特許第6598340号(P6598340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6598340
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】駐輪機のラック収納構造
(51)【国際特許分類】
   B62H 3/08 20060101AFI20191021BHJP
   E04H 6/06 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B62H3/08
   E04H6/06 X
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-158540(P2019-158540)
(22)【出願日】2019年8月30日
【審査請求日】2019年9月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519317114
【氏名又は名称】株式会社CPM
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 敬子
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−86806(JP,A)
【文献】 特開2011−174362(JP,A)
【文献】 特開2011−38396(JP,A)
【文献】 特開2014−25306(JP,A)
【文献】 韓国公開実用新案第20−2013−0006685(KR,U)
【文献】 韓国公開実用新案第20−2012−0003870(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 3/08
E04H 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に筒状形態で立設された支柱に沿って所定の高さを有し、牽引力の付与により前記支柱の下段位置と上段位置との間で昇降可能に配置されるとともに、前記下段位置において前記支柱にロックされて固定リンクとして機能するベース体と、
前記ベース体の下部に対し自身の基端部が幅方向の回転軸線周りで回転可能に支持されて長手方向に片持ち状に延び、先端に自転車を搬出入するための出入口が形成されるとともに、自転車が搭載されない空車状態において前記基端部に付与される前記回転軸線周りのモーメントにより前記下段位置にあるベース体に対して水平状態から前記支柱に沿う倒立状態へ回転可能な回転駆動リンクとして機能するラックと、
前記下段位置において前記水平状態のラックに搬出入される自転車の横揺れ振動であるローリング運動を阻止又は抑制するために前記ラックの幅方向両側に配置されるとともに、自身の一端部が前記ベース体の上部に対し幅方向の揺動軸線周りで揺動可能に支持される一方、その他端部は前記ラックの中途部に長手方向に沿って一体形成されたガイド部に対しスライド移動可能に係合支持されるスライダを形成することにより、前記ベース体とラックとの間に掛け渡され、前記空車状態において回転従動リンクとして機能するサイドガードと、を備え、
前記下段位置において前記ベース体、前記ラック及び前記サイドガードが幅方向から見て剛体構造の三角形状をなし、かつ前記空車状態において前記ラックとサイドガードとが前記スライダを介してクランク運動する回転スライダクランク機構が構成され、
前記空車状態かつ前記水平状態における前記ラックの基端部に前記モーメントを付与することにより、前記スライダが前記ガイド部で長手方向に沿ってスライド移動しながら、前記ラック及び前記サイドガードが前記ベース体に対し上向きに回動して前記支柱に沿う倒立状態で収納されることを特徴とする駐輪機のラック収納構造。
【請求項2】
前記下段位置にて前記水平状態のラックの出入口から自転車が搬入され、自転車が搭載された実車状態のラックが前記下段位置と上段位置との間で前記ベース体とともに昇降されるとともに、
前記ベース体が前記下段位置にあるとき、前記空車状態においては前記支柱に対し前記牽引力に基づく前記ベース体の昇降が不能となるようにロック作動し、前記実車状態においては昇降が可能となるようにロック解除する下段ストップ機構と、
前記ベース体が前記下段位置にあり前記ラックが前記水平状態にあるとき、前記ガイド部に対する前記スライダのスライド移動を禁止することによって、前記ベース体に対し前記モーメントに基づく前記ラック及び前記サイドガードの上向き回動が不能となるようにロック作動し、スライド移動を許可することによって、上向き回動が可能となるようにロック解除する回動ストップ機構と、を備え、
前記ベース体が前記下段位置にあり前記ラックが前記水平状態にあって前記下段ストップ機構がロック作動しているときにのみ、前記回動ストップ機構がロック解除される請求項1に記載の駐輪機のラック収納構造。
【請求項3】
前記ラックの空車状態を検知することに基づいて、前記下段ストップ機構は前記ベース体を前記支柱の下段位置にロック作動し、前記回動ストップ機構は前記ガイド部に対する前記スライダのスライド移動を許可して前記ベース体に対する前記ラック及び前記サイドガードの上向き回動が可能となるようにロック解除する請求項2に記載の駐輪機のラック収納構造。
【請求項4】
前記実車状態のラックから自転車を搬出して前記空車状態とするとき、前記下段ストップ機構がロック作動したのち、前記回動ストップ機構がロック解除される請求項3に記載の駐輪機のラック収納構造。
【請求項5】
前記ラック及び前記サイドガードが前記倒立状態で収納されるとき、前記下段ストップ機構はロック作動を維持し、前記回動ストップ機構はロック解除を維持する請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の駐輪機のラック収納構造。
