(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598306
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】心電図(ECG)信号において心イベントをノイズと区別する、心臓モニタ機器、装着型除細動器及び、そのための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0452 20060101AFI20191021BHJP
A61B 5/0428 20060101ALI20191021BHJP
A61B 5/0402 20060101ALI20191021BHJP
A61N 1/39 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
A61B5/04 312A
A61B5/04 310B
A61B5/04 310M
A61N1/39
【請求項の数】60
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2016-574238(P2016-574238)
(86)(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公表番号】特表2017-525410(P2017-525410A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】US2015039198
(87)【国際公開番号】WO2016007410
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年2月19日
(31)【優先権主張番号】62/021,451
(32)【優先日】2014年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504242032
【氏名又は名称】ゾール メディカル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Medical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サリバン、アダム
(72)【発明者】
【氏名】カイブ、トーマス、イー.
(72)【発明者】
【氏名】ニコロ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】シムキエウィチュ、スティーブ
【審査官】
▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−339533(JP,A)
【文献】
特開2002−301039(JP,A)
【文献】
特開2008−307382(JP,A)
【文献】
特表2013−524865(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0324867(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0188762(US,A1)
【文献】
KOSTKA, Pawel et al.,Feature Extraction Based on Time-Frequency and Independent Component Analysis for Improvement of Separation Ability in Atrial Fibrillation Detector,30th Annual International IEEE EMBS Conference,2008年10月14日,p.2960-2963,Date of Conference:2008年8月20-25日
【文献】
SANSONE, M. et al.,Electrocardiogram Pattern Recognition and Analysis Based on Artificial Neural Networks and Support Vector Machines: A Review,Journal of Healthcare Engineering,2013年 6月,Vol.4, No.4,p.465-504,URL,http://dx.doi.org/10.1260/2040-2295.4.4.465
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0402−5/0472
A61B 5/00
A61N 1/38−1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図信号(ECG信号)を患者から取得するための少なくとも1つの検出電極と、
前記少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、
複数のプログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備える心臓モニタ機器であって、
前記複数のプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、前記心臓モニタ機器に、
前記少なくとも1つの検出電極から前記ECG信号を取得させ、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するために少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、
前記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、前記比較は、
前記機械学習を介して前記ECG信号を分析して、スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記ECG信号のスコアを提供することと、
前記スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記スコアを、前記ECG信号に対する前記ECG由来のスコアとしてのマスタースコアへと統合することと、
前記マスタースコアを前記予め定められた閾値スコアとしてのノイズ分類閾値と比較することと、を含み、
前記比較に基づき、イベントが心室細動イベントおよび心室頻拍イベントのうちの少なくとも一つであるか、又はノイズであるかのインジケーションを提供させる、
心臓モニタ機器。
【請求項2】
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、前記機械学習に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、請求項1に記載の心臓モニタ機器。
【請求項3】
心電図信号(ECG信号)を患者から取得するための少なくとも1つの検出電極と、
前記少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、
複数のプログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備える心臓モニタ機器であって、
前記複数のプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、前記心臓モニタ機器に、
前記少なくとも1つの検出電極から前記ECG信号を取得させ、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するために少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、
前記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、
前記ECG由来のスコアと前記予め定められた閾値スコアとの前記比較に基づき、心イベントのインジケーションを提供させ、
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、前記機械学習に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、心臓モニタ機器。
【請求項4】
前記変換ECG信号は前記ECG信号の周波数領域表現を含む、
請求項1から3の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項5】
前記変換ECG信号は、前記ECG信号の周波数範囲にわたり、前記ECG信号の電力分布の表現を含む、
請求項1から4の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項6】
前記心臓モニタ機器は、装着型除細動器、植え込み型除細動器、自動体外式除細動器(AED)、モバイル心臓テレメトリ機器、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、及びホルターモニタのうち1つである、
請求項1から5の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項7】
前記機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
請求項1から6の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項8】
前記インジケーションに基づき行動を起こすための命令信号を提供することをさらに有する、
請求項1から7の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項9】
前記行動は、患者に治療を加えること及び前記患者に警告信号を提供することのうち少なくとも1つである、
請求項8に記載の心臓モニタ機器。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行される前記複数のプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサがトリガーイベントを検出した場合に、メモリデバイスに格納されている前記ECG信号の一部について開始される、
請求項1から9の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項11】
前記ECG信号の前記一部は、前記トリガーイベントに先行する予め定められた期間における前記ECG信号である、
請求項10に記載の心臓モニタ機器。
【請求項12】
前記予め定められた期間は20秒である、
請求項11に記載の心臓モニタ機器。
【請求項13】
装着型除細動器であって、
前記装着型除細動器を装着する患者に治療を提供するための少なくとも1つの治療パッドと、
患者からの心電図信号(ECG信号)を取得するための少なくとも1つの検出電極と
前記少なくとも1つの治療パッド及び前記少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、
複数のプログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体と
を備え、
前記複数のプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると前記処理ユニットに、
前記ECG信号を取得させ、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するための少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、
前記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、前記比較は、
前記機械学習を介して前記ECG信号を分析して、スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記ECG信号のスコアを提供することと、
前記スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記スコアを、前記ECG信号に対する前記ECG由来のスコアとしてのマスタースコアへと統合することと、
前記マスタースコアを前記予め定められた閾値スコアとしてのノイズ分類閾値と比較することと、を含み、
前記比較に基づき、イベントが心室細動イベントおよび心室頻拍イベントのうちの少なくとも一つであるか、又はノイズであるかのインジケーションを提供させる、
装着型除細動器。
【請求項14】
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、前記機械学習に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
請求項13に記載の装着型除細動器。
【請求項15】
装着型除細動器であって、
前記装着型除細動器を装着する患者に治療を提供するための少なくとも1つの治療パッドと、
患者からの心電図信号(ECG信号)を取得するための少なくとも1つの検出電極と
前記少なくとも1つの治療パッド及び前記少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、
複数のプログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体と
を備え、
前記複数のプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると前記処理ユニットに、
前記ECG信号を取得させ、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するための少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、
前記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、
前記ECG由来のスコアと前記予め定められた閾値スコアとの前記比較に基づき、心イベントのインジケーションを提供させ、
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、前記機械学習に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、装着型除細動器。
【請求項16】
前記変換ECG信号は前記ECG信号の周波数領域表現を含む、
請求項13から15の何れか一項に記載の装着型除細動器。
【請求項17】
前記変換ECG信号は、前記ECG信号の周波数範囲にわたり、前記ECG信号の電力分布の表現を含む、
請求項13から16の何れか一項に記載の装着型除細動器。
【請求項18】
前記機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
請求項13から17の何れか一項に記載の装着型除細動器。
【請求項19】
警告信号を前記患者に伝えるために、前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に接続されたディスプレイ及びスピーカのうち少なくとも1つをさらに備える、
請求項13から18の何れか一項に記載の装着型除細動器。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に接続された少なくとも1つの応答メカニズムをさらに備え、
前記装着型除細動器は、前記少なくとも1つの応答メカニズムの患者の操作に応答して、前記装着型除細動器を装着する前記患者に治療を提供することを防ぐ、
請求項13から19の何れか一項に記載の装着型除細動器。
【請求項21】
前記インジケーションに基づき行動を起こすための命令信号を提供することをさらに有する、
請求項13から20の何れか一項に記載の装着型除細動器。
【請求項22】
前記行動は、患者に治療を加えること及び前記患者に警告信号を提供することのうち少なくとも1つである、
請求項21に記載の装着型除細動器。
【請求項23】
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行される前記複数のプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサがトリガーイベントを検出した場合に、メモリデバイスに格納されている前記ECG信号の一部について開始される、
請求項13から22の何れか一項に記載の装着型除細動器。
【請求項24】
前記ECG信号の前記一部は、前記トリガーイベントに先行する予め定められた期間における前記ECG信号である
請求項23に記載の装着型除細動器。
