特許第6598277号(P6598277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6598277
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ウィッグ用固定ピン
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   A41G3/00 K
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-71328(P2019-71328)
(22)【出願日】2019年4月3日
【審査請求日】2019年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514239752
【氏名又は名称】マスターズプランナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126402
【弁理士】
【氏名又は名称】内島 裕
(72)【発明者】
【氏名】坂本 公男
(72)【発明者】
【氏名】上田 昭二
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−040011(JP,A)
【文献】 実開昭57−129501(JP,U)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0322694(KR,Y1)
【文献】 国際公開第2007/129708(WO,A1)
【文献】 実開昭58−092327(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
A45D 8/00−8/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反転可能な枠部は、略コ字状の第一の枠構成部と前記略コ字状の第二の枠構成部とが連結されてなり、
前記第一の枠構成部の一部を覆うカバー部を備え、
前記第二の枠構成部には押さえ込み圧力が均一化された複数の櫛歯部が前記第二の枠構成部と一体形成され、
前記複数の櫛歯部は、それぞれの前記櫛歯部に挟んだ所定の被測定物を引き抜いた時の力の測定結果に基づいて、前記櫛歯部の曲げ角度が調整されていることで前記押さえ込み圧力が均一化され、
前記櫛歯部は、櫛歯本体部と櫛歯先端部とからなり、
前記櫛歯本体部は、全長の略半分の位置から先端に向かって幅寸法が略半分以下に先細りし、
前記櫛歯先端部は、略円形平板であり、かつ、前記櫛歯本体部との境界近傍から前記カバー部側に25度乃至45度の角度で折り曲げられた
ウィッグ用固定ピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッグを毛髪に固定するためのウィッグ用固定ピンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィッグ(かつら)におけるウィッグベースをウィッグの装着者の頭部に固定するためのウィッグ用固定ピンが知られている。
従来のウィッグ用固定ピンは、反転可能な枠部と、枠部に取りつけられた櫛歯部と、枠部の一部を覆う樹脂製のカバー部とを備え、枠部の両側に設けられた穴部に糸等を通してウィッグの裏面側(装着者の頭部側)に縫着される。そして、ウィッグ用固定ピンの櫛歯部を開く状態にして、毛髪を掬って櫛歯部と枠部との間に挿入した後、枠部を反転させて、毛髪を櫛歯部と枠部との間で所定の圧力で挟み込んで保持することでウィッグを頭部に固定することが可能となる。
【0003】
関連技術として、反転させることにより、櫛歯が閉じた状態及び櫛歯が開いた状態の切り替えが可能な留め具であって、開いた櫛歯と反転部材との間に毛髪を容易に挿入することができ、かつ、より多くの毛髪を挿入することができるようにするために、弾性板状部材から形成され、変形していない初期状態において、対向する2つの長辺部と対向する2つの短辺部から構成された略四辺形の平面形状を有するとともに、長辺部および短辺部の間または短辺部の中間に短辺部の長手方向に伸びる1つの離間領域を有し、離間領域の両側に連結領域を有する反転部材と、反転部材の変形により重ね合わされた連結領域を連結する連結部と、一方の長辺部に一端が固定された複数の櫛歯とを備え、初期状態における一方の長辺部の長さをWとし、初期状態から重ね合わされる状態までの連結領域の移動量をDとすると、0.15 ≦ D/W ≦ 0.17の関係を有する留め具を提供する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6063078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1に開示されている技術では、より、毛髪に対する櫛歯部の櫛通りがよく、かつ、毛髪を掬いやすくい安全・快適なウィッグ用固定ピンを実現することは困難であった。
