特許第6598270号(P6598270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大木工藝の特許一覧

<>
  • 特許6598270-腕時計 図000002
  • 特許6598270-腕時計 図000003
  • 特許6598270-腕時計 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598270
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】腕時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/18 20060101AFI20191021BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G04B37/18 A
   A44C5/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-543580(P2018-543580)
(86)(22)【出願日】2017年5月2日
(86)【国際出願番号】JP2017017212
(87)【国際公開番号】WO2018066156
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2018年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-197902(P2016-197902)
(32)【優先日】2016年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−84976(JP,U)
【文献】 特開2008−200491(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3015259(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/124702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 − 49/04
A44C 5/00 − 24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部とリストバンドとを備えた腕時計であって、
前記本体部のケース及び前記リストバンドの少なくとも一つを炭素繊維強化炭素複合材料で構成したことを特徴とする腕時計。
【請求項2】
本体部とリストバンドとを備えた腕時計であって、
前記本体部のケース及び前記リストバンドの少なくとも一つを粒子状の炭素材を20〜50重量%含有した熱可塑性樹脂で構成したことを特徴とする腕時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記ケース及び前記リストバンドの少なくとも一つにおける表面にDLCコーティング層が形成されていることを特徴とする腕時計。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、
前記リストバンドは、複数のバンド構成ピースを連結してなり、
前記バンド構成ピースの少なくとも1つには、磁石部が設けられていることを特徴とする腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材で構成した部材を有する腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軽量化を図った腕時計が種々提案されている。
例えば、下記特許文献1の腕時計は、腕時計用バンドを構成する複数のバンド駒本体に空隙を多く設けることにより、腕時計の軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録3089120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記腕時計用バンドを構成するバンド駒本体は、密度の大きい金属からなるので、それ自体の重量が大きい限りにおいては、いくらこの部位に空隙を設けて腕時計全体を軽量化しようとしても、限度があると考えられる。
