(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」は、XおよびY、すなわち両端の値を含む。本発明において「XまたはY」は、XかYの一方、あるいはXとYの双方を意味する。
【0010】
1.製造方法
(1)τ
本発明の製造方法においては、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および内部電子供与体化合物としてのスクシネート化合物を含む固体触媒と、(B)有機アルミニウム化合物とを接触させて前記触媒を調製してからα−オレフィン類と接触させるまでの時間をτとするとき、当該τが180秒以下である。本発明の製造方法の概要を
図1に示す。
【0011】
成分(A)および(B)を接触させる工程は、公知のとおりに実施できる。例えば、配管、金属容器、撹拌機付き金属容器等を使用して両者を接触させることができる。成分(A)と成分(B)の配合比は、成分(A)中に含まれるTi原子1molに対し、成分(B)が30〜3000molであることが好ましいが、用いる成分(B)の種類によっても変わり得る。通常、両者を接触する温度の上限は50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、28℃以下がよりさらに好ましい。下限は3℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、13℃以上がさらに好ましい。温度が高すぎると触媒が劣化しやすくなり、温度が低すぎると冷却のためのコストが嵩む。接触は不活性溶媒中で行うこともできる。不活性溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンエチルベンゼンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
【0012】
この接触により本発明で使用する触媒を速やかに調製できる。スケールが大きい場合などは、すべての原料が触媒に転化されない場合もあるが、一部でも触媒が生成した時点を触媒が調製された時点という。よって、触媒が調製された時点は、成分(A)と(B)とが接触を開始した時点でもある。この時点を便宜上τ0とする。
【0013】
次いで、この触媒をα−オレフィン類と接触させる。接触させる工程は公知のとおりに実施できる。例えば、反応器内に仕込まれたα−オレフィン類中に当該触媒を滴下することで両者を接触できる。このα−オレフィン類との接触開始時点を便宜上τ1とする。この時点からα−オレフィン類の重合が可能となる。
【0014】
前記τは触媒が調製されてから使用されるまでの時間であり、τ1−τ0で定義される。すなわちτは「触媒の未使用時間」である。触媒を容器内で調製する場合、τはその滞留時間で調整できる。触媒を配管内で調整する場合、τは管の長さや太さを変えることにより調整できる。
【0015】
本発明においては当該τを180秒以下とする。このようにτを短くすることで触媒の活性を高く維持することができる。この観点から、τの上限は100秒以下が好ましく、50秒以下がより好ましい。また、τの下限は0秒以上でもよい。τが0秒であるとは、触媒の調製と、触媒とα−オレフィン類との接触が同時に起こることである。例えば、反応器内にα−オレフィン類と、成分(B)を仕込んでおき、これに成分(A)を滴下すること等によりτ=0秒を達成できる。しかしながら、τの下限は3秒以上が好ましく、5秒以上がより好ましい。
【0016】
従来の技術においてはτという概念自体が存在しなかった。さらに、従来は内部電子供与体化合物としてスクシネート系化合物を用いる場合には外部電子供与体化合物を併用することが一般的であった。本発明では外部電子供与体化合物を用いない触媒系においてτという概念を見出し、τを特定の時間内にすることで高活性を達成することに成功した。この機構は明らかではなく限定されないが、τが長くなると成分(A)中のチタンが成分(B)有機アルミニウム化合物等によって過還元されやすくなり活性が低下するためではないかと推察される。また、本発明では外部電子供与体化合物を用いないため低コストで製造でき、外部電子供与体を使用する場合に比較して活性も上がるのでコスト的により優位となるという利点がある。さらに、外部電子供与体化合物を用いた場合に比較して立体規則性は低いが、フィルム、シートの分野では透明性、成形加工性、耐衝撃性等を改善するために低立体規則性の重合体が好ましい場合があるので、本発明は当該分野に有効に使用される。
【0017】
(2)各成分
1)成分(A)
固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する。この固体触媒成分については、多くの先行技術文献が、その製造方法を提示している。具体的には、この固体触媒成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物ならびに電子供与体化合物を相互接触させることにより得られる。例えば、次の方法が知られている。
(1)マグネシウム化合物もしくはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体と、反応条件下に液相をなすチタン化合物とを、反応させる方法(前記錯化合物は、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下で粉砕して用いてもよいし粉砕せずに用いてもよい)、
(2)マグネシウム化合物の液状物と、液状のチタン化合物を電子供与体化合物の存在下または不存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法、
(3)固体状のマグネシウム化合物と液状のチタン化合物および電子供与体化合物と反応させる方法、
(4)上記(2)や(3)で得られるものに、さらにチタン化合物を反応させる方法、
(5)上記(1)や(2)や(3)で得られるものにさらに電子供与体化合物およびチタン化合物を反応させる方法、
(6)マグネシウム化合物またはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を、電子供与体化合物、およびチタン化合物の存在下に粉砕し、電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法(前記粉砕は、粉砕助剤等の存在下で行ってもよい)、
(7)前記(1)〜(5)で得られる化合物を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物、または芳香族炭化水素で処理する方法。
【0018】
成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)
gX
4−gで表される4価のチタン化合物が好適である。式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4である。チタン化合物として、より具体的にはTiCl
4、TiBr
4、TiI
4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O
n−C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(OisoC
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2、Ti(O
