特許第6598285号(P6598285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598285
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】α−オレフィン類の重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20191021BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20191021BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F2/01
   C08F10/00 510
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-228763(P2014-228763)
(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-89130(P2016-89130A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年11月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】神村 尭洋
(72)【発明者】
【氏名】大坪 彰博
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−014725(JP,A)
【文献】 特表2005−529224(JP,A)
【文献】 特表2005−529225(JP,A)
【文献】 特表2010−513625(JP,A)
【文献】 特開平09−020803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 4/82
C08F 10/00− 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マグネシウムと、チタンと、ハロゲンと、内部電子供与体化合物としてのジエーテル化合物を含む固体触媒、および
(B)トリアルキルアルミニウム
を含む触媒を用いたプロピレンの重合体の製造方法であって、
(i)前記触媒が(C)外部電子供与体化合物をさらに含み、
成分(B)と(C)を予め接触して得た接触物と、成分(A)(ただし、予備重合触媒中に含有されるものを除く)とを接触して触媒を調製する工程を含み、当該触媒を調製してから当該触媒をプロピレンと接触させるまでの時間をτとするとき、当該τが3〜100分である、
前記製造方法。
【請求項2】
前記τが10〜70分である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記触媒調製工程における各成分を接触させる温度が、3〜30℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法のための反応装置であって、
重合反応器と、当該反応器に前記触媒を導入するための導入装置とを備え、
前記導入装置が、
成分(A)と、成分(B)と(C)の接触物とを接触させて前記触媒を調製する接触部を備える反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はα−オレフィン類の重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィンを立体規則性触媒の存在下に重合し、結晶性ポリオレフィンを製造する方法は多くの先行技術に開示されている。これらの方法のうち、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分とする固体触媒、(b)有機アルミニウム化合物および(c)電子供与体化合物から形成される触媒の存在下にα−オレフィンを重合することにより高立体規則性の重合体を高い触媒活性で得る方法は先行技術文献(例えば特許文献1〜4)に開示されており、かつ工業的規模において採用されている。しかしながら、当該技術分野においてはさらなる高触媒活性の重合技術が求められている。
【0003】
特許文献5(特開2013−14725号)は、高触媒活性を達成することを目的として、(a)固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体化合物を特定の順番で接触する重合方法が開示されている。具体的に特許文献5には、少量の(b)有機アルミニウム化合物の存在下に(a)固体触媒成分を用いてα−オレフィンを予備重合して予備重合触媒を得、次いで当該予備重合触媒と、(b)有機アルミニウム化合物と(c)電子供与体化合物とを予め接触させて得た接触物とを、α−オレフィンを重合させる前に接触させてから、α−オレフィンを重合することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2637076号
【特許文献2】特許第2740503号
【特許文献3】特許第3984304号
【特許文献4】特公平6−23406号
【特許文献5】特開2013−14725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該分野においてはさらに高い触媒活性でα−オレフィン重合体を製造する方法が望まれている。よって、本発明は、高い触媒活性でα−オレフィン類の重合体を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および特定の内部電子供与体化合物を含む固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに必要に応じて(C)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いたα−オレフィン類の重合において、触媒を調製した時点から、当該触媒をα−オレフィン類と接触させるまでの時間τに着眼し、当該τが特定の時間以下である場合に前記課題が解決できることを見出した。
すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
[1](A)マグネシウムと、チタンと、ハロゲンと、内部電子供与体化合物としてのジエーテル化合物を含む固体触媒、および
(B)有機アルミニウム化合物
