特許第6598213号(P6598213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598213ガスバリア性積層体、電子デバイス用部材、および電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598213
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体、電子デバイス用部材、および電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20191021BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20191021BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B32B27/20 A
   B32B27/00 B
   H05B33/04
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-505202(P2016-505202)
(86)(22)【出願日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2015055043
(87)【国際公開番号】WO2015129626
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-35952(P2014-35952)
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/029859(WO,A1)
【文献】 特開2013−057871(JP,A)
【文献】 特開2007−273737(JP,A)
【文献】 特開2003−168814(JP,A)
【文献】 特開2012−171984(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0164669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H05B33/04
G02B 1/00− 1/08
3/00− 3/14
5/20− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、ガスバリア層、及び、ブルーイング剤を含有する樹脂層、を有し、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が、0.05g/(m・day)以下であることを特徴とするガスバリア性積層体であって、
ガスバリア層/ブルーイング剤を含有する樹脂層/基材の層構成であるガスバリア性積層体。
【請求項2】
基材、ガスバリア層、及び、ブルーイング剤を含有する樹脂層、を有し、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が、0.05g/(m・day)以下であることを特徴とするガスバリア性積層体であって、
ガスバリア層/基材/ブルーイング剤を含有する樹脂層の層構成であるガスバリア性積層体。
【請求項3】
基材、ガスバリア層、及び、ブルーイング剤を含有する樹脂層、を有し、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が、0.05g/(m・day)以下であることを特徴とするガスバリア性積層体であって、
ブルーイング剤を含有する樹脂層中の樹脂成分の含有量(架橋構造を形成しているときは、架橋構造部を含む)が、ブルーイング剤を含有する樹脂層全体に対して、70〜99.99質量%であるガスバリア性積層体。
【請求項4】
前記ガスバリア性積層体は、ブルーイング剤含有する樹脂層/ガスバリア層/基材の層構成である、請求項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
前記ガスバリア層が、無機蒸着膜からなるもの、又は、改質された領域を含む高分子層である、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項6】
前記ガスバリア層が、無機蒸着膜からなるもの、又は、高分子化合物を含む層にイオン注入処理を施して得られるものである、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性積層体
【請求項7】
前記ブルーイング剤が、520〜600nmの範囲内に最大吸収波長を有するものである、請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項8】
前記ガスバリア性積層体の、JIS Z 8729−1994に規定されるCIE L表色系におけるb値が、−1.2〜1.2である、請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項9】
前記ガスバリア性積層体の、波長550nmにおける光線透過率が85%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項10】
前記ブルーイング剤を含有する樹脂層中のブルーイング剤の含有量は、前記ブルーイング剤を含有する樹脂層全体に対して、0.01〜30質量%である、請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項11】
前記ブルーイング剤を含有する樹脂層の厚みは、0.1〜100μmである、請求項1〜10のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性積層体からなる電子デバイス用部材。
【請求項13】
