特許第6598207号(P6598207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598207水溶性ヒアルロン酸ゲル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598207
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】水溶性ヒアルロン酸ゲル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20191021BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20191021BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20191021BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20191021BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20191021BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20191021BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 5/08 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/02
   A61K8/34
   A61K8/24
   A61K8/20
   A61K8/23
   A61K8/36
   A61K8/365
   A61K8/368
   A61K8/60
   A61K8/67
   A61Q19/00
   A61K9/70
   A61K47/10
   A61K47/36
   A61P17/16
   A61K31/728
   A61L15/28 100
   A61L15/28 200
   C08B37/08 Z
   C08L5/08
【請求項の数】18
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-525188(P2015-525188)
(86)(22)【出願日】2014年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2014067199
(87)【国際公開番号】WO2015002091
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-139624(P2013-139624)
(32)【優先日】2013年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-253769(P2013-253769)
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513088205
【氏名又は名称】株式会社リタファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】米戸 邦夫
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−102228(JP,A)
【文献】 特開2002−212047(JP,A)
【文献】 特開平09−110680(JP,A)
【文献】 特開2014−024828(JP,A)
【文献】 特開2011−136936(JP,A)
【文献】 特表2010−515720(JP,A)
【文献】 特開2013−107862(JP,A)
【文献】 国際公開第01/057093(WO,A1)
【文献】 国際公開第99/010385(WO,A1)
【文献】 特開平05−058881(JP,A)
【文献】 特開平06−065048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 9/70
C08B 37/08
C08L 5/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸、多価アルコール、ヒアルロン酸以外の酸、及び0〜10質量%の多価アルコール以外の水溶性有機溶媒を含み、
前記ヒアルロン酸の含有量が0.2〜50質量%であり、
前記多価アルコールが、グリセリンと、グリセリン以外の多価アルコールとを、30:10〜4:36の質量比で含んでいる、水溶性ヒアルロン酸ゲル(但し、4−メトキシサリチル酸又はその塩と、キサンタンガムとを含有するものを除く)。
【請求項2】
前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して水が200質量部となるようにして、前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれる成分のうち前記多価アルコールと水以外の成分を水に溶かして得られるヒアルロン酸水溶液のpHが1.9〜5.2の範囲にある、請求項1に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸の含有量が0.2〜20質量%である、請求項1または2に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
【請求項4】
前記ヒアルロン酸1質量部に対して、前記多価アルコールを1質量部以上、2000質量部以下含む、請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸1質量部に対して、700質量部以下の水を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
【請求項6】
前記多価アルコールが、グリセリンと、グリセリン以外の多価アルコールとを、25:15〜4:36の質量比で含んでいる、請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
【請求項7】
前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して水が200質量部となるようにして、前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれる成分のうち前記多価アルコールと水以外の成分を水に溶かして得られるヒアルロン酸水溶液のpHが4.2〜5.2の範囲にある、請求項6に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
【請求項8】
シート状である、請求項1〜7のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルが支持体上に形成されてなる、水溶性ヒアルロン酸ゲルシート。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルである化粧料。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルである外用医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルである医療用具用組成物。
【請求項13】
ヒアルロン酸、多価アルコール、ヒアルロン酸以外の酸、0〜10質量%の多価アルコール以外の水溶性有機溶媒、及び水を混合してゲル形成用水溶液を調製する工程を備え、
前記ヒアルロン酸の含有量が0.2〜20質量%であり、
前記多価アルコールが、グリセリンと、グリセリン以外の多価アルコールとを、30:10〜4:36の質量比で含んでいる、水溶性ヒアルロン酸ゲル(但し、4−メトキシサリチル酸又はその塩と、キサンタンガムとを含有するものを除く)の製造方法。
【請求項14】
前記ゲル形成用水溶液に含まれる水を蒸発させる工程をさらに備える、請求項13に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
【請求項15】
前記ゲル形成用水溶液を容器に入れて水を蒸発させる、請求項14に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
【請求項16】
前記ゲル形成用水溶液に含まれる水を蒸発させた後、水を添加する工程をさらに備える、請求項14または15に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
【請求項17】
ヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の多価アルコール以外の水溶性有機溶媒、及び水を混合してヒアルロン酸水溶液を調製し、前記ヒアルロン酸水溶液をシート状に拡げる工程と、
前記シート状のヒアルロン酸水溶液に対してヒアルロン酸以外の酸を添加する工程と、
を備える、水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
【請求項18】
ヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の多価アルコール以外の水溶性有機溶媒、及び水を混合してヒアルロン酸水溶液を調製し、前記ヒアルロン酸水溶液をシート状に拡げる工程と、
前記シート状のヒアルロン酸水溶液を加熱乾燥させる工程と、
前記加熱乾燥させたヒアルロン酸水溶液に対してヒアルロン酸以外の酸を添加する工程と、
を備える、水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ヒアルロン酸ゲル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体適合性に優れ、保湿作用をはじめとする多くの有効作用を示すヒアルロン酸が、美容分野、医療分野などにおいて注目されている。ヒアルロン酸は、β−D−N−アセチルグルコサミンとβ−D−グルクロン酸とが交互に結合した、直鎖状の高分子多糖であり、哺乳動物の結合組織に分布するほか、鶏の鶏冠、連鎖球菌の莢膜などにも存在することが知られている。市販されているヒアルロン酸は、一般に、鶏の鶏冠、臍帯等からの単離抽出、ストレプトコッカス属等の微生物を用いた発酵法などにより調製されている。
【0003】
また、従来、高分子材料を含むゲル組成物が、美容分野、医療分野などに用いられている。特に、美容分野、医療分野などに用いられるゲル組成物は、人体に適用されるため、生体適合性に優れていることが求められている。このため、このようなゲル組成物に含まれる高分子材料として、天然素材であり、生体適合性に優れるヒアルロン酸を用いることが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、架橋されたヒアルロン酸を用いてゲル組成物を調製する方法が開示されている。また、特許文献2には、ヒアルロン酸の構成2糖単位当たりに光二量化性架橋基が平均0.0005〜0.05個導入されたことを特徴とする光架橋性ヒアルロン酸誘導体のゲルが開示されている。さらに、特許文献3には、ヒアルロン酸10W/V%以上と、架橋剤と、水とを含む混合物を、酸又はアルカリ条件下で攪拌混合することを特徴とする架橋ヒアルロン酸ゲルの製造方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されているように、従来のヒアルロン酸を用いたゲル組成物の多くにおいて、ヒアルロン酸が化学修飾されたものが用いられており、ヒアルロン酸が本来備える天然素材としての特徴が失われているという問題がある。
