特許第6598286号(P6598286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598286
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】チロシンの修飾方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/113 20060101AFI20191021BHJP
   C07D 237/32 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C07K1/113
   C07D237/32
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-246487(P2014-246487)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-108266(P2016-108266A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:日本ケミカルバイオロジー学会事務局 刊行物名:日本ケミカルバイオロジー学会 第9回年会 抄録集 第159頁、P−084 発行年月日:平成26年6月11日 平成26年6月11日〜6月13日 日本ケミカルバイオロジー学会第9回年会にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
【審査官】 林 康子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/036954(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0289682(US,A1)
【文献】 特開昭54−020132(JP,A)
【文献】 ACS Chem Biol (2015), Vol.10, p.2633-2640
【文献】 YAKUGAKU ZASSHI (2018), Vol.138, p.39-46
【文献】 J Am Chem Soc (2010), Vol.132, p.1523-1525
【文献】 Bioconjugate Chem (2013), Vol.24, p.520-532
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00〜19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】
〔式中、R1は水素原子、アミノ酸残基、ペプチド残基、又はタンパク質残基を表し、R2はヒドロキシ基、アミノ酸残基、ペプチド残基、又はタンパク質残基を表す。〕
で表される化合物と下記の一般式(II)
【化2】
〔式中、Aはベンゼン環を表し、Lは水素原子を表すか、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質若しくは生物活性物質を有するリンカーを表し、R3は水素原子を表すか、ベンゼン環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R4及びR5は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を、酸化剤及び金属触媒存在下で反応させ、下記の一般式(III)
【化3】
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、A、及びLは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物を生成させる工程を含むことを特徴とするチロシンの修飾方法。
【請求項2】
酸化剤が過酸化水素であり、金属触媒がポルフィリン金属錯体であることを特徴とする請求項1に記載のチロシンの修飾方法。
【請求項3】
一般式(II)及び(III)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のチロシンの修飾方法。
【請求項4】
一般式(II)及び(III)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z2〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z2は標識物質を含む基又は生物活性物質を含む基を表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のチロシンの修飾方法。
【請求項5】
一般式(II)及び(III)におけるR3が、水素原子、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する1個のアミノ基、アセトアミド基、若しくはメトキシ基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチロシンの修飾方法。
【請求項6】
一般式(II)及び(III)におけるR4がメチル基又はフェニル基であり、一般式(II)におけるR5が水素原子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のチロシンの修飾方法。
【請求項7】
下記の一般式(II)
【化4】
〔式中、Aはベンゼン環を表し、Lは水素原子を表すか、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質若しくは生物活性物質を有するリンカーを表し、R3は水素原子を表すか、ベンゼン環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R4及びR5は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含有するチロシン修飾剤。
【請求項8】
一般式(II)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする請求項7に記載のチロシン修飾剤。
【請求項9】
一般式(II)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z2〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z2は標識物質を含む基又は生物活性物質を含む基を表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする請求項7に記載のチロシン修飾剤。
【請求項10】
一般式(II)におけるR3が、水素原子、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する1個のアミノ基、アセトアミド基、又はメトキシ基であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のチロシンの修飾剤。
【請求項11】
一般式(II)及び(III)におけるR4がメチル基又はフェニル基であり、一般式(II)におけるR5が水素原子であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載のチロシン修飾剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルミノール誘導体を用いたチロシンの修飾方法、及びルミノール誘導体を含有するチロシン修飾剤に関する。本発明の修飾方法及び修飾剤は、高効率かつ高選択的にチロシンを修飾することができる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質分子の修飾は、生命科学の研究において非常に有用な手法である。例えば、タンパク質を標識物質で修飾することにより、そのタンパク質と結合する分子や結合サイトの同定などが可能になる。また、抗体に抗癌剤などを付加し、抗体薬物複合体を作製する場合やペプチドなどにポリエチレングリコール(PEG)を付加し、血中安定性の向上を図る場合にも、タンパク質分子の修飾は必須の手法である。
