(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598248
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】金属シール部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 3/04 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
F16J3/04 B
F16J3/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-535621(P2015-535621)
(86)(22)【出願日】2015年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2015052677
(87)【国際公開番号】WO2016121098
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233745
【氏名又は名称】入江工研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】西岡 勝志
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−054294(JP,U)
【文献】
特開2003−329133(JP,A)
【文献】
特開2014−118206(JP,A)
【文献】
特開平09−292035(JP,A)
【文献】
特開2009−008184(JP,A)
【文献】
特開昭63−317256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/00− 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状の薄板金属材から長さの異なる金属板を切断し、径方向の端面同士を溶接して径の異なる複数個の金属パイプを製作した後、この金属パイプをテーパー型で型押し加工してテーパーワッシャーとし、内側のテーパーワッシャーの外弧部分と外側のテーパーワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法。
【請求項2】
一枚の薄板金属材から径が異なる複数枚の同軸扇形状の金属ワッシャー材を同一の径方向寸法で連続的に切断し、各金属ワッシャー材の径方向端面同士を溶接して複数個のテーパー筒状の金属ワッシャーを成形した後、内側の金属ワッシャーの外弧部分と外側の金属ワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法。
【請求項3】
一枚の薄板金属材から一枚の扇形状の金属パイプ材を切断し、金属パイプ材の径方向端面同士を溶接して一本のテーパー筒状の金属パイプを成形した後、金属パイプを同一の径方向寸法で連続的に切断して口径が異なる複数個のテーパー筒状の金属ワッシャーを成形し、内側の金属ワッシャーの外弧部分と外側の金属ワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法。
【請求項4】
一枚の薄板金属材から一枚の長方形状の金属パイプ材を切断し、金属パイプ材の端面同士を溶接して一本の筒状の金属パイプを成形した後、金属パイプをテーパー型で型押し加工し、型押し加工された金属パイプを同一の径方向寸法で連続的に切断して口径が異なる複数個のテーパー筒状の金属ワッシャーを成形し、内側の金属ワッシャーの外弧部分と外側の金属ワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば真空断熱管や真空断熱容器における内壁と外壁との間の熱影響差による収縮・膨張誤差を吸収し及び小面間で大きな角度変位を吸収することができる金属シール部品
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液化燃料の開発進歩に伴い、低温流体の配管や容器が必要となり、真空断熱の技術が活用され始めている。また、液化燃料の大量送給、大量輸送の技術進歩から、配管や容器の大型化も進んでいる。
【0003】
このような液化燃料の容器として、下記の特許文献1には液化ガス用輸送容器の発明が記載されている。この液化ガス用輸送容器は、液化ガスを収容する金属製の内槽と、これを包囲する金属製の外槽とからなる金属製容器であり、内槽と外槽との間に形成された内外槽間領域が真空断熱層になっている。また、内槽と外槽との間は可撓性を有する遮断部材でシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−118206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような液化ガス用輸送容器において、金属製の内槽の内部には液化ガスとして例えば液体水素や液化天然ガス等のように液化温度の低い低温流体が収容されるため、低温流体によって冷却された内槽が収縮変形する。これに対し、外槽は冷却された内槽よりも温度が高くなっている。このため、両者の熱影響差により内径に収縮誤差が生じ、内槽と外槽との間をシールする遮断部材が応力で剥がれ、真空断熱層に漏れが発生するといった問題があった。この問題は、内槽の内部に高温流体を収容し、高温流体によって加熱された内槽が膨張変形した場合にも同様に発生し得る。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、熱影響差による収縮・膨張誤差を吸収することができる金属シール部品
