜33
Aのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例32
A〜33
Aで得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリンを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及びサリチル酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表7に示す。なお、実施例33
Aにおいては、ゲル形成用水溶液及びヒアルロン酸ゲルシートにサリチル酸の結晶が含まれていた。
【0080】
【表7】
【0081】
[実施例34
A〜35
A]
表8に記載の配合比(質量部)となるように、プラスチックス製シャーレ(直径9cm)にヒアルロン酸、グリセリン及び蒸留水を入れて厚み約200μmの均一な高粘度のヒアルロン酸水溶液を得た。得られたヒアルロン酸水溶液の表面に表8に記載の配合比(質量部)に相当する10%リン酸を、噴霧器を用いて均一に塗布した。その後、24時間、室温で保管し、厚み約200μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例34
A〜35
Aで得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
[実施例36
A〜37
A]
表9に記載の配合比(質量部)となるように、プラスチックス製シャーレ(直径14cm)にヒアルロン酸、グリセリン及び蒸留水を入れて厚み約2cmの均一な高粘度のヒアルロン酸水溶液を得た。得られたヒアルロン酸水溶液をスパチュラで約2cm×2cmの範囲ですくい取り、200mlの10%リン酸/グリセリン溶液に10分間浸漬して取り出し、24時間、室温で保管し、約2×2×2cmの塊状のヒアルロン酸ゲルを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例36
A〜37
Aで得られた塊状ヒアルロン酸ゲルの性状を評価した。その結果、得られた塊状ヒアルロン酸ゲルは、いずれも無色透明で、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有するゲルであった。
【0084】
【表9】
【0085】
[実施例38〜39]
表10に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例38〜39で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表10に示す。
【0086】
【表10】
【0087】
表10に示される結果から、グリセリンとブタンジオールとを併用することにより、ヒアルロン酸水溶液のpHが4.9または5.2と高い場合にも、水溶性ヒアルロン酸ゲルを好適に製造できることが分かる。
【0088】
[実施例40〜43]
表11に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例40〜43で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表11に示す。
【0089】
【表11】
【0090】
表11に示される結果から、平均分子量(製品表示)が230万または10万のヒアルロン酸を用いた場合にも、水溶性ヒアルロン酸ゲルを好適に製造できることが分かる。
【0091】
[実施例44〜49]
表12に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、48時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約4mmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例44〜49で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を以下の基準により評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表12に示す。
【0092】
<ヒアルロン酸ゲルシートの性状評価>
A:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有し、十分な機械的強度を有する。ゲルを手で持ち上げても破断しない。
B:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。ゲルから多価アルコールがブリードしており、Aと比較して機械的強度は劣るものの、ゲルを手で持ち上げても破断しない。
C:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。ゲルから多価アルコールがブリードしており、Bよりも機械的強度が弱く、ゲルを手で持ち上げると破断する。
【0093】
【表12】
【0094】
表12に示される結果から、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールの含有量が500質量部以下である場合には、機械的強度が十分に高い水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。また、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールの含有量が500質量部を超えて、1500質量以下である場合には、機械的強度がやや低下した柔らかい水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。また、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールの含有量が1500質量部を超えて、2000質量以下である場合には、機械的強度が低下し、手で持ち上げると破断する程度に柔らかい水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。
【0095】
[実施例50〜56]
表13に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、各種酸(アスコルビン酸エチル、グルコノラクトン、ラクトピオン酸、アスパラギン酸)、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例50〜56で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び各種酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表13に示す。
【0096】
【表13】
【0097】
表13に示される結果から、酸として、アスコルビン酸エチル、グルコノラクトン、ラクトピオン酸、アスパラギン酸を用いた場合にも、好適に水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。
【0098】
[実施例57〜67]
表14に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、PEG200、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジグリセリン、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例57〜67で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン、ブタンジオール、PEG200、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジグリセリン、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表14に示す。
【0099】
なお、参考のため、実施例57、59、60、及び62のヒアルロン酸ゲルシートを製造する際のゲル形成用水溶液と乾燥後のヒアルロン酸ゲルシートの重量をそれぞれ測定したところ、以下の通りであった。
(実施例57)
ゲル形成用水溶液の重量:4.15g(固形分:0.71g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.72g
(実施例59)
ゲル形成用水溶液の重量:4.10g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.71g
(実施例60)
ゲル形成用水溶液の重量:4.13g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.65g
(実施例62)
ゲル形成用水溶液の重量:4.10g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.73g
なお、ゲル形成用水溶液の固形分とは、ゲル形成用水溶液の調製に用いた蒸留水以外の成分の合計量である。
【0100】
【表14】
【0101】
表14に示される結果から、グリセリンと、ブタンジオール、PEG200、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジグリセリン、ペンタンジオール、またはヘキサンジオールとを併用することにより、弱酸性の水溶性ヒアルロン酸ゲルを好適に製造できることが分かる。特に、グリセリンと他の多価アルコールとの質量比が10:30〜20:20の範囲にある場合には、ヒアルロン酸水溶液のpHが4.6とかなり弱い酸性であっても、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。
