(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水平型地熱交換器が、少なくとも夏季において、周囲の地盤から温熱を採熱し、または前記ブラインの冷熱を周囲の地盤に伝達させることで熱交換する請求項1に記載の地盤凍結構造。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、1つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。図示する本発明の実施形態は、理解容易のために、特定の部材を全体において比較的大きく図示する場合、または小さく図示する場合などがあるが、いずれも本発明の各構成の寸法比率を何ら限定するものではない。
【0014】
本発明に関し、活動層とは、地盤の表層であって、気温の変化によって凍結と融解を繰り返し得る地盤層を意味する。ここで凍結と融解とを繰り返すとは、一年を通じて凍結状態と融解状態とに変化する場合、または年単位で凍結状態と融解状態とに変化する場合を含む。また基盤層とは、上記活動層の下方に位置する地盤層を意味し、凍結状態が維持される地層(即ち、永久凍土)、および非凍結状態が維持される地層のいずれも含む。本発明または本明細書において、相対的に暖かい期間を便宜的に夏季と呼び、相対的に寒い期間を冬季と呼ぶ。したがって、北半球の一般的な地域では、7月〜9月を中心に夏季となり、12月〜2月を中心に冬季となるが、南半球では逆である。また気候の変動により、年毎に寒い年と暖かい年とに分かれるような場合であって、寒い年には活動層が凍結し、暖かい年には活動層が融解するような場合には、当該寒い年を冬季と呼び、当該暖かい年を夏季と呼ぶ。以下の実施例では、冬季および夏季が、北半球における冬と夏である場合を例に説明する。
【0015】
本発明者は、上述する課題を鑑み鋭意検討した末、活動層に発泡樹脂板を埋設することで、当該発泡樹脂板の下方に位置する地盤の温度変化を小さく抑え、年間を通じて当該地盤の温度を安定させ得ることに着眼した。より具体的には、本発明者は、発泡樹脂板の断熱効果により外気温を地盤に伝達させ難くできるため、発泡樹脂板の下方では、夏季の地盤の温度上昇を小さく抑え得ること、そのため、夏季においてブレインの温度を著しく下げることなく水平型地熱交換器で深さ方向にも地盤を良好に凍結させ得ること、または凍結状態を維持できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
<第一実施形態>
以下に本発明の第一実施形態である地盤凍結構造100について
図1、2を用いて説明する。
図1は地盤凍結構造100の一例を示す模式図である。
図2は、第一実施形態の変形例である地盤凍結構造120を示す模式図である。
地盤凍結構造100は、凍結融解を繰り返し得る活動層40と、活動層40の下に位置する基盤層46とを有する地盤に設けられる。地盤凍結構造100は、活動層40において発泡樹脂板10と、発泡樹脂板10の下方に配置された水平型地熱交換器20とを備える。本実施形態では、発泡樹脂板10および水平型地熱交換器20は、活動層40のうち、より地盤面GLに近い表層活動層40に配置されている。水平型地熱交換器20は、内部にブラインを流通可能であり、周囲の地盤と熱交換を行う。地盤凍結構造100は、水平型地熱交換器20により、少なくとも夏季に、周囲の地盤から温熱を採熱し、またはブラインの冷熱を周囲の地盤に伝達させることで熱交換することができる。
【0017】
かかる地盤凍結構造100の実施により、冬季と夏季とにおいて凍結融解を繰り返し得る活動層40は、夏季における融解が防止され凍結状態が維持される。これにより、上述する活動層40の凍結融解による諸問題を防止することができる。
地盤凍結構造100は、地熱交換器として水平型地熱交換器20を用いているため、水平方向に凍結状態を拡張することに優れ、また内部に流通するブラインの流通に関し圧力ポンプの作動に要する電力が少なくて済み、運転コストが縦型地熱交換器に比べ安価である。