を含む触媒を用いたα−オレフィン類の重合体の製造方法であって、
(i)前記触媒が(C)外部電子供与体化合物をさらに含むとき、
成分(B)と(C)を予め接触して得た接触物と、成分(A)とを接触して触媒を調製する工程を含み、当該触媒を調製してから当該触媒をα−オレフィン類と接触させるまでの時間をτとするとき、当該τが3〜100分であり、
(ii)前記触媒が(C)外部電子供与体化合物を含まないとき、
成分(A)と(B)を接触して触媒を調製する工程を含み、当該触媒を調製してから当該触媒をα−オレフィン類と接触させるまでの時間をτとするとき、当該τが3〜100分である、前記製造方法。
[2]前記τおよびτが10〜70分である、[1]に記載の製造方法。
[3]前記触媒調製工程における各成分を接触させる温度が、3〜30℃である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記[1]に記載の製造方法のための反応装置であって、
重合反応器と、当該反応器に前記触媒を導入するための導入装置とを備え、
前記導入装置が、
成分(A)と、成分(B)と(C)の接触物とを接触させて前記触媒を調製する接触部、または成分(A)と(B)とを接触させて前記触媒を調製する接触部、
を備える反応装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高い触媒活性でα-オレフィン類の重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の製造方法を示す概要図
図2】実施例1〜3と比較例1〜3の結果を示す図
図3】実施例4〜6と比較例4〜6の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」は、XおよびY、すなわち両端の値を含む。本発明において「XまたはY」は、XかYの一方、あるいはXとYの双方を意味する。
【0010】
1.製造方法
(1)τ
本発明の製造方法においては、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および特定の内部電子供与体化合物を含む固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに必要に応じて(C)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いたα−オレフィン類の重合において、触媒を調製した時点から、当該触媒をα−オレフィン類と接触させるまでの時間τが特定の範囲内にある。本発明の製造方法の概要を図1に示す。
【0011】
本発明におけるτについて以下の態様が存在する。
(i)触媒が(C)外部電子供与体化合物を含むとき:
成分(B)と(C)を予め接触して得た接触物と、成分(A)とを接触して触媒を調製する工程を含み、当該触媒を調製してから当該触媒をα−オレフィン類と接触させるまでの時間をτとする。τは3〜100分である。
(ii)触媒が(C)外部電子供与体化合物を含まないとき:
成分(A)と(B)を接触して触媒を調製する工程を含み、当該触媒を調製してから当該触媒をα−オレフィン類と接触させるまでの時間をτとする。τは3〜100分である。
【0012】
態様(i)において、成分(B)および(C)を接触させる工程は公知のとおりに実施できる。例えば、配管、金属容器、撹拌機付き金属容器等を使用して両者を接触させることができる。成分(B)と成分(C)の配合比は(B)1molに対し(C)が0.001〜2.0molが好ましく、0.005〜1.0molがより好ましい。通常、成分(B)と(C)を接触する温度の上限は50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、28℃以下がよりさらに好ましく、下限は3℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、13℃以上がさらに好ましい。温度が高すぎると触媒が劣化しやすくなり、温度が低すぎると冷却のためのコストが嵩む。接触は不活性溶媒中で行うこともできる。不活性溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
【0013】
成分(B)および(C)の接触物と、成分(A)とを接触させる工程も同様に実施できる。成分(A)と接触させる成分(B)と成分(C)の量は、成分(A)中に含まれるTi原子1molに対し、成分(B)として30〜3000mol、成分(C)として0.15〜3000molであることが好ましいが、用いる成分(B)ならびに成分(C)の種類によっても変わり得る。これらを接触させる温度についても前述のとおりである。この接触により本発明で使用する触媒を速やかに調製できる。スケールが大きい場合などは、すべての原料が触媒に転化されない場合もあるが、一部でも触媒が生成した時点を触媒が調製された時点という。よって、触媒が調製された時点は、成分(B)および(C)の接触物と成分(A)とが接触を開始した時点でもある。この時点を便宜上τ0とする。態様(ii)も、態様(i)と同様に実施できる。
【0014】
次いで、この触媒をα−オレフィン類と接触させる。接触させる工程は公知のとおりに実施できる。例えば、反応器内に仕込まれたα−オレフィン類中に当該触媒を滴下することで両者を接触できる。このα−オレフィン類との接触開始時点を便宜上τAとする。この時点からα−オレフィン類の重合が可能となる。
【0015】
前記τは触媒が調製されてから使用されるまでの時間であり、τA−τ0で定義される。すなわちτは「触媒の未使用時間」である。触媒を容器内で調製する場合、τはその滞留時間で調整できる。触媒を配管内で調整する場合、τは管の長さや太さを変えることにより調整できる。
【0016】
態様(i)において、τは3〜100分である。τがこの範囲にあると触媒の活性が高くなる。この観点からτの下限は10分以上が好ましい。上限は80分以下が好ましく、70分以下がより好ましい。
【0017】
態様(ii)において、τは3〜100分である。τがこの範囲にあると触媒の活性が高くなる。この観点からτの下限は10分以上が好ましい。上限は80分以下が好ましく、70分以下がより好ましい。
【0018】