また、腕時計は日常的に身に付けるアイテムであるので、継続使用による何らかの副次的なベネフィット(例えば、健康増進効果のような)の提案がなされてもよいと思われるが、この発明ではそのような付加価値的効果については一切着目されてはいない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、軽量化が図られ、かつ炭素材が放射する遠赤外線により健康増進効果を奏し得る腕時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る腕時計は、本体部とリストバンドとを備えた腕時計であって、前記本体部のケース及び前記リストバンドの少なくとも一つを炭素繊維強化炭素複合材料で構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る腕時計は、本体部とリストバンドとを備えた腕時計であって、前記本体部のケース及び前記リストバンドの少なくとも一つを粒子状の炭素材を20〜50重量%含有した熱可塑性樹脂で構成したことを特徴とする。
【0008】
また本発明においては、前記ケース及び前記リストバンドの少なくとも一つにおける表面にDLCコーティング層を形成するようにしてもよい。
さらに本発明においては、前記リストバンドは、複数のバンドピースを連結してなり、
前記バンドピースの少なくとも1つには、磁石部が設けられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る腕時計によれば、軽量化を図ることができ、かつ炭素材が放射する遠赤外線により健康増進効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る腕時計の平面図である。
図2】A−A線におけるリストバンドの断面図である。
図3】リストバンドの異なる実施形態を示す図であり、(a)はリストバンドの一部を構成するバンド構成ピースを模式的に示す斜視図、(b)はその一部断面図、(c)は(b)に示す実施形態の変形例を示す図であり、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る腕時計について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る腕時計1は、図1に示すように、本体部10とリストバンド20とを備え、本体部10のケース11及びリストバンド20の少なくとも一つを、炭素材である炭素繊維強化炭素複合材料(以下、C/Cコンポジットと称する)で構成している。
【0012】
腕時計1としては、本体部10とリストバンド20とを備え、腕に装着されて使用される構成のものであればよく、以下のものとしてもよい。
機能面では、時刻や日付、曜日などを表示するという基本的な機能のみを備えたものとしてもよく、また、時間の測定や、気温・気圧の測定、通信機能、動画・音楽視聴機能など、種々の機能を有したものとしてもよい。
用途面では、時計針(長針・短針・秒針)と文字盤のみを有した三針ウォッチや、金などの貴金属をちりばめたジュエリーウォッチ、高い防水性能を有し水圧に耐え得るダイバーズウォッチ、過酷な環境や条件下での使用が可能な軍隊用のミリタリーウォッチ、高い正確性・視認性・計測性を有する航空機のパイロット用に開発されたパイロットウォッチなどとしてもよい。
【0013】
また、ムーブメント(針の動作などの機構)面では、本体に回転式のローターを内蔵し、腕の動きによってゼンマイが巻かれる仕組みの自動巻きタイプや、定期的にゼンマイを手動で巻く手巻きタイプなどの、いわゆるゼンマイタイプとしてもよい。また、電圧をかけると一定の周期で規則的に振動する水晶振動子を用いたクォーツ式や、本体に搭載した太陽電池ユニットにより光が電気に変換され、その電気を二次電池に蓄えて時計を動かすソーラー充電式、機械式の自動巻きと同様の回転ローターを本体に備え、そのローターが回転することで発電する機構を備えたオートクォーツ式、などのいわゆるクォーツタイプとしてもよい。
【0014】
本体部10は、ムーブメント部(不図示)と、それを内包するように配されるケース11と、を備えている。
ムーブメント部とは、長針・短針などの動作やデジタル値の表示などの時計機構全般を司る機構部である。
ムーブメント部の外表面には、時刻などのデジタル値表示部(不図示)や、時計針(長針・短針・秒針)、文字盤などが配される表示部12が設けられている。表示部12としては、時計針と文字盤とを用いたアナログ表示形式のものや、液晶などにより時刻などを表示するデジタル表示形式のものとしてもよい。
【0015】
ケース11は、外郭形状が略円盤形状であり、開口部を有し内部に中空部を設けている。この中空部にムーブメント部及び表示部12が格納され、開口部は、透明な材質からなるものや貫通孔を設けたものなどからなる保護カバーで覆われ、表示部12の全部又は一部が開口部を通して外部から露見する構成となっている。
