(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
なお、本明細書では、積層型リチウムイオン二次電池を単に「二次電池」と称することがある。また、「集電体」と称する場合、正極集電体または負極集電体のいずれかを意味する場合もあるし、両方を意味する場合がある。「活物質」および「活物質層」についても同様である。
【0014】
(二次電池)
図1は、本発明の実施形態に係る積層型リチウムイオン二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。
図1に示す二次電池10は、長方形状の扁平な形状を有し、異なる辺から電力を取り出すための正極タブ51aおよび負極タブ51bが引き出されている。なお、正極タブ51aおよび負極タブ51bが引き出される辺は同じ辺であってもよい。
【0015】
二次電池10は、
図2に示すように、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素20が、外装体80の内部に封止された構造を有する。
【0016】
発電要素20は、集電体50に活物質層60が形成されてなる電極40と、電極40の間に配置される電解質層70と、を積層してなる。集電体50は、正極集電体50aおよび負極集電体50bから構成され、活物質層60は、正極活物質層60aおよび負極活物質層60bから構成される。
【0017】
電極40は、正極集電体50aの一方の面に正極活物質層60aが形成されてなる正極40aと、負極集電体50bの一方の面に負極活物質層60bが形成されてなる負極40bと、を有する。
【0018】
正極活物質層60a、負極活物質層60bおよび電解質層70によって一つの電池セルである単電池層30が構成されている。単電池層30の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。なお、単電池層30の積層回数は特に限定されず、十分な出力が確保できればよい。
【0019】
集電体50は、活物質層60と接して電子の移動を媒介する機能を有する。正極集電体50aは正極タブ51aと接続され、負極集電体50bは負極タブ51bと接続される。正極タブ51aおよび負極タブ51bは、外装体80の端部に挟まれるようにして外装体80の外部に導出される。
【0020】
集電体50としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0021】
また、後者の導電性を有する樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。このような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体50の軽量化の点において有利である。
【0022】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。このような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0023】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体50の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
【0024】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、及びSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
【0025】
なお、集電体50は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であってもよい。また、単電池層30間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体50の一部に金属層を設けてもよい。
【0026】
活物質層60は、
図3に示すように、活物質63を含む。活物質63は、充放電時にイオンを吸蔵・放出し、電気エネルギーを生み出す。活物質63には、放電時にイオンを吸蔵し充電時にイオンを放出する組成を有する正極活物質63aと、放電時にイオンを放出し充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する負極活物質63bとがある。活物質層60は、活物質として正極活物質63aを使用する場合は正極活物質層60aとして機能し、負極活物質63bを使用する場合は負極活物質層60bとして機能する。なお、本明細書では、正極活物質63aおよび負極活物質63bに共通する事項については、単に「活物質63」として説明する。
【0027】
正極活物質63aとしては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2およびLiMn
2O
4)、遷移金属酸化物(例えばMnO
2およびV
2O
5)、遷移金属硫化物(例えばMoS
2およびTiS
2)および導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンおよびポリカルバゾール)等が挙げられる。
【0028】
負極活物質63bとしては、黒鉛、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂およびフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン)、スズ、シリコン、および金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金およびリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)等が挙げられる。
【0029】
正極活物質層60aは所定の厚さt
1を有するシート状であり、電解質層70側に配置される第1面61aおよび集電体50側に配置される第2面62aを備えている。正極活物質層60aには正極活物質63aが含まれている。
【0030】
同様に、負極活物質層60bも所定の厚さt
2を有するシート状であり、電解質層70側に配置される第1面61bおよび集電体50側に配置される第2面62bを備えている。負極活物質層60bには負極活物質63bが含まれている。
【0031】
正極活物質層60aの厚さt
1および負極活物質層60bの厚さt
2は、それぞれ150〜1500μmであることが好ましく、このように電極40が厚いと電池内に多くの活物質63を含ませることができるため、電池を高容量化することができ、エネルギー密度向上に有効である。厚さt