【0003】
従来、タンパク質分子の修飾は、求電子的試薬によって求核性のアミノ酸残基(例えば、リジン残基、システイン残基など)を標的として行われてきた。しかし、システイン残基は存在比が低く、その上ほとんどがタンパク質分子内でジスルフィド結合を形成しているため、還元しなければ修飾することができない。一方、リジン残基は存在比が高く、システイン残基のような問題はないが、抗体医薬などを作製する場合には、存在比が高すぎるため、部位特異的な修飾が困難であるという問題を有している。また、リジン残基の修飾は塩基性条件下でなければ進行しないという問題もあった。
【0004】
最近、Barbasらは、4-フェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(PTAD)を用いて、リジン残基やシステイン残基ではなく、チロシン残基を標的とするタンパク質分子の修飾法について報告している(非特許文献1、非特許文献2)。チロシン残基はタンパク質の表面にあることが多く、存在比もリジン残基ほど多くないので、この方法は、抗体の修飾に適していると考えられる。また、この方法は、リジン残基の修飾法とは異なり、中性条件下でも修飾が可能であるという利点も有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ban, H., Gavrilyuk, J., Barbas, C. F. III, Proc. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 1523-1525
【非特許文献2】Ban, H., Nagano, M., Gavrilyuk, J., Hakamata, W., Inokuma, T., Barbas, C. F. III, Bioconjugate Chem. 2013, 24, 520-532
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、Barbasらの開発した方法は有用なタンパク質分子の修飾法であるが、幾つか問題もある。例えば、PTADの分解によって生じるイソシアネートがリジン残基などの求核性アミノ酸残基とも反応するため、チロシン残基への選択性が低くなるという問題がある。また、PTADは不安定な物質であるため、安定な前駆体として保存し、使用時に酸化剤によって前駆体から生成させる必要があった。
【0007】
本発明は、このような従来法の問題を解消し、チロシン残基への選択性の高いタンパク質分子の修飾手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、発光物質として知られているルミノールの誘導体が高効率的かつ高チロシン残基選択的にタンパク質分子を修飾できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の(1)〜(14)を提供する。
(1)下記の一般式(I)
【化1】
〔式中、R1は水素原子、アミノ酸残基、ペプチド残基、又はタンパク質残基を表し、R2はヒドロキシ基、アミノ酸残基、ペプチド残基、又はタンパク質残基を表す。〕
で表される化合物と下記の一般式(II)
【化2】
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質若しくは生物活性物質を有するリンカーを表し、R3は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R4及びR5は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を、酸化剤及び金属触媒存在下で反応させ、下記の一般式(III)
【化3】
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、A、及びLは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物を生成させる工程を含むことを特徴とするチロシンの修飾方法。
【0010】
(2)酸化剤が過酸化水素であり、金属触媒がポルフィリン金属錯体であることを特徴とする(1)に記載のチロシンの修飾方法。
【0011】
(3)一般式(II)及び(III)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のチロシンの修飾方法。
【0012】
(4)一般式(II)及び(III)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z2〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z2は標識物質を含む基又は生物活性物質を含む基を表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のチロシンの修飾方法。
【0013】
(5)一般式(II)及び(III)におけるAが、ベンゼン環であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のチロシンの修飾方法。
【0014】
(6)一般式(II)及び(III)におけるR3が、水素原子、又は共役環上の任意の位置に存在する1個のアミノ基、アセトアミド基、若しくはメトキシ基であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のチロシンの修飾方法。
【0015】
(7)一般式(II)及び(III)におけるR4がメチル基又はフェニル基であり、一般式(II)におけるR5が水素原子であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載のチロシンの修飾方法。
【0016】
(8)下記の一般式(II)
【化4】
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質若しくは生物活性物質を有するリンカーを表し、R3は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R4及びR5は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含有するチロシン修飾剤。
【0017】
(9)一般式(II)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする(8)に記載のチロシン修飾剤。
【0018】
(10)一般式(II)におけるLが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z2〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z2は標識物質を含む基又は生物活性物質を含む基を表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されることを特徴とする(8)に記載のチロシン修飾剤。
【0019】
(11)一般式(II)におけるAが、ベンゼン環であることを特徴とする(8)乃至(10)のいずれかに記載のチロシン修飾剤。
【0020】
(12)一般式(II)におけるR3が、水素原子、又は共役環上の任意の位置に存在する1個のアミノ基、アセトアミド基、又はメトキシ基であることを特徴とする(8)乃至(11)のいずれかに記載のチロシンの修飾剤。
【0021】