加えて、地盤凍結構造100は発泡樹脂板10を備えるため、発泡樹脂板10の下方の地盤(下方地盤)、温度の安定化が図られている。つまり、上記下方地盤は、発泡樹脂板10の断熱効果により、外気温等の影響を受け難く、一年を通じて気温の変動が小さい。そのため、夏季において、上記下方地盤は、地盤凍結構造100が実施されていない場合に比べて地盤温度が低く、より小さい熱交換エネルギーで凍結状態を維持することができる。つまり、地盤凍結構造100によれば、水平型地熱交換器20の本来のメリットを充分に享受しつつ、課題であった上下方向への凍結領域の拡張の問題も、運転コストを著しく上げることなく良好に解決される。
以下に、本実施形態の地盤凍結構造100の構成について詳細に説明する。
【0018】
(活動層および基盤層)
活動層40は、凍結と融解を繰り返し得る地表付近の層である。基盤層46は、活動層40の下方に位置する。基盤層46は、年間を通じで凍結状態である層または年間を通じで非凍結状態である層のいずれであってもよい。
永久凍土地帯と認識される土地でも、実際には活動層が存在し得る。そのため、地盤表層は、冬季に凍結し、夏季に融解する凍結融解を繰り返し、凍結融解による諸問題が発生する。たとえばシベリアにおける永久凍土地帯であっても、夏季には外気温が30℃程度になる場合があり、地盤表層は融解する。そのため永久凍土地帯であっても、冬季と夏季とで凍結融解の諸問題が発生する。
一方、寒冷地において、基盤層46は年間を通じて凍結しないものの、表層は、冬季には凍結し、夏季には融解する例もある。つまり、非永久凍土地帯であっても活動層40は存在し、かかる土地でも、同様に凍結融解の諸問題が発生する。したがって、地盤凍結構造100は、永久凍土地帯または非永久凍土地帯のいずれにおいても実施可能であり、これによって凍結融解の諸問題を解決することができる。
【0019】
活動層40の深さ方向の距離dは、地域により異なり、数十cmから十数m程度までの幅がある。本発明によれば、距離dが1m以上15m以下程度と充分に大きい場合であっても、表層活動層40において発泡樹脂板10および水平型地熱交換器20が埋設された地盤凍結構造100により、下層活動層44まで充分に凍結状態を維持可能である。たとえば、深さ方向の距離dの活動層40を、便宜的に深さ方向において1:1に分割し、地盤面GL側を表層活動層40、基盤層46側を下層活動層44と定義した場合に、かかる表層活動層40に発泡樹脂板10および水平型地熱交換器20が埋設された地盤凍結構造100によって、下層活動層44の凍結状態を充分に維持することが可能である。ただし、上記説明は、発泡樹脂板10または水平型地熱交換器20の一部または全部を下層活動層44に埋設することを禁止するものではない。
【0020】
(発泡樹脂板)
発泡樹脂板10は、断熱性効果を発揮し得る発泡体からなる。発泡体の例としては、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、ポリプロピレン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、ポリ塩化ビニル系樹脂発泡体、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体、ポリカーボネート系樹脂発泡体、ポリアミド系樹脂発泡体、またはポリフェニレンエーテル系樹脂発泡体等がある。特に、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、またはポリプロピレン系樹脂発泡体は、発泡樹脂板10の構成材料として好ましい。
【0021】
本実施形態における発泡樹脂板10は、略扁平の板状体であり、所定の面積を備える。板状体である発泡樹脂板10の厚みは、特に限定されず、活動層40の距離または実施される地域の気候等を勘案して適宜決定することができる。目安として、発泡樹脂板10の厚みは、10cm以上50cm以下であることが好ましい。10cm未満では、断熱効果が充分に発揮され難い場合があり、50cmを超えると、発泡樹脂板10の製造や設置にかかる費用に見合う程度の断熱効果が得られ難くい場合がある。発泡樹脂体10は、一体の発泡樹脂体から構成されてもよいし、複数の発泡樹脂ブロックを配列することで構成されてもよい。
【0022】
発泡樹脂板10の埋設深さは特に限定されないが、本実施形態のように、表層活動層40に構造物(たとえば建造物の基礎や地下建物等)がない場合には、地盤面GLから、発泡樹脂板10の表面までの距離d1が10cm以上100cm以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