1は、より好ましくは200〜950μmであり、さらに好ましくは250〜900μmである。厚さt
2は、より好ましくは200〜950μmであり、さらに好ましくは250〜900μmである。
【0032】
正極活物質層60aおよび負極活物質層60bのうち少なくとも一方は、電子伝導材料からなる導電部材64を含む。活物質63の表面の少なくとも一部は、被覆用樹脂65および導電助剤66を含む被覆剤67によって被覆された被覆活物質68である。また、導電部材64の少なくとも一部は、第1面61a、61bから第2面62a、62bまでを電気的に接続する導電通路を形成している。
【0033】
導電部材64は、導電性繊維から構成される。なお、導電部材64を構成する材料は、導電性繊維64に限定されず、導電化処理された樹脂等によって構成してもよい。
【0034】
導電性繊維64のうち、一部の繊維の一方の端部は、第1面61a、61bに達しており、もう一方の端部は、第2面62a、62bに達している。これにより、導電性繊維64のうち少なくとも一部は、第1面61a、61bから第2面62a、62bまでを電気的に接続する導電通路を形成している。
【0035】
また、第1面61a、61bと第2面62a、62bとの間には多数の導電性繊維64が絡み合って存在しているが、複数本の導電性繊維64が接触していて第1面61a、61bから第2面62a、62bまでを連続的に繋いでいる場合も、導電性繊維64が第1面61a、61bから第2面62a、62bまでを電気的に接続する導電通路を形成しているといえる。
【0036】
導電性繊維64としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
【0037】
被覆用樹脂65としては、活性水素成分とイソシアネート成分とを反応させて得られるウレタン樹脂等を使用することができる。
【0038】
活性水素成分としては、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールおよびポリエステルジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0039】
導電助剤66としては、導電性を有する材料から選択される。
【0040】
具体的には、金属{アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅およびチタン等}、カーボン{グラファイトおよびカーボンブラック[アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等]等}、およびこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金または金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタンおよびこれらの混合物であり、さらに好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレスおよびカーボンであり、特に好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤とは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0042】
導電助剤66の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
【0043】
また、本発明の好ましい形態においては、活物質層60の体積を基準として、被覆活物質68の占める体積の割合が30〜80vol%であることが好ましい。被覆活物質68の割合が多くなることによって、高容量の電極となる。
【0044】
電解質層70は、正極活物質層60aおよび負極活物質層60bを物理的に隔離しつつ、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。
【0045】
電解質層70に使用される電解質は、特に制限はないが、活物質層60のイオン伝導性を確保する観点から、液体電解質、ゲルポリマー電解質、またはイオン液体電解質が用いられる。液体電解質(電解液)は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液層を構成する液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。
【0046】
再び
図2を参照して、外装体80は、発電要素20を覆う電池外装である。本実施形態において、外装体80は、四角形のシート状であり、
図1および
図4(B)に示す発電要素20における対向する面21、22に配置される。
図4(A)および(B)に示すように、発電要素20の外周面の一つの面23に臨む一の端部81を除く、他の端部82、83、84(
図4(A)中の破線で囲まれた部分)を融着する。当該融着しない一の端部81は、発電要素20の内部のガスを外装体80の外部へ排出するための連通孔である開口部81hを形成する。本明細書中では、外装体80と発電要素20が積層され、開口部81hが形成された組立体を「アセンブリ90」と称する。また、
図6に示すように、アセンブリ90を初期充電後に外装体80の一部を切断して孔部85hが形成された組立体を「サブアセンブリ91」と称する。
【0047】
本実施形態における二次電池10は、アセンブリ90の外装体80の一の端部81を融着し、外装体80によって発電要素20を内部に内包して封止することによって形成される。
【0048】
本実施形態のような扁平型電池において、外装体80と発電要素20との間に隙間があると、電池に振動や衝撃が加えられたときに発電要素20が外装体80の内部で振動することによって、発電要素20や外装体80が破損することがある。このような発電要素20の振動による外装体80の破損を防止するために、外装体80の内部は減圧されて真空に近い状態に保たれ、発電要素20の表面と外装体80の内側は密着した状態となっている。
【0049】
外装体80としては、ラミネートシートを好適に使用することができる。ラミネートシートには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートシート等を用いることができるが、これらに制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素20への面圧を容易に調整することができ、外装体80はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
【0050】
(二次電池の製造装置)