請求項12に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性および無色透明性に優れるガスバリア性積層体、このガスバリア性積層体からなる電子デバイス用部材、および、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイには、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、電極を有する基板として、ガラス板に代えて、透明プラスチックフィルム上に、無機化合物層(ガスバリア層)が積層されてなる、いわゆるガスバリアフィルムが用いられている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、プラスチックフィルムからなる基材の片面、又は両面に、ドライコーティング法によって、SiOのxの値が1.8以上の高酸化度酸化珪素層と、該高酸化度酸化珪素層上に、SiOのxの値が1.0〜1.6の低酸化度酸化珪素層を設け、更に、該低酸化度酸化珪素層面に、酸素、窒素、アルゴン、若しくはヘリウムの一種、又はこれらの2種以上からなるガスによるプラズマ処理を施した後、該低酸化度酸化珪素層のプラズマ処理面に、ポリマー層が積層されてなる透明ガスバリア積層フィルム記載されている。
また、特許文献2には、透明樹脂基板の片面又は両面に、酸窒化ケイ素層及び窒化ケイ素層が、この順に積層されてなる透明ガスバリア基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−351832号公報
【特許文献2】特開2007−062305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、これまでにも、ガスバリア層として無機化合物層を有するガスバリアフィルムが数多く提案されている。しかしながら、このようなガスバリア層は、通常、高い屈折率を有するため、隣接する他の層との屈折率差が大きくなり、これらの層の界面で短波長の光が反射し、ガスバリアフィルムが黄みを帯びるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性及び無色透明性に優れるガスバリア性積層体、このガスバリア性積層体からなる電子デバイス用部材、及び、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ガスバリア性積層体に、ブルーイング剤を含有する樹脂層を設けることで、無色透明性に優れるガスバリア性積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(6)のガスバリア性積層体、(7)の電子デバイス用部材、および、(8)の電子デバイスが提供される。
(1)基材、ガスバリア層、及び、ブルーイング剤を含有する樹脂層、を有することを特徴とするガスバリア性積層体。
(2)前記ガスバリア層が、無機蒸着膜からなるもの、又は、高分子化合物を含む層にイオン注入処理を施して得られるものである、(1)に記載のガスバリア性積層体
(3)前記ブルーイング剤が、520〜600nmの範囲内に最大吸収波長を有するものである、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(4)前記ガスバリア性積層体の、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が、0.05g/(m・day)以下である、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(5)前記ガスバリア性積層体の、JIS Z 8729−1994に規定されるCIE L表色系におけるb値が、−1.2〜1.2である、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(6)前記ガスバリア性積層体の、波長550nmにおける光線透過率が85%以上である、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(7)前記ブルーイング剤の含有量は、前記ブルーイング剤を含有する樹脂層全体に対して、0.01〜30質量%である、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(8)前記ブルーイング剤を含有する樹脂層の厚みは、0.1〜100μmである、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(9)前記ガスバリア性積層体は、ブルーイング剤含有層/ガスバリア層/基材の層構成である、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(10)前記ガスバリア性積層体は、ガスバリア層/ブルーイング剤含有層/基材の層構成である、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(11)前記ガスバリア性積層体は、ガスバリア層/基材/ブルーイング剤含有層の層構成である、(1)に記載のガスバリア性積層体。
(12)前記(1)に記載のガスバリア性積層体からなる電子デバイス用部材。
(13)前記(12)に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスバリア性及び無色透明性に優れるガスバリア性積層体、このガスバリア性積層体からなる電子デバイス用部材、及び、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスが提供される。
【0010】
以下、本発明を、1)ガスバリア性積層体、並びに、2)電子デバイス用部材及び電子デバイス、に項分けして詳細に説明する。
【0011】
1)ガスバリア性積層体
本発明のガスバリア性積層体は、基材、ガスバリア層、及び、ブルーイング剤を含有する樹脂層(以下、「ブルーイング剤含有層」ということがある。)、を有することを特徴とする。
【0012】
(1)基材