【0006】
また、例えば、特許文献4には、ヒアルロン酸と、ヒアルロン酸濃度5質量%以上にする水、及びヒアルロン酸のカルボキシル基と等モル以上の酸成分とを共存させ、該共存状態を保持することによりヒアルロン酸ゲルを形成することを特徴とするヒアルロン酸ゲルの製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献4で得られるヒアルロン酸ゲルは、水に難溶性であるため、水中にヒアルロン酸が溶け出し難い。このため、特許文献4に開示されたような難水溶性ヒアルロン酸ゲルは、皮膚などに適用された場合に、ヒアルロン酸による皮膚への潤いやハリを与える効果が低くなるため、美容分野などへの使用には適しない。また、特許文献4に開示されたヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸と、酸と、水とを少なくとも数日間低温下で静置して得られるものであり、ヒアルロン酸ゲルの製造に長時間を要するという問題もある。
【0007】
また、例えば、特許文献5には、ヒアルロン酸溶液をpH2.0〜3.8下で、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンなどの水溶性有機溶媒に接触させることにより、ヒアルロン酸ゲルが得られることを開示している。しかしながら、特許文献5の方法では、ヒアルロン酸ゲル中にこれらの水溶性有機溶剤が多量に含まれるため、美容分野、医療分野などには使用し難いという問題がある。また、美容分野、医療分野などにおいては、ゲル組成物をシート状とすることにより、皮膚に適用しやすくなるという利点がある。ところが、特許文献5に開示されたヒアルロン酸ゲルでは、例えばキャスト法などの簡便な方法でシート状にすることが困難であるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平11−509256号公報
【特許文献2】特開平8−143604号公報
【特許文献3】国際公開第2006−051950号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/57093号パンフレット
【特許文献5】特開平5−58881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ヒアルロン酸が化学修飾されておらず、かつ、多量の有機溶媒を含まない水溶性ヒアルロン酸ゲルを提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法、当該水溶性ヒアルロン酸ゲルを含む化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、及び0〜10質量%の水溶性有機溶媒を含む水溶性ヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸が化学修飾されておらず、かつ、多量の有機溶媒を含まない場合にも、ゲルとなることを見出した。従来知られているヒアルロン酸ゲルは、化学修飾されたヒアルロン酸を使用するもの、水に難溶性のもの、多量の有機溶媒を必要とするものなどであったため、この知見は驚くべきものであった。さらに、このような水溶性ヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合する工程を備える方法により、簡便に製造することができることも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、及び0〜10質量%の水溶性有機溶媒を含む、水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項2. 前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して水が200質量部となるようにして、前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれる成分のうち前記多価アルコールと水以外の成分を水に溶かして得られるヒアルロン酸水溶液のpHが1.9〜5.2の範囲にある、項1に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項3. 前記ヒアルロン酸の含有量が0.04〜50質量%である、項1または2に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項4. 前記ヒアルロン酸1質量部に対して、前記多価アルコールを1質量部以上、2000質量部以下含む、項1〜3のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項5. 前記ヒアルロン酸1質量部に対して、700質量部以下の水を含む、項1〜4のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項6. 前記多価アルコールが、グリセリンと、グリセリン以外の多価アルコールとを、30:10〜4:36の質量比で含んでいる、項1〜5のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項7. 前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して水が200質量部となるようにして、前記水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれる成分のうち前記多価アルコールと水以外の成分を水に溶かして得られるヒアルロン酸水溶液のpHが4.2〜5.2の範囲にある、項6に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項8. シート状である、項1〜7のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲル。
項9. 項1〜8に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルが支持体上に形成されてなる、水溶性ヒアルロン酸ゲルシート。
項10. 項1〜8のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルを含む化粧料。
項11. 項1〜8のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルを含む外用医薬組成物。
項12. 項1〜8のいずれかに記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルを含む医療用具用組成物。
項13. ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合してゲル形成用水溶液を調製する工程を備える、水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
項14. 前記ゲル形成用水溶液に含まれる水を蒸発させる工程をさらに備える、項13に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
項15. 前記ゲル形成用水溶液を容器に入れて水を蒸発させる、項14に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
項16. 前記ゲル形成用水溶液に含まれる水を蒸発させた後、水を添加する工程をさらに備える、項14または15に記載の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
項17. ヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合してヒアルロン酸水溶液を調製する工程と、
前記ヒアルロン酸水溶液に対して酸を添加する工程と、
を備える、水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
項18. ヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合してヒアルロン酸水溶液を調製する工程と、
前記ヒアルロン酸水溶液を乾燥させる工程と、
前記乾燥させたヒアルロン酸水溶液に対して酸を添加する工程と、
を備える、水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒアルロン酸が化学修飾されておらず、かつ、多量の有機溶媒を含まない水溶性ヒアルロン酸ゲルを提供することができる。さらに、本発明によれば、当該水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法、当該水溶性ヒアルロン酸ゲルを含む化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、及び0〜10質量%の水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする。以下、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲル、当該水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法、当該水溶性ヒアルロン酸ゲルを含む化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物について詳述する。
【0014】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、及び0〜10質量%の水溶性有機溶媒を含む。後述の通り、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、例えば、ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を含むゲル形成用水溶液を調製し、必要に応じて当該ゲル形成用水溶液から少なくとも一部の水を蒸発させることにより製造することができる。
【0015】
本発明において、「ヒアルロン酸」は、ヒアルロン酸及びその塩を含む概念で使用される。従って、以下、「ヒアルロン酸及びその塩」を、単に「ヒアルロン酸」と表記することがある。ヒアルロン酸の塩としては、特に制限されないが、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウムなどが挙げられる。本発明において、ヒアルロン酸及びその塩は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
ヒアルロン酸の分子量としては、ゲルを形成することができれば特に制限されないが、例えば水溶性ヒアルロン酸ゲルに適度な弾性、高い機械的強度、及び形状維持性を備えさせる観点からは、好ましくは5.0×104〜5.0×106ダルトン程度、より好ましくは1.0×105〜2.3×106ダルトン程度が挙げられる。ヒアルロン酸としては、単一分子量のものを用いてもよいし、複数種類の分子量のものを混合して用いてもよい。
【0017】
