【文献】
AMAYA-GONZALEZ, S. et al.,"Affinity of aptamers binding 33-mer gliadin peptide and gluten proteins: Influence of immobilization and labeling tags.",ANALYTICA CHIMICA ACTA,2015年 5月11日,Vol.873,P.63-70,ISSN 0003-2670
【文献】
AMAYA-GONZALEZ, S. et al.,"Aptamer binding to celiac disease-triggering hydrophobic proteins: a sensitive gluten detection approach.",ANALYTICAL CHEMISTRY,2014年 3月 4日,Vol.86, No.5,P.2733-2739,ISSN 0003-2700
【文献】
AMAYA-GONZALEZ, S. et al.,"Sensitive gluten determination in gluten-free foods by an electrochemical aptamer-based assay.",ANALYTICAL & BIOANALYTICAL CHEMISTRY,2015年 8月,Vol.407, No.20,P.6021-6029,ISSN 1618-2650
【文献】
PINTO, A. et al.,"Label-free detection of gliadin food allergen mediated by real-time apta-PCR.",ANALYTICAL & BIOANALYTICAL CHEMISTRY,2014年 1月,Vol.406, No.2,P.515-524,ISSN 1618-2650
【文献】
AMAYA-GONZALEZ, S. et al.,"Aptamer-based analysis: a promising alternative for food safety control.",SENSORS,2013年11月28日,Vol.13, No.12,P.16292-16311,ISSN 1424-8220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の核酸分子は、例えば、前記小麦アレルゲンが、グルテンまたはそのサブユニットである。
【0013】
本発明の核酸分子は、例えば、前記小麦アレルゲンが、未変性アレルゲンまたは加熱変性アレルゲンである。
【0014】
本発明の核酸分子は、例えば、下記(a)〜(d)からなる群から選択された少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む。
(a)配列番号1および2のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記小麦アレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(c)前記(a)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記小麦アレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(d)前記(a)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、小麦アレルゲンに結合するポリヌクレオチド
【0015】
本発明の核酸分子は、例えば、前記ポリヌクレオチドが、DNAである。
【0016】
本発明の分析用センサは、例えば、さらに、Gカルテット構造を形成する核酸分子を含む。
【0017】
本発明の分析用センサは、例えば、前記Gカルテット構造を形成する核酸分子が、DNAzymeまたはRNAzymeである。
【0018】
本発明の分析用センサは、例えば、さらに、ポルフィリンを含む。
【0019】
本発明の分析方法は、例えば、前記試料が、食品、食品原料および食品添加物からなる群から選択された少なくとも一つである。
【0020】
(1)小麦アレルゲン結合核酸分子
本発明の小麦アレルゲン結合核酸分子は、前述のように、小麦アレルゲンに対する解離定数が、20nM以下の核酸分子であることを特徴とする。
【0021】
本発明の核酸分子は、例えば、小麦の主要アレルゲンである、グルテン、そのサブユニット、またはそのドメインに結合する。
【0022】
前記小麦アレルゲンは、例えば、加熱による変性が生じていない未変性アレルゲンでもよいし、加熱による変性が生じた変性アレルゲンでもよい。本発明の核酸分子は、例えば、いずれのアレルゲンに対しても結合可能である。
【0023】
本発明の核酸分子は、前記小麦アレルゲンに対する解離定数が、例えば、20nM以下、15nM以下である。本発明の核酸分子は、前記小麦アレルゲンの検出限界濃度が、例えば、250nM、125nMである。
【0024】
本発明の核酸分子は、前記グルテンに対する解離定数が、例えば、20nM以下、15nM以下である。本発明の核酸分子は、前記グルテンの検出限界濃度が、例えば、250nM、125nMである。
【0025】
本発明の核酸分子と前記小麦アレルゲンとの結合は、例えば、表面プラズモン共鳴分子相互作用(SPR;Surface Plasmon resonance)解析等により決定できる。前記解析は、例えば、ProteON(商品名 BioRad社)が使用できる。
【0026】