の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、径が異なる金属製のテーパー筒状部を複数備え、径方向に複数山のベローズが設けられており、当該ベローズを構成する各々のテーパー筒状部の断面形状が波状に形成されている
とともに、各テーパー筒状部の端面同士が溶接による接合部とされていることを特徴とする金属シール部品である。
【0012】
前記の目的を達成するため、本願の請求項
1に係る発明は、コイル状の薄板金属材から長さの異なる金属板を切断し、径方向の端面同士を溶接して径の異なる複数個の金属パイプを製作した後、この金属パイプをテーパー型で型押し加工してテーパーワッシャーとし、内側のテーパーワッシャーの外弧部分と外側のテーパーワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法である。
【0013】
また、本願の請求項
2に係る発明は、一枚の薄板金属材から径が異なる複数枚の同軸扇形状の金属ワッシャー材を同一の径方向寸法で連続的に切断し、各金属ワッシャー材の径方向端面同士を溶接して複数個のテーパー筒状の金属ワッシャーを成形した後、内側の金属ワッシャーの外弧部分と外側の金属ワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法である。
【0014】
また、本願の請求項
3に係る発明は、一枚の薄板金属材から一枚の扇形状の金属パイプ材を切断し、金属パイプ材の径方向端面同士を溶接して一本のテーパー筒状の金属パイプを成形した後、金属パイプを同一の径方向寸法で連続的に切断して口径が異なる複数個のテーパー筒状の金属ワッシャーを成形し、内側の金属ワッシャーの外弧部分と外側の金属ワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法である。
【0015】
また、本願の請求項
4に係る発明は、一枚の薄板金属材から一枚の長方形状の金属パイプ材を切断し、金属パイプ材の端面同士を溶接して一本の筒状の金属パイプを成形した後、金属パイプをテーパー型で型押し加工し、型押し加工された金属パイプを同一の径方向寸法で連続的に切断して口径が異なる複数個のテーパー筒状の金属ワッシャーを成形し、内側の金属ワッシャーの外弧部分と外側の金属ワッシャーの内弧部分とを溶接することにより、径方向に複数山のベローズが設けられた金属シール部品を製造することを特徴とする金属シール部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内壁部と外壁部との間に金属シール部品を取り付けることにより、熱影響差によって収縮または膨張しても、径方向及び軸方向に伸縮するベローズの動きによって中心軸の角度変位を吸収することができ、その誤差が吸収される。また、ベローズを金属製としたことにより内外圧力差に対する強度が確保される。したがって、内容器の収縮または膨張が外容器に伝達することを軽減し、内外接続部分の接続応力を緩和しつつ内容器と外容器の間の開口部を確実にシールすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の金属シール部品を真空断熱容器の構成部品として適用した例を示す断面図である。
【
図2】同金属シール部品が取り付けられた真空断熱容器の要部拡大図である。
【
図4】現有伸縮金属ベローズの可動範囲を示す説明図である。
【
図5】本発明の金属シール部品の変位吸収作用を示す説明図である。
【
図6】本発明における金属シール部品の第1の製造方法を示す説明図である。
【
図7】本発明における金属シール部品の第2の製造方法を示す説明図である。
【
図8】本発明における金属シール部品の第3の製造方法を示す説明図である。
【
図9】本発明における金属シール部品の第4の製造方法を示す説明図である。
【
図10】本発明の金属シール部品を成形ベローズとした例を示す断面図である。
【
図11】本発明の金属シール部品と金属ベローズを接続して一体化した複合金属シール部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の金属シール部品10は、液化ガスを船舶で輸送する際に使用する金属製の真空断熱容器1の構成部品として適用されている。この真空断熱容器1は、例えば液体水素、液体ヘリウム、液化天然ガス等の液化ガス2を収容する金属製の内容器3と、内容器3を包囲する一回り大きな金属製の外容器4とからなる二重構造になっている。
【0020】
また、内容器3と外容器4は、鉛直方向に同軸上で径が異なる内壁部5と外壁部6を有しており、両者間を金属シール部品10で接続することにより開口部7が密閉されている。そして、内容器3と外容器4の間に形成された内外間領域8は、真空ポンプにより排気されて真空断熱層として機能する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態の金属シール部品10は、径方向に複数山の溶接ベローズ11がドーナツ状に設けられており、径方向に自在に伸縮するように構成されたものである。溶接ベローズ11は、同軸上で互いに径が異なり、かつ、テーパー状に成形された金属製のテーパー筒状部12を複数備えて構成されている。溶接ベローズ11の内外両側にはそれぞれ取付金具9,9が溶接されており、この取付金具9,9を介して内壁部5と外壁部6に取り付け固定される。
【0022】
図3に拡大して示すように、溶接ベローズ11を構成するテーパー筒状部12は、その伝熱路となる断面積をより多く確保するために、波付機によって断面形状が波状に形成されていると良い。また、各テーパー筒状部12,12,…の端面同士は溶接による接合部13,13,…とされており、径方向に沿って山折りと谷折りを交互に繰り返す蛇腹状に成形されている。
【0023】