【0006】
本発明は、メーカーならではの豊富な経験に基づき到達できた高い水準にあり、個人のアイデアレベルでは実現できない、製品としての現実性・完成度を誇るものである。
【0007】
本発明の目的は、毛髪に対する櫛歯部の櫛通りがよく、かつ、毛髪を掬いやすい安全・快適なウィッグ用固定ピンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウィッグ用固定ピンは、
反転可能な枠部は、略コ字状の第一の枠構成部と前記略コ字状の第二の枠構成部とが連結されてなり、
前記第一の枠構成部の一部を覆うカバー部を備え、
前記第二の枠構成部には押さえ込み圧力が均一化された複数の櫛歯部が前記第二の枠構成部と一体形成され、
前記複数の櫛歯部は、それぞれの前記櫛歯部に挟んだ所定の被測定物を引き抜いた時の力の測定結果に基づいて、前記櫛歯部の曲げ角度が調整されていることで前記押さえ込み圧力が均一化され、
前記櫛歯部は、櫛歯本体部と櫛歯先端部とからなり、
前記櫛歯本体部は、全長の略半分の位置から先端に向かって幅寸法が略半分以下に先細りし、
前記櫛歯先端部は、略円形平板であり、かつ、前記櫛歯本体部との境界近傍から前記カバー部側に25度乃至45度の角度で折り曲げられた。
【0009】
このように、押さえ込み圧力が均一化された複数の櫛歯部により、ウィッグ用固定ピンによる留まり・固定化が一定・安定するという効果をもたらし、また、毛髪がアンバランスに引っ張られ、ウィッグの装着者に違和感を覚えさせることがなく、さらに、毛髪・毛根に対するダメージをなくすことができる。
また、複数の櫛歯部が前記第二の枠構成部と一体形成されるため、櫛歯先端部が櫛歯本体部から剥離・脱落することがなく安全性を担保することができる。
また、櫛歯本体部は、全長の略半分の位置から先端に向かって幅寸法が略半分以下に先細りするため、毛髪に対する櫛通りをよくすることができる。
また、櫛歯先端部は、略円形平板であり、かつ、前記櫛歯本体部との境界近傍から前記カバー部側に25度乃至45度の角度で折り曲げられているため、毛髪を掬いやすくなっており、また、櫛歯先端部が地肌に真っ直ぐ当たることによる不都合を回避して安全性・快適性を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、毛髪に対する櫛歯部の櫛通りがよく、かつ、毛髪を掬いやすい安全・快適なウィッグ用固定ピンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態におけるウィッグ用固定ピンの櫛歯部が閉じた状態を示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態におけるウィッグ用固定ピンの櫛歯部が閉じた状態を示す背面図である。
図3】本発明の実施の形態におけるウィッグ用固定ピンの櫛歯部(1本)の開閉状態の遷移を示す概略側面図である。
図4】本発明の実施の形態におけるウィッグ用固定ピンの櫛歯部が開いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態におけるウィッグ用固定ピンPを図面を参照しつつ説明する。
但し、ウィッグ用固定ピンPは、従来のウィッグ用固定ピンと基本的な枠組み・構造は、共通する点が多く、その詳細な説明は省略し、本発明に特徴的な箇所を中心に説明する。
なお、従来のウィッグ用固定ピンは、反転可能な枠部と、枠部に取りつけられた櫛歯部と、枠部の一部を覆う樹脂製のカバー部とを備え、枠部の両側に設けられた穴部に糸等を通してウィッグの裏面側(装着者の頭部側)に縫着され、ウィッグ用固定ピンの櫛歯部を開く状態(図4も参照)にして、毛髪を掬って櫛歯部と枠部との間に挿入した後、枠部を反転させて、毛髪を櫛歯部と枠部との間で所定の圧力で挟み込んで保持することでウィッグを頭部に固定するものである。
【0013】
図1および図2を参照すると、ウィッグ用固定ピンPは、枠部10が、第一の枠構成部11と第二の枠構成部12を所定の金具(連結部)を介して、かしめにより接合されて形成されている。寸法は、略横31.6mm×縦13.3mmである。
枠部10の第一の枠構成部11の長辺部分の大半は、カバー部3(例えば、透明又は有色の樹脂製等のシリコンチューブである。)により覆われている。