【請求項6】
前記倒立状態で収納されたラックが前記モーメントに抗して人為的に前記回転軸線周りで逆回転操作されるとき、前記ラックは逆回転駆動リンクとして、前記サイドガードは逆回転従動リンクとしてそれぞれ機能し、
前記ラックが前記下段位置にあるベース体に対して水平状態に復帰する際に、前記回動ストップ機構は前記ガイド部に対する前記スライダのスライド移動を禁止することによって前記ベース体に対する前記ラック及び前記サイドガードの上向き回動が不能となるようにロック作動する請求項5に記載の駐輪機のラック収納構造。
【請求項7】
前記下段位置において、前記回転スライダクランク機構を構成する、前記ベース体、前記ラック及び前記サイドガードは、前記ベース体とラックとがほぼ直角に交差し前記サイドガードが斜辺をなす疑似直角三角形状を呈し、
前記倒立状態において、前記ラックは幅方向から見て前記ベース体及び前記サイドガードと重なり合って収納される請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の駐輪機のラック収納構造。
【請求項8】
前記下段位置において前記水平状態のラックに自転車を搬入する際に先行車輪の両側を上方から跨いで支えるためのタイヤガードが、前記斜辺をなす前記サイドガードの高位置側端部近傍において、幅方向の一側から上向きに突出しタイヤを迂回して他側に至る形で設けられ、
前記空車状態における前記タイヤガードは、前記ラック及び前記サイドガードが上向きに回動して前記倒立状態に至る過程において前記支柱に沿うように姿勢変更し、幅方向から見て前記ラックと重なり合って収納される請求項7に記載の駐輪機のラック収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐輪機のラック収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直上下昇降式のラックを有する駐輪機では、支柱の下部位置においてラックに自転車が搬入され、実車状態のラックが上部位置にて保管・管理される。自転車が搬出され空車状態となったラックの収納方式として、水平状態のまま上部位置にスライド収納(すなわち水平収納)するタイプと、基端部を中心に回動させて跳ね上げ収納(すなわち倒立収納)するタイプとが知られている。特許文献1は後者の跳ね上げ収納タイプを示し、前者のスライド収納タイプと比較すると、収納時におけるラックの突出量を少なくして省スペース化を図ることができる。
【0003】
ところが、特許文献1では、空(すなわち空車状態)の自転車用架台を跳ね上げ収納する際、架台本体(ラック)及びリンク機構(サイドガード)がそれぞれL字状の中折れ状態(すなわち折り曲げ状態)となって折り畳まれる。したがって、これら両部材は強度不足や耐久性欠如に陥りやすく、自身の損傷のみならず搭載する自転車が落下する危険性も懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5303535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、垂直昇降式駐輪機において、空車状態のラック及びサイドガードを折り曲げずに剛体構造を保ちつつ倒立状態で収納することにより、強度や耐久性に優れたラック収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の駐輪機のラック収納構造は、
上下方向に筒状形態で立設された支柱に沿って所定の高さを有し、牽引力の付与により前記支柱の下段位置と上段位置との間で昇降可能に配置されるとともに、前記下段位置において前記支柱にロックされて固定リンクとして機能するベース体(例えば台車)と、
前記ベース体の下部に対し自身の基端部が幅方向の回転軸線周りで回転可能に支持されて長手方向に(例えば樋形状で)片持ち状に延び、先端に自転車を搬出入するための出入口が形成されるとともに、自転車が搭載されない空車状態において前記基端部に付与される前記回転軸線周りのモーメントにより前記下段位置にあるベース体に対して水平状態から前記支柱に沿う倒立状態へ回転可能な回転駆動リンクとして機能するラックと、
前記下段位置において前記水平状態のラックに搬出入される自転車の横揺れ振動(すなわち左右傾動)であるローリング運動を阻止又は抑制するために前記ラックの幅方向両側に配置されるとともに、自身の一端部が前記ベース体の上部に対し幅方向の揺動軸線周りで揺動可能に支持される一方、その他端部は前記ラックの中途部(の先端部寄り)に長手方向に沿って一体形成されたガイド部(具体的には長孔又はレール)に対しスライド移動可能に係合支持されるスライダ(具体的にはスライドピン又はスライドブロック)を形成することにより、前記ベース体とラックとの間に掛け渡され、前記空車状態において回転従動リンクとして機能するサイドガード(例えばブレース)と、を備え、
前記下段位置において前記ベース体、前記ラック及び前記サイドガードが幅方向から見て剛体構造の三角形状をなし、かつ前記空車状態において前記ラックとサイドガードとが前記スライダを介してクランク運動する回転スライダクランク機構が構成され、
前記空車状態かつ前記水平状態における前記ラックの基端部に前記モーメントを付与することにより、前記スライダが前記ガイド部で長手方向に沿ってスライド移動しながら、前記ラック及び前記サイドガードが前記ベース体に対し上向きに回動して前記支柱に沿う倒立状態で収納されることを特徴とする。
【0007】
このように、自転車が搬出され空車状態となったラック及びサイドガードは、倒立状態で収納されるまでの間折れ曲がりやたるみを生じることなく、回転スライダクランク機構を構成する回転駆動リンク及び回転従動リンクとして剛体構造を保つことができる。よって、強度や耐久性に優れるとともに堅牢なラック収納構造を備え、軽量級から重量級まで各種の自転車を安全確実に保管・管理できる駐輪機とすることができる。