【請求項25】
前記予め定められた期間は20秒である、
請求項24に記載の装着型除細動器。
【請求項26】
心電図信号(ECG信号)において心イベントをノイズと区別するための方法であって、
機械学習分類器を提供する段階と、
第1の信号処理ルーチンを用いる第1のモジュールで、前記ECG信号の一部においてイベントを検出する段階と、
前記イベントが検出されたという信号、及び前記ECG信号の前記一部を第2のモジュールに送信する段階と、
第2の信号処理ルーチンを用いる前記第2のモジュールで前記ECG信号の前記一部を評価し、前記第1のモジュールにより検出された前記イベントが実際の心イベントかノイズかを前記機械学習分類器からの出力に基づき、前記第2のモジュールにより判断する段階と
を備え、
前記第2のモジュールにより実行される前記第2の信号処理ルーチンは、
前記ECG信号の前記一部を取得する段階と、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定する段階と、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するために前記少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、
前記ECG由来のスコアを前記機械学習分類器により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階であって、前記比較は、
前記機械学習分類器を介して前記ECG信号を分析して、スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記ECG信号のスコアを提供することと、
前記スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記スコアを、前記ECG信号に対する前記ECG由来のスコアとしてのマスタースコアへと統合することと、
前記マスタースコアを前記予め定められた閾値スコアとしてのノイズ分類閾値と比較することと、を含む、段階と、
前記比較に基づき、イベントが心室細動イベントおよび心室頻拍イベントのうちの少なくとも一つであるか、又はノイズであるかのインジケーションを提供する段階と
を有する、
方法。
【請求項27】
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出されて前記機械学習分類器に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
心電図信号(ECG信号)において心イベントをノイズと区別するための方法であって、
機械学習分類器を提供する段階と、
第1の信号処理ルーチンを用いる第1のモジュールで、前記ECG信号の一部においてイベントを検出する段階と、
前記イベントが検出されたという信号、及び前記ECG信号の前記一部を第2のモジュールに送信する段階と、
第2の信号処理ルーチンを用いる前記第2のモジュールで前記ECG信号の前記一部を評価し、前記第1のモジュールにより検出された前記イベントが実際の心イベントかノイズかを前記機械学習分類器からの出力に基づき、前記第2のモジュールにより判断する段階と
を備え、
前記第2のモジュールにより実行される前記第2の信号処理ルーチンは、
前記ECG信号の前記一部を取得する段階と、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定する段階と、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するために前記少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、
前記ECG由来のスコアを前記機械学習分類器により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階と、
前記ECG由来のスコアと前記予め定められた閾値スコアとの前記比較に基づき、心イベントのインジケーションを提供する段階と
を有し、
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出されて前記機械学習分類器に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
方法。
【請求項29】
心イベントが前記第1のモジュールにより検出されるまで、前記第2のモジュールは休止状態である、
請求項26から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のモジュールにより検出された前記心イベントが実際の心イベントであると前記第2のモジュールが判断した場合、アラームが起動し、前記実際の心イベントが起きたというインジケーションをユーザに提供する、
請求項26から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のモジュールにより検出された心イベントがノイズであると前記第2のモジュールが判断した場合、無音遅延期間が開始され、その間は前記実際の心イベントが起きたというインジケーションはユーザに提供されない、
請求項26から30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記無音遅延期間の間に、前記第2のモジュールは前記ECG信号の前記一部を引き続き分析し、前記第1のモジュールにより検出された前記心イベントがノイズであることを確認する、
請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1のモジュールにより検出された前記心イベントが前記実際の心イベントであると前記第2のモジュールが判断した場合、前記第2のモジュールはアラームを起動し、前記実際の心イベントが起きたというインジケーションをユーザに提供する、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記機械学習分類器は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
請求項26から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ECG信号は心臓モニタ機器から取得される、
請求項26から34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記心臓モニタ機器は、装着型除細動器、植え込み型除細動器、皮下植え込み型除細動器、自動体外式除細動器(AED)、モバイル心臓テレメトリ機器、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、ホルターモニタ、心イベントモニタ、及び植え込み型ループレコーダのうち1つである、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
心電図信号(ECG信号)において心イベントをノイズと区別するための方法であって、
前記ECG信号を取得する段階と、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定する段階と、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するために前記少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、
前記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階であって、前記比較は、
前記機械学習を介して前記ECG信号を分析して、スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記ECG信号のスコアを提供することと、
前記スライドするウィンドウのそれぞれに対する前記スコアを、前記ECG信号に対する前記ECG由来のスコアとしてのマスタースコアへと統合することと、
前記マスタースコアを前記予め定められた閾値スコアとしてのノイズ分類閾値と比較することと、を含む、段階と、
前記比較に基づき、イベントが心室細動イベントおよび心室頻拍イベントのうちの少なくとも一つであるか、又はノイズであるかのインジケーションを提供する段階と
を備える、
方法。
【請求項38】
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、前記機械学習に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
請求項37に記載の方法。
【請求項39】
心電図信号(ECG信号)において心イベントをノイズと区別するための方法であって、
前記ECG信号を取得する段階と、
前記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定する段階と、
前記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、
前記ECG信号に関連したスコアを決定するために前記少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、
前記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階と、
前記ECG由来のスコアと前記予め定められた閾値スコアとの前記比較に基づき、心イベントのインジケーションを提供する段階と
を備え、
前記変換ECG信号は前記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
前記PSDは前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定され、
前記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、前記機械学習に提供され、
前記PSDの導出される前記少なくとも4つの特徴は、
前記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、前記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、前記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
前記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
方法。
【請求項40】
前記変換ECG信号は前記ECG信号の周波数領域表現を含む、
請求項37から39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記変換ECG信号は、前記ECG信号の周波数範囲にわたり、前記ECG信号の電力分布の表現を含む、
請求項37から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ECG信号は心臓モニタ機器から取得される、
請求項37から41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記心臓モニタ機器は、装着型除細動器、植え込み型除細動器、皮下植え込み型除細動器、自動体外式除細動器(AED)、モバイル心臓テレメトリ機器、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、ホルターモニタ、心イベントモニタ、及び植え込み型ループレコーダのうち1つである、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記インジケーションに基づき行動を起こすための命令信号を提供することをさらに有する、
請求項42から44の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記行動は、患者に治療を加えること及び前記患者に警告信号を提供することのうち少なくとも1つである、
請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記インジケーション及び前記ECG由来のスコアを前記機械学習に提供して、前記予め定められた閾値スコアをさらに正確にする段階をさらに備える、
請求項42から46の何れか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記方法は、前記少なくとも1つのプロセッサがトリガーイベントを検出した場合、メモリデバイスに格納されている前記ECG信号の一部について開始される、
請求項42から47の何れか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ECG信号の前記一部は、前記トリガーイベントに先行する予め定められた期間における前記ECG信号である
請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記予め定められた期間は20秒である、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記機械学習は、複数の除細動器により実行された治療に関連するECG信号群を含むトレーニングデータセットに基づいている、
請求項1から12の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項52】
前記ECG信号群は、少なくともノイズのある正常な洞リズム信号及び不整頻拍信号を含む、
請求項51に記載の心臓モニタ機器。
【請求項53】
前記機械学習は、前記心臓モニタ機器のメモリに格納されたECG信号群を含むトレーニングデータセットに基づいている、
請求項1から12の何れか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項54】
前記PSDを決定することは、前記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算し、前記FFTの絶対値を2乗して前記FFTを実数に変換することを含む、
請求項2又は3に記載の心臓モニタ機器。
【請求項55】
前記命令信号に応答して警告信号を前記患者に提供するために、前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に連結された警告デバイスをさらに備える、
請求項8に記載の心臓モニタ機器。
【請求項56】
前記警告デバイスは、音声信号及び視覚信号のうち少なくとも1つとして、前記命令信号に応答して前記警告信号を提供する、
請求項55に記載の心臓モニタ機器。
【請求項57】
前記トリガーイベントは、前記ECG信号における心室細動(VF)の検出、及び前記ECG信号における心室頻拍(VT)イベントの検出のうち少なくとも1つである、
請求項10に記載の心臓モニタ機器。
【請求項58】
前記ECG由来のスコアが前記予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に、
前記心イベントの前記インジケーションが提供される、
請求項3に記載の心臓モニタ機器。
【請求項59】
前記少なくとも1つのプロセッサにより実行される前記複数のプログラム命令は、遅延期間の間に実行され、
前記遅延期間において、前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に連結された警告デバイスが前記患者に信号を提供しない、
請求項1から12のいずれか一項に記載の心臓モニタ機器。
【請求項60】
前記遅延期間は、約10秒又は約30秒のうちの一つである、
請求項59に記載の心臓モニタ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2014年7月7日に出願された「心電図(ECG)信号において心イベントをノイズと区別するためのシステム及び方法(System and Method for Distinguishing a Cardiac Event from Noise in an Electrocardiogram (ECG) Signal)」と題する米国特許仮出願第62/021,451号の利益を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して不整脈を検出するためのシステム及び方法に関し、より具体的には不整脈の誤検出の頻度を減らす心臓モニタ機器とともに用いるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓は、効果的に脈を刻むために、整った一連の電気的インパルスに頼っている。正常な心拍波は洞房結節(SAノード)で発生し、左心室のずっと下の隅に向かって伝播する。心室で発生し、100回/分を超える脈動(又は、非協調的な心室運動)を生じる波は、心室頻脈と呼ばれている。当技術分野では、患者から得た心電図検査法(ECG)による信号を分析して、心室細動(VF)又は心室頻拍(VT)などの心不整脈がいつ現れるかを判断するために、信号処理技術を利用する様々な機器が知られている。