本実施形態にかかる地盤凍結構造100は、発泡樹脂板10の所定の箇所に、パイプ28と入流部22とをつなぐ連結部32を挿通させるための第一貫通孔12が設けられている。また、同様に、発泡樹脂板10の他の所定の箇所には、パイプ28と排出部24とをつなぐ連結部34を挿通させるための第二貫通孔14が設けられている。連結部32は、例えば略垂直方向に起立して配置されたパイプであってパイプ28と入流部22との間でブラインを流通可能に連結している。同様に、連結部34は、例えば略垂直方向に起立して配置されたパイプであってパイプ28と排出部24との間でブラインを流通可能に連結している。このように、連結部32または連結部34の少なくともいずれか一方が発泡樹脂板10を厚み方向に貫通するよう配置されることで、内部を流通するブラインの温度が外気温から影響を受け難くし、また連結部32、34を土圧から保護することができる。
【0024】
(水平型地熱交換器)
水平型地熱交換器20は、ブラインを入流するための流入部22と、内部を流通したブラインを排出させるための排出部24と、略水平方向に延在するパイプ28を備える。本実施形態では、流入部22および排出部24は、いずれもブライン温度調整装置30に連結されている。所定の温度に調整されたブラインは、流入部22を通過しパイプ28を流通しつつ周囲の地盤との間で熱交換を行い、排出部24から排出される。排出されたブラインは、ブライン温度調整装置30において所定の温度に調整され、再度、流入部22に送り出されてもよい。
【0025】
尚、
図1では、所定個所で湾曲して蛇行するパイプ28が紙面上下方向に延在するよう模式的に図示されているが、実際にはパイプ28は、蛇行しつつ略水平方向に延在している。他の図面に示す水平型地熱交換器20におけるパイプ28も同様である。
【0026】
パイプ28は、たとえば、樹脂材料、またはステンレス、アルミ、鋼、若しくは銅などの金属材料により形成されたものが挙げられる。ただし、金属材料を用いてなるパイプ28には、腐食の問題、継ぎ目からの熱媒体の漏れの問題、または地盤形状の変形による破断の問題等がある。かかる観点からは、パイプ28は、樹脂材料から構成されるものが望ましい。尚、気化熱の作用により周囲を冷却するアンモニアまたはフロンなどの冷媒を使用した場合には、パイプ内の圧力が高くなるため、樹脂材料からなるパイプは適応しにくい。しかし、ブラインは、熱交換の際、顕熱を利用して冷却するため、上記アンモニア等のような高圧化の問題がなく、樹脂材料から構成されたパイプに良好に適応する。即ち、ブラインを用いる地盤凍結構造100では、樹脂材料で構成されたパイプ28を良好に活用することができる。
【0027】
水平型地熱交換器20は、少なくとも夏季において活動層40の凍結状態を維持することを目的に熱交換を行う。このときのブラインの温度は特に限定されない。しかし、地盤凍結構造100は、上述のとおり水平型地熱交換器20の上に発泡樹脂板10が埋設されており、地盤温度が安定している。そのため、ブラインの温度が著しく低くなくても、活動層40の全体の凍結状態を維持することが可能である。より具体的には、夏季において、ブラインの温度は、流入部22において−20℃以上−3℃以下に調整されていることが好ましい。発泡樹脂体10の配置により活動層40の温度の安定化が図られているため、地盤凍結構造100は、夏季において、従来技術のようにブライン温度を著しく低温に調整せずとも、上記範囲のブライン温度で、活動層40の融解を防止することができ、またブライン温度の調整に要する電力も、従来に比べて節約できる。
【0028】
本実施形態においてブラインとは、水平型地熱交換器20の内部を流通する不凍性の熱媒体(冷媒)である。ブラインとしては、例えば、塩化カルシウム水溶液や塩化ナトリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、エチレングリコール、またはプロピレングリコールなどが挙げられるが、これに限定されない。ブラインは、図示省略する圧送ポンプなどで、圧送されてパイプ28を流通する。
【0029】