【0008】
上記「剛体構造の三角形状」とは、「回転スライダクランク機構の構成要素であるベース体、ラック及びサイドガードによって各辺が剛性を有する堅牢な三角形状に形成され、かつラック及びサイドガードが倒立状態で収納される際に折れ曲がり部やたるみ部を生じないこと」を意味する。なお、回転スライダクランク機構では、「ガイド部」を長孔、「スライダ」をスライドピンで構成したり、「ガイド部」をレール、「スライダ」をスライドブロックで構成したりすることができる。また、上記「回転スライダクランク機構」において、回転駆動リンクとしてのラックは水平状態から支柱に沿う倒立状態まで約90°の回転角(1/4回転)の範囲でのみ作動するから、「1/4回転スライダクランク機構」と称することもできる。
【0009】
ところで、ベース体に対する牽引力の付与(機構)は、ベース体、ラック、サイドガード及びラック搭載自転車の合計荷重に対応する牽引力でベース体を常時上方に引き上げるように機能(作用)する。また、ラックの基端部に対するモーメントの付与(機構)は、ラック及びサイドガードの合計荷重に対応するモーメントでラックを常時倒立状態に収納するように機能(作用)する。
【0010】
上記「サイドガード」は、搭載自転車の落下防止のためにラックの幅方向両側において各々斜め交差状に掛け渡された、いわゆる筋交いであって、ブレース(brace)とも通称される。
【0011】
上記した下段位置にて水平状態のラックの出入口から自転車が搬入され、自転車が搭載された実車状態のラックが下段位置と上段位置との間でベース体とともに昇降されるとともに、
ベース体が下段位置にあるとき、空車状態においては支柱に対し牽引力に基づくベース体の昇降が不能となるようにロック作動し、実車状態においては昇降が可能となるようにロック解除する下段ストップ機構と、
ベース体が下段位置にありラックが水平状態にあるとき、ガイド部に対するスライダのスライド移動を禁止することによって、ベース体に対しモーメントに基づくラック及びサイドガードの上向き回動が不能となるようにロック作動し、スライド移動を許可することによって、上向き回動が可能となるようにロック解除する回動ストップ機構と、を備え、
ベース体が下段位置にありラックが水平状態にあって下段ストップ機構がロック作動しているときにのみ、回動ストップ機構がロック解除される。
【0012】
このように、ラック及びサイドガードを倒立状態へ収納するには、下段ストップ機構のロック作動すなわちベース体が支柱へ固定されていることが必須条件となるので、安全性が確保され誤操作を生じにくい。
【0013】
上記ラックの空車状態を検知することに基づいて、下段ストップ機構はベース体を支柱の下段位置にロック作動し、回動ストップ機構はガイド部に対するスライダのスライド移動を許可してベース体に対するラック及びサイドガードの上向き回動が可能となるようにロック解除する。
【0014】
このように、ラックの空車状態の検知を契機として、下段ストップ機構がロック作動し、回動ストップ機構がロック解除するので、ラック及びサイドガードが倒立状態で安全に収納される。
【0015】
具体的には、上記した実車状態のラックから自転車を搬出して空車状態とするとき、下段ストップ機構がロック作動したのち、回動ストップ機構がロック解除される。
【0016】
このように、下段ストップ機構のロック作動が優先することにより、支柱に対するベース体の昇降ロック操作が、ガイド部に対するスライダのロック解除(回動ストップ機構)に先行して行われる。これによって、支柱に固定されたベース体を基準としてラック及びサイドガードが上向きに回動し、安定した軌道で倒立状態に収納される。
【0017】
一例として、後続搬出車輪(例えば前輪)が車輪受け(第一検知手段)から後退するとき搬出中間状態(すなわち空車移行状態)を検知して下段ストップ機構がロック作動し、その後に後続搬出車輪(例えば前輪)が出入口の作動部材(第二検知手段)から搬出される(通過する)とき搬出終了状態(すなわち完全空車状態)を検知して回動ストップ機構がロック解除されることがある。
【0018】
上記したラック及びサイドガードが倒立状態で収納されるとき、下段ストップ機構はロック作動を維持し、回動ストップ機構はロック解除を維持する。
【0019】
ラック及びサイドガードが倒立状態で収納されるまで下段ストップ機構及び回動ストップ機構は収納開始時の状態を維持しているので、倒立状態での収納完了まで誤作動が防止され、ラックが水平状態(搬入待機状態)に復帰する際にも誤作動を防止できる。
【0020】
上記した倒立状態で収納されたラックがモーメントに抗して人為的に回転軸線周りで逆回転操作されるとき、ラックは逆回転駆動リンクとして、サイドガードは逆回転従動リンクとしてそれぞれ機能し、
ラックが下段位置にあるベース体に対して水平状態に復帰する際に、回動ストップ機構はガイド部に対するスライダのスライド移動を禁止することによってベース体に対するラック及びサイドガードの上向き回動が不能となるようにロック作動する。
【0021】
このように、ラックが倒立状態から逆回転操作されて水平状態(搬入待機状態)に復帰する際には回動ストップ機構がロック作動するので、ラックが水平状態に復帰せずに倒立状態へ戻る(引き返す)ような誤作動を防止でき、下段位置にてラックへの自転車の搬入が支障なく行える。
【0022】
上記した下段位置において、回転スライダクランク機構を構成する、ベース体、ラック及びサイドガードは、ベース体とラックとがほぼ直角に交差しサイドガードが斜辺をなす疑似直角三角形状を呈し、
倒立状態において、ラックは幅方向から見てベース体及びサイドガードと重なり合って収納される。
【0023】