本発明のガスバリア性積層体を構成する基材は、ガスバリア層やブルーイング剤含有層を担持できるものであれば特に限定されない。基材としては、通常、フィルム状又はシート状のものが用いられる。
基材の厚みは、特に限定されず、ガスバリア性積層体の目的に合わせて決定すればよい。基材の厚みは、通常、0.5〜500μm、好ましくは1〜100μmである。
【0013】
基材の素材は、本発明のガスバリア性積層体の目的に合致するものであれば特に制限されない。
基材の素材としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等の樹脂基材;グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材に前記樹脂をラミネートしたラミネート紙;等が挙げられる。
【0014】
これらの中でも、透明性に優れ、汎用性があることから、樹脂基材が好ましく、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがさらに好ましい。
【0015】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
【0016】
シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレン−シクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。
【0017】
(2)ガスバリア層
本発明のガスバリア性積層体を構成するガスバリア層は、酸素や水蒸気等のガスの透過を抑制する特性(ガスバリア性)を有する層である。
【0018】
ガスバリア層としては、例えば、無機蒸着膜や高分子化合物を含む層(以下、「高分子層」ということがある。)に、イオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等を施して得られたもの〔この場合、ガスバリア層とは、イオン注入処理等により改質された領域のみを意味するのではなく、「改質された領域を含む高分子層」を意味する。〕等が挙げられる。
【0019】
無機蒸着膜としては、無機化合物や金属の蒸着膜が挙げられる。
無機化合物の蒸着膜の原料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;酸化窒化ケイ素等の無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
金属の蒸着膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びスズ等が挙げられる。
これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、ガスバリア性の観点から、無機酸化物、無機窒化物又は金属を原料とする無機蒸着膜が好ましく、さらに、透明性の観点から、無機酸化物又は無機窒化物を原料とする無機蒸着膜が好ましい。
【0020】
無機蒸着膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理的蒸着)法や、熱CVD(化学的蒸着)法、プラズマCVD法、光CVD法等のCVD法が挙げられる。
【0021】
無機蒸着膜の厚さは、使用する無機化合物によっても異なるが、ガスバリア性と取り扱い性の観点から、好ましくは10〜2000nm、より好ましくは20〜1000nm、更に好ましくは30〜500nm、特に好ましくは40〜200nmの範囲である。
【0022】
高分子層にイオン注入処理を施して得られるガスバリア層において、用いる高分子化合物としては、ポリオルガノシロキサン、ポリシラザン系化合物等のケイ素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
これらの高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0023】
これらの中でも、より優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成し得ることから、高分子化合物としては、ケイ素含有高分子化合物が好ましい。ケイ素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、及びポリオルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できることから、ポリシラザン系化合物が好ましい。ポリシラザン系化合物を含む層にイオン注入処理を行うことで、酸素、窒素、ケイ素を主構成原子として有する層(酸窒化珪素層)を形成することができる。
【0024】
ポリシラザン系化合物としては、有機ポリシラザン、無機ポリシラザン、変性ポリシラザン等の公知のものを使用することができる。ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
ポリシラザン系化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
高分子層は、上述した高分子化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含有してもよい。他の成分としては、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
高分子層中の高分子化合物の含有量は、より優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られることから、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0026】