ヒアルロン酸の由来は特に制限されず、例えば、鶏の鶏冠、臍帯等から単離抽出されたものや、ストレプトコッカス属等の微生物を用いた発酵法などにより調製されたものなどが好適に使用できる。本発明において、ヒアルロン酸としては、市販品を使用することができる。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸として化学修飾したものを用いる必要がないため、生体適合性に優れ、天然のヒアルロン酸が有する特徴を発揮することができる。すなわち、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルにおいて、ヒアルロン酸としては、実質的に化学修飾されていないヒアルロン酸のみを用いてよい。なお、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、本発明の効果を阻害しないことを限度として、化学修飾されたヒアルロン酸をさらに含んでいてもよい。
【0018】
化学修飾されたヒアルロン酸の具体例としては、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12-13)グリセリル、ヒアルロン酸プロピレングリコール、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられる。化学修飾されたヒアルロン酸は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルにおいて、ヒアルロン酸の含有量としては、ゲルを形成することができれば特に制限されないが、例えば水溶性ヒアルロン酸ゲルに適度な弾性、高い機械的強度、及び形状維持性を備えさせる観点からは、例えば0.04〜50質量%程度、好ましくは0.06〜20質量%程度、より好ましくは0.2〜20質量%程度が挙げられる。水溶性ヒアルロン酸ゲルにおけるヒアルロン酸の含有量が0.04質量%未満となる場合、後述のゲル形成用水溶液からゲルが形成されない場合がある。また、水溶性ヒアルロン酸ゲルにおけるヒアルロン酸の含有量が50質量%を超える場合、水溶性ヒアルロン酸ゲルが固くなり過ぎて、後述の化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物などとして利用し難くなる場合がある。
【0020】
酸としては、水と混合して酸性を示すものであれば、特に制限されず、無機酸、有機酸のいずれを使用することもできる。無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、炭酸などが挙げられ、好ましくはリン酸、塩酸、硫酸が挙げられる。また、有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、リポ酸等のモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等のオキシカルボン酸;グルコノ-δ-ラクトン、ラクトピオン酸等のポリヒドロキシ酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;ナールスゲン(登録商標、カルボキシメチルフェニルアミノカルボキシプロピルホスホン酸メチル)等のアミノ酸誘導体;アスコルビン酸、アスコルビン酸エチル、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸またはその誘導体が挙げられ、好ましくはリン酸、アスコルビン酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸、アスコルビン酸エチル、アスコルビン酸グルコシド、グルコノ-δ-ラクトン、ラクトピオン酸などが挙げられる。酸は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
酸の含有量は、特に制限されないが、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して水が200質量部となるようにして、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれる成分のうち多価アルコールと水以外の成分を水に溶かして得られるヒアルロン酸水溶液のpHが、1.9〜5.2の範囲となるように設定することが好ましい。このようなpHに設定することにより、適度な弾性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることができる。また、このようなpHに設定することにより、高い機械的強度及び形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られる。同様の観点から、当該pHは、2.0〜4.9の範囲となるように設定することがより好ましい。なお、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して水が200質量部となるようにして、多価アルコールも含む本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの水溶液のpHを測定することも可能ではあるが、多価アルコールの含有量が多くなると、pHが正確に測定しにくくなるため、上記のように測定することが望ましい。
【0022】
多価アルコールとしては、特に制限されないが、ヒアルロン酸を化学修飾せず、かつ、多量の有機溶媒を用いずに、ヒアルロン酸水溶液を好適にゲル化する観点からは、好ましくはグリセリン、ジグリセリン等のグリセリン類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;1,3−プロパンジオール、ブタンジオール(1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなど)、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール類などが挙げられ、より好ましくはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。多価アルコールは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルに適度な弾性、高い機械的強度、及び形状維持性を付与しつつ、例えば上記のヒアルロン酸水溶液のpHが4.2以上、さらに好ましくは4.6以上となる弱酸性の水溶性ヒアルロン酸ゲルとする観点からは、複数種類の多価アルコールを併用することが好ましく、グリセリンと他の多価アルコール(グリセリン以外の多価アルコール)とを併用することがより好ましい。グリセリンと併用する好ましい他の多価アルコールの具体例としては、ブタンジオール、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール200)、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジグリセリン、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどが挙げられる。グリセリンと併用する他の多価アルコールは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。適度な弾性、高い機械的強度、及び形状維持性を付与しつつ、例えばヒアルロン酸水溶液のpHが4.2以上、さらに好ましくは4.6以上となる弱酸性の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、肌への刺激が弱く、有効成分の安定性が高く、取り扱いが容易であり、水溶性ヒアルロン酸ゲルが肌に直接触れる化粧料、外用医薬組成物、医療用具用組成物などとして特に好適である。なお、本発明において、適度な弾性とは、例えば、水溶性ヒアルロン酸ゲルを指で押した際に、適度に反発する特性をいう。また、高い機械的強度とは、例えば、厚み100μm程度のシート状の水溶性ヒアルロン酸ゲルを指でつまんで持ち上げても、シートが破断しない程度の強度をいう。また、形態維持性とは、水溶性ヒアルロン酸ゲルを静置した場合に、高粘度溶液などとは異なり、静置した際の形状が維持される特性をいう。
【0024】
グリセリンと他の多価アルコールとを併用する場合、その割合としては特に制限されないが、適度な弾性、高い機械的強度、及び形状維持性を有しつつ、弱酸性(例えばヒアルロン酸水溶液のpHが4.2以上)の水溶性ヒアルロン酸ゲルとする観点からは、例えば、グリセリンと他の多価アルコールとの質量比(グリセリン:他の多価アルコール)としては、30:10〜4:36の範囲が好ましく、25:15〜4:36の範囲がより好ましく、20:20〜4:36の範囲がさらに好ましい。
【0025】
なお、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルにおいては、通常、上記のヒアルロン酸水溶液のpHを高い値にしようとすると、水溶性ヒアルロン酸ゲルに適度な弾性を付与しにくくなる傾向を有するが、上記のように、複数種類の多価アルコールを併用し、かつ、高分子量(例えば、分子量が200万以上)のヒアルロン酸を用いることにより、例えば、ヒアルロン酸水溶液のpHを5.2程度にまで上昇させた場合にも、適度な弾性を有し、かつ、形状維持性にも優れた水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることができる。
【0026】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルにおける多価アルコールの含有量としては、ゲルを形成することができれば特に制限されないが、ヒアルロン酸1質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1〜2000質量部程度、さらに好ましくは4〜1500質量部程度、特に好ましくは5〜500質量部程度が挙げられる。多価アルコールの含有量が少なすぎると、水溶性ヒアルロン酸ゲルが固くなりすぎて、適度な弾性を付与することが困難になる場合がある。また、多価アルコールの含有量が多すぎると、水溶性ヒアルロン酸ゲルが柔らかくなりすぎて、十分な機械的強度を付与することが困難になる場合がある。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルにおいては、例えば、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールが500質量部以下である場合には、高い形状維持性と適度な弾性を有し、さらに、ゲルを手で持ち上げても破断せず、十分な機械的強度を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることができる。また、例えば、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールが500質量部超、1500質量部以下である場合には、高い形状維持性と適度な弾性を有するが、多価アルコールがゲルからブリードし、機械的強度がやや低下した水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることができる。さらに、例えば、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールが1500質量部超、2000質量部以下である場合には、高い形状維持性と適度な弾性を有するが、多価アルコールがゲルからブリードし、ゲルを手で持ち上げると破断する程度に機械的強度が低下した水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることができる。多価アルコールの含有量は、水溶性ヒアルロン酸ゲルの用途に求められる機械的強度などに応じて選択することができる。