本発明の実施形態に係る二次電池10の製造装置100は、外装体80の内部のガスを外部へ排出するための装置である。製造装置100は、
図5に示すように、弾性を有する板状の弾性体110と、アセンブリ90を挟持する挟持部120と、アセンブリ90を保持する保持部130と、アセンブリ90の雰囲気を減圧可能な減圧部140と、を有する。製造装置100は、
図6に示すように、初期充電後に外装体80の一部を切断して孔部85hを形成する切断部150をさらに有する。また、挟持部120、減圧部140および切断部150の作動を制御する制御部160を有する。以下、
図5および
図6を参照して各構成部材について説明する。
【0051】
弾性体110は、発電要素20における対向する面21、22の一方の面21(
図4(B)を参照)を、外装体80を隔てて覆う。弾性体110の外装体80と接触する面は、四角形状であり、発電要素20における対向する面21の全体を覆うことのできる大きさを備える。
【0052】
弾性体110としては、弾性を有する材料によって形成される。弾性体110としては、独立気泡構造のスポンジを好適に使用することができる。独立気泡構造は、独立気泡構造のスポンジを構成する材料としては、樹脂、ゴムなどが挙げられる。
【0053】
独立気泡構造のスポンジは、各気泡が他の気泡と接続せずに独立している。このため、弾性体110は、アセンブリ90を適切な加圧力で加圧できる反発弾性力を備えることができる。
【0054】
挟持部120は、平坦な面を有する第1板状部材121と、平坦な面を有する第2板状部材122と、第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を調整する第1調整部123および第2調整部124と、を有する。
【0055】
第1板状部材121および第2板状部材122は、弾性体110が配置されたアセンブリ90を挟持する。第1板状部材121は、アセンブリ90において弾性体110が配置された側(発電要素20における対向する面21側)に配置され、弾性体110に接するように設けられる。第2板状部材122は、アセンブリ90において弾性体110が配置された側(発電要素20における対向する面22側)と反対側に配置され、外装体80の外面に接するように設けられる。互いに向かい合う第1板状部材121の面および第2板状部材122の面は、四角形状であり、弾性体110および外装体80にそれぞれ面接触可能に配置されている。
【0056】
第1調整部123および第2調整部124は、第1板状部材121と第2板状部材122との間隔が所定の間隔以上に開かないように固定し、当該間隔を狭めるように調整可能な構成を備える。第1調整部123および第2調整部124は、例えば、ボルト123b、124bと締付治具123n、124nを備える。第1板状部材121および第2板状部材122にボルト123b、124bの軸部が貫通することのできる貫通穴121h、122hを設けておき、当該貫通穴121h、122hにボルト123b、124bの軸部を貫通させて締付治具123n、124nによって固定する。
【0057】
締付治具123n、124nの締付度合いによって第1板状部材121と第2板状部材122との間隔、すなわち、互いに向かい合う第1板状部材121の面と第2板状部材122の面との距離を調整することができる。締付治具123n、124nの締付度合いは、ステッピングモータ等の機械制御によって調節する。このような構成により、挟持部120は、第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を狭めることによって、その間に挟持されたアセンブリ90に押圧力F1を付与する。
【0058】
挟持部120としては、アセンブリ90に押圧力F1を付与可能な硬さを備える材料から選択される。弾性体110よりも硬い材料から構成されることが好ましく、例えば、フェノール樹脂等の樹脂や金属などが挙げられる。
【0059】
保持部130は、
図5(B)に示すように、外装体80の一の端部81に対して反対側の他の端部82よりも上側に開口部81hを位置させる状態に、アセンブリ90を保持する。本実施形態では、保持部130は、水平面から所定の傾斜角θだけ傾斜した傾斜台131と、傾斜台131に配置したアセンブリ90が意図しない方向へ移動しないように支持する支持部材132とを有する。
図5(B)に示すように、傾斜台131は、側面が三角形状であり、床面に接する面(水平面)から傾斜角θだけ傾斜した傾斜面を有する。当該傾斜面の下端には、当該傾斜面に対してほぼ垂直方向に板状の支持部材132が延在している。アセンブリ90は、開口部81hが上方に位置するように、傾斜面に配置される。傾斜角θは、0(ゼロ)度より大きく90度以下であることが好ましく、より好ましくは20〜70度である。このように鋭角に傾斜させることによって効率的に電極40中のガスを排出させることができる。この原理については、後述する。
【0060】
減圧部140は、アセンブリ90、弾性体110、第1板状部材121および第2板状部材122を内部に配置して密閉状態にする真空容器141と、真空容器141内の空気を吸引して減圧する真空ポンプ142と、を有する。真空容器141は、内部を減圧されることによって容易に変形しない材料によって構成され、真空容器141内の容積は減圧後もほぼ一定に保たれる。
【0061】
切断部150は、
図6に示すように切断刃を備えるカッターによって構成され、外装体80の一部を切断して孔部85hを形成する。これにより、サブアセンブリ91を形成する。初期充電によって発生したガスは、当該孔部85hから外装体80の外部に排出される。
【0062】
制御部160は、製造装置100全体の動作を制御する。具体的には、制御部160は、ROMやRAMから構成された記憶部と、CPUを主体に構成された演算部と、各種データや制御指令の送受信を行う入出力部と、を有する。入出力部は、挟持部120、減圧部140、切断部150等に電気的に接続している。記憶部は、アセンブリ90、弾性体110、第1板状部材121および第2板状部材122の板厚や形状、傾斜角θ等のデータを記憶する。演算部は、記憶部から読み出したデータおよび入出力部から受信したデータに基づいて、第1板状部材121と第2板状部材122との間隔、真空容器141内の圧力等を算出する。算出したデータに基づく制御信号は、入出力部を介して減圧部140、切断部150等へ送信される。このようにして、制御部160は、アセンブリ90の押圧動作、真空容器141内の減圧動作や外装体80の切断動作等を制御する。
【0063】
(二次電池の製造方法)
本発明の実施形態に係る二次電池10の製造方法は、概説すれば、