従来の技術においてはτという概念自体が存在しない。本発明ではτに最適な範囲が存在することを初めて見出し、τを当該範囲にすることで触媒活性を向上させる。この機構は明らかではなく限定されないが、τが短いと有機アルミニウムによる触媒の活性化効果が十分でなく、またτが長すぎると有機アルミニウムによる触媒の過還元反応が進行して失活するためと推察される。
【0019】
本発明では外部電子供与体化合物(成分C)を用いても用いなくてもよい。成分(C)を用いると立体規則性の高いα−オレフィン重合体を得ることができる。一方、成分(C)を用いないとα−オレフィン重合体を低コストで製造でき、外部電子供与体を使用する場合に比較して活性も上がるのでコスト的により優位となるという利点がある。さらに、外部電子供与体化合物を用いた場合に比較して立体規則性は低いが、フィルム、シートの分野では透明性、成形加工性、耐衝撃性等を改善するために低立体規則性の重合体が好ましい場合があるので、当該分野に有効に使用される。
【0020】
(2)各成分
1)成分(A)
固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する。この固体触媒成分については、多くの先行技術文献が、その製造方法を提示している。具体的には、この固体触媒成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物ならびに電子供与体化合物を相互接触させることにより得られる。例えば、次の方法が知られている。
(1)マグネシウム化合物もしくはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体と、反応条件下に液相をなすチタン化合物とを、反応させる方法(前記錯化合物は、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下で粉砕して用いてもよいし粉砕せずに用いてもよい)、
(2)マグネシウム化合物の液状物と、液状のチタン化合物を電子供与体化合物の存在下または不存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法、
(3)固体状のマグネシウム化合物と液状のチタン化合物および電子供与体化合物と反応させる方法、
(4)上記(2)や(3)で得られるものに、さらにチタン化合物を反応させる方法、
(5)上記(1)や(2)や(3)で得られるものにさらに電子供与体化合物およびチタン化合物を反応させる方法、
(6)マグネシウム化合物またはマグネシウム化合物と電子供与体化合物との錯化合物を、電子供与体化合物、およびチタン化合物の存在下に粉砕し、電子供与体化合物または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理するかまたは予備処理せずに得た固体を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法(前記粉砕は、粉砕助剤等の存在下で行ってもよい)、
(7)前記(1)〜(5)で得られる化合物を、ハロゲンもしくはハロゲン化合物、または芳香族炭化水素で処理する方法。
【0021】
成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)4−gで表される4価のチタン化合物が好適である。式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4である。チタン化合物として、より具体的にはTiCl、TiBr、TiIなどのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(OisoC)Brなどのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−CCl、Ti(OCBrなどのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−CCl、Ti(OCBrなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(O−Cなどのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、特にテトラハロゲン化チタンであり、より特に好ましいものは、四塩化チタンである。
【0022】
成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0023】
成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。本発明においては内部電子供与体としてジエーテル化合物を用いる。ジエーテル化合物とは分子内に2つのエーテル基を有する化合物である。本発明においては1,3−ジエーテルが好ましい。1,3−ジエーテルとは、プロパンを基本骨格し1,3位にエーテル基が結合した化合物である。本発明においては式(I)で表される1,3−ジエーテルがより好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
式中、RおよびRIIは、同一かまたは異なり、水素、あるいは、1以上の環式構造を形成してもよい線状または分岐鎖のC〜C18炭化水素基である。RIII基は、互いに同一かまたは異なり、水素またはC〜C18炭化水素基である。RIV基は、互いに同一かまたは異なり、RIIIと同様に定義される(ただし水素原子ではない)。R〜RIV基のそれぞれは、ハロゲン、N、O、S、およびSiから選択されるヘテロ原子を有していてもよい。
【0026】
IVは好ましくは1〜6個の炭素原子のアルキル基、より好ましくはメチル基である。RIII基は、好ましくは水素である。さらに、Rがメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピル基である場合には、RIIはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、フェニル、またはベンジル基であってよい。Rが水素である場合には、RIIは、エチル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシルエチル、ジフェニルメチル、p−クロロフェニル、1−ナフチル、1−デカヒドロナフチル基であってよい。また、RおよびRIIは同一であってよく、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、フェニル、ベンジル、シクロヘキシル、シクロペンチル基であってよい。
