【実施例】
【0067】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
(1)試薬等
ペプチド又はタンパク質の修飾に用いた化合物の構造式を
図1に示す。これらの化合物のうち、化合物1-3、11は市販のもの(TCI:東京化成工業株式会社)を用いた。その他、以下の化合物の合成に必要な試薬はTCI:東京化成工業株式会社、Sigma-Aldrich、Wako Chemical、関東化学より購入し用いた。
【0069】
(2)合成法
(2−1)N-アセチルルミノール(5-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン, 化合物4)の合成
【0070】
【化7】
【0071】
化合物13 (1.25 g, 6 mmol)をエタノール15 mlに溶解し、Pd/C (400 mg)を加え、水素ガス雰囲気下、室温で一晩撹拌した。セライトろ過を行った後、溶媒を除去した。それ以上の精製はせず、無水酢酸7 mlを加え、140℃で3時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、更に0 ℃に冷やして1時間撹拌し、析出してきた黄色固体をろ取した。固体をジエチルエーテルで洗い、中間体である化合物15 (615 mg, 50%)を得た。
化合物15
1H NMR(400 MHz; acetonitrile-d
4) δ 9.00 (br, 1H), 8.78 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.89 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 2.23 (s, 3H).
【0072】
化合物15 (465 mg, 2.3 mmol)をエタノール10 mlに溶かし、ヒドラジン一水和物(450 mg, 9.0 mmol)を加えて5 時間加熱還流した。室温まで冷却後、濃塩酸をpHが2〜3になるまで加えた。析出した白色固体をろ取し、水、メタノールで洗いこんで化合物4 (236 mg, 49%)を得た。
化合物4
1H NMR(400 MHz, DMSO-d
6) δ 12.80 (br, 1H), 8.85 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.84 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 2.16 (s, 3H).
【0073】
(2−2)N-アセチルイソルミノール(6-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン, 化合物5)の合成
【0074】
【化8】
【0075】
化合物16 (1.25 g, 6.0 mmol)をメタノール15 mlに溶解し、Pd/C (400 mg)を加えて、水素ガス雰囲気下、室温で一晩撹拌した。セライトろ過を行った後、溶媒を除去した。それ以上の精製はせずに無水酢酸7 mlを加え、140 ℃で5時間加熱還流を行った。室温まで冷却してから無水酢酸をエバポレーターで除去後、Hexane : AcOEt= 1 : 1でカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体として化合物18 (236 mg, 19%)を得た。
化合物18
1H NMR(400 MHz; acetonitrile-d
4) δ 8.95 (br, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.91 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 2.14 (s, 3H).
【0076】
化合物18 (100 mg, 0.48 mmol)をエタノール10 mlに溶かし、ヒドラジン無水物 (60 mg, 1.9 mmol)を慎重に加え、6時間加熱還流した。室温まで冷却後、濃塩酸をpHが2〜3になるまで加えた。溶媒をエバポレーターで除去後、アセトンでカラムクロマトグラフィー精製を行い暗赤色の固体として化合物5 (65 mg, 60%)を得た。
化合物5
1H NMR(400 MHz; DMSO-d
6) δ 10.48 (br, 1H), 8.38 (s, 1H), 8.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 2.11 (s, 3H).
【0077】
(2−3)N-メチル-1,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロフタラジン-6-カルボキサミド(化合物6)の合成
【0078】
【化9】
【0079】
化合物19 (421 mg, 2.0 mmol)に窒素雰囲気下で脱水THF 10 mlを加え、撹拌しながらMeNH
2のTHF溶液(2 mol/L) (10 ml, 20.0 mmol)を加えた。1時間室温で撹拌した後に溶媒を除去し、酢酸13 mlを加えて2時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、ジエチルエーテル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、析出してきた薄茶色の固体をろ取し、ジエチルエーテルで洗いこんで化合物20 (331 mg, 76%)を得た。
化合物20
1H NMR(400 MHz; DMSO-d
6) δ 8.83 (br, 1H), 8.26-8.22 (m, 2H), 7.92 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.04 (s, 3H), 2.81 (s, 3H).
【0080】
化合物6は上記の化合物18から化合物5を得たときと同様の操作により得た(収率 30%)。
化合物6
1H NMR(400 MHz; CD
3OD) δ 8.60 (s, 1H), 8.26 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.23 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 2.97 (s, 3H).