本発明の小麦アレルゲン結合核酸分子について、具体例を以下に示す。本発明の核酸分子は、例えば、下記(a)のポリヌクレオチドを含む核酸分子である。本発明において、前記(a)のポリヌクレオチドを含む核酸分子は、例えば、(b)〜(d)からなる群から選択された少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む核酸分子、の意味も含む。
(a)配列番号1および2のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、前記小麦アレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(c)前記(a)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、前記小麦アレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(d)前記(a)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、小麦アレルゲンに結合するポリヌクレオチド
【0027】
本発明の核酸分子において、前記ポリヌクレオチドの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。前記ポリヌクレオチドは、後述するように、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基を含むDNAであり、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。本発明の小麦アレルゲン結合核酸分子は、例えば、以下、DNAアプタマーともいう。
【0028】
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、後述するように、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを2つ以上含んでもよい。前記2つ以上のポリヌクレオチドは、同じ配列でもよいし、異なる配列でもよい。また、後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、さらに、リンカーおよび/または付加配列等を有してもよい。
【0029】
前記(a)のポリヌクレオチドは、前記配列番号1および2のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0031】
配列番号2は、配列番号1の小型化配列である。前記表1において、配列番号1の下線部領域は、配列番号2の塩基配列に対応する。
図1に、配列番号1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチドの推定二次構造を示すが、本発明は、これには限定されない。
【0032】
前記(b)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(b)のポリヌクレオチドが、小麦アレルゲンに結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(a)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。本発明において、塩基数および配列数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1〜5塩基」との記載は、「1、2、3、4、5塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0033】
前記(c)において、「同一性」は、例えば、前記(c)のポリヌクレオチドが、小麦アレルゲンに結合する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0034】
前記(d)において、「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」は、例えば、前記(a)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0035】
前記(d)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2
nd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0036】
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドの配列を1つ含んでもよいし、前記ポリヌクレオチドの配列を複数含んでもよい。後者の場合、複数のポリヌクレオチドの配列が連結して、一本鎖のポリヌクレオチドを形成していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記ポリヌクレオチドの配列は、それぞれの末端において、直接的または間接的に連結していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、同じでもよいし、異なってもよい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、同じであることが好ましい。前記ポリヌクレオチドの配列を複数含む場合、前記配列の数は、特に制限されず、例えば、2以上、2〜20、2〜10、2または3である。
【0037】
前記リンカーは、特に制限されない。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、1〜200塩基長、1〜20塩基長、3〜12塩基長、5〜9塩基長である。前記リンカーの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記リンカーの具体例として、例えば、ポリデオキシチミン(ポリdT)、ポリデオキシアデニン(ポリdA)、AとTの繰り返し配列であるポリdAdT等があげられ、好ましくはポリdT、ポリdAdTである。