高分子層の厚みは、特に制限されないが、通常20nmから10μm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、高分子化合物を含む層がナノオーダーであっても、充分なガスバリア性を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
【0027】
高分子層を形成する方法は特に限定されない。例えば、高分子化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する高分子層形成用溶液を調製し、次いで、この高分子層形成用溶液を、公知の方法により塗工し、得られた塗膜を乾燥することにより、高分子層を形成することができる。
【0028】
高分子層形成用溶液に用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
高分子層形成用溶液の塗工方法としては、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
【0030】
形成された塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常60〜130℃の範囲である。加熱時間は、通常数秒から数十分である。
【0031】
高分子層に注入するイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;メタン、エタン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;金属のイオン;有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
これらのイオンは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、より簡便にイオンを注入することができ、より優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られることから、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオンが好ましい。
【0032】
イオンの注入量は、積層体の使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定することができる。
【0033】
イオンを注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便に目的のバリア層が得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
【0034】
プラズマイオン注入は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、高分子層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、高分子層の表面部に注入して行うことができる。
【0035】
イオン注入により、イオンが注入される領域の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、高分子層の厚み、積層体の使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜400nmである。イオンが注入される領域は、高分子層の表面部から深さ方向に10〜400nmの厚みを有するのが好ましい。
【0036】
(3)ブルーイング剤含有層
本発明のガスバリア性積層体を構成するブルーイング剤含有層は、ブルーイング剤及び樹脂成分を含有する層である。
通常、ガスバリア層は、高い屈折率を有するため、隣接する他の層との屈折率差が大きくなり、これらの層の界面で短波長の光が反射し易くなる。このため、従来のガスバリア性積層体は、黄みを帯びる傾向があった。
一方、本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア層とともに、ブルーイング剤含有層を有するため、黄みが抑えられ、無色透明性に優れる。
【0037】
ブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤であって、樹脂の色相を調整する機能を有する物質をいう。
ブルーイング剤は、520〜600nmの範囲内に最大吸収波長を有するものが好ましく、540〜580nmの範囲内に最大吸収波長を有するものがより好ましい。
【0038】
ブルーイング剤の種類は特に限定されず、公知の有機系着色剤や無機系着色剤を用いることができる。
有機系着色剤としては、発色団として、一つのアゾ基(−N=N−)を分子内に有するモノアゾ系染料、メタンを中心として3個の芳香族アミン(芳香族複素環も含む)が点対称のような形で連なった分子構造を有するトリアリールメタン系染料、分子内にフタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系染料、アントラキノンの誘導体であるアントラキノン系染料等が挙げられる。
無機系着色剤としては、アイロンブルー、プルシアンブルー、ベルリンブルー、ターンブルブルー、ミロリーブルー、チャイニーズブルー、パリブルー等の紺青(鉄シアノ錯体系着色剤);ウルトラマリンブルー、ウルトラマリンバイオレット等の群青;コバルトブルー(CoO・Al)等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、ブルーイング剤としては、アントラキノン系染料、群青、コバルトブルーが好ましい。
ブルーイング剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
ブルーイング剤含有層中のブルーイング剤の含有量は、本発明のより優れた効果が得られる観点から、ブルーイング剤含有層全体に対して、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。
【0041】