【0004】
VTは心室異所性始点から生じる心臓の不整頻拍であり、一般に100回/分の脈動を超える速度を特徴とし、概して大きいQRS群を特徴とする。VTは、単形性(同一のQRS群)でも多形性(様々なQRS群)でもよい。心室収縮の速度及び協調に応じて、VT状態の心臓は、脈動(すなわち、循環系を通じた血液の脈動運動)を生み出しても生み出さなくてもよい。脈動がないか弱い脈動が存在する場合には、VTは不安定であり命に関わる状態であるとみなされる。不安定なVTは、電気ショック又は除細動で処置され得る。
【0005】
VFは無秩序な電気活動及び非協調的な心室収縮を伴った無脈性不整脈であり、その状態では心臓はポンプとして機能する能力をすぐに失う。VF及び不安定なVTは、突然心臓停止(SCA)を引き起こし、突然心臓死(SCD)につながる主要な不整脈である。
【0006】
心臓への電気ショックが、VF及び不安定なVTのリズムを治し得る。このプロセスを平易に理解すると、十分な大きさの電気ショックが心臓の心臓細胞全てを同時に脱分極させ得るということである。次に、洞房結節(SAノード)が他の細胞のどれよりも前にこのショックから回復し、結果として生じるリズムが正常な洞リズムでないならば脈動を生み出すリズムになるという希望を持って、心臓細胞全てが短い休止期間を受ける。
【0007】
電気ショックを心臓に与えるために、現在、様々な機器が入手可能である。例えば、一般にペースメーカと呼ばれる植え込み型機器には、心拍数が下がった心臓にマイクロジュールの電気ショックを加え、心拍数を許容レベルまで速めるものがある。一般に植え込み型除細動器と呼ばれる他の植え込み型機器は、10〜40ジュールの範囲の電気ショックを加えてVT又はVFを治す。また、VT又はVFを治し、これらの不整脈による可能性のある致命的な結果を防ぐために、胸壁に付けた外部パドルを介し除細動器を用いて高エネルギーショック(例えば、180〜360ジュール)を加えることもよく知られている。
【0008】
矯正電気治療を加える際の時間の遅れは死をもたらし得るので、植え込み型のペースメーカ及び除細動器は、これらがなければ命に関わる状態を処置する能力を著しく向上させてきた。患者の体内に植え込まれるので、このような機器は、継続して又は実質的に継続して治療可能な不整脈がないか患者の心臓をモニタし、そのような不整脈が検出されると、機器は矯正電気ショックを心臓に直接加える。矯正電気ショックを患者の胸壁に加える外付けのペースメーカ及び除細動器も、そのような命に関わる不整脈を治すのに用いられるが、患者の命を救うために、不整脈の深刻な緊急事態の間に遅れずに治療を加えるのにこうした機器を用いることが可能ではない場合がある限り不都合を被る。そのような治療は、有効である数分以内に必要とされる。
【0009】
従って、そのような不整脈による死のリスクが高いとみなされる患者の場合、治療が必要な場合にすぐに利用できるように、電気機器が植え込まれることが多い。しかし、不安定なVT及びVFの一時的リスク又は未確定な永続的リスクを有する患者、又は電気機器をすぐに植え込むのが適さない患者によっては、矯正電気治療が概してすぐ手の届く所にある病院に入院する場合がある。長期入院は、その高い費用に起因して、又は患者が通常の日常活動に従事する必要性に起因して、現実的でないことが多い。
【0010】
従って、心室頻脈を起こしやすく、突然死の一時的リスク又は未確定な永続的リスクがある患者、又は植え込み型機器を待っている患者向けに装着型除細動器が開発された。そのような装着型除細動器は一般に、命に関わる不整脈が検出されると外部からの治療を提供するよう構成されている。装着型除細動器は、ペンシルベニア州ピッツバーグにあるZOLL Lifecor Corporationから入手可能である。そのような命に関わる不整脈を検出するのに用いられるプロセスの感度は非常に高く、治療を必要とするあらゆる人に治療を加えるよう設計されている。この高感度に対してトレードオフとなるのは、信号ノイズに起因した不整脈の誤検出のレベルがより高いということである。偽陽性と判断して不要な治療を引き起こす可能性を減らすために、装着型除細動器は、意識があることによって致命的な不整脈を起こしていない意識のある患者に差し迫った治療の注意を促し、患者が治療を停止することを可能にするアラームシーケンスを用いる。しかし、現在の検出システムの感度に起因して、ユーザはアラームを無視する場合、アラームが聞こえない場合、アラームに応答できない場合、及び/又は治療を停止するボタンを押し下げるのを忘れる場合がある。
【0011】
さらに、自動体外式除細動器(AED)及び植え込み型除細動器などの他のタイプの除細動器も、患者のECG信号をモニタして、心イベントが起きたかどうかを判断する。例えば、通常のAEDは、VT及びVFを認識し、除細動及び心肺蘇生法(CPR)を用いる患者の救援イベントの間の複数の特定の時点でECG分析を実行するためのシステムを含む。最初のECG分析は通常、除細動電極を患者に取り付けた後、数秒以内に開始される。次のECG分析は、初期分析の結果に基づき、開始してもしなくてもよい。概して、初期分析でショック可能なリズムを検出した場合、救助者は除細動ショックを加えるよう指示される。従って、そのようなシステムが、検出された不整脈が実際の不整脈か、単にノイズにより引き起こされたものかを判断する1つの処理ルーチンを含み、患者が心室頻脈を起こしている場合にだけ患者にショックが加えられることは有益であろう。
【0012】
さらに、通常の植え込み型除細動器は、基板搭載の揮発性メモリに格納された信号の検索及び分析によって、患者症状の生理的変化を検出する。概して、これらの機器は、心拍の区間平均に基づいて、又は導出された基準に基づいて記録された30分を超える心拍ごとのデータを格納し得えて、それにより、例えば、心房又は心室の電気活動、分時換気量、患者活動性スコアなどの生理的活動の様々な尺度が測定され、導出され得る。この情報から心イベントが検出され得るので、システムは治療ショックを加えるかどうかを判断し得る。しかし、植え込み型機器の電力を節約し、実際の心イベントが起きているときだけ治療ショックが加えられることを保証するために、システムが心イベントをノイズと区別する1つの処理ルーチンを含むことは有益であろう。
【0013】
従って、上述された除細動器は非常に有効であることが分かったが、ECG信号に含まれるノイズと命に関わる不整脈との間の差異をより正確に判断することで、命に関わる不整脈の誤検出の頻度を減らす検出方法及びシステムに対する必要性が生じている。
【発明の概要】
【0014】
除細動器は、パワースペクトル密度を用いて設計され、誤検出の頻度を減らすのに役立つ機械学習を用いてトレーニングされたシステム及びプロセスを提供され得る。誤検出は、何度も繰り返し発生するならば、アラームファティーグ(alarm fatigue)及び可能性として不要な治療をもたらす。
【0015】
本発明の1つの態様に従って、心電図(ECG)信号を患者から取得するための少なくとも1つの検出電極と、少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを備える心臓モニタ機器が提供される。少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体は、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、心臓モニタ機器に少なくとも1つの検出電極からECG信号を取得させ、ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、ECG信号に関連したスコアを決定するために少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、ECG由来のスコアが機械学習により決定された予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に心イベントのインジケーションを提供させる複数のプログラム命令を含む。
【0016】
変換ECG信号は、ECG信号の周波数領域表現、又はECG信号の周波数範囲にわたるECG信号の電力分布の表現を含んでよい。
【0017】
1つの例において、変換ECG信号はECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を有し、PSDはECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定されている。PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、機械学習に提供されてよい。そのような特徴は、限定されないが、PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、2Hz〜6Hzの周波数の間で、PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、0Hz〜2Hzの周波数の間で、PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、PSDの分散を表す少なくとも1つの値とを含んでよい。機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器、ニューラルネットワーク分類器、又は任意の適切な分類器であってよい。
【0018】
心臓モニタ機器は、インジケーションに基づき行動を起こすための命令信号を提供することをさらに含んでよい。行動は、患者に治療を加えること、及び患者に警告信号を提供することのうち少なくとも1つであってよい。心臓モニタ機器は、予め定められた閾値スコアをさらに正確にするためにインジケーション及びECG由来のスコアを機械学習に提供することもさらに含んでよい。
【0019】
少なくとも1つのプロセッサにより実行される複数のプログラム命令は、少なくとも1つのプロセッサがトリガーイベントを検出すると、メモリデバイスに格納されているECG信号の一部について開始され得る。ECG信号の一部は、トリガーイベントに先行するECG信号の予め定められた期間である。予め定められた期間は、例えば20秒であってよい。
【0020】
本発明のさらに別の態様に従って、装着型除細動器が提供されている。装着型除細動器は、装着型除細動器を装着する患者に治療を提供するための少なくとも1つの治療パッドと、心電図(ECG)信号を患者から取得するための少なくとも1つの検出電極と、少なくとも1つの治療パッド及び少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを備える。少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体は、少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、心臓モニタ機器にECG信号を取得させ、ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、ECG信号に関連したスコアを決定するために少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、ECG由来のスコアが機械学習により決定された予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に心イベントのインジケーションを提供させる複数のプログラム命令を含む。
【0021】
装着型除細動器は、少なくとも1つのプロセッサに動作可能に接続された、警告信号を患者に伝えるための少なくとも1つの警告システムを含んでよい。1つの例において、警告システムはディスプレイと患者通知機器とを含む。さらに、装着型除細動器は、少なくとも1つのプロセッサに動作可能に接続された少なくとも1つの応答メカニズムも含んでよい。装着型除細動器は、少なくとも1つの応答メカニズムの患者の操作に応答して、装着型除細動器を装着する患者に治療を提供することを防ぐよう構成されてよい。
【0022】
本発明のさらに別の態様に従って、心電図(ECG)信号において心イベントをノイズと区別するための方法が提供されている。本方法は、第1の信号処理ルーチンを用いる第1のモジュールでECG信号の一部においてイベントを検出する段階と、イベントが検出されたという信号及びECG信号の一部を第2のモジュールに送信する段階と、第2の信号処理ルーチンを用いる第2のモジュールでECG信号の一部を評価して、第1のモジュールにより検出されたイベントが実際の心イベントかノイズかを分類器からの出力に基づき判断する段階とを備える。
【0023】
心イベントが第1のモジュールにより検出されるまで、第2のモジュールは休止状態であってよい。第1のモジュールにより検出された心イベントが実際の心イベントであると第2のモジュールが判断した場合、アラームが起動され、実際の心イベントが起きたというインジケーションをユーザに提供してよい。第1のモジュールにより検出された心イベントがノイズであると第2のモジュールが判断した場合、無音遅延期間が開始されてよく、その間は実際の心イベントが起きたというインジケーションはユーザに提供されない。第2のモジュールは、無音遅延期間の間にECG信号の一部を引き続き分析して、第1のモジュールにより検出された心イベントがノイズであることを確認してよい。第1のモジュールにより検出された心イベントが実際の心イベントであると第2のモジュールが判断した場合、第2のモジュールはアラームを起動し、実際の心イベントが起きたというインジケーションをユーザに提供してよい。
【0024】
第2のモジュールにより実行される第2の信号処理ルーチンは、ECG信号の一部を取得する段階と、ECG信号の一部のPSDを決定する段階と、PSDの少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、ECG信号に関連したスコアを決定するために少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階と、ECG由来のスコアが機械学習により決定された予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に心イベントのインジケーションを提供する段階とを含んでよい。機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器、及びニューラルネットワーク分類器のうち一方であってよい。
【0025】
ECG信号は心臓モニタ機器から取得されてよい。心臓モニタ機器は、装着型除細動器、植え込み型除細動器、皮下植え込み型除細動器、自動体外式除細動器(AED)、モバイル心臓テレメトリ機器、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、ホルターモニタ、心イベントモニタ、及び植え込み型ループレコーダのうち1つであってよい。
【0026】
本発明の別の態様に従って、心電図(ECG)信号において、VT又はVFなどの心イベントをノイズと区別するための方法が提供されている。本方法は、ECG信号を取得する段階と、ECG信号に基づき変換ECG信号を決定する段階と、変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、ECG信号に関連したスコアを決定するために少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階と、ECG由来のスコアが機械学習により決定された予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に心イベントのインジケーションを提供する段階とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のこれら及び他の特徴及び特性、並びに動作方法、構造の関連要素及び部品の組み合わせの機能、及び製造コストが、複数の添付図面を参照して、以下の説明及び添付された特許請求の範囲を検討するとより明らかになるであろう。複数の添付図面の全ては、本明細書の一部を形成し、同じ参照番号は、様々な図において対応する複数の部分を示す。しかし、複数の図面は、例示及び説明のみを目的とするものであり、本発明の範囲の限定を意図するものではないことは、明確に理解されるべきである。