水平型地熱交換器20を用いた地熱交換は、活動層40の融解の虞のある時期を含め、一年間を通して連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。例えば冬季において、凍結状態にある活動層40を、さらに冷やし固めることにより、夏季における活動層40の温度上昇の開始を遅らせ、または上昇温度幅を小さくすることが可能である。そのため、冬季においても活動層40から温熱を採取する地熱交換を行ってもよい。即ち、本実施形態における水平型地熱交換器20は、冬季か夏季かによらず活動層40から温熱を採取する地熱交換を行ってもよい。温熱かどうかは活動層40の温度とブラインの温度とにおいて相対的に決まるので、ブラインの温度を活動層40の温度未満に設定することで、活動層40から温熱を採取することができる。
【0030】
水平型地熱交換器20の埋設深さは特に限定されない。設置のコストおよび労力を小さく抑えるという観点から、水平型地熱交換器20は、適度な範囲で、基盤層46よりも地盤面GL寄りに埋設することが好ましい。たとえば、深さ方向の距離dの活動層40を、便宜的に深さ方向において1:1に分割し、地盤面GL側を表層活動層40、基盤層46側を下層活動層44と定義した場合に、水平型地熱交換器20は表層活動層40に埋設されることが好ましい。ただし、本発明において地熱交換器を深度10mを超えてさらに深い地中に埋設することを除外するものではない。
また、水平型地熱交換器20の上面と、発泡樹脂下との距離は、接触しない程度に近接して埋設させることが好ましく、たとえば10cm以上2m以内程度が好ましい。本実施形態では、水平型地熱交換器20は、地盤に直接に埋設されているが、地盤と水平型地熱交換器20との間には、適宜、砂、砕石、またはカラ練りモルタル等のグラウト材を充填してもよい。
【0031】
本実施形態では、水平型地熱交換器20は、上面視において、発泡樹脂板10の外縁の内側に配置されている。これにより、発泡樹脂板10により、外気温の影響が少なく温度が安定された地盤(活動層40)において地熱交換がなされるので、熱効率が良い。
【0032】
上述する地盤凍結構造100は、地盤面GLに何らの構造物も有しない地盤を例に説明したが、地盤面GLには、任意の構造物が設けられていてもよい。構造物とは、人工的に作られた物を広く含み、例えば建造物、道路、取り付け道路、または駐車場等のコンクリート面等が例示される。例えば、
図2に示すように、地盤凍結構造100が実施された地盤の地盤面GLに、コンクリート面を備える構造部210が設けられていてもよい。構造物210は、例えば駐車場等である。地盤凍結構造100が実施されない場合には、構造物210は、活動層40の融解による地盤沈下や、凍結による凍上が発生し得る。しかし、構造物210が設けられた地盤において、地盤凍結構造100が実施されることにより、活動層40の融解が防止される。そのため、凍結融解による諸問題の発生により構造物210が沈下し、または破損等することが防止される。
【0033】
地盤凍結構造120における発泡樹脂板10は、構造物210よりも面積が大きく、上面視上、構造物210が発布樹脂体10に包含されていることが好ましい。これにより、構造物210および構造物210の周囲において、凍結融解による諸問題の発生を防止することができるため、構造物210の利用または実施において望ましい。
【0034】
図2に示す地盤凍結構造120は、水平型地熱交換器20の一部が下層活動層40に埋設されている。活動層40の距離dが小さい場合には、活動層40の深さ方向1/2を超えて地盤凍結構造120の一部(水平型地熱交換器20の一部)が、基盤層46寄りに位置していてもよい。
【0035】
本発明は、凍結融解を繰り返し得る活動層40と、活動層40の下に位置する基盤層46とを有する地盤において、発泡樹脂板10と、発泡樹脂板10の下方に配置され内部にブラインを流通可能な水平型地熱交換器20と、を、活動層40に埋設し、少なくとも夏季において、周囲の地盤から温熱を採熱し、またはブラインの冷熱を周囲の地盤に伝達させることで熱交換し、当該地盤を凍結させることを特徴とする地盤凍結方法(以下、本方法ともいう)を包含する。
本方法によれば、冬季において凍結状態になった活動層40を、夏季においても凍結状態に維持することができる。そのため、従来の凍結融解による諸問題を解決することができる。しかも本方法は、発泡樹脂板10により地盤(活動層40)の温度が安定化されている。そのため、本方法によれば、水平型地熱交換器20のメリットを活かしつつ、比較的高い温度のブラインを用いて、水平型地熱交換器20の上下方向の地盤の凍結状態を良好に維持することができる。