n−C
4H
9)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(O
n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(O
n−C
4H
9)
4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、特にテトラハロゲン化チタンであり、より特に好ましいものは、四塩化チタンである。
【0019】
成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0020】
成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。本発明では内部電子供与体としてスクシネート系化合物を用いる。スクシネート系化合物とはコハク酸のジエステルまたはコハク酸誘導体のジエステルである。以下、スクシネート系化合物について詳しく説明する。本発明で好ましく使用されるスクシネート系化合物は、以下の式(I)で表される。
【0022】
式中、基R
1及びR
2は、互いに同一か又は異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C1〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり;基R
3〜R
6は、互いに同一か又は異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C1〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基であり、同じ炭素原子または異なる炭素原子に結合している基R
3〜R
6は一緒に結合して環を形成してもよい。
R
1及びR
2は、好ましくは、C1〜C8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基である。R
1及びR
2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR
1及びR
2基の例は、C2〜C8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、及びネオペンチルが特に好ましい。
【0023】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R
3〜R
5が水素であり、R
6が、3〜10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基であるものである。このような単置換スクシネート化合物の好ましい具体例は、ジエチル−sec−ブチルスクシネート、ジエチルテキシルスクシネート、ジエチルシクロプロピルスクシネート、ジエチルノルボニルスクシネート、ジエチルペリヒドロスクシネート、ジエチルトリメチルシリルスクシネート、ジエチルメトキシスクシネート、ジエチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジエチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジエチルフェニルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルスクシネート、ジエチルベンジルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−t−ブチルスクシネート、ジエチルイソブチルスクシネート、ジエチルイソプロピルスクシネート、ジエチルネオペンチルスクシネート、ジエチルイソペンチルスクシネート、ジエチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチルフルオレニルスクシネート、1−(エトキシカルボジイソブチルフェニルスクシネート、ジイソブチル−sec−ブチルスクシネート、ジイソブチルテキシルスクシネート、ジイソブチルシクロプロピルスクシネート、ジイソブチルノルボニルスクシネート、ジイソブチルペリヒドロスクシネート、ジイソブチルトリメチルシリルスクシネート、ジイソブチルメトキシスクシネート、ジイソブチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジイソブチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルスクシネート、ジイソブチルベンジルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−t−ブチルスクシネート、ジイソブチルイソブチルスクシネート、ジイソブチルイソプロピルスクシネート、ジイソブチルネオペンチルスクシネート、ジイソブチルイソペンチルスクシネート、ジイソブチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルフルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−sec−ブチルスクシネート、ジネオペンチルテキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルノルボニルスクシネート、ジネオペンチルペリヒドロスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジネオペンチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジネオペンチルフェニルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチルベンジルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチルフルオレニルスクシネートである。
【0024】
式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R
3〜R
6からの少なくとも2つの基が、水素とは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C1〜C20の線状又は分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、又はアルキルアリール基から選択されるものである。水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。具体的には、R
3及びR
4が水素とは異なる基であり、R
5及びR
6が水素原子である化合物である。このような二置換スクシネートの好ましい具体例は、ジエチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジエチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジエチル−2、2−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジイソブチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネートである。
【0025】