【0028】
【
図1】本発明に従って心不整脈の誤検出の頻度を減らす方法を利用する装着型除細動器の概略図である。
【0029】
【
図2】
図1の装着型除細動器のコントローラユニットのブロック図である。
【0030】
【
図3】
図2のコントローラユニットのマイクロコントローラのブロック図である。
【0031】
【
図4】
図3のマイクロコントローラのノイズ検出モジュールにより実行される1つのプロセスのフロー図である。
【0032】
【
図5】正常な洞リズムを示し、著しいノイズ成分を含むECG信号のパワースペクトル密度を例示するグラフである。
【0033】
【
図6】VT不整脈を示すECG信号のパワースペクトル密度を例示するグラフである。
【0034】
【
図7】ノイズ検出モジュールにより実行される手順を例示するフロー図である。
【0035】
【
図8】
図3のマイクロコントローラのノイズ検出モジュールに利用可能な様々な状態を例示する状態遷移図である。
【0036】
【
図9】
図3のマイクロコントローラのノイズ検出モジュールにより実行される手順の時系列シーケンスを例示するチャートである。
【0037】
【
図10】本発明を実行するための例示的なソフトウェア手順を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書に用いられるとき、「内側」、「左」、「右」、「上」、「下」、「水平」、「鉛直」などの空間又は方向の用語は、本明細書に説明されている通り本発明に関する。しかし、本発明は様々な代替の向きを仮定し得、従って、そのような用語は限定とみなされるべきではないことが理解されるべきである。本明細書及び特許請求の範囲に用いられるとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別段の明確な指示が文脈上ない限り、複数の指示対象を含む。本明細書の目的には、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に用いられる、構成要素、反応条件、寸法、物理的特性などの量を表す全ての数値は、全ての例において「約」という用語によって変更されるものと理解されるべきである。従って、それとは反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付された特許請求の範囲に説明された複数の数値パラメータは近似値であり、これは、本発明によって取得されようとする所望の特性に応じて変わり得る。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、それぞれの数値パラメータは、述べられた有効数字の数に照らして、また通例の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0039】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、装着型除細動器とともに用いられるとして以下に説明されるが、これは本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、本明細書に開示されるシステム及び方法は、任意の適切な心臓モニタ機器とともに用いられてよい。このような機器は、限定されないが、植え込み型除細動器(ミネソタ州セントポールにあるSt. Jude Medicalから入手可能なEllipse ICDなど)、自動体外式除細動器(AED)(マサチューセッツ州チェルムズフォードにあるZOLL Medical Corporationから入手可能なAED Plus(登録商標)自動体外式除細動器機器など)、モバイル心臓テレメトリ機器(ペンシルベニア州モルバーンにあるBioTelemetry, Inc.から入手可能なMCOT(登録商標)機器など)、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、ホルターモニタ(カリフォルニア州ラグーナヒルズにあるApplied Cardiac Systemsから入手可能なM8 Holter Reporterモニタシステムなど)、及び任意の他の好適な心イベントレコーダ(ミネソタ州イーガンにあるBraemar Manufacturing, LLCから入手可能なER 920W心イベントモニタなど)を含む。さらに、以下に説明される検出方法及びシステムはVT及びVFを検出するとして開示されるが、これは本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、限定されないが、心房期外収縮(PAC)・多源性心房頻拍・心房粗動・心房細動などの心房性不整脈、上室性頻拍症(SVT)、接合部不整脈、頻拍、接合部調律、接合部頻拍、接合部期外収縮、及び心室性期外収縮(PVC)・促進型心室固有調律などの心室性不整脈など、他の不整脈も検出されてよい。
【0040】
図1を参照して、装着型除細動器1が患者により装着されてよく、患者が除細動器1を装着することを可能にするよう構成されたベルト又はハーネス又は他の衣服を含んでよい。そのような装着型除細動器は、長期又は長時間にわたる装着用に構成され得る。例えば、装着型除細動器は概して、一度に2〜3か月間ほとんど継続して装着され得る。患者が装着している期間中、装着型除細動器1は患者のバイタルサインを継続して又は実質的に継続してモニタし、扱いやすく且つ利用しやすく、可能な限り軽量・快適・携帯可能であり、必要なときに1つ又は複数の救命治療ショックを加えることができるよう構成され得る。
【0041】
装着型除細動器1は、外部ハウジング内に配置されたコントローラユニット3を備えてよく、コントローラユニット3は患者により装着され、ECG電極5a、5b、5c、及び5d並びに複数の治療パッド7を含む上体ハーネス又はベストなどの治療機器又は処置機器に接続されるよう構成されている。ハーネス又はベストのECG電極5a、5b、5c、及び5d並びに複数の治療パッド7は、幹線ケーブル9又は他の適切な接続メカニズムを介してコントローラユニット3に動作可能に接続されている。適切な装着型除細動器の限定されない複数の例が、米国特許第4,928,690号、第5,078,134号、第5,741,306号、第5,944,669号、第6,065,154号、第6,253,099号、第6,280,461号、第6,681,003号、第8,271,082号、及び第8,369,944号に開示されており、これら全ての全体は参照により本明細書に組み込まれる。上体ハーネス又はベストは、心拍センサ、加速度計、及び、血圧・心拍数・胸部インピーダンス・呼吸数・心音を測定することができるセンサ、音響センサ、オーディオ変換器、及び患者の活動レベルなど、他の複数の検出電極(不図示)も含んでよい。
【0042】
装着型除細動器1が患者により装着されているとき、電極5a、5b、5c、及び5dは患者に着脱可能に取り付けられる。電極5a、5b、5c、及び5dは電極アセンブリ11の一部を形成する。1つの例に従って、電極アセンブリ11は、前後のチャネルから、及び左右のチャネルからECG信号を受信する。前後(FB)のチャネルは、患者の胸に配置された電極5a、5b、5c、又は5d、及び患者の背中に配置された別の電極5a、5b、5c、又は5dを含む。左右(SS)のチャネルは、胸の左側に配置された電極5a、5b、5c、又は5d、及び患者の右側に配置された別の電極5a、5b、5c、又は5dを含む。
【0043】
コントローラユニット3は、複数の治療パッド7、少なくとも1つの触知刺激器12、電極アセンブリ11、及び音声/視覚警告デバイス13などの1つ又は複数の警告デバイスに動作可能に接続されている。除細動器1が装着されているとき、複数の治療パッド7は患者に着脱可能に接続されている。任意選択的に、コントローラユニット3は、患者の他の複数の生理状態又はパラメータに関するデータをコントローラに提供する他の複数の電極/機器に動作可能に接続されてよい。本例の警告デバイス13は音声/視覚用に設計されているが、さらに又は代替的に触知用に設計され、可聴警告及び/又は可視警告に加えて又はそれの代わりに、触知警告(振動など)を患者に提供してよい。
【0044】
電極アセンブリ11をコントローラユニット3に接続するのに幹線ケーブル9が用いられてよいが、電極アセンブリ11をコントローラユニット3に動作可能に接続する他の複数のタイプのケーブル又は他の複数の接続デバイスも用いられてよい。電極アセンブリ11の少なくとも1つの部分を電極5a、5b、5c、及び5dに接続するのに、配線又は他の複数の接続デバイスが用いられてよい。さらに代替的に、コントローラユニット3が、無線接続、又は無線接続と有線接続の組み合わせによって、電極5a、5b、5c、及び5d、複数の治療パッド7、電極アセンブリ11、及び刺激器12のうち1つ又は複数に動作可能に接続されてよい。
【0045】
いくつかの例において、コントローラユニット3は、限定されないが、1つ又は複数のプロセッサ、1つ又は複数のコントローラ、及び/又は、1つ又は複数のプロセッサに動作可能に接続されたメモリに格納された1つ又は複数のプログラムあるいは他のソフトウェアを含んでよい。より具体的に
図2を参照すると、コントローラユニット3は、マイクロコントローラ15、マイクロコントローラ15に動作可能に接続された音声/視覚警告デバイス13、及び電源17を有する。電源17は、1つ又は複数の治療ショックを複数の治療パッド7に与えるだけでなく、装着型除細動器1の全ての内部コンポーネントに電力を供給するのに十分な容量を有する。
【0046】
音声/視覚警告デバイス13は、適切なインタフェースを介してマイクロコントローラ15に動作可能に接続されたマイク19、スピーカ21、及びオーディオ回路23も含んでよい。患者が治療を必要とする症状を起こしていることを判断する一部として、マイクロコントローラ15は音声反応テストが実行されるよう構成されてよい。音声反応テストは、患者に意識があるかを患者に言葉で尋ねるスピーカ21を含んでよい。マイク19又は他のオーディオデバイスが、患者が言葉による肯定発言、例えば「はい」などで応答したことを検知した場合、マイクロコントローラ15は治療を延期するよう構成されてよい。患者がマイク19により検知される回答を提供しない場合、又はそのようなデータがマイクロコントローラ15に提供されない場合、マイクロコントローラ15は、患者に意識があることを確認するために、1つ又は複数の応答ボタン27を押すよう患者に尋ねる言葉のメッセージをスピーカ21に提供させるよう構成されてよい。
【0047】
1つの例において、治療を加える必要があり得る可能性のある状態が確認された場合、マイクロコントローラ15は、スピーカ21に特定の質問を患者に尋ねさせるよう構成されてよい。例えば、スピーカは、「意識がありますか?」又は「意識があるなら、名前を言ってください」と患者に尋ねるよう構成されてよい。マイクロコントローラ15は、患者が質問に回答していることを確認するための患者の声紋を含むメモリデバイスに動作可能に接続されてよい。そのような確認は、通りすがりの人が質問に不適切に応答することによって患者の治療を妨げることを防止する。
【0048】
マイク19及びスピーカ21を用いて、患者はリアルタイムの入力を装着型除細動器1に提供することが可能になる。マイクロコントローラ15は、後で救急隊員が調査するために、音声入力を装着型機器の近くに記録するよう構成されてよく、又はモニタセンターと会話するために接続するよう構成されてもよい。そのような情報は、医療供給者が患者の診断を判断する、又は患者を処置するのに役立ち得る。
【0049】
音声/視覚警告デバイス13は、患者に情報を提供し、且つ患者にユーザ入力デバイスを提供するためのディスプレイスクリーン25をさらに含んでよい。ディスプレイスクリーン25は、限定されないが、時間、バッテリ寿命、音量、信号強度、機器の状態、及び任意の他の有益な情報などの情報を患者に提供するよう構成されてよい。さらに、ディスプレイスクリーン25は、限定されないが、機器の設定、機器により格納されたデータ、及び装着型除細動器1により蓄積された様々な他のデータなど、装着型除細動器1に関する様々なデータにユーザがアクセスすることも可能にする。ディスプレイスクリーン25はさらに、患者がデータを送信及び受信することを可能にする通信インタフェースとして機能する。
【0050】
少なくとも1つの応答ボタン27も、マイクロコントローラ15との有効な接続に提供されてよい。応答ボタン27は、マイクロコントローラ15が予め定められた期間内の応答ボタン27の患者の操作に応答して、装着型除細動器1を装着する患者に治療提供を開始する信号を送信するのを防ぐために提供されてよい。
【0051】
マイクロコントローラ15は、英国のケンブリッジにあるARM Ltd.から入手可能であるような単一チップマルチプロセッサであってよいが、ECG電極5a、5b、5c、及び5dから複数のチャネル(すなわち、上述されたように前後及び左右)のECG情報を受信し、ECG電極5a、5b、5cおよび5dから受信した情報に基づき異常な心拍リズムを検出し、異常な心拍リズムが検出された場合に、ユーザが予め定められた時間内に応答ボタン27を介して介入しない限り、複数の治療パッド7を介して患者に治療ショックを与えるよう構成されてよい。少なくとも1つの例において、予め定められた時間は最小30秒から最大数分に延長してよいが、その時間は、検出した不整脈のタイプ、機器の相互作用、又はノイズの存在に基づいて異なってよい。
【0052】
マイクロコントローラ15は、上述された複数の機能に加えて、複数の他の機能も実行するよう構成されてよい。これらの他の機能は、上述された複数の機能を妨害することなく、マイクロコントローラ15により提供されるロバストなコンピューティングプラットフォームを強化し得る。これらの他の機能のいくつかの例は、通信モジュール(不図示)を介して治療ショックを受けたばかりの患者の場所を救急隊員に通知すること、ディスプレイスクリーン25を介して、機器の装着者のこれまでの生理データを機器のユーザに提供すること、及び/又は、通信モジュールを介して、装着型除細動器1の修理又は取り替えを必要とし得る装着型除細動器1内の可能性のある性能に関する問題を、装着型除細動器1の集中管理場所29にいる製造業者に通知することを含む。さらに、これらの他の機能は、メモリデバイスに本情報を格納することでデータ及びイベントの履歴を維持すること、ディスプレイスクリーン25を介してユーザと通信すること、及び/又は、通信モジュールを介してデータ及びイベントを報告することを含んでよい。さらに、別の機能が、重要なデータの履歴に関して追加の複数の操作を実行してよい。例えば、1つの例において、ある機能は重要なデータの履歴を分析して、心不全の悪化又は突然心臓死のリスク増大を予測する、及び/又は、患者の他の複数の生理状態及びパラメータをモニタする。
【0053】
動作時に、また以下により詳細に論じられるように、VT/VF状態などの異常症状をマイクロコントローラ15が検出した場合、装着型除細動器1は、予め定められた期間の間、患者を刺激するよう構成されている。刺激は、患者により知覚可能ないかなる刺激であってもよい。除細動器1が生成し得る刺激の例には、視覚刺激(ディスプレイスクリーン25を介して)、音声刺激(スピーカ21を介して)、触知刺激(触知刺激器12を介して)、又は軽刺激のアラームショック(治療パッド7を介して)が含まれてよい。上述されたような予め定められた期間内に応答ボタン27を押すことにより、ユーザが刺激を止めることを可能にするために、応答ボタン27が提供されている。患者が応答ボタン27を押すと刺激が止まり、別の不整脈が検出されるまで装着型除細動器1によるさらなる処置は行われない。予め定められた期間内に患者が応答ボタン27を押さない場合、装着型除細動器1は複数の治療パッド7を介して1つ又は複数の治療ショックを患者に与える。
【0054】
図3を参照し且つ
図1及び