【0036】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態である地盤凍結構造140について
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第二実施形態にかかる地盤凍結構造140の一例を示す模式図である。
図3および後述する
図4では、水平型地熱交換器20におけるパイプ28等の管構造を、図示容易化のため、直線にて図示している。地盤凍結構造140は、発泡樹脂板10が、地盤に建造された建造物220の基礎構造(べた基礎230)の下方に埋設されていること以外は第一実施形態にかかる地盤凍結構造100と同様の構成を有する。そのため以下において、地盤凍結構造140に関し、主として発泡樹脂板10と、基礎構造(べた基礎230)とについて説明する。それ以外の構成については地盤凍結構造100の説明を参照可能であるため、ここでは詳細な説明を適宜割愛する。
【0037】
上述のとおり、本実施形態にかかる地盤凍結構造140は、発泡樹脂板10が、地盤に建造された建造物220の基礎構造(べた基礎230)の下方に埋設されている。かかる地盤凍結構造140によれば、外気温の断熱だけでなく、建造物220からの温熱が、地盤(活動層40)に対し伝搬することを抑制することができる。
【0038】
冬季において、凍結してはいるが温度が比較的高い活動層40は、夏季において早期に融解し始める傾向にある。そのため、活動層40の凍結融解を防止するためには、冬季における活動層40の温度が充分に低温になっていることが好ましい。ところが、冬季は、外気温に比べ建造物220の内部は温かく調整されることが一般的である。そのため、従来は、建造物220の下方の活動層40は、夏季において融解が早期に始まり、結果として融解量も多くなる場合があった。
【0039】
これに対し、本実施形態では、発泡樹脂板10が断熱作用を発揮するため、建造物220から活動層40に対する温熱の伝搬が抑制され、冬季において凍結している活動層40の温度の上昇が抑制される。その結果、夏季において、ブラインが著しく低い温度に調整されていなくても、当該ブラインと活動層40とで熱交換を行い、活動層40の温熱を採取することができる。
【0040】
本実施形態にかかる地盤凍結構造140は、建造物220の基礎構造がべた基礎230である態様を示す。
図3に示すとおり、べた基礎230の底面に接して、発泡樹脂板10が埋設されている。発泡樹脂板10の面積は特に限定されないが、べた基礎230と同様程度であることが好ましく、
図3に示すとおり、べた基礎230よりも大きいことがより好ましい。このように、べた基礎230が実質的に地盤(活動層40)と直接に接触しないよう、活動層40とべた基礎230との間に発泡樹脂板10を配置することにより、外気温および建造物22からの温熱が活動層40に伝搬することをより良好に防止することができる。特に、上面視上、べた基礎230が発泡樹脂板10に包含されていることが好ましく、これにより、建造物230の周囲においても凍結融解を防止することができ、建造物230をより安全かつ快適に利用することが可能となる。
【0041】
ベタ基礎230は、建造物220の基礎構造として知られるベタ基礎として理解される基礎構造であれば、適宜選択して実施することができる。より詳細に述べれば、建造物220の下面略全面に相当する面積を含む活動層40を必要量だけ掘り、そこに鉄筋を配筋しコンクリートを流し込んで作られる基礎構造であって、鉄筋コンクリート面全面で建造物の荷重を分散し支持する構造を主体とする基礎構造である。
【0042】
尚、図示省略するが、建造物220は、地下構造を有していてもよい。この場合には、地下構造の下に構築されるべた基礎230の下方に地盤凍結構造140が実施される。ここでいう地下構造とは、地下室、地下ピット、または地下倉庫等を含み、建造物220の地上部分と連結し、1つの基礎構造(べた基礎230)により支持される、建造物220の地下部分を指す。
【0043】
本実施形態にかかる地盤凍結構造140は、水平型地熱交換器20を複数有する。複数の水平型地熱交換器20は、略同じ深さにおいて、水平方向に並列して配列されている。