図7に示すように、アセンブリ90を形成する工程(ステップS1)と、発電要素20の内部のガスを排出する工程(ステップS2〜S6)と、開口部81hを封止する工程(ステップS7)と、初期充電後に発電要素20から発生するガスを排出する工程(ステップS8〜S10)と、から構成される。以下、各工程について詳細に説明する。
【0064】
アセンブリ90を形成する工程(ステップS1)は、
図8に示すように、電極40を形成する工程(ステップS101〜S103)と、発電要素20を形成する工程(ステップS104、S105)と、外装体80によって発電要素20を内包する工程(ステップS106)と、開口部81hを形成する工程(ステップS107)と、を有する。
【0065】
電極40を形成する工程(ステップS101〜S103)は、構造体を準備する工程(ステップS101)と、スラリーを塗布する工程(ステップS102)と、被覆活物質68を充填する工程(ステップS103)とを含む。
【0066】
まず、ステップS101として、導電部材64を含み、その中に複数の空隙を有し、第1面61a、61bと第2面62a、62bを備えた構造体を準備する。
【0067】
構造体としては、導電性繊維からなる導電部材64を含む不織布、導電性繊維からなる導電部材64を含む織物もしくは編物、または、導電化処理された樹脂からなる導電部材64を含む発泡樹脂を用いることが好ましい。
【0068】
次に、ステップS102として、被覆活物質68を含むスラリーを、構造体の第1面61a、61bまたは第2面62a、62bに塗布する。活物質63は、被覆剤67によって被覆され、被覆活物質68となっている。
【0069】
活物質63を含むスラリーは、溶剤を含む溶剤スラリーであるか、電解液を含む電解液スラリーであることが好ましい。
【0070】
溶剤としては、水、プロピレンカーボネート、1−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン)、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンおよびテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0071】
スラリーは、被覆活物質68と、必要により導電助剤66とを、溶剤または電解液の重量に基づいて10〜60重量%の濃度で分散してスラリー化することにより調製することが好ましい。
【0072】
被覆活物質68を含むスラリーは、構造体の第1面61a、61bまたは第2面62a、62bにバーコーター、刷毛等の任意の塗工装置を用いて塗布することができる。
【0073】
続いて、ステップS103として、加圧または減圧して被覆活物質68を構造体中の空隙に充填する。これにより、電極40が形成される。
【0074】
加圧操作の方法としては、スラリーの塗布面の上からプレス機を用いてプレスする方法が挙げられる。また、減圧操作の方法としては、構造体にスラリーが塗布されていない側の面に濾紙やメッシュ等を当てて、真空ポンプにより吸引する方法が挙げられる。
【0075】
構造体には空隙があるため、加圧または減圧操作により被覆活物質68を構造体中の空隙に充填することができる。
【0076】
被覆活物質68を含むスラリーが溶剤を含む溶剤スラリーである場合、後に、溶剤を留去する工程をさらに行うことが好ましい。
【0077】
また、被覆活物質68を含むスラリーが、電解液を含む電解液スラリーである場合、構造体中の空隙は、被覆活物質68および電解液で満たされることになり、リチウムイオン電池用電極として好ましい構成となる。ただし、電極40または電解質層70に含まれる電解液は、ゲル化剤によって、ゲル化させてもよい。
【0078】
さらに、膜上に定着された被覆活物質68を、集電体50の一方の面に転写して、電極40を形成する。膜が導電性材料からなり、集電体50として膜を用いる場合、膜とは反対側の面をセパレータの面に接触させて転写させることが好ましい。また、膜を集電体50として用いない場合は、転写を行った後に、膜を剥離する工程を行うことが好ましい。
【0079】
次に、ステップS104として、電極40および電解質層70を
図2に示すように積層して単電池層30を形成する。
【0080】
次に、ステップS105として、単電池層30を複数積層して発電要素20を形成する。
【0081】
次に、ステップS106として、内部に金属板を備え長尺に形成した一対のラミネートシートである外装体80を準備する。ラミネートシートによって、発電要素20における対向する面21、22を積層方向に沿った両側から挟持するように被覆して、発電要素20を内包する。
【0082】
最後に、ステップS107として、
図4(A)に示すように、発電要素20の外側に位置する外装体80の周囲を、一部を隔てて融着する。具体的には、発電要素20の外周面の一つの面23に臨む一の端部81を除く、他の端部82、83、84(
図4(A)中の破線で囲まれた部分)を融着する。当該融着しない一の端部81は、発電要素20の内部のガスを外装体80の外部へ排出するための連通孔である開口部81hを形成する。このようにして、アセンブリ90が形成される。
【0083】
次に、発電要素20の内部のガスを排出する工程について説明する。発電要素20の内部のガスを排出する工程(ステップS2〜S6)は、弾性体110を配置する工程(ステップS2)と、挟持部120によって挟持する工程(ステップS3)と、アセンブリ90を傾斜させる工程(ステップS4)と、アセンブリ90の雰囲気を減圧する工程(ステップS5)と、アセンブリ90を押圧する工程(ステップS6)と、を有する。
【0084】
まず、ステップS2として、発電要素20の面21側に位置するアセンブリ90の片面に、弾性体110の面が発電要素20の外面の全体を覆うように外装体80を隔てて弾性体110を重ね合わせる。
【0085】
次に、ステップS3として、弾性体110の外面に接するように配置された第1板状部材121と、外装体80の外面に接するように配置された第2板状部材122とによって弾性体110を配置したアセンブリ90を挟持する。
図5(A)に示すように、互いに向かい合う第1板状部材121の面および第2板状部材122の面が、弾性体110および外装体80の面に向かい合うように配置する。
【0086】
次に、ステップS4として、弾性体110、挟持部120によって挟持されたアセンブリ90を傾斜台131に配置する。これにより、外装体80の一の端部81に対して反対側の他の端部82よりも上側に開口部81hを位置させる状態に、アセンブリ90を保持する。アセンブリ90の下端(他の端部に相当)82は、支持部材132によって支持されるため、アセンブリ90が不用意に移動することがない。傾斜台131の傾斜角θに応じてアセンブリ90を傾斜させることができる。