このように、下段位置においてベース体、ラック及びサイドガードのなす形状を直角三角形に近づけることによって、回転スライダクランク機構ひいては駐輪機全体の小型コンパクト化を図ることができる。
【0024】
上記した下段位置において水平状態のラックに自転車を搬入する際に先行車輪(例えば前輪)の両側を上方から跨いで支えるためのタイヤガードが、斜辺をなすサイドガードの高位置側端部近傍において、幅方向の一側から上向きに突出しタイヤを迂回して他側に至る形(例えば逆U字状)で設けられ、
空車状態におけるタイヤガードは、ラック及びサイドガードが上向きに回動して倒立状態に至る過程において(自身の上端部が支柱と接触しつつ)支柱に沿うように姿勢変更し、幅方向から見てラックと重なり合って収納される。
【0025】
このように、サイドガードに付設されるタイヤガードは、ラックに自転車が搬入されるとき、サイドガードから起立してタイヤを内側に保持するタイヤホルダとして機能する。一方、空車状態となったラックが倒立状態となって収納されるときには、タイヤガードは支柱と接触して徐々に折り畳み収納される収納ガイドとして機能し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例として、下段位置であって水平状態のラックにおいて自転車の搬出途中であることを表わす全体正面図。
図2図1の要部を示す正面図。
図3図1の背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図4図1を一部拡大して示す作用説明図。
図5図1に続いて、水平状態のラックから自転車の搬出が終了し、倒立状態への自動収納を開始することを表わす全体正面図。
図6図5を一部拡大して示す作用説明図。
図7図5に続いて、ラックの倒立状態に至る収納途中段階及び収納終了段階を表わす全体正面図。
図8図7の収納途中段階を一部拡大して示す作用説明図。
図9図7の収納終了段階での背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図10図7に続いて、下段位置においてラックが倒立状態から水平状態へ復帰し、空車状態すなわち自転車の搬入待機状態であることを表わす全体正面図。
図11図10に続いて、下段位置であって水平状態のラックにおいて自転車の搬入終了状態すなわち実車状態であることを表わす全体正面図。
図12図11の背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図13図11に続いて、実車状態のラックを上昇し、上段位置において自転車を保管することを表わす全体正面図。
図14図13の背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図15図13を一部拡大して示す作用説明図。
図16図13に続いて、実車状態のラックを下降し、下段位置において自転車の搬出直前状態であることを表わす全体正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。
【0028】
図1に示す倒立収納タイプの駐輪機100は、倒立収納、すなわち自転車BCLが搭載されない空車状態のラック12を倒立状態で収納する(図7参照)機能を実現するための基本構成である回転スライダクランク機構10と、その各部を駆動するための手段である台車昇降機構20(牽引力付与機構)及びラック回動機構30(モーメント付与機構)と、その各部の作動を規制するための手段である台車ロック機構40(下段ストップ機構)、スライダロック機構50(回動ストップ機構)及びラックロック機構60(移動ストップ機構)とを備えている。
【0029】
図1図2に示すように、回転スライダクランク機構10は、固定リンクとして機能する台車11(ベース体)と、回転駆動リンクとして機能するラック12と、回転従動リンクとして機能するブレース13(サイドガード)とを有し、正面視で(すなわちラック12の幅方向から見て)剛体構造の三角形状に形成される。
【0030】
台車11は上下方向に筒状形態で立設された支柱1に沿って一定の高さを有し、台車昇降機構20により牽引力を付与されて、支柱1の下段位置と上段位置との間でローラ111(図3参照)により昇降可能に配置される(詳しくは後述する)。また、台車11は台車ロック機構40により下段位置において支柱1にロックされ(詳しくは後述する)、回転スライダクランク機構10においては固定リンクとして機能する。
【0031】
ラック12は、台車11の下部に対し前端部(基端部)が幅方向の回転軸120(回転軸線)を中心に回転可能に支持されて長手方向に樋形状で片持ち状に延び、先端(後端)に自転車BCLを搬出入するための出入口123が形成される。ラック回動機構30により空車状態において前端部に回転軸120を中心とするモーメントを付与されて、下段位置にある台車11に対して水平状態から支柱1に沿う倒立状態へ回転可能に配置され(詳しくは後述する)、回転スライダクランク機構10においては回転駆動リンクとして機能する。さらに、ラックロック機構60によりラック12は支柱1に係止可能である(詳しくは後述する)。
【0032】
ブレース13はラック12の幅方向両側に一対配置され、左ブレース13L,右ブレース13R(図3図4参照)はそれぞれの一端部(図1〜4では上端部)が台車11の上部に対し、幅方向の揺動軸130(揺動軸線)を中心に揺動可能に支持される。一方、左右のブレース13L,13Rの他端部(図1〜4では下端部)は、ラック12の中途部であって後端部(先端部)寄りに固定された板状部材122の長手方向に沿って一体形成された長孔121(ガイド部)に対し、下段位置の空車状態においてスライド移動可能に係合支持されるスライドピン131(スライダ)を形成し、回転スライダクランク機構10においては回転従動リンクとして機能する。また、ブレース13は台車11とラック12との間に斜め交差状に掛け渡された左右一対の筋交いであり、下段位置において水平状態のラック12に搬出入される自転車BCLの横揺れ振動(すなわち左右傾動)であるローリング運動を阻止又は抑制し、あるいは搭載自転車BCLの落下を防止する。さらに、スライダロック機構50により長孔121に対するスライドピン131のスライド移動はロック可能である(詳しくは後述する)。