【0027】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、0〜10質量%の水溶性有機溶媒(前記の多価アルコールを除く)を含む。すなわち、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下の水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。水溶性有機溶媒としては、特に制限されず、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトンなどが挙げられる。水溶性有機溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、後述の通り、美容分野、医療分野において、好適に使用される。このような観点からは、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、水溶性有機溶媒を実質的に含まないことが好ましい。また、水溶性有機溶媒を用いると、後述のゲル形成用水溶液の粘度が高くなりやすいため、ゲル形成用水溶液を基板上などに薄く拡げることが困難になる場合がある。このため、水溶性有機溶媒を用いると、例えばキャスト法などの簡便な方法によって、水溶性ヒアルロン酸ゲルをシート状に形成することが困難となる場合がある。このような観点からも、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、水溶性有機溶媒を実質的に含まないことが好ましい。
【0028】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、水を含んでいてもよい。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルにおける水の含有量は、ゲルを形成することができれば特に制限されないが、ヒアルロン酸1質量部に対して、例えば700質量部以下、好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは400質量部以下、またさらに好ましくは200質量部以下、特に好ましくは100質量部以下が挙げられる。なお、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルには、多価アルコールが含まれるため、水溶性ヒアルロン酸ゲル中の水分を完全に取り除くことは難しい。このため、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルには、ヒアルロン酸1質量部に対して、通常0.02質量部以上の水が含まれる。
【0029】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性、機械的強度、形状維持性などは、水溶性ヒアルロン酸ゲル中の各成分の含有量、ヒアルロン酸の分子量、または、上記のヒアルロン酸水溶液のpHの範囲を設定することにより、調整することができる。例えば、水溶性ヒアルロン酸ゲル中のヒアルロン酸の含有量を多くする(割合を大きくする)と、水溶性ヒアルロン酸ゲルが固くなり、水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性、機械的強度、形状維持性が高くなる傾向がある。また、例えば、水溶性ヒアルロン酸ゲル中のヒアルロン酸の分子量を大きくすると、水溶性ヒアルロン酸ゲルが固くなり、水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性、機械的強度、形状維持性が高くなる傾向がある。また、上述の通り、複数種類の多価アルコールを併用することにより、例えばヒアルロン酸水溶液のpHが4.2以上であっても、水溶性ヒアルロン酸ゲルの機械的強度を高めることができる。一方、例えば、水溶性ヒアルロン酸ゲル中の多価アルコールや水の含有量を多くする(割合を大きくする)と、水溶性ヒアルロン酸ゲルが柔らかくなり、水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性、機械的強度、形状維持性が低くなる傾向がある。さらに、例えば、上記のヒアルロン酸水溶液のpHが、1.9〜5.2の範囲においては、pHが低くなると水溶性ヒアルロン酸ゲルが固くなり、水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性、機械的強度、形状維持性が高くなる傾向がある。
【0030】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、水溶性を有する。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの水溶性とは、厚さ100μm、縦4cm、横4cmのシート状とした水溶性ヒアルロン酸ゲルをpH7.4のリン酸緩衝液100mL中に入れ、37℃で撹拌子を用いて120rpmで撹拌した場合に、4時間以内に完全に溶解することをいう。
【0031】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの形状は、特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの形状としては、例えば、シート状、粒状、塊状などが挙げられる。例えば、水溶性ヒアルロン酸ゲルがシート状(水溶性ヒアルロン酸ゲルシート)である場合、後述の通り、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルを皮膚に貼り付けて、化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物などとして好適に使用することができる。水溶性ヒアルロン酸ゲルシートの厚みとしては、特に制限されず、例えば0.01〜10mm程度、好ましくは0.05〜5mm程度が挙げられる。また、例えば水溶性ヒアルロン酸ゲルが塊状である場合には、顔や身体をマッサージする化粧料組成物などとして好適に使用することができる。
【0032】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、保湿作用などを有するヒアルロン酸を含むため、美容分野、医療分野などにおいて、皮膚などに適用することができる。具体的には、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物などとして好適に使用することができる。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルを化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物として使用する場合、化粧料、医薬部外品、医薬品、医療用具に配合される公知の成分をさらに配合することができる。このような成分としては、例えば、美白成分、抗老化成分、オイル成分、各種ビタミン及びその誘導体、各種動植物エキス、抗炎症剤、抗酸化剤、色素、香料(アロマ成分)、ハチミツなどが挙げられる。また、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルに脂溶性成分を添加する場合、脂溶性成分をリポソーム、エマルジョン、ナノエマルジョンなどの状態にして添加することもできる。これらの成分は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
美白成分の具体例としては、ビタミンCまたはその誘導体、アスタキサンチンなどが挙げられる。抗老化成分の具体例としては、ナールスゲン(登録商標、カルボキシメチルフェニルアミノカルボキシプロピルホスホン酸メチル)、ピロロキノリンキノン、LR2412(登録商標、テトラハイドロジャスモン酸ナトリウム)、グリーンピール(登録商標、植物性精油)などが挙げられる。オイル成分の具体例としては、スクワラン、ホホバオイル、オリーブオイルなどが挙げられる。
【0034】
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルには、コラーゲン、ポリフィリン、アセチルグルコサミン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、リピジュア(登録商標、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのホモポリマーまたはコポリマー)、分子量が1万以下の低分子量のヒアルロン酸またはその塩などの水溶性高分子を配合してもよい。水溶性高分子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルには、適度な弾性、適度な機械的強度、及び適度な形状維持性を付与することができるため、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルをそのままパック剤として使用することもできる。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルをパック剤として使用する場合、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルはシート状であることが好ましい。パック剤として使用する場合、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを直接皮膚に貼り付け、一定期間保持することにより、ヒアルロン酸による保湿効果などを皮膚に付与することができる。また、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルが上記のような化粧料、医薬部外品、医薬品、医療用具に配合される公知の成分を含む場合、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを直接皮膚に貼り付けることにより、これらの成分を経皮吸収させることができる。
【0036】
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルにおいて、酸として例えばサリチル酸を用いる場合、サリチル酸には皮膚の角質を軟化させる作用があるため、例えば本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルをシート状にして皮膚に貼り付けることにより、皮膚の角質の厚くなりやすい部分(例えば、関節、かかと、足の裏の魚の目やたこなど)のケアを行う化粧料、医薬部外品、医薬品などとして好適に使用することができる。サリチル酸を含む水溶性ヒアルロン酸ゲルをこのような用途に使用する場合、使用時間が比較的長時間になることから、水溶性ヒアルロン酸ゲルを後述のような支持体や粘着テープなどと共に用いることが好ましい。なお、サリチル酸は、水に溶けにくいため、高濃度にサリチル酸を配合した場合、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲル中において未溶解の結晶が存在するが、結晶が存在する場合にも、これらの用途に好適に使用することができる。