枠部10の第二の枠構成部12の長辺部分の一側(第一の枠構成部11側)には櫛歯部4が形成されている。
【0014】
櫛歯部4は、ここでは本数は10本として示しているが、複数であれば本数は任意である。幅寸法1.1mmで、1.15mm間隔により並設されている。
櫛歯部4は、櫛歯本体部41および櫛歯先端部42からなる。
櫛歯部4の形状は、基本的には10本とも略同一形状であるが、10本の両端等の櫛歯本体部41の基端近傍等に若干の違いがあってもよい。
複数(ここでは10本)の櫛歯部4の1本ずつの押さえ込み圧力(毛髪を挟み込むための強さ)は均一化(ここでは50〜65gの範囲内。)されている。これにより、ウィッグ用固定ピン10による留まり・固定化が一定・安定するという効果を奏する。従来は複数の櫛歯部4の圧力の均一化作業は手間がかかるため実施されておらず、毛髪を挟む櫛歯部4の1本ずつの押さえ込み圧力にバラつきがあり、毛髪がアンバランスに引っ張られ、ウィッグの装着者に違和感を覚えさせるおそれがあったり、毛髪・毛根に対するダメージが少なからずあった。
ウィッグ用固定ピン10の金型作製時に、櫛歯部4の1本1本にフィラーゲージ(金属板)を挟み、それを引き抜いた時の力(gf)を測定器で測定し、その測定結果に基づいて、櫛歯部4の屈曲部の曲げ角度(曲げ高さ)を調整することで、櫛歯部4の1本ずつの押さえ込み圧力の均一化を実現した。なお、個体差が有る毛髪ではなく、毛髪に近い厚み寸法0.07mmのフィラーゲージを用いることで汎用性の高さが確保されている。
【0015】
櫛歯本体部41は、全長の略半分の位置から先端に向かって幅寸法1.1mmが略半分以下の寸法に先細りする形状とし、毛髪に対する櫛通りをよくした。なお、従来は櫛歯本体部の全長にわたり同じ太さ(幅寸法)であった。櫛歯本体部41は、全長の基端寄りに緩やかな屈曲部を有していてもよい。
【0016】
櫛歯先端部42は、櫛歯本体部41と略同じ厚み寸法(0.3mm)の略円形平板(径は櫛歯本体部42の幅寸法1.1mmと略同じである。)からなる一体成型による一体型とした。そのため櫛歯先端部42が櫛歯本体部41から剥離・脱落することがなく安全性が担保される。
また、櫛歯先端部42を略円形平板とする際にバリ取りを実施し、加工時に発生する不要な突起を手作業で研磨することであってもよい。
この点、従来は櫛歯先端部として球状の部材を櫛歯本体部に接合していたが、接合工程が必要となり煩雑であり、また球状の部材が櫛歯本体部から剥離・脱落すると鋭利で見た目も悪くなり、取り扱いにも不便となっていた。
【0017】
また、図3に示すように、櫛歯先端部42は、櫛歯本体部41との境界近傍から内側(すなわちカバー部3側)に所定の角度(25度〜45度)で折り曲げられた形状をなす。これにより櫛歯部4が毛髪を掬いやすくなっており、また、櫛歯先端部42が地肌に真っ直ぐ当たることによる不都合が回避されている。櫛歯先端部42は従来の球状ではなく、また従来と同様に櫛歯部4が閉じた状態(図1および図2参照)で櫛歯先端部42がカバー部3から飛び出しているため、特に利点となる。
【0018】
上記の本実施の形態によれば、毛髪に対する櫛歯部の櫛通りがよく、かつ、毛髪を掬いやすい安全・快適なウィッグ用固定ピンPを実現することができる。
【0019】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、各構成部分の大きさや形状、角度等を含む種々の変更が加えられて実施されてよい。
【符号の説明】
【0020】
P ウィッグ用固定ピン
10 枠部
11 第一の枠構成部
12 第二の枠構成部
3 カバー部
4 櫛歯部
41 櫛歯本体部
42 櫛歯先端部
【要約】
【課題】毛髪に対する櫛歯部の櫛通りがよく、かつ、毛髪を掬いやすい安全・快適なウィッグ用固定ピンを提供すること。
【解決手段】反転可能な枠部は、略コ字状の第一の枠構成部と前記略コ字状の第二の枠構成部とが連結されてなり、前記第一の枠構成部の一部を覆うカバー部を備え、前記第二の枠構成部には押さえ込み圧力が均一化された複数の櫛歯部が前記第二の枠構成部と一体形成され、前記櫛歯部は、櫛歯本体部と櫛歯先端部とからなり、前記櫛歯本体部は、全長の略半分の位置から先端に向かって幅寸法が略半分以下に先細りし、前記櫛歯先端部は、略円形平板であり、かつ、前記櫛歯本体部との境界近傍から前記カバー部側に25度乃至45度の角度で折り曲げられたウィッグ用固定ピン。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4