【0102】
[実施例68〜75]
表15に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、各種美容成分(コラーゲン、ヒアルロン酸(分子量1万以下)、ヒアロリペア、ハチミツ)、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例68〜75で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、美容成分、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表15に示す。
【0103】
【表15】
【0104】
表15に示されるように、水溶性ヒアルロン酸ゲルに各種の美容成分を配合した場合にも、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。
【0105】
[実施例76〜78]
表16に記載の配合比(質量部)となるように、まず、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ヒアルロン酸水溶液を調製した。次に、ヒアルロン酸水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約1mmの高粘度液を得た。次に、この液の表面に、表16に記載の配合比(質量部)に相当する2%塩酸、酢酸を塗布して、室温にて24時間保管して、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例76〜78で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表16に示す。
【0106】
【表16】
【0107】
塩酸や酢酸などは、水溶性ヒアルロン酸ゲルを製造する際の乾燥によって、水と共に蒸発しやすいため、製造方法によっては酸の含有量をコントロールすることが難しい。このため、適度な弾性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルを製造し難い(例えば、実施例14を参照)が、実施例76〜78のように、ヒアルロン酸水溶液から水を蒸発させた後、酸を塗布して水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることにより、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。
【0108】
[実施例79〜82]
表17に記載の配合比(質量部)となるように、高分子量のヒアルロン酸(平均分子量230万)、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例79〜82で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン、ブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表17に示す。
【0109】
【表17】
【0110】
表17に示されるように、高分子量のヒアルロン酸を用い、かつ、グリセリンとブタンジオールとを併用することにより、ヒアルロン酸水溶液のpHを4.6、さらには5.2にまで酸性を弱めた場合にも、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。例えば、上記の実施例39では、平均分子量160万のヒアルロン酸ナトリウムを用いた場合に、得られる水溶性ヒアルロン酸ゲルの性状評価は「2」であったが、実施例80では、平均分子量230万の高分子量のヒアルロン酸ナトリウムを用いた場合、得られる水溶性ヒアルロン酸ゲルの性状評価は「1」であった。
【0111】
[実施例83〜86]
表18に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(平均分子量160万)を蒸留水に溶解後、グリセリン及びブタンジオールを添加して、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合してヒアルロン酸水溶液を調製した。次に、得られたヒアルロン酸水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約1mmの高粘度液を得た。次に、この高粘度液に表18に記載の配合比(質量部)となうように、10%リン酸及び蒸留水を塗布して、室温で48時間保管し、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例83〜86で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表18に示す。
【0112】
【表18】
【0113】
表18に示されるように、本発明においては、ヒアルロン酸1質量部に 対して、水を100質量部程度含む場合にも、ゲルを形成できることが分か る。さらに、水の含有量が60質量部程度以下であると、ゲルの性状が「1 」となり、無色透明で、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有するゲルと なることが分かる。
【0114】
[実施例87〜96]
表19に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(平均分子量160万または230万)を蒸留水に溶解後、グリセリン及びブタンジオールを添加して、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合してヒアルロン酸水溶液を調製した。次に、得られたヒアルロン酸水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約200μmの高粘度液を得た。次に、この高粘度液に表19に記載の配合比(質量部)となるように、10%リン酸及び蒸留水を塗布して、室温で48時間保管し、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を以下の基準により評価した。結果を表19に示す。
【0115】
<ヒアルロン酸ゲルシートの性状評価>
A’:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有し、十分な機械的強度を有する。ゲルを手で持ち上げても破断しない。
B’:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。Aと比較して機械的強度は劣るものの、ゲルを手で持ち上げても破断しない。
C’:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。Bよりも機械的強度が弱く、ゲルを手で持ち上げると破断する。
【0116】
【表19】
【0117】
表19に示されるように、本発明においては、高分子量のヒアルロン酸 を用いたり、酸の含有量を増やすことにより、例えばヒアルロン酸1質量部 に対して、水を400質量部程度含む場合にも、高い機械的強度を有するゲルが得られることが分かる。
【0118】
[実施例97及び98]
表20に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(平均分子量160万または230万)を蒸留水に溶解後、10%リン酸、グリセリン及びブタンジオールを添加して、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合してゲル形成用水溶液を調製した。次に、得られた水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約200μmの水溶性ヒアルロン酸ゲルを得た。次に、水溶性ヒアルロン酸ゲルの表面に表20に記載の配合比となるように、蒸留水を塗布して、室温で48時間保管し、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を実施例87〜96と同様にして評価した。結果を表20に示す。
【0119】
【表20】
【0120】
表20に示されるように、ヒアルロン酸ゲルに水を添加することによって、実施例87〜96と同様に、本発明においては、例えばヒアルロン酸1質量部に対して、水を200〜400質量部程度含む場合にも、高い機械的強度を有するゲルが得られることが分かる。
【0121】
[実施例99〜102]
実施例57と同様に、表14に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み7.5μm)/ポリエチレンテレフタレート不織布のラミネートフィルム(日本バイリーン株式会社製の商品名「EH−1212」)の不織布側にゲル形成用水溶液を均一の厚みとなるよう塗布し、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、ラミネートフィルムと一体となったヒアルロン酸ゲルシート(ヒアルロン酸ゲルシート単体の厚みが約10μm、約20μm、約50μm、及び、200μmの4種類)を得た。これらラミネートフィルムとヒアルロン酸ゲルシートとの接着強度はいずれも十分なものであった。