【0037】
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、水溶性を有するため、水分中にヒアルロン酸が溶け出しやすい。このため、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、皮膚などに適用された場合に、ヒアルロン酸による皮膚への潤いやハリを与える効果が高く、美容分野などへの使用に適している。例えば、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを皮膚に貼り付けた後、該シートに水をかけて徐々に溶解させながら皮膚をマッサージすることにより、水中に溶け出したヒアルロン酸による保湿効果をより高めることができる。
【0038】
さらに、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、生体適合性に優れ、吸水性/保水性も高いことから、創傷部位、褥瘡部位を保護する医療用具などへの使用に適している。例えば、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、生体適合性に優れ、吸水性/保水性も高いことから、救急絆創膏のパットや褥瘡部位の被覆保護材などとして好適に使用することができる。また、このような用途に使用する場合、水溶性ヒアルロン酸ゲル中に上皮成長因子等の治癒促進成分や抗菌成分を配合することもできる。
【0039】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、支持体上に載せて用いてもよい。水溶性ヒアルロン酸ゲルを支持体上に形成することにより、好適に水溶性ヒアルロン酸ゲルシートとすることができる。支持体としては、特に制限されず、例えば、不織布、織布、織物、紙、高分子フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル、ポリウレタン等のフィルム)などが挙げられ、より好ましくは、水溶性ヒアルロン酸ゲルと支持体との接着強度の観点から、不織布/高分子フィルムからなるラミネートフィルムや不織布などが挙げられる。また、支持体上の水溶性ヒアルロン酸ゲルを、皮膚に保持させる目的で、粘着テープ、ハイドロゲルテープ、サポーター、包帯、マスク、アイマスクなどで固定してもよい。
【0040】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルは、そのまま製品として単独で使用することができる。また、当該ゲルと粘着テープや支持体などとを一体化したものを製品とすることもできるし、水溶性ヒアルロン酸ゲルを製品とし、粘着テープ、ハイドロゲルテープ、サポーター、包帯、マスク、アイマスクなどで当該ゲルを固定して使用するものとしてもよい。
【0041】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法は、特に制限されないが、例えば、上記のヒアルロン酸、多価アルコール、酸、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合してゲル形成用水溶液を調製する工程を備える方法が挙げられる。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法において、各成分の混合順序は、特に制限されない。また、各成分の混合方法も特に制限されず、例えば攪拌機などを用いて攪拌すればよい。
【0042】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法においては、ヒアルロン酸、酸、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合して得られるヒアルロン酸水溶液が、次のようなpHを有するように設定することが好ましい。すなわち、ゲル形成用水溶液を調製する際に、水溶性ヒアルロン酸ゲルに含まれる成分のうち多価アルコールと水以外の成分を水に溶かして得られる当該ヒアルロン酸水溶液を調製し、当該ヒアルロン酸水溶液において、ヒアルロン酸1質量部に対する水の割合が200質量である場合のpHが1.9〜5.2程度の範囲となるように酸の量を設定することが好ましい。このようなpHに設定することにより、ヒアルロン酸を化学修飾したり、ゲル化するために多量の有機溶媒を使用せずに水溶性ヒアルロン酸ゲルをより好適に製造することができる。当該pHとしては、好ましくは2.0〜4.9程度が挙げられる。
【0043】
ゲル形成用水溶液中の水の量は、特に制限されず、ヒアルロン酸1質量部に対して、例えば5〜1000質量部程度、好ましくは20〜400質量部程度が挙げられる。ゲル形成用水溶液中の水の量が少なすぎると、ゲル形成用水溶液の粘度が高くなりすぎて、ヒアルロン酸、多価アルコール、酸、及び0〜10質量%の水溶性有機溶媒を水中に均一に混合することが困難になる場合がある。また、水の量が多すぎると、ゲル形成用水溶液をゲル化するために、多量の水を取り除く必要がある。
【0044】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法において、上記のゲル形成用水溶液をゲル化することや、水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性を高めることなどを目的として、ゲル形成用水溶液に含まれる水のうち少なくとも一部を蒸発させる工程をさらに備えていてもよい。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性は、用途に応じて適宜設定される。このため、例えば本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルを非常に柔らかくして用いる場合には、ゲル形成用水溶液の各成分の割合、上記のヒアルロン酸水溶液のpHなどを適宜調整することにより、ゲル形成用水溶液から水を蒸発させずに、そのまま本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることもできる。また、ゲル形成用水溶液から少なくとも一部の水を蒸発させることにより、水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性、機械的強度、形状維持性を高めることもできる。水溶性ヒアルロン酸ゲルの弾性、機械的強度、形状維持性を高める観点、及びゲルの品質管理の観点からは、ゲル形成用水溶液から大部分の水を蒸発させることが好ましい。
【0045】
ゲル形成用水溶液から水を蒸発させる方法としては、特に制限されず、例えば、ゲル形成用水溶液を恒温槽などの乾燥機で加熱乾燥する方法、ゲル形成用水溶液に温風を当てて加熱乾燥する方法、ゲル形成用水溶液をホットプレート上で加熱乾燥する方法などが挙げられる。例えば、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルをシート状とする場合、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基板上に均一の厚みとなるように拡げたゲル形成用水溶液を加熱して乾燥させる(キャスト法)ことにより、水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを容易に製造することができる。
【0046】
また、ゲルが所定の厚みとなるようにトレーやバット等の容器にゲル形成用水溶液を入れ、恒温槽のような乾燥機中で乾燥させる(バッチ法)ことによっても、水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを容易に製造することができる。すなわち、ゲル形成用水溶液を容器に入れて水を蒸発させることにより、例えば、容器内に形成された水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを、容器ごとそのまま最終製品とすることもでき、水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを切断するなどの加工工程を省略することができる。
【0047】
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法において、水溶性ヒアルロン酸ゲルを調製した後に、水を添加してもよい。例えば、ゲル形成用水溶液に含まれる水を蒸発させた後、水を添加する工程を行うことができる。特に、ゲル形成用水溶液に含まれる水の大部分を一旦蒸発させて水溶性ヒアルロン酸ゲルを形成した後、水溶性ヒアルロン酸ゲルに水を添加する工程を行うことにより、水分量が好適に制御された水溶性ヒアルロン酸ゲルを製造することができる。水を添加する工程において、上記各種成分を容易に添加することもできる。熱に不安定な成分や揮発性成分をゲルに含ませる場合には、乾燥工程の後に水と共に添加することにより、ゲル中の成分量を好適に制御することができる。
【0048】
さらに、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法において、例えば、化粧料、医薬部外品、医薬品、医療用具に配合される上記の公知の成分をさらに配合する場合、水溶性ヒアルロン酸ゲルを調製した後に、これらの成分を添加してもよい。
【0049】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法において、ゲル形成用水溶液中のヒアルロン酸、多価アルコール、酸、及び水溶性有機溶媒の含有量は、水溶性ヒアルロン酸ゲルとしたときに上記の含有量となるように設定すればよい。
【0050】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの他の製造方法としては、例えば、上記のヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合したヒアルロン酸水溶液を調製する工程と、当該ヒアルロン酸水溶液に対して酸を添加する工程とを備える方法も挙げられる。酸の添加方法としては、特に制限されないが、例えば、酸を含む溶液をヒアルロン酸水溶液の上から噴霧、塗布等する方法を採用することができる。これらの添加方法によれば、シート状に拡げられた前記ヒアルロン酸水溶液に対して均一に酸を添加することができため、シート状のヒアルロン酸ゲルを得る場合に好適である。この製造方法を採用する場合においても、ヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水の量は、上記と同様とすることができる。また、水を蒸発させる方法についても、上記と同様に行うことができる。
【0051】