【0038】
本発明の核酸分子において、前記ポリヌクレオチドは、一本鎖ポリヌクレオチドであることが好ましい。前記一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、自己アニーリングによりステム構造およびループ構造を形成可能であることが好ましい。前記ポリヌクレオチドは、例えば、ステムループ構造、インターナルループ構造および/またはバルジ構造等を形成可能であることが好ましい。
【0039】
本発明の核酸分子は、例えば、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、例えば、一方の一本鎖ポリヌクレオチドは、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを含み、他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、制限されない。前記他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドに相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドがあげられる。本発明の核酸分子が二本鎖の場合、例えば、使用に先立って、変性等により、一本鎖ポリヌクレオチドに解離させることが好ましい。また、解離した前記(a)〜(d)のいずれかの一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前述のように、ステム構造およびループ構造を形成していることが好ましい。
【0040】
本発明において、「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実際にステム構造およびループ構造を形成すること、ならびに、ステム構造およびループ構造が形成されていなくても、条件によってステム構造およびループ構造を形成可能なことも含む。「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実験的に確認した場合、および、コンピュータ等のシミュレーションで予測した場合の双方を含む。
【0041】
本発明の核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基である。前記ヌクレオチド残基は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の核酸分子は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基のみから構成されるDNA、1もしくは数個のリボヌクレオチド残基を含むDNA等があげられる。後者の場合、「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜91個、1〜30個、1〜15個、1〜7個、1〜3個、1または2個である。
【0042】
前記ポリヌクレオチドは、修飾塩基を含んでもよい。前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、天然塩基(非人工塩基)が修飾された塩基があげられ、前記天然塩基と同様の機能を有することが好ましい。前記天然塩基は、特に制限されず、例えば、プリン骨格を有するプリン塩基、ピリミジン骨格を有するピリミジン塩基等があげられる。前記プリン塩基は、特に制限されず、例えば、アデニン(a)、グアニン(g)があげられる。前記ピリミジン塩基は、特に制限されず、例えば、シトシン(c)、チミン(t)、ウラシル(u)等があげられる。前記塩基の修飾部位は、特に制限されない。前記塩基がプリン塩基の場合、前記プリン塩基の修飾部位は、例えば、前記プリン骨格の7位および8位があげられる。前記塩基がピリミジン塩基の場合、前記ピリミジン塩基の修飾部位は、例えば、前記ピリミジン骨格の5位および6位があげられる。前記ピリミジン骨格において、4位の炭素に「=O」が結合し、5位の炭素に「−CH
3」または「−H」以外の基が結合している場合、修飾ウラシルまたは修飾チミンということができる。
【0043】
前記修飾塩基の修飾基は、特に制限されず、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基、下記式(1)のベンジルアミノカルボニル基(benzylaminocarbonyl)、下記式(2)のトリプタミノカルボニル基(tryptaminocarbonyl)およびイソブチルアミノカルボニル基(isobutylaminocarbonyl)等があげられる。
【0045】
前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、アデニンが修飾された修飾アデニン、チミンが修飾された修飾チミン、グアニンが修飾された修飾グアニン、シトシンが修飾された修飾シトシンおよびウラシルが修飾された修飾ウラシル等があげられ、前記修飾チミン、前記修飾ウラシルおよび前記修飾シトシンが好ましい。
【0046】
前記修飾アデニンの具体例としては、例えば、7’−デアザアデニン等があげられる。
【0047】
前記修飾グアニンの具体例としては、例えば、7’−デアザグアニン等があげられる。
【0048】
前記修飾シトシンの具体例としては、例えば、5’−メチルシトシン(5−Me−dC)等があげられる。
【0049】
前記修飾チミンの具体例としては、例えば、5’−ベンジルアミノカルボニルチミン、5’−トリプタミノカルボニルチミン、5’−イソブチルアミノカルボニルチミン等があげられる。