(13)一般式(II)及び(III)におけるR4がメチル基又はフェニル基であり、一般式(II)におけるR5が水素原子であることを特徴とする(8)乃至(12)のいずれかに記載のチロシン修飾剤。
【0022】
(14)下記の一般式(IIa)
【化5】
〔式中、R6はベンゼン環上の任意の位置に存在する1個のメトキシ基を表す。〕
で表される化合物。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、高効率的及び高チロシン残基選択的にタンパク質分子を修飾することが可能になる。これにより、リガンドと受容体タンパク質の相互作用の解明や抗体薬物複合体の作製が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ペプチド又はタンパク質の修飾に用いた化合物の構造式を示す図。図中の番号は化合物の番号を示す。
図2】触媒としてHRPを用いた場合の化合物8によって修飾されたAngioteinsin IIのMALDI-TOF-MSチャート。
図3】化合物8によって修飾されたAngioteinsin II、及び変異Angioteinsin IIのMALDI-TOF-MSチャート。
図4】化合物12によって修飾されたBSAのSDS-PAGEの結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において「炭素数1〜20のアルキル基」とは、炭素数が1以上20以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、iso-ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などである。
【0026】
本発明において「炭素数1〜10のアルキル基」とは、炭素数が1以上10以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、iso-ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などである。
【0027】
本発明において「炭素数1〜3のアルキル基」とは、炭素数が1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基などである。
【0028】
本発明において「炭素数1〜20のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上20以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、iso-ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基などである。
【0029】
本発明において「炭素数1〜10のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上10以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、iso-ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などである。
【0030】
本発明において「炭素数1〜3のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基などである。
【0031】
本発明において「置換基を有していてもよい芳香族基」とは、置換基を有していない芳香族基又は少なくとも一つの置換基を有している芳香族基を意味する。ここで、「芳香族基」とは、芳香族化合物から一個の水素原子を除いた基をいい、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ピリジン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピリミジン-2-イル基、ピリミジン-4-イル基、ピリミジン-5-イル基、ピラジン-2-イル基、ピラジン-3-イル基、ピリダジン-3-イル基、ピリダジン-4-イル基、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基、ピロール-1-イル基、ピロール-2-イル基、ピロール-3-イル基、ピラゾール-1-イル基、ピラゾール-3-イル基、ピラゾール-4-イル基、ピラゾール-5-イル基、イミダゾール-1-イル基、イミダゾール-2-イル基、イミダゾール-4-イル基、イミダゾール-5-イル基などである。置換基としては、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、及びメトキシ基などからなる群から選択することができる。少なくとも一つの置換基を有している芳香族基の好適な例としては、少なくとも一つの置換基を有しているフェニル基を挙げることができ、その具体例としては、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニ基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2,3-ジブロモフェニル基、2,4-ジブロモフェニル基、2,5-ジブロモフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、3,4-ジブロモフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基などを挙げることができる。
【0032】
本発明において「クリック反応に用いられる官能基」とは、例えば、アジド基やエチニル基である。
【0033】
本発明において「アミノ酸残基」とは、アミノ酸から一部の原子や基が除かれた基を意味し、例えば、アミノ酸からカルボキシル基中のヒドロキシ基又はアミノ基中の水素原子が除かれた基をいう。
【0034】
本発明において「ペプチド残基」とは、ペプチドから一部の原子や基が除かれた基を意味し、例えば、ペプチドからC末端のヒドロキシ基又はN末端の水素原子が除かれた基をいう。
【0035】
本発明において「タンパク質残基」とは、タンパク質から一部の原子や基が除かれた基を意味し、例えば、タンパク質からC末端のヒドロキシ基又はN末端の水素原子が除かれた基をいう。
【0036】
本発明において「共役環」とは、共役二重結合を有する環をいう。共役環は、芳香環であっても、非芳香環であってもよい。また、共役環は、炭素原子のみからなる環であっても、炭素以外の原子、例えば、窒素、酸素、硫黄などの原子を含む複素環であってもよい。共役環の具体例としては、ベンゼン環、1,3-シクロヘキサジエン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環などの6員環、シクロペンタジエン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環などの5員環などを挙げることができる。
【0037】
本発明において「放射性同位体」とは、例えば、11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br、99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xeなどを挙げることができる。これらの中で好適な放射性同位体としては、18Fを挙げることができる。
【0038】
本発明において「標識物質」とは、タンパク質やペプチドなどと直接的又は間接的に結合することにより、そのタンパク質やペプチドを検出できるようにする物質をいい、例えば、蛍光物質、放射性同位体、特定の物質と相互作用をする物質などである。蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンなどを挙げることができ、特定の物質と相互作用をする物質としては、例えば、ビオチン、ジニトロフェニル基等の低分子抗体の抗原になりうる構造を持つ物質、Halo Tag(登録商標)やSNAP-tag(登録商標)等の共有結合を形成できる分子構造を持つ物質などを挙げることができる。