図2を引き続き参照して、異常症状が存在するかどうかをマイクロコントローラ15が判断する方法がより詳細に論じられる。マイクロコントローラ15は、デジタル信号処理モジュール31と、デジタル信号処理モジュール31に動作可能に連結された共有メモリモジュール33と、デジタル信号処理モジュール31及び共有メモリモジュール33に動作可能に連結されたアクティベーションモジュール37とを含む。アクティベーションモジュール37は、デジタル信号処理モジュール31及び共有メモリモジュール33に動作可能に連結されたI/Oモジュール38と、I/Oモジュール38を介してデジタル信号処理モジュール31及び共有メモリモジュール33に動作可能に連結されたノイズ検出モジュール35と、I/Oモジュール38を介してノイズ検出モジュール35に動作可能に接続され、ノイズ検出モジュール35から信号を受信し、異常症状が存在することをノイズ検出モジュール35からの信号が示す場合、1つ又は複数の治療ショックを与えるためにI/Oモジュールを介して複数の治療パッド7に信号を提供するよう構成されたシェル36とを含む。いくつかの実装において、ノイズ検出モジュール35はデジタル信号処理モジュール31内に含まれてよい。そのような実装において、ノイズ検出モジュール35は共有メモリモジュール33と通信し得て、共有メモリモジュール33に格納されたECGデータにアクセス可能であり得る。シェル36は、限定されないが、ユーザインタフェース、Bluetooth(登録商標)接続性、汎用非同期送受信回路(UART)、コンデンサ充電、及び下記に開示される他の機能などの機能を提供するよう構成されるプログラミングオブジェクトを格納するサイズである。
【0055】
デジタル信号処理モジュール31は、電極アセンブリ11からのECG信号の複数のチャネル(すなわち、上述されたように前後及び左右)から信号を受信するよう構成されてよい。デジタル信号処理モジュール31は、矢印Aで示されるように共有メモリモジュール33に「未加工」のECG信号を送る。デジタル信号処理モジュール31は、ECG信号の異常な心拍リズムを検出するプロセスを用いてECG信号の処理もする。異常な心拍リズムを検出するのに用いられる方法の一例が、米国特許第5,944,669号に見出され得て、その全体を参照によって本明細書により組み込まれる。VT/VFなどの異常な心拍リズムがデジタル信号処理モジュール31により検出された場合、矢印Bで示されるように、信号がI/Oモジュール38を介してノイズ検出モジュール35に送られる。
【0056】
ノイズ検出モジュール35は、デジタル信号処理モジュール31からの、異常な心拍リズムが検出されたことを示す信号をI/Oモジュール38を介して受信し、異常な心拍リズムがVT/VF状態であるかどうか、又はECG信号のノイズにより引き起こされたのかどうかを判断するために、以下により詳細に論じられる手順を用いて信号をさらに処理するよう構成されてよい。ノイズ検出モジュール35も、矢印Cで示されるように、共有メモリモジュール33からの「未加工」のECG信号にI/Oモジュール38を介してアクセスして、デジタル信号処理モジュール31により検出された異常な心拍リズムがVT/VF状態であるかどうか、又はECG信号のノイズにより引き起こされたのかどうかに関する判断を支援してよい。
【0057】
共有メモリモジュール33は、ECGデータなど、複数のモニタ期間及び治療期間にわたって収集される複数月又は複数年のセンサ情報を格納するサイズであってよい。これらのモニタ期間及び治療期間は、ほぼ24時間の継続モニタ期間(及び実質的にほぼ1〜2か月の継続モニタ期間)を含んでよく、その間に複数の治療が患者に加えられている場合がある。これらの例のいくつかにおいて、マイクロコントローラ15は格納されたセンサ情報を分析し、患者のためになる治療方法の調整又は代替の治療方法を決定するよう構成されている。例えば1つの例において、マイクロコントローラ15は、治療の延期又は中止を起こした患者のそれぞれの事例と実質的に同時期に収集されたECGデータを分析するよう構成されている。この例において、マイクロコントローラ15は、格納された複数月のECGデータを分析し、正常ではないが治療の必要性を示さない個別の特異なリズムを認識するよう構成されている。いくつかの例において、マイクロコントローラ15は、認識された特異なリズムに応答して治療を開始しないことにより、装着型除細動器1の治療方法を自動的に調整して患者により適合させてよい。そのような調整は、しかるべき医療関係者による調査と併せて実行されてよい。
【0058】
ノイズ検出モジュール35は、異常症状が存在すること、又はデジタル信号処理モジュール31により検出された異常症状がノイズにより引き起こされたことを示す信号をI/Oモジュールを介してシェル36に送信するよう構成されている。この信号に基づき、シェル36は、1つ又は複数の治療ショックを与えるために、命令信号をI/Oモジュール38を介して複数の治療パッド7に提供するようアクティベーションモジュール37に命令する、又は患者に警告を提供するために命令信号を音声/視覚警告デバイス13に提供する。警告デバイス13により提供された警告への応答を患者が応答ボタン27を介して提供しない場合、例えば、1つ又は複数の治療ショックを与えるために、シェル36は命令信号を複数の治療パッド7に提供する。
【0059】
異常な心拍リズムがVT/VF状態であるかどうか、又はノイズにより引き起こされたかどうかを判断するのを機械学習システムが支援してよい。機械学習システムは、経験によって自動的に改善されるコンピュータアルゴリズムのいかなる従来システムであってもよい。適切な機械学習システムは、教師なし学習(ターゲットラベルの無い連続的な入力においてパターンが識別される)を用いても、教師付き学習(指定されたターゲットラベルと一致するパターンが識別される)を用いてもよい。教師付き学習の1つの形態は分類であり、それによってある項目が、複数のカテゴリの複数の項目に関する複数の例の観察結果に基づき分類されている。別の形態は数値的又は統計的回帰であり、入力と出力との関係を説明し、入力が変わるにつれて出力がどのように変わるかを予測する機能が開発されている。
【0060】
教師付き学習の適切な方法は、ルールベースのデシジョンツリー、アンサンブル法(バギング、ブースティング、ランダムフォレスト)、k最近傍アルゴリズム(k−NN)、線形回帰又はロジスティック回帰、ナイーブベイズ分類器、ニューラルネットワーク、パーセプトロンアルゴリズム、及びサポートベクターマシン(SVM)モデルも含んでよい。適切な機械学習分類器は、カリフォルニア州サンディエゴにあるSalford Systemsから入手可能なMARS(登録商標)分類器、及びラトビアのリガにあるリガ工科大学・応用コンピュータシステム研究所(the Institute of Applied Computer Systems)のGints Jekabsonsから入手可能なMatlab/Octave用のARESLab(登録商標)適応型回帰スプラインツールボックスを含む。適切なニューラルネットワーク分類器は、The MathWorks, Inc.のNeural Network Toolbox(登録商標)である。以下に複数の分類器がより詳細に説明される。
【0061】
機械学習は、マサチューセッツ州ネイティックにあるThe MathWorks, Inc.から入手可能なMATLAB(登録商標)などの技術計算用高水準言語を用いて開発され、機能、モデル、又は分類器を構築するために推測的に実行されてよい。出力は、与えられたECG信号の品質に関連したスコア又は確率の決定に用いるために、ノイズ検出モジュール35に移動してよい(後で詳細に説明される)。アルゴリズム及びソフトウェア命令を含む機械学習システムは、任意の使いやすい場所(共有メモリモジュール33など)に設けられ、必要なときに呼び出されてよく、又は
図3に示される例にあるように、機械学習システム39がノイズ検出モジュール35に含まれてもよい。さらに、図に示される例に任意の適切な機械学習システムが用いられてよいが、機械学習システムは機械学習分類器を構成する。
【0062】
図4を参照し、且つ
図1〜
図3を引き続き参照すると、心電図(ECG)信号において心イベントをノイズと区別するための方法は、デジタル信号処理モジュール31から心イベントが起きたというインジケーションを取得する段階と、共有メモリモジュール33から心イベントに対応するECG信号を取得する段階(ブロック100)と、ECG信号のPSDを決定する段階(ブロック101)と、PSDの少なくとも1つの特徴を導出してECG由来のスコアを決定する段階(ブロック102)と、サンプルデータセットを用いてトレーニング(ブロック403)された機械学習分類器を用いて予め定められた閾値スコアを決定する段階(ブロック103)と、ECG由来のスコアを機械学習分類器により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階(ブロック104)と、ECG由来のスコアが機械学習分類器により決定された予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に心イベントのインジケーションを提供する段階(ブロック105)、又はECG由来のスコアが機械学習分類器により決定された予め定められた閾値スコアより上又は下のうちのもう一方である場合に信号がノイズであるというインジケーションを提供する段階(ブロック106)とを含む。
【0063】
図4の方法は、以下により詳細に論じられる。最初に、上述されたように、デジタル信号処理モジュール31は電極アセンブリ11から複数のチャネルのECG信号を受信し、信号にVT/VFが存在するかどうかを上述された異常な心拍リズム・心拍リズム検出手順を用いて判断する。VT/VFが存在する場合、信号はノイズ検出モジュール35に送られ、「未加工」のECG信号がノイズ検出モジュール35により共有メモリモジュール33から取得される。ノイズ検出モジュール35は、実際のVT/VF状態を、主要な故障、電磁干渉、患者の動作などにより引き起こされるノイズに起因したVT/VF状態の不適切な検出と区別するよう構成されている。ノイズ検出モジュール35は時間領域ECG信号を処理し、ECG信号を変換ECG信号に変換する。例えば、モジュール35は時間領域ECG信号を周波数領域ECG信号に変換してよい。例えば、モジュール35はECG信号をECG信号の周波数範囲にわたるECG信号の電力分布表現に変換し得る。いくつかの例において、周波数範囲にわたる電力分布は、周波数領域ECG信号から計算され得る。1つの例において、変換ECG信号はPSDであり得る。これは、ECG信号の電力が信号の異なる周波数にわたりどのように分布するかを説明する。例えば、ノイズ検出モジュール35は、時間領域ECG信号に対して高速フーリエ変換(FFT)演算を行うことでPSDを生成してよい、又は他の離散フーリエ変換(DFT)技術を用いてPSDを生成してよい。
【0064】
例えば、PSDはウェルチの方法の修正版を用いて計算されてよい。4096のサンプル(400Hzのサンプリングレート)が、256のサンプルのオーバーラップを有する512のサンプルウィンドウにウィンドウ化されてよい。次に、ハミングウィンドウが各セグメントに適用される。各セグメントのFFTが行われ、全てのウィンドウは単一平均ピリオドグラムに平均化される。ウェルチの方法は、Peter D. Welchの「The Use of Fast Fourier Transform for the Estimation of Power Spectra: A Method Based on Time Averaging Over Short Modified Periodograms」(IEEE Trans. Audio and Electroacoust., Vol. AU−15, pp. 70−73, (June 1967))に説明されている。ウェルチの方法は、複素数であるFFTの数値を求めるものであり、最終結果としてFFTを実数に変換するためにFFTの絶対値を2乗する。
【0065】
図5は、正常な洞リズムを示し、ノイズ成分を含むECG信号のPSDを示す。
図6はVT不整脈を示すECG信号のPSDを示す。これらの図から分かり得るように、VT/VF状態の信号を正常な洞リズムを示すECGの信号と比較すると、著しい量のノイズ混入が存在していてもPSDは非常に特異な特徴を有する。例えば、VT/VF状態のECG信号のPSDは概して、複数の特異な優位スペクトル帯域を有するが、正常な洞リズムは2.5Hz未満に優位スペクトル帯域を有する。優位スペクトル帯域は、PSDの最大値に対応する周波数の帯域である。複数の優位スペクトル帯域を伴うPSDは、ECG信号の電力が著しい複数の周波数帯域を有する。従って、
図5からも分かり得るように、正常な洞リズムはノイズ成分に起因した他の優位スペクトル帯域を有し得るが、正常な洞リズムのPSDの超低周波帯域(すなわち、2.5Hz未満)には、同じ超低周波帯域におけるVT/VF信号のPSDと比較すると高い情報量がある。VT/VF状態のECG信号のPSDにおける情報量は、より広い周波数にわたって広がり、周波数成分は、概して2.5Hzを超えるVTの周波数付近で最も密になる。
【0066】
さらに、大量のノイズが存在していても、正常な洞リズムのPSDはVT/VF不整脈のPSDと異なる。ECG信号内のノイズは、エントロピー(すなわち不規則性)として特徴づけられてよい。従って、ノイズがある正常な洞リズム信号とVT/VF信号とを区別するために、様々なエントロピー計算がPSDに実行されてよい。例えば、帯域内エントロピーがECG信号のPSDのために計算されてよい。電気工学分野におけるエントロピーが、1948年にシャノンによって定義された。エントロピーについての任意の適切な定義又は公式が用いられてよいが、1つの例において、シャノンエントロピーとして一般に知られている定義が用いられてよく、帯域内エントロピー61は2Hz〜6Hzの間の周波数に対するシャノンエントロピー計算である。シャノンエントロピー計算は、C.E. Shannonの「A Mathematical Theory of Communication」(The Bell System Technical Journal, Vol. XXVII, No. 3, July 1948)に説明されている。第1帯域エントロピー63もECG信号のPSDのために計算されてよい。第1帯域エントロピーは、PSDを確率分布関数(PDF)に変換し、0Hz〜2Hzの信号のエントロピーを計算することにより計算されてよい。最後に、以下により詳細に論じられるように、PSDをPDFとして扱い、二次モーメントを計算することにより、PSDの分散がECG信号のPSDのために計算されてよい。
【0067】
PSDの4つの特徴(PSDの優位周波数、2Hz〜6Hzの周波数の間のPSDの帯域内エントロピー、0Hz〜2Hzの周波数の間のPSDの第1帯域エントロピー、及びPSDの分散)が、特徴選択実験及び生理学的推論の組み合わせに基づき、ブロック102でPSDから導出され、ブロック103で機械学習分類器に提出される特徴として選択された。ノイズがない正常な洞リズム(NSR)をモーションアーチファクト又はマシンノイズが混入したNSRと比較すると、PSDのいくつかの特性は同じ状態のままである。例えば、エントロピーは不規則性の測定なので、PSDの0〜2Hzの範囲のエントロピーは、ノイズ有り及びノイズ無しのNSRでは類似している。しかし、ノイズが存在しないNSRのPSDは、2〜6Hzの範囲の情報量が、ノイズのある信号を有するNSRのPSDよりもはるかに少ない。
【0068】
これに対して、実質的にノイズのないVT/VFのECG信号は、0〜2Hzの帯域には非常にわずかしか情報がなく、VT/VFの周波数付近のPSDの2〜6Hzの帯域にははるかに多くの情報がある。
図6は、モーションアーチファクト又はマシンノイズが混入したECG信号のPSDを示す。
図6のPSDは0〜2Hzの帯域にいくらかの情報量を示すことが分かり得る。しかし、その情報量は、特に2〜6Hzの帯域のPSDの情報量と比較すると比較的少ない。VT/VF信号にノイズ混入があっても、周波数成分の大部分は依然として2Hzより大きく、0〜2Hzのエントロピーはほとんど変わらないままである。0〜2Hzの帯域及び2〜6Hzの帯域におけるエントロピーは、VT/VR不整脈を表すPSD及びノイズ混入のあるNSRにおいて明らかに異なっていたので、2Hz〜6Hzの周波数の間のPSDの帯域内エントロピーと、0Hz〜2Hzの周波数の間のPSDの第1帯域エントロピーとが、ブロック102でPSDから導出されブロック103で機械学習分類器に提出される特徴として選択された。2つの帯域(0〜2Hz及び2〜6Hz)のエントロピー測定を補完するために、PSDの優位周波数も調査される。正常な洞リズムの場合、優位周波数は概して2Hz未満である。しかし、極端なノイズ成分(低周波数成分又は高周波数成分)があると、この観察結果は違ったものになり得る。例えば、
図5はノイズ成分のあるNSRのPSDを示しており、約2.5Hzに優位周波数、及び約4Hzにそれより小さい別の優位周波数があり、両方ともノイズ混入で生じた可能性が最も高い。従って、PSDの優位周波数は、ブロック102でPSDから導出されブロック103で機械学習分類器に提出される特徴として選択された。