【0050】
前記修飾ウラシルの具体例としては、例えば、5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)、5’−トリプタミノカルボニルウラシル(TrpdU)および5’−イソブチルアミノカルボニルウラシル等があげられる。例示した前記修飾ウラシルは、チミンの修飾塩基ということもできる。
【0051】
前記ポリヌクレオチドは、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基のみを含んでもよいし、2種類以上の前記修飾塩基を含んでもよい。
【0052】
本発明の核酸分子は、例えば、修飾ヌクレオチドを含んでもよい、前記修飾ヌクレオチドは、前述の前記修飾塩基を有するヌクレオチドでもよいし、糖残基が修飾された修飾糖を有するヌクレオチドでもよいし、前記修飾塩基および前記修飾糖を有するヌクレオチドでもよい。
【0053】
前記糖残基は、特に制限されず、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基があげられる。前記糖残基における修飾部位は、特に制限されず、例えば、前記糖残基の2’位または4’位があげられ、いずれか一方でも両方が修飾されてもよい。前記修飾糖の修飾基は、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基等があげられる。
【0054】
前記修飾ヌクレオチド残基において、塩基がピリミジン塩基の場合、例えば、前記糖残基の2’位および/または4’位が修飾されていることが好ましい。前記修飾ヌクレオチド残基の具体例は、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基の2’位が修飾された、2’−メチル化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−メチル化−シトシンヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−アミノ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−アミノ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−チオ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−チオ化−シトシンヌクレオチド残基等があげられる。
【0055】
前記修飾ヌクレオチドの個数は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記修飾ヌクレオチドも、特に制限されず、例えば、1〜91個、1〜78個、または前述の範囲と同様である。
【0056】
本発明の核酸分子は、例えば、1もしくは数個の人工核酸モノマー残基を含んでもよい。前記「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜10個である。前記人工核酸モノマー残基は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられる。前記モノマー残基における核酸は、例えば、前述と同様である。
【0057】
本発明の核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、前記修飾化ヌクレオチド残基および/または前記人工核酸モノマー残基を有することが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、5’末端または3’末端に、数10kDaのPEG(ポリエチレングリコール)またはデオキシチミジン等が結合してもよい。
【0058】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは3’末端である。前記付加配列は、特に制限されない。前記付加配列の長さは、特に制限されず、例えば、1〜200塩基長、1〜50塩基長、1〜25塩基長、18〜24塩基長である。前記付加配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記付加配列は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記付加配列の具体例として、例えば、ポリdT、ポリdA等があげられる。
【0059】
本発明の核酸分子は、例えば、担体に固定化して使用できる。前記本発明の核酸分子は、例えば、5’末端および3’末端のいずれかを固定化することが好ましく、より好ましくは3’末端である。本発明の核酸分子を固定化する場合、例えば、前記核酸分子は、前記担体に、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。後者の場合、例えば、前記付加配列を介して固定化することが好ましい。
【0060】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに標識物質を有してもよい。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは5’末端である。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、後述する説明を援用できる。
【0061】
本発明の核酸分子の製造方法は、特に制限されず、例えば、化学合成を利用した核酸合成方法等、遺伝子工学的手法、公知の方法により合成できる。本発明の核酸分子は、例えば、いわゆるSELEX法によっても得ることができる。この場合、ターゲットは、小麦アレルゲンであるグルテンが好ましい。