さらに、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの他の製造方法としては、ヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合してヒアルロン酸水溶液を調製する工程と、前記ヒアルロン酸水溶液を乾燥させる工程と、乾燥させたヒアルロン酸水溶液に酸を添加する工程とを備える方法が挙げられる。熱に不安定な酸や揮散性の酸を用いる場合などにおいては、乾燥工程の後に酸を添加することにより、ゲル中の酸量を好適に制御することができる。また、上記各種成分をゲルに含ませる場合にも、乾燥工程の後、酸を添加する工程において熱に不安定な成分や揮発成分を添加することにより、ゲル中の成分量を好適に制御することができる。さらに、酸を添加する工程において、水を添加してもよい。ヒアルロン酸水溶液に含まれる水の大部分を一旦蒸発させた後、酸と共に水を添加する工程を行うことにより、酸量と水分量が好適に制御された水溶性ヒアルロン酸ゲルを製造することができる。
【0052】
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルを塊状として製造する場合には、例えば、上記のヒアルロン酸、多価アルコール、0〜10質量%の水溶性有機溶媒、及び水を混合したヒアルロン酸水溶液を、酸を含む溶液中に浸漬することによって、塊状の水溶性ヒアルロン酸ゲルを製造してもよい。本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルを塊状として容易に製造する観点からは、酸を含む溶液中には、さらに多価アルコールを配合することが好ましい。
【0053】
本発明の水溶性ヒアルロン酸ゲルの製造方法において、ヒアルロン酸水溶液中のヒアルロン酸、多価アルコール、及び水溶性有機溶媒の含有量と添加する酸の含有量は、水溶性ヒアルロン酸ゲルとしたときに上記の含有量となるように設定すればよい。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた試薬は、以下の通りである。また、各表中の組成の単位は、質量部である。
<試薬>
ヒアルロン酸(160万):ヒアルロン酸ナトリウム、キューピー株式会社製の商品名「ヒアルロンサンHA−LQH」(製品表記:分子量120〜220万;平均分子量160万)
ヒアルロン酸(30万):ヒアルロン酸、キューピー株式会社製の商品名「ヒアルロンサンHA−LF−P」(製品表記:分子量20〜50万;平均分子量30万)
ヒアルロン酸(230万):ヒアルロン酸ナトリウム、キューピー株式会社製の商品名「HYALURONSAN HA−LQSH」(製品表示:分子量160万〜290万、平均分子量230万)
ヒアルロン酸(10万):ヒアルロン酸ナトリウム、キッコーマンバイオケミファ株式会社製の商品名「ヒアルロン酸 FCH−SU」(製品表示:平均分子量5万〜11万)
グリセリン:和光純薬工業株式会社製のグリセリン(特級)
プロピレングリコール:和光純薬工業株式会社製のプロピレングリコール(特級)
ブタンジオール:和光純薬工業株式会社製の1,3−ブタンジオール(特級)
PEG200:和光純薬工業株式会社製のポリエチレングリコール200(一級)
プロパンジオール:和光純薬株式会社製の1,3−プロパンジオール(特級)
ジグリセリン:和光純薬株式会社製のジグリセリン(ガスクロマトグラフ用)
ペンタンジオール:和光純薬株式会社製の1,2−ペンタンジオール
ヘキサンジオール:和光純薬株式会社製の1,2−ヘキサンジオール
10%リン酸:和光純薬工業株式会社製のリン酸(特級)
2%硫酸:和光純薬工業株式会社製の硫酸(特級)
2%塩酸:和光純薬工業株式会社製の塩酸(特級)
ビタミンC:和光純薬工業株式会社製のL(+)−アスコルビン酸(特級)
酢酸:ナカライテスク株式会社製の酢酸(カラムクロマトグラフ用)
クエン酸:和光純薬工業株式会社製のクエン酸一水和物(特級)
サリチル酸:和光純薬工業株式会社製のサリチル酸(特級)
アスコルビン酸エチル:日本精化株式会社製の商品名「VCエチル」
グルコノラクトン:和光純薬株式会社製のグルコノ-δ-ラクトン(薬添規)
ラクトピオン酸:和光純薬株式会社製のラクトピオン酸(一級)
アスパラギン酸:和光純薬株式会社製のDL−アスパラギン酸(特級)
コラーゲン:水溶性コラーゲン液、新田ゼラチン株式会社製の商品名「コラーゲンP(PF)」
ヒアルロン酸(1万):加水分解ヒアルロン酸、キューピー株式会社製の商品名「ヒアロオリゴ」(製品表示:分子量1万以下)
ヒアロリペア:加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12−13)グリセリル、キューピー株式会社製の商品名「ヒアロリペア」
ハチミツ:アピ株式会社製の精製蜂蜜
【0055】
[実施例1〜15及び比較例1]
表1に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム)、酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合し、ヒアルロン酸水溶液を得た。得られたヒアルロン酸水溶液のpHを、株式会社堀場製作所製のTwinpH(B−212)を用いて測定した。結果を表1に示す。得られたヒアルロン酸水溶液に多価アルコール(グリセリン)を表1の配合比(質量部)となるように加え、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液を50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一の厚みとなるよう塗布し、ホットプレートで90℃、3時間乾燥し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚さ約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。なお、比較例1においては、酸を混合しなかったこと以外は、実施例1〜15と同様にしてシートを得た。ただし、比較例1では、ゲル形成用水溶液を乾燥させても、ゲルは得られず、高粘度溶液が得られた。なお、参考のため、実施例4のヒアルロン酸ゲルシートを製造する際のゲル形成用水溶液と乾燥後のヒアルロン酸ゲルシートの重量をそれぞれ測定したところ、以下の通りであった。
ゲル形成用水溶液の重量:4.10g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.71g
なお、ゲル形成用水溶液の固形分とは、ゲル形成用水溶液の調製に用いた蒸留水以外の成分の合計量である。
【0056】
<ヒアルロン酸ゲルシートの性状評価>
実施例1〜15で得られたヒアルロン酸ゲルシート、及び比較例1で得られたシート状の高粘度液の性状を以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
0:無色透明で、少し固く、高い形状維持性を有するゲル
1:無色透明で、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有するゲル
2:無色透明で、柔らかく、やや高い形状維持性を有するゲル
3:無色透明で、かなり柔らかく、低い形状維持性を有するゲル
4:無色透明の高粘度液
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示される結果から、ヒアルロン酸、グリセリン、酸、及び蒸留水を用いた実施例1〜15においては、ヒアルロン酸ゲルシートが得られることが明らかとなった。また、ヒアルロン酸ゲルシートの調製過程において、ヒアルロン酸、酸、及び蒸留水を混合して得られるヒアルロン酸水溶液のpHを2.0〜3.8の範囲に設定した場合には、弾性、形状維持性の観点から、化粧料、外用医薬組成物、または医療用具用組成物として皮膚などに特に好適に適用できることが明らかとなった。一方、酸を用いなかった比較例1の場合には、ゲルは得られず、高粘度液が得られた。
【0059】
<ヒアルロン酸ゲルの溶解性試験>
実施例4、6、10、12で得られたヒアルロン酸ゲルシート(4cm×4cm)をpH7.4のリン酸緩衝液100mL中に入れ、37℃で撹拌子を用いて120rpmで4時間撹拌した。その結果、いずれのヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。
【0060】
<ゲル形成用水溶液のpHとヒアルロン酸ゲルシートを蒸留水に溶解して得られた水溶液のpHとの比較>
実施例3,5、7で調製したゲル形成用水溶液のpHを、それぞれ株式会社堀場製作所製のTwinpH(B−212)を用いて測定した。結果を表2に示す。次に、実施例3、5、7で得られたヒアルロン酸ゲルシートに対して、ゲル形成用水溶液と同じ組成になるようにして、それぞれ蒸留水を加えて、水溶液を調製した。得られた水溶液のpHを、それぞれ、株式会社堀場製作所製のTwinpH(B−212)を用いて測定した。結果を表2に示す。なお、加えた蒸留水の量は、ヒアルロン酸ゲルシートに含まれるヒアルロン酸1質量部に対して、実施例3では199質量部、実施例5では198質量部、実施例7では190質量部であった。
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示されるように、ゲル形成用水溶液のpHと、当該ゲル形成用水溶液から調製された水溶性ヒアルロン酸ゲルを蒸留水に溶解させて得られる水溶液のpHとは、ほぼ同程度となった。
【0063】
[実施例16〜20及び比較例2]
ヒアルロン酸ナトリウム(分子量160万)の代わりに、ヒアルロン酸(分子量30万)を用い、表3に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合したこと以外は、実施例1〜15と同様にしてヒアルロン酸ゲルシートを得た。なお、比較例2においては、酸を混合しなかったこと以外は、実施例16〜20と同様にしてシートを得た。
【0064】
次に、実施例1〜15と同様にして、実施例16〜20で得られたヒアルロン酸ゲルシート、及び比較例2で得られたシート状の高粘度液の性状を評価した。また、別途、グリセリンを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、10%リン酸、及びビタミンCの量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示される結果から、ヒアルロン酸ナトリウムの代わりにヒアルロン酸を用いた実施例16〜20においても、ヒアルロン酸、グリセリン、酸、及び蒸留水を混合して得られるゲル形成用水溶液から調製することにより、実施例1〜15と同様に、ヒアルロン酸ゲルシートが得られることが明らかとなった。一方、酸を混合しなかった比較例2では、比較例1と同様、ゲルは得られず、高粘度溶液が得られた。
【0067】
また、実施例17、20のヒアルロン酸ゲルについて、実施例4、6、10、12と同様にして、リン酸緩衝液への溶解性試験を行った。その結果、いずれのヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。
【0068】
[実施例21〜25]
グリセリンの配合比(質量部)を表4のようにしたこと以外は、実施例1〜15と同様にして、実施例21〜25のヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例21〜25で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
表4に示される結果から、ヒアルロン酸1質量部に対して、グリセリンが1〜100質量部の範囲で配合されている場合にも、ヒアルロン酸ゲルシートが得られることが明らかとなった。
【0071】