【0033】
つまり、支柱1の下段位置において、台車11,ラック12及びブレース13は、正面視で台車11とラック12とがほぼ直角に交差しブレース13が斜辺をなす疑似的な直角三角形状の剛体構造を有する。厳密に表現すれば、回転軸心C120及び揺動軸心C130を結ぶ直線と、回転軸心C120及びスライダ中心C131を結ぶ直線とがほぼ直角に交差する疑似直角三角形が形成されている。このように、ラック12とブレース13とがスライドピン131を介してクランク運動する回転スライダクランク機構10が構成されている。よって、空車状態においてスライドピン131は長孔121内で長手方向に沿ってスライド移動し、ラック12及びブレース13は台車11に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立状態で収納される。そして、この倒立状態においてラック12は正面視で台車11及びブレース13と重なり合って収納されている(図7参照)。
【0034】
このような回転スライダクランク機構10を用いることにより、駐輪機100の倒立収納構造においてコンパクト化を実現することができる。また、台車11、ラック12及びブレース13によって各辺が剛性を有する堅牢な三角形状に形成され、ラック12及びブレース13が倒立状態で収納される際に折れ曲がり部やたるみ部を生じることがない。
【0035】
本実施例の回転スライダクランク機構10において、回転駆動リンクとしてのラック12は水平状態から支柱1に沿う倒立状態まで約90°の回転角(1/4回転)の範囲でのみ作動する(図7参照)から、「1/4回転スライダクランク機構」と称することもできる。
【0036】
なお、一般的に「回転スライダクランク機構」で構成される構造体の例(例えば星型ロータリエンジン)に倣えば、また機構名の呼称に照らしても、ブレース13のスライドピン131が回転駆動リンク(原動節)になるのが通常であるが、本実施例では構成部材の強度を考慮してラック12(の長孔121)を回転駆動リンクとしている。
【0037】
斜辺をなすブレース13の高位置側端部近傍(すなわち支柱1寄り)であって正面視で車輪受け44(後述する)と揺動軸130との間には、ラック搭載自転車BCLの前輪FW(先行搬入車輪)を保持するタイヤガード132が、ブレース13から直立状に起立するとともに起伏自在に設けられている。タイヤガード132は、一方のブレース(例えば左ブレース13L)から上向きに突出し前輪FWのタイヤを迂回して他方のブレース(例えば右ブレース13R)に至る逆U字形状に形成され、下段位置において水平状態のラック12に自転車BCLを搬入する際に前輪FWの両側を上方から跨いで内側に保持する(図11参照)。このように、ラック12に自転車BCLが搬入されるとき、タイヤガード132は前輪FWのタイヤを内側に保持するタイヤホルダとして機能する。
【0038】
起立付勢ばね133がブレース13とタイヤガード132との間に架設され、ブレース13に対してタイヤガード132を常時直立状に起立する姿勢に保持している。空車状態のラック12及びブレース13が上向きに回動して倒立状態に至る過程において、タイヤガード132の上端部は支柱1と接触し、起立付勢ばね133の付勢力に抗して支柱1に沿うように徐々に姿勢変更し、正面視でラック12や支柱1と重なり合って収納される(図7参照)。このように、空車状態となったラック12が倒立状態となって収納されるときには、タイヤガード132は支柱1と接触して徐々に折り畳み収納される収納ガイドとして機能する。
【0039】
図1に戻り、台車昇降機構20の主要部をなす昇降用ガススプリング21は、その基端部が支柱1内の上端部に取り付けられ、下向きに突出するピストンロッド21Rの先端部(下端部)には動滑車22が取り付けられる。また、支柱1内の上端部には定滑車23も取り付けられる。支柱1内の所定位置に連結ワイヤ24の一端が固定され、動滑車22、定滑車23の順に巻回された後、他端が台車11の上端面に固定される。ピストンロッド21Rの退入(収縮)時にラック12は台車11とともに下段位置にあり、自転車BCLの搬入により実車状態となる(図11参照)。ピストンロッド21Rの突出(伸長)によりラック12が台車11とともに上段位置に上昇して自転車BCLを保管する(図13参照)。
【0040】
図1図2に示すように、ラック回動機構30は主として回動用ガススプリング31で構成され、その基端部が台車11の上端部に取り付けられる一方、ピストンロッド31Rの先端部がラック12の前端部に取り付けられる。ピストンロッド31Rの押出力は、ピストンロッド31Rの先端部取付位置と回転軸心C120との水平方向離間距離を腕の長さとするモーメントを生じる。ピストンロッド31Rの退入(縮小)時にはラック12が水平状態に維持される(図5参照)。一方、ピストンロッド31Rの突出(伸長)時にはラック12及びブレース13が台車11に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立状態で収納される(図7参照)。
【0041】
ところで、台車昇降機構20の昇降用ガススプリング21は、台車11、ラック12、ブレース13及びラック搭載自転車BCLの合計荷重に対応する牽引力で台車11を常時上方に引き上げるように作用する。また、ラック回動機構30の回動用ガススプリング31は、ラック12及びブレース13の合計荷重に対応するモーメントでラック12の前端部を常時倒立状態に収納するように作用する。