【0016】
リストバンド20は、一対の帯状体であるバンド部21,21からなり、それぞれが連結具を介してケース11に連なるように連結されている。
各バンド部21は、複数のバンド構成ピース22が連なるように連結されて構成されており、全体として帯状体を形成している。各バンド構成ピース22は、連結ピンなどの連結具25を介して連結され、それぞれが該連結具25を軸として可動となっており、バンド部21全体として腕に巻き回し、留め具(不図示)で腕に巻き付けた状態を固定する構成となっている。
なお、一対のバンド部21,21は、ケース11に対して着脱自在なものとしてもよい。
【0017】
図2では、リストバンド20を構成する各バンド部21の本体23を、C/Cコンポジットによって構成し例を示している。
本体23の厚さ寸法(バンド部21の厚さ方向に沿う寸法)は、腕時計1の用途などに応じて適宜定めてもよく、例えば、2mm〜30mm程度としてもよい。
またバンド部21,21に限らず、本体部10のケース11をC/Cコンポジットによって構成してもよいし、本体部10のみをC/Cコンポジットによって構成してもよい。
なお、バンド部21を構成する全てのバンド構成ピース22,22の本体23、そして連結具25もC/Cコンポジットによって構成してもよいし、バンド構成ピース22,22の一部をC/Cコンポジットによって構成し、その他を樹脂や金属などの異なる素材で構成するようにしてもよい。
C/Cコンポジットで構成された部材が多いほど、腕時計1の軽量化を図ることができ、かつ炭素材が放射する遠赤外線による健康増進効果を奏するものとすることができる。
【0018】
本実施形態では、図2に示すように、リストバンド20の本体23の表面にDLCコーティング層24が形成されている。なお、この図2では、リストバンド20のバンド部21を構成するバンド構成ピース22,22の一つにDLCコーティング層24を設けた例を示している。
DLCコーティング層24は、バンド部21を構成する本体23における、皮膚(腕)に接触する側の面とは厚さ方向において反対側の面、つまり、腕時計1の装着時に外部に露出する側の面に設けられている。DLCコーティング層24は、この面の略全体に設けてもよいし、一部のみに、つまり、一部のバンド構成ピース22の面のみに設けてもよい。
【0019】
DLCコーティング層24は、本体23の表面に、主に炭素と水素で構成されるDLC(Diamond−Like Carbon)がコーティング(被覆)されることにより形成される。DLCコーティング層24は、ナノレベルの薄さの膜でありながらも、硬質であり、低摩耗・高湿潤性を有したものとすることができる。
DLCコーティング層24の層厚は、腕時計1の用途などに応じて適宜定めてもよく、例えば、5nm〜10μm程度としてもよい。
【0020】
DLCコーティング層24を形成する前に、本体23の表面に微粒子を投射し複数の微小な凹凸を形成する処理を施してから、この処理面に対してDLCをコーティングしてDLCコーティング層24を形成してもよい。これにより、DLCの本体23への密着度が高くなり、DLCコーティング層24が本体23から剥離し難くなる。
【0021】
DLCコーティング層24を形成する前に、本体23の表面に色素を塗布する処理を行なってから、この処理面に対してDLCをコーティングしてDLCコーティング層24を形成してもよい。
色素としては、例えば、種々の色相を有する染料、顔料などを用いてもよい。また、色素の塗布方法としては、スプレー噴射による塗布や、刷毛などを用いた塗布、など種々の方法を用いてもよい。
なお、この色づけ処理は、上記した本体23表面に対する微小凹凸の形成処理を施さずに行なってもよい。または、本体23に対して微小凹凸の形成処理を施してから、その処理面に対して色づけ処理を行なってもよいし、本体23に対して色づけ処理を行なってから、その処理面に対して微小凹凸の形成処理を施してもよい。
【0022】
このように、色づけ処理及びDLCコーティング層24の形成処理を行なうことにより、DLCコーティング層24の下層の色素層が、DLCコーティング層24を介在させた状態で外部から視認される。従って、色素層の色相と、DLCコーティング層24の透明度や色相と、が相俟って、玉虫色や単色、艶消しの黒色などのバリエーションに富んだ色合いを醸し出すことができ、腕時計1のファッション性・芸術性を高めることができる。