【0039】
本発明において「生物活性物質」とは、生体内で何らかの作用を示す物質をいい、薬理活性を持つ物質などを含む。生物活性物質の具体例としては、抗癌剤、抗HIV剤、ホウ素中性子捕捉療法に用いられる含ホウ素化合物などを挙げることができる。ここで、抗癌剤としては、生体内における創薬ターゲットである受容体型チロシンキナーゼ(例えば、EGF受容体、ErB受容体など)やそのリガンド(例えば、VEGF)などを標的とした薬剤、例えば、ハーセプチン(登録商標)、アバスチン(登録商標)、セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブなどを挙げることができる。抗HIV剤としては、Aplaviroc(登録商標)などを挙げることができる。含ホウ素化合物としては、p-ボロノフェニルアラニン(BPA)、ボロカプテイト(BSH)などを挙げることができる。また、血中安定性を向上させるポリエチレングリコール(PEG)、インテグリンを特異的に認識するRGDペプチドなども「生物活性物質」に含まれる。
【0040】
本発明において「標識物質を含む基」及び「生物活性物質を含む基」とは、例えば、標識物質や生物活性物質を、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されるリンカーと結合させた場合において、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-以外の部分をいう。
【0041】
本発明のチロシンの修飾方法では、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物を、酸化剤及び金属触媒存在下で反応させ、一般式(III)で表される化合物を生成させる。
【0042】
一般式(I)で表される化合物は、チロシン残基を含むペプチドやタンパク質であればどのようなものでもよいが、標識化の対象や生物活性物質の付加対象となるペプチドやタンパク質などが好ましい。このようなペプチドやタンパク質としては、例えば、受容体タンパク質、抗体、薬理活性を持つペプチドやタンパク質などを挙げることができ、より具体的には、抗癌作用を有する抗体であるハーセプチン(登録商標)などを挙げることができる。
【0043】
一般式(II)及び(III)においてAは共役環を表す。Aは共役環であればよいが、ベンゼン環であることが好ましい。
【0044】
一般式(I)及び(III)においてR1は水素原子、アミノ酸残基、ペプチド残基、又はタンパク質残基を表し、R2はヒドロキシ基、アミノ酸残基、ペプチド残基、又はタンパク質残基を表す。
【0045】
一般式(II)及び(III)においてR3は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表す。ここで、アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜10であることが更に好ましく、炭素数が1〜3であることが特に好ましい。R3は、前記した基であればよいが、水素原子、又は1個のアミノ基、アセトアミド基、若しくはメトキシ基であることが好ましく、水素原子、又は1個のメトキシ基であることが更に好ましい。上記の置換基が2個存在する場合、各置換基は同一であっても、異なっていてもよい。置換基は共役環上の任意の位置に存在してよいが、合成上の容易さなどから、隣接する複素環から離れた位置に存在することが好ましい。例えば、共役環がベンゼン環で、隣接する複素環と共にジヒドロフタラジン環を形成する場合、置換基は6位及び/又は7位に存在することが好ましい。
【0046】
一般式(II)及び(III)においてR4は水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。ここで、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜10であることが更に好ましく、炭素数が1〜3であることが特に好ましい。R4は、前記した基であればよいが、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0047】
一般式(II)においてR5は水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。ここで、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜10であることが更に好ましく、炭素数が1〜3であることが特に好ましい。R5は、前記した基であればよいが、水素原子であることが好ましい。
【0048】
一般式(II)及び(III)においてLは、水素原子、末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー、又は末端に標識物質若しくは生物活性物質を有するリンカーを表す。末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカーは、このような官能基が結合性を失わないような構造であればどのような構造でもよいが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されるリンカーが好ましく、-O-CH2-CCH、-O-(CH2)6-N3が更に好ましい。なお、mが0とは、[CH2CH2-Y]が存在しないことを意味し、nが0とは(CH2)が存在しないことを意味する。末端に標識物質若しくは生物活性物質を有するリンカーは、標識物質や生物活性物質が機能を失わないような構造であればどのような構造でもよいが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z2〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z2は標識物質を含む基又は生物活性物質を含む基を表し、m及びnはそれぞれ0〜12の整数を表す。〕で表されるリンカーが好ましい。
【0049】
一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物との反応は、酸化剤及び金属触媒存在下で行う。
【0050】
酸化剤としては、通常は過酸化水素を用いるが、反応を進行させ得るものであればこれに限定されず、例えば、アンモニウムパースルフェート(APS)、ターシャリブチルペルオキシド、クメンペルオキシドなどを用いてもよい。
【0051】
金属触媒としては、反応を進行させ得るものであればどのようなものでもよいが、ポルフィリン金属錯体を用いるのが好ましい。ポルフィリン金属錯体としては、ポルフィリン銅錯体やポルフィリンコバルト錯体などを用いてもよいが、ポルフィリン鉄錯体を用いるのが好ましい。ポルフィリン鉄錯体としては、ポルフィリン鉄錯体そのもののほか、ポルフィリン鉄錯体を含むタンパク質などを使用してもよい。ポルフィリン鉄錯体の具体例としては、ヘミン、ヘモグロビン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ミオグロビン、シトクロムなどを挙げることができる。金属触媒として、HRPを使用した場合、過酸化水素の使用量を減らすことができるので、過酸化水素による酸化ストレスを低減させたい場合にはHRPを用いるのが好ましい。
【0052】
この反応に使用する一般式(II)で表される化合物の量は特に限定されないが、一般式(I)で表される化合物1molに対し、通常1〜100 molであり、好適には10〜50 molである。
【0053】
この反応に使用する酸化剤の量は特に限定されないが、一般式(I)で表される化合物1molに対し、通常1〜100 molであり、好適には1〜10 molである。