【0042】
図1図2に示す台車ロック機構40は、台車11が下段位置にあるとき、空車状態においては支柱1に対し昇降用ガススプリング21の牽引力に基づく台車11の昇降が不能となるようにロック作動し(図3参照)、実車状態においては昇降が可能となるようにロック解除する(図12参照)ように作用する。
【0043】
具体的には図3に示すように、台車11に配置された幅方向の支軸42にロックアーム41が揺動可能に取り付けられ、ロックアーム41の下端部はL字状に前方に屈曲して係止爪412が形成される。係止爪412は支柱1の下段位置に形成されたアーム係合部2に係合可能であり、台車11とロックアーム41の上端部との間にはアーム付勢ばね43が配置され、係止爪412がアーム係合部2と係合する方向(前方側)に常時付勢する。なお、係止爪412の後部には突起411が下向きに突出形成されている。
【0044】
また、ラック12の前端部寄りには、搬入自転車BCLの前輪FW(先行搬入車輪)を受け止めるための車輪受け44が前後揺動可能に配置される。車輪受け44は前後方向に延びる延長ロッド45に接続されるとともに、延長ロッド45は車輪受け44とラック12との間に配置されたロッド付勢ばね46により常時前方に付勢される。延長ロッド45の前端部は幅方向にL字状に屈曲して引掛部451が形成され、引掛部451はロックアーム41の下端部に形成された突起411の周囲を取り囲み前方に位置している。
【0045】
図3に示すように、ラック12が空車状態すなわち車輪受け44に前輪FWが載っていないとき、ロッド付勢ばね46の付勢力により車輪受け44は後傾し延長ロッド45は前進するので、引掛部451は突起411よりも前方に位置する。ロックアーム41の下端部はアーム付勢ばね43により前方側に付勢され、係止爪412はアーム係合部2と係合してロックされる。つまり、台車ロック機構40は、台車11が支柱1に対して昇降不能となるようにロック作動する。
【0046】
一方、図12に示すように、ラック12が実車状態すなわち車輪受け44に前輪FWが載ったとき、車輪受け44はロッド付勢ばね46の付勢力に抗して前傾し延長ロッド45を後退させるので、引掛部451は突起411と係合して後方に引き寄せる。ロックアーム41の係止爪412はアーム付勢ばね43及びロッド付勢ばね46の合計付勢力に抗して後方側に回動し、アーム係合部2との係合が解除される。つまり、台車ロック機構40は、台車11が支柱1に対して昇降可能となるようにロック解除する。
【0047】
なお、図9に示すように、ラック12が倒立状態に収納されるとき、すなわちラック12が回転軸120を中心に回転するとき、引掛部451は突起411の外側を回って次第に遠ざかることになる。ロックアーム41の下端部はアーム付勢ばね43により前方側に付勢され、係止爪412はアーム係合部2と係合してロックされる。つまり、台車ロック機構40は、台車11が支柱1に対して昇降不能となるようにロック作動する。
【0048】
図1図2に戻り、スライダロック機構50は、台車11が下段位置にありラック12が水平状態であるとき、長孔121に対するスライドピン131のスライド移動を禁止することによって、台車11に対し回動用ガススプリング31によるモーメントに基づくラック12及びブレース13の上向き回動が不能となるようにロック作動する(図4参照)。一方、スライダロック機構50は、スライドピン131のスライド移動を許可することによって、ラック12及びブレース13の上向き回動が可能となるようにロック解除する(図6参照)。
【0049】
また、ラックロック機構60は、下段位置又は上段位置において、ラック12を支柱1に係止して移動を不能とするロック作動態様(図4又は図15参照)と、係止を解いて移動を可能とするロック解除態様(図6参照)とに切換えられる。ラックロック機構60におけるロック作動態様とロック解除態様との切換えは、ラック12の出入口123に配置されるとともに、空車状態の検知手段と人為的な操作手段とを兼用する作動部材64の作動に基づいて行われ、スライダロック機構50のロック作動及びロック解除と相互に連動して同時に実行される(図4図6参照)。
【0050】
具体的には図4に示すように、支柱1の下段位置には下へ行くほど後方側への突出量が大きくなる下段係合部4が形成され、ラック12の下方にはストッパ付勢ばね62によって常時支柱側(前方側)に付勢されるラックストッパ61が設けられる。ラックストッパ61はラック12に沿って長手方向へ延びる連結ロッド63を介し、空車状態の検知手段と人為的な操作手段とを兼用する形で出入口123に設けられた、作動部材64に連結される。
【0051】
ラック12に支持板124が固定され、支持板124に配置された幅方向の回動軸52を中心として回動ロック板51の一端部が回動可能に設けられる。回動ロック板51の他端部には下向きに開口する切欠を含むロック爪511が形成され、ロック爪511の切欠はスライドピン131に上方から嵌合可能である。回動軸52とロック爪511との中間には、長孔121の長軸配置方向(すなわち水平方向)に対して交差する方向に傾斜長孔513が形成され、連結ロッド63から幅方向に突出形成された操作ピン53が傾斜長孔513に挿入される。回動ロック板51のロック爪511よりさらに先端部には、傾斜長孔513とは異なる方向に傾く斜面部512が形成される。
【0052】