【0069】
最後に、ブロック102でPSDから導出されブロック103で機械学習分類器に提出される特徴として分散が選択された。その理由は、分布の分散が分布の相対的な広がりを感覚的に提供するからである。PSDが0〜2Hzの帯域にエネルギーの大部分を有し、2〜6Hzの帯域には非常にわずかしかエネルギーがない場合、分散は比較的小さい。しかし、2〜6Hzの帯域に多くのエネルギーを有するPSDは、はるかに広い分散のPSDを提供する。上述されたように、NSRのPSDは0〜2Hzの帯域にエネルギーの大部分を有し、VT/VF不整脈のPSDは2〜6Hzの帯域に多くのエネルギーを有する。分散を計算するために、PSDが正規分布であると仮定する。
図5及び
図6に明確に示されるように、正常な洞リズムのPSDもVT/VF状態の信号のPSDも正規分布ではなく、PSDの分散は、PSDをPDFとして扱い二次モーメントを計算することで計算される。
【0070】
以上に論じられたように、PSDはウェルチの方法の修正版を用いて計算されてよい。4096のサンプル(400Hzのサンプリングレート)が、256のサンプルのオーバーラップを有する512のサンプルウィンドウにウィンドウ化される。従って、各4096サンプルでは、優位周波数、帯域内エントロピー、第1帯域エントロピー、及び分散が以上に論じられたように計算される。次に、これらの値は、トレーニングセットから得られた、各値を−1〜1の範囲にマッピングする機能を用いてマッピングされてよい。新たな値が元の値の範囲の外側に含まれる場合、新たにマッピングされた値は、−1〜1の範囲の外側にあり得る。
【0071】
PSDの優位周波数と、2Hz〜6Hzの周波数の間のPSDの帯域内エントロピーと、0Hz〜2Hzの周波数の間のPSDの第1帯域エントロピーと、PSDの分散とをブロック102で導出するのにノイズ検出モジュール35により用いられる手順のより詳細な説明が以下に論じられている。最初に、適合型のウェルチの方法を仮定すると、信号のFFTはF(s)として表され得る。ここでsは周波数である。sの範囲は、0Hz〜256Hzであり得る。PSDは、何らかの未知の分布の確率分布関数(PDF)として扱われてよい。FFTを確率分布として扱うことで、異なる帯域のエントロピー量が識別され得る。
【0072】
F(s)をPDFに変換(すなわち、ウェルチ適合型FFT)するのに以下の数式が利用されてよい。
【数1】
【0073】
従って、f(s)はPSDから得られたPDFである。代替的に、f(s)は、上に示された連続の(積分)公式ではなく、加算などの離散公式を用いて計算されてもよい。
【0074】
次に、優位周波数(y
df)を決定するのに以下の数式が利用されてよい。
【数2】
【0075】
f(s)を引き続き確率分布関数として扱うことで分散が求められる。f(s)の平均をμと仮定すると、分散(y
var)は以下の数式を用いて計算され得る。
【数3】
【0076】
代替的に、(y
var)は、上に示された連続の(積分)公式ではなく、加算などの離散公式を用いて計算されてもよい。
【0077】
f(s)はPDFを表すので、スペクトル帯域のエントロピーは多くの修正をせずに決定されてよい。第1帯域エントロピー(y
H0−2)は以下の数式を用いて計算され得る。
【数4】
【0078】
同様に、帯域内エントロピー(y
H2−6)は以下の数式を用いて計算され得る。
【数5】
【0079】
PSDの優位周波数、2Hz〜6Hzの周波数の間のPSDの帯域内エントロピー、0Hz〜2Hzの周波数の間のPSDの第1帯域エントロピー、及びPSDの分散が、PSDから導出され機械学習分類器に提供される特徴として以上に説明されたが、これは本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、他の特徴が利用されてもよい。そのような特徴は、限定されないが、平均、中央値、全帯域エントロピー(0〜200Hz)、帯域外エントロピー(6〜18Hz)、及び負の指数パラメータを含む。いくつかの実装において、ECG取得回路により行われる信号増幅(例えば、信号利得)が、機械学習分類器に提供される特徴として用いられ得る。例えば、信号利得(例えば、予め定められた閾値に従って正利得又は負利得)が、例えば、入力ECG信号を拡大又は抑制するのに適用されてよい。例えば、入力ECG信号が抑制される(例えば、負利得が信号に適用される)場合、そのような情報は、ECG信号がノイズのあるECG信号である確率がより高いことを示し得る。このように、適用される利得の量に関する情報が、サンプリングされたECG信号がノイズであるか、心イベントであるかを判断する際に比較検討され得る。
【0080】
PSDの優位周波数、2Hz〜6Hzの周波数の間のPSDの帯域内エントロピー、0Hz〜2Hzの周波数の間のPSDの第1帯域エントロピー、PSDの分散、及び/又はPSDの任意の他の好適な特徴がPSDから導出されると、これらの特徴はブロック103で機械学習分類器に提出される。上述されたように、限定されないが、多変量適応型回帰スプライン分類器などの任意の適切な機械学習分類器が利用されてよい。必ずしも好ましいわけではない1つの例示的な例において、そのような分類器が、そのC++への移植性、低計算コスト、及び非線形度の相関を有する多変量データを処理する上での高い成功率に起因して利用される。
【0081】
以下の説明では、多変量適応型回帰スプライン分類器を説明するために、その総称的な意味で用語「MARS分類器」を用いる。一般に、MARS分類器は、変数間の非線形性及び相互作用を自動的にモデル化し得るノンパラメトリック回帰分類器である。これは、「キンク(kink)」を回帰関数に変換する能力を有する。MARS分類器はモデルを構築し、それは基底関数の加重合計である。基底関数は、定数、ヒンジ関数、あるいは2つ又はそれより多くのヒンジ関数の積である。ヒンジ関数は、データを離れた複数の独立領域に、定数(ノット(knot)として知られる)を用いて、それらの領域のヒンジにおいて分割する。2つ又はそれより多くのヒンジ関数の積は、2つ又はそれより多くの変数の間の相互作用をモデル化する。MARS分類器の例示的な説明が、Jerome H. Friedmanの「Multivariate Adaptive Regression Splines」(The Annals of Statistics, Vol. 19, No. 1, (1991))に論じられている。
【0082】
MARS分類器は、モデルを2段階で構築する。つまり、フォワードパス、その後に続いてバックワードパスである。フォワードパスにおいてモデルは、切片項(応答値の平均)を追加する切片関数から始まり、次にモデルに加える基底関数(最適ノット関数)を求める。分類器は、残差が小さすぎて取り除けなくなるまで基底関数を追加し続ける。次にバックワードパスが実行され、分類器はそこで、最小の有効項を削除するために基底関数を1つずつ除去しようと試みる。
【0083】
上述されたように、優位周波数、帯域内エントロピー、第1帯域エントロピー、及び分散は、トレーニングセットから得られた、各値を−1〜1の範囲にマッピングする機能を用いてマッピングされる。これらの特徴がマッピングされると、これらの値がMARS分類関数に入力される。上述されたように、この分類関数は、標準的な機械学習技術を用いてトレーニングされ、テストされ、検証されている機械学習手順である。例えば、本発明を限定することはないが、装着型除細動器1により実行された治療から得られた120個の信号の集合が、トレーニングデータセットとして格納されている。トレーニングデータセットは、ノイズのある正常な洞リズム信号(すなわち誤検出)が60個と、不整頻拍信号が60個とを含んでよい。分類器は、上述されたトレーニングデータセットを用いてトレーニングされた。現在の例で利用されているMARS分類器は、2つの分類器、つまり左右のチャネルに1つと、前後のチャネルに1つとを含む。各分類器は、0〜1であることを意図された数値を出力する。
【0084】
MARS分類器により利用される任意の例示的な手順は以下の通りである。全ての特徴がPSDから導出されると(上述されたように、y
df、y
var、y
H0−2、y
H2−6で示される)、これらの特徴はMARS分類関数Gに提供される。MARS分類器は、以上に論じられたように、テストデータを調査して、0〜1のスコアをトレーニングデータ範囲内のスケールドデータに提供する係数を決定することで生成された非線形関数である。従って、出力スコアは次式のようになる。
【数6】
【0085】
この処理は各チャネルに対して個別に繰り返される。連続的な10秒のバッファが維持され、1秒のオーバーラップを有してずらした10秒ウィンドウで処理全体が繰り返される。
【0086】
図7を参照すると、MARS分類器がトレーニングされれば、ノイズ検出モジュール35により実行される手順はデジタル信号処理モジュール31の異常な心拍リズムを検出する手順の論理を用いて動作する。ノイズ検出モジュール35の手順は、治療可能なVT又はVFイベント(すなわち、トリガーイベント)がデジタル信号処理モジュール31の異常な心拍リズムを検出する手順により検出されるたびに開始され、1秒間隔で信号を評価する(ブロック150)。10秒ウィンドウごとに、各チャネルに対してスコアが生成される。両方のチャネルスコアをMARS分類器に要求することで最後のブールスコアが計算され、閾値より上になる。この手順は、以下により詳細に論じられている。
【0087】
ノイズ検出モジュール35の手順が初期化されると、ECG信号の20秒のバッファが共有メモリモジュール33から送られて分析される(ブロック152)。イベントの初めに、マスタースコアが20「点」に初期化される(ブロック154)。ノイズ検出モジュール35のMARS分類器によりブロック156でECG信号の最初の10秒間に生成された結果が、予め定められた閾値より下である場合(不整脈)、マスタースコアは1だけ増やされる(ブロック158及び160)。ノイズ検出モジュール35のMARS分類器により生成された結果が閾値より上である場合(ノイズ)、マスタースコアは2だけ減らされる(ブロック158及び162)。
【0088】
ECG信号の次の各10秒が、1秒のオーバーラップを有してずらした10秒ウィンドウで評価され、マスタースコアに統合される。最大マスタースコアは20であり、最小は0である(現在の例では、マスタースコアはこの範囲を超えない)。ECG信号の20秒のバッファが分析され、スコアリング手順が20回実行された後(各チャネルに対して、ずらした10秒ウィンドウの10回のスコアリング)(ブロック164)、結果として生じたマスタースコアはイベントの状態を決定する。ノイズ分類の閾値は10である。スコアが10より上である場合、ノイズ検出モジュール35により実行される手順は終了し、治療シーケンスが行なわれることを可能にする(ブロック166及び168)。しかし、イベントスコアが10未満である場合、イベントはノイズとして分類される(ブロック166及び170)。治療シーケンスが保留され、新たなスコアが次のECGデータを用いて1秒に1回作成される。スコアが10を超える場合、イベントシーケンスがリリースされ、スコアリング手順は停止する。
【0089】
ノイズ検出モジュール35の手順は、
図8を参照して以下により詳細に論じられる。この手順は、ノイズ検出モジュール35に利用可能な5つの主な状態、つまり、アイドル200、作業201、不整脈202、無音ノイズ203、及びノイズアラーム204を提供する。ノイズ検出モジュール35のデフォルトの状態はアイドル200である。デジタル信号処理モジュール31からのVT/VFイベントインジケーションが、作業201に変わる状態を引き起こしてよい。作業状態201から、状態は不整脈202又は無音ノイズ203状態に入ってよい。スコアが閾値より下にとどまっている限り、無音ノイズ203状態はノイズアラーム204状態に進む。スコアが閾値を超える場合、手順は不整脈202状態に入る。これらの状態はそれぞれ、以下により詳細に論じられる。
【0090】
1つの例において、アクティベーションモジュール37は概して、イベントが検出されないことに起因して休止状態(アイドル200状態)である。アイドルの間、デジタル信号処理モジュール31は不整脈をモニタし、ECG信号を共有メモリモジュール33に格納する。このように、アイドル200段階は電力節約と継続的なECGモニタとを同時に提供し得る。共有メモリモジュール33は、最新の20秒のモニタデータを格納するメモリ構造を有し得る。これにより、VT/VFイベントが検出されると、そのようなデータはアクティベーションモジュール37に送信するのにすぐ利用できる。
【0091】
ノイズ検出モジュール35は、起動時にアイドル200状態に送られ、VT/VFイベントが検出されるまでアイドル200状態にとどまる。ノイズ検出モジュール35のアルゴリズムはアイドル200状態を終了し、作業201状態に入る。
【0092】
状態がアイドル200で、VT/VFイベントが検出された場合、作業201状態が引き起こされる。作業201状態には、システムが終了する方法が2つあり、それは、タイムアウト又はスコアの初期評価である。作業201状態になると、共有メモリモジュール33から入力するECG信号は、デジタル信号処理モジュール31により提供されるVT/VFフラグを求めてスキャンされる。次に、直前の20秒がMARS分類器を用いて評価され、スコアが生成される。初期スコアが10より上である場合、状態は不整脈202に変わる。初期スコアが10未満である場合、状態は無音ノイズ203に変わる。フラグずれ又はフラグ不明の可能性を防ぐために、共有メモリモジュール33からのECG信号においてフラグを検索するこのルーチンは7秒間だけ続く(この時間は、任意の従来の方法で計算されてよく、この例では共有メモリティックではなくシステムクロックから計算される)。フェイルセーフメカニズムとして、初期スコアの計算がなく7秒が経過した場合、ノイズ検出モジュール35は不整脈202状態に送られる。NSRイベントが検出された場合、全てのパラメータをリセットした後、状態はアイドル200に変わる。
【0093】
10より大きい初期スコアが作業201状態の間に生成されると、無音ノイズ203状態に入ってよい。無音ノイズ203状態は最大時間まで続いてよく、例えば、VTイベントの場合は10秒まで、又はVFイベントの場合は30秒までである(これらの時間は予めプログラムされており、変更されてよい)。毎秒、スコア及びタイマは評価されてよい。現在の例では、無音ノイズ203状態には終了可能性が3つあり、それは、不整脈202、ノイズアラーム204、又はアイドル200である。スコアが10を超える場合、状態は不整脈202に変わる。スコアが10より下にとどまり、タイマがタイマ閾値より大きい場合、状態はノイズアラーム204に変わる。NSRイベントが検出された場合、全ての内部パラメータをリセットした後、状態はアイドル200に変わる。スコアが10より下にとどまり、タイマがタイマ閾値より小さい場合、状態は無音ノイズ203にとどまる。
【0094】
ノイズアラーム204状態へは、無音ノイズ203状態から入ってよい。ノイズアラーム204状態には終了可能性が2つあり、それは不整脈202状態又はアイドル200状態である。毎秒、スコアがノイズアラーム204状態で評価される。スコアが10を超える場合、状態は不整脈202に変わる。スコアが10より下にとどまり、タイマがタイマ閾値より大きい場合にも、フェイルセーフ方法として状態は不整脈202に変わる。なぜならば、ノイズアラーム204状態の間、患者が応答ボタン27又は音声/視覚警告デバイス13による何らかの他の方法を介して応答するよう尋ねられたが、応答が提供されなかったからである。従って、正常な治療シーケンスが再開される。NSRが検出された場合、状態はアイドル200に変わる。
【0095】
不整脈202状態は「キャッチオール」状態であり、この状態を終了するには1つの方法しかなく、それはNSRイベントである。1つのインターセプトイベントの間、状態が不整脈202に入る場合、ノイズ検出モジュール35は、NSRが検出されるまで不整脈202状態にとどまってよい。不整脈202状態は、ノイズ検出モジュール35に内部キューのいかなるイベントもシェル36にすぐにリリースさせる。全てのECG信号検索、スコアリング、及び評価は停止してよく、ノイズ検出モジュール35は全ての情報をデジタル信号処理モジュール31からアクティベーションモジュール37に直接送信する。デジタル信号処理モジュール31からノイズ検出モジュール35にNSRイベントが受信されると、状態は不整脈202からアイドル200に変わる。
【0096】