DLCコーティング層24の透明度は、光透過度の大小を調整することにより、高透明、中透明、半透明などの各グレードに設定してもよく、また、その色相は種々のものに設定してもよい。
また、DLCコーティング層24は、バンド部21,21の皮膚に接触する側の面とは反対側の面だけでなく、バンド部21,21の側端面(幅方向の端面)や皮膚に接触する面に形成してもよい。また、色素塗布も同様としてもよい。
【0023】
本体23の表面にイオンプレーティング処理を施して色付けを行なってもよい。イオンプレーティング処理とは、窒素などのガスと、チタンなどの金属を用いた表面処理方法の一つであり、真空中で放電を起してプラズマを発生させ、そこに、チタンなどの金属を蒸発させてその粒子をイオンにして加速させ、対象物表面に薄い皮膜を形成するものである。高真空中での処理ゆえ、緻密で密着性の高い薄膜を形成することができる。膜としては、チタンと窒素を用いる場合には窒化チタンの膜が形成される。この膜の色相は金色である。その他、窒素ガスの比率を変化させることでシルバーからブラウンまで幅広い色相を出すことができる。また、チタン以外の金属、及び窒素以外のガスを用いれば、グレー、ブルー、ピンクなど、様々な色相を出すこともできる。
【0024】
このイオンプレーティング処理は、上記したDLCコーティング層24の形成に代えて行なってもよい。または、本体23に対してイオンプレーティング処理を施した後にDLCコーティング層24を形成してもよいし、DLCコーティング層24の形成後にイオンプレーティング処理を施してもよい。または、本体23の一部にDLCコーティング層24を形成し、別の部位にイオンプレーティング処理を施すようにしてもよい。
【0025】
本実施形態におけるC/Cコンポジットとは、炭素を炭素繊維で強化したものである。その製造方法としては、例えば、炭素繊維とプラスティック(主に熱硬化性のもの)とによる繊維強化複合材である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を成形硬化後、不活性雰囲気の中で熱処理し、母材のプラスチックを炭化させて製造するようにしてもよい。なお、C/CコンポジットのC/Cとは、Carbon Fiber Reinforced Carbonの略語である。
【0026】
具体的には、以下のようにしてC/Cコンポジットを製造してもよい。
まず種々の成形法にて、炭素繊維を芯材にしたフェノール樹脂成形物(CFRP)を製造し、それを真空中で1000℃〜2300℃で焼成して、フェノール樹脂の部分を炭化させる。なお、炭素繊維の配向は、一方向としてもよくまたはランダム配向としてもよい。これにより炭素繊維の周囲がフェノール樹脂が炭化してできたカーボンで囲まれた状態のものが得られる。このとき、フェノール樹脂の中の炭素以外の成分(水素、酸素など)は気化して消失するので、フェノール樹脂が炭化したカーボンの中には多数の気泡が生成されている。この気泡を埋めるべく、この焼成済みのものをフェノール樹脂液に浸し加圧含浸させ、その後、焼成炭化する。これにより、本実施形態で言えば、本体部10のケース11やリストバンド20の材料となるC/Cコンポジットが得られる。このようにして得られたC/Cコンポジットに削り出し加工を施して、所望の形状を有するケース11やリストバンド20を製造するようにしてもよい。
【0027】
このように製造されたC/Cコンポジットは、比重が1.3〜1.5(g/cm3)と軽量であり、強度や弾性力が高いので、撓み難く、磨耗し難く、割れ・欠けが発生し難い。さらに、耐熱性も有する。なお、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックなどと比較して、より軽量でかつ強度が高い。
従って、本体部10のケース11やリストバンド20の素材としてC/Cコンポジットを用いることにより、当該部位を肉薄に製造することができ、製品の寿命を長くすることができる。
また、C/Cコンポジットは高い熱伝導性を有しているので、本体部10が発する熱を吸収して放熱する作用があり、本体部10の過熱を抑制し火傷のリスクを低減することができる。また、生体親和性も良好である。
【0028】
本体部10やリストバンド20における皮膚に接触する部位に等方性高密度炭素材を設けてもよい。
等方性高密度炭素材とは、CIP材(CIPとは、Cold Isostatic Press(冷間静水圧プレス)の略である)、又は等方性黒鉛とも呼ばれる。この等方性高密度炭素材は、原料をゴム製の容器に入れて、6面を等圧でプレスすることにより製造される。従って、力が均一に掛かるので、どの面も強度にバラツキが少なく、きめが細かく、他の成形方法と比べて機械的特性に優れた材料となる。