【0027】
好ましいジエーテル化合物の特定の例としては、2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−ナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−フルオロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−デカヒドロナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−プロピル−2−ペンチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−メチルシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−メチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパンが挙げられる。
【0028】
特に、式(II)で表される1,3−ジエーテルが好ましい。
【0029】
【化2】
【0030】
式中、RIV基はすでに述べたとおりである。RIIIおよびR基は、互いに同一かまたは異なり、水素、ハロゲン(好ましくはClまたはF)、線状または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルカリール、およびC〜C20アラルキル基からなる群から選択される。2以上R基は、互いに結合して飽和または不飽和の縮合環状構造を形成してもよい。当該縮合環状構造は、ハロゲン(好ましくはClまたはF)、線状または分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルカリール、およびC〜C20アラルキル基からなる群から選択されるRVI基によって置換されていてもよい。RおよびRVI基は、1以上のヘテロ原子を有していてもよい。
【0031】
式(I)および(II)において、すべてのRIII基は水素であり、すべてのRIV基はメチルであることが好ましい。特に、2以上のR基が互いに結合して、1以上の縮合環状構造(好ましくはベンゼン環)を形成している式(II)の1,3−ジエーテルが好ましい。当該縮合環状構造はRVI基によって置換されていてもよい。
【0032】
式(III)の化合物がとりわけ好ましい。
【0033】
【化3】
【0034】
式中、RVI基は、同一かまたは異なり、水素、ハロゲン(好ましくはClまたはF)、線状又は分岐鎖のC〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルカリール、およびC〜C20アラルキル基からなる群より選択される。RVI基は、置換基としてN、O、S、P、Si、およびハロゲン(特にClまたはF)からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を有していてもよい。基RIIIおよびRIVは式(II)と同様に定義される。
【0035】
式(II)および(III)に含まれる化合物の具体例として以下が挙げられる。
1,1−ビス(メトキシメチル)−シクロペンタジエン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフェニルシクロペンタジエン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフルオロシクロペンタジエン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−3,4−ジシクロペンチルシクロペンタジエン;
1,1−ビス(メトキシメチル)インデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3−ジメチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラフルオロインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−3,6−ジメチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニル−2−メチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−4−シクロヘキシルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)インデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリメチルシリルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリフルオロメチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−メチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロペンチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−イソプロピルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロヘキシルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert−ブチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert−ブチル−2−メチルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−7−フェニルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−2−フェニルインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−ベンズインデン;
1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−2−メチルベンズインデン;