図9を参照すると、ノイズ検出モジュール35の様々な状態の時系列が説明される。
図9の上段のシナリオでは、デジタル信号処理モジュール31からVT/VF信号フラグが検出されると、ノイズ検出モジュール35は休止状態から起動し、その作業201状態において、デジタル信号処理モジュール31がVT/VFイベントであると示したECG信号の最初の20秒を評価する。信号がVT/VFイベントであるとノイズ検出モジュール35が判断した場合(上記に開示されているように、学習分類器を操作し、スコアリングし、スコアをVT/VFイベントの閾値より上であると評価することで)、唯一の遅延は、ノイズ検出モジュール35が信号を処理してその判断に達するのに要する時間である。この遅延は一般に約1秒である。次に、ノイズ検出モジュール35は不整脈202状態に入り、イベントをアクティベーションモジュール37にリリースする。アクティベーションモジュール37は音声/視覚警告デバイス13を介してアラームを起動する。患者が応答ボタン27を押すことによって、又は何らかの他の適切な方法によってアラームに応答しない場合、アクティベーションモジュール37は、複数の治療パッド7を介して治療ショックを加える信号を送信することで治療を開始する。
図9を参照すると、治療までの時間はVFイベントの方がVTイベントより速い。なぜなら、VTイベントは誤分類される傾向がより高く、VFイベントは命に関わるイベントである可能性がより高いからである。
【0097】
図9の下段のシナリオでは、ノイズ検出モジュール35(作業201状態である)は20秒のバッファを評価し、デジタル信号処理モジュール31からのECGのVT/VFイベント信号がノイズ又は混入したNSRである可能性が最も高いと判断する。これは、上述されたように学習分類器システムを用いて行われる。そのような状況では、無音ノイズ203状態において、無音遅延(
図9に点で網掛けして示されている)が開始され、システム時間が不整脈を自然に排除し、休止状態に戻ることを可能にする。この遅延が経過した後(示される例では、VTの場合は30秒、VFの場合は10秒)、ノイズ検出モジュールは無音ノイズ203状態を離れ、ノイズアラーム204状態に入る。ノイズアラーム204状態のアクティベーションモジュール37は音声/視覚警告デバイス13を介してアラームを起動する。患者が応答ボタン27を押すことによって、又は何らかの他の適切な方法によって、選択された期間内(示される例では、VTの場合は30秒、VFの場合は25秒)にアラームに応答しない場合、アクティベーションモジュール37は、複数の治療パッド7を介して治療ショックを加える信号を送信することで治療を開始する。応答ボタン27が患者により押された場合、タイマはリセットされる。これにより、ノイズアラーム204状態がVTイベントの場合に60秒、VFイベントの場合に35秒延長される(不図示)。スコアが10を超えないという条件で、応答ボタン27が無期限に押されて治療アラームを保留し、ノイズアラーム204状態も同様に無期限に延長してよい。
[例]
【0098】
以下は、本明細書に開示される方法の一例がC++プログラミング言語を用いて実装される場合に作成され得るような例示的な疑似コードである。疑似コードはノイズ検出モジュール35の手順を実行するのに利用されてよい。この疑似コードは例示目的のためだけに提供され、本発明を限定することを意図するものではなく、任意の数の他のコーディング技術が、ノイズ検出モジュール35の手順を実装するのに利用されてよい。
【0099】
図10に関連して、以下は、ノイズ検出モジュール35の手順のための主なアプリケーション・プログラミング・インタフェースである。最初に、ノイズ検出オブジェクトがブロック300で初期化される。ノイズ検出オブジェクトを初期化した後、その主な目的は「未加工」のECG信号及びイベントをデジタル信号処理モジュール31から受信し(ブロック302)、イベントが保留されるべきか、アクティベーションモジュール37のシェルモジュール36にリリースされるべきかを決定することである。
【0100】
イベント信号がデジタル信号処理モジュール31からアクティベーションモジュール37に入ると、以上により詳細に論じられたように、どのイベントもアクティベーションモジュール37のI/Oモジュール38に送られる。軽度のアクションイベントの場合(ブロック304)、アクティベーションモジュール37のI/Oモジュール38はすぐにイベントをシェル36に送る(ブロック316)。しかし、イベントが処置を必要とする場合(ブロック306)、又はノイズ検出モジュール35の状態がアイドルでない場合、そして非VT/VFイベントに対する処置が必要とされる場合、I/Oモジュール38はイベント信号をノイズ検出モジュール35に保持する(ブロック308及び310)。
【0101】
一例として、ノイズ検出モジュール35はアイドル200状態にあり、正常心拍数のイベント信号を受信してよい。この場合、イベント信号はシェル36にすぐに送られる。重大な例は、ノイズ検出モジュール35がアイドル200状態にあり、治療可能なVTイベントを受信するという例である(ブロック312)。この場合、I/Oモジュール38は共有メモリモジュール33から提供されたECG信号をノイズ検出モジュール35に転送する。ノイズ検出モジュール35は、治療可能なVTフラグを見つけるまでECG信号をすぐに処理する。全てのVT/VFイベントは、ノイズ検出モジュール35がアイドル200状態にあるときに受信された場合、保持されるとみなされる。
【0102】
ノイズ検出モジュール35がフラグを見つけると、ノイズ検出モジュール35はECG信号の直前の20秒を評価し、イベントが実際にVT/VFなのか、ノイズのある正常な洞リズムなのかを判断する(ブロック314)。ノイズ検出モジュール35が、最初の20秒に基づき不整脈202であると判断した場合、ノイズ検出モジュール35はイベントをリリースし、不整脈202状態に進む。しかし、ノイズのある正常な洞リズムであると判断した場合には、ノイズ検出モジュール35は入力ECG信号を評価し続ける。ノイズのこの時間の間の任意の直前のイベントは、保持する/戻すために評価される。例えば、ノイズのためにイベントを保持している間、SIDE_SIDE_NOISEイベントはキューに配置される。次にノイズ検出器が不整脈を宣言した場合、キューにある全てのイベントはリリースされる。
【0103】
以下の疑似コードはノイズ検出モジュール35により利用されてよい。
【0104】
ノイズ検出オブジェクトは以下のコードを用いて最初に初期化される。
DetectNoise detectNoise()
【0105】
業者が呼ばれ、VT/VF無音期間、及びVT/VFノイズアラーム期間のために予めプログラムされたパラメータがフェッチされる。デフォルトとして、この例では、これらのパラメータはVT(30、30)及びVF(10、25)であってよく、第1のパラメータは無音ノイズ203状態の間の遅延の長さであり、第2のパラメータはノイズアラーム204状態の間の遅延の長さである。アクティベーションモジュール37のシェル36は、タイマパラメータを以下のコードを用いてノイズ検出モジュール35に送信する。
SetTimers(int vtTime, int vfTime, int vtNoiseTimer, int vfNoiseTimer)
「int vtTime」は、VTイベント信号の無音ノイズ203状態の間の遅延の長さである。
「int vfTime」は、VFイベント信号の無音ノイズ203状態の間の遅延の長さである。
「int vtNoiseTimer」は、VTイベント信号のノイズアラーム204状態の間の遅延の長さである。
「int vfNoiseTimer」は、VFイベント信号のノイズアラーム204状態の間の遅延の長さである。
【0106】
アクティベーションモジュール37のシェル36は、ノイズ検出モジュール35が利用可能である場合、そこに共有メモリパケットを送信するよう構成されている。さらに、ノイズ検出モジュール35は、保持される共有メモリモジュール33からのECG信号の60秒の内部バッファと、共有メモリモジュール33からのECG信号の最新の20秒のための20秒評価バッファとを有する。以下のコードが、共有メモリパケットをノイズ検出モジュール35に送信するために、信号処理モジュール31により利用されてよい。
ProcessPacket(unsigned char *input_packet)
【0107】
同時に、イベントがデジタル信号処理モジュール31により検出された場合、デジタル信号処理モジュール31はアクティベーションモジュール37のI/Oモジュール38に信号を送信する。信号は、バッテリ電力低下、電極ずれ、VT/VFイベントなど、任意のタイプのイベントのためのものであってよい。デジタル信号処理モジュール31は、イベントが起きたことを識別する信号、及びイベントのタイプ(「バッテリ電力低下」又は「VT」など)を識別する信号を送信してよい。任意選択的に、デジタル信号処理モジュール31は、イベントの識別に対する信頼の尺度、あるいは電圧又は容量などの他の尺度を送信し得る。I/Oモジュール38はノイズ検出モジュール35に信号を送ってよい。I/Oモジュール38は、イベント信号を送るために、以下のコードを用いてよい。
int EventAlert(Event event)
「Event event」は、イベント(「Event」)の識別、及びイベント(「event」)のタイプである。
【0108】
int EventAlertコードは、デジタル信号処理モジュール31がイベントの重大度などのイベントに関する情報をノイズ検出モジュール35に警告することを可能にする複数の論理ステートメントと関連づけてよく、このことが、イベントを保持するか(さらなる処理行動を取ることを意味する)、イベントを戻すか(イベントを無視してアイドル200状態に戻ることを意味する)に関するノイズ検出モジュール35の判断を容易にし得る。イベントが重大で保持される必要がある場合、ノイズ検出モジュール35は、EventAlertコードの戻り変数(「int」)を1に設定してよい。イベントが重大ではない場合(例えば、ガーメントメンテナンスがすぐに必要とされる)、ノイズ検出モジュールは戻り変数(「int」)を0に設定してよい。これにより、ノイズ検出モジュール35が行動を必要としない低レベルのイベントを迅速に判断することを可能にする。
【0109】
ノイズ検出モジュール35はイベントの重大度を確認してよい。ノイズ検出モジュール35は、int EventAlert(Event event)コードをI/Oモジュール38に送り返してもよい。重大ではないとみなされたイベントの場合、ノイズ検出モジュール35はアイドル200状態に戻ってよく、I/Oモジュール38は、必要に応じて行動を起こすために、アクティベーションモジュール37のシェルモジュールにコードを送ってよい。重大とみなされたイベントの場合、I/Oモジュール38はさらなる行動を起こさなくてもよい。なぜなら、I/Oモジュール38がコードを受信したということは、ノイズ検出モジュール35がそのイベントに関して必要な行動を起こしていることを示しているからである。
【0110】
ノイズ検出モジュール35は、アクティベーションモジュール37のシェル36によって定期的にポーリングされてよい。例えば、アイドル200状態のノイズ検出モジュール35は、5分ごとにポーリングされてよい。ノイズ検出モジュール35が作業201状態にあり、その間に「1」イベントが保持されている場合、ノイズ検出モジュール35は、その状態がアイドル200に戻るまでアクティベーションモジュール37のシェル36によってポーリングされてもよい。1つのポーリングコードは以下の通りであってよい。
VALIDATEIDLE
【0111】
VALIDATEIDLEポーリングコードのポーリング構造は、複数のコンポーネントを有してよい。それらは、IDコンポーネント、イベントコンポーネント、状態コンポーネント、スコアコンポーネント、及びECG信号にイベントフラグを記録するかどうか、又はそれをいつするかを示すrecordFlagオプションを有するフラグである。以下のオプションはIDコンポーネントに利用されてよい。つまり、0は処置が必要とされないことを示すのに用いられてよく、1はイベントが識別され処置が必要とされ得ることを示すのに用いられてよい。イベントコンポーネントは、int EventAlert(Event event)コードを用いてノイズ検出モジュール35に送られたイベント警告と同じ構造を有してよい。ノイズ検出モジュール35は、内部イベントキューから引き出されたこれらのイベントに関する情報を用いて、イベントコンポーネントを入力してよい。状態コンポーネントは、ノイズ検出モジュール35の状態を識別するのに用いられてよく、スコアコンポーネントは監視されているイベントの現在のスコアを識別するのに用いられてよい。状態コンポーネント及びスコアコンポーネントは、ログのフィールドに入力され得るオプションの引数であってよい。VALIDATEIDLEポーリングコードのポーリング構造は、遅延を記録するタイミングフラグも有してよい。
【0112】
ノイズ検出モジュール35は、ポーリング構造を必要に応じて入力する。例えば、監視されているノイズ検出モジュール35の状態又はイベントのスコアが変わった場合、recordFlagオプションが真になる。recordFlagオプションが真の場合、ノイズ検出モジュール35は、現在の状態及びイベントポーリング構造内に含まれるスコアコンポーネントを以下のコードを用いて記録するようアクティベーションモジュール37のシェル36に命令してよい。
pollInterceptor GetPoll()
【0113】
さらに、デバッギング/ロギング/リセット機能が利用可能である。1つは、ノイズ予測モジュール状態機能である。アクティベーションモジュール37のシェル36は、以下のコードの形で状態要求をノイズ検出モジュール35に送信するよう構成されている。
int GetDetectorStatus()
【0114】
ノイズ検出モジュール35は、int GetDetectorStatus()コードをその状態とともに入力してよい。int GetDetectorStatus()コードの「int」部分は、ノイズ検出モジュール35の可能性のある複数の状態のうち1つを定める整数であってよい。ノイズ検出モジュール35は、入力したコードをアクティベーションモジュール37のシェル36に送信してよい。このように、デバッギングの間、アクティベーションモジュール37は、ノイズ検出モジュール35の状態の現状をすぐに有し得る。
【0115】
リセット機能が、必要に応じてノイズ検出モジュール35をリセットするのに用いられてよい。例えば、除細動器システム1がロックした場合、又は何らかの他の理由でリセットを必要とする場合(電極5a、5b、5c、又は5dがコントローラユニット3から切り離されている間など)、ノイズ検出モジュール35は手動でリセットするよう構成されている。NO_TREATABLE_RHYTHMイベントがI/Oモジュール38を介してデジタル信号処理モジュール31から受信された場合、リセット機能は、ノイズ検出モジュール35をアイドル200状態にリセットする機能と同じ形を取ってよい。ノイズ検出モジュール35は、以下の例示的なコードを発することでリセットを実施してよい。
void ResetValidator()
【0116】
ノイズ検出モジュール35がイベントフラグに応答して最初の判断をするのにどれだけ時間を要するかに関する情報をアクティベーションモジュールに提供するのに、別の機能が用いられてよい。その機能は、最初のVT/VFイベントフラグを受信してから、イベントフラグに応答してノイズ検出モジュール35が最初の判断をするまでの経過時間を決定するよう構成されている。アクティベーションモジュール37のシェル36は、以下のコードを用いてノイズ検出モジュール35に経過時間の要求を送信するよう構成されている。
int GetBufferTiming()
【0117】
ノイズ検出モジュール35は、経過タイミングでint GetBufferTiming()コードを入力してよい。ノイズ検出モジュール35は、入力したコードをアクティベーションモジュール37のシェル36に送信してよい。
【0118】
心電図(ECG)信号において心イベントをノイズと区別するためのシステム及び方法が、現在最も実用的で好ましい例であるとみなされていることに基づき、例示の目的のために詳細に説明されたが、そのような詳細は単にその目的のためにすぎず、本発明は開示された複数の例に限定されず、それどころか、複数の変更形態及び均等な構成を含むことが意図されていると理解されるべきである。例えば、可能な限り、任意の例の1つ又は複数の特徴が任意の他の例の1つ又は複数の特徴と組み合され得ることを本開示は意図していることが理解されるべきである。