図4に示すように、台車11が下段位置にあり、ラック12が水平状態であるとき、作動部材64が作動せず連結ロッド63が引かれない場合には、ラックストッパ61はストッパ付勢ばね62により前方側に付勢され、下段係合部4に乗り上げた後下側に係止される。つまり、ラックロック機構60は、ラック12を支柱1に係止して移動不能となるようにロック作動する。また、操作ピン53は傾斜長孔513の前端部側にあり回動ロック板51を回動させないので、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックし、ラック12及びブレース13の上向き回動が不能となるようにロック作動する。つまり、スライダロック機構50は、スライドピン131のスライド移動を禁止し、倒立収納が不能となるようにロック作動する。
【0053】
一方、図6に示すように、台車11が下段位置にあり、ラック12が水平状態であるとき、作動部材64が作動し連結ロッド63が引かれる場合には、ラックストッパ61はストッパ付勢ばね62に抗して後方側に移動し、下段係合部4との係止が解かれる。つまり、ラックロック機構60は、ラック12の支柱1に対する係止を解いて移動可能となるようにロック解除する。また、操作ピン53が傾斜長孔513の後方側に移動し回動ロック板51を上方回動させ、ロック爪511の切欠とスライドピン131との嵌合が解かれてスライド移動が許可され、ラック12及びブレース13の上向き回動が可能となるようにロック解除する。つまり、スライダロック機構50は、スライドピン131のスライド移動を許可し、倒立収納が可能となるようにロック解除する。
【0054】
なお、ラック12が倒立状態に収納されるとき、すなわちラック12が回転軸120を中心に回転するとき、ラックストッパ61は下段係合部4から次第に遠ざかることになる。つまり、ラックロック機構60は、ラック12の支柱1に対する係止を解いて移動可能となるようにロック解除を維持する。また、図8に示すように、スライドピン131は回動ロック板51とは無関係に長孔121内をスライド移動可能になる。つまり、スライダロック機構50は、スライドピン131のスライド移動を許可し、倒立収納が可能となるようにロック解除を維持する。
【0055】
さらに、ラック12が倒立状態から水平状態に復帰するときには、倒立状態への収納と逆方向に移行することにより、ラックストッパ61は下段係合部4に係止され、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックする。その際、図8の矢印と逆方向にスライドピン131が長孔121内をスライド移動するとき、スライドピン131はロック爪511の斜面部512に潜り込んで回動軸52を中心に回動ロック板51を上向きに回動させ、ロック爪511の切欠がスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックする。
【0056】
このようにして、台車11が下段位置にあり、自転車BCLの搬出に伴い水平状態のラック12が空車状態になったとき(図5参照)、台車ロック機構40は支柱1に対する台車11の昇降が不能となるようにロック作動するとともに(図3参照)、スライダロック機構50が長孔121に対するスライドピン131のスライド移動を許可し、かつラックロック機構60が支柱1に対するラック12の係止を解いて移動を可能とするように、相互に連動して同時にロック解除することによって(図6参照)、回動用ガススプリング31によるモーメントに基づきラック12及びブレース13が台車11に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立状態で収納される(図7参照)。
【0057】
さらに、作動部材64の人為的操作によりラック12が倒立状態から水平状態に復帰操作される際に、スライダロック機構50による、長孔121に対するスライドピン131のロック作動と、ラックロック機構60による、支柱1に対するラック12の係止ロック作動とが相互に連動して実行される(図10参照)。
【0058】
このように、自転車BCLが搬出され空車状態となったラック12及びブレース13は、倒立状態で収納されるまでの間折れ曲がりやたるみを生じることなく、回転スライダクランク機構10を構成する回転駆動リンク及び回転従動リンクとして剛体構造を保つことができる。よって、強度や耐久性に優れるとともに堅牢なラック収納構造を備え、軽量級から重量級まで各種の自転車を安全確実に保管・管理できる駐輪機100とすることができる。
【0059】
さらに、下段位置においてラック12から自転車BCLを搬出して空車状態となったラック12は倒立状態に自動収納され、下段位置においてラック12に自転車BCLを搬入して実車状態となったラック12は上段位置で保管・管理される。よって、倒立収納タイプの駐輪機100において、自転車BCLの搬出作業及び搬入作業がいずれも下段位置において行われるので、作業負担が軽減され誤操作も生じにくくなる。
【0060】
次に以上で述べた駐輪機100の作動について、操作の順序に沿って概略を説明する。
【0061】
<下段位置、水平状態のラックから自転車の搬出途中>(図1図4
図1に示すように、前輪FWが車輪受け44よりも後方で作動部材64よりも前方にあり、自転車BCLは搬出の途中にある。車輪受け44(第一検知手段)は搬出終了すなわち空車状態を検知し、係止爪412がアーム係合部2と係合し、台車11は支柱1にロックされる(図3)。前輪FWは作動部材64(第二検知手段)に接触せず、搬出終了(空車状態)とは検知されないため、ラックストッパ61は下段係合部4に捕捉され、ラック12は支柱1に係止ロックされる。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、ラック12の倒立収納は阻止される(図4)。
【0062】
<ラックから自転車の搬出終了>(図5図3図6
図5は前輪FWが搬出を終了し、作動部材64に接触している状態を表わす。車輪受け44(第一検知手段)はすでに空車状態を検知しているので、台車11は支柱1にロックされる状態を継続する(図3)。前輪FWにより作動部材64(第二検知手段)が作動し、ラックストッパ61は下段係合部4から離脱して、ラック12と支柱1との係止が解かれる。また、ロック爪511の切欠とスライドピン131との嵌合が解かれ、スライド移動が許可されるので、ラック12の倒立収納が可能となる(図6)。