【0087】
次に、ステップS5として、真空容器141の内部にアセンブリ90、弾性体110、挟持部120を配置して密閉状態にする。その状態で、真空ポンプ142によって真空容器141内の空気を吸引して減圧する。これにより、アセンブリ90の雰囲気を減圧する。
【0088】
次に、ステップS6として、アセンブリ90の雰囲気を減圧しながら、挟持部120によってアセンブリ90を下端82から上端(一の端部に相当)81へ向かって増加する押圧力F
1を付与する。このとき、アセンブリ90は、弾性体110を介して押圧力F
1を受ける。弾性体110は、挟持部120によって圧縮されて変形して反発弾性力を生じる。弾性体110は、アセンブリ90の表面の凹凸に沿って変形して面方向に均一に接触する。これにより、弾性体110の反発弾性力によってアセンブリ90の面方向にほぼ均一に電極40に押圧力F
1を付与することができる。以下、押圧力F
1を付与する方法について、
図5を参照しながら詳述する。
【0089】
まず、
図5(B)に示すように、外装体80の開口部81h側の第1板状部材121および第2板状部材122の端部に第2調整部124を取り付け、開口部81hとは反対側の第1板状部材121および第2板状部材122の端部に第1調整部123を取り付ける。このとき、第1板状部材121と第2板状部材122との間隔は、第1調整部123側の間隔d1よりも第2調整部124側の間隔d2が大きくなるように締付治具123n、124nの締付度合いを調整する。
【0090】
次に、
図5(C)に示すように、第2調整部124の締付治具124nを締付けて間隔d2を徐々に狭めて、下端82から上端81へ向かって第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を狭める。挟持部120は、その間に挟持された弾性体110およびアセンブリ90を押圧する。したがって、下端82から上端81へ向かって弾性体110とアセンブリ90との接触面積が増加する。これによって、下端82から上端81へ向かってアセンブリ90に付与される押圧力F
1が増加する。また、電極40の内部のガスに下端82から上端81へ移動させる浮力F
2が働く。このため、ガスを電極40の上端81へ排出させることができる。
【0091】
次に、ステップS7として、アセンブリ90の開口部81hを形成していた外装体80の一の端部81を融着して封止する。
【0092】
次に、初期充電後に発電要素20から発生するガスを排出する工程について説明する。初期充電後に発電要素20から発生するガスを排出する工程(ステップS8〜S10)は、初期充電工程(ステップS8)と、孔部85hの形成(サブアセンブリ91の形成)工程(ステップS9)と、孔部85hの封止工程(ステップS10)と、を有する。
【0093】
まず、ステップS8として、二次電池10に電気的に接続された充放電装置(図示せず)によって、初期充電を行う。初期充電により、二次電池10内にはガスが発生する。
【0094】
次に、ステップS9として、
図6に示すように切断部150によって外装体80の一部を切断して外装体80の内部と外部を連通する孔部85hを形成する。これにより、サブアセンブリ91が形成される。当該孔部85hから二次電池10内に発生したガスを排出させる。ガスの排出においては、発電要素20の内部のガスを排出する工程(ステップS2〜S6)と同様に板状の部材等を用いて二次電池10に押圧力を付加してもよい。
【0095】
次に、ステップS10として、孔部85hを融着して封止する。これにより、初期充電によって発生する二次電池10のガスの排出が完了する。
【0096】
続いて、
図9を参照して、製造装置100によって電極40の内部からガス(気泡g)を排出させる原理について説明する。なお、
図9中の矢印Xは、外装体80の下端82から上端81へ向かう方向を示し、矢印Yは、挟持部120によって押圧力F
1が付与される方向を示す。
【0097】
図9は、実施形態に係る製造方法および製造装置100によって電極40の内部から気泡gを排出する様子を表した概念図である。雰囲気は減圧部140によって減圧された状態にあり、挟持部120によって電極40に対してほぼ垂直方向(矢印Y方向)に押圧力F
1が付与されている。前述したように矢印Y方向へ向かってアセンブリ90に付与される押圧力F
1は増加する。また、電極40内部は、電解液によって満たされているため、すべての気泡gには浮力F
2が働いている状態である。気泡gはこの電解液中を移動する。
【0098】
図9(A)は、傾斜角θを30度、
図9(B)は、傾斜角θを90度、
図9(C)は、傾斜角θを0度、としたときの電極40内を気泡gが移動する様子を示している。
【0099】
図9(A)に示すように、傾斜角θが0(ゼロ)度より大きく90度より小さい、例えば、30度の場合、浮力F
2が上方向に働くため、気泡gは上方向に移動して電極40の内表面に集まり、連結して拡大し、大きな気泡gが形成される。浮力F
2には、電極40の端部へ向かう方向であるX方向の成分が存在するため、気泡gに浮力F
2によるX方向の力が働く。さらに、大きな気泡gは、小さな気泡gに比べて体積が大きいため、気泡gに働く浮力F
2が増加する。また、電極40の内表面に集まった気泡gには、浮力F
2に加えて矢印Y方向へ向かう押圧力F
1が働く。
【0100】
気泡gは、浮力F
2および押圧力F
1によって電極40の内表面を伝って電極40の端部へ向かう方向に移動する。電極40の端部は、開口部81hを介して外装体80の外部と連通しているため、気泡gは開口部81hから外装体80の外部へ排出される。このように、気泡gに対して押圧力F
1および浮力F
2が協働して効果的に働くため、電極40内の気泡gをより効率的に排出することができる。
【0101】
図9(B)に示すように、傾斜角θが90度の場合、30度の場合と同じく気泡gは、矢印Y方向へ働く押圧力F
1と、浮力F
2とによって上方向(矢印X方向)に移動して電極40の端部から外部へ排出される。しかしながら、電極40の端部へ移動するまで気泡gが集まることがないため、大きな気泡gが形成されにくい。また、電極40の端部付近の気泡gは抜けやすいため、電極40の端部に生じる電解液の表面張力によって気泡gの連結による電極40の外部との連通路が形成されにくくなる。したがって、30度の場合に比べて、気泡gは排出されにくくなる。
【0102】
図9(C)に示すように、傾斜角θが0(ゼロ)度の場合、浮力F
2が上方向に働くため、気泡gは上方向に移動して電極40の内表面に集まり連結して拡大して大きな気泡gが形成される。しかしながら、浮力F