【0054】
この反応に使用する金属触媒の量は特に限定されないが、一般式(I)で表される化合物1molに対し、通常0.00001〜1 molであり、好適にはヘミンの場合0.1〜1 mol、HRPの場合0.0005 molである。
【0055】
使用する溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0056】
反応時のpHは、特に限定されないが、通常、6〜8であり、好適には、7.4である。
【0057】
反応温度は、特に限定されないが、通常、10-30 ℃であり、好適には、20 ℃である。
【0058】
反応時間は、特に限定されないが、通常、5分から2 時間であり、好適には、1 時間である。
【0059】
反応生成物から一般式(III)で表される化合物の精製は、クロマトグラフィーなどを用いた常法に従って行うことができる。
【0060】
本発明の方法は、例えば、以下のような用途に利用できる。
1)タンパク質等の標識化
標識化合物を付加した本発明の修飾剤(一般式(II)で表される化合物)によって、タンパク質やペプチド中に含まれるチロシン残基を修飾することにより、そのタンパク質等を標識化することができ、細胞内などでのそのタンパク質等の動きを詳細に調べることが可能になる。
【0061】
2)薬剤への機能の付加
特定の薬剤(例えば、抗癌剤)を付加した本発明の修飾剤を、その薬剤を作用させたい細胞など(例えば、癌細胞など)と特異的に結合する抗体と結合させることにより、薬剤を標的とする細胞などに効率的に作用させることが可能になる(ミサイル療法)。また、抗体医薬などのタンパク質医薬に、本発明の修飾剤を利用してPEGなどを付加し、血中安定性などの機能を付加することも可能である。
【0062】
本発明の方法は、従来の方法に比べ、以下のような利点がある。
1)PTADのようにイソシアネートが生成することがないので、チロシンに対する選択性が高い。
【0063】
2)ルミノールによる発光反応は塩基性条件下でなければ起きないが、本発明のチロシンに対する修飾反応は中性条件下でも進行する。本発明の修飾方法はタンパク質やペプチドを対象とするが、中性条件下で反応を行うことにより、タンパク質等の変性を防止することができる。
【0064】
3)PTADは不安定な化合物であるため、前駆体の状態で保存し、使用時に活性化する必要があったが、本発明の修飾剤は安定性が高く、そのままの状態で保存することが可能である。
【0065】
4)修飾反応は、ヘミンなどの金属触媒が存在する条件においてのみ起きるので、この性質を利用し、タンパク質中の特定の部位のチロシン残基のみを修飾するということが可能である。例えば、タンパク質中の特定の部位に結合する抗体にヘミンを結合させることにより、このような特定のチロシン残基のみへの修飾が可能になる。
【0066】
一般式(II)で表される化合物のうち、下記の一般式(IIa)で表される化合物は新規な化合物である。
【化6】
〔式中、R6はベンゼン環上の任意の位置に存在する1個のメトキシ基を表す。〕
で表される化合物。
【実施例】
【0067】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
(1)試薬等
ペプチド又はタンパク質の修飾に用いた化合物の構造式を図1に示す。これらの化合物のうち、化合物1-3、11は市販のもの(TCI:東京化成工業株式会社)を用いた。その他、以下の化合物の合成に必要な試薬はTCI:東京化成工業株式会社、Sigma-Aldrich、Wako Chemical、関東化学より購入し用いた。
【0069】
(2)合成法
(2−1)N-アセチルルミノール(5-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン, 化合物4)の合成
【0070】
【化7】
【0071】
化合物13 (1.25 g, 6 mmol)をエタノール15 mlに溶解し、Pd/C (400 mg)を加え、水素ガス雰囲気下、室温で一晩撹拌した。セライトろ過を行った後、溶媒を除去した。それ以上の精製はせず、無水酢酸7 mlを加え、140℃で3時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、更に0 ℃に冷やして1時間撹拌し、析出してきた黄色固体をろ取した。固体をジエチルエーテルで洗い、中間体である化合物15 (615 mg, 50%)を得た。
化合物15 1H NMR(400 MHz; acetonitrile-d4) δ 9.00 (br, 1H), 8.78 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.89 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 2.23 (s, 3H).
【0072】
化合物15 (465 mg, 2.3 mmol)をエタノール10 mlに溶かし、ヒドラジン一水和物(450 mg, 9.0 mmol)を加えて5 時間加熱還流した。室温まで冷却後、濃塩酸をpHが2〜3になるまで加えた。析出した白色固体をろ取し、水、メタノールで洗いこんで化合物4 (236 mg, 49%)を得た。
化合物4 1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 12.80 (br, 1H), 8.85 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.84 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.60 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 2.16 (s, 3H).
【0073】
(2−2)N-アセチルイソルミノール(6-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン, 化合物5)の合成
【0074】
【化8】
【0075】
化合物16 (1.25 g, 6.0 mmol)をメタノール15 mlに溶解し、Pd/C (400 mg)を加えて、水素ガス雰囲気下、室温で一晩撹拌した。セライトろ過を行った後、溶媒を除去した。それ以上の精製はせずに無水酢酸7 mlを加え、140 ℃で5時間加熱還流を行った。室温まで冷却してから無水酢酸をエバポレーターで除去後、Hexane : AcOEt= 1 : 1でカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体として化合物18 (236 mg, 19%)を得た。
化合物18 1H NMR(400 MHz; acetonitrile-d4) δ 8.95 (br, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.91 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 2.14 (s, 3H).
【0076】
化合物18 (100 mg, 0.48 mmol)をエタノール10 mlに溶かし、ヒドラジン無水物 (60 mg, 1.9 mmol)を慎重に加え、6時間加熱還流した。室温まで冷却後、濃塩酸をpHが2〜3になるまで加えた。溶媒をエバポレーターで除去後、アセトンでカラムクロマトグラフィー精製を行い暗赤色の固体として化合物5 (65 mg, 60%)を得た。
化合物5 1H NMR(400 MHz; DMSO-d6) δ 10.48 (br, 1H), 8.38 (s, 1H), 8.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 2.11 (s, 3H).