【0081】
(2−4)6-メトキシ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(化合物7)の合成
【0082】
【化10】
【0083】
化合物21 (200 mg, 1.0 mmol)を10 mlのTHFに溶かし、無水酢酸(600 mg, 5.9 mmol)を加えて撹拌、4時間加熱還流を行った。エバポレーターで溶媒と無水酢酸を除去してから、それ以上の精製はせず、エタノール15 mlとヒドラジン無水物(64 mg, 2.0 mmol)を加え、4時間加熱還流した。析出してきた白色固体をろ取し、エタノールで洗いこんで化合物7 (155 mg, 76%)を得た。
化合物7
1H NMR(400 MHz; DMSO-d
6) δ 12.2-10.6 (br, 2H), 7.99 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.55-7.34 (m, 2H), 3.91 (s, 3H).
【0084】
(2−5)2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(化合物8)の合成
【0085】
【化11】
【0086】
化合物23(無水フタル酸)(300 mg, 2.0 mmol)をエタノール20 mlに溶かし、そこにメチルヒドラジン(199 mg, 4.3 mmol)を加えて4時間加熱還流した。溶媒を除去後に残った固体をエタノールで洗いこみ、白色固体として化合物8 (260 mg, 78%)を得た。
化合物8
1H NMR(400 MHz; DMSO-d
6) δ 12.5-10.8 (br, 1H), 8.20 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.92- 7.81 (m, 2H), 3.55 (s, 3H).
【0087】
(2−6)2-フェニル-2,3-ジヒドロフタラジン -1,4-ジオン(化合物9)の合成
【0088】
【化12】
【0089】
化合物23(無水フタル酸)(300 mg, 2.0 mmol)を1 N HCl水溶液 10 mLに溶かし、そこにフェニルヒドラジン(320 mg, 3.0 mmol)を加えて9時間加熱還流した。溶媒を除去後、塩化メチレンでカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体として化合物9 (188 mg, 39%)を得た。
化合物9
1H NMR(400 MHz; CD
3OD) δ 8.35 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.96-7.84 (m, 2H), 7.63 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.47 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.36 (t, J = 7.6 Hz, 1H).
【0090】
(2−7)6(又は7)-メトキシ-2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(化合物10及び10’)の合成
【0091】
【化13】
【0092】
前述の方法により化合物21(196 mg, 1.0 mmol)から化合物22を調製し、エタノール7 ml中メチルヒドラジン(100 mg, 2.2 mmol)を加えて4時間加熱還流し、溶媒を除去後にEtOH : CH
2Cl
2= 1 : 20でカラムを行い、白色固体として化合物10と10’の異性体混合物(160 mg, 77%)を得た。
化合物10と10’の異性体混合物
1H NMR(400 MHz; CD
3OD) δ 8.16 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 8.8 Hz, 0.6H), 7.66 (d, J = 2.0 Hz, 0.6H), 7.42-7.34 (m, 2+0.6H), 3.98-3.92 (m, 3+0.6x3H), 3.65 (s, 0.6x3H), 3.63 (s, 3H).
【0093】
化合物10と10’はMeOH溶媒でrecycle HPLC精製(日本分析工業株式会社 JAIGEL-GS310)を行い異性体混合物major体とminor体 を分離した。
Major体
1H NMR(400 MHz; CD
3OD : CD
3Cl = 4 : 3) δ 8.20 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.32 (dd, J = 8.8, 2.5 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H), 3.63 (s, 3H).
Minor体
1H NMR(400 MHz; CD
3OD : CD
3Cl = 4 : 3) δ 7.97 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.37 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 3.96 (s, 3H), 3.67 (s, 3H).
【0094】
(2−8)化合物12の合成
【0095】
【化14】
【0096】
(2−8−1)ジメチル4-((6-アジドヘキシル)オキシ)フタラート(化合物24)の合成
【0097】
【化15】
【0098】
化合物23 (1.05 g, 5.0 mmol)、1-アジド-6-ブロモヘキサン(1.23 g, 6.0 mmol)、炭酸カリウム(1.05 g, 7.7 mmol)にDMF 10 mlを加え、50 ℃に加熱しながら5時間撹拌した後、室温に冷ましてから酢酸エチルと水を加えて分液操作を行った。食塩水を加え分液後、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒をエバポレーターで留去した。Hexane : AcOEt= 5 : 1でカラムクロマトグラフィー精製を行い、透明な液体として化合物24 (1.59 g, 95%)を得た。
化合物24
1H NMR(400 MHz; CDCl
3) δ 7.79 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.97 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 4.00 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.90 (s, 3H), 3.86 (s, 3H), 3.27 (t, J = 6.8, 2H), 1.88-1.74 (m, 2H), 1.68-1.56 (m, 2H), 1.54-1.38 (m, 4H).