【0062】
本発明の核酸分子は、前述のように、前記小麦アレルゲンに結合性を示す。このため、本発明の核酸分子の用途は、前記小麦アレルゲンへの結合性を利用する用途であれば、特に制限されない。本発明の核酸分子は、例えば、前記小麦アレルゲンに対する抗体に代えて、種々の方法に使用できる。
【0063】
(2)小麦アレルゲン分析用センサ
本発明の小麦アレルゲン分析用センサは、前述のように、本発明の小麦アレルゲン結合核酸分子を含むことを特徴とする。本発明のセンサは、前記本発明の小麦アレルゲン結合核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は、何ら制限されない。
【0064】
本発明のセンサは、例えば、前記小麦アレルゲン結合核酸分子に前記小麦アレルゲンが結合した状態で、活性型となり、前記小麦アレルゲン結合核酸分子に前記小麦アレルゲンが未結合の状態で、不活性型となる、前記結合を検出する結合検出用核酸分子を、さらに含んでもよい。本発明のセンサは、前記結合検出用核酸分子を含む場合、前記結合検出用核酸分子が活性型であるか不活性型であるかによって、前記小麦アレルゲン結合核酸分子への前記小麦アレルゲンの結合の有無を確認でき、それによって、前記小麦アレルゲンの有無を分析することができる。
【0065】
前記結合検出用核酸分子としては、例えば、Gカルテット構造を形成する核酸分子があげられる。前記Gカルテッド構造を形成する核酸分子は、例えば、Gカルテッド構造を形成した状態が、活性型であり、Gカルテッド構造を非形成の状態が、不活性型である。
【0066】
前記Gカルテット構造を形成する核酸分子は、例えば、DNAzymeまたはRNAzyme等があげられ、好ましくはDNAzymeである。
【0067】
Gカルテッド構造を形成した活性型DNAzymeは、例えば、酸化還元反応を触媒するペルオキシダーゼ様の活性を示す。このため、本発明のセンサがDNAzymeを有する場合、前記DNAzymeの触媒活性を検出することによって、前記小麦アレルゲン結合核酸分子への前記小麦アレルゲンの結合の有無または結合量を分析することができる。
【0068】
この場合、本発明のセンサは、例えば、ポルフィリンを共存させることが好ましい。前記ポルフィリンは、特に制限されず、例えば、無置換体のポルフィリン、その誘導体があげられる。前記誘導体は、例えば、置換体のポルフィリンおよび金属元素と錯体を形成した金属ポルフィリン等があげられる。前記置換体のポルフィリンは、例えば、N−メチルメソポルフィリン等があげられる。前記金属ポルフィリンは、例えば、三価鉄錯体であるヘミン等があげられる。前記ポルフィリンは、例えば、前記金属ポルフィリンが好ましく、より好ましくはヘミンである。
【0069】
また、Gカルテッド構造を形成した活性型のDNAzymeは、例えば、ポルフィリンと複合体を形成することで、蛍光を生じる。このため、本発明のセンサがDNAzymeを有する場合、前記ポルフィリンを共存させ、前記DNAzymeと前記ポルフィリンとの複合体形成による蛍光を検出することによって、前記小麦アレルゲン結合核酸分子への前記小麦アレルゲンの結合の有無または結合量を分析することができる。
【0070】
前記ポルフィリンは、特に制限されず、例えば、N−メチルメソポルフィリン(NMM)、Zn−DIGP、ZnPP9およびTMPyP等が好ましい。
【0071】
本発明のセンサは、例えば、さらに標識物質を有してもよい。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは5’末端である。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体、酵素等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488、Alexa647等のAlexa色素等があげられる。前記酵素は、例えば、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ等があげられる。
【0072】
前記標識物質は、例えば、前記核酸分子に直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、間接的に連結してもよい。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、前述の例示を援用できる。
【0073】
(3)分析方法
本発明の分析方法は、前述のように、小麦アレルゲンの分析方法であって、試料と前記本発明の小麦アレルゲン結合核酸分子とを接触させ、前記試料中の小麦アレルゲンと前記核酸分子とを結合させることにより、前記試料中の小麦アレルゲンを検出する工程を含むことを特徴とする。本発明の分析方法は、前記本発明の核酸分子を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。また、本発明の分析方法は、前記本発明の核酸分子として、前記本発明の小麦アレルゲン分析用センサを使用してもよい。
【0074】
本発明によれば、前記本発明の核酸分子が、小麦アレルゲンに特異的に結合することから、例えば、小麦アレルゲンと前記核酸分子との結合を検出することによって、試料中の小麦アレルゲンを特異的に検出可能である。具体的には、例えば、試料中の小麦アレルゲンの有無または小麦アレルゲンの量を分析可能であることから、定性または定量も可能といえる。
【0075】
本発明において、前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、食品、食品原料、食品添加物等があげられる。また、前記試料は、例えば、食品加工場または調理場等における付着物、洗浄後の洗浄液等があげられる。