以上のように構成された真空断熱容器1は、内容器3の内部に高温流体(または低温流体)を貯留した場合、内容器3が加熱(または冷却)され、熱影響により膨張(または収縮)する。しかし、本実施形態では内壁部5と外壁部6の間に溶接ベローズ11を有する金属シール部品10が取り付けられているため、熱影響による膨張(または収縮)が起こっても、径方向及び軸方向に伸縮する溶接ベローズ11の動きによって内壁部5と外壁部6との内径誤差が吸収される。
【0024】
ここで、金属シール部品10の変位吸収作用について説明する。
図4に示すように、フランジに固定された現有伸縮金属ベローズの場合、伸縮に伴う中心の可動領域は点線で示す範囲である。これに対して、本実施形態の金属シール部品10の場合、
図5(a)のように径方向及び軸方向に伸縮する溶接ベローズ11の動きによりX、Y軸方向の変位を吸収するだけでなくZ軸方向の変位を吸収することができる。また、この金属シール部品10は、
図5(b)にθで示すとおり、
図4の現有伸縮金属ベローズよりも大きな角度変位を吸収することができる。さらに、この金属シール部品10は、
図5(c)のように内側フランジ径及び外側フランジ径の熱による膨張(または収縮)を吸収することができる。
【0025】
したがって、この金属シール部品10を取り付けた真空断熱容器1によれば、内容器3の膨張(または収縮)が外容器4に伝達することを軽減し、内外接続部分の接続応力を緩和しつつ開口部7を確実にシールすることができる。また、金属シール部品10の溶接ベローズ11は内容器3及び外容器4よりも薄肉に成形され、かつ、伝熱路を長くする蛇腹状に成形されているため、内容器3の熱が外容器4に伝達するのを効果的に軽減することができる。
【0026】
以上が本実施形態の金属シール部品10の構成及び作用であるが、次にその製造方法を
図6〜9に基づいて説明する。
【0027】
図6に示す第1の方法は、まずコイル状に巻かれた薄板金属材20から長さが異なる複数枚の金属板21,21,…を切断する。次に、各金属板21の径方向端面21a,21b同士を溶接し、径の異なる複数個の金属パイプ22,22,…を製作する。その後、この金属パイプ22をテーパー型で型押し加工し、波付機で波付け加工してテーパーワッシャー23とする。そして、内側のテーパーワッシャー23の外弧部分23aと外側のテーパーワッシャー23の内弧部分23bとを突き合わせ、上下を溶接により接合する。これにより、径方向に複数山の溶接ベローズ11が設けられた金属シール部品10を製造することができる。
【0028】
図7に示す第2の方法は、まず一枚の薄板金属材20から径が異なる複数枚の同軸扇形状の金属ワッシャー材24,24,…を同一の径方向寸法で連続的に切断する。次に、各金属ワッシャー材24の径方向端面24a,24b同士を溶接し、複数個のテーパー筒状の金属ワッシャー25,25,…を成形する。そして、内側の金属ワッシャー25の外弧部分25aと外側の金属ワッシャー24の内弧部分25bとを突き合わせ、溶接により接合する。これにより、径方向に複数山の溶接ベローズ11が設けられた金属シール部品10を製造することができる。
【0029】
また、
図8に示す第3の方法は、まず一枚の薄板金属材20から一枚の扇形状の金属パイプ材26を切断し、この金属パイプ材26の径方向端面26a,26b同士を溶接して一本のテーパー筒状の金属パイプ27を成形する。次に、この金属パイプ27を同一の径方向寸法で連続的に切断し、口径が異なる複数個のテーパー筒状の金属ワッシャー28,28,…を成形する。そして、内側の金属ワッシャー28の外弧部分28aと外側の金属ワッシャー28の内弧部分28bとを突き合わせ、溶接により接合する。これにより、径方向に複数山の溶接ベローズ11が設けられた金属シール部品10を製造することができる。
【0030】
さらに、
図9に示す第4の方法は、一枚の薄板金属材20から一枚の長方形状の金属パイプ材29を切断し、この金属パイプ材29の端面29a,29b同士を溶接して一本の筒状の金属パイプ30を成形する。次に、この金属パイプ30をテーパー型31で型押し加工し、テーパー筒状に型押し加工された金属パイプ30を同一の径方向寸法で連続的に切断し、口径が異なる複数個のテーパー筒状の金属ワッシャー32,32,…を成形する。そして、内側の金属ワッシャー32の外弧部分32aと外側の金属ワッシャー32の内弧部分32bとを突き合わせ、溶接により接合する。これにより、径方向に複数山の溶接ベローズ11が設けられた金属シール部品10を製造することができる。
【0031】
なお、以上説明した実施形態では、金属シール部品10が溶接ベローズ11により構成されているが、これに代えて、
図10に示すような成形ベローズ14により構成されていても良い。また、
図11に示すように、径方向及び軸方向に伸縮可能な溶接ベローズ11を有する金属シール部品10と、これと直交するように軸方向に伸縮可能な金属ベローズ15とを接続して一体化した複合金属シール部品40を構成することもできる。さらには、金属シール部品10を真空断熱容器1のような金属製容器に適用したが、これに限られず、液化ガス輸送管のような金属製二重管に適用しても良い。
【符号の説明】
【0032】
1:真空断熱容器
2:液化ガス
3:内容器
4:外容器
5:内壁部
6:外壁部
7:開口部
8:内外間領域
9:取付金具
10:金属シール部品
11:溶接ベローズ
12:テーパー筒状部
13:接合部
14:成形ベローズ
15:金属ベローズ
20:薄板金属材
21:金属板
22:金属パイプ
23:テーパーワッシャー
24:金属ワッシャー材
25:金属ワッシャー
26:扇形状の金属パイプ材
27:テーパー筒状の金属パイプ
28:金属ワッシャー
29:長方形状の金属パイプ材
30:筒状の金属パイプ
31:テーパー型
32:金属ワッシャー
40:複合金属シール部品