ブライン温度調整装置30には、適度な温度に調整されたブラインを水平型地熱交換器20に対し流入させるため流入本管23が接続されており、流入本管23から流れ出たブラインは、分岐ヘッド26において、それぞれの水平型地熱交換器20に設けられた流入部22に分岐する。本実施形態では流入部22と連結部32とは、1つの管において連続しており、連結部32の下流側端部はパイプ28に連結している。複数の連結部32は、発泡樹脂板10に設けられた第一貫通孔12に挿通されている。また複数の連結部34は、発泡樹脂板10に設けられた第二貫通孔14に挿通されている。このように建造物220の規模等や、発泡樹脂板10の面積に併せ、適宜、水平型地熱交換器20を2以上用いて、地盤凍結構造140を構成することもできる。
【0044】
<第三実施形態>
次に本発明の第三実施形態である地盤凍結構造160について
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第三実施形態にかかる地盤凍結構造160の一例を示す模式図である。地盤凍結構造160は、べた基礎230の替りに、杭基礎60を備えること以外は第二実施形態にかかる地盤凍結構造140と同様の構成を有する。そのため以下において、地盤凍結構造160に関し、杭基礎60および杭基礎60と地盤凍結構造160との関係について説明する。それ以外の構成については地盤凍結構造100、および地盤凍結構造140の説明を参照可能であるため、ここでは詳細な説明を適宜割愛する。
【0045】
本実施形態にかかる地盤凍結構造160は、発泡樹脂板10が、地盤に建造された建造物220の基礎構造(杭基礎60)の下方に埋設されている。本実施形態では、基礎構造は、基礎スラブ50と杭61を備える杭基礎60である。地盤凍結構造160は、杭基礎60が備える建造物220の下方において実施されており、発泡樹脂板10は、基礎スラブ50の底面に接して埋設されている。尚、本実施形態において、発泡樹脂板10が、基礎構造の下方に埋設されているとは、杭基礎60の基礎スラブ50の下方に発泡樹脂板10が埋設されていることをいう。
【0046】
従来、活動層において実施された杭基礎は、いくつかの問題があった。
即ち、上記杭基礎の実施のためには、活動層が夏季に融解することを考慮し、支持杭の先端を基盤層まで到達させて地盤支持力を得る必要があった。そのため、活動層が深くまで続く地盤で杭基礎を実施する場合には、支持杭は充分に長くなければならなかった。
また、支持杭の先端が基盤層に到達している場合であっても、活動層が融解することで、支持層に先端が固定された支持杭が、地上に抜け上がってしまう抜け上がりの問題が発生する虞があった。
また、摩擦杭が活動層に設けられている場合、当該活動層が融解することで、地盤と摩擦杭との摩擦力が充分に得られなくなり、当該摩擦杭の所期の作用が発揮されなくなる虞があった。
また、建造物220からの温熱が杭61を介して活動層40に伝搬するという問題があった。冬季に活動層40が凍結していたことを鑑みれば、夏季においても建造物220から伝搬する熱は、活動層40の地盤温度に対し相対的に温熱になるため、当該温熱により活動層40が融解する虞があった。
【0047】
地盤凍結構造160は、活動層40の凍結状態が維持されるため、活動層40の地盤支持力を維持することができる。そのため、本実施形態における杭基礎60では、活動層40において実施されているにも関わらず、上述する従来の問題の発生が防止される。地盤凍結構造160における杭61は、凍結状態が維持された活動層40により、支持力が維持され、冬季、夏季に関わらず建造物220を良好に支持することができる。
【0048】
本実施形態では、
図4に示すとおり、杭61の杭先端64が、活動層40に位置する。本実施形態によれば、従来のように地盤支持力を確保するために、杭先端64を基盤層46まで伸長させなくてもよい。したがって、杭基礎60の構築にかかる費用や労力を従来に比べ低減可能である。ただし、上述は、本発明を何ら制限するものではなく、杭先端64が基盤層46に到達した杭基礎60を有する建造物220の下方に地盤凍結構造が実施されることを禁止するものではない。
【0049】
本実施形態において、杭基礎60は、建造物220の杭基礎として理解され、少なくとも杭61と、基礎スラブ50を備える基礎構造である。
本実施形態の杭61は、杭頭62、杭本体66、および杭先端64を備える。杭61は、公知の杭基礎構造において採用される杭であればいずれのものであってもよく、支持杭および摩擦杭のいずれかであってもよいし、あるいはこれらの組合せであってもよい。