【0029】
等方性高密度炭素材としては、薄膜状のものを、C/Cコンポジットからなる本体23の表面に貼着してもよい。等方性高密度炭素材は、ケース11及びリストバンド20の両方に設けてもよいし、いずれか一方に設けてもよい。または、これら部位のうちの一部に設けてもよい。
【0030】
この等方性高密度炭素材は、具体的には、以下のようにして製造してもよい。
まず、黒鉛などの炭化物の粒子状の炭素材料に、フェノール系接着剤、及びピッチ又はタールなどのバインダを5重量%程度加えて、弾性を有する型(例えば、ゴム製の型)に充填する。当該型は、本実施形態で言えば、本体部10のケース11やリストバンド20の形状となる製造物を得ることのできる型である。そして、その型をシールし、圧力容器内に水没させて圧力媒体である水で加圧する。こうすることにより、炭素材料が全方向より等圧的に加圧されるので、ランダムに配向し等方性(異方比1.0〜1.1)の塊が生成される。その後、型から取り出した炭素材料の塊を、酸素を欠乏させた状態で加熱し、最終的に2000〜3000℃程度で焼成する。焼成の途中、フェノール成分や、ピッチ又はタールは昇温途中の約1200℃程度で揮発するので、炭素材料は結晶化(黒鉛化)し、炭素純度が90%以上である高密度で整った結晶構造となる。これにより、等方性高密度炭素材によって構成されたケース11やリストバンド20が製造される。
ケース11やリストバンド20としては、まず上記工程によって結晶構造を有する等方性高密度炭素材からなる原素材を製造し、この原素材に対して削り出し加工を施すことにより製造してもよい。
【0031】
等方性高密度炭素材は、熱伝導率が高く、外部の熱や光などの形で吸収したエネルギーにより多量の遠赤外線を放射する素材である。従って、C/Cコンポジットに加えて等方性高密度炭素材を設けることによって、遠赤外線効果を一層高めることができる。すなわち、腕時計の装着時に、ケース11及びリストバンド20に設けた等方性高密度炭素材が人体の体温で加熱され、人体の組織と共鳴して、遠赤外線を放射し、これにより、人体の深奥部が加熱され、血流が促進され、健康増進効果を奏する。
また、等方性高密度炭素材は、腐食のおそれもなく、人体を形成する有機物の構成物質と同一の素材であるため、生体親和性が良好であり、人体への安全性が高く、金属アレルギーの心配もない。
【0032】
ケース11やリストバンド20における皮膚に接触する面を梨地状としてもよい。
梨地状とは、複数の微小な凹凸が物体の表面に形成された状態を言い、物体表面に梨地加工が施されることにより梨地が形成され、梨地状となる。
梨地加工としては、砂や鉄、ガラスなどの、いわゆるメディアを、空気と混合させ、圧力を加えて物体表面にぶつけるサンドブラストや、上記メディアを水と混合させて物体表面にぶつける液体ホーニング、などの種々の方法を用いてもよい。
このようにケース11やリストバンド20における皮膚に接触する面を梨地状にすることにより、これら面の皮膚への接触面積が小さくなり、装着者にさらさらとした感触を与えることが可能となる。これにより、腕時計1を装着した際の皮膚への接触の感触が心地良くなり、また、腕時計1の皮膚への接触面が皮膚にまとわり付く感触を低減させることができる。
【0033】
なお、ケース11やリストバンド20における皮膚に接触する面に突起を形成してもよい。突起としては、略半球形状や略円錐形状、略多角柱形状、略円柱形状などとしてもよい。また、突起の突出先端の角を丸く形成したり、尖らせたりしてもよく、突起の高さ寸法(皮膚に接触する面からの突出寸法)は、例えば、1mm〜8mm程度としてもよい。
なお、突起の形状や形成箇所、サイズ、個数などは、種々の構成としてもよい。
また、突起は、ケース11やリストバンド20の等方性高密度炭素材やC/Cコンポジットで構成された部位に対して削り加工を施すことにより形成するようにしてもよい。または、上記したような型を用いて形成してもよい。
このように突起を設けることにより、腕時計1の装着時に、突起が腕の皮膚を指圧するので、指圧部位の血行が促進される。
【0034】
また、等方性高密度炭素材に代えて、熱伝導率が高い炭素材であるグラファイトを設けてもよい。グラファイトとしては、熱伝導率が1700W/(m・K)程度の超高熱伝導グラファイトを用いてもよい。なお、グラファイトは等方性高密度炭素材と併用してもよい。
このようにグラファイトを用いることにより、上記した等方性高密度炭素材を用いた際の効果と略同様の効果を奏するが、その効果をより一層高めることができる。