また、実施例23のヒアルロン酸ゲルについて、実施例4、6、10、12と同様にして、リン酸緩衝液への溶解性試験を行った。その結果、このヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。なお、参考のため、実施例23,25のヒアルロン酸ゲルシートを製造する際のゲル形成用水溶液と乾燥後のヒアルロン酸ゲルシートの重量をそれぞれ測定したところ、以下の通りであった。
(実施例23)
ゲル形成用水溶液の重量:13.12g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.70g
(実施例25)
ゲル形成用水溶液の重量:2.09g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.75g
なお、ゲル形成用水溶液の固形分とは、ゲル形成用水溶液の調製に用いた蒸留水以外の成分の合計量である。
【0072】
[実施例26〜37]
グリセリンの代わりに表5に記載の多価アルコールを用い、配合比(質量部)が表5となるようにしたこと以外は、実施例1〜15と同様にして、実施例26〜37の水溶性ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例26〜37で得られた水溶性ヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5に示される結果から、グリセリンの代わりに、他の多価アルコールとして、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコールを用いた場合にも、水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが明らかとなった。
【0075】
また、実施例29、33、37のヒアルロン酸ゲルについて、実施例4、6、10、12と同様にして、リン酸緩衝液への溶解性試験を行った。その結果、いずれのヒアルロン酸ゲルシートも完全に溶解しており、ヒアルロン酸ゲルシートが水溶性であることが確認された。
【0076】
<ヒアルロン酸ゲルシートの貼付試験による保湿効果評価>
ボランティア6名(A〜F)の右前腕部に朝夜2回、それぞれ実施例4及び実施例16のヒアルロン酸ゲルシート(2cm×2cm)を30分間貼り付けた。その後、ゲルの上に精製水約10mLを少しずつ加えて約3分間マッサージしながら溶かしたのち、精製水で十分に洗浄して、自然乾燥させた。この処置を7日間連続で行った後、最終日の翌日の朝(処置開始から8日後の朝)の肌水分量についてモバイルコントローラーMSC100/コルネオメータCM825(株式会社インテグラル製)を用いて皮膚水分量を測定した。また、比較対象として、同一ボランティアの無処置の左前腕部の皮膚水分量を測定した。比較対象の左前腕部の皮膚水分量に対する同一ボランティアのヒアルロン酸ゲルシートを適用した右前腕部の皮膚水分量の増加率(%)及び平均±SDを表6に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
表6に示されるように、実施例4及び実施例16で得られたヒアルロン酸ゲルシートは、無処理の場合に比して、有意な肌水分量の増加効果が認められた。また、ヒアルロン酸ゲルシートは適度な弾性を有し、形状維持性も優れているため、取り扱いも容易であり、皮膚刺激などの問題も生じなかった。
【0079】
[実施例32〜33
表7に記載のとおり、酸をサリチル酸にしたこと以外は、実施例1〜15と同様にして、実施例32〜33のヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例32〜33で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリンを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及びサリチル酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表7に示す。なお、実施例33においては、ゲル形成用水溶液及びヒアルロン酸ゲルシートにサリチル酸の結晶が含まれていた。
【0080】
【表7】
【0081】
[実施例34〜35
表8に記載の配合比(質量部)となるように、プラスチックス製シャーレ(直径9cm)にヒアルロン酸、グリセリン及び蒸留水を入れて厚み約200μmの均一な高粘度のヒアルロン酸水溶液を得た。得られたヒアルロン酸水溶液の表面に表8に記載の配合比(質量部)に相当する10%リン酸を、噴霧器を用いて均一に塗布した。その後、24時間、室温で保管し、厚み約200μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例34〜35で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表8に示す。
【0082】
【表8】
【0083】
[実施例36〜37
表9に記載の配合比(質量部)となるように、プラスチックス製シャーレ(直径14cm)にヒアルロン酸、グリセリン及び蒸留水を入れて厚み約2cmの均一な高粘度のヒアルロン酸水溶液を得た。得られたヒアルロン酸水溶液をスパチュラで約2cm×2cmの範囲ですくい取り、200mlの10%リン酸/グリセリン溶液に10分間浸漬して取り出し、24時間、室温で保管し、約2×2×2cmの塊状のヒアルロン酸ゲルを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例36〜37で得られた塊状ヒアルロン酸ゲルの性状を評価した。その結果、得られた塊状ヒアルロン酸ゲルは、いずれも無色透明で、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有するゲルであった。
【0084】
【表9】
【0085】
[実施例38〜39]
表10に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例38〜39で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表10に示す。
【0086】
【表10】
【0087】
表10に示される結果から、グリセリンとブタンジオールとを併用することにより、ヒアルロン酸水溶液のpHが4.9または5.2と高い場合にも、水溶性ヒアルロン酸ゲルを好適に製造できることが分かる。
【0088】
[実施例40〜43]
表11に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例40〜43で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表11に示す。
【0089】
【表11】
【0090】
表11に示される結果から、平均分子量(製品表示)が230万または10万のヒアルロン酸を用いた場合にも、水溶性ヒアルロン酸ゲルを好適に製造できることが分かる。
【0091】
[実施例44〜49]
表12に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、48時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約4mmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例44〜49で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を以下の基準により評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表12に示す。
【0092】
<ヒアルロン酸ゲルシートの性状評価>
A:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有し、十分な機械的強度を有する。ゲルを手で持ち上げても破断しない。
B:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。ゲルから多価アルコールがブリードしており、Aと比較して機械的強度は劣るものの、ゲルを手で持ち上げても破断しない。
C:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。ゲルから多価アルコールがブリードしており、Bよりも機械的強度が弱く、ゲルを手で持ち上げると破断する。
【0093】
【表12】
【0094】
表12に示される結果から、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールの含有量が500質量部以下である場合には、機械的強度が十分に高い水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。また、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールの含有量が500質量部を超えて、1500質量以下である場合には、機械的強度がやや低下した柔らかい水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。また、ヒアルロン酸1質量部に対して、多価アルコールの含有量が1500質量部を超えて、2000質量以下である場合には、機械的強度が低下し、手で持ち上げると破断する程度に柔らかい水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。
【0095】
[実施例50〜56]
表13に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、各種酸(アスコルビン酸エチル、グルコノラクトン、ラクトピオン酸、アスパラギン酸)、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例50〜56で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び各種酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表13に示す。
【0096】
【表13】
【0097】
表13に示される結果から、酸として、アスコルビン酸エチル、グルコノラクトン、ラクトピオン酸、アスパラギン酸を用いた場合にも、好適に水溶性ヒアルロン酸ゲルが得られることが分かる。
【0098】
[実施例57〜67]
表14に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、PEG200、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジグリセリン、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例57〜67で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン、ブタンジオール、PEG200、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジグリセリン、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表14に示す。
【0099】