9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラメチルフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5,6,7−ヘキサフルオロフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3−ベンゾフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−ジベンゾフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジイソプロピルフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジフルオロフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフルオレン;
9,9−ビス(メトキシメチル)−4−tert−ブチルフルオレン。
【0036】
固体触媒成分を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物を挙げることができ、中でも特に塩素が好ましい。
【0037】
2)成分(B)
成分(B)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0038】
2.5Al(OR0.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドのようなジアルキルアルミニウムハロゲニド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドのようなアルキルアルミニウムセスキハロゲニド;
【0039】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0040】
3)成分(C)
成分(C)成分の電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物としては有機ケイ素化合物が好ましい。好ましい有機ケイ素化合物として以下が挙げられる。
【0041】
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン。
【0042】
中でも、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルプロピルジメトキシシラン、t−ブチルt−ブトキシジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i−ブチルセク−ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2−イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン−2−イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i−ブチルi−プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt−ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチルなどが好ましい。
【0043】
4)α−オレフィン類
α−オレフィン類とは、α−オレフィンまたはその誘導体をいう。α−オレフィン類としては、プロピレンの他、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;ブタジエン、1,9−デカジエン等のジエン類;アリルトリアルキルシラン類を挙げることができる。これらは組み合せて使用してもよい。特に本発明はプロピレンの重合において有意な効果を発揮する。
【0044】
5)重合
上記のとおりに調製した触媒に前記のα−オレフィン類を接触させて重合する。この際、まず前記触媒を用いて予備重合を行うことが好ましい。予備重合とは、その後のα−オレフィン類の本重合の足がかりとなるα−オレフィン類の鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予備重合は回分式、連続式等の公知の方法で行うことができる。予備重合では、モノマーとして前記のα−オレフィン類を用いる。また、これらのモノマーは、1種類だけでなく2種類以上を段階的にあるいは混合して使用することもできる。予備重合時に分子量調節剤として水素を用いることもできる。予備重合は、不活性炭化水素溶媒中で行なうことができるが、液体モノマー中、気相モノマー中で行なうこともできる。
予備重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。予備重合させるα−オレフィン類の量は、固体触媒1gに対して0.5〜800gが好ましく、5〜500gがより好ましく、10〜400gがさらに好ましい。
【0045】
次いで、予備重合した触媒をα−オレフィン類を仕込んだ重合反応系内に添加して、α−オレフィン類の本重合を行う。本重合は、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法およびこれらを組み合わせた公知の重合法で実施できる。本重合は回分式、半連続式、あるいは連続式のいずれでもよいが、工業的に使用する場合は連続式が好ましい。重合温度は常温〜150℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。圧力は常圧〜10MPaで行うのが一般的であり、0.5〜6MPaが好ましい。重合時間は、通常は10時間以下であり、10分〜5時間が好ましい。本重合時には、分子量調節剤として水素を使用することができる。
【0046】
(4)触媒活性
本発明の製造方法によれば、高い触媒活性でα−オレフィン類の重合体を得ることができる。具体的にτが0分程度である場合の触媒活性を1とすると、本発明では1.2〜1.5倍程度の触媒活性を達成できる。成分(C)を用いた際に得られるα−オレフィン類の重合体の立体規則性は、ポリプロピレンを例にするとキシレン不溶成分量(XI)にして95重量%以上である。
【0047】
2.製造装置