【0077】
(2−3)N-メチル-1,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロフタラジン-6-カルボキサミド(化合物6)の合成
【0078】
【化9】
【0079】
化合物19 (421 mg, 2.0 mmol)に窒素雰囲気下で脱水THF 10 mlを加え、撹拌しながらMeNH2のTHF溶液(2 mol/L) (10 ml, 20.0 mmol)を加えた。1時間室温で撹拌した後に溶媒を除去し、酢酸13 mlを加えて2時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、ジエチルエーテル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、析出してきた薄茶色の固体をろ取し、ジエチルエーテルで洗いこんで化合物20 (331 mg, 76%)を得た。
化合物20 1H NMR(400 MHz; DMSO-d6) δ 8.83 (br, 1H), 8.26-8.22 (m, 2H), 7.92 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.04 (s, 3H), 2.81 (s, 3H).
【0080】
化合物6は上記の化合物18から化合物5を得たときと同様の操作により得た(収率 30%)。
化合物6 1H NMR(400 MHz; CD3OD) δ 8.60 (s, 1H), 8.26 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.23 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 2.97 (s, 3H).
【0081】
(2−4)6-メトキシ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(化合物7)の合成
【0082】
【化10】
【0083】
化合物21 (200 mg, 1.0 mmol)を10 mlのTHFに溶かし、無水酢酸(600 mg, 5.9 mmol)を加えて撹拌、4時間加熱還流を行った。エバポレーターで溶媒と無水酢酸を除去してから、それ以上の精製はせず、エタノール15 mlとヒドラジン無水物(64 mg, 2.0 mmol)を加え、4時間加熱還流した。析出してきた白色固体をろ取し、エタノールで洗いこんで化合物7 (155 mg, 76%)を得た。
化合物7 1H NMR(400 MHz; DMSO-d6) δ 12.2-10.6 (br, 2H), 7.99 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.55-7.34 (m, 2H), 3.91 (s, 3H).
【0084】
(2−5)2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(化合物8)の合成
【0085】
【化11】
【0086】
化合物23(無水フタル酸)(300 mg, 2.0 mmol)をエタノール20 mlに溶かし、そこにメチルヒドラジン(199 mg, 4.3 mmol)を加えて4時間加熱還流した。溶媒を除去後に残った固体をエタノールで洗いこみ、白色固体として化合物8 (260 mg, 78%)を得た。
化合物8 1H NMR(400 MHz; DMSO-d6) δ 12.5-10.8 (br, 1H), 8.20 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.92- 7.81 (m, 2H), 3.55 (s, 3H).
【0087】
(2−6)2-フェニル-2,3-ジヒドロフタラジン -1,4-ジオン(化合物9)の合成
【0088】
【化12】
【0089】
化合物23(無水フタル酸)(300 mg, 2.0 mmol)を1 N HCl水溶液 10 mLに溶かし、そこにフェニルヒドラジン(320 mg, 3.0 mmol)を加えて9時間加熱還流した。溶媒を除去後、塩化メチレンでカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体として化合物9 (188 mg, 39%)を得た。
化合物9 1H NMR(400 MHz; CD3OD) δ 8.35 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.96-7.84 (m, 2H), 7.63 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.47 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.36 (t, J = 7.6 Hz, 1H).
【0090】
(2−7)6(又は7)-メトキシ-2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(化合物10及び10’)の合成
【0091】
【化13】
【0092】
前述の方法により化合物21(196 mg, 1.0 mmol)から化合物22を調製し、エタノール7 ml中メチルヒドラジン(100 mg, 2.2 mmol)を加えて4時間加熱還流し、溶媒を除去後にEtOH : CH2Cl2= 1 : 20でカラムを行い、白色固体として化合物10と10’の異性体混合物(160 mg, 77%)を得た。
化合物10と10’の異性体混合物1H NMR(400 MHz; CD3OD) δ 8.16 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 8.8 Hz, 0.6H), 7.66 (d, J = 2.0 Hz, 0.6H), 7.42-7.34 (m, 2+0.6H), 3.98-3.92 (m, 3+0.6x3H), 3.65 (s, 0.6x3H), 3.63 (s, 3H).
【0093】
化合物10と10’はMeOH溶媒でrecycle HPLC精製(日本分析工業株式会社 JAIGEL-GS310)を行い異性体混合物major体とminor体 を分離した。
Major体1H NMR(400 MHz; CD3OD : CD3Cl = 4 : 3) δ 8.20 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.32 (dd, J = 8.8, 2.5 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H), 3.63 (s, 3H).
Minor体1H NMR(400 MHz; CD3OD : CD3Cl = 4 : 3) δ 7.97 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.37 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 1H), 3.96 (s, 3H), 3.67 (s, 3H).