【0076】
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記試料は、例えば、前記核酸分子と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、液体試料が好ましい。前記固体試料の場合、例えば、溶媒を用いて、混合液、抽出液、溶解液等を調製し、これを使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0077】
前記検出工程は、例えば、前記試料と前記核酸分子とを接触させて、前記試料中の小麦アレルゲンと前記核酸分子とを結合させる接触工程と、前記小麦アレルゲンと前記核酸分子との結合を検出する結合検出工程とを含む。また、前記検出工程は、例えば、さらに、前記結合検出工程の結果に基づいて、前記試料中の小麦アレルゲンの有無または量を分析する工程を含む。
【0078】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記核酸分子との接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0079】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4〜37℃、18〜25℃であり、接触時間は、例えば、10〜120分、30〜60分である。
【0080】
前記接触工程において、前記核酸分子は、例えば、担体に固定化された固定化核酸分子でもよいし、未固定の遊離した核酸分子でもよい。後者の場合、例えば、容器内で、前記試料と接触させる。前記核酸分子は、例えば、取扱性に優れることから、前記固定化核酸分子が好ましい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。
【0081】
前記結合検出工程は、前述のように、前記試料中の小麦アレルゲンと前記核酸分子との結合を検出する工程である。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中の小麦アレルゲンの有無を分析(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中の小麦アレルゲンの量を分析(定量)できる。
【0082】
そして、前記小麦アレルゲンと前記核酸分子との結合が検出できなかった場合は、前記試料中に小麦アレルゲンは存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中に小麦アレルゲンが存在すると判断できる。
【0083】
前記小麦アレルゲンと前記核酸分子との結合の分析方法は、特に制限されない。前記方法は、例えば、物質間の結合を検出する従来公知の方法が採用でき、具体例として、前述のSPR、蛍光偏光法等があげられる。また、前記結合は、例えば、前記小麦アレルゲンと前記核酸分子との複合体の検出でもよい。
【0084】
前記蛍光偏光法による前記小麦アレルゲンと前記核酸分子との結合の検出は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0085】
前記蛍光偏光法は、一般に、偏光励起光を前記標識物質に照射した際、前記標識物質から発せられる蛍光が、前記標識物質で標識された分子の分子量に応じて異なった偏光度を示すという特性に基づく測定方法である。本発明においては、例えば、前記標識物質で標識化した前記核酸分子(標識化核酸分子)を使用することで、前記蛍光偏光法により前記小麦アレルゲンと前記核酸分子との結合を検出することができる。具体的には、前記標識化核酸分子は、小麦アレルゲンと未結合の状態と、小麦アレルゲンと結合した状態とを比較した場合、前者は、相対的に分子量が小さいため、相対的に偏光度が低く、一方、後者は、相対的に分子量が大きいため、相対的に偏光度が高い。このため、例えば、試料と接触させる前の前記標識化核酸分子の偏光度と、前記試料と接触させた後の前記標識化核酸分子の前記偏光度とを比較することで、小麦アレルゲンと前記標識化核酸分子との結合を検出できる。また、小麦アレルゲンと未結合の前記標識化核酸分子および小麦アレルゲンと結合した前記標識化核酸分子の少なくとも一方の偏光度を評価基準として、前記試料と接触させた後の前記標識化核酸分子の偏光度を評価することでも、小麦アレルゲンと前記標識化核酸分子との結合を検出できる。
【0086】
前記蛍光偏光法によれば、例えば、前記本発明の核酸分子を、前記標識物質で標識化するのみで、センサとして容易に使用できる。また、前記標識物質は、その種類によって検出波長が異なるため、例えば、試料の種類に応じて前記標識物質を選択することで、前記試料由来の蛍光の影響を低減することもできる。
【0087】
前記標識化核酸分子は、例えば、前記本発明の核酸分子が前記標識物質で標識化されていればよく、その標識方法は、特に制限されない。
【0088】
前記標識化核酸分子としては、例えば、前記本発明の核酸分子に前記標識物質が連結した形態があげられる。この形態は、例えば、前述の記載が援用でき、前記本発明の核酸分子に、前記標識物質が直接的に連結してもよいし、前述のようにリンカー等を介して前記標識物質が間接的に連結してもよい。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、0〜10塩基長、0〜7塩基長、0〜5塩基長である。前記標識物質は、例えば、前記本発明の核酸分子のいずれの部位に連結されてもよく、具体例としては、5’末端および3’末端があげられ、両末端に連結してもよいし、いずれか一方の末端に連結してもよく、好ましくは、5’末端である。
【0089】