13C NMR(100 MHz, CDCl
3) δ 168.8, 166.7, 161.6, 135.7, 131.6, 121.9, 116.1, 114.0, 114.0, 68.24, 52.7, 52.3, 51.3, 28.8, 28.7, 26.4, 25.5.
【0099】
(2−8−2)4-((6-アジドヘキシル)オキシ)フタル酸(化合物25)の合成
【0100】
【化16】
【0101】
化合物24 (1.59 g, 4.7 mmmol)をMeOH 5 ml, THF 5 mlに溶解させ、そこにNaOH (1.0 g)を水5 mlに溶かした水溶液を加えて一晩撹拌させた。その後、1 N HClをpHが1〜2になるまで加え、酢酸エチルと水による分液後、飽和食塩水食塩水を加え分液後、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒をエバポレーターで留去し、白色固体として化合物25 (1.44 g, 99%.)を得た。
化合物25
1H NMR(400 MHz; CD
3OD) δ 7.84 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.07 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 4.08 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.32 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.88-1.78 (m, 2H), 1.70-1.60 (m, 2H), 1.59-1.42 (m, 4H).
13C NMR(100 MHz; CD
3OD) δ 172.1, 169.8, 163.0, 138.0, 132.8, 123.6, 116.6, 115.2, 69.4, 52.3, 30.0, 29.8, 27.5, 26.6.
【0102】
(2−8−3)6(又は7)-((6-アジドヘキシル)オキシ)-2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン -1,4-ジオン(化合物26, 異性体混合物)の合成
【0103】
【化17】
【0104】
化合物25(1.44 g, 4.7 mmmol)をTHF 30 mlに溶解させ、無水酢酸2.0 gを加えて5時間加熱還流した。室温に冷却後、エバポレーターで溶媒と無水酢酸を除き、エタノール20 mlに溶解させた後、メチルヒドラジン(645 mg, 14.0 mmol)を加えて、4時間加熱還流した。その後、飽和塩化アンモニア水と酢酸エチルで分液、有機層をエバポレーターで留去した。Hexane : AcOEt=1 : 1でカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体として化合物26 (1.22 g, 83%)を得た。
化合物26
1H NMR(400 MHz; CD
3OD) δ 8.08 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 8.8 Hz, 0.65H), 7.69 (d, J = 2.4, 0.65H), 7.45-7.36 (m, 2+0.65H), 4.19-4.12 (m, 2+0.65x2H), 3.65 (s, 0.65x3H), 3.63 (s, 3H), 3.35-3.32 (m, 2+0.65x2H), 1.92-1.82 (m, 2+0.65x2H), 1.69-1.59 (m, 2+0.65x2H), 1.58-1.45 (m, 4+0.65x4H).
【0105】
(2−8−4)6(又は7)-((6-FITCアミノヘキシル)オキシ)-2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン -1,4-ジオン (化合物12, 異性体混合物)の合成
【0106】
【化18】
【0107】
化合物26 (60 mg, 0.19 mmol)をエタノール2.5 ml、酢酸エチル2.5 mlの混合溶媒に溶かし、パラジウム炭素(20 mg)を加えてから水素置換をして一晩撹拌させた。Pd/Cと溶媒をセライトろ過とエバポレーターで除去後、それ以上の精製をせずDMF 5 mlに溶解させ、そこにFITC (58 mg, 0.15 mmol)を加えて6時間撹拌した。それから溶媒を除去し、PTLC、HPLCで化合物12 (1.8 mg, 1.4%)を得た。
化合物12
1H NMR(400 MHz; CD
3OD) δ 8.19 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.10 (s, 1+0.6H),7.97 (d, J = 8.8 Hz, 0.6H),7.80-7.71 (m, 1+0.6H) 7.69 (d, J = 2.4, 0.6H), 7.46-7.38 (m, 2+0.6H), 7.15 (d, J = 8.4 Hz, 1+0.6H), 6.73-6.62 (m, 4+0.6x4H), 6.54 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 2+0.6x2H) 4.24-4.14 (m, 2+0.6x2H), 3.65 (s, 0.6x3H), 3.64 (s, 3H), 3.77-3.52 (m, 2+0.6x2H), 1.96-1.85 (m, 2+0.6x2H), 1.78-1.67 (m, 2+0.6x2H), 1.67-1.56 (m, 2+0.6x2H), 1.56-1.48 (m, 2+0.6x2H).