更に、水素とは異なる少なくとも2つの基が異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。具体的にはR
3及びR
5が水素と異なる基である化合物である。この場合、R
4及びR
6は水素原子であってもよいし水素とは異なる基であってもよいが、いずれか一方が水素原子であること(3置換スクシネート)が好ましい。このような化合物の好ましい具体例は、ジエチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジエチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルジエチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジエチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジイソブチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−3―シクロペンチルスクシネートである。
【0026】
式(I)の化合物のうち、基R
3〜R
6のうちのいくつかが一緒に結合して環を形成している化合物も好ましく用いることができる。このような化合物として特許文献10に挙げられている化合物、例えば、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,6−ジメチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,5一ジメチルシクロペンタン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチルメチル)−2一メチルシクロへキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンを挙げることができる。他には、例えば特許文献6に開示されているような環状スクシネート化合物も好適に用いることができる。他の環状スクシネート化合物の例としては、特許文献7に開示されている化合物も好ましい。
【0027】
式(I)の化合物のうち、基R
3〜R
6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は窒素およびリン原子を含む第15族原子あるいは酸素およびイオウ原子を含む第16族原子であることが好ましい。基R
3〜R
6が第15族原子を含む化合物としては、特許文献8に開示される化合物が挙げられる。一方、基R
3〜R
6が第16族原子を含む化合物としては、特許文献9に開示される化合物が挙げられる。
【0028】
固体触媒成分を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物を挙げることができ、中でも特に塩素が好ましい。
【0029】
2)成分(B)
成分(B)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0030】
R
12.5Al(OR
2)
0.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドのようなジアルキルアルミニウムハロゲニド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドのようなアルキルアルミニウムセスキハロゲニド;
【0031】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0032】
3)α−オレフィン類
α−オレフィン類とは、α−オレフィンまたはその誘導体をいう。α−オレフィン類としては、プロピレンの他、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;ブタジエン、1,9−デカジエン等のジエン類;アリルトリアルキルシラン類を挙げることができる。これらは組み合せて使用してもよい。特に本発明はプロピレンの重合において有意な効果を発揮する。
【0033】
4)重合
上記のとおりに調製した触媒に前記のα−オレフィン類を接触させて重合する。この際、まず前記触媒を用いて予備重合を行うことが好ましい。予備重合とは、その後のα−オレフィン類の本重合の足がかりとなるα−オレフィン類の鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予備重合は回分式、連続式等の公知の方法で行うことができる。予備重合では、モノマーとして前記のα−オレフィン類を用いる。また、これらのモノマーは、1種類だけでなく2種類以上を段階的にあるいは混合して使用することもできる。予備重合時に分子量調節剤として水素を用いることもできる。予備重合は、不活性炭化水素溶媒中で行なうことができるが、液体モノマー中、気相モノマー中で行なうこともできる。
予備重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。予備重合させるα−オレフィン類の量は、固体触媒1gに対して0.5〜800gが好ましく、5〜500gがより好ましく、10〜400gがさらに好ましい。
【0034】
次いで、予備重合した触媒をα−オレフィン類を仕込んだ重合反応系内に添加して、α−オレフィン類の本重合を行う。本重合は、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法およびこれらを組み合わせた公知の重合法で実施できる。本重合は回分式、半連続式、あるいは連続式のいずれでもよいが、工業的に使用する場合は連続式が好ましい。重合温度は常温〜150℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。圧力は常圧〜10MPaで行うのが一般的であり、0.5〜6MPaが好ましい。重合時間は、通常は10時間以下であり、10分〜5時間が好ましい。本重合時には、分子量調節剤として水素を使用することができる。
【0035】
(4)触媒活性
本発明の製造方法によれば、高い触媒活性でα−オレフィン類の重合体を得ることができる。具体的にτが1200〜秒と長い場合の触媒活性を1とすると、本発明では2倍程度の触媒活性を達成できる。この際に得られるα−オレフィン類の重合体の立体規則性は、ポリプロピレンを例にするとキシレン不溶成分量(XI)にして93重量%以上である。
【0036】
2.製造装置
本発明の製造方法は、発明の効果を損なわない限り任意の装置を用いて実施できる。しかしながら、重合反応器と、当該反応器に前記触媒を導入するための導入装置とを備え、前記導入装置が成分(A)と(B)とを接触させて前記触媒を調製する接触部を備える装置を用いることが好ましい。
【0037】
重合反応器として公知のものを用いることができる。接触部は、配管、金属容器、あるいは撹拌機付き金属容器等であってよい。特に、連続的に成分を配管に流して配管内で成分同士を接触させる場合は、配管の太さおよび長さを調節することで、接触時間を調整できる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を掲げ本発明についてさらに説明する。各分析は以下の方法で行った。
[MFR(メルトフローレート)]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
【0039】