2のX方向の成分がゼロなので、気泡gには、電極40の端部へ向かう方向に働かない。したがって、30度および90度の場合に比べて、気泡gは排出されにくくなる。
【0103】
以上説明した原理により、傾斜角θは、0(ゼロ)度より大きく90度以下であることが好ましく、より好ましくは20〜70度である。このように鋭角に傾斜させることによって効率的に電極40中の気泡gを排出させることができる。
【0104】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る二次電池10の製造方法は、アセンブリ90を形成し(ステップS1)、弾性体110を配置し(ステップS2)、挟持部120によって弾性体110を配置したアセンブリ90を挟持する(ステップS3)。次に、外装体80の一の端部81に対して反対側の他の端部82よりも上側に開口部81hを位置させる状態に、アセンブリ90を保持し(ステップS4)、アセンブリ90の雰囲気を減圧しながら(ステップS5)、他の端部82から一の端部81へ向かって順次、第1板状部材121と第2板状部材122との間の間隔を狭めてアセンブリ90の内部のガスを開口部81hから排出する(ステップS6)。
【0105】
このように構成した二次電池10の製造方法によれば、他の端部82から一の端部81へ向かって第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を狭めることによって、開口部81hへ向かって電極40内のガスを押し出す方向に向かって徐々に押圧力F
1を増加させることができる。また、弾性体110を介して押圧することによって、電極40に対して押圧力F
1がかかる面積が増えるため、より均一に全体を押圧することができ、電極40の変形を抑制することができる。さらに、アセンブリ90を傾斜させることによって電極40内のガスに開口部81hへ向かう上方向の浮力F
2が働く。ガスが開口部81hへ向かう方向に押圧力F
1と浮力F
2を同時にかけることにより、電極40内のガスを効率的に排出することができる。
【0106】
また、アセンブリ90を傾斜させる際に、水平面に対する傾斜角θは20〜70度である。これにより、外部から働く押圧力F
1と傾斜させた状態における上方向の浮力F
2が協働して効果的に働くため、電極40内のガスをより効率的に排出することができる。
【0107】
また、弾性体110は、独立気泡構造のスポンジによって形成される。独立気泡構造のスポンジである弾性体110は、アセンブリ90の表面の凹凸に沿って変形して面方向に均一に接触する。これにより、弾性体110の反発弾性力によってアセンブリ90の面方向にほぼ均一に電極40に押圧力F
1をかけることができる。
【0108】
また、ガスを排出した後に、開口部81hを接合して閉じて初期充電し(ステップS8)、外装体80の一部を切断して孔部85hを形成し(ステップS9)、アセンブリ90の内部のガスを孔部85hから排出し、孔部85hを封止する(ステップS10)。ガスの排出においては、発電要素20の内部のガスを排出する工程(ステップS2〜S6)と同様に板状の部材等を用いて二次電池10に押圧力を付加する。これにより、初期充電によって発生するガスを効率的に排出させることができるため、二次電池10の性能特性を向上させることができる。
【0109】
また、電極40の正極40aおよび負極40bの少なくとも一方の活物質層60が、厚さが150〜1500μmである。電極40の膜厚を厚くすることによって、集電体50やセパレータの相対的な割合を減少させることができ、エネルギー密度を向上させることができる。また、このような膜厚の厚い電極40は、柔らかく変形しやすいため、ローラによって電極の表面を押圧して電極40中のガスを排出させる場合に比べて、電極40の変形を抑制しながら、効果的に電極40内のガスを排出させることにより二次電池10の性能特性を向上させることができる。
【0110】
本発明の実施形態に係る二次電池10の製造装置100は、弾性体110と、弾性体110を配置した外装体80を挟持する挟持部120と、外装体80の一の端部81に対して反対側の他の端部82よりも上側に開口部81hを位置させる状態に、アセンブリ90を保持する保持部130と、アセンブリ90の雰囲気を減圧可能な減圧部140と、第1板状部材121と、第2板状部材122と、減圧部140の作動を制御する制御部160と、を有する。制御部160は、アセンブリ90の雰囲気を減圧するように減圧部140の作動を制御しつつ、第1板状部材121と第2板状部材122との作動を制御して、開口部81hが位置する端部と反対側の外装体80の端部から開口部81hへ向かって、第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を狭める。
【0111】
このように構成した二次電池10の製造装置100によれば、他の端部82から一の端部81へ向かって第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を狭めることによって、電極40内のガスを開口部81hへ向かって押し出す方向に押圧力F
1を付与することができる。また、弾性体110を介して押圧することによって、電極40に対して押圧力F
1がかかる面積が増えるため、より均一に全体を押圧することができ、電極40の変形を抑制することができる。さらに、アセンブリ90を傾斜させることによって電極40内のガスに開口部81hへ向かう上方向の浮力F
2が働く。ガスが開口部81hへ向かう方向に押圧力F
1と浮力F
2を同時にかけることにより、電極40内のガスを効率的に排出することができる。
【0112】
また、保持部130は、水平面に対する傾斜角θが20〜70度となるようにアセンブリ90を傾斜させる。これにより、外部から働く押圧力F
1と傾斜させた状態における上方向の浮力F
2が協働して効果的に働くため、電極40内のガスをより効率的に排出することができる。
【0113】
また、弾性体110は、独立気泡構造のスポンジによって形成される。これにより、独立気泡構造のスポンジである弾性体110を介して、アセンブリ90を押圧することによって、外装体80表面の多少の凹凸にかかわらずに、面方向にほぼ均一に電極40に押圧力F
1をかけることができる。
【0114】
外装体80の一部を切断して孔部85hを形成する切断部150をさらに有する。これにより、初期充電後に切断部150によって外装体80にガスを抜くための孔部85hを形成することができる。初期充電によって新たに発生するガスを排出させることができるため、二次電池10の性能特性を向上させることができる。
【0115】