【0035】
人体は、身体組成の60%は水分、25%は炭素であり、36.5℃の平均体温で常に10ミクロンの遠赤外線を放射している。従って、人体の皮膚にC/Cコンポジットや等方性高密度炭素材、グラファイトなどの炭素材が触れると、人体が遠赤外線を吸収して加温される。すなわち、これら炭素材と人体との間で同じ波長の遠赤外線を放射し合い、炭素材は約36.5℃を維持する一方で身体の中では水分子が激しく衝突して、この振動が運動エネルギーとなって、熱に変換され身体が加温される。
その結果、遠赤外線が皮下組織や血管などに作用して血流が改善されるが、本発明者によれば、抹消、中枢の血流に15%の上昇効果があることが確認されている。また、これらの炭素材は、α波を発生して、身体を癒し健康増進に寄与する。
【0036】
なお、DLCコーティング層を、バンド部21,21の皮膚に接触する面に形成する場合は、上記した梨地や突起が形成された表面に対してDLCコーティング層を形成してもよい。この場合、DLCコーティング層を介して皮膚が表面に接触した場合に、DLCコーティング層の下に形成された梨地や突起の質感が十分皮膚に伝わるように、DLCコーティング層の厚さを設定するようにしてもよい。
また、梨地や突起が形成された表面に対して色素を塗布し、その上にDLCコーティング層を形成してもよい。
また、DLCコーティング層によって、梨地や突起を形成するようにしてもよい。
また、イオンプレーティング処理によって、バンド部21,21の皮膚に接触する面に梨地や突起を形成してもよい。
【0037】
本実施形態に係る腕時計1によれば、軽量化を図ることができ、かつ炭素材が放射する遠赤外線により健康増進効果を奏することができる。
すなわち、本発明に係る腕時計1は、本体部10のケース11及びリストバンド20の少なくとも一つを炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)で構成しているので、例えば、これらを、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックなどで構成した場合と比べて、より軽量にすることができ、腕時計全体の軽量化を図ることができる。さらに、C/Cコンポジットは、強度や弾性が高いので、C/Cコンポジットで構成した部位は、撓み難く、磨耗し難く、割れ・欠けが発生し難い。これにより、これら部位を肉薄に形成することができる。さらに、耐熱性も有する。
また、炭素材であるC/Cコンポジットには、遠赤外線放射作用があるので、当該腕時計1が腕に装着された際に、腕に対して遠赤外線が放射され、上述の作用メカニズムにより健康増進効果がもたらされる。
【0038】
また、本実施形態では、ケース11及びリストバンド20の少なくとも一つにおける表面にDLCコーティング層24を形成している。従って、外部に露見する表面にDLCコーティング層24を形成して、この層の配色や透明度などに工夫を凝らすことにより、腕時計1にデザイン性・ファッション性を付与することができる。
また、DLCコーティング層24の下地に色素を塗布すれば、その色素と、DLCコーティング層24の色相や透明度などとが相俟って、より一層芸術性を高めることができる。
【0039】
なお、図2では、DLCコーティング層24を設けたリストバンド20(バンド部21、バンド構成ピース22)を例示したが、ケース11もこれと同様の構成としてもよい。つまり、ケース11の本体23をC/Cコンポジットによって構成し、皮膚に接触する側の面とは反対側の面にDLCコーティング層24を形成し、腕時計1装着時において、当該層24が外部に露出する構成としてもよい。
また、この際、DLCコーティング層24は、皮膚に接触する側の面とは反対側の面だけでなく、ケース11の側周面や腕に接触する面に形成してもよい。
また、ケース11に対しても、上記リストバンド20と同様に、微小凹凸形成処理や色づけ処理、イオンプレーティング処理を行なってもよい。
【0040】
上述した腕時計1は、本体部10のケース11及びリストバンド20の少なくとも一つを、C/Cコンポジットによって構成されているが、それに替えて黒鉛などの炭化物の粒子状の炭素材を20〜50重量%含有した熱可塑性樹脂で構成してもよい。本体部10のケース11及びリストバンド20は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に3〜10μm、望ましくは3〜4μmの黒鉛粒子を20〜50重量%含有させ、射出成型により形成してもよい。