前記標識化核酸分子としては、この他に、例えば、前記本発明の核酸分子と、これに相補的であって且つ標識物質が連結した相補鎖(以下、「標識化相補鎖」ともいう)とを含み、前記核酸分子と前記標識化相補鎖とがハイブリダイズしたハイブリッド分子があげられる。
【0090】
前記相補鎖は、例えば、前記本発明の核酸分子の一部に相補的な配列を有していればよく、前記相補的な配列のみから構成されてもよいし、前記相補的な配列を含んでもよい。前記相補鎖は、前記本発明の核酸分子のどの領域に対して相補的でもよく、好ましくは、5’末端領域または3’末端領域に相補的である。また、例えば、前記本発明の核酸分子が、その5’末端または3’末端にリンカーを有し、前記相補的な配列は、前記リンカーに相補的であることが好ましい。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、10〜30塩基長、15〜25塩基長、18〜24塩基長である。前記相補鎖の長さは、特に制限されず、例えば、10〜30塩基長、15〜25塩基長、18〜24塩基長である。
【0091】
前記標識化相補鎖において、前記標識物質は、例えば、前記相補鎖のいずれの部位に連結されてもよく、具体例としては、5’末端および3’末端があげられ、両末端に連結してもよいし、いずれか一方の末端に連結してもよい。前記標識化相補鎖が、前記本発明の核酸分子の3’末端領域に相補的な場合、前記標識物質は、前記相補鎖の5’末端に連結することが好ましく、前記標識化相補鎖が、前記本発明の核酸分子の5’末端領域に相補的な場合、前記標識物質は、前記相補鎖の3’末端に連結することが好ましい。
【0092】
前記標識物質は、特に制限されず、前述した例示を援用でき、中でも前記蛍光物質および前記色素が好ましい。
【0093】
前記蛍光偏光法を採用する場合、本発明の分析方法は、例えば、前記試料と前記標識化核酸分子とを接触させ、前記試料中の小麦アレルゲンと前記標識化核酸分子とを結合させる接触工程と、前記標識化核酸分子に偏光励起光を照射して、前記標識化核酸分子の偏光度を測定する測定工程と、前記測定工程における測定結果と評価基準とを比較し、小麦アレルゲンと前記標識化核酸分子との結合を検出する工程を検出する検出工程を含むことが好ましい。
【0094】
前記測定工程において、前記偏光励起光の波長および前記偏光度の検出波長は、特に制限されず、例えば、前記標識物質の種類に応じて適宜設定できる。具体例として、前記標識物質がAlexa647の場合、前記偏光励起光の波長は、例えば、620〜680nmであり、偏光度の検出波長は、例えば、660〜800nmである。前記偏光励起光の照射時間は、特に制限されず、例えば、1〜5ナノ秒があげられる。
【0095】
前記検出工程において、前記評価基準は、例えば、予め決定してもよいし、測定ごとに決定してもよい。前記評価基準としては、例えば、小麦アレルゲン未結合の基準、小麦アレルゲン結合の基準が設定できる。前者の基準は、例えば、小麦アレルゲンが結合していない前記標識化核酸分子のみの偏光度であり、後者の基準は、例えば、小麦アレルゲンが結合した前記標識化核酸分子の偏光度である。
【0096】
前者の基準を用いる場合は、例えば、前記測定工程における測定値が、前記基準よりも高ければ、小麦アレルゲンが存在すると判断でき、また、前記基準よりも相対的に高ければ、相対的に多くの小麦アレルゲンが存在すると判断できる。他方、前記測定工程における測定値が、前記基準と同程度または低ければ、小麦アレルゲンが存在しないと判断できる。前者の基準は、例えば、前記接触工程前の前記標識化核酸分子の偏光度でもよい。
【0097】
また、後者の基準を用いる場合は、例えば、前記測定工程における測定値が、前記基準よりも低ければ、小麦アレルゲンが存在しないと判断できる。他方、前記測定工程における測定値が、前記基準と同程度または高ければ、小麦アレルゲンが存在すると判断でき、また、前記基準よりも相対的に高ければ、相対的に多くの小麦アレルゲンが存在すると判断できる。
【0098】
また、前記基準は、小麦アレルゲンの量と偏光度との相関関係であってもよい。例えば、複数の既知濃度の小麦アレルゲンと所定量の前記標識化核酸分子とを接触させ、各濃度の小麦アレルゲンに結合した前記標識化核酸分子の偏光度を測定することにより、前記相関関係を示す相関式が得られる。そして、この相関式と、前記測定工程における測定値とから、前記試料における小麦アレルゲンの量を判断することができる。
【0099】
また、本発明の核酸分子として、前記本発明の小麦アレルゲン分析用センサを使用する場合、例えば、酸化還元反応の検出または蛍光発生の検出によって、前記小麦アレルゲンの検出を行うことができる。
【0100】
前述のように、前記本発明のセンサが、前記結合検出用核酸分子としてGカルテッド構造を形成するDNAzymeを有する場合、前記小麦アレルゲン結合核酸分子への前記小麦アレルゲンの結合によって、前記DNAzymeは、Gカルテッド構造を形成し、ペルオキシダーゼ様の酸化還元反応の触媒活性を示す活性型となる。このため、前記酸化還元反応を検出することによって、前記小麦アレルゲン結合核酸分子への前記小麦アレルゲンの結合を検出できる。この場合、例えば、前記酸化還元反応の基質を併用することが好ましい。
【0101】
前記基質は、特に制限されず、例えば、3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine(TMB)、1,2−Phenylenediamine(OPD)、2,2’−Azinobis(3−ethylbenzothiazoline−6−sulfonic Acid Ammonium Salt(ABTS)、3,3’−Diaminobenzidine(DAB)、3,3’−Diaminobenzidine Tetrahydrochloride Hydrate(DAB4HCl)、3−Amino−9−ethylcarbazole(AEC)、4−Chloro−1−naphthol(4C1N)、2,4,6−Tribromo−3−hydroxybenzoic Acid、2,4−Dichlorophenol、4−Aminoantipyrine、4−Aminoantipyrine Hydrochloride、ルミノール等があげられる。