また、電極40の正極40aおよび負極40bの少なくとも一方の活物質層60が、厚さが150〜1500μmである。電極40の膜厚を厚くすることによって、集電体50やセパレータの相対的な割合を減少させることができ、エネルギー密度を向上させることができる。このような膜厚の厚い電極40は、製造時にその内部にガスが溜まりやすいため、本発明の実施形態に係る製造装置100によって効果的にガスを排出させることにより二次電池10の性能特性を向上させることができる。
【0116】
(変形例)
図10は、実施形態の変形例に係る製造装置200は、挟持部220および減圧部240の構成が前述した実施形態と異なり、他の構成は前述した実施形態と実質的に同様である。以下、前述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0117】
挟持部220は、前述した実施形態と同様に、弾性体110を配置したアセンブリ90を挟持する第1板状部材221および第2板状部材222を有する。
図10(A)に示すように、挟持部220は、第1板状部材221および第2板状部材222の端部221a、222aを所定の間隔d
0に維持する維持部材223と、第1板状部材221の端部221aを中心として回動可能に設けられた蝶番224とを有する。また、第1板状部材221および第2板状部材222の端部221b、222bの間隔が最小になるときの長さが維持部材223と同じ間隔d
0となるように制限するストッパー225をさらに有する。
【0118】
減圧部240は、前述した実施形態における真空容器141の代わりとなる袋状の真空バッグ241と、真空バッグ241内の空気を吸引して減圧する真空ポンプ242とを有する。
図10(A)に示すように、真空バッグ241は、弾性体110、第1板状部材221および第2板状部材222の全体を覆って密閉状態にする。
【0119】
図7に示す減圧工程(ステップS5)において、真空バッグ241内を減圧することで真空バッグ241が収縮する。
図10(B)に示すように、真空バッグ241の内側を第1板状部材221および第2板状部材222の外面に密着させる。このとき、真空バッグ241周りには大気圧P
0がかかるため、第1板状部材221および第2板状部材222に対して外側から圧迫力F
3が付与される。これにより、第1板状部材221は、この圧迫力F
3によって蝶番224周りを回動する。
【0120】
第1板状部材221が蝶番224周りを回動することによって、第1板状部材221と第2板状部材222との間隔が徐々に狭まる。第1板状部材221と第2板状部材222との間隔が最も狭まった状態において、第1板状部材221および第2板状部材222の端部221b、222bの間隔は、ストッパー225によって間隔d
0となるように制限される。第1板状部材221および第2板状部材222の端部221a、222aの間隔は、維持部材223によって間隔d
0に維持されているため、第1板状部材221および第2板状部材222の間隔が一定になる。これにより、アセンブリ90は、均一な厚さに押圧される。このように、減圧工程(ステップS5)を実施することによって挟持部220によるアセンブリ90の押圧工程(ステップS6)が同時に実施される。
【0121】
変形例に係る二次電池10の製造方法によれば、第1板状部材221、第2板状部材222および弾性体110を配置したアセンブリ90を、真空バッグ241によって覆い、真空バッグ241の内部を減圧することによってアセンブリ90の雰囲気を減圧する。真空バッグ241の内部が減圧されることによって外部から大気圧P
0による圧迫力F
3がかかる。この圧迫力F
3によって第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を狭める方向に押圧されて間隔が徐々に狭まる。これにより、真空バッグ241の内部を減圧することによって減圧工程(ステップS5)およびアセンブリ90の押圧工程(ステップS6)の動作を一度に行うことができるため作業効率が高くなる。また、減圧を行いながらアセンブリ90を押圧するという動作を同時に行うことができるため、電極40内のガスをより一層排出しやすくなる。
【0122】
変形例に係る二次電池10の製造装置200によれば、減圧部240は、袋状の真空バッグ241を有する。制御部160は、減圧部240の作動を制御して真空バッグ241の内部を減圧する。真空バッグ241の内部が減圧されることによって外部から大気圧P
0による圧迫力F
3がかかる。この圧迫力F
3によって第1板状部材121と第2板状部材122との間隔を狭める方向に押圧されて間隔が狭まる。これにより、真空バッグ241の内部を減圧することによって減圧工程(ステップS5)およびアセンブリ90の押圧工程(ステップS6)の動作を一度に行うことができるため作業効率が高くなる。また、減圧を行いながらアセンブリ90を押圧するという動作を同時に行うことができるため、電極40内のガスをより一層排出しやすくなる。
【0123】
以上、実施形態および変形例を通じて二次電池およびその製造方法を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0124】
例えば、二次電池の製造装置は、第1板状部材と第2板状部材との間隔を調整可能な調整部を備える挟持部と、真空バッグを備える減圧部と、を有する構成であってもよい。これにより、挟持部によってアセンブリに対する押圧力を調整可能になるとともに、真空バッグによってアセンブリにさらに圧迫力を付与することができる。これにより、さらに効果的に電極内のガスの排出が行える。
【0125】
また、並列積層型の二次電池を例に挙げて本発明の実施形態を説明したが、本発明が適用可能な非水電解質電池の種類は特に制限されず、発電要素において単電池層が直列接続されてなる形式のいわゆる直列積層型電池などの従来公知の任意の二次電池に適用可能である。
【0126】
また、二次電池の製造装置において、弾性体は、アセンブリの一方の面に設けられるとしたが、アセンブリを挟持するように他方の面にさらに弾性体を設けてもよい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。また、実施例では、発明の効果を検証するために単電池を用いて実験を行った。前述した実施形態において、開口部は外装体に設けられるとして説明した。実施例においては、本発明の効果を検証するため、各電極周りに隙間を隔ててシール部材を塗布することによって、当該隙間に開口部を形成した。なお、「部」は特に断りのない限り、「質量部」を意味する。
【0128】
〈樹脂集電体の作製〉