[XI(キシレン不溶成分量)]
300mLフラスコに重合体試料2.5gおよび250mLのオルトキシレンを入れ、撹拌しながら沸騰温度で30分間溶解した。続いて、溶液を100℃に放冷した後、フラスコを25℃の恒温水槽に入れ、25℃になってから1時間経過後、ろ過を行った。回収したろ液のオルトキシレンを蒸発させ、残った残渣の重量を仕込みの重合体試料の重量で除した値を100倍し、25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。XIすなわちキシレン不溶成分量(25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%)は、(100−可溶性のポリマーの重量%)で求められ、ポリマーの立体規則性の指標として用いられる。
【0040】
[重合活性]
アジレント・テクノロジー株式会社製240AAを用い、原子吸光法により、生成したポリマーサンプル中のマグネシウム含有量を測定し、元の触媒に含まれるマグネシウム含有量から触媒1gあたりのポリマー重合量として、重合活性を求めた。
【0041】
[実施例1−1]
(1)固体触媒成分の調製
特開2011−500907号の実施例に記載に従い、成分(A)の固体触媒成分を調製した。具体的には以下のとおりに調製した。
窒素でパージした500mLの四つ口丸底フラスコに、TiCl
4 250mLを0℃において入れた。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl
2・2.8C
2H
5OHおよび9.1mmolのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。MgCl
2・2.8C
2H
5OHは、米国特許4、399、054号の実施例2に記載された方法にしたがって10000rpmに代えて3000rpmで操作して製造した。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。
次に、以下の操作を2回繰り返した。
固体生成物に250mLの新しいTiCl
4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。60℃において無水ヘキサンを用いて固体を6回洗浄した。1回の洗浄に用いた無水ヘキサンは100mLであった。
【0042】
(2)触媒の調製および重合
撹拌機を備えた内容積3Lのオートクレーブを準備した。オートクレーブへ触媒を圧入することができる内容積20cm
3のステンレス製容器(追添器)をオートクレーブに取り付け、追添器内を窒素置換した。オートクレーブ内を窒素置換し、さらにオートクレーブに少量の窒素をフィードしながら、成分(B)であるトリエチルアルミニウム4.9mmolを入れた。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素0.24mol%とプロピレン16.0molとを加え撹拌し、30℃に昇温した。(1)で調製した成分(A)の固体触媒成分ヘキサンスラリー15mL(固体触媒として5mg)を少量の窒素をフィードした状態の追添器に入れた。
【0043】
追添器内を窒素で4MPaに加圧して、触媒をオートクレーブ内に圧入した。オートクレーブを80℃に昇温し、60分間プロピレンを重合した。追添器から成分(A)を加えることにより、成分(A)とオートクレーブ内に仕込まれた成分(B)とを接触させて重合触媒を生成するとともに、プロピレンとも接触させた。すなわち、本例におけるτは0秒とした。重合終了後、未反応プロピレンをパージし、ポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを60℃で16時間真空乾燥し、上記の方法に従い、MFR、XI、重合活性の分析を行った。
【0044】
本例では、室温(25℃)にある成分(A)と、30℃のオートクレーブ内に存在する成分(B)を接触させたため、触媒調製時の接触温度を測定することはできない。しかしながら接触温度は25〜30℃の範囲にあることは明らかである。
【0045】
[実施例1−2]
(1)固体触媒成分の調製
実施例1−1と同様にして成分(A)を調製した。
【0046】
(2)触媒の調製および重合
撹拌機を備えた内容積3Lのオートクレーブを準備した。オートクレーブ内を窒素置換し、さらにオートクレーブに少量の窒素をフィードしながら、追添器を取り付けた。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素0.24mol%とプロピレン16.0molとを加え撹拌し、30℃に昇温した。少量の窒素をフィードした状態の追添器に、成分(B)であるトリエチルアルミニウム4.9mmolを入れた。(1)で調製した成分(A)の固体触媒成分として5mgを追添器に入れ、25℃の成分(B)と25℃の成分(A)とを接触させた。
【0047】
成分(A)を追添器に入れてから10秒経過後、追添器内を窒素で4MPaに加圧して、触媒をオートクレーブ内に圧入した。すなわち本例におけるτは10秒とした。オートクレーブを80℃に昇温し、60分間プロピレンを重合した。重合終了後、未反応プロピレンをパージし、ポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを60℃で16時間真空乾燥し、上記の方法に従い、MFR、XI、重合活性の分析を行った。
【0048】
[実施例1−3]
τを180秒とした以外は実施例1−2と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0049】
[参考例1−1、1−2]
τをそれぞれ600秒および1800秒とした以外は実施例1−2と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
[参考例1−3、1−4]
τをそれぞれ10800秒および2592000秒とした以外は実施例1−2と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0050】
[実施例2−1、2−2]
成分(A)と成分(B)とを15℃で接触させた以外は実施例1−2および1−3と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0051】
[参考例2−1、2−2]
τをそれぞれ600秒および1800秒とした以外は実施例2と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0052】
[実施例3−1、3−2]
成分(A)と成分(B)とを5℃で接触させた以外は実施例2と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0053】
[参考例3−1、3−2]
τをそれぞれ600秒および1800秒とした以外は実施例3と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
これらの結果を表1および
図2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
τが180秒以下であると高活性が達成できることが明らかである。この効果は成分(A)および(B)の接触温度が3〜30℃のときに顕著である。また接触温度が3〜20℃の場合は、τが600秒以下でも比較的高い活性を有している。