【0102】
また、前記本発明のセンサが、前記結合検出用核酸分子としてGカルテッド構造を形成するDNAzymeを有する場合、前記小麦アレルゲン結合核酸分子への前記小麦アレルゲンの結合によって、前記DNAzymeは、Gカルテット構造を形成し、ポルフィリンとの複合体を形成することで、蛍光を発生する。このため、前記蛍光を検出することによって、前記小麦アレルゲン結合核酸分子への小麦アレルゲンを検出できる。
【0103】
(4)検出キット
本発明の検出キットは、前記本発明の小麦アレルゲン結合核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出キットは、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の検出キットを使用すれば、前述のように、例えば、前記小麦アレルゲンの検出等を行うことができる。
【0104】
本発明の検出キットは、例えば、前記本発明の核酸分子として、前記本発明のセンサを含んでもよい。また、前記本発明の検出キットは、例えば、前記本発明の核酸分子の他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、前記ポルフィリン、緩衝液、使用説明書等があげられる。
【実施例】
【0105】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【0106】
[実施例1]
各アプタマーについて、小麦アレルゲンに対する結合能および動態パラメータを確認した。
【0107】
(1)アプタマー
下記ポリヌクレオチドを合成し、実施例のアプタマーとした。
【0108】
【表2】
【0109】
前記アプタマーは、その末端に、20塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。前記ポリdAは、5’末端に付加した。
【0110】
(2)試料
市販の小麦由来グルテン(079-00572/ Gluten, from wheat 、和光純薬社製)を、試料として、以下の試験に使用した。
【0111】
(3)SPRによる結合能の解析
結合能の解析には、ProteON XPR36(BioRad社製)を、その使用説明書にしたがって使用した。
【0112】
まず、ProteON専用のセンサーチップとして、ストレプトアビジンが固定化されたチップ(ProteOn NLC Sensor Chip、BioRad社)を、ProteON XPR36にセットした。前記センサーチップのフローセルに、超純水(DDW)を用いて、5μmol/Lのビオチン化ポリdTをインジェクションし、シグナル強度(RU:Resonance Unit)が約900RUになるまで結合させた。前記ビオチン化ポリdTは、24塩基長のデオキシチミジンの5’末端または3’末端をビオチン化して調製した。そして、前記チップの前記フローセルに、SPRバッファーを用いて、1μmol/Lの前記ポリdA付加アプタマーを、流速25μL/minで80秒間インジェクションし、シグナル強度が約800RUになるまで結合させた。この結果を、アプタマーのセンサーチップへの固層化量を示すシグナルとして、アプタマー固層化測定値(A)という。続いて、前記試料を、SPRバッファーを用いて、流速50μL/minで120秒間インジェクションし、引き続き、同じ条件で、SPRバッファーを流して洗浄を行った。前記試料のインジェクションおよび前記SPRバッファーによる洗浄に並行して、シグナル強度の測定を行った。この結果を、前記アプタマーとタンパクの結合量を示すシグナルとして、タンパク質結合測定値(B)という。前記試料の濃度は、500nmol/L、250nmol/L、125nmol/L、62.5nmol/Lとした。
【0113】
前記SPRバッファーの組成は、40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl2および0.01% Tween(登録商標)20とし、pHは、7.5とした。
【0114】
これらの結果を
図2に示す。
図2は、前記グルテンに対するアプタマーの結合能を示すグラフであり、横軸は、測定時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。横軸において、0〜120秒が、前記試料のインジェクション時間であり、120秒以降が、前記SPRバッファーによる洗浄の時間である(以下、同様)。
図2の各グラフにおいて、プロットは、上から、グルテンタンパク質の濃度が500nmol/L、250nmol/L、125nmol/L、62.5nmol/Lである。
【0115】
図2に示すように、いずれのアプタマーを使用した場合も、前記グルテンに対して、結合性を示した。
【0116】
また、前記
図2のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。これらの結果を下記表3に示す。下記表3に示すように、いずれのアプタマーを使用した場合も、グルテンに対する解離定数(KD)は、20nM以下であり、非常に優れた結合性であることがわかった。
【0117】
【表3】
【0118】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。