本発明の製造方法は、発明の効果を損なわない限り任意の装置を用いて実施できる。しかしながら、重合反応器と当該反応器に前記触媒を導入するための導入装置とを備え、導入装置が触媒を調製するための接触部を有する装置を用いることが好ましい。接触部は、成分(A)と、成分(B)と(C)の接触物とを接触させて前記触媒を調製する接触部、または成分(A)と(B)とを接触させて前記触媒を調製する接触部である。接触部は、配管、金属容器、または撹拌機付き金属容器等であってよい。特に、連続的に成分を配管に流して配管内で成分同士を接触させる場合は、配管の太さおよび長さを調節することで、接触時間を調整できる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を掲げ本発明についてさらに説明する。各分析は以下の方法で行った。
[MFR(メルトフローレート)]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
【0049】
[XI(キシレン不溶成分量)]
300mLフラスコに重合体試料2.5gおよび250mLのオルトキシレンを入れ、撹拌しながら沸騰温度で30分間溶解した。続いて、溶液を100℃に放冷した後、フラスコを25℃の恒温水槽に入れ、25℃になってから1時間経過後、ろ過を行った。回収したろ液のオルトキシレンを蒸発させ、残った残渣の重量を仕込みの重合体試料の重量で除した値を100倍し、25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。XIすなわちキシレン不溶成分量(25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%)は、(100−可溶性のポリマーの重量%)で求められ、ポリマーの立体規則性の指標として用いられる。
【0050】
[重合活性]
アジレント・テクノロジー株式会社製240AAを用い、原子吸光法により、生成したポリマーサンプル中のマグネシウム含有量を測定し、元の触媒に含まれるマグネシウム含有量から触媒1gあたりのポリマー重合量として、重合活性を求めた。
【0051】
実施例1〜3:態様(i)
[実施例1−1]
(1)固体触媒成分の調製
欧州特許出願EP728769の実施例1に準じて、成分(A)(固体触媒成分)を調製した。具体的には以下のようにして成分(A)を調製した。
多孔性のバリヤーを備える500mlの反応器に0℃において225mlのTiClを導入した。内容物を撹拌しながら、下記のようにして得られる微小球状のMgCl・2.1COH 10.1(54ミリモル)gを15分間窒素雰囲気下で添加した。添加の終了時に温度を70℃とし、9ミリモルの9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを添加し、内容物を100℃に加熱し、この温度で2時間反応させた。その後、TiClを濾過して除去した。新たに200mlのTiClと9ミリモルの9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを添加し、内容物を120℃で1時間反応させた。その後、再度濾過して新たに200mlのTiClを添加し、内容物を120℃でさらに1時間反応させた後、濾過して全ての塩素イオンが炉液に存在しなくなるまで60℃においてn−ヘプタンで洗浄した。固体成分を分析し、3.5重量%のTi、および16.2重量%の9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン(ジエーテル)を含有することを確認した。
【0052】
微小球状のMgCl・2.1COH付加物は以下のようにして調製した。48gのMgCl、77gの無水COH、および830mlのケロシンを、不活性ガス雰囲気下周囲温度において、タービン撹拌器および浸漬パイプを完備する2リットルのオートクレーブに導入した。内容物を撹拌しながら120℃に加熱すると、MgClおよびアルコール間に付加物が形成された。当該付加物は融解し分散剤と混合していた。オートクレーブ内を15気圧の窒素圧に保持した。オートクレーブの浸漬パイプを加熱ジャケットにより外部から120℃に加熱した。加熱ジャケットの内径は1mmで、端から端までの長さは3mであった。混合物を7m/秒の速度でパイプ中を循環させた。分散液を撹拌しながら5リットルのフラスコに集めた。前記フラスコは2.5リットルのケロシンを含み、−40℃の初期温度に保持されているジャケットにより外部から冷却した。乳濁液の最終温度は0℃であった。乳濁液の分散相を構成する球状固体生成物を沈降および濾過により分離し、次いでヘプタンで洗浄して乾燥させた。前記の作業は全て不活性雰囲気中で実施した。最大直径が50μ以下の固体球状粒子の形で130gのMgCl・2.1COHが得られた。次いで生成物から、アルコール含量が、MgClの1モル当たり2.1モルとなるまで窒素流中で50℃から100℃に徐々に温度を上昇させてアルコールを除去した。
【0053】
(2)触媒の調整および重合
撹拌機を備えた内容積3Lのオートクレーブを準備した。オートクレーブ内を窒素置換し、さらにオートクレーブに少量の窒素をフィードしながら、オートクレーブへ触媒を圧入することができる内容積20cmのステンレス製容器(追添器)を取り付け窒素置換した。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素0.24mol%とプロピレン16.0molとを加え撹拌し、30℃に昇温した。少量の窒素をフィードした状態の追添器に、成分(B)であるトリエチルアルミニウム4.9mmolと、成分(C)である電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン0.25mmolとを入れて混合した。(1)で調製した成分(A)の固体触媒成分5mgを追添器に入れ、成分(B)と(C)の接触物と、成分(A)とを接触させた。すべての接触工程は25℃で行った。
【0054】
成分(A)を追添器に入れてから10分経過後、追添器内を窒素で4MPaに加圧して、触媒をオートクレーブ内に圧入した。すなわち本例におけるτは10分とした。オートクレーブを80℃に昇温し、60分間プロピレンを重合した。重合終了後、未反応プロピレンをパージし、ポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを60℃で16時間真空乾燥し、上記の方法に従い、MFR、XI、重合活性の分析を行った。
【0055】
[実施例1−2]
τを30分とした以外は、実施例1−1と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0056】