ブルーイング剤含有層中に含まれる樹脂成分は、薄膜状の層を形成し得るものであって、かつ、ブルーイング剤を分散させることができるものでれば特に限定されない。
樹脂成分としては、高分子層を構成する高分子化合物として、先に示したものと同様の高分子化合物や、UV硬化型樹脂等のエネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が挙げられる。UV硬化型樹脂としては、(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基を有する樹脂が挙げられる。これらの樹脂成分は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ブルーイング剤含有層中に含まれる樹脂成分としては、UV硬化型樹脂等のエネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂が好ましい。
【0042】
エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物と(メタ)アルリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)、等を挙げることができる。
ここで、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを意味する(以下にて同じ。)。
【0043】
エネルギー線硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂である場合には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類等が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
また、必要に応じて、公知の光増感剤、光重合促進剤を添加してもよい。
光重合開始剤の添加量は、エネルギー線硬化性組成物100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0044】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を併用して使用することもできる。
【0045】
ブルーイング剤含有層は、架橋構造が形成されていてもよい。
ブルーイング剤含有層中に架橋構造を形成する際は、接着剤等における公知の架橋構造形成方法を利用することができる。
【0046】
例えば、水酸基やカルボキシル基を有する樹脂を用いる場合、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の架橋剤を用いることで、架橋構造を形成することができる。
【0047】
イソシアネート系架橋剤は、架橋性基としてイソシアネート基を有する化合物である。
イソシアネート系架橋剤としては、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;これらの化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体;等が挙げられる。
【0048】
エポキシ系架橋剤は、架橋性基としてエポキシ基を有する化合物である。
エポキシ系架橋剤としては、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0049】
アジリジン系架橋剤は、架橋性基としてアジリジン基を有する化合物である。
アジリジン系架橋剤はとしては、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0050】
金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられ、なかでも、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0051】
これらの架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの架橋剤を用いて架橋構造を形成する場合、その使用量は、架橋剤の架橋性基(金属キレート系架橋剤の場合は、金属キレート系架橋剤)が、高分子化合物の水酸基及びカルボキシル基に対して、0.1〜5当量となる量が好ましく、0.2〜3当量となる量がより好ましい。
【0052】
また、(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基を有する樹脂を用いる場合、光重合開始剤や熱重合開始剤等を用いることで、架橋構造を形成することができる。
【0053】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、2−クロールアンスラキノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0054】
熱重合開始剤としては、過酸化水素;ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;等が挙げられる。
【0055】
これらの重合開始剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの重合開始剤を用いて架橋構造を形成する場合、その使用量は、高分子化合物100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましい。
【0056】
ブルーイング剤含有層中の樹脂成分の含有量(架橋構造を形成しているときは、架橋構造部を含む)は、ブルーイング剤含有層全体に対して、70〜99.99質量%が好ましく、80〜99.95質量%がより好ましく、90〜99.9質量%がさらに好ましい。
【0057】
ブルーイング剤含有層は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤、充填剤、増量剤、軟化剤等の添加剤が挙げられる。
これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ブルーイング剤含有層がその他の成分を含有する場合、その含有量は、それぞれ、ブルーイング剤含有層全体に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。
【0058】
ブルーイング剤含有層の厚みは、特に限定されず、目的のガスバリア性積層体に合わせて適宜決定することができる。ブルーイング剤含有層の厚みは、通常、0.1〜100μmであり、0.2〜80μmが好ましく、0.3〜50μmがより好ましい。
【0059】
ブルーイング剤含有層を形成する方法は特に限定されない。例えば、ブルーイング剤及び樹脂成分を含有する樹脂組成物(以下、「ブルーイング剤含有組成物」ということがある。)を調製し、次いで、所定の面上に、ブルーイング剤含有組成物を塗工し、得られた塗膜を乾燥させ、必要に応じて架橋反応を行うことにより、ブルーイング剤含有層を形成することができる。
ブルーイング剤含有組成物の調製方法、塗工方法、乾燥方法等としては、高分子層を形成する方法として、先に説明したものと同様のものが挙げられる。
【0060】
(4)ガスバリア性積層体
本発明のガスバリア性積層体は、基材、ガスバリア層、及び、ブルーイング剤含有層を有する。
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア層やブルーイング剤含有層は、それぞれ1層有するものであってもよいし、それぞれ2層以上有するものであってもよい。
【0061】
本発明のガスバリア性積層体としては、基材、ガスバリア層、及び、ブルーイング剤含有層を有するものであれば、その層構成に特に制約はない。本発明のガスバリア性積層体の層構成の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(i)ブルーイング剤含有層/ガスバリア層/基材
(ii)ガスバリア層/ブルーイング剤含有層/基材
(iii)ガスバリア層/基材/ブルーイング剤含有層
【0062】
本発明のガスバリア性積層体は、基材、ガスバリア層、ブルーイング剤含有層以外の層を有するものであってもよい。
基材、ガスバリア層、ブルーイング剤含有層以外の層としては、基材との層間密着性を向上させるためのプライマー層、導電体層、衝撃吸収層、粘着剤層、工程シート等が挙げられる。これらの層の積層位置は、特に限定されない。これらの層の積層位置は、特に限定されない。なお、工程シートは、積層体を保存、運搬等する際に、積層体を保護する役割を有し、積層体が使用される際には剥離されるものである。
【0063】
本発明のガスバリア性積層体は、例えば、以下の方法により製造することができる。
(i)ブルーイング剤含有層/ガスバリア層/基材の層構成を有するガスバリア性積層体
基材上に、先に説明した方法を用いてガスバリア層を形成する。次いで、得られたガスバリア層上に、先に説明した方法を用いてブルーイング剤含有層を形成することにより、ブルーイング剤含有層/ガスバリア層/基材の層構成を有するガスバリア性積層体を得ることができる。
【0064】
(ii)ガスバリア層/ブルーイング剤含有層/基材の層構成を有するガスバリア性積層体
基材上に、先に説明した方法を用いてブルーイング剤含有層を形成する。次いで、得られたブルーイング剤含有層上に、先に説明した方法を用いてガスバリア層を形成することにより、ガスバリア層/ブルーイング剤含有層/基材の層構成を有するガスバリア性積層体を得ることができる。
【0065】
(iii)ガスバリア層/基材/ブルーイング剤含有層の層構成を有するガスバリア性積層体
基材上に、先に説明した方法を用いてガスバリア層を形成する。次いで、基材のもう一方の面上に、先に説明した方法を用いてブルーイング剤含有層を形成することにより、ガスバリア層/基材/ブルーイング剤含有層の層構成を有するガスバリア性積層体を得ることができる。
【0066】
本発明のガスバリア性積層体が、基材、ガスバリア層、ブルーイング剤含有層以外の層を有するものである場合は、上記の製造方法において、適宜必要な工程を加えることで、目的のガスバリア性積層体を得ることができる。
【0067】
本発明のガスバリア性積層体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは、1〜1000μm、より好ましくは、10〜500μm、さらに好ましくは、50〜100μmである。
【0068】
本発明のガスバリア性積層体の、温度40℃、相対湿度90%における、水蒸気透過率は、好ましくは0.05g/(m・day)以下、より好ましくは0.04g/(m・day)以下、さらに好ましくは、0.03g/(m・day)以下である。下限値は特になく、小さいほど好ましいが、通常は、0.001g/(m・day)以上である。
この水蒸気透過率が、このような範囲にあることで、本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア性に優れるものとなる。このようなガスバリア性積層体は、電子デバイス用部材として好適に用いられる。
水蒸気透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0069】
本発明のガスバリア性積層体の、JIS Z 8729−1994に規定されるCIE L表色系におけるb値は、好ましくは、−1.2〜1.2、より好ましくは、−1.0〜1.0、さらに好ましくは、−0.8〜0.8である。
値は、色を数値化したときの、黄みと青みの程度を表すものである。b値が正の値であれば、黄みを帯びていることを、負の値であれば、青みを帯びていることを表す。
値が上記範囲にあることで、そのガスバリア性積層体は、より黄と青の中間の色相を呈することになる。このようなガスバリア性積層体は、発光素子を有する電子デバイス用部材として好適に用いられる。