[項目1]
心電図信号(ECG信号)を患者から取得するための少なくとも1つの検出電極と、
上記少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、
複数のプログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体と、
を備える心臓モニタ機器であって、
上記複数のプログラム命令は、上記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると、上記心臓モニタ機器に、
上記少なくとも1つの検出電極から上記ECG信号を取得させ、
上記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、
上記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、
上記ECG信号に関連したスコアを決定するために少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、
上記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、
上記ECG由来のスコアが上記機械学習により決定された上記予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に、心イベントのインジケーションを提供させる、
心臓モニタ機器。
[項目2]
上記変換ECG信号は上記ECG信号の周波数領域表現を含む、
項目1に記載の心臓モニタ機器。
[項目3]
上記変換ECG信号は、上記ECG信号の周波数範囲にわたり、上記ECG信号の電力分布の表現を含む、
項目1に記載の心臓モニタ機器。
[項目4]
上記変換ECG信号は上記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
上記PSDは上記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定される、
項目1に記載の心臓モニタ機器。
[項目5]
上記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、上記機械学習に提供される、
項目4に記載の心臓モニタ機器。
[項目6]
上記PSDの導出される上記少なくとも4つの特徴は、
上記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、上記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、上記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
上記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
項目5に記載の心臓モニタ機器。
[項目7]
上記心臓モニタ機器は、装着型除細動器、植え込み型除細動器、自動体外式除細動器(AED)、モバイル心臓テレメトリ機器、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、及びホルターモニタのうち1つである、
項目1に記載の心臓モニタ機器。
[項目8]
上記機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
項目1に記載の心臓モニタ機器。
[項目9]
上記インジケーションに基づき行動を起こすための命令信号を提供することをさらに有する、
項目1に記載の心臓モニタ機器。
[項目10]
上記行動は、患者に治療を加えること及び上記患者に警告信号を提供することのうち少なくとも1つである、
項目9に記載の心臓モニタ機器。
[項目11]
上記少なくとも1つのプロセッサにより実行される上記複数のプログラム命令は、上記少なくとも1つのプロセッサがトリガーイベントを検出した場合に、メモリデバイスに格納されている上記ECG信号の一部について開始される、
項目1に記載の心臓モニタ機器。
[項目12]
上記ECG信号の上記一部は、上記トリガーイベントに先行する上記ECG信号の予め定められた期間である、
項目11に記載の心臓モニタ機器。
[項目13]
上記予め定められた期間は20秒である、
項目12に記載の心臓モニタ機器。
[項目14]
装着型除細動器であって、
上記装着型除細動器を装着する患者に治療を提供するための少なくとも1つの治療パッドと、
患者からの心電図信号(ECG信号)を取得するための少なくとも1つの検出電極と
上記少なくとも1つの治療パッド及び上記少なくとも1つの検出電極に動作可能に連結された少なくとも1つのプロセッサを有する処理ユニットと、
複数のプログラム命令を含む少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体と
を備え、
上記複数のプログラム命令は、上記少なくとも1つのプロセッサにより実行されると上記処理ユニットに、
上記ECG信号を取得させ、
上記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定させ、
上記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出させ、
上記ECG信号に関連したスコアを決定するための少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供させ、
上記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較させ、
上記ECG由来のスコアが上記機械学習により決定された上記予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に、心イベントのインジケーションを提供させる、
装着型除細動器。
[項目15]
上記変換ECG信号は上記ECG信号の周波数領域表現を含む、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目16]
上記変換ECG信号は、上記ECG信号の周波数範囲にわたり、上記ECG信号の電力分布の表現を含む、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目17]
上記変換ECG信号は上記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
上記PSDは上記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定される、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目18]
上記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、上記機械学習に提供される、
項目17に記載の装着型除細動器。
[項目19]
上記PSDの導出される上記少なくとも4つの特徴は、
上記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、上記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、上記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
上記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
項目18に記載の装着型除細動器。
[項目20]
上記機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目21]
警告信号を上記患者に伝えるために、上記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に接続されたディスプレイ及びスピーカのうち少なくとも1つをさらに備える、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目22]
上記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に接続された少なくとも1つの応答メカニズムをさらに備え、
上記装着型除細動器は、上記少なくとも1つの応答メカニズムの患者の操作に応答して、上記装着型除細動器を装着する上記患者に治療を提供することを防ぐよう構成される、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目23]
上記インジケーションに基づき行動を起こすための命令信号を提供することをさらに有する、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目24]
上記行動は、患者に治療を加えること及び上記患者に警告信号を提供することのうち少なくとも1つである、
項目23に記載の装着型除細動器。
[項目25]
上記少なくとも1つのプロセッサにより実行される上記複数のプログラム命令は、上記少なくとも1つのプロセッサがトリガーイベントを検出した場合に、メモリデバイスに格納されている上記ECG信号の一部について開始される、
項目14に記載の装着型除細動器。
[項目26]
上記ECG信号の上記一部は、上記トリガーイベントに先行する上記ECG信号の予め定められた期間である、
項目25に記載の装着型除細動器。
[項目27]
上記予め定められた期間は20秒である、
項目26に記載の装着型除細動器。
[項目28]
心電図信号(ECG信号)において心イベントをノイズと区別するための方法であって、
第1の信号処理ルーチンを用いる第1のモジュールで、上記ECG信号の一部においてイベントを検出する段階と、
上記イベントが検出されたという信号、及び上記ECG信号の上記一部を第2のモジュールに送信する段階と、
第2の信号処理ルーチンを用いる上記第2のモジュールで上記ECG信号の上記一部を評価し、上記第1のモジュールにより検出された上記イベントが実際の心イベントかノイズかを分類器からの出力に基づき判断する段階と
を備える、
方法。
[項目29]
心イベントが上記第1のモジュールにより検出されるまで、上記第2のモジュールは休止状態である、
項目28に記載の方法。
[項目30]
上記第1のモジュールにより検出された上記心イベントが実際の心イベントであると上記第2のモジュールが判断した場合、アラームが起動し、上記実際の心イベントが起きたというインジケーションをユーザに提供する、
項目28に記載の方法。
[項目31]
上記第1のモジュールにより検出された心イベントがノイズであると上記第2のモジュールが判断した場合、無音遅延期間が開始され、その間は上記実際の心イベントが起きたというインジケーションはユーザに提供されない、
項目28に記載の方法。
[項目32]
上記無音遅延期間の間に、上記第2のモジュールは上記ECG信号の上記一部を引き続き分析し、上記第1のモジュールにより検出された上記心イベントがノイズであることを確認する、
項目31に記載の方法。
[項目33]
上記第1のモジュールにより検出された上記心イベントが上記実際の心イベントであると上記第2のモジュールが判断した場合、上記第2のモジュールはアラームを起動し、上記実際の心イベントが起きたというインジケーションをユーザに提供する、
項目32に記載の方法。
[項目34]
上記第2のモジュールにより実行される上記第2の信号処理ルーチンは、
上記ECG信号の上記一部を取得する段階と、
上記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定する段階と、
上記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、
上記ECG信号に関連したスコアを決定するために上記少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、
上記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階と、
上記ECG由来のスコアが上記機械学習により決定された上記予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に、心イベントのインジケーションを提供する段階と
を含む、
項目28に記載の方法。
[項目35]
上記機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
項目34に記載の方法。
[項目36]
上記ECG信号は心臓モニタ機器から取得される、
項目28に記載の方法。
[項目37]
上記心臓モニタ機器は、装着型除細動器、植え込み型除細動器、皮下植え込み型除細動器、自動体外式除細動器(AED)、モバイル心臓テレメトリ機器、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、ホルターモニタ、心イベントモニタ、及び植え込み型ループレコーダのうち1つである、
項目36に記載の方法。
[項目38]
心電図信号(ECG信号)において心イベントをノイズと区別するための方法であって、
上記ECG信号を取得する段階と、
上記ECG信号に基づき変換ECG信号を決定する段階と、
上記変換ECG信号の少なくとも1つの特徴を表す少なくとも1つの値を導出する段階と、
上記ECG信号に関連したスコアを決定するために上記少なくとも1つの値を提供することで、ECG由来のスコアを提供する段階と、
上記ECG由来のスコアを機械学習により決定された予め定められた閾値スコアと比較する段階と、
上記ECG由来のスコアが上記機械学習により決定された上記予め定められた閾値スコアより上又は下のうち一方である場合に、心イベントのインジケーションを提供する段階と
を備える、
方法。
[項目39]
上記変換ECG信号は上記ECG信号の周波数領域表現を含む、
項目38に記載の方法。
[項目40]
上記変換ECG信号は、上記ECG信号の周波数範囲にわたり、上記ECG信号の電力分布の表現を含む、
項目38に記載の方法。
[項目41]
上記変換ECG信号は上記ECG信号のパワースペクトル密度(PSD)を含み、
上記PSDは上記ECG信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算することで決定される、
項目38に記載の方法。
[項目42]
上記PSDの少なくとも4つの特徴が導出され、上記機械学習に提供される、
項目41に記載の方法。
[項目43]
上記PSDの導出される上記少なくとも4つの特徴は、
上記PSDの優位周波数を表す少なくとも1つの値と、
2Hz〜6Hzの周波数の間で、上記PSDの帯域内エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
0Hz〜2Hzの周波数の間で、上記PSDの第1帯域エントロピーを表す少なくとも1つの値と、
上記PSDの分散を表す少なくとも1つの値とである、
項目42に記載の方法。
[項目44]
上記ECG信号は心臓モニタ機器から取得される、
項目38に記載の方法。
[項目45]
上記心臓モニタ機器は、装着型除細動器、植え込み型除細動器、皮下植え込み型除細動器、自動体外式除細動器(AED)、モバイル心臓テレメトリ機器、ECGリズム分類器、心室性不整脈検出器、ホルターモニタ、心イベントモニタ、及び植え込み型ループレコーダのうち1つである、
項目44に記載の方法。
[項目46]
上記機械学習は、多変量適応型回帰スプライン分類器及びニューラルネットワーク分類器のうち一方である、
項目44に記載の方法。
[項目47]
上記インジケーションに基づき行動を起こすための命令信号を提供することをさらに有する、
項目44に記載の方法。
[項目48]
上記行動は、患者に治療を加えること及び上記患者に警告信号を提供することのうち少なくとも1つである、
項目47に記載の方法。
[項目49]
上記インジケーション及び上記ECG由来のスコアを上記機械学習に提供して、上記予め定められた閾値スコアをさらに正確にする段階をさらに備える、
項目44に記載の方法。
[項目50]
上記方法は、上記少なくとも1つのプロセッサがトリガーイベントを検出した場合、メモリデバイスに格納されている上記ECG信号の一部について開始される、
項目44に記載の方法。
[項目51]
上記ECG信号の上記一部は、上記トリガーイベントに先行する上記ECG信号の予め定められた期間である、
項目50に記載の方法。
[項目52]
上記予め定められた期間は20秒である、
項目51に記載の方法。