熱可塑性樹脂としては、上述の他、ポリスチレン、ポリアミド、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリールスルホン、ポリアリールケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイドスルフォン、ポリアリレート、液晶ポリエステル、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
この場合によれば、加工性がよいので、様々な形状に対応でき、本体部10のケース11及びリストバンド20が含有する黒鉛粒子が放射する遠赤外線により健康増進効果を奏することができるだけではなく、熱可塑性樹脂により本体部10のケース11及びリストバンド20の軽量化及び強度の向上を図ることができる。
【0041】
図3(a)及び(b)には、上述の腕時計1のリストバンド20のバンド構成ピース22の少なくとも1つに磁石部26を設けた例を示している。
この場合、ムーブメント部が強い磁力にさらされると磁力の影響を受け、針が進んだり遅れたりするなど、時間のずれが生じる可能性があるため、ケース11を磁気シールドする等、耐磁性能のあるものとする。また磁石部26を設ける位置をケース11から離れた位置になるよう配設してもよい。
磁石部26は少なくとも1つであるから、ムーブメント部に影響がでなければ、総磁束密度を例えば35〜200ミリステラとしてもよい。この場合、医療機器とすることができる可能性がある。磁石部26に用いられる磁石本体27の種類は特に限定されないが、例えばフェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、鉄、レアアース磁石等を用いることができる。
これによれば、磁石部26からの磁力により、上述の効果に加え、身体のコリの解消や血流の促進効果等を図ることができる。
【0042】
磁石部26は、図3(b)に示すように厚さが5mm前後のバンド構成ピース22の表面から2〜3mmの深さに形成された凹所22aに埋め込む形で配設されており、バンド構成ピース22の表面から断面半球状に突出して形成されている。図3(b)では26aは磁石部26の基部、26bは断面半球状に突出した突部、27は磁石本体を示している。
もちろん磁石本体27をバンド構成ピース22に形成した凹所22aに埋め込み、バンド構成ピース22の表面から突出しないようにしてもよいが、図例のように磁石部26が突部26bを有したものとし、リストバンド20を手首に巻きまわした際に神門等の手首のツボを刺激するような位置とすれば、上述の効果に加え、ツボを押圧することによるツボ刺激効果を図ることができる。
【0043】
ここでは磁石部26が基部26aと突部26bとを有した磁石本体27で構成された例を示しているが、基部26aのみを円盤状の磁石で構成し、突部26bは、上述した等方性高密度炭素材からなる突起としてもよい。
このように突部26bが人体の体温で加熱され、人体の組織と共鳴して、遠赤外線を放射する。これにより、より一層、人体の深奥部が加熱され、血流が促進され、健康増進効果を奏する。また、このように突部26bを熱伝導率の高い等方性高密度炭素材で構成すれば、皮膚の熱が、等方性高密度炭素材へ吸収され易くなり、皮膚が冷やされ、腕時計1の装着時において清涼感をもたらすことができる。
なお、図示していないが、このような等方性高密度炭素材による突部は、ケース11の皮膚と接触する面に形成するようにしても、同様の効果が期待できる。
【0044】
磁石部26の構成は図例に限定されず、例えば図3(c)に示すものとしてもよい。図3(c)は、図3(b)に示す例の変形例である。
図3(c)では、平坦面としたバンド構成ピース22の上に上述した等方性高密度炭素材からなる断面半球状の突部26bを貼着した例を示している。突部26bの底面26cに凹所26dを設け、この凹所26dに小粒円盤状の磁石本体27を埋め込んだ例を示している。これによれば、アレルギー体質の人でも安心して使用することができ、磁石本体27が見えず、見栄えがよい。
【0045】
以上、腕時計1の構成は図例に限定されず、本体部10、ケース11、リストバンド20、バンド構成ピース22、連結具25、磁石部26等の腕時計1の各部材の形状、構成も図例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 腕時計
10 本体部
20 リストバンド
22 バンド構成ピース
11 ケース
24 DLCコーティング層
26 磁石部
図1
図2
図3