なお、参考のため、実施例57、59、60、及び62のヒアルロン酸ゲルシートを製造する際のゲル形成用水溶液と乾燥後のヒアルロン酸ゲルシートの重量をそれぞれ測定したところ、以下の通りであった。
(実施例57)
ゲル形成用水溶液の重量:4.15g(固形分:0.71g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.72g
(実施例59)
ゲル形成用水溶液の重量:4.10g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.71g
(実施例60)
ゲル形成用水溶液の重量:4.13g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.65g
(実施例62)
ゲル形成用水溶液の重量:4.10g(固形分:0.70g)
ヒアルロン酸ゲルシートの重量:0.73g
なお、ゲル形成用水溶液の固形分とは、ゲル形成用水溶液の調製に用いた蒸留水以外の成分の合計量である。
【0100】
【表14】
【0101】
表14に示される結果から、グリセリンと、ブタンジオール、PEG200、プロピレングリコール、プロパンジオール、ジグリセリン、ペンタンジオール、またはヘキサンジオールとを併用することにより、弱酸性の水溶性ヒアルロン酸ゲルを好適に製造できることが分かる。特に、グリセリンと他の多価アルコールとの質量比が10:30〜20:20の範囲にある場合には、ヒアルロン酸水溶液のpHが4.6とかなり弱い酸性であっても、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。
【0102】
[実施例68〜75]
表15に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、各種美容成分(コラーゲン、ヒアルロン酸(分子量1万以下)、ヒアロリペア、ハチミツ)、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例68〜75で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン及びブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、美容成分、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表15に示す。
【0103】
【表15】
【0104】
表15に示されるように、水溶性ヒアルロン酸ゲルに各種の美容成分を配合した場合にも、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。
【0105】
[実施例76〜78]
表16に記載の配合比(質量部)となるように、まず、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ヒアルロン酸水溶液を調製した。次に、ヒアルロン酸水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約1mmの高粘度液を得た。次に、この液の表面に、表16に記載の配合比(質量部)に相当する2%塩酸、酢酸を塗布して、室温にて24時間保管して、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例76〜78で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表16に示す。
【0106】
【表16】
【0107】
塩酸や酢酸などは、水溶性ヒアルロン酸ゲルを製造する際の乾燥によって、水と共に蒸発しやすいため、製造方法によっては酸の含有量をコントロールすることが難しい。このため、適度な弾性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルを製造し難い(例えば、実施例14を参照)が、実施例76〜78のように、ヒアルロン酸水溶液から水を蒸発させた後、酸を塗布して水溶性ヒアルロン酸ゲルとすることにより、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。
【0108】
[実施例79〜82]
表17に記載の配合比(質量部)となるように、高分子量のヒアルロン酸(平均分子量230万)、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ゲル形成用水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約100μmのヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例79〜82で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。また、別途、グリセリン、ブタンジオールを加えないこと以外は、ヒアルロン酸、蒸留水、及び10%リン酸の量を同じにしたヒアルロン酸水溶液について、それぞれ、実施例1〜15と同様にしてpHを測定した。結果を表17に示す。
【0109】
【表17】
【0110】
表17に示されるように、高分子量のヒアルロン酸を用い、かつ、グリセリンとブタンジオールとを併用することにより、ヒアルロン酸水溶液のpHを4.6、さらには5.2にまで酸性を弱めた場合にも、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有する水溶性ヒアルロン酸ゲルが好適に得られることが分かる。例えば、上記の実施例39では、平均分子量160万のヒアルロン酸ナトリウムを用いた場合に、得られる水溶性ヒアルロン酸ゲルの性状評価は「2」であったが、実施例80では、平均分子量230万の高分子量のヒアルロン酸ナトリウムを用いた場合、得られる水溶性ヒアルロン酸ゲルの性状評価は「1」であった。
【0111】
[実施例83〜86]
表18に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(平均分子量160万)を蒸留水に溶解後、グリセリン及びブタンジオールを添加して、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合してヒアルロン酸水溶液を調製した。次に、得られたヒアルロン酸水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約1mmの高粘度液を得た。次に、この高粘度液に表18に記載の配合比(質量部)となうように、10%リン酸及び蒸留水を塗布して、室温で48時間保管し、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、実施例1〜15と同様にして、実施例83〜86で得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を評価した。結果を表18に示す。
【0112】
【表18】
【0113】
表18に示されるように、本発明においては、ヒアルロン酸1質量部に 対して、水を100質量部程度含む場合にも、ゲルを形成できることが分か る。さらに、水の含有量が60質量部程度以下であると、ゲルの性状が「1 」となり、無色透明で、適度な弾性を有し、高い形状維持性を有するゲルと なることが分かる。
【0114】
[実施例87〜96]
表19に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(平均分子量160万または230万)を蒸留水に溶解後、グリセリン及びブタンジオールを添加して、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合してヒアルロン酸水溶液を調製した。次に、得られたヒアルロン酸水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約200μmの高粘度液を得た。次に、この高粘度液に表19に記載の配合比(質量部)となるように、10%リン酸及び蒸留水を塗布して、室温で48時間保管し、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を以下の基準により評価した。結果を表19に示す。
【0115】
<ヒアルロン酸ゲルシートの性状評価>
A’:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有し、十分な機械的強度を有する。ゲルを手で持ち上げても破断しない。
B’:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。Aと比較して機械的強度は劣るものの、ゲルを手で持ち上げても破断しない。
C’:無色透明なゲルで、高い形状維持性と適度な弾性を有する。Bよりも機械的強度が弱く、ゲルを手で持ち上げると破断する。
【0116】
【表19】
【0117】
表19に示されるように、本発明においては、高分子量のヒアルロン酸 を用いたり、酸の含有量を増やすことにより、例えばヒアルロン酸1質量部 に対して、水を400質量部程度含む場合にも、高い機械的強度を有するゲルが得られることが分かる。
【0118】
[実施例97及び98]
表20に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸(平均分子量160万または230万)を蒸留水に溶解後、10%リン酸、グリセリン及びブタンジオールを添加して、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合してゲル形成用水溶液を調製した。次に、得られた水溶液をプラスチックス製シャーレ(直径9cm)に均一の厚みとなるように入れて、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、厚み約200μmの水溶性ヒアルロン酸ゲルを得た。次に、水溶性ヒアルロン酸ゲルの表面に表20に記載の配合比となるように、蒸留水を塗布して、室温で48時間保管し、ヒアルロン酸ゲルシートを得た。次に、得られたヒアルロン酸ゲルシートの性状を実施例87〜96と同様にして評価した。結果を表20に示す。
【0119】
【表20】
【0120】
表20に示されるように、ヒアルロン酸ゲルに水を添加することによって、実施例87〜96と同様に、本発明においては、例えばヒアルロン酸1質量部に対して、水を200〜400質量部程度含む場合にも、高い機械的強度を有するゲルが得られることが分かる。
【0121】
[実施例99〜102]
実施例57と同様に、表14に記載の配合比(質量部)となるように、ヒアルロン酸、グリセリン、ブタンジオール、10%リン酸、及び蒸留水を、プロペラ式回転型撹拌装置を用いて混合して、ゲル形成用水溶液を調製した。次に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み7.5μm)/ポリエチレンテレフタレート不織布のラミネートフィルム(日本バイリーン株式会社製の商品名「EH−1212」)の不織布側にゲル形成用水溶液を均一の厚みとなるよう塗布し、24時間、50℃で保管し、蒸留水の大部分を蒸発させて、ラミネートフィルムと一体となったヒアルロン酸ゲルシート(ヒアルロン酸ゲルシート単体の厚みが約10μm、約20μm、約50μm、及び、200μmの4種類)を得た。これらラミネートフィルムとヒアルロン酸ゲルシートとの接着強度はいずれも十分なものであった。