【0094】
(2−8)化合物12の合成
【0095】
【化14】
【0096】
(2−8−1)ジメチル4-((6-アジドヘキシル)オキシ)フタラート(化合物24)の合成
【0097】
【化15】
【0098】
化合物23 (1.05 g, 5.0 mmol)、1-アジド-6-ブロモヘキサン(1.23 g, 6.0 mmol)、炭酸カリウム(1.05 g, 7.7 mmol)にDMF 10 mlを加え、50 ℃に加熱しながら5時間撹拌した後、室温に冷ましてから酢酸エチルと水を加えて分液操作を行った。食塩水を加え分液後、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒をエバポレーターで留去した。Hexane : AcOEt= 5 : 1でカラムクロマトグラフィー精製を行い、透明な液体として化合物24 (1.59 g, 95%)を得た。
化合物24 1H NMR(400 MHz; CDCl3) δ 7.79 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.97 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 1H), 4.00 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.90 (s, 3H), 3.86 (s, 3H), 3.27 (t, J = 6.8, 2H), 1.88-1.74 (m, 2H), 1.68-1.56 (m, 2H), 1.54-1.38 (m, 4H).
13C NMR(100 MHz, CDCl3) δ 168.8, 166.7, 161.6, 135.7, 131.6, 121.9, 116.1, 114.0, 114.0, 68.24, 52.7, 52.3, 51.3, 28.8, 28.7, 26.4, 25.5.
【0099】
(2−8−2)4-((6-アジドヘキシル)オキシ)フタル酸(化合物25)の合成
【0100】
【化16】
【0101】
化合物24 (1.59 g, 4.7 mmmol)をMeOH 5 ml, THF 5 mlに溶解させ、そこにNaOH (1.0 g)を水5 mlに溶かした水溶液を加えて一晩撹拌させた。その後、1 N HClをpHが1〜2になるまで加え、酢酸エチルと水による分液後、飽和食塩水食塩水を加え分液後、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒をエバポレーターで留去し、白色固体として化合物25 (1.44 g, 99%.)を得た。
化合物25 1H NMR(400 MHz; CD3OD) δ 7.84 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.07 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 4.08 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.32 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.88-1.78 (m, 2H), 1.70-1.60 (m, 2H), 1.59-1.42 (m, 4H).
13C NMR(100 MHz; CD3OD) δ 172.1, 169.8, 163.0, 138.0, 132.8, 123.6, 116.6, 115.2, 69.4, 52.3, 30.0, 29.8, 27.5, 26.6.
【0102】
(2−8−3)6(又は7)-((6-アジドヘキシル)オキシ)-2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン -1,4-ジオン(化合物26, 異性体混合物)の合成
【0103】
【化17】
【0104】
化合物25(1.44 g, 4.7 mmmol)をTHF 30 mlに溶解させ、無水酢酸2.0 gを加えて5時間加熱還流した。室温に冷却後、エバポレーターで溶媒と無水酢酸を除き、エタノール20 mlに溶解させた後、メチルヒドラジン(645 mg, 14.0 mmol)を加えて、4時間加熱還流した。その後、飽和塩化アンモニア水と酢酸エチルで分液、有機層をエバポレーターで留去した。Hexane : AcOEt=1 : 1でカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体として化合物26 (1.22 g, 83%)を得た。
化合物26 1H NMR(400 MHz; CD3OD) δ 8.08 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 8.8 Hz, 0.65H), 7.69 (d, J = 2.4, 0.65H), 7.45-7.36 (m, 2+0.65H), 4.19-4.12 (m, 2+0.65x2H), 3.65 (s, 0.65x3H), 3.63 (s, 3H), 3.35-3.32 (m, 2+0.65x2H), 1.92-1.82 (m, 2+0.65x2H), 1.69-1.59 (m, 2+0.65x2H), 1.58-1.45 (m, 4+0.65x4H).
【0105】
(2−8−4)6(又は7)-((6-FITCアミノヘキシル)オキシ)-2-メチル-2,3-ジヒドロフタラジン -1,4-ジオン (化合物12, 異性体混合物)の合成
【0106】
【化18】
【0107】
化合物26 (60 mg, 0.19 mmol)をエタノール2.5 ml、酢酸エチル2.5 mlの混合溶媒に溶かし、パラジウム炭素(20 mg)を加えてから水素置換をして一晩撹拌させた。Pd/Cと溶媒をセライトろ過とエバポレーターで除去後、それ以上の精製をせずDMF 5 mlに溶解させ、そこにFITC (58 mg, 0.15 mmol)を加えて6時間撹拌した。それから溶媒を除去し、PTLC、HPLCで化合物12 (1.8 mg, 1.4%)を得た。
化合物12 1H NMR(400 MHz; CD3OD) δ 8.19 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.10 (s, 1+0.6H),7.97 (d, J = 8.8 Hz, 0.6H),7.80-7.71 (m, 1+0.6H) 7.69 (d, J = 2.4, 0.6H), 7.46-7.38 (m, 2+0.6H), 7.15 (d, J = 8.4 Hz, 1+0.6H), 6.73-6.62 (m, 4+0.6x4H), 6.54 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 2+0.6x2H) 4.24-4.14 (m, 2+0.6x2H), 3.65 (s, 0.6x3H), 3.64 (s, 3H), 3.77-3.52 (m, 2+0.6x2H), 1.96-1.85 (m, 2+0.6x2H), 1.78-1.67 (m, 2+0.6x2H), 1.67-1.56 (m, 2+0.6x2H), 1.56-1.48 (m, 2+0.6x2H).