【0063】
<ラックの自動倒立収納>(図7図9図8
図7に示すように、下段位置、空車状態のラック12が水平状態から倒立状態に収納される。ラック12が倒立状態に収納されるとき、ロックアーム41の係止爪412はアーム係合部2との係合が維持され台車11は支柱1にロックされる(図9)。ラック12の回転に連れてラックストッパ61は下段係合部4と離間するのでラック12支柱1とは係合せず、スライドピン131は長孔121内をスライド移動できる(図8)。タイヤガード132も支柱1に沿って収納される。
【0064】
<ラックの倒立状態から水平状態への復帰>(図10図9図3図8図4
図10に示すように、把手129を把持して倒立状態のラック12を水平状態へ復帰させるとき、ロックアーム41の係止爪412はアーム係合部2との係合が維持され、台車11は支柱1にロックされる(図9図3)。スライドピン131は斜面部512(回動ロック板51)を上向きに回動させ、ロック爪511の切欠がスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックする(図8図4)。タイヤガード132も起立状態に復帰する。
【0065】
<自転車の搬入終了>(図11図12図4
図11は、下段位置、水平状態のラック12へ自転車BCLの搬入を終了した状態を示す。前輪FWが車輪受け44に載置されることによりロックアーム41の係止爪412とアーム係合部2との係合が解除され、台車11は支柱1に対して昇降可能となる(図12)。ラックストッパ61は下段係合部4に捕捉され、ラック12は支柱1に係止ロックされる。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、ラック12の倒立収納は阻止される(図4)。
【0066】
<自転車の上段位置保管>(図13図14図15
図13は自転車BCLを搬入したラック12を上段位置で保管する状態を示す。前輪FWが車輪受け44に載置されることによりロックアーム41の係止爪412とアーム係合部2(図3参照)との係合が解除され、台車11は支柱1に対して昇降可能となる(図14)。ラックストッパ61は上部係合部3に捕捉され、ラック12は支柱1に係止ロックされる。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、ラック12の倒立収納は阻止される(図15)。
【0067】
<自転車の下段位置搬出直前>(図16図12図4
図16は、下段位置、水平状態のラック12から自転車BCLの搬出直前の状態を示す。前輪FWが車輪受け44に載置されることによりロックアーム41の係止爪412とアーム係合部2との係合が解除され、台車11は支柱1に対して昇降可能となる(図12)。ラックストッパ61は下段係合部4に捕捉され、ラック12は支柱1に係止ロックされる。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、ラック12の倒立収納は阻止される(図4)。
【0068】
本発明は、歩道上・公園内等に常設された屋外駐輪場、マンション・アパート等に開設された屋内駐輪場、ビル・地下駅等に併設された地下駐輪場を問わず、これらに設置されたいずれの駐輪装置にも適用できる。なお、本発明は上下二段式の駐輪機に用いることができるが、下段の駐輪部については既知の構造を採用できるので説明を省略した。
【符号の説明】
【0069】
1 支柱
10 回転スライダクランク機構
11 台車(ベース体)
12 ラック
120 回転軸(回転軸線)
121 長孔(ガイド部)
13 ブレース(サイドガード)
13L 左ブレース(サイドガード)
13R 右ブレース(サイドガード)
130 揺動軸(揺動軸線)
131 スライドピン(スライダ)
132 タイヤガード
133 起立付勢ばね
20 台車昇降機構(牽引力付与機構)
21 昇降用ガススプリング
30 ラック回動機構(モーメント付与機構)
31 回動用ガススプリング
40 台車ロック機構(下段ストップ機構)
41 ロックアーム
42 支軸
44 車輪受け(第一検知手段)
50 スライダロック機構(回動ストップ機構)
51 回動ロック板
52 回動軸
53 操作ピン
60 ラックロック機構(移動ストップ機構)
61 ラックストッパ
64 作動部材(操作手段;第二検知手段)
100 駐輪機
BCL 自転車
FW 前輪(先行搬入車輪;後続搬出車輪)
RW 後輪(後続搬入車輪;先行搬出車輪)
C120 回転軸心
C130 揺動軸心
C131 スライダ中心
【要約】
【課題】垂直昇降式駐輪機において、空車状態のラック及びサイドガードを折り曲げずに剛体構造を保ちつつ倒立状態で収納することにより、強度や耐久性に優れたラック収納構造を提供する。
【解決手段】支柱1の下段位置において、台車11,ラック12及びブレース13は、正面視で台車11とラック12とがほぼ直角に交差しブレース13が斜辺をなす直角三角形状の剛体構造を有する。ラック12とブレース13とがスライドピン131を介してクランク運動する回転スライダクランク機構10が構成されている。空車状態においてスライドピン131は長孔121内で長手方向に沿ってスライド移動し、ラック12及びブレース13は台車11に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立状態で収納される。倒立状態においてラック12は正面視で台車11及びブレース13と重なり合って収納される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16