【0108】
(3)Angioteinsin IIの変換効率
以下の方法に従って、化合物1〜11のAngioteinsin IIに対する変換効率を調べた。結果を表1に示す。
【0109】
Angioteinsin II(Sigma-Aldrichから購入)を100 mM Na-Phosphate buffer (pH 7.4)に溶かし、ペプチド1 mMのストック溶液を調製した。各反応ごと50 μLのスケールで、100 mM Na-Phosphate buffer (pH 7.4)中、最終の濃度がペプチド100 μM、ヘミン 10μM, 化合物1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。過酸化水素の最終濃度が1 mMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で1時間放置した。0.1 % TFA水溶液に1 / 10の濃度で希釈し、(場合によっては変換効率を求めるため質量分析解析の内標準物質としてAngiotensin I (MW:1296)を10 μMになるように加える)、その溶液0.5-1 μMとCHCA (0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Shimazu AXIMA-CFR)により、変換効率・共有結合形成反応を確認した。変換効率は内標準物質Angiotensin Iのピーク強度から基質のAngiotensin IIがどの程度消費・変換されたかを求めることで算出した。
【0110】
【表1】
【0111】
表1に示すように、化合物8、9、10(10')を用いた場合にAngioteinsin IIは定量的に変換された。このことから、ルミノールのNH-NH結合の一方がメチル基などに置換された化合物がチロシンの修飾に適していると考えられる。また、ルミノールの芳香環上に電子供与性の置換基を持つ化合物もチロシンの修飾に適していると考えられる。
【0112】
(4)Angioteinsin IIのチロシン残基修飾、HRPを触媒で用いた場合の条件例
上記の(3)と同様に、50 μLのスケールで、100 mM Na-Phosphate buffer (pH 7.4)中、最終の濃度がAngioteinsin II 100 μM、HRP (Horseradish peroxidase, Sigma-Aldrich 製品番号P8250) 0.05 μM (0.0005 当量), 化合物8 1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。過酸化水素の最終濃度が100 μMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で1時間放置した。0.1 % TFA水溶液に1 / 10の濃度で希釈し、(場合によっては変換効率を求めるため質量分析解析の内標準物質としてAngiotensin I (MW:1296)を10 μMになるように加える)、その溶液0.5-1 μMとCHCA (0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Shimazu AXIMA-CFR)により、変換効率・共有結合形成反応を確認した。
【0113】
その結果、0.0005当量というごくわずかなHRPの触媒、にもかかわらず基質に対して1当量の過酸化水素で80%の変換効率を示した。結果を
図2に示す。この結果は、触媒活性の高いHRPなどの触媒を用いることで、酸化ストレスに成り得る過酸化水素の量を低減できることを示している。
【0114】
(5)チロシン残基への選択性
Angioteinsin IIのチロシン残基を他のアミノ酸残基に置き換えた変異ペプチド(GeneScript社のカスタム合成により入手)を用いて、化合物8のチロシン残基への選択性を調べた。実験は、上記のAngioteinsin IIの変換効率と同様に行った。結果を
図3に示す。
【0115】
図3に示すように、化合物8は変異を含まないAngioteinsin IIとのみ反応し、変異ペプチドとは反応しなかった。これにより、化合物8のチロシン残基への高い選択性が確認された。
【0116】
(6)タンパク質(ウシ血清アルブミンBSA)の修飾実験
BSA(Sigma-Aldrichから購入)10 μM、ヘミン 10μM、化合物12 1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。過酸化水素の最終濃度が1 mMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で10分放置した。Bio-Spin 6 column (Bio rad)で分子量6000以下の成分を除去することによって、タンパク質成分とその他反応剤成分を分離することで、反応を停止させた。そこに5 x SDS-sample buffer (50 mM Tris, pH 7.4, 4% SDS, 10% glycerol, 4% 2-thioethanol, and 50 μg/ml bromophenol blue)を加え、95℃で5分加熱し、SDS-PAGEサンプルを得た。SDS-PAGEは10%アクリルアミドゲルによって行い、蛍光をイメージャーで検出後、同じゲルをCBB染色、イメージャーで撮影した(Molecular Imager ChemiDoc XRS System, Bio rad)。また、ヘミン、過酸化水素が反応に必須であることを証明するため、各成分を加えないものを比較対象実験として行った。結果を
図4に示す。
【0117】
図4に示すように、ヘミンと過酸化水素が存在しない条件では化合物12で修飾されたBSAは検出されず、化合物12の修飾反応にヘミンと過酸化水素が必須であることが確認された。