基礎スラブ50は、杭頭62と直接または間接に結合され、且つ建造物220の底面略全面において構築されるスラブである。基礎スラブ50は、建造物220の底面略全面において杭基礎構造の一部として形成されるスラブ構造を意味し、所謂、コンクリートスラブ、あるいは土間コンクリートを含む。また基礎スラブ50は、任意で地中梁を備えてもよい。
【0050】
本実施形態では、杭頭62が、基礎スラブ50に埋め込まれており、これによって、杭61と基礎スラブ50が直接に結合されている。図示省略するが、杭頭62を補強するために、杭頭62の周囲をコンクリートなどで覆う杭頭処理を行って杭頭保護部を形成し、当該杭頭保護部の一部または全部を基礎スラブ50に埋め込むことで、杭61と基礎スラブ50とを間接的に結合させてもよい。また図示省略する別の態様として、上述する杭頭保護部を基礎スラブ50に設けられた地中梁と結合させ、当該地中梁を介して杭61と基礎スラブ50とを結合させてもよい。
【0051】
本実施形態における発泡樹脂板10は、基礎スラブ50よりも大きい面積を有し、上面視上、発泡樹脂板10は基礎スラブ50を包含する。これにより、杭基礎60の周囲の地盤まで活動層40の融解を防止することができる。杭基礎60の外周の活動層40(本実施形態が実施されていない領域である活動層40)の融解に連動して、杭基礎が実施された活動層40の一部が融解することを良好に防止することができる。
【0052】
水平型地熱交換器20は、杭61の間を縫って地盤に埋設される。そのため水平型地熱交換器20を複数設けて、杭61と水平型地熱交換器20との配置のバランスをとることが好ましい。ただし、水平型地熱交換器20のパイプ28が杭61を避けて配置されるよう水平型地熱交換器20を設計することもできる。そのため、1つの水平型地熱交換器20が杭基礎構造60を備える建造物220の下方に配置されてなる地盤凍結構造160を実施することもできる。
【0053】
図示省略するが、地盤凍結構造160は、杭61の外周を覆う発泡樹脂部材をさらに備えていてもよい。これにより、杭61から活動層40に対し温熱が伝達されることを抑制することができる。その結果、水平型地熱交換器20の内部を流通するブラインの温度を比較的高めに設定しても活動層40の融解を良好に防止することができる。
【0054】
以上に本発明の第一実施形態から第三実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0055】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)凍結融解を繰り返し得る活動層と、前記活動層の下に位置する基盤層とを有する地盤において、
発泡樹脂板と、
前記発泡樹脂板の下方に配置され内部にブラインを流通可能な水平型地熱交換器と、
が、前記活動層に埋設されていることを特徴とする地盤凍結構造。
(2)前記水平型地熱交換器が、少なくとも夏季において、周囲の地盤から温熱を採熱し、または前記ブラインの冷熱を周囲の地盤に伝達させることで熱交換する上記(1)に記載の地盤凍結構造。
(3)前記水平型地熱交換器は、前記ブラインを入流するための流入部と、内部を流通した前記ブラインを排出させるための排出部と、を有し、
少なくとも夏季において、前記ブラインの温度が、前記流入部において−20℃以上−3℃以下である上記(1)または(2)に記載の地盤凍結構造。
(4)前記発泡樹脂板が、前記地盤に建造された建造物の基礎構造の下方に埋設されている上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の地盤凍結構造。
(5)前記基礎構造がべた基礎であり、
前記べた基礎の底面に接して前記発泡樹脂板が埋設されている上記(4)に記載の地盤凍結構造。
(6)前記基礎構造が、基礎スラブと杭とを備える杭基礎であり、
前記基礎スラブの底面に接して前記発泡樹脂板が埋設されている上記(4)に記載の地盤凍結構造。
(7)凍結融解を繰り返し得る活動層と、前記活動層の下に位置する基盤層とを有する地盤において、
発泡樹脂板と、
前記発泡樹脂板の下方に配置され内部にブラインを流通可能な水平型地熱交換器と、
を、前記活動層に埋設し、
少なくとも夏季において、周囲の地盤から温熱を採熱し、または前記ブラインの冷熱を周囲の地盤に伝達させることで熱交換し、当該地盤を凍結させることを特徴とする地盤凍結方法。