二軸押出機にて、ポリプロピレン(PP)(商品名「サンアロマー(登録商標)PL500A」、サンアロマー株式会社製)75質量%、アセチレンブラック(AB)(商品名「デンカブラック(登録商標)NH−100」、電気化学工業株式会社製)、20質量%、および分散剤(商品名「ユーメックス(登録商標)1001」、三洋化成工業株式会社製)5質量%を、180℃、100rpm、滞留時間10分の条件で溶融混練し樹脂集電体用材料を得た。得られた樹脂集電体用材料を、熱プレス機により圧延することで、厚さ100μmの樹脂集電体(「20%AB−PP」とも称する)を得た。
【0129】
〈被覆用樹脂溶液の作製〉
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、酢酸エチル83部とメタノール17部とを仕込み68℃に昇温した。
【0130】
次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2−エチルヘキシルメタクリレート242.8部、酢酸エチル52.1部およびメタノール10.7部を配合したモノマー配合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.263部を酢酸エチル34.2部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.583部を酢酸エチル26部に溶解した開始剤溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて連続的に追加した。さらに、沸点で重合を4時間継続した。溶媒を除去し、樹脂582部を得た後、イソプロパノールを1,360部加えて、樹脂濃度30重量%のビニル樹脂からなる被覆用樹脂溶液を得た。
【0131】
〈被覆正極活物質粒子の作製〉
LiCoO
2粉末(日本化学工業(株)製 セルシードC−8G)96重量部を万能混合機に入れ、室温(25℃)、150rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)を樹脂固形分として2重量部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
【0132】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]2重量部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、100mmHgまで減圧し30分保持した。上記操作により被覆正極活物質を得た。
【0133】
〈被覆負極活物質粒子の作製〉
同様にしてハードカーボン(HC)微粒子(クレハケミカル製)84部に、アセチレンブラック12部を被覆用樹脂(4部)溶液を用いてコートしたものを得た。
【0134】
<正極の作製>
炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)を導電部材として準備した。
【0135】
上記炭素繊維1.75重量部および被覆正極活物質粒子98.25重量部を1.0M LiPF
6をエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比3:7)に溶解した溶液に混合して、スラリーを作製した。上記樹脂集電体上に、電極の形状のマスクを置いて、スキージ法で、電極を塗布した。
【0136】
〈負極の作製〉
炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)を導電部材として準備した。
【0137】
上記炭素繊維1.75重量部及び被覆負極活物質粒子98.25重量部を1.0M LiPF
6をエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比3:7)に溶解した溶液に混合して、スラリーを作製した。上記樹脂集電体上に、電極の形状のマスクを置いて、スキージ法で、電極を塗布した。
【0138】
<電池の作製>
[実施例1]
上記で作製した負極の面上に、ポリプロピレンの多孔質膜を置き、1辺を除く3辺の周縁にあらかじめプライマーを塗っておき、そこにエポキシ系の接着剤を塗布しておく。対向する正極の部分にも1辺を除く3辺の周縁にあらかじめプライマーおよび接着剤を塗布しておく。接着剤を塗っていない部分は、前述した実施形態における開口部として機能する。当該開口部は、減圧ガス抜き後ヒートシールできる構造とした。
【0139】
本実施例では、
図10に示した二次電池の製造装置を用いる。上記で作製した正極上にアラミドセパレーターを被せて、上下反転して、所定量の電解液を注入した負極の上に滑らせて重ねて単電池を形成した。当該単電池の一方の面にスポンジ(弾性体)を介して、全体をフェノール樹脂板(板状部材)によって挟持して組立体を形成した。当該組立体を単電池の開口部が上方に位置するように、傾斜角を30度として水平面から傾斜させて固定した。次に、真空バッグで全体を覆い、減圧して、板状部材が十分閉じた段階で、開口部をヒートシールした。
【0140】
[実施例2]
実施例1で傾斜角を40度にした以外は、同様にして単電池を作製した。
【0141】
[実施例3]
実施例1で傾斜角を20度にした以外は、同様にして単電池を作製した。
【0142】
[実施例4]
実施例1で傾斜角を70度にした以外は、同様にして単電池を作製した。
【0143】
[実施例5]
実施例1で傾斜角を90度にした以外は、同様にして単電池を作製した。
【0144】
[比較例1]
実施例1で、真空バッグを真空容器にして、フェノール樹脂板、スポンジをなくして傾斜角を0(ゼロ)度にして同様にして単電池を作製した。
【0145】
[比較例2]
実施例1で傾斜角を0度にした以外は実施例1と同様にして単電池を作製した。
【0146】
<結果>
実施例1〜5、および比較例1、2によって製造した二次電池について、0.1CのCC−CVにて15時間充電し、0.1Cで放電して、そのときの放電容量を、実施例1を100として結果を表1にまとめた。
【0147】
相対放電容量が90%より大きい場合、すなわち、実施例1に対して相対放電容量の低下が10%未満であれば実用上問題のない性能が得られる。表からわかるように、弾性体および板状部材によって単電池を挟持して、傾斜角20〜90度に保持すると、電極内のガスが排出されて相対放電容量が90%より大きな単電池を製造できることが分かった。また、傾斜角90度に比べて、傾斜角20〜70度とすると相対放電容量さらに大きな単電池を製造できることが分かった。つまり、傾斜角20〜90度に保持した二次電池は、実用上問題のない性能が得られる。さらに、傾斜角20〜70度に保持した二次電池は、より高い性能が得られることが分かった。
【0148】
【表1】