【0108】
(3)Angioteinsin IIの変換効率
以下の方法に従って、化合物1〜11のAngioteinsin IIに対する変換効率を調べた。結果を表1に示す。
【0109】
Angioteinsin II(Sigma-Aldrichから購入)を100 mM Na-Phosphate buffer (pH 7.4)に溶かし、ペプチド1 mMのストック溶液を調製した。各反応ごと50 μLのスケールで、100 mM Na-Phosphate buffer (pH 7.4)中、最終の濃度がペプチド100 μM、ヘミン 10μM, 化合物1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。過酸化水素の最終濃度が1 mMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で1時間放置した。0.1 % TFA水溶液に1 / 10の濃度で希釈し、(場合によっては変換効率を求めるため質量分析解析の内標準物質としてAngiotensin I (MW:1296)を10 μMになるように加える)、その溶液0.5-1 μMとCHCA (0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Shimazu AXIMA-CFR)により、変換効率・共有結合形成反応を確認した。変換効率は内標準物質Angiotensin Iのピーク強度から基質のAngiotensin IIがどの程度消費・変換されたかを求めることで算出した。
【0110】
【表1】

【0111】
表1に示すように、化合物8、9、10(10')を用いた場合にAngioteinsin IIは定量的に変換された。このことから、ルミノールのNH-NH結合の一方がメチル基などに置換された化合物がチロシンの修飾に適していると考えられる。また、ルミノールの芳香環上に電子供与性の置換基を持つ化合物もチロシンの修飾に適していると考えられる。
【0112】
(4)Angioteinsin IIのチロシン残基修飾、HRPを触媒で用いた場合の条件例
上記の(3)と同様に、50 μLのスケールで、100 mM Na-Phosphate buffer (pH 7.4)中、最終の濃度がAngioteinsin II 100 μM、HRP (Horseradish peroxidase, Sigma-Aldrich 製品番号P8250) 0.05 μM (0.0005 当量), 化合物8 1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。過酸化水素の最終濃度が100 μMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で1時間放置した。0.1 % TFA水溶液に1 / 10の濃度で希釈し、(場合によっては変換効率を求めるため質量分析解析の内標準物質としてAngiotensin I (MW:1296)を10 μMになるように加える)、その溶液0.5-1 μMとCHCA (0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Shimazu AXIMA-CFR)により、変換効率・共有結合形成反応を確認した。
【0113】
その結果、0.0005当量というごくわずかなHRPの触媒、にもかかわらず基質に対して1当量の過酸化水素で80%の変換効率を示した。結果を図2に示す。この結果は、触媒活性の高いHRPなどの触媒を用いることで、酸化ストレスに成り得る過酸化水素の量を低減できることを示している。
【0114】
(5)チロシン残基への選択性
Angioteinsin IIのチロシン残基を他のアミノ酸残基に置き換えた変異ペプチド(GeneScript社のカスタム合成により入手)を用いて、化合物8のチロシン残基への選択性を調べた。実験は、上記のAngioteinsin IIの変換効率と同様に行った。結果を図3に示す。
【0115】
図3に示すように、化合物8は変異を含まないAngioteinsin IIとのみ反応し、変異ペプチドとは反応しなかった。これにより、化合物8のチロシン残基への高い選択性が確認された。
【0116】
(6)タンパク質(ウシ血清アルブミンBSA)の修飾実験
BSA(Sigma-Aldrichから購入)10 μM、ヘミン 10μM、化合物12 1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。過酸化水素の最終濃度が1 mMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で10分放置した。Bio-Spin 6 column (Bio rad)で分子量6000以下の成分を除去することによって、タンパク質成分とその他反応剤成分を分離することで、反応を停止させた。そこに5 x SDS-sample buffer (50 mM Tris, pH 7.4, 4% SDS, 10% glycerol, 4% 2-thioethanol, and 50 μg/ml bromophenol blue)を加え、95℃で5分加熱し、SDS-PAGEサンプルを得た。SDS-PAGEは10%アクリルアミドゲルによって行い、蛍光をイメージャーで検出後、同じゲルをCBB染色、イメージャーで撮影した(Molecular Imager ChemiDoc XRS System, Bio rad)。また、ヘミン、過酸化水素が反応に必須であることを証明するため、各成分を加えないものを比較対象実験として行った。結果を図4に示す。
【0117】
図4に示すように、ヘミンと過酸化水素が存在しない条件では化合物12で修飾されたBSAは検出されず、化合物12の修飾反応にヘミンと過酸化水素が必須であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、抗体薬物複合体などの製造に有用なので、製薬産業などの産業分野において利用可能である。
図1
図2
図3
図4