値は、形成するガスバリア層の性質に応じて、用いるブルーイング剤の選択や、ブルーイング剤含有層中のブルーイング剤の含有量を適宜決定することにより、制御することができる。
【0070】
また、本発明のガスバリア性積層体の、JIS Z 8729−1994に規定されるCIE L表色系におけるa値は、好ましくは、−1.2〜1.2、より好ましくは、−1.0〜1.0、さらに好ましくは、−0.8〜0.8である。
値は、色を数値化したときの、赤みと緑みの程度を表すものであり、a値が正の値であれば、赤みを帯びていることを、負の値であれば、緑みを帯びていることを表す。
値が上記範囲にあることで、そのガスバリア性積層体は、より赤と緑の中間の色相を呈することになる。このようなガスバリア性積層体は、発光素子を有する電子デバイス用部材として好適に用いられる。
値は、用いる樹脂やその他の成分を適宜選択することで、制御することができる。
JIS Z 8729−1994に規定されるCIE L表色系におけるb値やa値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0071】
本発明のガスバリア性積層体の、波長370nmにおける光線透過率は1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。波長550nmにおける光線透過率は85.0%以上が好ましく、89.0%以上がより好ましい。
光線透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0072】
波長370nmにおける光線透過率が1%以下のガスバリア性積層体は、紫外線を十分に吸収することができ、耐光性に優れるものとなる。
波長370nmにおける光線透過率は、紫外線吸収剤を適量含有させることで制御することができる。
【0073】
波長550nmにおける光線透過率が85%以上のガスバリア性積層体は、無色透明性に優れるものとなる。
波長550nmにおける光線透過率は、各種添加剤の含有量や、ガスバリア性積層体の厚みを適宜決定することで、所望の値になるように制御することができる。
【0074】
これらの特性を有するため、本発明のガスバリア性積層体は、電子デバイス用部材として好適に用いられる。
【0075】
2)電子デバイス用部材及び電子デバイス
本発明の電子デバイス用部材は、本発明のガスバリア性積層体からなることを特徴とする。従って、本発明の電子デバイス用部材は、優れたガスバリア性を有しているので、水蒸気等のガスによる素子の劣化を防ぐことができる。また、無色透明性に優れるので、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイ部材;等として好適である。
【0076】
本発明の電子デバイスは、本発明の電子デバイス用部材を備える。具体例としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池等が挙げられる。
本発明の電子デバイスは、本発明のガスバリア性積層体からなる電子デバイス用部材を備えているので、優れたガスバリア性を有する。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0078】
(化合物)
各例で用いた化合物や材料を以下に示す。
・UV硬化型樹脂液(1):JSR社製、商品名:オプスターZ7530、固形分73%
・ブルーイング剤(1):複合酸化物系ブルーイング剤(CIKナノテック社製、商品名:COBMIBK15WT%−NO1,コバルトブルー、最大吸収波長:580nm、固形分15%)
・基材(1):ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名:コスモシャインA4100、厚さ50μm)
・ポリシラザン化合物系コーティング剤(1):(クラリアントジャパン社製、商品名:アクアミカNL110−20、固形分20%)
【0079】
〔製造例1〕
UV硬化型樹脂液(1)100部に、ブルーイング剤(1)4.8部を添加して、攪拌することで、ブルーイング剤含有組成物1を調製した。
【0080】
〔製造例2〜6〕
配合割合を第1表に記載のものに変更したことを除き、製造例1と同様にして、ブルーイング剤含有組成物2〜6を調製した。
【0081】
【表1】
【0082】
〔実施例1〕
基材(1)上に、ポリシラザン化合物系コーティング剤(1)をスピンコート法により塗布し、得られた塗膜を120℃で1分間加熱して、厚さ150nmの、ペルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン層を形成した。次に、プラズマイオン注入装置を用いてポリシラザン層の表面に、下記の条件にて、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入して、ガスバリア層を形成した。
ガスバリア層上に、製造例1で得たブルーイング剤含有組成物1を、バーコート法により、厚みが1μmになるように塗布し、得られた塗膜を70℃で1分間乾燥した後、UV光照射ラインを用いてUV光照射を行い(高圧水銀灯;ライン速度、20m/分;積算光量、100mJ/cm;ピーク強度、1.466W;パス回数、2回)、ブルーイング剤含有層を形成し、ブルーイング剤含有層(以下、「C層」ということがある。)/ガスバリア層(以下、「B層」ということがある。)/基材(以下、「S層」ということがある。)の層構造を有するガスバリア性積層体1を得た。
【0083】
ガスバリア層を形成するために用いたプラズマイオン注入装置及びイオン注入条件は以下の通りである。
(プラズマイオン注入装置)
RF電源:日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:栗田製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」