[比較例1−1]
(1)固体触媒成分の調製
実施例1と同じ成分(A)(固体触媒成分)を準備した。
【0057】
(2)触媒の調製および重合
実施例1に記載のオートクレーブを準備した。オートクレーブへ触媒を圧入することができる内容積20cmのステンレス製容器(追添器)をオートクレーブに取り付け窒素置換した。オートクレーブ内を窒素置換し、さらにオートクレーブに少量の窒素をフィードしながら、成分(B)であるトリエチルアルミニウム4.9mmolと、成分(C)である電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン0.25mmolとを入れ混合した。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素0.24mol%とプロピレン16.0molとを加え撹拌し、30℃に昇温した。(1)で調製した成分(A)の固体触媒成分ヘキサンスラリー15mL(固体触媒として5mg)を追添器に入れた。
【0058】
追添器内を窒素で4MPaに加圧して、触媒をオートクレーブ内に圧入した。オートクレーブを80℃に昇温し、60分間プロピレンを重合した。追添器から成分(A)を加えることにより、オートクレーブ内に仕込まれた成分(B)と(C)の接触物と成分(A)を接触して重合触媒を生成するとともに、プロピレンとも接触させた。すなわち、本例におけるτは0秒とした。重合終了後、未反応プロピレンをパージし、ポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを60℃で16時間真空乾燥し、上記の方法に従い、MFR、XI、重合活性の分析を行った。本例では、室温(25℃)にある成分(A)と、30℃のオートクレーブ内に存在する成分(B)および(C)を接触させたため、触媒調製時の接触温度を測定することはできない。しかしながら接触温度は25〜30℃の範囲にあることは明らかである。
【0059】
[比較例1−2]
τを10秒(0.17分)とした以外は、実施例1−1と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0060】
[実施例2]
触媒調製工程におけるすべての接触工程を15℃で実施した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。実施例2−1〜2−4におけるτは、それぞれ3、10、30、60分であった。
【0061】
[比較例2−1]
τを10秒(0.17分)とした以外は、実施例2と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0062】
[実施例3]
触媒調製工程におけるすべての接触工程を5℃で実施した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。実施例3−1〜3−4におけるτは、それぞれ3、10、30、60分であった。
【0063】
[比較例3]
τを10秒(0.17分)、180分とした以外は、実施例3と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。比較例3−1、3−2におけるτは、それぞれ0.17、180分であった。
【0064】
これらの結果を表1および図2に示す。τが3〜100分であると非常に高い触媒活性を達成できることが明らかである。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例4〜6:態様(ii)
[実施例4−1]
実施例1に記載のオートクレーブを準備した。オートクレーブ内を窒素置換し、さらにオートクレーブに少量の窒素をフィードしながら、追添器を取り付け窒素置換した。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素0.24mol%とプロピレン16.0molとを加え撹拌し、30℃に昇温した。少量の窒素をフィードした状態の追添器に、実施例1で調製した成分(A)の固体触媒成分5mgと成分(B)であるトリエチルアルミニウム4.9mmolとを入れ接触物を調製した。次いで当該接触物を、実施例1と同様にして追添器からオートクレーブ内に入れて重合を行い、ポリプロピレンを製造し、実施例1と同様にして評価した。τは3分であった。触媒調製における接触工程は25℃で行った。
【0067】
[実施例4−2、4−3]
τを10分、30分とした以外は実施例4−1と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0068】
[比較例4−1]
成分(B)を追添器ではなくオートクレーブ内に入れ、τを0とした以外は実施例4−1と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。本例では、室温(25℃)にある成分(A)と、30℃のオートクレーブ内に存在する成分(B)を接触させたため、触媒調製時の接触温度を測定することはできない。しかしながら接触温度は25〜30℃の範囲にあることは明らかである。
【0069】
[比較例4−2、4−3]
τを180分、44640分とした以外は実施例4−1と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。
【0070】
[実施例5および比較例5]
触媒調製工程における接触温度を15℃とした以外は、実施例4、比較例4と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。実施例5−1〜5−4におけるτは、それぞれ3、10、30、60分であった。比較例5−1におけるτは10秒(0.17分)であった。
【0071】
[実施例6および比較例6]
触媒調製工程における接触温度を5℃とした以外は、実施例4、比較例4と同様にしてポリプロピレンを製造し評価した。実施例6−1〜6−4におけるτは、それぞれ3、10、30、60分であった。比較例6−1におけるτは10秒(0.17分)であった。
これらの結果を表2および図3に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2および図3から、τが3〜100分であると非常に高い触媒活性を達成できることが明らかである。
図1
図2
図3