(プラズマイオン注入条件)
プラズマ生成ガス:Ar
ガス流量:100sccm
Duty比:0.5%
印加電圧:−15kV
RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
チャンバー内圧:0.2Pa
パルス幅:5μsec
処理時間(イオン注入時間):200秒
【0084】
〔実施例2〕
実施例1において、ブルーイング剤含有組成物1に代えて、製造例2で得たブルーイング剤含有組成物2を用いたことを除き、実施例1と同様の方法により、C層/B層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体2を得た。
【0085】
〔実施例3〕
実施例1において、ブルーイング剤含有組成物1に代えて、製造例3で得たブルーイング剤含有組成物3を用いたことを除き、実施例1と同様の方法により、C層/B層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体3を得た。
【0086】
〔実施例4〕
実施例1において、ブルーイング剤含有組成物1に代えて、製造例4で得たブルーイング剤含有組成物4を用いたことを除き、実施例1と同様の方法により、C層/B層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体4を得た。
【0087】
〔実施例5〕
実施例1において、ブルーイング剤含有組成物1に代えて、製造例5で得たブルーイング剤含有組成物5を用いたことを除き、実施例1と同様の方法により、C層/B層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体5を得た。
【0088】
〔実施例6〕
基材(1)上に、製造例1で得たブルーイング剤含有組成物1を、バーコート法により、厚みが1μmになるように塗布し、得られた塗膜を70℃で1分間乾燥した後、UV光照射ラインを用いてUV光照射を行い(高圧水銀灯;ライン速度、20m/分;積算光量、100mJ/cm;ピーク強度、1.466W;パス回数、2回)、ブルーイング剤含有層を形成した。
ブルーイング剤含有層上に、ポリシラザン化合物系コーティング材(1)をスピンコート法により塗布し、得られた塗膜を120℃で1分間加熱して、厚さ150nmの、ペルヒドロポリシラザンを含むポリシラザン層を形成した。
次に、プラズマイオン注入装置を用いてポリシラザン層の表面に、上記の条件にて、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入して、ガスバリア層を形成し、B層/C層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体6を得た。
【0089】
〔実施例7〕
実施例1において、基材(1)の一方の面上にガスバリア層を形成した後、当該基材(1)の他方の面上にブルーイング剤含有層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法により、B層/S層/C層の層構造を有するガスバリア性積層体7を得た。
【0090】
〔実施例8〕
実施例3において、基材(1)の一方の面上に、ガスバリア層として下記条件にて得られる酸化アルミニウム層(厚さ150nm)を形成したことを除き、実施例3と同様の方法により、C層/B層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体8を得た。
〈反応性スパッタリングの条件〉
・プラズマ生成ガス:アルゴン、酸素
・ガス流量:アルゴン100sccm、酸素40sccm
・ターゲット材料:アルミニウム
・電力値:2500W
・真空槽内圧:0.2Pa
【0091】
〔実施例9〕
実施例3において、基材(1)の一方の面上に、ガスバリア層として下記条件にて得られる窒化ケイ素層(厚さ150nm)を形成したことを除き、実施例3と同様の方法により、C層/B層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体9を得た。
〈反応性スパッタリングの条件〉
・プラズマ生成ガス:アルゴン、窒素
・ガス流量:アルゴン100sccm、窒素60sccm
・ターゲット材料:シリコン
・電力値:2500W
・真空槽内圧:0.2Pa
【0092】
〔比較例1〕
実施例1において、ブルーイング剤含有組成物1に代えて、製造例6で得たブルーイング剤含有組成物6を用いたことを除き、実施例1と同様の方法により、ブルーイング剤非含有層(C’層)/B層/S層の層構造を有するガスバリア性積層体10を得た。
【0093】
実施例1〜9及び比較例1で得たガスバリア性積層体1〜10について、以下の測定を行った。
(水蒸気透過率測定)
温度40℃、相対湿度90%における、ガスバリア性積層体1〜10の水蒸気透過率を、水蒸気透過率測定装置(LYSSY社製、L80−5000)を用いて測定した。
測定結果を第1表に示す。
【0094】
(可視光透過率)
ガスバリア性積層体1〜10の550nmにおける光線透過率を、可視光透過率測定装置(島津製作所社製、UV−3101PC)を用いて測定した。
測定結果を第1表に示す。
【0095】
(色相評価)
ガスバリア性積層体1〜10の、CIE1976L*a*b*表色系により規定される色彩値bを、JIS Z 8729−1994に準拠し、分光光度計(島津製作所社製、UV−3200)を用いて測定した。
測定結果を第2表に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
第2表から、以下のことがわかる。
実施例1〜9のガスバリア性積層体は、ガスバリア性に優れ、さらに、無色透明性にも優れるものである。
一方、比較例1のガスバリア性積層体は、ガスバリア性に優れるものではあるが、色彩値bは、大きな値になっており、黄みを帯びている。